1. ライフ・イズ・ビューティフル
映画自体は、非常に楽しめた。俳優も、音楽も、映像も一級品。ただ気になるのは、アウシュビッツがあまりに「お気楽」に描かれている点。父親のおかげで、収容所は、ジョズエにとって、終始「ゲーム」の世界であり続けたのだろうと思う。アウシュビッツは彼に何のキズも残さなかった。それは、幼児期の楽しい一体験の過ぎない。ところが一方、ジョズエの見えない所では、数多くのユダヤ人が虐げられ、殺されていたはずである。しかし、その「裏の世界」が、ほとんど感じられなかった。直接的に体感できるのは、せいぜい、主人公の死ぐらいだろうか。それさえも、ラストの母親との再会で昇華されてしまうのだが・・。アウシュビッツにせよ、何にせよ、歴史的に重大な問題を扱うのは、作り手にとって、かなりの慎重さが要求されるものだと思う。なにより、アウシュビッツは、すぐれて「現代的な問題」なのだから。この映画を、フランツ・ファノンが観れば、何と言うだろうか。 7点(2002-03-09 14:56:05) |