1. 麦の穂をゆらす風
アイルランドの自然に囲まれた風景が、あまりにも美しいせいで、そこでドンパチと銃撃戦が行われている様子が、不謹慎にも、美しいと感じました。印象に残ったのは、アイルランド共和国議会の民事裁判で、金持ちの地主が裁かれるシーンです。あれは裁判というよりも、裁判ごっこでした。そのシーンが、アイルランドと英国との力の違いを、兵力の違い以上に、表現していたように感じます。私の浅はかなアイルランドの知識といえば、アイルランド=IRA=テロリスト、という偏見があったことですが、この映画は、テロ集団「IRA」の前身となるアイルランド義勇軍の話のようです。ところで、テロリスト、と一方的に我々は言いますが、アイルランド人にとっては、テロをしているつもりはなく、英国と戦争をしていると思っている。しかし両者の力の差があまりにもかけ離れているために、英国では戦争とは受取っていない。アイルランド人に無差別殺人をされていると思い込んでいる。本作では、英国側の兵士が非常に残酷に描かれているために、客観性が損なわれていますが、本当は英国兵士も政府に命令されて、国に家族を置いて、このアイルランドにやって来ただけなのです。そして異国の地で、アイルランド人のテロ行為に、気が狂うほど怯えていたのだと思う。アイルランドからの撤退を心から喜んだのは、英国兵も同じなはずです。この撤退で英国にいる兵士たちの家族も泣いて喜んだでしょう。それが本作からはあまり伝わってこなかった。もう少し英国側の苦悩も描いてくれれば、深みが増したかと思いますし、そういう意味では少し一方的な見方をした映画だと思います。この映画はイラク情勢を、連合国側の視点ではなくて、イラクの武装勢力側の視点で見たようなものと似ている。戦争は、どちら側の視点で見るかによって、真実が変わってくることがよく実感できました。 [映画館(字幕)] 8点(2006-12-25 18:55:26)(良:1票) |
2. 息子のまなざし
《ネタバレ》 オリヴィエの台詞はわずかしかありませんでしたが、彼の強靭な体からメッセージを発していました。 テーマは「復讐」と「赦し」ですが、私はオリヴィエの「喪失」と「再生」の物語だと感じました。崩壊した夫婦のもとに、自分の息子を殺した少年が現れた。オリヴィエは驚いたのでしょう。夢の中では悪魔だと思っていた少年は、実際には息子と変わらない普通の少年だったのだから。 この映画のラストは実に印象的です。オリヴィエを「喪失」させたこの少年が、オリヴィエを「再生」させている。誰かを救うことは自分自身のためなのです。他人を救うことによって自分が救われる。たとえそれが最愛の息子を殺した人間であろうとも─。オリヴィエが少年を赦したのではありませんし、オリヴィエが少年を救ったのでもありません。その反対なんです、少年がオリヴィエを救ったのです!こんなことを言ったらオリヴィエに怒られるかもしれませんね。遺族が加害者を赦せないのは当然です。しかし赦すことによってじつは自分が救われるという真実は意外と知られていない・・。見ごたえ充分の人間ドラマでした。 [DVD(字幕)] 10点(2005-07-09 22:04:01) |
3. 息子の部屋
死んだ息子を好きだったという少女が登場してきてからこの映画はとても面白かった。 その少女に対するあの家族の接し方というのが、私にとっては、とても不思議な感じがして新鮮だった。「あんなふうになるのか」となんとなく納得。 ラストシーンも印象的。最後は海岸を笑顔で歩く家族の姿が映し出される。しかしそれは歩くというよりは、「さまよっている」という表現がぴったりと当てはまると感じた。 家族全員が、埋めようもない心の空洞を抱えながら、どこへ行くともなく、ふらふらと、さ迷い歩いている─。そういう印象を強く持った。家族の悲しげな笑顔と背景の青い海が、なんとも言えないバランスを作り出していた。 8点(2005-03-03 20:37:08) |
4. ムーンライト・マイル
ダフティホフマンと、スーザンサラドンという演技派の2人が、娘を失った夫婦を演じている。 しかし!主人公は恐ろしいほど存在がなかった。 それに太りすぎだ。彼の悲しみや苦しみも、たんにお腹が減っているからとしか思えない。 そして究極的にふてぶてしい。 亡くなった恋人の両親の家に居候しながら、なぜ郵便局員と恋に落ちる?! 1点(2004-07-04 13:53:50) |
5. ムーラン・ルージュ(2001)
なかなか楽しめた。 しかしストーリーは音楽の勢いで誤魔化している。 愛することと愛されることが何より幸せ、といいつつ、愛されることのみに執着しているユアン。もうちょっと人間をしっかり描いて欲しい、ユアンに共感できなかった。 7点(2003-11-07 02:29:32) |