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R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

●今週のレビュー
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1.  横道世之介
映画鑑賞後、なんとも言えぬ幸福感を感じた。その原因は物語ではなくおそらくはあまりに初々しく瑞々しい高良&吉高にある。ハンバーガーショップでの二人のやり取り中にけらけらと笑う吉高の頭に絶妙なタイミングで帽子が落ちてくる。監督はNGとせずにそのまま演技をさせる。ほとんど奇跡的な瑞々しさの発露はこういった撮影方法によって作り出されている。80年代のヘンテコな風俗描写がしつこいとか兄のキャラクターが大袈裟に過ぎるとかいらぬエピソードがあるとかといったマイナスはこの映画の場合、もうどうでもよい。また、兄の部屋を映し出す抜群のカメラワークだとか主人公の部屋の奥行きのある構図だとかといったプラス面ですらこの映画の場合はどうでもよい。ただひたすらこの奇跡の瑞々しさをにやつきながら賞賛するのみである。あきらかにオフレコの雪のシーンは見てるこちらがこっ恥ずかしかったが。
[映画館(邦画)] 7点(2013-03-13 14:29:30)
2.  妖怪大戦争(2005)
川姫がエロい。いや川姫はエロくはなく衣装がややエロく、エロくはない川姫がそれを着ているからかなりエロくなっている。だけど見せ方がさらりとしている。そこを強調しない。しれーっと見せる。その塩梅のうまさ。栗山千明の衣装もエロいのだがこちらは強くて怖いキャラなのでもっと過激にエロくてもよかったような。時折見せる女の子っぽいところがいい。数多の妖怪はいらない。妖怪大戦争だけど。実際お話の中で妖怪たちは何もしとらんし。数多の一般人もいらない。ほとんど顔見せだけのキャストたちは上映時間を引き延ばす意外になんら映画に貢献していない。女対女の映画でいいよ。そこに神木君がエロに反応する正常な男子であるところが映されればなお良し。
[DVD(邦画)] 4点(2011-11-30 17:23:49)(笑:1票)
3.  欲望という名の電車(1951) 《ネタバレ》 
テネシー・ウィリアムズの戯曲はとにかくタブーに塗れているので、映画化にあたっていかにそのタブーを隠し、いかにそのタブーを想像させるかがポイントになろうかと。でもやっぱりこの時代、間接的な、あるいは比喩的な描写でも許されなかったのだろう。『熱いトタン屋根の猫』の親友の同性愛の末の自殺が親友の自殺に改変されたように、夫の同性愛の末の自殺は夫の自殺に改変される。それでも小出しにしか言及されない女の過去という謎めかしとヴィヴィアン・リーの最初からどこか線が切れたような演技も相まって、何かが彼女の過去にあったのだということはなんとなく想像できるようになっている。脚本もテネシー・ウィリアムズらしいが、映画の制約の中ではほぼパーフェクトな脚色だったのかもしれない。それでも『熱いトタン屋根の猫』のほうが好きかもと思うのは色気の差か。濃厚な演技ばかりが前に出ている。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2010-11-12 13:26:15)
4.  夜討曽我
日本三大仇討ちの一つで能や狂言、歌舞伎などではお馴染みのお話らしい。実際はもう少し長く、何巻かのフィルムは失われたままらしいのだが、お話を理解するには全く問題が無いのはお話そのものの分かり易さにあるのだろうか。始まり方や幼少時代から突然成長した姿に変わる唐突さも、フィルムの喪失のせいではないように見える。それほどにお話の見せ方はテンポがよくっていいのだが、見せ場の殺陣がなんか素っ気無くて盛り上がらなかった。完全じゃないものなので仕方ないところはあるんだけど、同日に観た『御誂治郎吉格子』(31年)や『国士無双』(32年)と比べるとかなり見劣りしてしまう。比べる相手が悪いか。並木鏡太郎の処女作。
[映画館(邦画)] 5点(2010-10-25 11:44:34)
5.  夜よ、こんにちは
外の光を入れた奥の部屋には不動産屋さんと不動産屋さんの説明を聞く女。手前の真っ暗な部屋には説明を全く聞こうとしない男。冒頭のこの一場面だけで「企み」を匂わせているのも凄いんだけど、なにより明るい部屋と暗い部屋を同じ画面に映そうとするその発想に唸らされる。その後も映画の大半を占めるその住居内映像は奥に映される隣室や窓の外の景色によってスリルを獲得し、様々な角度から様々な部屋が映されることで混乱を生みながら、一つの「世界」を構築してゆく。その世界で生まれる幻想はやがて外の世界から切り離され、その世界の現実となる。その世界とはまさに「映画」であり、ラスト、我々は映画が現実を凌駕する瞬間を目にすることになる。それは実に幸福な映画体験であった。劇中で女が「想像で人は救えない」と言う。対して男が「想像は現実的だよ」と。想像はいつでも現実になりうるのだ。
[DVD(字幕)] 8点(2010-10-22 14:22:04)
6.  夜の人々(1948) 《ネタバレ》 
3人の脱獄囚がとある場所を目指す冒頭の短いシーンで3人の立ち位置と人となりが映し出されている。主人公の青年が脱獄囚でありながらさほど悪い人間ではなさそうであることがすでにここで明示されている。もちろん言葉での説明なんて無い。女との出会いのシーンはそれが運命の出会いであることが一目でわかる。お互いほとんど言葉を交わさないシーンでも、それは出来るのだ。そして不必要な言葉で埋め尽くされることでぎこちなさが強調される告白シーンの初々しさよ。共に逃げる悲壮よりも共にいることの幸福がはるかに勝る新婚生活の瑞々しさよ。そして儚さよ。とくにヒロインの、初登場シーンの暗さから一転して見せる輝かしい笑顔は、それだけで幸福感を満たせ、またその後の暗雲をも予感させる。バッドエンドという結果の分かりきったラストシーンは、それでも二人のハッピーエンドを願わずにはおれない。
[DVD(字幕)] 8点(2010-09-30 15:24:43)
7.  善き人のためのソナタ 《ネタバレ》 
レーニンがベートーヴェンの「熱情ソナタ」に対し「これを聴くと革命が達成できない。この曲を本気で聴いた者は悪人になれない」と言ったというエピソードが紹介される。芸術家を監視する、国家に従属する男の心の変化の伏線となっている。冒頭の尋問シーンや講義シーンからもわかるように主人公はそんじょそこらのことで動揺するようなタイプではない。だから監視される男女の思いやりや苦悩を見たからといって国家に背くはずなどあり得ない。やっぱりそこには真の芸術家が奏でる「善き人のためのソナタ」を聴いてしまったがための変化ととらえていいのではないだろうか。本物の芸術に触れた者はその芸術を守ろうとする。あるいは本物の芸術に触れた者はその芸術を葬り去ろうとする者が許せない。芸術を理解する者としない者に線を引き理解する者の側に近寄ってゆく。しかしここで大きな不満がある。監視者は「善き人のためのソナタ」で涙を流すが監視者を監視する我々には響いてこない。ここはオリジナルもいいが既存のクラッシック曲でも良かったかもしれない。そして何よりも重要なのはその曲をまるごと聴かせることだ。『トウキョウソナタ』のように。『夜顔』のように。我々が本物の芸術を感じないことにはどうにもならないと思うのだが。
[DVD(字幕)] 6点(2009-03-25 13:34:19)(良:2票)
8.  容疑者Xの献身 《ネタバレ》 
テレビドラマ「ガリレオ」は見てはいないが湯川学を主人公とする原作シリーズにはいない女刑事をメインキャラの一角として登場させているところから想像するに、シリアスさを緩めるスクリューボール・コメディ調の軽いタッチで見せたドラマなんじゃないかと勝手に想像しているが、たしかにテレビドラマの映画化として見ればコミカルさよりもシリアスさを前に出したこの作品はテレビドラマとはまた違った味わいを提供してくれているようにも見えるかもしれないが、原作「容疑者Xの献身」の映画化として見れば別段なんてこともない映画、少なくとも違った味わいなど感じることなんてないわけである。読みやすくて面白いものがてんこ盛りの東野圭吾作品の中で、実は個人的にそれほど面白いとは思っていないこのシリーズの醍醐味は何といってもトリックの凄さである。だから映画の評価でこのトリックそのものを云々というのもおかしな話である。軽いタッチのテレビドラマと原作のシリアスさをうまく融合させた功績も実は映画にはなく、東野圭吾が生み出した湯川学というどっちの世界でも通じる、というより自分の世界しか持っていないキャラクターこそにその功績がある。それでも私の中で違和感ありありだったキャスト陣がいつのまにか違和感を感じさせないまでにしてみせたこの映画のドラマ力(そんな言葉無いけど)は認めたい。ダンカンだけは最後まで違和感あったけど。どう見たって犯人面してるじゃん。一瞬、ストーリー、原作から大幅変更かと思った。
[映画館(邦画)] 5点(2009-01-13 15:54:30)
9.  夜になるまえに
キューバ革命が反米の象徴として語られることが多いから、革命の別の視点が描かれているという点では興味深いところもあるんだけど、一人の作家の一生を描くにあたってあまりにもマジメというか、あまりにも本当っぽいというか。もちろん本当のお話なんだろうけども、細かいエピソードにおいて例えばそれらが本当であろうが嘘であろうがどうでもいいんだけど、どっちにしてももっと嘘を見せて欲しい。嘘と言ったら語弊があるか、もっと幻想的に描くとか詩的に描くとか荒唐無稽な描写を入れるとか回想シーンをありえない世界観で描いちゃうとかストーリーを絞ってもっとドラマチックにしちゃうとか。主人公が芸術に生きる人なんだから尚更。好みの問題だとも思うんだけど。どうも「伝記」って苦手。
[DVD(字幕)] 4点(2008-08-06 13:12:07)
10.  4ヶ月、3週と2日 《ネタバレ》 
手持ちカメラで追いかけるだけじゃここまでの不安感は出せない。この映画は音が凄い。物をテーブルに置く音や足音や息遣いが気分が悪くなるくらい響いてくる。音が襲ってくる。不安感と書いたが、それだけじゃなくて、焦りや憤り、怒り、孤独感も。主人公はルームメイトにも恋人にも、違法である堕胎手術をするかわりに見返りを強要する男にも、そして自分自身にも憤りを感じている。延いては社会全体に憤りを感じている。その社会は孤独な者をさらに孤独にせしめ、弱者をさらに追い詰める。堕胎手術を頼んだ女と頼まれた男は、男の計画通りに進まなくても、2対1という数的有利となっても、お金が支払われても、堕胎が行われてもけして変わることはない。社会の構図として男よりも女が弱い立場にあることは、恋人の家での会話からもうかがい知れる。しかし生きていかねばならない。不満を漏らしたところで何も変わらないことを女たちは知っている。女二人が食事を摂る。それは何も出来ない女の弱さの象徴でもあり、それでも生きてゆく女の強さの象徴でもあるのだと思った。
[映画館(字幕)] 7点(2008-07-30 14:07:03)
11.  夜がまた来る
これ観たの、10年以上前になるんですけど当時はこれを「Vシネマ」だとばっかり思ってて、「Vシネマ」にしてはよく作りこんでるなあと思ってたんですけどあらためて調べてみると劇場公開作品だったんですね。失礼。でももともと「Vシネマ」用に企画していたけど夏川結衣が「映画」なら受けるとなったことで監督が自腹で撮っちゃったとか。そんなこと耳に入れちゃうと擁護したくもなっちゃうんだけど、この作品の最大のウリははっきりいって「女優のハダカ」だと思う。そういうところがスタートが「Vシネマ」だったというところから脱しきれていない。ウリは「女優のハダカ」で間違いないし、その「ハダカ」もキレイだし、え~!あの夏川結衣があんなことを~!!てなシーンがてんこ盛りなんだけど、そのほとんどが引きの長回しというところに妙なコダワリを感じてしまうのだが、そこは女優の艶っぽい顔のアップでしょ、とかそこはオッパイに寄って寄って!ってなところもひたすら引いて撮る。「ハダカ」がウリの安っぽいストーリーを一生懸命安っぽくならないように撮ってるという感じがなーんかバランス悪いというか・・。あと、外光が入らない屋内シーンの光の使い方とか印象的な画づらは多々あるんだけど、チープなお話が足をひっぱてるのか、お話との相性が悪いのか。劇場で観るとまた違ってくるのかな?
[ビデオ(邦画)] 5点(2008-06-05 14:13:55)
12.  ヨコハマBJブルース
松田優作の希望で工藤栄一が監督に抜擢されているが、優作代表作であるテレビドラマ「探偵物語」でも彼は工藤監督を推していたらしく(スケジュールの都合で実現せず)、念願叶ってといったところか。優作のハードボイルドぶりも実に様になっているし、本人の歌声もなかなかのもの。しかしこの作品で最も評価すべきは工藤監督の演出だろう。これまでの優作主演の映画のようにアクション俳優・松田優作をカメラが捉え続けるのではなく、うらぶれた夜の街並み、昼の都会の喧騒、絵になる港町といった「ヨコハマ」こそが主人公のように見事に映し出され、その映し出されたものの中にポツンと人間が映ってるというぐらいの撮り方で、割と遠めのショットを多用している。アクの強い優作とのバランスもいいし、何より映像が美しい。傑作と言ってもいいかもしれない。
[ビデオ(邦画)] 7点(2008-02-29 14:44:00)
13.  4番目の男
ヴァーホーヴェンがオランダ時代に撮った『氷の微笑』です。『氷の微笑』のほうがシンプルで洗練されていて楽しみやすいが、こちらは宗教がらみということもあって、悪魔的な色合いがあって、より心理的に迫ってくるものがある。ただ、アルコール依存の男が見る幻想がエグイわりに「いかにも」なものばかりで、とくに宗教がらみの幻想がそのエグさも含めてありがちなものにしか見えない。「いかにも」な部分を大切にするのが娯楽映画に徹するヴァーホーヴェンなわけで、その徹底ぶりがときに幼稚に見えるのだろう。この「いかにも」なものを如何に楽しむかがヴァーホーヴェンの作品を楽しむコツなのだ。
[DVD(字幕)] 5点(2007-07-23 11:42:24)
14.  ヨーロッパ
実験的要素が強い印象があるが、構図を意識したカメラワークが素晴らしい映画。二人の男が歩きながら会話をする。カメラは二人の正面を見上げる位置から移動撮影。すると別の声が入る。二人の姿を支点にカメラは上昇し部屋の奥にいる声の主を二人の男の真ん中に収める。その次は娘の部屋での会話をカメラが捉え、ゆっくりと寄ってゆく。寄り切ったとき、会話する二人の男女は画面の左側に配置され、、たと思ったら右側にある鏡に給仕係が登場し、去ったあとに二人を真ん中に収める。という具合に他にも多々見受けられる長回しの中で的確な構図を作り出すカメラワークが実に面白い。この作品は『エレメント・オブ・クライム』『エピデミック』に続くヨーロッパ三部作の1本ということらしい。内容はともかく、どうもトリアーは観客がドラマにのめり込まないようにしたいらしく、後の作品もなんらかの方法を用いて冷めた視点を強要していますが、この作品ではオープニングとエンディングの催眠術がその役割を担っているのだと思う。それでものめり込みそうになると、常に先回りするナレーションが邪魔をするという二重構造。この監督の映画は彼の思想的なものに目がいきがちだが、ユニークで大胆な仕掛けにこそ興味をそそられる。
[ビデオ(字幕)] 7点(2006-12-22 16:06:25)
15.  夜と霧
ナレーションは戦争のこともナチスのことも語らない。レネの短編映画『ヴァン・ゴッホ』や『ゴーギャン』がナレーションではゴッホとゴーギャンの表面的な事象しか語らずに彼らの内面に迫ったように。そしてゴッホの絵画、ゴーギャンの絵画のモンタージュでゴッホ、ゴーギャンその人物を浮かび上がらせたように、ひたすらアウシュビッツの残酷な記録の断片を紡ぐ。そのモンタージュ効果によっておぞましきイメージを浮き上がらせ、さらに現在のアウシュビッツを映すことで風化させてはいけないという明確なメッセージを発している。ただのドキュメンタリーではない。映される映像とそこに被される言葉の巧みなコラボレーションのほうにもぜひ目を向けていただきたい。
[DVD(字幕)] 7点(2006-09-25 13:43:44)(良:1票)
16.  汚れた血
アメリカ女が出てきた時点で、これはフランス映画とその中で誕生するヌーベル・ヌーベル・ヴァーグの物語と解釈してしまった。以下、私の妄想的解釈。アメリカ女=アメリカの映画会社のプロデューサー。謎の病気の蔓延とハレー彗星接近による世紀末的状況=フランス映画の低迷。ワクチンがあり、彗星もいずれ通りすぎるので低迷は一過性のもの。殺された男は偉大なるヌーベル・ヴァーグ?息子は父と同じく手が器用=ヌーベル・ヴァーグを引き継いでいる。息子の名前はカラックスの分身・アレックス。新たな世界へはばたきたいアレックスは資金調達のために父の仲間と共にある計画を実行する。盗み=引用?仲間はアメリカ女を恐れる男とスタイルに拘る男と謎の女。やっぱり出てきたガラス張りのアジトは映画そのもの。今度の“新しい波”はとてつもないスピードを見せつける。腹話術=直接言葉で伝えない?アレックスは死ぬが映画は死なない。疾走する映画は女に受け継がれた。頻繁に出てくる髭剃りのシーンは?パラシュート降下は?さぁ、みんなで考えよう!って適当なことを長々とスイマセン。でも、透き通るような美しさとはまさにこのこと!と思わせる二人の女優を見るだけでも価値があると思います。女優を美しく撮るって重要なことです。
[DVD(字幕)] 8点(2005-07-12 16:12:25)(良:2票)
17.  欲望(1966)
放浪三部作の始まりはロンドンを舞台とする。音楽とファッションとアートを背景にジェフ・ベック、ジミ-・ペイジの在籍時のヤードバーズのライブという貴重映像を盛り込みながら(けしてピルグリムさんと月麻呂さんのお仲間に入れてもらおうとして書いたわけではなく..ってこともなく..笑)、ゴダールのソニマージュにも通じる音楽と映像の融合からなる独特の世界観を作り上げたアントニオーニの真骨頂。あると思っているものが実は無い。幻想や夢や勘違いといったものではなく、存在するもの全てに存在の可能性を問うている。そんなこと言い出したらサスペンスなんて成立しない。しかし、そんなことお構いなしにストーリーを消し、最後には主人公まで消し去る。この映画自体がもともと無かったかのように。衝撃的です。『マトリックス』の原型はコレだった!! ウソですけど。
[ビデオ(字幕)] 7点(2005-07-05 16:34:32)(笑:1票)
18.  
あるとき突然、女は愛の喪失に気付く。男は納得のいかないままこの告白を受け入れざるおえないのが常なのだが、この作品では、納得がいかないまでも、一応の理由が語られる。女がその心情を言葉で説明するラストシーン、、これさえなければと思った。同じ目にあっているが故に、ちゃんと納得したいというアントニオーニの願望がついつい出てしまったのだろうと思った。それでも男と女のすれ違う想いが痛々しくもリアルだと思った。、、、と、以上がずっと昔に見たころの感想。点数にすると5~6点てとこかな。でも他のアントニオーニの作品を何本か見た今はこの作品の見方も変わっている。いくらマストロヤンニやジャンヌ・モローといったビッグネームが出ていようとも、人物を追ってばかりじゃこの作品の旨みはわからない。女が自らの愛の喪失に気付く前に、背景は彼女の心情を映し出していた。ラストの説明は観客に向けたものではなく、あくまで夫に向けたものであって、観客に見せたのはその後の悲しすぎる言葉のすれ違いにすぎない。あぁ、やっぱり痛々しくてせつない。
[ビデオ(字幕)] 7点(2005-07-04 17:56:30)(良:1票)
19.  42丁目のワーニャ
チェーホフの「ワーニャの叔父」の現代版舞台劇を演出家アンドレ・グレゴリ-が公演未定のままニューヨーク42番街の古びた劇場で4年も稽古を続けていました。その稽古風景を収めたのが今作。と、書けば演劇稽古のドキュメンタリーのように聞こえますが、たしかにそうなんですが、通し稽古を映しているので舞台をそのまま映画にしたような作品に仕上がっています。ただ、やっぱり稽古なのでみんな私服です。なので、劇(稽古)と現実の区別がほとんどありません。皆が劇場に集まり稽古前の談笑が少しあってそれらを映しているのですが、カメラが背後に廻ると演出家と見物人たちがマジマジと見ており、既に通し稽古が始まっていることに気付かされるという演出が心憎い。いつのまにか劇に見入らされ、見入りながらも稽古をしている俳優を見ている、というなかなか類を見ない映画です。ルイ・マル監督の遺作、ヌーベルバーグを代表する監督らしい遺作かもしれません。それはそうとジュリアン・ムーアは演劇出身だったんですね。彼女に限らず、みんなウマイ!
7点(2004-11-25 12:33:13)
20.  夜霧の恋人たち
アントワーヌ・ドワネルはトリュフォーの分身から完全に独立し、男の情けない部分を全て兼ね備えた青年に成長しました(笑)。やること成すことどんくさいのに、当の本人はいつものほほんとしている。トリュフォーといえば、男と女の恋愛ドラマをサスペンスフルに仕上げるのがうまい。そしてこの作品も、ストーリー自体はけっこうサスペンスフルなのだ。しかし、お気楽人間ドワネルがそれら全てを消し去る。まるで往年の喜劇役者のような振る舞いを素でやってしまうドワネル君の前では、サスペンスな展開も彼を素通りしていく。きっと『柔らかい肌』の主人公がドワネル君なら殺されることはなかったでしょう(笑)。『黒衣の花嫁』の5人の中にドワネル君がいてもやっぱり殺されなかったに違いない。彼だけまんまと助かっているはず(笑)。トリュフォーも楽しんでつくったに違いない。悲劇を喜劇に変えられる男、苦を知らない男、他人の家族に愛される男、..トリュフォーの理想とする人間なのかもしれない。
7点(2004-04-21 13:54:52)(良:1票)
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