1. ラスト サムライ
風俗考証がなってないとか、史実と違うとか、細かいところは「これは日本で製作された映画ではない。ハリウッド映画だ」ということで潔く諦める。が、それにしてもこの映画はちょっと…。片一方がサムライで、片一方が官賊というのはストーリー製作上のご都合主義でしかないし、そんな勧善懲悪でサムライを語られても説得力がない。サムライとサムライのぶつかり合い、これならば映画化する価値があったと思う。明治政府の中心人物にもスポットを当て、そのサムライ魂を描いていたら、もう少し点数高くできたのだが…。もちろん、政府高官になるにしたがって卑属に落ち、自分の権力を守ることに汲々とした人物はいた。だが、新国家建設に燃えていた明治初期、官側にもサムライ魂を持った人々がいた事実を忘れてはならない。また、当時の歴史背景に目を向ければ、日本政府は列強の食い物にされぬよう、富国強兵策に必死だった。もし内戦続きだったら、日本はそれこそアメリカあたりの植民地になっていたかもしれず、それを無視した勝元は狂信的な国粋主義者にしか見えない。民間人による近代的な軍隊の創設を目指した日本政府が、武士階級にのみ与えられる特権(武器を持たせる)を認められなかったのもムリはなかったのでは?勝元は、武士の力だけで列強諸国から日本を守りとおせると思ったのだろうか?更に、官軍側悪役の名前が「大村」という名前だった。大村といえば私は素直に大村益次郎を連想するし、映画の大村の人物設定は明らかに大村益次郎を意識している。大村益次郎は、日本の軍隊に近代化に貢献し、狂信的な国粋主義者達に暗殺されてしまう人物であるが、戊辰戦争のとき、江戸の町が戦禍に巻き込まれないように充分に気を遣って作戦を練ったというほどの知略の人。映画の大村とは似ても似つかない。架空の物語だと言うのであれば、特定の人物を連想させる名前は使わないで欲しかった。ストーリーは悪かったが、渡辺謙の演技はホントに良かった。セリフは少ないけど存在感たっぷりの真田広之も良かった。小雪も(役の設定に問題はあったが)良かった。トム・クルーズも頑張っていた。というわけで、役者さん達の熱演にこの点数。 5点(2004-02-24 00:30:56)(良:3票) |