1. まむしの兄弟 二人合わせて30犯
シリーズ第7作。これまでにも「懲役十三回」だの「傷害恐喝十八犯」だのというコケオドシのタイトルがついていましたが、ついに二人合わせて30犯。とは言っても、劇中のセリフを聞いていると、一人で20犯くらいいってるとのことなので、これでも実は控えめの数字なのかもしれない・・・と言うより、完全にナンセンスなタイトルなんですけれども、そんな作品の監督がなんと、あの集団抗争時代劇の工藤栄一というのだから、この世の中、裏ではどういう力学が働いているのやら、わかったもんじゃありません。 とは言え心配ご無用、兄貴分の菅原文太が出所する冒頭から、タイトルに負けないアホらしいドタバタが展開されていきます。しかし一方で、その出所のシーンにおける、逆光によるシルエットの描写などに、シリアスな空気も醸し出したりしていて。 以降も、表向きのアホらしさのその裏で、逆光や、あるいはリンチシーンのスローモーションなどでもって、魔の手が忍び寄ろうとしている不気味さみたいなものを感じさせたりします。 菅原文太とともに孤児として育った弟分・川地民夫が、実は資産家の息子だった、、、という展開で、生き別れた母という人物を訪問する二人が、大抵宅の前で小さく撮られている、そのユーモラスさ、しかしその裏で何かを企んでいる成田三樹夫と渡辺文雄の影、という二重底の構成。意外にこれ、シリアスなんです。 そして一種のラブストーリーでもあったりする。親子愛、ってのもあるけれど、不器用な男女の愛もまた展開され、意外にこれ、王道なんです。 まさかまさかこんなタイトルの映画で泣いちゃったりしないよう、心して、見るべし。 [インターネット(邦画)] 8点(2024-11-23 17:22:22)《新規》 |
2. マンハッタン・ベイビー
『墓地裏の家』の生意気そうなガキがまた出てますねえ。これだけでもう、大幅なマイナス。とか言ってはいけません。 エジプトの遺跡にまつわる何やら因縁めいたものが、アメリカに舞台を移し様々な怪異を招いていく、という趣向。理にかなったような説明はこれと言って無く、よくワカランと言えばワカランけど、オカルト映画たるもの、やはりこうでなくては。ただただ、いわくありげな遺跡に侵入したらアカンでしょ、とか、いわくありげな婆さんからいわくありげな物を受け取ったらアカンでしょ、とか、そういうキッカケだけあれば、充分。古代エジプトと現代のニューヨークとが、何らかの因縁で繋がる。それだけで充分。 だからって、いきなりエレベータの床が抜ける、とか、意味不明過ぎるではないか、とのお怒りもあるかもしれないけれど、いや、古代エジプトの呪いたるものを、現代の我々の尺度で理解しようというのが、間違いなのです。 正直、呪いなんだか何なんだかも、よくわかりませんが・・・。 冒頭、侵入した遺跡の中にトラップがあって人間が剣山に串刺しになる、かなりお約束めいたショックシーンがありますが、全体的に残酷描写は控えめ。それよりも、遺跡近くにいる母娘の姿を遠くからそっと捉えたカメラなどに、趣きを感じさせます。 あと、生き物を使った不気味さの演出。ラストの鳥の襲撃は、これは残酷描写と呼んでいいんですかね? そういや遺跡の壁画に、緑色の蛇が渦巻きのようにとぐろを巻いている様が描かれてますが、どうもこれ、蚊取り線香に見えて仕方がない。どうでもいいですけどね。 [インターネット(字幕)] 7点(2024-09-22 05:10:06) |
3. マーキュリー・ライジング
《ネタバレ》 『ペット・セメタリー(1989年)』では、えらく小さい子にえらくエゲツない役を演じさせてて、ホントに大丈夫かよ、と思ったのですが、この『マーキュリー・ライジング』を見る限り、その後も立派に活躍されているようで。ただし、今、何をやってるのかは知りませんけどね。 一方、ブルース・ウィリスはというと、これはもうテレビシリーズの『こちらブルームーン探偵社』のヒトであって、だからアクションと全くの無縁ではないとは言え、やっぱりアクション・ヒーローとは異なるタイプ。だからこそ『ダイ・ハード』のマクレーン役にもピッタリだったタイプ。なのに、ダイ・ハードのシリーズ化とともに、アクション俳優としてもてはやされてしまい、ホントに大丈夫かよ、と思ってたら案の定、1990年代は迷走気味。次々にアクション映画で主演をこなすも、これぞというものがなく、シリーズ化すりゃいいってもんじゃないとは言え、結局、「ブルース・ウィリス単独主演」と言える映画でダイ・ハード以外にシリーズ化されるほどの広い人気を得たものは、見当たらず。で、今の彼はというと、皆さんご存知の通りで。唯一無二の映画人生を歩んでこられた、とは思います。 で、この『マーキュリー・ライジング』も、迷走していた90年代の主演作の中に埋もれた一本、ということになり、唯一目立つ点があるとすれば、ラジー賞を獲っちゃった、という程度ですが、いくら何でも『アルマゲドン』とセットでの受賞、って、そりゃ無いんでは。 役どころは、自閉症の少年を守るFBI捜査官。少年はその特異な能力ゆえ、命を狙われ、彼の両親を殺害されてしまっている。自らの孤独な身の上を少年が認識しているのかどうかわからないのがまた、哀れを誘います。 が、主人公が少年を守ろうとする理由はそれだけではなく、彼自身、かつて潜入捜査官だったときに、犯人グループにいた少年がFBIに射殺されるのを防げなかった過去があって。単なる同情ではなく、善悪すらも関係なく、ただ、今度こそ目の前の少年を守らなければいけない、という意志。 自閉症という少年のそのキャラクターゆえ、通常の意味で二人の間のコミュニケーションは成立せず、そこに、主人公の不器用さ、みたいなものが浮かび上がってきます。アクション映画と言ってもアクションシーンはやや控えめ。むしろ、次に何をするかわからない少年の言動が、アクションシーン以上に、物語に起伏を与える原動力となっています。 描かれるのはもちろん主人公と少年だけではなく、たまたまカフェで知り合った女性を物語に絡ませるのも、いいですね。「いや、この女性も敵の一味だったりしないか?」などという疑問を我々が持って意識が逸れてしまわないよう、彼女の独り言を挿入して、善意の第三者であることが映画の中で確認されます。そもそも一般市民である彼女が、どこまでこの困難な事態に対しに協力してくれるのか、ということ自体が、充分なサスペンスを孕んでいる訳で。実際、彼女の物語への絡みは、深入りし過ぎず、しかし充分なインパクトを残します。 さらには、主人公には数少ないながらも協力者がいたりするのですが、それはFBI内部だけではなく敵方の組織の人間でもあったりして、これらの人物の妻なりガールフレンドなり、といった人たちも登場します。これらの人たちの存在は、物語の中では決して大きなものではないとはいえ、この作品の幅を広げるのに何と貢献していることか。 ラストシーンは、ちょっと甘いとは言え、ホッとさせるものがあります。 充実した映画、だと思うのですが、どうでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2024-09-15 06:56:53) |
4. マッシブ・タレント
というわけで、時々ニコラス・ケイジの顔が発作的に見たくなるのですが、彼の出演作は無数にあり、さらに見るより作られる早さの方が上なので、ニコラス・ケイジ切れを起こす心配が無いってのは有難い話です。 そのニコラス・ケイジという俳優の、集大成、というか、彼を総括したような、この作品。 思えばかつてのシュワは紛れもなくシュワという隔絶された存在であったので、つきつめればその姿は「ラストアクションヒーロー」にまで昇華されるのですが、今のニコラス・ケイジはというと、中途半端の極致、とでもいいますか。これも一種の「隔絶」と言えなくもないけど、存在自体がパロディみたいなこの人が自身をパロって見せたとて、ほぼ出オチにしかならないのが、作品の弱さ。 いや、彼だって幾つも超大作アクションをこなしているし、この作品でも言及されているのだから、ラストアクションヒーローのごとく本気モードのアクションを繰り広げるべきだったのでは? こんな自虐的なノリだけでお茶を濁すのではなく・・・? いや、それは、無いですね。今のニコラス・ケイジには誰もそんなこと期待してない。「また今回もやらかしちまったか」と思わせつつ、時には意外な当たりで我々を楽しませてくれて、時にはそのやらかし具合で我々を楽しませてくれる。今回も、その一本。 変化球も、打者がそれを待っていたなら、打たれてしまう。というレベルの、いまいち煮え切らない緩~い変化球どまりの作品で、もうちょっと意外性があればなあ、と思いつつ、やっぱりこれは、他の人には作れない特異な作品、ジャンルとしてはニコラスケイジ映画と呼ぶしか無い作品。我々のニコラスケイジ切れを防ぐ貴重な一本です。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-08-14 07:06:19)(良:1票) |
5. マーフィの戦い
南米ベネズエラの大河を舞台に、Uボートの攻撃から生き残った一人の男が、Uボートに対する復讐の炎を燃やす(ピーター・オトゥールの狂気!)。彼には協力者がいるものの(フィリップ・ノワレがいい味出してる!)、巻き込まれたに等しく、事実上は主人公の孤独な戦い。欧州の戦況から遠く離れた地で、まさに人知れぬ戦いが、繰り広げられる。 なんで映画の舞台がベネズエラかというと、撮影の協力が得られたという純粋に製作上の都合みたいですが、実際のところ第二次大戦では、ベネズエラも含めた中南米の国の数々が、戦闘への参加はさておき、ドイツや日本に対する宣戦布告を行っていたのであって、そういう意味では地球規模の大戦とも言えましょう。地の果てみたいな場所、などと言っては現地の人に悪いけど、世界のどんな場所でどんな戦いが繰り広げられてもおかしくない状況の中、しかしだからと言ってこんな場所でこんな戦いが、何のために行われなければならないのか、異様とも言ってよい光景が繰り広げられます。 ひたすら復讐への道を突き進む主人公の偏執狂的な姿、それを描くこの映画自体にも、偏執狂的な雰囲気が横溢しています。主人公が操縦するオンボロ水上機が、果たして無事に離水するのか、その飛ぶや飛ばざるやという姿を、これでもかとカメラが追いかける様は、まさに偏執狂的と言ってよいもので、これだけでも手に汗握るシーンになっています。主人公の「執念」の映像化。 このシーンに限らず、主人公がUボートに立ち向かっていく姿が、この映画では、これでもかと克明に描かれます。作品を通じセリフが絞られていて、とにかく「見せる」ということに重点が置かれる。主人公がボロ船でUボートに突撃する場面なども、なにせボロ船でスピードが出ず、その光景だけもで充分に異様ですが、遅さ故にその光景が時間的にも引き延ばされ、異様さは数層倍に。主人公の狂気もまた、数層倍。誰も見ていない戦い、誰のためのものかもわからない戦い、誰にも止められない戦い。 圧倒されつつ、虚しさが心に突き刺さります。 [インターネット(字幕)] 10点(2024-07-20 07:39:47) |
6. マッハ無限大
《ネタバレ》 この10年前の『マッハ!!!!!!!!』という作品(本作とは無関係ですが)で世界が驚いたのは、このトニー・ジャーという人の超人的なスタントアクション。だけでななく、仏像のためなら死地に赴こうという、タイ人の信仰心の厚さ、ですかね。いやまあ、要するに、アクションの理由付けなんて、いっそシンプルなもので良い、ということで。 ただし、仏像なり、ゾウなり、ご当地色があると、なお良し、ってなところでしょうか。 クライマックスの爆殺計画は、そりゃムチャクチャでしょ、とは思うのですが、しかしラストシーンで海から浮かび上がってくるあの素晴らしいシーンを見ると、やっぱりこのストーリーで、良かったんでしょう。 ただし、10年前の映画で、CG使わないだのワイヤ使わないだのと宣伝してたことを思うと、本作の安っぽいCGその他、ちょっと目障りに思えてしまいます。 バイク軍団とのエンドレスの死闘(マジでしつこい)とか、見どころは多いんですけどねえ。 [インターネット(字幕)] 6点(2024-02-04 17:25:48) |
7. マーベリックの黄金
ユル・ブリンナー、50歳過ぎてこの爽やかな、少年のような笑顔。真似したいのは山々だが、できん。 この笑顔があればこそ、たまに彼がまじめな表情見せると、映画の空気もちょっぴり引き締まります。あくまでちょっぴり、基本は軽いノリ。 彼の役名「Catlow」がタイトルとなっているけれど、「ドラえもん」の主人公があくまでのび太であるように、この作品もどちらかと言うと、トラウトマン大佐でお馴染み(というか、他にはこれといって馴染みが無い)リチャード・クレンナ演じる保安官が、物語の進行役。彼がいきなり襲撃を受ける映画冒頭から、細かいショットを積み重ねたアクションシーンが、作品の活きの良さを感じさせます。 あまりカットを細切れにするのも、それが機械的に感じられたりすると、味気なかったりするもんですが、そしてこの作品でも「ちょっとやり過ぎか」と思わなくもなかったりするのですが、ギャグとしてやっている部分もあるので、楽しくこそあれ、イヤ味な感じはしません。カットを割り過ぎると、例えばR・クレンナが机の上のボトルに手をかけているのにアングルが変わると手が離れていたりするんですが、それもご愛敬。 黄金の争奪戦のオハナシ、ではあるのですが、あまりガツガツしていなくって、「黄金の奪い合い」という印象が薄く、登場人物たちの織りなす、どこに行きつくのかわからないやり取りに、主眼が置かれています。Y・ブリンナーとR・クレンナの凸凹コンビに、ミスタースポックでお馴染み(こちらも他にはこれと言って・・・)レナード・ニモイがちょっかいを出し、さらには先住民の襲撃もあって、物語を散らかし放題。 というコミカルな作品ながら、硝煙渦巻く銃撃戦は、なかなかの迫力。 ヘンな作品ですけど、でもやっぱり、楽しいのが一番、ですね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-12-03 16:00:24) |
8. マッド・ダディ
こりゃヒドい。誰だよ「ニコラスケイジ映画にハズレ無し」とか言うヤツは。いや待てよ、そんな事、誰か言ってたっけ? もっともこの作品、ニコラス・ケイジは主役とは言えず、特に前半は出番も少ないんです。だからギリギリ、ニコラスケイジ映画とは呼べませぬ。 世の中の親が突然、我が子を殺し始める。そこに理由もヘッタクレも無いってのは、いいと思うんですが、元をたどればコレ、永井豪の「ススムちゃん大ショック」ですよねえ。原作使用料として永井豪が何がしかを要求できるとまでは思わないけれど、でも、このネタでこの映画の出来。いや、怒ってもいいと思う。永井先生、叱ってやってください。 だいたい、見るからに親が子供を殺す気満々なのが、面白くない。何せ、親が我が子を殺そうとするんですよ。そんな恐ろしいことが本当にあり得るのか?何かの間違いじゃないか?せめて自分の親だけは・・・みたいなタメこそが、物語のキモになると思うんですが、まーそういう要素の乏しいこと乏しいこと。だって親がニコラス・ケイジなんだもん。暴走するに決まってる。 まずこの時点で、あまりコワくない映画になってしまっているのですが、後半の攻防戦も、グダグダで盛り上がらない。だってニコラス・ケイジなんだから、しょうがないよね。 予兆?みたいなものとして、映像の途切れた画面上の「砂嵐」が提示される。このデジタル時代にアナログ画面? 『ポルターガイスト』の見過ぎじゃないでしょうか。ってのはいいとしても、発想としては陳腐なイメージで、これと言って意外性がありません。 親子関係があればそこに殺意あり、という変なルール付けがこれまたつまらない。理屈先行でサスペンスも何もあったもんじゃありません。それともこれは、ギャグのつもりなんでしょうか。ギャグとしても面白くないけど。 劇伴として思わせぶりに、場違いなドビュッシーの「海」を挿入するのも、違和感しかない。「わざと狙った違和感にしちゃ、イマイチ違和感が足りないんだよ!」という違和感。 ぬる過ぎ。 [インターネット(字幕)] 1点(2023-10-29 15:30:43) |
9. マルチプル・マニアックス
こういう映画に高い点をつけたからと言ってホメている訳ではなく、低い点をつけたからといってケナしている訳でもないのだけど、とにかく、「高過ぎる点」か「低過ぎる点」かのどちらか、には、なっちゃいますわな。なにせ「変過ぎる」から、こればかりは、どうしようもない。でしょ? この作品(もはやこれを「作品」と呼ぶのかどうかもわからんけど)、ザックリ言うと、「聖と俗の対比」ってなことになるのかも知れないけれど、映画の作り手たち(=ドリームランダーズ)の思い入れが明らかに「俗」の方へ極端に偏っているので、対比も何もあったもんじゃない。 キリストの受難劇らしきもの(そう言い切るのは何となく憚られるので念のため「らしきもの」と言っておく)が挿入される一方で、ひたすら下品、モラルの対極を行くようなエピソードが続き、その挙句、おゲレツも突き抜けてしまえばそれは「聖」なのだと言わんばかりのラストへと突き進んでいく。 おゲレツ教の殉教者、聖女ディヴァイン、ってか。 いくらおゲレツとは言え、ピンク・フラミンゴみたいに「実際におゲレツを極めないと気が済まない」みたいなところまでは、さすがにまだ至ってはおりません。しかし、ピンク・フラミンゴ25周年版で監督自身が、家具を舐めまわすシーンに苦笑していましたが、ああいったおゲレツへの発作的な衝動、みたいなものは、このマルチプル・マニアックスでもすでに感じられて、素晴らしく意味不明な世界が繰り広げられています。意味不明でおバカ、だけど、強烈。これを「生き様」と呼ぶとちょっと重くなっちゃうんですが、そう言って言えなくもない。その生き様が、この作品には間違いなく投影されている。ような気がする。 いやはや、自由とは、まさにこのことだ、という短慮も、人生には必要かもしれない。 [インターネット(字幕)] 9点(2023-10-15 18:03:26) |
10. マジック
《ネタバレ》 アンソニー・ホプキンスが全然人気のない手品師で、舞台でスベりまくってる冒頭シーンから、引きこまれてしまいます。芸人が舞台でスベる怖さってのが、よく伝わってきますね。この焦り具合。ははは。いや笑いごとじゃないって。 その彼が、腹話術をマジックに絡めた新ネタで、評判を呼ぶようになる。典型的な一発屋ですね。この後が、コワいですね。 という展開になる前に、この映画は別のコワさへ向かって行く。どうやらこれ、普通の腹話術芸ではないらしい。一人っきりの時でも人形との会話を続ける彼は、もはや二重人格みたいな状態になっちゃっているらしい。 そこまでは映画の比較的早い段階でわかるのですが、その重症度が掴み切れない。重症度と言っても、病の深さ、という意味を超えて、もはや超自然現象の域にまで達しているのか否か。基本的には、主人公の手で人形は動かされるし、主人公が横にいて初めて人形はしゃべるのだけど、明らかに音声が人形から発せられているシーンもあったりして。人形がしゃべっているのか、それとも主人公の幻聴なのか。 こういう曖昧さが、怖いんですね。何が起きるのか、何が起きうるのか、わからない怖さ。もしも人形がひとりでに動いたら怖いけれど、本当の怖さは、「もしも人形が動いたら」という怖さ、「もしかして今、動いたんじゃないか」という怖さ。 そしてもう一つの怖さは、人形の存在に引きずられていく主人公の姿。主体性を損なった主人公は、どう流されていくかわからない。この主人公と不倫してしまうアン・マーグレットは、さらにこの主人公に支配され、主体性を失いつつあるようにも見えるけれど、ラストで彼女は主体性を取り戻し・・・たように思いきや、もしかして別の何かに支配されたのでは? という「可能性」だけを提示した、曖昧な幕切れ。そう、こういう曖昧さが、怖いんです。 [インターネット(字幕)] 9点(2023-09-10 18:20:05) |
11. 魔術師
《ネタバレ》 そもそも「魔術」なるものを見世物としてやってる時点で極めて胡散臭く、しかもその魔術師というヤツが、私は魔術師ですといわんばかりの格好をしてるもんだから、もうほぼウソ確定。ただ、本人が口がきけないらしい、という点に、辛うじて神秘性の片鱗を漂わせている状況。 その彼を周囲は疑うのだけど、その周囲の人物の方が実は何ともウソ臭く胡散臭い、そういう人間模様が描かれていきます。 いっそ、この口のきけない魔術師だけが真実なんじゃないか、とすら思えてくるけれど、そうは問屋が卸さず、変装を解いて実際には口もきける彼の本当の姿を映画は我々に突きつけてくる。 そしてついには、魔術とやらのインチキぶりも暴露され、すべてがオシマイ。 と思ったところから、映画は意外な様相を見せ始める、ってのがこの映画のスゴいところ。完全にホラー映画の語法に突入します。 さらにそこから、またまた事態を一変させるラストへと。もはや我々は何も信用できない。ということがこの世で唯一信用できることなのかもしれない。 「意外な真相」みたいなものをよく、ドンデン返しとか言うけれど、本当のドンデン返しって、この映画のようなもののコトなんじゃなかろうか。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-06-26 13:03:26) |
12. 魔獣星人ナイトビースト
はいはいはいはい。要するに今回も「だからさ、オレだって侵略者なんだってば!!」ってことが言いたいんですね。わかりますわかります。またまたブサイクな顔の宇宙人が登場して脈絡なく地球人へ攻撃を加え、脈絡なく映画が進んでいく。どこが見どころなのか、さっぱり判らない、脈絡の無さ。ま、たぶん、侵略者なんでしょう。きっと。 ドン・ドーラーという監督さん、才能があるのか無いのか、についてはここでは不問にいたしますが、少なくとも「才能があるかのようなフリを全くしていない」というのは、確かだと思います。これはなかなかできることではありません。 [インターネット(字幕)] 1点(2022-05-14 23:39:30) |
13. マンディ 地獄のロード・ウォリアー
こりゃ、あかんわ。 どんなに安い作品であっても彼が出演すれば、なぜか「ニコラスケイジ映画」というジャンルとして一定の水準に達してしまう、そういうもんだと思ってたんですが、彼のニコラスケイジ魂をもってしても、どうにもならん場合もあるんだなあ。彼の出演を待っているボツ寸前の映画企画は世の中にゴマンとあるはず、その彼の貴重な時間をムダにした罪は、重いぞ。貴重かどうかは知らんが。 トリップしてます的なサイケ調の思わせぶりな映像が延々と続きますが、この路線で行くなら行くで、しっかり腹くくって、目を見張るような映像を作り上げて欲しい。スローモーションをいくら多用しようと、サエない映像はやはりサエなくって。 イメージビデオ撮るつもりなら、2時間も要らない。 ただ、炎にニコラス・ケイジは、よく似合う。気がする。さすが、ダテにゴーストライダー演じてないねえ。 [インターネット(字幕)] 2点(2022-04-10 22:14:47) |
14. まむしの兄弟 恐喝三億円
《ネタバレ》 ただでもデタラメな、この「まむしの兄弟」、今回は監督が鈴木則文になって、ますますお下品、デタラメに。 という訳で、例のコンビが登場すると途端にエロさ全開のおバカ路線になるのですが、その一方で松方弘樹が出てくる場面は妙にハードボイルド。まぬしの兄弟シリーズらしからぬ、何だか鶴田浩二の主演映画でも見てるような気分に(とは言え松方弘樹なのでコチラもなかなかハードにエロい)。 そのギャップがこの第6作(だっけ?)の特徴。特徴的過ぎて、ちょっと付いて行きづらい気もするけど。 クライマックスは豪快に銃撃戦で大暴れするも、いったん背負ってしまったオゲレツの看板はそう簡単には降ろさせてくれない、というオチ。 [インターネット(邦画)] 6点(2022-03-28 22:55:03) |
15. 真夜中のゆりかご
主人公の刑事がジャンキー夫婦宅に足を踏み入れると、そこには夫婦の赤ちゃんがいて、どう見ても育児放棄に近い状態。刑事にも同じくらいの赤ちゃんがいるもんで、これは許し難き状態。そんな中、刑事夫婦に悲劇が襲いかかり、彼はある行動に出てしまう・・・というサスペンス。その危うさに、目が離せません。 「目」のクローズアップ。赤ちゃんを含め、誰もが皆、すべてをありのままに見ているようでいて、実際は人によって違う光景が見えている。あるいは、人によって「見えていない光景」が、異なっている、というべきか。その残酷さ。 それでもなお、ラストで主人公が目撃する光景、二人が交わす視線には、確かに真実が含まれている、ということ、なんですかねー。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-03-05 12:17:37) |
16. マッキー
荒唐無稽の極みのアホらしい設定ですが、それなりにヒドい事もしてて、ちょっとしたホラーかも(?)。 悪いヤツに命を奪われた主人公が、愛する女性を守るべく、転生するのだけど、よりによって生まれ変わった生き物ってのが、ハエ。 と言うと、「何だ、蝿人間の話か」と思うところですが、さにあらず。何と、本当にただの蝿として生まれ変わってしまう。だもんで、そこからの主人公はセリフ無し。CGで描かれる仕草のみ。 さすがにちょっと、アイデア倒れというか、キビしいものが無いでは無いのですが、それでもこの設定の枠内で可能な最善の作品には仕上がってるんじゃないでしょうか。ハエの仕草で物語を描写するという、サイレント映画でもまだ誰もやったことのない世界。 見ていると、色々と伏線が張られていたことに気付きます。伏線というのもこれ見よがしにやってしまうと白けるもんですが、本作では、後に伏線となるモチーフの初出のシーンが、それ自体印象的な描写として映画の中で機能しているので、イヤミになっておらず、効果的で良かったです。 [インターネット(字幕)] 7点(2022-02-19 21:57:25)(良:2票) |
17. まむしと青大将
《ネタバレ》 まむしの兄弟シリーズの最終作。というより番外編かな? 少々、印象の異なる作品となってます。とは言え例の二人は例のごとく、短絡的でオッチョコチョイ、なんですけど、川地民夫は小さいながらも自分の組を持つようになった、ということで、最初の方は出所した菅原文太ただひとり、という展開。物語の方も、イカサマ麻雀で一攫千金を夢見る男女3人の物語のウェイトが意外に高く、彼らの挫折で幕を閉じる、苦みを伴ったストーリー構成となっています。 もちろん青大将と行っても、邦衛さんではありません。シリーズの会社が異なる、という以上に、ストーリー的に無理がありますもんね。ってか、なんで若大将じゃなくて青大将なんだ、と。 それにしても、さすがインチキ麻雀だけあって、凄まじい空中戦です。全員、役満しか狙ってない(笑)。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-12-05 13:49:44) |
18. まむしの兄弟 刑務所暮し四年半
まむしの兄弟シリーズ第5作は山下耕作が監督。このアホらしいシリーズにも格調というものが生まれるのかと思いきや、しっかりバカやってくれてるのが、嬉しいですね。 でも中盤に入ってくると、人情モノの色合いが加わってきます。幼い娘と離れ離れの女性(浜木綿子)。そしてその彼女と、幼い娘の祖母たる母親との関係。この幼い娘ってのが、なかなかにブチャイクなんですけど、たどたどしくも実に見事な関西イントネーションのセリフが、ブチャイクな表情に完璧にマッチしていて、イイんですねえ。 で、親子関係に飢えているまむしの兄貴は、当然のごとく、この家族関係の中にズッポシとはまり込んでいく、その姿が微笑ましくも、泣かせます。 と、やはり格調らしきものが出てきたかと思ったら、ラストの殴り込みはどこから入手したのやらマシンガンまで持ち出し、殆ど『不良番長』みたいなノリになってます。が、やはり基本テイストは明るく楽しく、敵を蹴散らし、殺しまくる。 まむしの兄弟、こうでなくては。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-11-15 23:09:18) |
19. マウス・オブ・マッドネス
こういう思わせぶりな映画ってのが、好きか嫌いかと言われりゃ、、、ま、嫌いですけれど。この不条理な世界、何じゃこりゃと思ってみてたら、ピックマンホテルとかいうのが出てきたりして、いくらニブい私でも「こりゃラヴクラフトの世界観なんだな」(しかも駄洒落かよ)、と思い至る訳で。でもだからと言って、嫌いなものが急に好きになる訳でも無し。 にも関わらず、この作品、何だかオモシロい。では何がオモシロいのかと言えば多分、その思わせぶりを時々崩してしまう、カーペンター節みたいなもの、だと思う。 思えばカーペンターというヒト、スネーク様のシリーズはあるものの、基本的にはバラバラの作品を作ってて、にも関わらず何となく一連の作品には共通のテイストも感じられたり。 この作品でも、妙なクリーチャーを登場させては「ああ、やっぱりなあ」と思わせ、松明持ったアヤシい連中を登場させては「なんか、カーペンターだなあ」と思わせる。 でもまあ、バラバラなんですけどね。 そんな監督が、こんな妙な幻想譚みたいなのに手を出したら、こんな妙な作品になるんだなあ、と。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-10-23 23:32:43) |
20. まむしの兄弟 傷害恐喝十八犯
何の説明も言い訳も無く、シレッと時代設定を昭和初期に移した前作から一転、また現代に戻ってきたシリーズ第4弾(現代と言っても勿論、昭和には違いないですが)。 前作は無かったことになるのか、と思いきや、今作には、いつもの「まむしの兄弟」に加えて、「オレたちこそがまむしの兄弟だ」と名乗る2人組のジイサンが登場。もしやこの2人は、前作の主人公のナレの果てなのか!? って、まあ勿論、そんなことはないんですけれども。ただ「親に捨てられた子」「子を捨てた親」という部分で、互いに関連づけられた存在とはなっています。そこに、森進一の「おふくろさん」が挿入歌として効果的に・・・いやあまり効果は上げてないですけども(笑)。 映画開始から暫くはドタバタの連続、ほぼギャグ映画状態ですが、メインは、リゾート開発のため地上げを企む悪徳業者と、彼らに狙われたバラック街の面々との戦い。そこにまむしの兄弟が絡んで、ただでもややこしい話をさらにややこしくしてしまう。 多少はシンミリしたりもしつつ、クライマックスの殴り込みは例によって、全日本プロレスじゃないけれど、明るく、楽しく、凄惨に。 渡瀬恒彦はせっかくの登場なのに、もう少し見せ場が欲しいところでもったいない気もしますが、一種のチョイ役出演と思えば、なかなかの頑張り。敵に捕まってつるし上げられてる辺り、ちょっとリーサル・ウェポンのメル・ギブソンを思い起こさせるではないですか。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-10-02 07:22:42) |