1. 嗤う伊右衛門
《ネタバレ》 私は原作を読んでいたので何とかなったが、映画で初めて本作にふれた人は、はたしてストーリーが理解できただろうか。原作に忠実すぎ、話が複雑でわかりにくかった。もっと本質に絞ったシナリオのほうがよかった。 作り手も俳優陣も頑張った力作だとは思うが、基本的なところで矛盾をかかえていた。それは、最後のドンデン返しを大事にするなら、そこに至るまでの伊右衛門と岩の心理はあまり描いてはならず、逆に最初から伊右衛門と岩の愛を描けば、最後のドンデン返しは犠牲にせざるを得ない、というアンビバレントな図式である。本作では、そこのところジレンマの処理が中途半端で、チョロっと愛情が描かれ、そのぶんだけラストの驚き・発見が矮小化されてしまっていた。いずれかに徹するべきだったろう。 あと、音楽、梅のキャスティングに問題があった。ほんとうは、梅も女性としては魅力的でなければならなかった。 なお、ラストの東京俯瞰が蛇足というのはまったく同感。あれで作品の格がワンランク落ちた。 5点(2004-06-20 01:08:00)(良:1票) |