1. メトロポリス(2001)
近未来の超巨大国家都市メトロポリスを舞台に繰り広げられる、人間の業とそれに端を発する都市の崩壊。限られた登場人物をあくまでアッサリと描き、主役を都市そのものとしている点がおもしろい。だが、その結果としてどうにも薄っぺらい物語となってしまったところが寂しい。もちろん、観客それぞれが受け取るものは違うしそこが狙いなのだとは思うが、中盤までの盛り上がりやタメに欠けるため、クライマックスがフラフラっと終わってしまう。これが製作者の意図なのだとすれば、乱暴なのでは。 物語の背景がほとんど明らかにされないままなので、予備知識のない観客は混乱する。この点がもっとも乱暴だと思うゆえん。製作者は分かりきっていることを、観客にも押し付けているような感を受けた。頻繁なカット割りにも疲れる。 また、ディキシーランド・ジャズを使って独特の雰囲気を醸し出す手法は面白いのだが、日本アニメに共通する事柄として、どこかに古臭さを残そうとする点で目新しくないのが残念。レイ・チャールズの選曲は見事だ。 画面の出来はすばらしく、細部まで書き込まれていて飽きることがない。大したもんだ。りんたろう、本気である。その点では大いに楽しめるものだ。キャラクターも古風で、魅力を感じる。とくに、この作品の魂でもあるティマの魅力は非常に大きいものがある。彼女にここまでの魅力がなければ、言うまでもなくこの作品は失敗だ。 CGを多用しながらも、それをあまり感じさせない画面作りも見事の一言。キャラのアナログさとそぐわないとの声もあるようだが、これはこれでいいと思う。このディティール作りに躍起になりすぎたのではと思えてくるぐらい。どうも、これがやりたくて物語があるように思えるのは疑いすぎだろうか。 この作品は物語としては平凡になってしまったものの、技術や表現の面でアニメの持つ力を試す壮大な実験場なのではないだろうか。そういった意味では今後のアニメ映画に影響を与えていくものは多いのでは。 6点(2004-05-15 06:21:22) |