1. ラヴ・ストリームス
《ネタバレ》 80年代の世界映画史に残る一本として、初見の20代と比べて著しく私の中で評価が変わった作品。個人的には監督カサヴェテスは初監督作品「アメリカの影(’59)」からテーマとして愛のディスコミュニケーション・断絶を主題として掲げてたんじゃないかな、って気がしてるんだけど、実質的な遺作となったこの作品は彼の作歴上「話の通じなさ」という点で極限まで行っちゃった感が今回の鑑賞でもろ響いたのでこの点数。愛を描写した作風で人気のある作家主人公が実は人を愛する事に不慣れで、人との関わりを持ちたくないと思っている皮肉。そこへ夫と離婚し、娘と別れたばかりの姉が転がりこんでくる。肉親間の愛情で癒され埋められたであろう傷は、お互いのプライドからますます増大し精神の崩壊まで招いてしまう。嵐の夜若い男と出てゆく姉を主人公は止めることもできない。 インタビューで監督カサヴェテスは制作のきっかけを苦しい時に支えてくれた愛妻ジーナ・ローランズの為、と述べてるけどこの壊れっぷりは感服する。私Nbu2、初見の若い時は馬鹿じゃないかと笑ってみてた簡易動物園の下り、そして有名な夢の中のバレエシーン。「常人では思いつかない様な行動心理に至ってしまっている」凄み、それを表現しているジーナ・ローランズの演技力だったんだよな。こんなシーン、そりゃメジャー会社傘下の作品には描写できない。そしてもう一点印象的だったのは、夫カサヴェテス作品において愛妻ローランズは全く女傑ではなかった事。「外見は空威張り、だけど内面はシオシオ」な二面性が若い時分には見えてなかったのよ。最大のヒット作「グロリア(’80)」だって銃持ってマンハッタンを歩き回る印象が強かったけど、年取って印象的なのは子供をかくまったモーテルの一室で一人煙草吸ってドナイショとしてるシーンだもんね。今年2024年も年の瀬近づいている中数多くの映画関係者が逝去しましたが、私の映画人生において大きな影響を及ぼした「アメリカインディー映画界のミューズ(女神)」、今年8月に天国に向かっていった彼女への遅ればせながらこれが追悼レビュー。私の人生に彩を加えてくれてありがとう。 R.I.P Gena Rowlands(1930 - 2024) [映画館(字幕)] 8点(2024-12-15 18:18:48)《新規》 |
2. ラストソング(1994)
《ネタバレ》 神田神保町シアター「忘れられない90年代映画たち」特集で約30年ぶりのスクリーン鑑賞。「青春期に追い続けた夢と希望、友情とその破綻」というベタな題材なんだけど、この度再鑑賞して感じたのは「ちゃんと映画してる」点。本木雅弘も吉岡秀隆、安田成美の演技もいいし、ロックンロール=社会への反抗の象徴としてちゃんと劇中で活用されている点も好感度アップ。吉岡が尾崎豊ばりに熱唱する表題歌。破綻への鎮魂歌としてラストにふさわしく、ちゃんと画竜点睛で終わってるのがよい。最大の貢献者は後に名作「眠れる森('98)」「氷の世界('99)」を書いた脚本:野沢尚の手腕。何度も書くがこんなベタな内容をちゃんと鑑賞できる話にした、いい仕事だよ。にも関わらずこうも忘れさられた作品になってしまったのは、まずTV会社や広告会社がバブル期に企画したものだった為、同じ時期に作られた「バブルを楽しめ(実際は崩壊してて気分はそれどころではない)」的な作品群に埋もれてしまった事、合わせて先にロック+青春譚である長崎俊一「ロックよ、静かに流れよ(’88)」+男闘呼組のインパクトが強すぎて、二番煎じ感があった為なんだろう。しかも2024年現在、未だ配信化もDVD・ブルーレイも無し。次にこのレビューにコメントが追加されるのは何年後になることやら。機会がありますれば。 [映画館(邦画)] 6点(2024-07-15 10:20:06) |
3. ライド・オン
《ネタバレ》 ジャッキー・チェンの新作は「原点回帰」が感じられる快作で、ゴールデン洋画劇場で彼の映画を楽しんでたファンにとっては満足の出来。始まってすぐに流れ出す彼の名演集で、観客には主人公ルオ=ジャッキーの経歴が重なってくる。度重なる怪我で生命の危機にもあった。子供との断絶、という劇中の設定も実生活で家庭を省みなかった事を心から反省している、とインタビューで述べた彼の心情の投影なんだろう。そんな苦境にあっても彼はファンの為に身体を張り続けた、そしてこれからもショウビジネスに携わるんだという決意というのか気概が見受けられる点、我々はわかってるから胸にくる。でもって「いかに自分をかっこ悪く見せるか」というジャッキー映画王道のドタバタなコメディ演出。動物をバディとしてる事もあってお約束がてんこ盛りなんだけど、もう老成の域にまで達した感があり楽しい。あと個人的には彼自身の演技力、特に哀愁の醸し方が抜群に上手くなった気がする。...映画の感想としてはここまで。そしてもう一点強調したい。私があえて吹替え版で鑑賞したのは昨年声優業を引退された石丸博也氏のたぶん、ラストジャッキーになるから。80年代の映画吹替えのフィックスとして石丸氏=ジャッキーは最高の贅沢であった。日本でジャッキー映画が大流行したのは彼の演技力が付与してたのは間違いない。凄いのは石丸氏の演技が愛嬌が目についた青年期~苦悩が伝わる老年期に至るまで、正にジャッキー本人いやそれ以上なのではないかという印象を何十年にもわたって映画ファンに提供し続けた事。(だから「ザ・フォーリナー 復讐者 (2017)」などは吹き替えでしか見れんかった) 多分石丸氏も吹替えをなさっていてご自身と重なるものがあったのかな、昔の様な声とは程遠いかもしれないけど枯れた味わいの良さというのか、スクリーンで堪能しました。という事で兜甲児もいいけど、ジャッキーもね。 この後ジャッキー映画を担当なさるであろう声優さんにエールを送りつつ、最大限の感謝を石丸さんに贈りたいと思います。んとうに、有難うございました! [映画館(吹替)] 7点(2024-06-03 20:29:13)(良:1票) |
4. ラスト・シューティスト
《ネタバレ》 私は(役柄上の擬態かもしれないが)俳優ジョン・ウェインの「過度な正義感」ぶったキャラクターが好きではない。にも関わらす、この映画は映画史史上最高の「役者人生の幕の降ろし方」を実践できた稀有な例なのだと思う。癌によって余命いくばくも無い名ガンマンが訪れるその町は多分、本名マリオン・ロバート・モリソンにとっての余生を過ごす為の理想の生活を具現化したもの。友が居て、愛した女性が居て、未来を託す若者が居る。だが人間モリソンなどはどうでもよいとばかりにガンマン、ブックス(の名声)に忍び寄る暗い影。この映画における敵役は彼の人生における障害弊害のメタファー、隠喩なんだろうな。(すげぇネタばれ):彼がやられる様が1.病で体力がもたない+2.若者を人質に取られる、で3.背後から打たれるという「どんだけジョン・ウェインに配慮してんのよ」的あざとさなんだけど、それを許してしまうだけの制作陣/役者の協力の度合いが私にとって好印象なので、この点数。特にローレン・バコールの美しさに+1点。 ...最近TSUTAYAの「発掘良品コーナー」にラインナップされたので機会があれば。 [地上波(吹替)] 7点(2020-05-17 19:52:39) |
5. ラムの大通り
《ネタバレ》 同じアンリコの名作「冒険者たち」が輝かしい夢・青春へのレクイエムとするならばこの映画は見果てぬ夢を愚直にまで追い求めた男のエレジーか。禁酒法の時代にカリブ海で酒の密輸に関わっていた男が無声映画で見たヒロインにあこがれ、ふとしたきっかけで彼女と出会い恋におちる。ここまでならこの映画は4点くらいの評価でしかないのであるが、この点数は何と言ってもラストのシークエンスに至るまでがとても良く出来ている事に対して。彼女と別れ投獄、幾月が経った後釈放され(すでに禁酒法は終わっている)酒を飲んだ後入った映画館で見た彼女の歌(「愛の歓びはつかのまの~」)。正直バルドーには演者としての魅力をこれまでは感じていなかったがこれで少し見直した。でもそれ以上にやっぱり良いのはL・バンチュラ。この人「哀愁」の醸し方に関してはベルモンドやドロンにない品の良さを感じる。 [映画館(字幕)] 7点(2010-08-28 23:48:58) |
6. ラヴソング
このサイトには無いが、同じレオン・ライを主演にした「都市情縁」も含めて香港映画界でも珍しく「切なさとか儚さ」を感じる彼の映画が好きだ。この映画のツボはなんといってもテレサ・テンの歌。中国からの独立を掲げ、民主自由化を公言していた台湾人である彼女の歌は当時の中国では発禁もので、中国の人々は海賊版テープを聴きながら自由への憧れを感じていた、というバックボーンがあるという事がわかるとこの映画、より一層楽しめるのではないかと。この映画で香港アカデミー賞助演男優賞をとったエリック・ツァン(映画プロデューサー、コメディアンとしても有名)、実は代役であったというのは意外な話。あとマギー・チャンのマックの制服姿、あれは微妙だなコリャ。 [映画館(字幕)] 7点(2006-05-21 11:13:34)(良:1票) |
7. ラルジャン
映画史上最高の遺作の一本、であると言い切っちゃおう。 [映画館(字幕)] 10点(2006-04-17 19:13:40) |