1. ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
《ネタバレ》 作りは非常に重厚、人間ドラマの厚みについても(前半の説明的な展開を除いて)申し分なし、ベイダー卿の冷酷な強さの描写も文句なしにかっこ良かった(ジェイムズ・アール・ジョーンズが引き続き担当していたのが本当に嬉しい)・・・一言でいうと、この『ローグ・ワン』という作品を「単独で」評価するなら、非常に良くできたSF映画と言えると思います ・・・しかしそれでも、あるいはむしろそのような「重厚さ」のゆえに、僕自身は「ルーカス時代の6部作」を基準に考えた際に、ある一点だけについては、ある種の「違和感」を拭い去れません。 それを一言でいうなら、ルーカス時代のSW作品に存在した、ある種の「軽さ」が、この『ローグ・ワン』には(そしてもしかしたらエピソード7にも)欠けていると思えてならないのです。 その「軽さ」をより詳しく言うと、「おとぎ話・ファンタジー的な軽さ」ということになりかもしれません。 僕自身の感想を言うと、ルーカス自身が制作に関わっている時代のスターウォーズを仮に「正典」と捉えるなら、「主要なスターウォーズらしさ」の一つとして「汗臭さを全く感じさせない非現実感」が挙げられると思うのです。 そのような「非現実感」を、必ずしも評価しないファンがいらっしゃるのは事実ですし、それを否定するつもりも全くありません。 ただし個人的に、今現在もこれだけのファンをスターウォーズが惹きつけ続けているのは、今自分たち(観客)が生きているこの時代や周囲の環境からは全く隔絶した、人間の体臭を全く感じさせない浮世離れした物語があるからこそ、という側面もあると思うのです。 それを言い換えるなら、観客が思い思いに「遠い昔、はるか彼方の銀河系で」の物語を、好きなように想像して鑑賞することができるのも、この「非現実感」があってこそ、という気がするのです。 そのような(いちSWファンである僕自身から見て決して見過ごしてはならないと思える)軽さが全く感じられないこの『ローグ・ワン』については、「エピソード3と4をつなぐ重要なピースの一つ」という意義や、あるいは作品自体の力の入りようとクオリティの高さを決して認めない訳ではありませんが、それでも「これが本当にスターウォーズか」と言われると個人的には素直に「そうだ」と断言できないものを感じさせるのです。 それは(非常に厳しい、あまりフェアではない指摘であるのは承知の上であえて言わせてもらうと)ラストシーンの、それまでさんざん重厚な(まるで現代の中東における対テロ市街戦を彷彿とさせるような)「リアル」な戦闘を描写した上で、デススターの情報を受け取るレイア姫が登場するシーンに顕著に表れていると思うのです。 このたったワンシーンに僕が感じた違和感を、ある種の例えで一言で言うなら、「それまで夏目漱石ばりの純文学を読んでいたつもりだったのに、最後のワンシーンでその作品がハリー・ポッターのようなファンタジーだったことが判明した」といったものです。 それなりにスターウォーズを追いかけて来たいちファンとしては、このような「ルーカス版SW」が余り注目してこなかった「汗臭さ」や「リアルさ」を追求するのももちろん意義のあることではあるが、それでもその「ルーカス版SW」が持っていた「ファンタジー的軽さ」の要素は、できるだけ疎かにせず保持して欲しいと、どうしても思ってしまいます。 [映画館(字幕)] 8点(2016-12-25 01:18:53)(良:3票) |