1. 八日目の蝉
《ネタバレ》 これは幼いころの一時期、自分を誘拐した女に育てられた記憶を持つ主人公(井上真央)が、そのせいで屈折した関係しか築けなかった実の両親との、和解に至るまでの死と再生の物語だ。その和解は映画の最後になってやっと訪れる。自分を誘拐した女(永作博美)との幼い記憶を離島に訪ね、そこで女が別離の瞬間までいかに自分を愛してくれていたかを、はっきり確認できて初めて可能となる。過去を取り戻し、過去を肯定できて初めて、同時に、自分も両親(特に母親)を憎んではいなかったと言えるようになる。そして自分も彼女(永作)や島の人々が自分を愛してくれたように、やがて産まれてくる自分の子をも愛せるという自信を持つ。なぜ死と再生の物語かというと、こうしてはじめて主人公は死を選ばず、八日目の蝉になっても、一人で新しい世界を見ようという気になれたのだから。エンジェルというカルトやライターとの関係など、あまりすっきりとしない面もあったが、それらを差し引いてもすばらしいラストだった。永作の演技が光っている。すべてが明らかになり、最後に中島美嘉の歌が鳴り響くのもよい。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2014-07-21 16:12:42)(良:1票) |