181. ヒア アフター
《ネタバレ》 多くの人が指摘するように、この作品において来世はさほど重要なファクターではない。「何か人と違う」という点を持っていること、あるいは何か傷を持っていること、という誰にでも当てはまるポイントであるに過ぎない。全ての映像が安定しており、かつイーストウッド独特の暗さも見られるが、あまり「イーストウッド節」のようなものは感じられない、素直な映像になっている。とはいっても官能的な料理教室のシーンはこの映画の白眉だし、オープニングの津波映像も強烈だ。それぞればらばらに傷を持った登場人物たちが一箇所に集まり、それぞれの拠り所を見つけていくのは必然だとしても、その構成がやはりうまい。ラストシーン、マットデイモンの妄想はかなり実験的ではあるが、彼のイメージにおいて、手を握ったときにヒアアフター(来世)の映像が思い浮かんでいないところが重要だ。その前に彼は、彼女が本当に死後の世界を体験し、また辛い体験を抱えていることに気付き、それに惹きつけられている。二度目に遭うときの手のふれあいは、死後のイメージではなく、暖かい幸せであった。形容しがたいほどの心地よい幸せがあふれ出てくるラストシーンは感動的である。 [DVD(字幕)] 8点(2011-10-29 21:48:51) |
182. オーメン(1976)
これはホラー映画ではなく、オカルト映画である、とあえて言い切ってしまおう。怖がらせるなんてことを狙っているわけではない、オカルトの雰囲気を存分に出しつつ、その人智を越えた恐ろしさを体感させる映画なのである。音楽の素晴らしさは言わずもがな。その聖書に裏打ちされたアイディアと、子供に悪魔をやつすという発想。犬という小道具も効いており、短いながらもものすごいインパクトの見せ場をタイミングよく挟む。謙抑的かつ上質なオカルト映画だ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-10-26 23:07:32) |
183. チャイルド・プレイ(1988)
これはすごくよくできた映画だと思う。人形に乗り移るのがおまじないってとこが微妙だが、それ以外は人形の使い方や視点の変化などダイナミックかつしぶといチャッキーが存分に暴れていた。良作。 [DVD(字幕)] 7点(2011-10-26 00:10:21) |
184. レイジング・ブル
ダメ人間を、ダメ人間ということなく描ききったバイオグラフィー。スコセッシの映画大好きさが少々過剰ともいえる演出をさせているが、目線そのものは極めて冷静である。ダメさをとことん描いている。ラストの「now I can see」はもちろんジェイクのことではあるまい。彼が目を開くことは有り得ない。だとしたら誰なのか? 観客だろうか。 [DVD(字幕)] 7点(2011-10-19 23:10:53) |
185. ロッキー
これはアメリカンドリームの体現などではなく、ベトナム戦争が終わった後の混沌とした世の中、何を描けば良いか分からなかった映画界と同様に、どう閉塞感から抜け出すかを苦悩する下流階級の人間たちの物語である。前半の虚ろな目をしたロッキーたちの惨めさはあえて描くまでもないが、その対比としてアポロ達が一流のビジネスマンであり、物欲の権化として描かれていることが意外と見落とされがちだ。彼がボクシングなんてどうでもいいと思っていたとしても不思議はない。彼は単なるボクシングの上手いビジネスマンだ。肝心のボクシングシーンもそれほど迫力のある、というよりは思い入れのある撮影のようには見えない(レイジング・ブルと比較せよ)。つまりこれはボクシング映画ではないということだ。やはりこの映画はアメリカンニューシネマの残滓を薄く引き伸ばしながら、新たな方向性を模索していった映画だろう。ラストシーンはハッピーエンドかのようだが、もう少し延長してみれば、きっとアポロが判定勝ちし、あの二人は「卒業」の二人のように虚ろな目で会場を去るに違いない。映画史的位置づけからすると、この映画は極めて過渡的なものだと言える。すなわち、ロッキーは非常に危ういバランスのもとで誕生した。そして今後の映画界の橋渡しになった記念碑的作品だ。 [DVD(字幕)] 6点(2011-10-18 23:20:49)(良:1票) |
186. ヒルズ・ハブ・アイズ
駄作中の駄作で時間の無駄でしかない。核実験による被害者という形をとりながらもモンスターちっくな感じにしているので、不条理なんだか不条理じゃないんだかよくわからない。描かれ方は明らかにモンスターだが、英語を話して二本足で歩き、無線を使いこなしている。それなのに人間や小鳥を生身のまま食うという意味不明な設定。畸形であることとモンスターであることは異なるはずだ。形式的にではあれ、整合性は必要。彼ら家族が躊躇無く残虐に(わざわざ斧を鋭いほうに向けたりして)殺すのは彼らが人間ではないとみなしているからだ。その割に人間のような面も出されていて、どうしようもない。そして何より、オープニングだが、枯葉剤と放射線は別である。そもそもその点で批判になっておらず、ただの扇情でしかない。くだらない映画だった。 [DVD(字幕)] 1点(2011-10-16 18:00:32) |
187. (500)日のサマー
面白い。「インセプイション」のゴードンレヴィットとは思えないほどのコミカルな役回りだが、見事にこなしている。全体的にポップでユーモラスな作風と、500日をいったりきたりする脚本がうまく調和していて楽しい。最後のオチにはやられた。オータムとは……。そして500日がまた1に戻るお洒落さ。奇跡ではなく偶然。同じようで微妙に違う。ここで最初の作者の注意書きが生きてくる。「ジェニー・ベックマン」って誰だよ、って思ったけど、きっとサマーのモデルなんでしょうね。 [DVD(字幕)] 7点(2011-10-13 07:21:56) |
188. スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス
初めて観たスターウォーズだったので思いいれはあるが、あれから10年以上経ってから観てみると、映像とかではなく、作品としていまいちであることが如実に分かる。たくさんの映画を観て成長したからなんだなぁ、と感慨もひとしおだが、やはり1からは帳尻あわせの分がかなりあるので、やりたい放題できなかったんだろうなぁ、という感じ。 [DVD(字幕)] 5点(2011-10-12 00:23:13) |
189. レッド・ドラゴン(2002)
ホプキンス、ハーヴェイカイテル、レイフファインズ、エミリワトソン、エドワードノートン、シーモアホフマンと、それぞれが素晴らしい。豪華なのにそれを感じさせない。脚本も練ってあって、捜査の過程がよくわかるが、「あーなるほど!」となるようなものが特に無く、レクターの存在感も薄かったような気がする。 [DVD(字幕)] 6点(2011-10-12 00:20:10) |
190. スター・ウォーズ/ジェダイの復讐
一応観とくか。→一応観たな。だけ。 [DVD(字幕)] 5点(2011-10-09 02:04:38) |
191. モテキ
《ネタバレ》 結局この映画はモテないセカンド童貞、もしかしたら本当の童貞の妄想に過ぎない。だが、だからこそこのストーリーはもっともらしい。妄想とはえてしてそんなものだ。酔っ払って友達を呼んで終電なくして家に泊まってキスをする、といういかにもありそうな展開で(これに共感できるかできないかは相当感想を左右するはずである)、そこからうだうだして、うまくいきそうだと思ったら無様な格好を見せてしまい、気まずくなる。そこにちょうど良く現れたもう一人の女と寝るが、好きではないという事実とそれによる罪悪感に苦しむ。これも現実によくある展開だ(自戒を込めて)。重要なのは「よくある展開」をそのまま描き出しているところにある。この「よくある」展開は現実によくあるものであって、映画のストーリーにおいてよくあるものではない。映画の主人公はそんなに即物的ではあってはならないし、セックスしたいセックスしたいと考えているような男であってもならない。そしてその過程は全て受動的である。主人公が「こうであったらいいな」という受身の発想が如実に現れている。本当かどうかは別にして、いわゆる「現代」の若者の状況を表しているとも解釈できる。しかしラストを見よ。デパルマのような回転ショットに、「ゴースト」のように泥の中で抱き合う二人。好きな人を走って追いかけて追いかけて追いつく。嫌がっても何度もキスをして、結局受け入れる女。急にまるでどこかで観たような光景が繰り広げられる。男は受動的ではなく、「まるで映画のような」アグレッシブな男になる。ここに至って現実的な妄想は映画的な現実へと昇華(あるいは減退)しているのである。いかにも真実らしい妄想は、次第に嘘っぽい映画に変わっていく。うまくこの映画はPV風の演出やミュージカルなどを挟んで「映画らしさ」を出そうとしているが、それらを除外して考えると、前半に起こっていることは現実的過ぎてドラマにすらならないようなことだ。そして全編を通してこの映画は観ることを強制する。画面にはほぼ一定のものしか映らない。そういう意味でこれは非常にテレビ的な映画だ。何を観ればよいかが決まっていて、その通りに観客は運ばれることになる。それが良いか悪いかは別として、これは結局主人公の思想を反映しているということだ。彼は見たいものしか見ず、それ以外は全てキラキラとした背景へと後退させる。ラストが最も象徴的だろう。 [DVD(字幕)] 8点(2011-10-05 00:47:34)(良:3票) |
192. スター・ウォーズ
全ての原型がここに。やはり技術はあくまで補助的なもので、メインは見せ方だろう。デススターに突入するダイナミクスはさすが。 [DVD(字幕)] 9点(2011-10-02 23:33:13) |
193. 卒業(1967)
この映画はすごい映画だが、同時にすごく変な映画だ。何が変なのかはもう少し詳しく観なければならないが、一つ挙げるとすれば過剰な演出だろう。というよりも、この映画は全てが過剰だ。そして極端にコミカルだ。過剰にシリアスな物語を過剰にコミカルに描き、極限まで寓話性を引き出しているが、それゆえにこの映画の射程は思いのほか短いということに気付かされる気がする。エレーンを動かしたものはベンではないことは明白だが、ラストシーンに多くを読み取りすぎることは危険だろう。 [DVD(字幕)] 6点(2011-09-29 00:37:24) |
194. 地下鉄のザジ
これがあのルイ・マルか、と思ってしまうほど後年とはテイストの違う作品。「ケスクセー?」と問いかけるザジが忘れられません。 [DVD(字幕)] 7点(2011-09-25 10:52:53) |
195. 世界の中心で、愛をさけぶ
これはもっと評価されてもいいはずの映画。「映画通」には低評価のようだが、脚本に関しても律子の存在が多少ご都合主義的で、何かしら理屈をつけてほしかった(婚約までしてればさすがに実家とか考えると「サク」に気付いてもいいんじゃないか、という違和感について)が、全体として考えると丁寧な伏線と巧みな演出は光っている。どうしても観るエリアを限定させてしまうような演出になってしまうが、テープレコーダーを使うという発想は特別素晴らしい。お互いの人柄がよく出ているし、最後まで効いてくる。手品や海などもしっかり伏線になっており、上手い。婚姻届や例の「助けてください」はやりすぎな気がするが、そこを差し引いても素直に面白い恋愛映画だと思う。 [DVD(邦画)] 6点(2011-09-24 23:56:33) |
196. アリス(1988)
よさがわからず。 [試写会(字幕)] 5点(2011-09-24 21:28:43) |
197. プチ・ニコラ
素晴らしい。こういう毒のない幸せな映画もたまには良いもんだ。とはいえそれだけの満足を与えるだけに平凡な作品ではありえない。オープニングのポップさはそのままに、実は巧みな脚本、構成であるし、子供たちは勿論、オトナたちののキャラクターもそれぞれ立っている。10人近くを見事に独立させ、役割をもたらすのはそう容易なことではないし、くすりとさせる王道のコメディ要素もいっぱいだ。いやな気持ちになるシーンが一つもなく、いい意味で気を抜いてほっこりとした気分になれる。逆にここまで徹底的に毒を抜けるのは画としてもストーリーとしても困難だろう。監督の力量が問われる難しい作品だったと思うが、見事である。個人的にはいつも食べている小太りの少年が面白すぎて好きだ。美しいフランス語の響きと共にどうぞ。 [DVD(字幕)] 8点(2011-09-21 19:21:49)(良:1票) |
198. パリ20区、僕たちのクラス
原作者が主演やってるってことかな? すごい映画。教室での授業シーンがこれほど画になるとは思わなかった。ただの授業のはずなのに、生徒一人ひとりが浮き上がってくるかのような錯覚。それに合わせて教師フランソワもたまにムキになったりして、一つの小さなコミュニティが生まれてくる。小さな社会にも関わらずなんという深遠さか。教師とは大変なものだと思わされる。それにしても映画的な演出がほとんど無い割に、映画として観させるこの作品はものすごい潜在力を持っている。まったくわざとらしくない。かといってドキュメンタリーほどナイーブな視点を持っているわけでもなく、ただありのままを写しているように見えるが、なにかねらいがあるのだろう。 [DVD(字幕)] 8点(2011-09-20 22:53:28) |
199. ミンボーの女
とにかく面白い。中尾、伊東などのヤクザ側のキャラと、ホテル側のキャラが素晴らしい。 [DVD(邦画)] 7点(2011-09-19 22:49:02) |
200. めし
大傑作。意味のないシーンが一つもなく、心情の機微というもののお手本。 ライスカレーという呼び方が時代を感じさせる。 [DVD(邦画)] 9点(2011-09-19 18:06:32) |