1. 幻の光
《ネタバレ》 宮本輝のファンである僕が一番はじめて触れたのが、幻の光だった。女の独白によって語られる物語に人生の哀歓と、賛歌を感じたのを覚えている。さて映画だが、原作にほとんど忠実に作られている。台詞もそのまま使われているのではないだろうか。しかし、見終わった感想として、期待しすぎたからだろうか、物足りない印象があったのは間違いない。整った美しい画の中にさらりと感情を描くのは、是枝監督のリアリズムであるのだと思うが、果たして小説を読んだことのない人に、伝わるのだろうか、疑問である。原作を知っているが故の感想なのかもしれない。是枝監督にとっての「幻の光」であると考えれば、感情表現をぎりぎりまでに抑えて、富山の風景と、人物の何気ない会話、動作と、丁寧に愛情を込めてつくられているこの作品は、すばらしい映画であるのかもしれない。 ただ僕が感動したのは、愛していた男との埋まることのない距離を必死に埋めようとする女の悲しい独白であり、原作者宮本輝の人間観であったので、やや物足りない。 6点(2005-02-27 04:37:20) |