1. 未来世紀ブラジル
徹底的に人間性の排除された物語。はっきり言って主人公もロクな奴じゃない。職権を濫用して他人の女性のプライバシーを覗こうと躍起になっているのだから。人を人とも思わない社会の中で、それぞれどうしようもない奴らがうごめく、この上もなくブラックな映画なのだ。過去とも未来とも、どこにあるとも知れない架空の国の、ハイテクとローテクが入り混じった(どちらかというとローテクの比率が多い)世界観は、スチームパンクにも通じた異様さを誇っている(その意味では未来世紀という邦題は成功したとは言いがたい)。テリー・ギリアム監督独特の、観客のケツを蹴っ飛ばしてやろうという映像がふんだんに使われており、ファンにはたまらない映画だ。モンティ・パイソン調のブラックユーモアに隠れがちだが、独特の異彩を放つ画面など、いくらでも掘り下げることのできる名画。個人的に配管工タトルのモデルは任天堂のマリオではないかと考えているのだが…。 9点(2003-10-14 12:42:20) |