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1.  アイアンクロー 《ネタバレ》 
 ケヴィン・フォン・エリックが好きでした。  身体的には細く小さいけれども、イギリスの貴公子と見まごう気品のある細い顔立ちに鍛え上げられた身体。そしてあの過酷で危険なリングに常に裸足で参戦する、気品と野性味が入り混じった唯一無二の存在で、ヨーロッパ出身のレスラーなのかと勘違いしてました。   本映画で米国で一家でやってたのがわかったのと、誰かが亡くなって日本のTVに登場しなくなってなぜなのかと思ってたら、こんな大変なことになってたのか、というのを映画で知った感じになります。   なのでケヴィンが主役になったのは私的には非常に嬉しかったんですけど、訪日の話がケリーが一人で行ったみたいに描かれてるのがちょっと違うなと思ったのと(タッグでタイトル取ってたはずだし(混乱))、あと、ケヴィンが髪型を似せて裸足なのは良いとして、ちょっと身体は大きいし骨格ががっちりしすぎててイメージがちょっと違うかなーと思いました。   あと個人的にはアイアンクローは好きなので(めっちゃ真似した)タイトルになってるのは良いんですけど見せ場があまりなく物足りなかったのと、あと一家の中で何故ケヴィンだけ裸足でリングで上がってたのかとか、興味深い深掘りしてほしいエピソードがいろいろ足りない印象で全体的に物足りなかった感じでした。   とはいえ昔の好きだったレスラーの話がわざわざ映画化されたのは嬉しかったです。
[映画館(字幕)] 6点(2024-04-19 12:45:00)《新規》
2.  オッペンハイマー 《ネタバレ》 
 IMAXにて鑑賞。音響はド迫力でした。   本映画関連で大昔にNHKのドキュメントがあり(マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪)、ニューメキシコのすさまじい実験の映像とか、赤狩りの対象になり地位から追われた話は何となく知ってました(最近再放送)。   本映画で個人的に一番興味があったのは  ・オッペンハイマー氏が核兵器反対に転じたきっかけは何か?  でした。期待しつつ観たのですが、それっぽい要素は丁寧に漏らさず取り込まれてましたが、巧妙に恣意的に時系列を混乱させごまかされてるため、結局よくわかりませんでした。   たとえば、有力候補で「終戦から数カ月後、広島・長崎の状況視察者の報告会が開かれたそれを見て改心?」という説があり、その場面もあるのですが(直接映像は悲惨すぎるため映画中では見せられないのですが)、一方、氏の主観的場面で講演時にフラッシュバックで人が焼き尽くされる映像が出て衝撃を受けるんですけど、順序が入れ替わっており、  ・論理的展開:報告映画を観る→それが印象に残って講演時にフラッシュバックをする ・映画の表現:講演時にフラッシュバックをする→報告映画を観る  て感じに、実に巧妙に順序を入れ替えた問題の焦点をごまかす印象操作がされてるので、なんだかなあと。   あるいはですね、核実験のすさまじい結果であの甚大な大量殺りく兵器に対する罪悪感を醸造したというごく人間的な説も考えられます。しかしオッペンハイマー氏の女性関係の節制のなさ罪悪感のなさ子供に対する無関心から、全然まったく氏に一般的な倫理観があるように見えずどうなんだろうっていう。まあ、(既婚ですが)以前付き合ってた女性の自殺への強い罪悪感の表現があるので「死」に対しては罪の意識があったのかもしれませんが。   で、実験結果で罪悪感を覚えたとすると、本映画では、爆発映像が大きな花火を打ち上げたかのような実に美しい絵柄で描かれ、時間差のすさまじい爆音と衝撃波でその恐ろしさが表明されるのですが(爆音・衝撃波のフラッシュバックは何度も出てくる)、これも恣意的に「被害」を隠ぺいした表現になっていて、もちろん実験は人を避難させてたと思うんですが、ドキュメントの映像などであるように、近隣の建築物がすさまじい爆風で吹き飛んでたわけですけれども、映画中ではそういう「被害」も一切見せないわけです。だから、人ではないけど、人の作った構築物への甚大な被害を見て、これは良くないと、見識を変えたのでは? と想像したくなるのですが、そのような映像も全て隠蔽される。   あと、世界初の核実験なので認識は甘く(実際、投下時の被害者数見積も大幅に少なく)、日焼け止めクリームにサングラスしただけでは到底足りず被爆してしまった人もいたと想像するんですが何も説明はなく(水爆実験の被爆者は大問題になりました)、本作で一番無神経な演出と思ったのは「実験が無事終わったらシーツを家に取り込んでくれ」てのがあって、映画では家が実験場からそれほど遠くない場所に見えたんですが(勘違い?)、そうすると外に干したシーツが被爆して大変なことになるのでは、ってのがすごい観ててヒヤヒヤした。爆発・炎・爆音・衝撃波等「目に見える」被害は認識するけれど、放射線被ばくなどの「目に見えない(聞こえない)」被害への認識がまったく甘く、無神経な演出をついついしてしまう、という昔ながらの悪癖は全然直ってないな、て感じでした。   あと話の終盤オッペンハイマーがアインシュタインと実はこんな会話をしてた、というネタ晴らしがされるのですが、個人的意見としては、  「アインシュタインはそんなこと言わないんじゃないかな」  と思ってしまった。実際どうなんでしょう。   そんな感じに、まとめると、前世紀最大の発明であると同時に最大最悪の大量殺りく兵器を作り出してしまった「罪」に真正面から対面しようとして、結局対面できずごまかした作品かなあと、私は認識した次第です。   で、今年のアカデミー賞は本作と、大量殺りく兵器に真正面から立ち向かう「ゴジラ-1.0」が同時に各賞を受賞するという、非常に面白い巡り合わせになっており、現実では各地で戦争が巻き起こり、禁止されてたはずの非人道的兵器もバリバリ投入され、最悪、核使用の危機すらあり得る状況で、このような映画が高評価になったのは、世間への問題提議としては良かったのかも、と思ったりなんかしました。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 6点(2024-04-11 13:21:51)(良:3票)
3.  哀れなるものたち 《ネタバレ》 
 ロングランしてて、アカデミー賞も各賞とってちょうどいい時間にやってたので観ました。  スタイリッシュな芸術的作品も割と好きな口です。   R18なんで大人向けの寓話的な作品という事で、まあ面白かったんですけど、個人的にはコメディっていってるけど、ある種、今のリアル過ぎ、生々しすぎじゃね?(寓話的幻想的作品が、現実以上に現実的に見えてしまう瞬間があるみたいな)という感じがして、ブラックユーモアとして笑わせようとしてるっぽいけど笑えないかな(苦笑)て感じでした。フェミニズム的題材作品としてみると、今だとちょっと古めかしいというか、時代設定が昔なので仕方ないかもしらんけど、せっかく寓話的ファンタジー作品をやるならもっと先端的にえぐったのをやってくれると逆に痛快で好きだったりしますが、そこまで振り切れてはおらず、差し引き今の現代的感覚と同じくらいになっちゃったかな、という感じ。   斬新さがちと足らんかな?   あとはなんだろう、下世話ですけど、アカデミー受賞作で話題になった女優が2~3年後くらいに濡れ場とかの多い汚れ役をやり出すサイクルがありまして、典型的なそういうサイクルの作品だなあと思ってしまったのと(とはいえビジュアルは素晴らしいのに当たって各賞も受賞して良かったなというところではありますが)、主人公が子供から現代的な女性に成長して魅力的になってくのは良いんですけど、最終的にたどりついた安寧の地が自らの力で勝ちとったものではなく  「たまたま運よく獲得できただけ」  なので、じゃあこの話が終わって平和な人生が続いてくかというと次の瞬間無慈悲な理不尽によってすべてを失っても全く不思議ではない状況で、ハッピーエンドと言えるのかどうなのか何とも言えん終わりだなあと思ったのと、最後のオチは割とベタなブラックジョークなんですけど、中盤で不遇な人々に対する慈悲の心は学んだのに、キリスト教的な、  「汝の敵を愛せよ」  は学習しなかったんだなあという、精神的に成長して大人的人格を身につけたけど、それには欠陥があったみたいな、そんなようなことを思いました。   あと、(映像作品での)フランケンシュタイン的映像表現があるせいで、画面が結構グロテスクだったりして、私はグロいのは苦手なのでちょっと受け付けなかったのと、話のメインの動機や道標が、性的快楽とか結婚とかになってるのが、今だとセックスレスとか、そもそも結婚自体しなくなってきている現状を踏まえると、生々しいだけで、ちょっと価値観が古めかしいかなとも思ったり。個人的には、ペドロ・アルモドバル監督の「私が生きる肌」くらいやってくれたら、ひゅー! って思ったんですが。   とはいうものの、ビジュアル(衣装や舞台)は素晴らしいし(私は主人公の服のパフスリーブが赤毛のアン(映画)のスタイルなので時代は1920年代前後くらいかなあとか思ってたのですが)、エマ・ストーンの演技も素晴らしくて総じて楽しませていただいた感じです。   ああ、あと、主人公が「世界を見る」というので、もっとアレコレいろんな場所に行っていろんな経験を積むのかと思ったら、意外とそんなにどこにも行かなくて、物足りなかったかな。旅程は船に乗ってアフリカの辺? にちょろっと立ち寄ってお金無くなって、パリに舞い戻って、家に帰ってきただけですからね(上映時間は長いんですけど)。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 7点(2024-03-25 13:44:10)
4.  ゴジラ-1.0 《ネタバレ》 
 初日に観ました。   正直まったく期待しておらず観る気はなかったのですが、ネット上の感想が非常に良くタイミングも良かったので。  国内実写版ゴジラは「シン・ゴジラ」が大好きで6日間連続視聴とかしてました。もうあそこまでのものはできないだろうと思ってました。  本作に至るまでにアニメ版(TV版、劇場版)海外版もいくつか出ており海外版ゴジラはCG表現などド迫力で良かったですしアニメ版もTV版はSF的な非常に凝った仕掛けが面白く、楽しませてもらってた感じです。   で、今回は日本の実写映画でまさに王道を突っ切るゴジラもので、いやおうなく「シン・ゴジラ」と比較されるだろう状況でどこまで行けるだろうか? って認識でした。   結論としては、すごい良かった。   科学考証は微妙にゆるくツッコミどころがなくはないものの、創意工夫にあふれてワクワクする展開はとても楽しかった。  湿っぽい人間ドラマも、もともとゴジラ映画の初代からそうなので、個人的にはまあこれもアリと思い、いちおう価値観なり設定は、二次大戦の事情をあまり知らない人にもわかりやすくかみ砕かれ、かつ現代的価値観に刷新されたストーリーになってて、ハッピーエンドになるのもエンタメ娯楽映画だからなー、というので普通に受け止められました。というかめっちゃワクワク、ハラハラして、最後うまく行って良かったー! と気持ちよく終われる映画でした。   以下、個人的に特に気に入った点を書きます。  ・水中ゴジラ!  その手があったか! とのけぞりました。  ・ゴジラは核兵器の脅威の象徴的怪獣であることをきちんと描いている  海外ゴジラって「核兵器」の表現が生ぬるいと思うんですよね。  あの恐怖と絶望と根本的に受け入れ不可能な決定的断然がしっかり描かれてました。  ・就業状況がホワイトで、あるべき理想の組織論として素晴らしい  二次大戦の教訓として一番受け継ぐべき事項の一つとして、とにかく組織のリーダーが無謀で無計画で、無茶な命令ばかり出すので現場の人間が何万人も死んだ、しかもその責任をだれも取らない、という悲惨な状況があって、それは二度と繰り返すまい、って話があると思います。  「シン・ゴジラ」や本作では、理想のあるべき組織が描かれるのが良いと思うのですが「シン・ゴジラ」で唯一気に入らなかったのが、ブラック企業的ブラックな就業状況を「がんばってる」と礼賛する場面です。それは倫理観が壊れてるだろうと。  本作では、まずきちんと計画を立てます。絶対とは限らないが少なくとも成功する可能性のある計画を立てる。この時点でスゲエって思うんです。作中「生還する可能性があるんだよな? それなら戦中よりましだ」って笑う場面がありますが、わりとマジメに切迫した問題だったりして、たまりませんでした。  あと、絶対確実に生還できるか問われて「未知の挑戦なので、やってみないとわからない。可能な限り尽力し生還できる可能性はある」と説得する場面が、とにかく素晴らしいと思いました。新しい試みをする時って、当然やってみないとわからないことがある。数多のリスクや危険があるが、いっしょに協力してやってくれないだろうか、と正直に説明する。そして有志のみを募って計画を実行する。  問題組織では、無茶な計画を立て、担当にリスクなど何も説明せず、たまたまうまく行ったら上の手柄にし、うまく行かなかったら担当者の頑張り不足と現場の責任にし、上の問題が全く問われない状況がいっぱいあった。  それが本作では、上の人間は素直に窮状を包み隠さず公開し、それでもやってくれる有志を募る。現場の担当と上の指示者が一体のチームとなって、それぞれ「今やれることをやって」問題解決する。そういう姿勢が描かれて、全俺が泣いた感じです。素晴らしい、そう、そうですよって。  ・技術者が技術者としての矜持を見せる  オチの部分が伏線があからさま過ぎるとか、さんざん煽ってひっくり返すんかとか批判されてるようですが、個人的には、ちゃんとした技術者だったら必ずそうすると思うんですよ。自分の仕事に誇りをもった本物のプロフェッショナルであるならば。戦時中様々な事情でちゃんとした仕事ができず無念なことがいっぱいあったと思うんです。あの時こそ、今度こそ、ちゃんとした仕事ができるっていう悲願の時だったと思うんです。なので回想シーンで主人公以前の着陸してきた特攻隊員の思い出話のエピソードなどあると良かったと思うんですよね。……てところが足りないと思うものの、私自身が、そういう技術者的仕事をしてるのであそこは非常に共感した部分でした。   そんな感じで、非常に良いエンタメ作品で、邦画もやるなあ! って思いました。  以上です。
[映画館(邦画)] 8点(2023-11-07 15:20:20)(良:3票)
5.  ジョン・ウィック:コンセクエンス 《ネタバレ》 
 観ました。  音響は非常に良い所でした。   なんかもう始まりから最後までひたすらカッコいいアクションシーン、アクションシーンの連続でカッコ良さが飽和してて「かっこいいかっこいいかっこかこかかかかかか」みたいな、溢れてて、もうはい、ありがとうありがとうございます、素晴らしい素晴らしい……って感じでした。   上映時間がインド映画並みに長くてどうかと思ったのですが(なので上映回数とか限られて映画館側としては難しいだろうなとは思いつつ)、最初から最後まで息のつかせぬ展開がずーっと続いてくので、特に長いという感じもしませんでした。それから、これだけたくさんのそうそうたるアクションスターの歴々が登場されたら、それぞれしっかりした見せ場が要るだろうという欲求を余すところなく盛り込んで、すべてもうがっつりやってくれて、やり切ってくれるので、もう大満足でした。犬もありましたしね。   あの、合流シーンなんか激熱で、おおおおおおおお! っと叫んでしまいました(心の中で)。  〆も、そうきたか! という感じで、とにかく良かったです。   いちおう、敵役の人がアマプラの「コンチネンタル」から来てるようなので、事前に観ておいた方がより楽しめるかとは思いました(私は未見でしたが、初登場なのに悪辣ぶりが素晴らしく、映画だけでも十分楽しめましたが)。   エンドロールの後もシーンがあるので観ていただきたいですが、エンドについてはまあ、そういう世界だしねえで私は非常に納得した感じです。   素晴らしい作品ありがとうございました。   そういや、今回、大阪が舞台になるので(例のハリウッド風・日本ではありますが)、日本に宣伝にやってくるはずが、ハリウッドのストライキで来られなかったのはちょっと残念でしたか。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 10点(2023-09-27 19:30:38)
6.  君たちはどう生きるか(2023) 《ネタバレ》 
 観ました。  環境はIMAXのほぼ最上級環境で。宮崎駿作品なら映像&音響の良い所で見とどけないといかんなと思い。   率直な感想としては、宮崎駿監督、まだまだやるなあ!(感嘆)て感じでした。   絵が最後まで息切れせずに割としっかりしてたのは、他の人に描いてもらってたんやねと知ったりしました。  本映画についてはだいぶ前に情報がちらっと出ていて「君たちはどう生きるか」の漫画版が出てちょっと評判になった後に実はそのタイトルで映画を作ろうとしている、という話が出て、そのあとその小説の映画版ではなくて作中の主人公が愛読してる本が『君たちはどう生きるか』だってだけ、という情報が出たりなんかしてたのを見ながら思い出しました。  『君たちはどう生きるか』と本映画の内容が合ってるかというとほぼ関係なくて、『君たちはどう生きるか』って卑屈と罪悪感と裏切りの話じゃん、てのに対して本映画だと主人公が初期の宮崎駿作品のようにとてもしっかり主人公主人公してて強い意志を持って行動していくので、なんかもう心根が全然違うわけで、まあ別物です。  まあ、終盤のあの人……が深読みすればそんなような心境の人と言えなくもなく、監督の心情に近い人でもあってそこで共感したのかとか思いましたが元の『君たちはどう生きるか』の主人公の人ってまったく偉い立場の権力を持った人でもないただの普通の人であるのに対して、あなたはもうすでに絶大な権力を持ってて、何を泣き言言ってるんだと言わざるを得ず、なので主人公が話の途中で『君たちはどう生きるか』を読んで泣く場面があるんですけど、いやいやいやあなたのそのキャラクターでその本の話にどう涙できるかさっぱりわからんわ、て感じでしたか。   で、元の話が現実の普通の人の話なので、現実を舞台にした展開になっていくかと思ってたら、どんどん異様な様相を見せていき、まさにジブリワールド、宮崎駿ワールド全開の破天荒な展開になっていって、そういや宮崎駿監督って、メルヘン・ファンタジーの鬼才でもあったよなあと思いだしたりしました。そっち方向は『思い出のマーニー』ですっかり米林宏昌監督に追い抜かれたと思ってたのですが、いやいやまだまだやるじゃんと。   でまあ不思議の国のアリスばりのナンセンスな展開をしていくので、途中が、ええ!? なんでそんな風に行くの? みたいな電波的なご都合主義っぽい展開が多いんですけど、宮崎駿監督作品って物語的要請とか映像的説得力の剛腕とテンポの良さで違和感なく話を進めてしまう感性の達人で、ナウシカと同時期にやってた『シュナの旅』でもまさにそうだったわと思いだした感じです。   本映画で個人的に好きになったのは、いままで自分の言い訳ばかりして体よく装うことに終始してて自分のことでいっぱいいっぱいで勝手な人だと思ってたのが、本作では新進の存在に対して暖かいまなざしで見られるようになったような表現があって、丸くなったなあってところです。   あと、主人公の母親が主人公を抱きしめて、あんた本当に良い子だねえ! しっかり生まなきゃ! とかいう場面はホロっと来てしまいますね。   そんなところです。
[映画館(邦画)] 7点(2023-08-30 15:10:09)
7.  リバー、流れないでよ 《ネタバレ》 
 ループ物のSF系映画には良作が多数ありますが、本作は劇場内で終始笑いの絶えない上映で、けらけら笑いながら観られました。とても楽しい映画で良かったです。   貴船を舞台にしてるので、だいたい場所の配置が行ったことあるのでわかってる中で、2分という時間制限があって、そこを場面を全く切らずに1ショットでずーっと回していく臨場感がありつつ、記憶は視聴者と同じく巻き戻らず連続してるので時間がループして大変なことになってるにもかかわらず「今ちょっと災害が起こってますが状況がわかるまで落ち着いて問題解消するまでお待ちください」みたいな、ループ物にあるまじき和やかさで、昔の辛口ショートショートにあるようなユーモアあふれるコミカルな展開でした。   話の主旨としてはタイムトラベルの仕掛けよりも、現実のせせこましい時間に追われる気の休まらないところから、ホッと一息ついて、時間の大切さとか、人と人とが触れ合うちょっとした時間の積み重ねが上で大切だみたいなところがにじみ出してきていて、ハッとするような、ほろっとするような部分もありつつ、最後の結末ではみんなの意思が一つに揃って、問題解決するっていう、実に気持ちいいさわやかな映画で素晴らしかったです。
[映画館(邦画)] 8点(2023-07-28 20:20:36)
8.  ヴァチカンのエクソシスト 《ネタバレ》 
 ラッセル・クロウって「L.A.コンフィデンシャル」や「グラディエーター」とかの肉体派アクション俳優か、「インサイダー」「ビューティフル・マインド」等の演技派かの両極端をやるので本作はどっちやねん? と思いつつ観に行ったんですが、予想通りというかなんというか肉体派のマッチョなエクソシスト(悪魔祓い師)でした。たしかにあんまりなかった方向性かも(香港映画とかだと霊幻道士とかがマッチョな悪魔祓いだったりしますが)。   ホラー演出は割と本格的なおどろおどろしい昔ながらの演出をしていて、「オカルト映画」と呼ばれたような古式ゆかしい凝った設定と舞台立てをしてて、けっこうドキドキさせてくれます。またスプラッターな部分もあるので、そう思って観に行った方がよろしいでしょう(PG12ですし)。   それから昔ながらの悪魔祓い物を意外にも踏襲しており、悪魔が、関わる人の精神的な弱みに付け込んで攻撃してくるんですが、それが登場人物たちのトラウマになってるのが、すごいちゃんとしてて、おおお! って思うんですけど、  「悪魔は人間の精神的な弱みに付け込んでくる」 「はい」 「なので、キミの犯した罪についてたった今から告解をする! 私も告解する!」 (おもむろにお互い告解し合う) (悪魔祓いの覚悟完了!!!)  みたいな演出をしてくるのでゲラゲラ笑っちゃいました。とてもバカっぽくて良いです(笑)(いいぞもっとやれ)。   あとはラッセルクロウ神父が髭でヴェスパに乗ってくるのが絵的にカッコイイみたいな可愛いみたいないい感じで、相棒になる新米神父もけなげで頑張ってて良いし、なかなか楽しい作品でした(続編に期待したい)。   ちなみに、主人公は実在のエクソシストだそうで、エクソシストについては他にドキュメント映画もあって、実際にそういう組織がヴァチカンにあるそうで、それをもとにしたエンタメ映画ができてきたと思ったらこれだよw って感じでニヤニヤしてしまいました。   あとは、昔の名作オカルト映画のオマージュっぽい場面が多数あって、それもまた観てて楽しい所でした。
[映画館(字幕)] 7点(2023-07-19 03:58:41)
9.  TAR/ター 《ネタバレ》 
 音楽もの&演技派ケイト・ブランシェット主演作という事で期待して観に行きました。  ケイト・ブランシェットは主演をすると割と破滅的主人公をされることが多い印象だったので、わりと期待通り、圧巻の演技でした(その上、世界一と言って差し支えない美貌!)。  あと演奏の音の方も、クラシックレーベルの老舗ドイツ・グラモフォンが大々的に出てくる関係で素晴らしく良かったです。  作品の内容についてはぐいぐい引き込まれて、サスペンス・スリラーやホラー的な様相も帯びてくるのはサスペンスものとしてかなり面白かったです。   一方「カウンター・カルチャー」「カウンター・カウンター・カルチャー」的に見える部分も多々あり、差別的価値観の話もあって、登場人物が偏った価値観を持ってるのは、そういう設定のキャラクターだから、で受け入れられたのですが、作り手側に差別的価値観があってそれを強調するために偏った演出をされてる、みたいなのがあると、それはプロパガンダ作品であっていかがなものかと。監督のインタビュー記事など見ると、監督自身は日本の作品は大好きでネガティブな印象を与えようと思ってそのような演出をしたのではなく、希望の象徴として見て欲しいみたいな話があり、そうか、と思ったりしました。   個人的にわりとカチンときたのは、主人公がクラシック指揮者のTOPになっている状況で(現実にはそんな状況の人はおらず、過去百年のベスト指揮者100人には女性指揮者が一人も選ばれてないというくらい、クラシックの指揮者界隈というのは超絶差別的状況となっているので、まったく絵空事にしか見えないわけですが)、コンサートを開くときに古典的な作品はもちろん演奏するけれども、新しい曲も扱って未来の作品への投資もしてますよ、とアピールする点で、これはまあ、西欧では定番的に使われている偽善的スタンスで、演奏者は新曲などなくても昔の名曲を上手く演奏していけば食っていけるわけですが、それだと新たな作曲家が育たないので、投資として支援しておくべきという考え方があります。で、作中紹介では主人公TARはそういう作品もやってるよと言うけど、インタビューの後のジュリアード大学のオーディションシーンでは全く逆のスタンスを取るわけです。そちらの場面はアーティストは作品自体に向き合うべきで、作り手の属性に対する差別的認識で差別すべきじゃないという主張をされてそれはそれでいいんですけど、「作品自体に向き合うべき」という話で偉大なるバッハの作品を崇め奉るのは良いんですけど、それと同等に生徒の提示してきた現代曲にも真摯かつ公平に「作品自体に向き合うべき」であって、バッハの作品を持ち上げるために、直前に演奏されてた現代曲を不当に貶めてる表現が、「人種差別の問題」を強調するためにクラシック界隈で頻繁に行われている「現代曲差別」を不当に強調していて、それはどうなんだろうと思ってしまったわけです。   そんな感じに、ある種の偏見なり差別認識をただすために、別の偏見や差別認識が作品演出から滲み出してくるところがわりとあって、主人公がスキャンダルで追われて東南アジアのあたりに飛ばされる演出も、描き方が前時代の未開地表現のようになっててアレでしたし、最後の曲も、普通に観ると狂気とかとんでもない状況の転身みたいに見えてしまいがちな演出をされてたと思うんですが、そもそもクラシック音楽の20世紀の発展を踏まえると、ロックやジャズみたいな新進の音楽が隆盛してきた関係で、もはやメジャーな音楽ではなくなった時に映画音楽や、アニメの曲や、エンドで出てきたゲーム音楽の世界の中で、本来のクラシック音楽の精神が引き継がれて生き延びたのだ、という歴史的経緯があるのですが、その「クラシックの正統的後継者」であるところのあの作品を「狂気」とか「恐怖の対象」であるかのように見せる演出は、クラシック音楽というものを根本的にバカにしてるようにしか見えないわけで、なんだかなあと思ってしまったわけです。   あとまあ、クラシック音楽界隈だと楽器ごとに女性差別が大変だったりそうでなかったりするようなのですが、差別が大変と評判の指揮者にやっとTOPの音楽賞総なめのすごい人物が出てきて業界が改善されていくのではという期待をさせる状況ができたのに、こういう内容だとなあ、と残念に感じたりもしました。女性キャラクターだから清廉潔白であるべきでないといけないというわけじゃないですけど、この辺のスタンスからして総じて、本作の音楽ネタの扱いというのは作品演出のダシに過ぎない扱いで、同様のドラマチックな演出ができるのであればなんでも良かったんだ。クラシック音楽業界というものに対する愛はなかったんだ、としみじみ感じてしまったわけです。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 5点(2023-05-21 09:39:23)(良:2票)
10.  ピアノ・レッスン 《ネタバレ》 
 劇場公開前に出たマイケル・ナイマンのアルバムがすごくて観た口で、音楽は素晴らしいです。   けど他のナイマン作曲のピーター・グリーナウェイ作品なんかを見るとしばしば思うのですが曲と映像が合ってるかというと微妙な押し付けがましい感じもあったりするのがアレだったりはするんですが。   話は、私は結構好きなんですけど、うちの人は子供がぶち切れるところが感情的に受け入れられなかったみたいで、そこがダメなんだと思ったりなんかしました。   作品の題材とかテーマについては、時代背景がわかってないとわからんだろうなという所はあります。  1993年て日本ではまだ男女雇用均等法がまともに適用されてなかった頃の女性差別バリバリだった頃で、女性に自発的な意思などないと思われてたし、そもそも女性が性欲を持ってるなんて許されんことだ、なんていう風に認識されてた時代の話、さらに話の設定はもう一昔前になってて自由恋愛とかありえない、という状況で徹底的に反逆する主人公、てところかと思います。   あの何だろう。ちょっと前にアカデミーを獲った「シェイプ・オブ・ウォーター」で、言葉の話せない主人公が、言葉の話せる普通の人よりずっとある種、饒舌で悪態をつきまくってるという演出がありましたが、その先駆けとなったっていうか正直ネタとしてパクッてんじゃないのか、と言いたくなるようなところもあったりします。で、言葉を話すことができない代わりに言葉以上に饒舌なピアノの音が鳴るっていうわけですよ。   そんな感じで私的には好きな作品ですが、最後に水中に浮かぶ主人公の亡骸(イメージ)は、ちょっとグロテスクでどうだかと思ったりする作品だったりします。   そんなところで。
[映画館(字幕)] 7点(2023-04-25 22:49:20)
11.  ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り 《ネタバレ》 
 バリガチな(T(T))RPGファンとしては、良作だろうがそうでなかろうが履修必須という事で観に行きました。  視聴環境はIMAX Atmos上映のほぼ最高環境でした。  原作ファンのファン的見解の感想という事で。   正直2000年の「ダンジョン&ドラゴン」(1,2)は、実際ゲームをしてる人間の風景としては残念さ加減も含めてある種とてもリアルで、話自体はポンコツだけど、まあ、ゲーマーの生態描写としてはひどいわあ(笑うところ)という感じに私は結構好きでしたが、エンタメ作品とかファンタジー映画としてみると微妙で人には勧めがたいかなあという感じでした。エルフの女魔法使いというだけで過剰反応をする、野良の腐れゲーマーみたいなものが実際よくいたりしまして。   そんな事情で、まったく期待せずに観に行ったのですが、意外にネットや知人の評判は悪くなくて、むしろなかなかいい感じであり、加えて原作提供会社のウィザーズ・オブ・ザ・コーストは今猛烈にD&Dというものを日本に広めようとしていて、しかし海外ではいざ知らず国内では全く販路がまともに構築されてないので日本国内ではマニアの間でしか知れ渡ってなかったりするのですが、それがより広く一般にも認識されるようになる礎になるかどうかの試金石になる作品であって、そういう戦略的展開とか金銭的事情のために作品の面白さが損なわれてたら嫌だなあというような、愛憎半ばな部分もありつつ観た感じです(つい先日D&D関連の二次創作物に対するライセンス管理でファン層と散々抗争してたりしてましたし)。   あと、オウルベアが映画中では最高にカッチョ良くて素晴らしいのですが、あれは魔法生物なのでドルイドの変身対象にはなり得ずルール誤りである、なんて話題が1~2年前くらいのドラフト版で話題になってたりしました。面白ければ良いの心意気でルールの方を改訂すればいいじゃんと個人的には思ってましたが、結論はどうなったんですかね。   あとまあ、原作ゲームの方で、ポリコレ的なジェンダーにまつわる表現も、ユーザに断りなくいっせいに勝手に書き換えられてしまったのが表現弾圧になるのではないか、というような物議を醸していたこともあったりして、なかなか原作ファンとしては悩ましい部分もあったりしましたか。    ……というような、元のゲームファン界隈ではいろいろ引っかかりを覚える悩ましい部分が多数あったりしたんですけど、そんな一般人にはわかりようもない面倒ごとなど全部うっちゃって、純粋にエンタメとして楽しい! 素晴らしい作品と思いました。   本格的ファンタジーっていうと指輪物語的なちょっと高尚なイメージがあったりするんですけど、D&Dの世界ではいろんな雑多で野卑なものも合わせたごった煮状態で、SF的要素もあって猥雑な雰囲気があったりするんですけど、そういうのがいかにも生きてるって感じで良いんですよ。   あと、戦闘アクションや魔法の扱いがいちいちキチンとゲームの設定を踏まえていて、最近は四角マス(スクエア)ボードゲーム的設定に、3次元マップで立体感も出して遊んでるものが、いまどきの3DCGアクションを駆使して3次元的にグリグリ動きまくって挟撃しまくってるとかいうのも楽しくてたまらんし、あと「キャンペーン」といっていくつもの冒険やエピソードや試練を潜り抜けていくうちに、いっしょに冒険の旅をし続けてきた仲間同士の、仲間の情みたいな、いっしょに遊んできた仲間同士に芽生える感情の醍醐味みたいなものを見事に映画作品のエンタメストーリーとして昇華していて、巨悪に対抗して世界を救うみたいな壮大な話がベースにあるけれども、直接的なそれぞれの登場人物の動機は、肉親とか、旅の仲間とか、友人とか、ごく私的な情愛のために頑張る、等身大の1個の人間でもあるという距離感というか親しみやすさが、実にいいと思ったりなんかしました。   普段は、私利私欲とか金などのごく低俗な欲求のために冒険してるはずが、身近な仲間を助けるために全財産なげうって借金まで追うとか、よくあるんですわ。何を気が触れたんだろうと思うんですが、実際そうなんだわ。    という感じで、ファンのゲーマーとしてはとてもリアルでありつつゲーム体験の中での感動の良い側面を見事に凝縮して作品化したなあ、という感慨深い作品でした。  前の時は技術も予算も足りなくてあれでしたが、いろいろやっとちゃんと描けるようになったんだなあと。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 9点(2023-04-12 22:39:16)(良:2票)
12.  エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス 《ネタバレ》 
 笑いました。   まあその「スイス・アーミー・マン」の監督さんの作品なので、ろくなものではないだろう(笑)と期待して観に行って、その通りだったという感じです。  尻ネタについては、前作がしつこくオナラのネタを繰り返しやってたので相変わらずそっち方向が好きなんやねえという。  混沌とした、とにかくあれこれぶち込んだカオスな映像&展開は、往年のモンティ・パイソン~のテリー・ギリアム監督だったらこういうハチャメチャなのを嬉々として撮られただろうなあと懐かしさも覚える感じで、私は現代版「バンデットQ」かなあとか思いながら観た感じでした。   で、そもそも「マルチバース」という設定が割と何でもありの無敵状態になってしまうので、最近ハリウッドのヒーロー系で繰り返しやってるけど設定としてはあんまり面白くないと思ってるのですが、そこでじゃあ、無敵を無敵にしないためどんな制限をカセとして設置するかがキモと思っており、その枷を「スイス・アーミー・マン」の監督らしい実にバカバカしい設定にしてくれたおかげで、けっこう笑えた。尻争いとかたまらんw。   あと、ほとんど無敵状態になったとしてそこでどんな物語を語るのか? というところでアメリカ映画では定番の「家族もの」に持って行ったのが、またそれかよとげんなりしたのですが、それが作品として絶妙にかみ合ってしまったかなと。   マルチバースとは、人の人生のあり得たかもしれない選択肢としてなんだか普遍的なものとして見えてきたりして。  それが主演のミシェル・ヨーの人生とも重なり合い。  指がソーセージ人間の話も、昨今のポリコレ的なかつて差別的扱いのギャグネタだったものが時代と共にシリアスな問題として扱われるよう価値観が変わってきたのを、まさにギャグネタで超高速で再現してるみたいな。  敵との、家族間の愛憎の物語も、昨今の家族問題、いままさに日本の政治が家族間というものの考え方について政策的に激しく汚染されてたものが、1個人を尊重して考え方を改めるべきという傾向になってきてると思うんですけど、それを自分だけ納得して勝手に感動的な話にするな的な現代的問題を戯画的に描いてるようにも見えます。   ……ていう感じに、このふざけたしょうもないギャグネタが絶妙に時代にマッチしてしまって、なんか、賞まで受賞しちゃったよ、ha! ha! ha!   て感じでした。   あと主人公の旦那役のキー・ホイ・クァンが、インディ・ジョーンズ魔宮の伝説のインディの相棒の少年で、授賞式でハリソン・フォード&フェイブルマンで来てた監督と共に同窓会状態になってなのは、なかなか胸熱でしたか。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 7点(2023-03-15 13:40:35)
13.  BLUE GIANT 《ネタバレ》 
 原作ファンです。IMAXで視聴しました。  元々ジャズはごく一部ちょろっと聞いて何が良いのかよくわかってなかったのが、原作漫画で、そうなのかと、ちょっとだけわかるようになったかもしれない口です。  だけど、mp3とかの配信音源を聞いてもやっぱりよくわからず、ライブで聴いて熱を感じるか、せめて映像化されて映像&演奏で見てみんと本当のところはわからないかなあと思ってました。   そんなわけで待望の映像化なわけですが、漫画では、すごい天才で音圧があり、音がデカくて説得力があるように描かれてるものの、実際の映像になった時に音楽的説得力を出せるのかどうか? が気になってたところでした。  公開前にPVが流れてたもののキレイではあるけどそんなすごい演奏にも聞こえなくてあんまりイケてないかもなあ、けど原作者が見て良いとか言ってるしなあどうなのか、と期待半分で観た感じです。    演奏は素晴らしかった! です。    IMAXで環境が良かったこともありますが素晴らしい演奏の数々で、いやまあそんな音を出されたらそりゃ認めるしかないわなあ、というところで、原作を見て一番気になってた演奏の音楽的説得力は見事に実現されてたかと。  なので、ライブ的な演奏を聞きに行くために観るというのはアリかと思いました。   で、原作からのエピソードの選択については、妥当かと思いました。  主人公が天才過ぎるので、一般人の目線で絡んでいく話であり、かつ音楽的に成功していく交差点的エピソードっていうとここしかないかな、という感じで。  その代わり、序盤の泥臭く努力して演奏できるようになってく話とか、そもそもジャズというものが今どきマイナーなので(とはいっても私からすれば、メジャー枠の中のマイナーな方、くらいの認識ですが)、だけど熱くて良いと思ったので演奏して広めていきたい、という衝動の部分が端折られてしまったのは残念なところではあったりしました。   あと、問題の演奏部分のCGについては、がんばってやろうとした形跡はあるけれども予算配分の都合と、きっと上層部はCGを使う所でコストカットできると勘違いされてるかと思われるのですが、その数年前の感覚で予算が削られて微妙な映像になってしまってたかと思います。   最近のCGなどを使用した演奏シーンの傑作としては、まず「シン・エヴァンゲリオン」のピアノシーンがあり、あるいはロトスコープを使用して変態的な歳月と原画枚数をかけて制作された「アニメ映画『音楽』」の激熱ライブシーンがあり、つい先日公開されて今も楽器業界なんかでブームのアニメ「ぼっち・ざ・ろっく」のモーションキャプチャーで演奏と動きをぴったり合わせてライブ感を出しつつ、うまくない演奏までしっかりやる……というように、CGを使った演奏シーンもここ1,2年で激烈にクオリティが上がってきており、本作もエンディングを見るとロトスコープを使用して実際の演奏の動きをキャプチャーして品質を上げようとした痕跡は見えて序盤のピアノのタッチも良い感じの場面が一部あったと思うのですが、途中以降そういうのもなくなり、またCGキャラをセルアニメ的キャラクターと違和感なく馴染ませる工程も省かれたため、CGが出るたび、何この異形の存在は? みたいな違和感が大変なことになってて、普通のアニメシーンや、音楽はとんでもなく素晴らしい出来なので、CG部分も今後改善されると良いんじゃないかとか思いました(今後とかあるのか?)。   そんなわけで、とにかく演奏は素晴らしいので、音響の良い劇場でぜひ視聴されるのがよろしかろうと思います。  やー、ジャズってかっちょいいわ。
[映画館(邦画)] 8点(2023-03-15 11:48:28)
14.  イニシェリン島の精霊 《ネタバレ》 
 視聴直後の感想は「えー。。。」でした。   前作はカタルシスあったんですけど、本作は最後まで決着がつかず解説もほとんどされず、文化的背景わからん人にはさっぱりわからんままモヤモヤ終わる。   話的には、北アイルランド紛争辺りを元にした寓話的話と思われ表層的にはイニシェリン島というイギリス近海の田舎の島で二人の友人だった男の一方が突然「お前のことが嫌いになったので絶交だ」宣言して途方にくれる話でした。そしてどんどんドツボにハマっていく。   予告編では絶交宣言に何か重大な理由があり作中明らかになってくと思ったのですが、表層的な「理由」は説明されるもののそれだけにしてはいくら何でもやりすぎでしょうという過激な部分もあり、嫌いになったというわりにはいざという時には助けてくれたりするし、よくわからない。謎も解けず対決の決着もしっかりつかず、かなりフラストレーションがたまりました。   登場人物が多面的で、一見嫌な奴だけどよく付き合ってみるといい所や憎めないところもある人物造形は相変わらずうまく、つい引き込まれて見てしまいます。主人公パードリックはバカなんだけどしばしば良いこと言うし人助けもするしなんか憎めない。   タイトルがいまいちと思ったのですが「バンシー」を「精霊」と訳すのはいかがなものかと。「バンシー」と言っても一般人には伝わらないので変えたと思われるのですが、死に近いおどろおどろしい雰囲気を出すもうちょっといい言葉があったんじゃないか。作中では「死神」と呼ぶ場面があったりはしましたが。   以下盛大なネタバレです。                    ネット上あまり情報が出てなさそうなので、私が気付いたところを書きます。  本作の重要要素の一つは   「フィドル」   と思います。   フィドルというのはバイオリンとだいたい同一のものですが、文化的には全く別物で、有名なたとえ話では「ヴァイオリンは歌う、しかしフィドルは踊る」「フィドルにビールをこぼしてもだれも泣くものはいない」とか言われます。映画タイタニックでは最下層の貧困層がフィドルの演奏の中で祭りのように踊る場面があったりなんかしました   同じものが文化圏によってまったく異なる扱いをされる。それがフィドル。   フィドルはアイリッシュミュージック等の伝統的音楽楽器の一つで、演奏する曲もクラシック音楽ではなくアイリッシュミュージック等の民族音楽。そしてジプシーっぽい人がたびたび聞きに来ていっしょに演奏したりするわけですよ。しかも音楽学校の学生がわざわざ僻地までやってくる時点で、主人公コルムは、相当有名なフィドル弾きの名手であると想像され、そんな大家が後世に残すためオリジナルのフィドルの曲を作曲してるって寸法で。   で、なぜ友人であることをやめたいのか問われた時に1600年代のモーツァルトの名前を上げて有名な音楽は200年残る自分もそういうものを残したいというわけです。   ところがその直後に、パードリックの妹にモーツァルトの活動年代は1700年であり間違っていると指摘される。つまり説明のためにモーツァルトの名前を挙げたが、実はモーツァルトについてそこまで詳しいわけではない、という事実が暴かれる。   これってどういうことかと言うとフィドルって1600年代頃から演奏されてきたと言われるのですが「あなた方西欧音楽文化圏の人にわかりやすくそちらの有名人物で例えると、モーツァルトという人物の曲が200年以上も残り続けてるのと同様に、自分もそんな音楽を残したい」という意図だったと考えられるわけです。   ここで愕然とするのは、モーツァルトと言われればどんな人物でどんな曲を残したか音楽に詳しくな人でもある程度出てくるのに対して、逆に我々がフィドルの名演奏家/名作曲家を知ってるか、と聞かれしても誰一人思い浮かばない点です(日本国内にフィドルの演奏家がいて以前TV上で演奏してました。名前は忘れてしまいましたが)。   しかもアイルランドは長年紛争し続けていて国が消失する危険があり国が亡くなったら民族音楽などの文化も消滅する可能性があり絵空事でなく数十年後には何もかもがなくなってても全然不思議でない。   そんな中200年以上残るフィドルの名曲を残そう/フィドル名演奏家を育成しようとか志してるわけで。   加えて話の舞台となってる島もすぐ近くでずっと戦い続けてるってことは明日にも巻き込まれて戦場になる危険があってお互い所属する民族の違いによって引き裂かれる可能性が濃厚で、それらも考慮した上で別れようと提案してるようにも見えるんですよね。    とかなんとか思ったりしました。
[映画館(字幕)] 7点(2023-02-01 10:32:13)
15.  すずめの戸締まり 《ネタバレ》 
 震災テーマの希望ある決着は非常に良かったです。良い。  伝奇ものっぽいおどろおどろしい感じも、こんなのも描けたんだーと、今後こっち方面で特化した作品を作られたら楽しそう! と思ったりなんかしました。   しかしいろいろ気になる点が多々あり、列挙しておきます。  -- ・主人公の成長物語として見ると物足りなかった  男性主人公だと、   自分のことは自分で助けるしかないと覚悟を決める  →力を得る  →自分の力によって助かる他者がいることを知る  →公的使命感に目覚める   とかいう展開になるのが女性主人公だと、   そもそも自分を救うのは自分と思ってない(力がなくて、得ようと思っても得られないとあきらめている)  →力を得る  →自分で自分のことを助けられるんだ   という感じで、男性主人公の成長物語のスタート地点に立っただけなんですけどと思ってしまって、重要ではあるけど、なんかな(主人公たちがヒロイックな力を持ってるので余計に)という感想。ゴールがそれならもっと地味な設定にした方が良くなかろうか。  -- ・今までの作品とは変わって恋愛をメインのテーマにしないのはわかるんだけど、突然「好きな人のために!」とか言いだして、中途半端で、それっぽい伏線とかエピソードも足しちゃってるので、どっちがやりたいのかよくわからんみたいな  -- ・草太が「死にたくない」とか言いだすのが全く解せない  そもそも自分の家系でやってる戸締りの使命のために自分の人生の何割かが消費されても構わないと受け入れて全国行脚までする覚悟が決まってるキャラが、そんなん言うか? と思ってしまい。(いきなり受け入れがたいのはわかるけどそのうち納得するキャラにしか見えない)  なんか、主人公が助ける目的成立のために無理やりそういう言動やら性格に捻じ曲げられてるようにしか見えなくて、新海誠作品て、自分の考えたかんどうてきなはなし成立のために登場人物や、場合によっては視聴者の感情移入する感情まで捻じ曲げようとしてくるところが、しばしば気持ち悪くなってくるのですが(失礼)。   -- ・昭和の懐かしいメロディ連打がなんだかなあ  前までのRADWINPS全開が好きだったので、賛否両論あるけど慣れもあるだろうし、期待してたのですが、なくて拍子抜けでした。  「懐かしがる人はこういうのが聞きたいんだろう?」的あざとさも鼻についてしまい。   -- ・ダイジンがかわいそう  社会正義のために特定個人を犠牲にすることはやめよう、というのが最近の方向性と思ってたのですが、非人間存在を犠牲に肩代わりにするってやってることが偽善で本質的に変わってなくて、非常に昔ながらの偽善的解決になってて、そうじゃない誰も犠牲にならない地平を期待してたのだがなあ。
[映画館(邦画)] 7点(2022-12-14 14:45:22)
16.  夏へのトンネル、さよならの出口 《ネタバレ》 
 ネットで評判が良くて久々劇場で観ました。  良かったです!   今年のみずみずしい青春もの系映画の一つと言っていいと思います。   個人的には、なんて言うんでしょう、夏へのトンネルって、要するに青春期の死のメタファーみたいなものと思って、いっしょに向こうに行こう、というのはいっしょに死のうってことだと思うんですけど、あの頃ってなんか恵まれて自信満々な人でもない限りは、自分はまだ何者でもなく、自分には価値はなく、幸せになる資格がなく、変に何者かにされ幸福になってしまうくらいならすべてが破壊され絶望の底に居た方がマシだ、みたいな感覚にとらわれることがあるんじゃないかと思うんですけど、そのかつての自分に主人公(男性)がすごい刺さる感じでした。むしろ、自分を捨ててでも得るべき明確で立派な理由が正当化されてある分、主人公の方がかつての何者でもなかった自分より幸せではないのか、とか思ってしまったり。   あと、主人公2人の関係があくまで対等なのがいいと思いました。   「こんなところに居たら家族が心配するよ」「自分には心配してくれる家族なんてないのよ」「それはとてもいいね」って共感するのが、見ててすごくいい。   2人とも重い過去を背負っていてその解決のために、トンネルの謎を解明しようとするのですがあくまで「共同戦線」であって、たまたま同じ目的のふたりがそこにいたので効率化のため協力し合うが、別に相手がいなかったら自力で何とかしていただけであって、おたがいあくまで自分の問題は自分で解決しようとしていて、人をあてにしてないところがいい。   で、2人の道は、トンネルとは何か? の解釈の差によってもう価値観の違いが歴然としていて一時的にここで協力関係になりはするけれども、将来枝分かれしていくであろうことは最初から暗示されていて、主人公(男)の方はすでにわかっていて、だからそれぞれ一人でやってけるので、枝分かれしてもあと腐れなく別れられる(本当か?)。   それで、最後のオチは割と王道的安直で、最近流行りの話なんでしょうが、別に世界を変えようとかそんな志はなく、ただ身近にあるものを大切にしようそれでいいんだ的オチに落ちるんですけど、それって、難しい問題があった場合に目をつぶって放置する「『逃げ』の解決」(そもそも、現状のままでいいっていうことは解決すらしてないってことだけど)になってしまう危険をはらんでいて、だからそういう話は「作中何となく納得させられてしまったけど、よくよく考えるとそれって何も解決してないひどい状況じゃない?」って終わった後に冷静に考えて我に返ることがあるのですが、本作は、2人はお互い精神的に成長したので、現状の現実は何も変わらず問題山積だけれども、きっと何とかやってけるだろうと期待できると思ったわけです。なので、別に「まだ」事実の問題が解決していないだけであって、未来は希望に満ちていると信じられる。   主人公(男)の方の成長の部分は個人的にすごく共感したのですが、あまりに重くて切実な問題があると周りが見えなくなっていて、目的さえ達成できればあとはどうでもいいと捨て鉢になっているというか、周りを見渡す余裕がないのでそれしか考えられなくなってると思うわけですよ。それが、なんとか目的を達成して失われたものを取り戻して、精神的安寧が得られたからこそそこで初めて、心に余裕をもって想像力を働かせられるようになり、その失われたものが本当に存在するのであれば、主人公(男)が普通に生きて身近なものを大切にしていくことを喜ぶであろうと、考えられるようになるわけです。   それで最後の決断を下す手がかりが「これまでの経験」で、視聴者が本作を見ることで主人公と共に体験してきたすべてのもろもろのことがその決断に対して、ああこれまで見て一緒に体験してきたのでそりゃそうするわと説得力をもって感じられる(非常にベタでストレートですが)。   そんな感じに、非常にうまい、パズルのピースをきっちりはめるみたいな絶妙の構成の作品と思いました。   あと、エンドの「期間」については、ギリギリそういうのもあり得るかなあという現実的な許容範囲におさまっており、そういうところも含めて非常にうまい作品と思いました。   そんなところです。
[映画館(邦画)] 8点(2022-10-09 11:51:57)
17.  犬王 《ネタバレ》 
 前提条件としてアニメ「平家物語」は観てました。あと同様の設定を描いた作品として「ワールド・イズ・ダンシング」という漫画を見てます。湯浅監督作品は好きでそれなりにちょこちょこ観ており「夜明け告げるルーの歌」で音楽表現とアニメの快楽的融合が好きなんだなあとは思ってました。マインドゲームもそうでしたね。   で、本作は音楽表現とアニメの動きの快楽をとことんやって見せびらかしたい作品だろうなと思っていて、やりすぎなくらいの過剰な表現(場面によっては長すぎるとか)をどこまでやってくれるかというのがあり、個人的にはそのためにアンバランスで歪であってもいいだろうという心持で観ていて、実際作品の大半は歌とダンスで埋め尽くされており、途方もない美しい表現もあり満足できました。   ただ、人間ドラマとしてみるとほとんど葛藤も描かれずすんなり行き過ぎてどうだろうという部分があり、そこは必ずしも本作の主旨じゃないので、まあ置いておくとしてちょっとこう登場人物に感情移入しがたいなあという部分ではあったのですが。   それよりも気になったのは主旨の部分です。私は本作の主旨は「ダンス(のアニメ表現)」「音楽(琵琶→ロック)」をいかに見せるかだと思うんですけれども。   ダンス部分について「猿楽→能」という展開があるところのものを現代的なダンスに置き換えるのは猿楽なり能の振り付けに対する思想的なものを踏まえた上での振り付けなんだろうか? というのは気になったところです(「ワールド・イズ・ダンシング」だとその辺の思索を深めているので)。説明はないけど考えた振り付けになってるのかも知らんけど、私にはよくわかりませんでした。   音楽部分については、それまでにない新しい音楽として、現代的な「ロック」を当てはめてるのですが、当時の人にとっては当然新しい聞いたこともないような音楽であるという設定なのはイイとして、視聴者にとっても斬新に聞こえるべきかという点で、いまいちピンと来ませんでした。なんか「円熟のロック」みたいに聞こえてしまって、私個人としては新しみのない面白くない曲だなあと感じた感じ。そもそも琵琶を演奏する友魚にとってもロックは新しい発見の音楽であるはずで、発見のための物語があったはずだし、なぜそのような音楽表現になったかの思索なり論理があったはずなんだけどそこがわからなかった。あるいは既存のロックミュージックをベースにするにしても、ロックというジャンルが出来上がっていく黎明期の曲なりがベースになってるなら登場人物の立ち位置に近くなって、何らかのみずみずしさなり斬新さが出るはずだと思うんですが、全然そんな感じには聞こえず、要するに「円熟のロック」のように聞こえて、いやなんか曲が合ってないんじゃない? と思っちゃったんですよね。良い、面白い演奏ではあったけど。   湯浅監督作品って、最初の発想は斬新で面白いけど、いざそれをどう表現するかについて、わりと安直にわかりやすいネタに飛びついてしまう所があると思ってて、本作は安直でちょっと物足りないなあと思った次第です。   そんなところで。
[映画館(邦画)] 6点(2022-06-22 12:22:14)(良:1票)
18.  トップガン マーヴェリック 《ネタバレ》 
 観ました。バチクソ良かったです!(方言)   正直前のトップガンは、トム・クルーズはかっこいいかも知らんがチャラい映画だなーと思っててあまり真剣には観ておらず、うろ覚えくらいでした。なので前作の続編というよりはトム・クルーズという現実のヒーローの人生の物語を観るイメージでみました。ミッションインポッシブルのイーサン・ハントが昔取った杵柄の海軍戦闘機のパイロットに返り咲いて若手を育てるみたいな(どんなだ   トム・クルーズは初期はチャラい印象だったのですが、チャラいキャラだけではなくいろんな映画の色んな役をこなしており、紆余曲折したんですけど、結局カッコいい正義漢をやるのが一番いいっていうか、トム・クルーズが出てきたら絶対カッコよくて正義の味方で人を裏切ることができなくて最後は必ずハッピーエンドになってこうなって欲しいというロマンがあって、先の展開は読めまくりだが、それがいい、という方向に最近ではもうすっかり振り切れてくれてて、それが好きなところです。水戸黄門は必ず悪代官と越後屋を懲らしめてくれればいいとか、ドラえもんは相変わらずなドラえもんでのび太はずっと小学4年生でいてくれればいいんだよみたいな。それで、ベタな王道物語をこれでもかと大迫力の映像で描き切ってくれて素晴らしかったです。これまでの集大成のような作品で、映画館の大画面でこそ映えるなあと思いました。エンドは最後は若手に引き継いで引退するのではなく、最後まで勝ち逃げして永遠の伝説になってしまうみたいなのも良かった。   これで100万点くらい。   で、この作品で唯一気になったのは、結局戦争映画をどんなにヒーローものとして描いても結局敵を殺してる時点で偽善にしかならないなあという所でした。敵方を国籍不明の、人種も不明確の没個性にして人が死ぬ場面は一切出さないとか、戦争ものだと戦争のリアルというか悲惨さの表現のために味方の誰かが死ぬという免罪符的表現があったのが、今回は味方は誰も死なずに生還するよう振り切って脱臭はしてるものの、あの爆撃で人の作った営為が破壊され、その下では見えないが誰か死んでるかもしれなくて、それについて一切何も表面上描かないのはどうかという所があり、この辺がエンタメの戦争表現の限界かなあと思ったりもしました。   これでー1点で、計999,999点で、上限10点なので振り切れて10点という感じです。   そんなところで。
[映画館(字幕)] 10点(2022-06-15 17:59:11)
19.  ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス 《ネタバレ》 
 あの、マーベル系ではレアものの「シュマ=ゴラス」が出るってことで観てきました(そこかよ)(カプコンの格ゲーでしか観測したことがなかった)。シュマ=ゴラスがドクター・ストレンジの敵役の一体とは知らなかったですが、序盤のアクションでグリグリ動きまわってなかなか楽しく観られました。作品全体がとにかく「魔法」で何でもかんでも捻じ曲げてグリグリ動かせるアトラクション的作品なので、なぜかホラー表現も多数あり、面白かったです。   あと、前提条件としてあれこれ見てないと難しい、という件については、いちおう「マルチバース」の設定を生かして、マルチバース表現では、回想シーンが「たまたま紛れ込んでしまった時系列の違った平行世界になるんだ!」というのが演出として面白く、うまく各キャラクターの背景説明として機能しており、またそれぞれの動機付けもごく単純化されてたので、本作だけを観る上では問題なくそれなりに感情移入しつつ観られました。   ただ、ドクター・ストレンジって、そもそも都合のいい強力な呪物さえ手に入れればなんでも魔法で可能になってしまうキャラクターである上に、「マルチバース」設定で時系列や空間を好き勝手超越できるし、平行世界の自分を使って足りない細かい部分まで補えてしまうので、物語的カタルシスが得にくいというか、障害が障害として機能しなくなってしまってて、何か難しいことがあってもなんで難しいのか視聴者にはよくわからなくて、登場人物がなんか苦しそうな表情をしてるから大変なのかなあと思うしかなく、そこが苦しい所でしたかね。その辺は、比較的共感しやすいわかりやすいオチにすることでごまかしてるみたいな。  特に、メインの話のオチは、昔ながらの王道的なオチで私は好きな展開だったんですけど(私がパッと思ったのは「オペラ座の怪人」で「愛」の設定が変わっただけかなあという)、ただ、このオチって、マルチ・バース的世界観を最初に提示してきたのは「スパイダー・バース」と思うんですが、あれって「平行世界を自由自在に行き来できることでほとんど何でもありになっちゃうけど、それでもどうしても変えられない運命がある。運命は変えられないが、平行世界の自分同士共感して慰め合うことは可能」という結論がスパイダーマンのヒーロー性の根拠になって説得力が出てたと思うのですが、本作のオチは、その前作の前提をすべてちゃぶ台返ししちゃうオチになってるので、   おいおい  と思ってしまった感じでしょうか。良い話だと思うけど、前提条件変えちゃったら、もう全然別世界の話になっちゃうじゃんみたいな、前に苦労してたのは何だったのかみたいな。スターウォーズで言うとエピソード8の衝撃みたいなそんな感じでしょうか(私はSW-EP8好きですけど)。   というわけで、映像表現として非常に面白くそれなりにいい話で楽しく観られましたが、もうこのマルチバース設定は何でもありになりすぎてカタルシスは得難いなあ、と思ってしまった作品でありました。   そんなところです。
[映画館(字幕)] 7点(2022-05-27 16:05:29)
20.  シン・ウルトラマン 《ネタバレ》 
 「きーたぞ、われらーの、ウルトラマーン」で育った世代としましては、まさに、我らのウルトラマンがいかにして我らのウルトラマンになったかをしっかり描いてくれた作品で、ますますウルトラマンを大好きになってしまいました。   とても良かったです。また観に行くかと思います。   ただ、倫理的にそれはいかがなものか的指摘がネット上でいろいろされてて、それは、まあ私もちょっとどうかと思わなくもなかったですが、人の愚かさを描く意味もあったかと思われてギリギリアウトな部分はいちおう避けてたかなというのと、TV版でなくて映画なので大人向けの異星人交流エンタメ的エロティシズムかなあ、と思う所もあり、私的には許容範囲だけどちょっとアウト気味か、ぐらいの感触でした。   倫理的にアウトについては、シンゴジラでも、徹夜で頑張るのを称揚する場面があって、今、教員や霞が関の就業状況で大問題になっている、ブラック企業的スタンスが私自身は非常に問題と思ってたのですが、結局アニメ/映画業界の人って、ちょっと世間のモラルから踏み外した感覚の人が割と良くいると想像されて(つい先日出た某監督のセクハラの問題もいまだ解決しておらず)、その辺の非人道的感覚が制御しきれず漏れ出てくる部分が毎作ちょっとずつあるかなあと。   シン・ゴジラ→ブラック企業体質  今回→セクハラの許容範囲  という感じに、相変わらず変わってねえなあ、という感想。   あと、ゼットンとの初戦が超すごくてゲラゲラ笑いながら観られたんですけど(いいぞ、もっとやれ!)、最終決戦のところが結局何がどうなったんかわかりづらくカタルシスも得難かったので(変身ポーズには超上がった!)、次回以降の視聴で確認してみたいところです。   パンフレット/設定資料もぜひ購入したいのですが、売り切れみたいな話もあって、どうなりますやら。   そんなところで。
[映画館(邦画)] 8点(2022-05-14 23:39:53)
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