1. ニュー・シネマ・パラダイス
この作品には「劇場公開版」と小1時間長い「完全版」とあります。当初劇場公開版を観て、伏線の中に「???」と思ったものがあり、完全版を観て「納得!」しました。といっても小1時間長いことが劇場版の良さを否定しているのではなく、完全版が現在の観客の我慢を越えてしまっている事が問題でもあると思われます。 この作品は欧州(決してアメリカではありません。似ていますが)の問題を扱っていることも分かってほしいのです。一つ目は「階級社会」が依然として残っていることです。アルフレッドが、トトを可愛がり、想うが故に行った様々な事、映画技師としての技術、エレナとの引き裂き(これは完全版にあります)、アルフレッド自身とトトとの交流断絶(これにはトト自身も積極的に交流しようとはしなかった)など。それは、個人主義と階級主義(今でも立派に存在するそうです。イギリス人の偉い人・sirの称号を持っている人に伺いました)に苦しむ人たちが、逃れよう、愛しい人を護ろうとする現れか!? この映画が、フランスとイタリアの合作である(単なる資金の問題というよりも)ことも全欧州の問題であり、決して南イタリアだけの問題ではないという現れだと思うのです。 これって、父が可愛い息子に注ぐ「愛情」「乳離れ」それに伴う成長の「自立」なのではないでしょうか! 最後のシークエンスにあるキスシーンフィルムは、この映画の本題といえます。つまり、このキスシーンそれもかつての映画の映画の切り張りで構成されるこのシーンが、メインなのです。このシーンをほくそえんで、泣いて、笑って、怒って観ることが出来るように、それまでのシークエンスがあるのです。映画ファンのための映画のように言われるのは、たまたま主人公が「映画監督」であったからに過ぎないはずなのです。でも、それはそのシークエンスに入る時、ローマに帰ったトトが、上映技師に言われる一言に象徴されるのです。「また素晴らしい映画ですね」と。後は、監督が映画音楽の変調を、観客の感情の高まりへと昇華させるために曲調が変わるのが、観客にも楽しめたことと思うのです。曲もいいです。 10点(2002-08-17 09:58:21)(良:1票) |
2. カサブランカ
時に名作は、後年の作品に多大なる影響を与えるものです。この作品から多くの映画がオマージュを捧げています。演出家だけが分かるような僅かなモノかもしれませんが・・・。作品の中でリックは作品中「女々しさ」を出しまくっています。これでもかぁって。そこには男という生き物のダラダラ感、未練タラタラ、しつこさ、etc、格好よさなんてありゃしない! だから、リックが動き出した時、それがある意思の基に動いていることが、観客に伝わった時に、この作品が観客と共にダイナミックに動いて行くのです。そこには模型の飛行機も、今のCG作品と何も差を感じないはずなのです。(CGにしても模型にしてもあくまでも作品の再現性を補助するためのもの) この作品と昨今のビンラディンを重ねている発言がありましたが、それに関しては、当時のアメリカの状態と今のアメリカの状態を比べてもらえれば分かると思います。 ともかく、21世紀の今と60年前の作品とをクリエィティビティ以外の部分で、比較するのはなんだかなぁ? と思うのです。当時の相手を想う寛大さを観る、そして今と変わらない部分を見つけるのが古い映画を鑑賞する秘訣だと思います。 その部分を抜き出して、今の文明という服を着せるのが「リメイク」だったりするのですから。結局ハリウッド映画でも興行成績が良くて、評判も良い映画って、昔の映画の焼き直しと呼ばれることが多いのですから。 10点(2002-08-17 08:49:13) |
3. 巴里の女性
メロドラマ、喜劇なし、チャップリン出演も1カットだけと、影の薄い作品ですが、珠玉の名作です。後年すれ違い映画(哀愁、そういえば日本でも孫コピー映画があった、マチコ巻き?)のはしりです。人の人生は偶然と勘違いの産物ですね、そう納得してしまう%2C形而上的な哀しいメロドラマです。長年チャップリンの相手役をしていたエドナの最初で最後の主演作品。この作品を観ると「画質」ってなんだろうと思いました。「イントレランス」も同様ですけれど。 10点(2000-12-26 05:34:08) |
4. マイ・フェア・レディ
Mrs.Sozeさんに同感です。蓄音機のラッパのようなもので発音を練習するヘップバーンは、愛おしさを覚えます。 8点(2000-12-26 05:24:15) |
5. 駅馬車(1939)
ジョン・ウェインが初々しい作品。J.フォード監督が後年量産した西部といえばあの風景といえる初期の作品。馬車がカメラの上を走って行くという手法も劇的。ジョン・ウェインは20代からジョン・ウェインだった。この言葉の意味を知りたい人は、アメリカ人に聞いてみてください。年配の方なら上手に説明してくださると思います。(笑) 9点(2000-12-26 05:21:33) |
6. 風と共に去りぬ
1939年の作品でその年は、当たり年です。不朽の名作は、形を変えてリメイクされたり他の作品に大きく影響を与えながら面々と続いています。この風と共に去りぬは、数少ない「リメイク」が出来ない作品。50年後の’89年にアメリカのHBOが作製した「幻のメイキング 風と共に去りぬ」は、セルズニックとリーの関わりを縦軸に番組構成を組んでいるが、それを見て欲しいと思います。勿論作品を観た方ですが。映画やTVの裏を知る必要はないと思いますが、作品の重厚な出来や何故という疑問が解決すると思います。 スカーレットに憧れる数多な女性もレッド・バトラーが居ないとダメでしょう。アシュレーもうっとりとすることだし、カラー初期の映画にしてカラー映画最高峰となった映画だと思います。他の映画や最近の映画でも「モノクロ」で観ても大丈夫でしょうが、61年前のこの作品だけは「カラー」で大きなスクリーンで観て欲しいものです。 10点(2000-12-26 05:15:17) |
7. スミス都へ行く
'39年当時、太平洋戦争直前にアメリカで公開された映画。実に頼りない足場で上院議員になってしまったスミス議員。同じ上院議員は元父の同僚のペイン議員。田舎者の青年がワシントンに着てトンチンカンな言動を起こす。やがて、地元に誘致されるダム建設は、地元の政商の企み。使われているのはペイン議員。スミス議員は、良心的な地元の人に対して議会から呼びかけるが、政商の力により届かない。かえって不正を働いたと告発される。スミスは議会から懇親の演説が始まる・・・。今、通常国会で舟を漕いでいる御仁や水をかけて見栄をきる松●健四郎議員に是非観て欲しい。何故、アメリカが強いのか。今回の大統領選挙があのようにもめても、もめることが必要と言わんばかりに「議論」を重ねるのか。アメリカ人が観る「夢物語」は現実の中にも生きているということ。日本にはそのような映画や小説などがありますか?私を含めて問いかけます。現実の中に「夢物語」を見ることを笑っているのは「楽しいですか?」と。それも映画の中に画いてあります。 10点(2000-12-26 04:59:59)(良:1票) |
8. 或る夜の出来事
昨今は20世紀のまとめをしている時勢ですが、今世紀初頭に発明された映画は、一品です。キャプラスクの私は、3指にこの作品を挙げます。R.リスキンのウイットな台詞をイタリア移民で苦学生だったキャプラが、アメリカの良心溢れるペーソスと垣間見える現実、それも「何とかなるさ」という雰囲気は、両大戦に挟まれた当時を反映するものと思います。ミュージカルも良し。されどストーリーとしては一品です。 10点(2000-12-26 04:42:15) |