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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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201.  コント55号と水前寺清子のワン・ツー・パンチ 三百六十五歩のマーチ 《ネタバレ》 
野村芳太郎監督によるコント55号映画、見るのはこれが2本目なんだが、以前に見た「びっくり武士道」が原作のあるものだったため、オリジナル脚本ののコント55号映画を見たのはこれが初めて。亡くなった母の残した大金を持って上京した二郎と、彼と出会って意気投合した板前の欽ちゃんのコンビを描いているが、55号世代ではない自分が見てもこの二人のやりとりは見ていて楽しいし、二人とも若く(特に欽ちゃん)実にイキイキとしていて、実際の二人もこんな感じだったのではと容易に想像できる。マドンナを演じる水前寺清子が二役で演じる落語家を語り部にしている点や、冒頭、二郎が新幹線でスリに遭うシーンが野村監督の「白昼堂々」の冒頭部のセルフパロディになっているところも面白い。(ひょっとしたら本作は「白昼堂々」の冒頭で出会った55号二人の物語ともとれるのかな?)ストーリーのメインとしては欽ちゃんが母親と住んでいるアパートの立ち退き問題があって、それに欽ちゃんと二郎の新しい店を出すために奮闘する姿や、マドンナ清子に惚れた二郎といったエピソードが並行して描かれているが、まとめ方がうまく、安心して見ることができるし、野村監督の職人監督としての安定感も感じることができる。脇役も豪華で、花沢徳衛が悪役を演じているほか、清子の父を演じるのが西村晃(欽ちゃんの母親を演じる桜むつ子とのいがみ合いが楽しい。)、喜劇俳優としては財津一郎と谷幹一、当時人気だったボクサーの沢村忠まで出演している。終盤に前田武彦が登場するが、その使い方がなかなか利いていて面白い。しかしいちばん驚くのは清子の恋人を演じているのが「仮面ライダー」に抜擢される前の藤岡弘で、このころからすでに藤岡弘という感じは出ているものの、まだどこか青臭い感じがして、若いなあと思った。ちなみに「仮面ライダー」の開始は本作の2年後のこと。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-07-22 17:51:50)
202.  IAM A HERO アイアムアヒーロー 《ネタバレ》 
邦画のホラーものというと基本的に霊を題材にしたものというイメージが強く、まして本作のようなゾンビを題材にしたものは邦画ではちょっと無理があるのではと思っていたが、本作はその邦画ではなじみにくいゾンビという題材を扱いながらもかなり完成度の高いものになっていて、途中飽きることなく最後まで退屈することなく面白く見ることができた。とにかく開始20分過ぎたあたりの主人公 鈴木英雄(大泉洋)の恋人であるてっこ(片瀬那奈)がゾンビ化して英雄を襲いはじめるシーンからかなり気合いの入った怖さで目が離せなくなった。この手の大作系邦画にありがちな安っぽさやハリウッドかぶれのような感じも無く、ゾキュン発生の経緯や、よけいなドラマを一切排除した脚本も潔い。とくにゾキュン発生の経緯が一切描かれないことによって、見ていて登場人物たちと同じ目線になることができるし、またリアリティーも感じることができる。(街がパニック状態になってテレビが報道特番に切り替わる中、一局だけアニメを放送しているところが細かくて笑える。このシーンを見ていて「クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦」を思い出した。)確かに後半アウトレットモールが舞台になってからは少し失速した感があるが、それもそれほど気にはならなかった。趣味でクレー射撃用のライフルを所持している英雄がこんな状態になっても銃刀法違反をずっと気にしているというのが思わずそこかよと突っ込みたくなるのだが、本作はこの英雄(えいゆう)と書いてひでおと読む冴えない主人公がいかに本当にヒーローとして覚醒するかも見どころで、それを最後まで溜めているので、クライマックスの英雄とゾキュンの戦いが半端なくカタルシスのあるものになっているのが最高だった。ラストシーンで藪・小田つぐみ(長澤まさみ)から名前を尋ねられた英雄がそれまでと違い、「ただの英雄です」と答えるのは彼の成長とこれからゾキュンから彼女たちを守って行くという決意が感じられてすごく印象に残る。原作漫画未完の頃に作られているので終わり方としてはやや中途半端な感じがするのだが、個人的にはこの終わり方で良かったと思う。もしも続編が作られたら見たいと思うのだが、ちょっと出来が怖い気も。
[DVD(邦画)] 7点(2018-07-21 18:56:23)(良:1票)
203.  21エモン 宇宙へいらっしゃい! 《ネタバレ》 
「21エモン」は小学生の頃に放送されていたテレビアニメをよく見ていた。本作はその10年前に作られた初アニメ化となる劇場版で、テレビアニメ化を経ずにいきなり映画化してるのが珍しい。それをテレビアニメを見ていたころから四半世紀以上経ってから初めて見た。「ドラえもん」以外の藤子アニメ劇場版は短編か中編というのがお決まりなのだが、本作は一時間半の長編で、前半がエモンやつづれ屋の日常、後半がエモン、モンガー、ゴンスケの三人の宇宙旅行という構成でメリハリが利いているし、なかなか面白かった。エモンやモンガーのデザインものちのテレビアニメ版とは違うのだが、今になって見るとこのデザインのほうがしっくりくる気がする。(でも、テレビアニメを見ていたころに本作を見ていたらきっと違和感を感じていたはず。)宇宙飛行士を夢見ているエモンが実家のホテルつづれ屋の将来のこともちゃんと考えているというのは、だだの夢見がちな主人公というふうになっていなくていいし、その両方を両立させるようなラストのエモンの提案もいかにも藤子F不二雄作品らしい発想。つづれ屋を買収するためにエモンの宇宙飛行士という夢を後押しするというホテルギャラクシー社長のしたたかさがなんとも言えないし、その社長が自分の策略によって宇宙旅行に出たエモンに命を救われるという展開はちょっと皮肉めいて感じた。このクライマックスの伏線になっているウキキの木が朝日を見るシーンが印象に残る。このウキキの木のエピソード中にドラえもんがカメオ出演的に登場しているが、同時上映は「ドラえもん ぼく、桃太郎のなんなのさ」だったとのことで、このシーンは双方に同じカットが使われているとのこと。こういうお遊びは楽しくて好きだ。音楽を藤子アニメではおなじみの菊池俊輔が担当していて、一部で「ドラえもん」のBGMも使われていて久々にアニメでこの人の音楽を聴けたのが懐かしかった。エモンの声を演じる井上和彦が歌うエンディングテーマがあまり藤子アニメっぽくない気がするのだが、それが逆に良かった。企画当初は本作の後にすぐテレビアニメ化の話もあったようだが、今になって実際本作を見た後に考えると、それが流れてしまったのがちょっと残念に思う。
[DVD(邦画)] 7点(2018-07-14 18:46:52)
204.  クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者 《ネタバレ》 
劇場版シリーズ第16作。もう劇場版は長い間見てなかったけど、しんのすけの声優が交代ということで劇場版をなにか一本見ておこうと手に取った。テレビシリーズの第一話からひまわりの生まれるまでを手掛けていた本郷みつる監督が12年ぶりに手掛けた劇場版で、夜しか活動できないゲストヒロインや、周囲に信用してもらえないしんのすけというのは「ヘンダーランドの大冒険」を思わせていて、実際にそれのリメイクっぽい雰囲気があるし、ほかにも日常描写が主の前半(「アクション仮面VSハイグレ魔王」)やロボットアニメやSFに懐疑的なみさえ(「雲黒斎の野望」)など本郷監督が手掛けていたころの劇場版を思わせる部分もあり、懐かしく思える。ストーリーがあくまで子供向けに展開するのも本郷監督らしい。しかし、敵であるダークの部下二人の最期があっけなすぎて思わず過去の本郷監督のシリーズならばもう少し悪役の個性と恐怖感をうまく出せていたと思う。(「ヘンダーランドの大冒険」のチョキリーヌ・ベスタやス・ノーマン・パーは今でも強烈に覚えている。)それに、野原一家が基本的に家から出ずにクライマックスのダークとの対決を迎えるというのもスケール感に乏しくこじんまりとしていてなんか地味な印象しか残らない。本郷監督らしさは出ていると思うが、なにかこうやっつけ感もある映画だったように思う。「アッパレ!戦国大合戦」での又兵衛役が素晴らしかった屋良有作が「ブリブリ王国の秘宝」に続いておかまを演じているのはちょっと今更感があるものの、このおかまの登場も本郷監督の劇場版クレしんらしいところ。それにしてもしんのすけの声優交代のニュース。去年だったか25周年のときにまさか「ドラえもん」のような事は起こらないよなと思っていただけに知ったときは正直びっくりしたというのが本音で、今は見るのは時々になってしまったけど、本郷監督や原恵一監督のころは大ハマりで見ていたので残念な気持ちもあるのが事実なんだけど、今は矢島晶子さんに長い間ご苦労様でしたと言いたい。そして、しんのすけが新しい声に変っても「クレヨンしんちゃん」は「ドラえもん」と同じくずっと続いてほしいと心から思う。
[DVD(邦画)] 5点(2018-06-29 01:28:54)(良:1票)
205.  赤穂城断絶 《ネタバレ》 
深作欣二監督による忠臣蔵。組織対組織、権力への反抗といった物語の描き方や、決して美談だけに終わらせないところ、そして赤穂城を明け渡すか否かのシーンの浪士たちの熱気や討ち入りシーンの血なまぐさい派手な斬り合いといった部分に深作監督らしさは感じるものの、全体的にはかなりオーソドックスな作りで安心して見られる反面、深作監督なのだからもう少しドラマ的に激しさや盛り上がりがあってもよかったのではと思えなくもない。吉良を演じているのが金子信雄で、見る前は山守のようなキャラの吉良を期待していたが、確かに憎々しさはよく出ているものの、インパクトはそれほどなくやや肩透かしといったところ。浪士の一人である橋本(近藤正臣)にスポットがあてられ彼が主役のサイドストーリーが描かれているのは本作の中でいちばん深作監督らしさを感じる部分で、実際にこの部分は面白かった。(いつもの深作監督のヤクザ映画ならこういう人物こそ主人公だよなと思う。)忠臣蔵映画では珍しく討ち入り後の四十七士の切腹までを描いているのも新鮮だった。ここがけっこう長いのだが、ここがあることで最初に書いたように決して美談では終わらせないぞという深作監督の意地も感じることができる。深作監督は当初吉良を主人公に本作を構想していたみたいだが、一度はそういう吉良側から見た忠臣蔵を見てみたい気もする。それともう少し、深作監督は後年になって「忠臣蔵外伝 四谷怪談」を手掛けているが、あの映画は本作に不満を持っていた深作監督のリベンジの意味もあったのかなあと思ってみたりもする。これで深作監督の時代劇映画はすべて見たことになるのだが、思えばいちばん最初に見た深作作品が「忠臣蔵外伝 四谷怪談」だった。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2018-06-24 17:17:05)
206.  トラック野郎 天下御免 《ネタバレ》 
シリーズ第4作。二人マドンナ(由美かおる、松原智恵子)が登場したり、主題歌(良い歌だよなあ。)がかかるオープニングのタイトルバックに一番星号のおもちゃで遊ぶ子供が出てきたりして、シリーズがだんだん人気が出てきたのが分かる。始めたころには想定していなかっただろう子供層にも人気が出たようで、それ故にか、これまでの3作に比べると作風はソフトな印象で、桃さん(菅原文太)のスケベさやハチャメチャさも控えめ。ライバルのコリーダ(杉浦直樹)も今一つインパクトに欠けているのだが、話自体は面白く、相変わらず桃さんの優しさや男らしさは同じ男でも見ていて憧れるものがあるし、それだけでなく今回は松下家、ジョナサン(愛川欽也)と家族のエピソードにも焦点があてられていて、旅先で桃さんだけでなくジョナサンも由美かおる扮する巡礼のマドンナに惚れた結果、帰宅後にそれが妻(春川ますみ)にバレてしまい、家族に逃げられたジョナサンが自棄になり、自分のトラックの装飾を破壊するシーンはその前にジョナサンの子供を一人ドライブインの夫婦(京唄子、鳳啓助)に養子に出すくだりがあるのでこのシーンはよけいに切なさが印象に残る。その家族が桃さんの嘘によってジョナサンのところに帰ってくる展開はベタなんだけど、養子に出した子供も戻ってくることになって、「やっぱりうちは全員揃わないと松下家って感じがしない。」というセリフにはなにか妙に感動してしまった。そのほか、手違いで渡ってしまったラブレターから自分が桃さんに惚れられていると勘違いした松原智恵子扮する元女性トラッカーが真実を知ったときの切なさもよく伝わってきて印象に残る。(やっぱ自分だったら由美かおるよりも松原智恵子だな。って何を書いてるんだ。)今回、音楽が木下忠司に戻っているが、由美かおるがゲストのためか、見ていて映像的にそれを思わせる部分がないにも関わらず、つい音楽がそれっぽく聞こえるような気がして「水戸黄門」を思い浮かべてしまった。(まだこのころ「水戸黄門」にお銀は出てなかったっぽいのに。)あと出演者で気になったのは倉敷のドライブインのシーンで鶴光と一緒に出ているアフロの鶴瓶の異様な若さにビックリ。(当時20代)マドンナ(由美かおる)の恋人役で誠直也(アカレンジャー)が出ているが、オープニングのクレジットには誠直也と並んで宮内洋(アオレンジャー)の名前も出ていて共演を一瞬期待してしまったのだが、宮内洋の出番はカットされてしまったのか、登場することはなかったのは少し残念。松原智恵子の出産シーンに産婆役で出ている浦辺粂子。同時期に公開された「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」にも出演している。そういえばあの映画もダブルマドンナだった。やっぱりこのシリーズ、寅さんをかなり意識してるんだなぁ。
[DVD(邦画)] 7点(2018-06-02 23:05:17)
207.  トラック野郎 望郷一番星 《ネタバレ》 
シリーズ第3作。かなり久しぶりに(約3年ぶり)このシリーズ見たけど、やっぱり面白かったし、相変わらず惚れっぽくてバカで単純な、そして熱い桃さん(菅原文太)がとにかく魅力的で、やっぱり毎回思うけど見ていて惚れる。今回は3作目ということもあってか、桃さんの故郷の話が語られたりしてこのあたりから本格的に長期シリーズ化を意識しているみたい。その桃さんが過去のトラウマから馬が嫌いになった話も語られているが、それは北海道へ向かうカーフェリーの中で出会った今回のマドンナ(島田陽子)が牧場の経営者と知るやあっさり克服し、逆に馬について調べはじめるのはいかにも桃さんらしくて笑える。薬殺されそうな生まれたばかりの病気の仔馬に一晩中寄り添って治してしまうのはよく考えたら無茶苦茶なんだけど、桃さんの優しさを感じずにはいられないし、惚れたマドンナが自分ではなく獣医の男と結婚することが分かっても「おめでとうございます。」と潔く引き下がるのも、まさしく男らしくカッコいい。このシリーズは「男はつらいよ」シリーズを意識している部分も多くあるのだが、見ていて寅さんにゲスト出演する菅原文太というのを見たかったとつい思えてしまう。それだけでなく、トラック野郎たちの友情というか、きずなというか、そういったものもちゃんと描かれているのもこのシリーズのいいところで、今回、ライバルとして登場する北海道のトラック野郎であるカムチャッカ(梅宮辰夫)が、桃さんと市場まで桃さんとトラックで競走したり、誤解から二人が殴り合いの対決をするなどを経て、最後には仲間になるのも前回のボルサリーノ2(田中邦衛)のときもそうだったが、単なる勧善懲悪ではなく、お互いを認め合うことの大切さをきっちりと描いていて良い。(冒頭の広島で警官(室田日出男、川谷拓三)に問い詰められるトラック仲間(分かるかな?分かんねえだろうなあ。)を無線を使って助けるのもなんかいい。)だまされて金を持ち逃げされたジョナサン(愛川欽也)がトラックを売ると言い出すのもジョナサンの男気を感じる。今回、桃さんがクライマックスのトラック激走で同乗するのは40トンの魚。途中の山道で細いつり橋を大型トラックで渡るシーンは本当にアクション映画の一場面のようでハラハラすることができ、これまで見た激走シーンの中でももっとも見ものだ。都はるみが本人役で出演しているが、その前に都はるみファンのトラック野郎・宮城県(吉川団十郎)が事故死するシーンが描かれていたためか、登場シーンにとくに違和感は感じなかった。その宮城県の事故のシーンはイブ・モンタン主演の「恐怖の報酬」のラストを思い起こさせるもので、きっと鈴木則文監督は映画が大好きなのだろうと思わずにはいられない。
[DVD(邦画)] 8点(2018-05-26 18:25:32)(良:1票)
208.  仁義の墓場 《ネタバレ》 
実在したヤクザである石川力夫の壮絶な生き様を描いた深作欣二監督の映画。とにかくこの主人公 石川力夫(仮名ではなく実名で登場するというのがすごい。)がとんでもない男で、終始何を考えているのか分からない凶暴さを前面にむき出しにしていて、薬や女に手を出す、親分(ハナ肇)やいつも気にかけてくれている兄弟分(梅宮辰夫)にまで牙を向くというまさに仁義なきヤクザという感じでその異様さがめちゃくちゃ際立っている。それを演じるのがそういうのとは程遠いイメージの渡哲也(深作監督の実録ものということもあって先入観からつい主演は菅原文太と思い込んでしまっていたのだけど。)というギャップが面白いし、他社出身の俳優が主演だとイマイチ持ち味が生かせない監督も多くいる中、見事に全編通して「仁義なき戦い」のような熱気にあふれたこの時期の深作監督らしい映画になっていて、力夫には感情移入や同情といったものが全くできず、むしろ嫌悪感さえあるのについ見続けてしまう。渡哲也は最初は梅宮辰夫と一緒にいるシーンとか違和感を感じていたのだが、見ているうちに気にならなくなったし、イメージを覆すほどの怪演を見せていて、存在感も圧倒的。病み上がりで力夫を演じていたらしいのだが、その影響と撮影の疲れからか、とくに後半の力夫が麻薬におぼれてからは、役としての演技ではなく、渡哲也自身が体調不良なのではと思えてきて、役柄と役者の区別がつきづらくなってしまったが、それが却ってリアリティを感じさせるものになっている。力夫がうつろの表情で妻(多岐川裕美)の遺骨を食べるシーンが目に焼き付くのだが、とくにこのシーンの撮影時などは相当体調が悪かったのではと思えてしまう。中毒性の強い映画で、深作監督の映画の中でもカルト映画と呼ばれているのもわかる映画だが、中毒性だけでなく、渡哲也のそういう状況下での演技にもカルト映画と呼ばれる要因があるのではないかと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2018-05-19 18:46:33)
209.  しゃべれども しゃべれども 《ネタバレ》 
一人の若手落語家(国分太一)を主人公にした平山秀幸監督の映画。以前から気にはなっていたがなかなか食指が動かず、今になってようやく見たのだが、いかにも日本映画らしい雰囲気のよく出た映画になっていて、それに落語という題材がうまく合っていて生かされていてまさにこれぞ日本映画にしか出来ない映画といえる映画になっていて素直に面白かった。主人公である三つ葉(本名:外山達也)はなかなか真打に上がれないでいるが、それでも落語が好きで決してあきらめようとはしない姿勢が、見ていてつい応援したくなるし、彼の開いた落語教室に集まってくる三人がそれぞれ他人との会話が苦手な女性や、しゃべりが下手な野球解説者などコンプレックスを抱え、この三人と三つ葉の関りもちゃんとドラマとして面白くできていて、見始めてすぐは三つ葉が真打になるまでの話かと思っていたのだが、そうではなく三つ葉を含めた四人が自分のコンプレックスとそれぞれに向き合い、互いに一歩踏み出すまでが描かれていて、本作のテーマは落語そのものよりも他人との関り、自分の思いを伝えることの大切さ、これにあるのだと感じることができ、そうしたらとてもこの四人がとても身近な存在に思えてきた。三つ葉の元にやってくる三人の中でも、関西から引っ越してきた阪神ファンの少年がとくに良い味を出していて、この少年は本作の中でも特に印象に残った。その他の出演者でいうとやっぱり三つ葉の祖母を演じる八千草薫がなんともチャーミングで、落語の演目をつぶやきながら玄関先を掃いたりしている姿がなんとも言えないし、思わずこういうおばあちゃん、良いなあと感じさせてくれるのが嬉しい。落語が題材の映画とあって劇中に落語が披露されるシーンが多いのだが、三つ葉の師匠を演じる伊東四朗も、独演会における国分太一演じる三つ葉の落語も本当に自然な感じで、今まで一回もライブで落語を聞いたことがないのだが、思わずライブで落語を聞いてみたい、そんな気持ちになれたのも嬉しかった。物語としては、さっきも書いたように四人それぞれが一歩踏み出たところで終わっていて、明快にそれぞれの問題が解決したというところまでは描いていないが、それが逆に良かったし、この後のそれぞれの人生を想像してみるのも楽しい。なんだか見終わって久々に気持ちの良い映画を見た気がしたし、見て本当に良かった。平山監督は大作映画も手掛けているが、それよりもこういう地に足のついた映画のほうが持ち味が出ているように感じる。
[DVD(邦画)] 8点(2018-05-05 21:58:15)(良:1票)
210.  白昼の死角 《ネタバレ》 
角川春樹が「悪魔が来りて笛を吹く」に続いて自社作品以外でプロデュースを手掛けた犯罪映画。戦後を舞台に手形詐欺を繰り返す男の生きざまを描いた大作であるが、多少の雑さはあるものの、詐欺の手口の爽快感に加え、出演している俳優陣も豪華で、中でもやはり主人公・鶴岡七郎を演じる夏八木勲の存在感、あまり主演作を見たことなく、どちらかといえば脇役の印象のほうが強いのだが、鶴岡の冷徹な悪人という部分をうまく出していて主役として見事なはまり役。事件を追う検事役の天知茂もそれ以上の存在感があり、緊張感のあるこの二人の対決もみどころの一つとなっていて、2時間40分近い長尺(村川透監督の映画でここまで長いのは珍しい。)ながら最後まで飽きずに見ることができた。最初のニセ会社を使った詐欺の部分における藤岡琢也演じるニセ社長が鶴岡に演技指導を受けるシーン(この藤岡琢也や西田敏行の使い方がさりげなく良い。)や、原作者の高木彬光がカメオ出演したそのニセ会社の社員を募るオーディションのシーンは思わず笑ってしまう。カメオ出演といえば初期の角川映画では角川春樹がほぼ必ずカメオ出演しているのが常だが、本作では鶴岡に金をだまし取られた専務(佐藤慶)の会社の社長役で、出番やセリフもいつもよりも多い気がする。冒頭は隅田(岸田森)の焼身自殺というショッキングなシーンだが、それに対してラストは鶴岡が替え玉を使って焼身自殺を装って国外逃亡というのが見事にリンクしていてそういうところも良かった。(ちゃんと伏線となるセリフも劇中にあり。)ただ、鶴岡の詐欺をひとつひとつもう少しじっくりと見たかったという思いもあって、そういう意味では映画よりも連ドラ向けの物語なのかなと思った。渡瀬恒彦の連ドラ版も機会があればいつか見てみたい。とはいえ、今まで見た村川監督の映画の中ではいちばん面白かったことは確か。ダウンタウンブギウギバンドの主題歌も映画によく合っていたと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2018-05-03 19:29:30)
211.  ルパン三世 ナポレオンの辞書を奪え<TVM> 《ネタバレ》 
テレビスペシャル第3作。久しぶりに見る山田康雄のルパンだったのだが、中盤あたりでルパンが変装で銭形と入れ替わり、山田康雄が演じる銭形というのが見られるのはかなりのレア感がある。でも、印象に残るのはそこぐらいで、全体としては作画をはじめ作りがかなり雑で、いくらテレビ作品とはいえもうちょっと丁寧に作ろうよというレベルだし、ストーリーもルパン帝国とかナポレオンの辞書とかスケールの大きなネタなのだけど、多国籍軍とかはっきり言ってやりすぎで散漫なうえにテンポもあまり良くない。それに仕方のないことだが今見ると湾岸戦争と絡めているあたりに時代を感じてしまう。初期のテレビスペシャルを手掛けていた出崎統監督だが、それにしては今回、止め絵とかなく、演出もおとなしめだなと思ったら、なんと出崎監督は監修だけで正式な監督を置かずに作ったっぽいのもなんかスタッフの適当さを感じずにはいられなかった。ゲストヒロインが日本人なのだが、それも別にいてもいなくてもという気がした。でも、そのヒロインの声をやっていたのが戸田恵子で、久しぶりに声優として見たのだが、やっぱり実写の女優としてより、声優としてのほうが見ていてしっくりくると思った。
[DVD(邦画)] 5点(2018-04-18 19:02:18)
212.  王と鳥 《ネタバレ》 
宮崎駿監督や高畑勲監督が影響を受けたというフランスのアニメ。日本での公開時に高畑監督が字幕も手掛けていることもあって、偲ぶ意味も込めて初めて見てみた(その目的で本作を見るというのはちょっと違う気もするけど。)のだけど、抜ける床など仕掛けの多い城や、追われる男女二人、地下にいる市民、そしてラストの巨大ロボットなどカリ城やナウシカやラピュタで見たようなシーンが出てきて、まさに初期の宮崎、ジブリ作品を思い浮かべずにはいられない描写が多く、どんなに天才と呼ばれる作家でも必ずその根底には何かしら影響を受けている作品があるものなんだと感じることができる。しかし、既に書かれている方も何人かおられるが、初期の宮崎アニメが明るい冒険活劇的なのに対し、本作は作られた時代性もあってか、少し暗めで権力への風刺があって、テンポもゆったりとしている。とくに権力への風刺は強く、自画像の王様が本物に成り代わるというアイデアからして皮肉めいているし、追われる身の二人を助ける鳥も決して完全なる善のイメージで描かれてはいないことにも驚かされる。よくあるおとぎ話なら、悪い王様は鳥によって滅ぼされ、羊飼いの娘と煙突掃除人は幸せに暮らしましたとさで終わるところをそうはせずに、鳥が乗り込んだ巨大ロボットが城を破壊してしまうラストは少々ひねりすぎのような気がするのだが、王様も鳥も結局は同じという皮肉はなんとも辛辣で強烈。巨大ロボットが完全に破壊された城の瓦礫の上でまるで何かを考えているように座り込んでいるラストショットは否応ないもの悲しさと虚無感に包まれているが、この感じがたまらなく良い。でも、欲を言えば鳥によって解放された市民たちの歓喜にあふれたシーンなどをもっと強調しても良かったのではないか。それと、90分未満の短い映画だが、やや間延びしているように感じた部分もあったのはちょっと残念だったかな。アンデルセンの童話が原作とのことだが、見る前にそれは忘れたほうがいいかもということを最後に付け加えておく。
[DVD(字幕)] 6点(2018-04-14 18:47:26)
213.  安城家の舞踏会 《ネタバレ》 
階級の消滅によって没落した華族 安城家の最後の一夜を描いた吉村公三郎監督の映画。実際に新憲法が公布され、華族制度が廃止された年の映画で、当時としてはかなりタイムリーな内容。それを今見るのはいくらなんでもいかにも古い映画に感じてしまうのではと見る前は思っていたのだが、実際に見てみると歴史の1ページを垣間見ているような感じで、最後まで興味深く退屈することなく見ることができた。今までの立場がなくなることへの安城家の人々のそれぞれの思いも繊細に描かれていて群像劇としても見ごたえのあるものになっているが、中でも父 忠彦(滝沢修)や長女 昭子(逢初夢子)が動揺しきっている中、一人物おじせずにしっかりしている次女 敦子(原節子)と達観しきったような長男 正彦(森雅之)。この二人がとくに印象的で、この二人の存在がこの映画を引っ張っている。話がほぼ安城家の敷地内のみで展開し、出演者も舞台出身者が多く、全体的に舞台劇臭さもあるのだが、吉村監督の演出は冒頭から冴えていて、いかにも映画的で、このおかげで冒頭から引き込まれた。信じていた新川が実は自分の肩書だけを信用していたと知り、落胆する忠彦など、人間関係の気薄さや、人間の弱さなどもしっかりと描かれているのもよかった。戦後2年ほどのころの映画なのだが、どこかヨーロッパあたりのおしゃれな外国映画のような雰囲気が漂っているのも新鮮でちょっと驚く部分でもあるのだが、華族という世界のエレガントさを表現するにはこの日本映画離れしたような雰囲気が最適で、これが見事に成功している。舞踏会を背景に描かれるそれぞれの人間模様も見どころなのだが、やはり舞踏会が終わった後のラストシーンの忠彦と敦子のダンス。舞踏会でのドロドロした人間模様が描かれたあとのこの二人のダンスシーンはそれまでの人間模様のドロドロさがウソのような一切の汚れもない美しさがなんとも印象に残る名シーンで、ここに作り手である吉村監督や脚本を担当した新藤兼人監督のメッセージが集約されているような気がする。カーテンから差し込む朝日はこれから始まる安城家の人々の新しい人生の希望の光なのだ。(このときカーテンがダンスをするように風に舞っているのがなんともニクイ。)最初に書いたように見る前は不安のほうが大きかったのだが、じゅうぶんに面白かったし、見終わったあとの余韻もたまらなく、本当に見てよかった。ところで、原節子はこの映画の2年後に同じ新藤兼人脚本の「お嬢さん乾杯」(木下恵介監督)でも主人公の没落華族の令嬢を演じているが、それもなかなか興味深い。小津作品や成瀬作品で市井の人を演じていてもハマる人なのだが、こういうお嬢様役もやっぱり良いなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2018-04-08 00:30:03)
214.  クレージーだよ 天下無敵 《ネタバレ》 
植木等と谷啓がいがみ合ってばかりいる二人の男(役名が猿飛と犬丸というのが既に笑える。)を演じてダブル主演をしている東宝クレージーキャッツ映画の一本。ライバル同士の隣どうしの会社のサラリーマンである二人が互いにスパイになり、それぞれの会社の新製品についての情報を得ようとするのだが、もうこの二人のバカなやりとりを見ているだけで楽しいし、とくに植木等の豪快で明るいキャラクターを見ていると自然と疲れや悩みなんかぶっ飛んでしまって元気が出てくる。やはり無責任シリーズやその他のクレージー映画での植木等のポジティブな演技は大好きだと感じられたのが嬉しい。植木等の会社の新製品であるモデルハウスの近未来的な感じが今から見るとすごくレトロに感じた。国際的産業スパイが登場する終盤の展開も無茶苦茶だが、この無茶苦茶さがクレージー映画、田波靖男脚本作品の良いところである。後半は立体テレビをめぐる話になるが、今から見ればこの時代に立体テレビというのはかなり時代を先取りしている印象を持ってしまうのは仕方がないか。(当時はもちろんギャグでやってると思うけど。)二人がクビになり会社を去っていくラスト近くのシーンは坪島孝監督らしく少しペーソスも感じさせるものになっているのが良い。かなり久しぶりに見たクレージー映画だったのだが、やっぱり面白かったし楽しかった。こういう映画は肩の力を抜いて気楽に見るのがいいね。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2018-03-26 01:06:05)
215.  超高速!参勤交代 リターンズ 《ネタバレ》 
シリーズ第2作。前作で無事に参勤を済ませた湯長谷藩一行が、今度は藩で一揆が起こったことにより、参勤の倍のスピードで交代をしなければならなくなるという出だしで、物語は前作のラストシーンから始まっている。前作を見たのが三年ほど前でうる覚えな部分もあったことからちょっと心配になってしまったのだが、そこは大丈夫だった。今回も娯楽時代劇としてよくできた映画になっていて、続編としての水準はじゅうぶんに保っている。殿様(佐々木蔵之介)をはじめ家老(西村雅彦)や家臣たちも相変わらず本当に気持ちの良い連中で、演じる俳優たちもよくハマっていて安心して見ていられるところに続編映画としての強みを感じる。(深田恭子だけなんか違う気がするのも相変わらずだが、それもまた良い。)少し不満を言えば前作はいかに五日間で参勤交代で江戸へ行くかに面白さがあったわけだが、今回は前半で湯長谷まで到着してしまい、後半は黒幕である松平(陣内孝則)との対決になだれ込むというのは、わかってはいるがもう少し湯長谷までの道中を見たかったという気がしないでもない。シリアスな部分も前作に続きあるのだが、2作目ともなれば、このシリーズはこういうものというイメージが出来上がっているせいか、たいして気にはならなかった。二部作の後編のような位置づけなので、このシリーズはこれで完結なのだろうけど、シリーズ2作ともちょっと昭和のプログラムピクチャー時代劇を思わせるような単純明快な内容で、現代の時代劇映画ではちょっと貴重な存在かも知れない。前作のレビューでも書いているが、やはりこのシリーズのような作風はけっこう好きだ。
[DVD(邦画)] 6点(2018-03-18 01:57:51)
216.  ゲゲゲの鬼太郎(2007) 《ネタバレ》 
「ゲゲゲの鬼太郎」の実写映画版。続編は9年前に見ているが、1作目である本作をまだ見ていなかったことに気づき、見る必要もなかったかもしれないが、今更ながらに鑑賞。やはり本作も2作目を見たときも感じたのだが、普通のファミリー向け映画という感じで、そこを逸脱したようなものは感じられないし、輪入道役で顔だけ登場する西田敏行など、出演者たちのコスプレショー感は2作目よりもこちらのほうが増しているが、ストーリー性を求めて見る映画でもないのでそれはそれでいいし、大泉洋のねずみ男や田中麗奈の猫娘など相変わらずハマっているのは見ていて安心できる。(本来はこちらが1作目で以前見たのが2作目なのでこの言い方は少々変かもしれないが。)本作の鬼太郎は両目がある設定で、その説明がされる2作目を先に見てしまっているために自然と受け入れられたが、今になって見るとクレーム対策かと思えてしまうところもある。監督は「釣りバカ日誌」シリーズを手がけていた本木克英監督で、妖怪役で谷啓やさっきも書いた西田敏行が出演してるが、冒頭に登場する建設会社の社長役で鶴田忍(「釣りバカ日誌」では鈴木建設次期社長になる常務役。)が出演しているのがなんか笑える。そういえばこの実写版シリーズは東映じゃなくてなぜか松竹の映画じゃないか。
[DVD(邦画)] 5点(2018-03-10 16:19:15)
217.  トイ・ストーリー 謎の恐竜ワールド<TVM> 《ネタバレ》 
「トイストーリー3」のその後を描いたテレビシリーズ第2作。見たのはちょうど2年ほど前で、これが「トイ・ストーリー」のテレビシリーズ見るの初めてだったんだけど、テレビシリーズだからと手を抜かずに22分という短い時間に見せ場を作り、あっという間に見せきるというのがよく、最後まで退屈することなく楽しめたし、ピクサーのテレビシリーズであっても良質なものを作ろうという姿勢に拍手。自分をおもちゃだと理解していない恐竜に対してバズが言う言葉が映画第一作を知ってると思わず笑ってしまう。あんた人のこと言えないだろ。
[CS・衛星(吹替)] 6点(2018-03-05 19:08:22)
218.  サバイバルファミリー(2017) 《ネタバレ》 
ある日、電気(をはじめとするライフライン)が地震など前触れがなにもなく突然一斉に停止したらというこの設定自体はシミュレーション映画として見た場合、もしこういう風になってしまったらと考えるとゾッとするものがあった。被害を免れているとの情報を信じて徒歩や自転車で大阪を目指す人々が高速道路にあふれているシーンなどは圧巻でよけいにそういうことを考えずにはいられない。そういう状況の中、主人公一家が東京から奥さん(深津絵里)の実家がある九州まで自転車で向かう姿を描くロードムービーでもあるわけだが、この家族の道中にもっと緊迫感があっても良かったのではというのが本当のところで、そういう部分が物足りないし惜しい。だからといってコメディーの部分に矢口史靖監督らしい突き抜けた部分があるのかと言われればそうでもなく、逆に増水した川を自転車と一緒に渡っていた父親(小日向文世)が自転車の重みに押しつぶされて沈み行方不明にという展開にはなんでそうなるのと唖然とするしかないし、その後、残された三人が線路を歩いていて野犬に襲われるところも何やらシリアスすぎて、ひょっとして矢口監督、作風変わったかと思うほどだったのにはビックリ。でも、良かったところをあげると終盤近くまで劇伴音楽を使わなかったのは良く、このおかげでさっき書いた二つのシーンも必要以上に煽られることなく落ち着いて見ていられたのは良かった。それに農家の件もなんか心地よかった。(「神去なあなあ日常」やって矢口監督がスローライフに目覚めちゃったか?それはさすがにないか。)一方で最後のライフラインの復旧が唐突だったりして消滅の原因は結局最後までよく分からなかった(太陽フレアがどうとか言ってるけど。)のはもやもや感が残る。それに全体的につまらなくはないものの、やはり矢口監督にはこういう話がシリアスな方向にいく映画は似合わないなと思う。笑いどころもいつもに比べて少ないが、頼りない父親に対して文句を言う娘(葵わかな)に対して母親がかける「お父さんはそういう人なのよ。」というセリフには思わず大笑いさせられ、このセリフが本作中でいちばん印象に残った。
[DVD(邦画)] 6点(2018-03-03 18:35:48)
219.  江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 《ネタバレ》 
石井輝男監督の映画は「網走番外地」シリーズを中心に10本以上見ているが、今まで石井監督の手掛けたカルト映画を見る機会がなかった。(初めて石井監督の名前を聞いたのがカルト映画の有名な監督としてだったにも関わらず。)この映画で初めて石井監督のカルト映画を見たことになるのだが、冒頭の精神病院のシーンからもう怪しさ満点ですぐに引き込まれた。主人公(吉田輝雄)が精神病院を抜け出してからの前半のストーリーだけを見ればミステリーによくある展開で、この部分はそこまで過激かなあと思いながら見ていたら、後半の島が舞台になるあたりから雰囲気がやばめになり、その後はこれぞカルト映画という展開で目が離せなくなった。とにかく孤島で奇形人間を作り出した主人公の父親(土方巽)の完全にイってしまっているキャラが強烈でインパクトがあり、彼が作り出した奇形人間という発想自体が衝撃的で、冒頭の精神病院のシーンを含めていろいろ狂っているとしか言えない映画だ。(もちろん誉め言葉。)江戸川乱歩の複数の小説をミックスさせて書いた脚本らしいが、今まで見た乱歩原作の映画がどれもカルト映画的だったのである程度予想していたのだが、これは想像以上で、石井監督のカルト監督としてのすごさはコレ一本見ただけでじゅうぶんすぎるほど理解できるし、実際、すごく面白かった。(しかし、他人に薦めようとはぜんぜん思わないし、今までソフト化してなかったのも納得できる。)それに石井監督の「網走番外地」シリーズをすべて見終わってすぐに見たせいか、監督の両方の側面を期間を置かずに見られたのは良かったと思う。回想シーンでカニを踊り食いするシーンもなかなか衝撃的だった。ラストの花火のシーンは悲しいシーンなのに笑えるとのうわさを聞いていたのだが、見た直後は笑わなかったものの後からなぜか笑いがこみ上げてきた。明智小五郎も登場しているが、演じているのが井上梅次監督の「黒蜥蜴」と同じ大木実なのはちょっと嬉しい。7点にしようか迷ったが、やっぱり初めて見た石井監督のカルト映画ということで敬意を表して8点を。DVD化ありがとう。
[DVD(邦画)] 8点(2018-02-25 01:45:53)(良:2票)
220.  網走番外地 吹雪の斗争 《ネタバレ》 
シリーズ第10作で1作目から2年間にわたってずっとこのシリーズの監督と脚本を手がけていた石井輝男監督(この手のシリーズものをローテーションを組まずに2年で10本も一人の監督でというのはけっこうすごい。)による最後のシリーズ作品で、健さん演じる主人公の名前が「橘真一」である最後の作品でもある。しかし、今回は石井監督最後の登板(シリーズ自体を終わらせるつもりだったとも聞く。)ということもあって今までと違うことをしようとしたのか、時代設定が変わるなどこれまでと雰囲気の異なる作品になっている。前半は刑務所に入れられた42号こと真一が脱獄するまでを描いているが、同じく前半刑務所が舞台だった「大雪原の対決」と比べると、ムショ仲間が一新されたこともあってか、真面目だがやや地味で、なにか物足りないし、今年になってずっとこのシリーズを連続で見ていたせいか、やはりこれまでレギュラーだった大槻(田中邦衛)や鬼寅(嵐寛寿郎)がまったく登場しないのはさびしい。前半のエピソードが後半にちゃんとつながっていくという構成も「大雪原の対決」のほうがうまかったような気がする。それでも後半は「荒野の対決」あたりから始めた西部劇のようなアクションシーンなどこのシリーズらしい活劇としての楽しさはちゃんとあり、やはりこの部分はそれなりに楽しめる。前半登場する真一のムショ仲間の一人として東映に入ってきたばかりの菅原文太が出ていて、明らかにほかの連中よりも風貌的に目立っていて、オーラも既にある感じだが、あくまでチョイ役なのが惜しい気がする。でも、この翌年にマキノ雅弘監督の「ごろつき」で健さん演じる主人公の友人役としてメインキャストで登場し、やがては健さんと同様に東映を代表する俳優のひとりになっていくんだなと考えるとなにか感慨深いものがある。
[DVD(邦画)] 5点(2018-02-10 17:08:09)
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