1. ミザリー
異常性格者が異性を監禁するという傑作サイコ・サスペンスであるワイラー作「コレクター」(65)の、男女を入れ替えた逆バージョンとも言えるのがこの映画。となると見所は監禁する側とされる側との息詰まる駆け引き、そして狂気に満ちた主人公アニーを演じるキャシー・ベイツの怪演技。監督はあの瑞々しい映像が鮮烈な印象を残す「スタンド・バイ・ミー」「恋人たちの予感」のロブ・ライナーなんですが、今作での作風はかなーりどぎつくすこぶる“お下品”。とくにラストのクライマックス、アニーがあのオソロシイ形相でポール(ジェームズ・カーン)に襲いかかり、「このチ◯ポ野郎! !」(たしか字幕では)と極め付けの台詞を発するシーンがインパクト大。(もっとも当の本人は楽しんでこの怪演を披露したに違いなく、スタッフ一同、ウケにウケたと思われるが。) くどくなりますが、未だにこの映画を思い出すとアニーの「この◯ンポ野郎」と発するシーンがバーンとまず真っ先に脳裡に表れますね。まーお下品もさることながら、一度見たら忘れられない映画には間違いありませんです、ハイ。 7点(2004-10-16 11:31:55) |
2. 宮本武蔵 一乗寺の決斗
剣術の世界で圧倒的な強さを誇った宮本武蔵の青年期を描く、吉川英治原作「宮本武蔵」の映画化。エンターテイメント時代劇としては抜群におもしろく、学生時代にはのめり込むようにして読んだものです。また、沢庵和尚にお婆に又八、お通に朱実といった多彩な登場人物を絡ませる人間絵巻は、文豪吉川英治の人生訓がそこかしこに散りばめられており教えられることも数多かった。この全五部作からなる一連のシリーズでは、主人公武蔵を迫真の演技でもって好演した中村錦之助はもちろんのこと、巨匠内田吐夢のゾクゾクさせてくれる丁寧かつ味わい深い演出も見どころです。《ネタバレ》今作のクライマックス、一乗寺下り松で繰り広げられる壮絶な決闘シーン。武蔵が修羅のごとき形相で、我が子をかばう父親もろとも源次郎少年を斬り捨てるという凄絶な描写には思わず唸ってしまった。この鬼畜さながらの非情な剣術体験が武蔵を苦悩させ、人間宮本武蔵の大きなターニングポイントとなる。みなさんの仰るとうり今作の決闘シーンがシリーズ中、最大の見せ場ですね。 8点(2004-09-27 15:17:39) |
3. ミツバチのささやき
夢とも現実ともつかない遠い記憶にあったものが、呼び戻されたような作品。いうなれば、秋深まる頃に表れるデジャ・ビュ。カメラの位置と構図、それと光と影の使い方が抜群に上手く絵画的センスの良さを十分に感じさせてくれる。妖精のような少女アナが、このアーティスティックな作風に見事溶け合っておりいつまでも記憶に残る。さらに「フランケンシュタイン」の恐くて悲しい物語りを取り入れるなど、ミステリアスな味付けも巧みだ。視点を変えて観るたびに、新たな発見があるという静かだが奥の深い名画。 9点(2004-02-29 19:40:32)(良:1票) |
4. ミクロの決死圏
70年代には本当によくテレビで放映されており、子供心にワクワクしながら見たものです。まさに大人向けの本格的なSF映画という感じでした。たしかに人間をミクロ化させ、体内で繰り広げる冒険ファンタジーというアイデアはおもしろい。しかし特撮と映像が“売り”なだけに、今見直してみると時代をつくづく感じさせてしまう。これが「2001年宇宙の旅」や「猿の惑星」のように、人類の未来に対する強烈な文明批判や戦慄すべき警鐘が盛り込まれていれば、時代を感じさせない不朽の名作に成りえたかも知れない。ま、しかしSF映画史上、記録されるべき名作には違いありませんので、8点。 8点(2004-02-25 23:43:59) |
5. 道(1954)
巨匠フェリーニの一級品の演出に、味わい深い描写が冴えまくる名作中の名作!! アンソニー・クインが演じるザンパノという男は、粗暴でエゴの固まり。あげくの果てには人殺しまでやってしまうクソ野郎で、ラストのクライマックスを迎えるまでは、とても感情移入出来るシロモノではない。その彼と対照的な女、ジェルソミーナ(ジュリエッタ・マシーナ)は天使のように純真無垢。ニーノ・ロータのメロディーと共に、見る者に哀れみと涙を誘う。ラストに用意されたザンパノの号泣は、わずかに残っていた人間らしい部分(悔恨、懺悔)で、ここにきて初めて彼に感情移入させられる。フェリーニの演出に、見事してやられてしまった…。凄い作品です。 9点(2003-09-07 10:58:25) |