201. エム・バタフライ
フツーに考えてあり得ないオハナシ・・・? いえいえ、そんなことありません。誰にでも経験はあるはず。あれほど恋焦がれた相手に「こんなはずじゃなかった」と落胆したことが。恋をするとき、人は相手のことを自分の価値観という動かしがたいフィルターを通して見る、いえ、見ざるを得ないのですから。そして現実を知って叩きのめされる。この映画は、そんなどこにでも転がっている恋愛での現象がものすご~く極端な形で出現してしまった例のお話だと言えましょう。始まってすぐに「あ~、勘違い」の恋なら誰にだってあるけれど、始まって10年も経って勘違いに気づかないならそれはもう本人たちにとっては「真実」に・・・。そもそも、ガリマールは蝶々夫人の舞台日本と、自分のいる中国もごっちゃになっている様子。いずれにしても、恋愛は多少の勘違いを真実と信じる妄想力や幻影を見る想像力がない人間には出来ません。でもでも! 映画としては好みが分かれるでしょうね、これは。キワモノに成り下がることなく、ぎりぎりのところで作品性を保っているのは主演2人の俳優に負うところ大でしょう。ジョン・ローンの女装はなかなかのものでした(声の野太さは如何ともしがたいけど)。こういう「色事」で身を滅ぼす男を演じさせるにはやっぱりジェレミー・アイアンズ。護送車の中でのシーンは切な過ぎ、あのラストシーンはあらゆる意味でイタ過ぎます。 [ビデオ(字幕)] 7点(2009-09-28 15:54:04) |
202. クララ・シューマン/愛の協奏曲
劇場は連日3時間並びの激コミというのに、レビューがないとは・・・。それもそのはず・・・かどうか、・・・うーむ、これはいかんでしょう。(完全に好みの問題だが)キーマンとなるブラームスがなんというかちょっと軽薄なにーちゃんでして、これでまずは興醒めです。そして、クララがゴツい。たしかに8人の子を産んでいるので肝っ玉母ちゃんとも言えますが、残る写真からのイメージとはかなり×××。この軽いヨハネスと所帯じみたクララ、これはちょっと埋めがたいギャップを感じるのですよね。ストーリー的には、まあ、予想通りに展開していく(知られているエピソードの範疇を出ないのがつまらんといえばつまらん)のですが、肝心のラストシーンが・・・意味不明。何なんでしょう、あれは。この映画、主役はどなたでしたっけ? と聞きたくなる。一番不満なのは、ブラームスのクララへの眼差しの描き方です。あれはないでしょう。ブラームスも、末裔にあんな描き方をされて、さぞや草葉の陰で歯軋りしていることでしょう。私なら化けて出るな、多分。ブラームスファンの方は見ない方が良いかも知れません。見ていて嬉しくも哀しくも楽しくも辛くもならない不感症映画。しかし、久しぶりの劇場鑑賞はやはりいいものでした。 [映画館(字幕)] 5点(2009-09-24 15:47:52) |
203. おくりびと
脚本(シナリオ)を学ぶ者として一番強く感じたことは、この作品のシナリオは、シナリオ学校でお手本として使うに格好の作品であるということです。セリフで説明するな、と耳タコなほど言われるわけですが、この作品における最大の見せ場は、広末さん演じるところの妻のセリフ「夫は納棺師なんです!」なのです。これを、夫婦の会話として「私が間違ってたわ。あなたは納棺師という仕事に誇りを持ってるのね」などとやってはペケなのよ。また、展開においても、小道具の有効な使い方、主人公の変化と、まあ、典型的なほどにキチンとされており、これ、ヘンな授業を聞かされるより、よっぽど良い教材となり得ます。そういう意味では、これが初シナリオだという小山氏はさすが構成作家としてその素養をキチンとお持ちであったことには感心の極みであります。反対に、ニュース映像で、アカデミー賞のレッドカーペットに小山氏がおらず、監督・出演者に混じり、謎の男がいることに激しく疑問を抱いていたところ、後日、その謎の男がTBSのお偉方だったと知り、もの凄く怒りを覚えたことも事実であります。小山氏のスケジュールの都合だったのか否か知りませんが、だとすれば尚更、TBSの人間は遠慮しろよ、と言いたい(これについての監督・主演者の見解も是非知りたいところ)。そして案の定、脚本家の大石静氏も氏のブログで「だから最近のTBSはダメなんだ」と吐き捨てておられたが、これが脚本家(シナリオライター)の現実なのです。この地位の低さ。出来がよければ監督の手腕、悪ければ脚本家の罪なのです。・・・ですが、この作品に対しては違和感も強く感じています。最初から最後まで、見ている人間の心に何の引っ掛かりなく、サラ~ッと流れていってしまうのです。すべては、前述のように「良いシナリオ」の要素を全部備えるがために、キャラの配置、ストーリー展開されたように思います。小山氏が、何がツボかを知り尽くしているがために起きた現象ともいえるかも知れません。いえ、そういう作り方でもゼンゼン問題ないのですが、見ている人間に、その作為的な何かを感じさせるのはいかがなものでしょう。監督の力量もその辺りをカバーしきれていなかったということでしょうか。ネタ本となった著者の納棺師の方が、クレジットで名前を出さないよう要請したことに、頷けるものがあります。 [地上波(邦画)] 5点(2009-09-24 11:22:18) |
204. 太陽がいっぱい
誰もが認める美しいアラン・ドロンだけれど、どこか品と知性に欠ける感じがする。でも、そのどこか「野卑た」感じが、この作品ではピッタリ来る。浅薄な企みにいずれ露見することも読めずに突っ走るトムが痛々しい。こんなに捻くれたのは育った環境だけじゃなくて、本人の持って生まれた性格も大きく作用しているんだろうな、とアラン・ドロンの風貌を見ていると思えてくるのだ。美しく生まれてしまったがために・・・。サインを何度も練習するシーンが印象的。そして何と言ってもラストシーン。マルジュのようなタイプは同じ女性として好きではないが、どこまでも卑屈なトムにはフィリップの持っているもの全てが眩しかったんだろうなぁ。何度見てもスリリングで嫌悪感を感じさせてくれる逸品。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2009-09-17 11:43:24) |
205. パパは、出張中!
動物も、ジプシーブラスも、この作品には出てきません。しかし、後のクストリッツァ作品にも徹底して描かれる人生賛歌は既にここでも明快で、さらに彼独特の猥雑さの片鱗を見せています。お決まりの結婚式、浮遊するシーンもあります。そしてここでも類型的な善人・悪人は出てきません。皆、葛藤を抱えていて、とても人間臭い。本作は基本的には子ども・マリクの目線で話が進んで行きますが、大人のエゴもしっかり描かれています。このマリク少年が実に良いのです。夢遊病で初恋の女の子の寝床に潜り込むシーンなど出色です。これがクストリッツァ31歳の作品だと思うと感慨深いものがあります。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-09-16 16:31:21) |
206. から騒ぎ
オープニングからいきなり置いてけぼり状態。例えて言うなら、合コン行ってまわりはみんな開始直後から盛り上がってるのに、自分だけシラ~ッみたいな。なんだ、このノリ? なんでこんなメンツで盛り上がれるんだ? みたいな。げーっ、私ってイヤなヤツ、と思いながらも脱落して這い上がれないのは、私のせいじゃありません! というわけで、問題幹事はケネス・ブラナーってことで。どーにかしてくれ、あのナル男! あいつがいなけりゃ、もう少し輪に入ろうと努力もできたってもんだ。キアヌの美しさだけが浮いていた。そして美しい毒のある男は去って行った。あぁ、、、。・・・合わない映画ってこういうことを言うのでしょうね。 [DVD(字幕)] 3点(2009-09-14 16:02:10) |
207. フロスト×ニクソン
《ネタバレ》 まあ、面白くなくはないんだけど、なんというか、緊迫感とスピード感に欠けており、見終わった後に感慨はない。インタビューの心理戦で、それまで完璧な狸親父を演じていたニクソンが、最終日にフロストに提示された証拠(これがイマイチ破壊力に欠ける気がするのだけれど)であっさり陥落する豹変ぶりが唐突過ぎて、政界復帰を棒に振るにふさわしい攻防としての説得力にやや欠けるのが痛い(まあ、実際のインタビューがそうだったのだろうけれど。であれば、やっぱりニクソンは脇が甘い、裏を返せばフツーにイイ人ってことかも知れないが)。見ていて「おっ、これは・・・!」と手に汗握るシーンだったとは言い難い。前半、政界にカムバックを目論み金に執着するニクソンと、一発当ててメジャーにのし上ろうとするフロストの、野心に囚われた人間臭さはすごく伝わっていただけに残念。 [DVD(字幕)] 7点(2009-09-14 14:47:37) |
208. マタンゴ
マタンゴ。このネーミングを思いついた人、センスあるなー。ま・た・ん・ご、って、何とも言えない響き。でもって映像の「マタンゴ」を見ると、それはもうまさにMATANGOの響きの持つイメージそのもので、「そうか、これぞマタンゴだ!」と納得させられるんだよなぁ。内容は、怖くはないけど不気味ではある。発想は面白いし。そもそも本作を見たのは、相方がある知人のことを「マタンゴに似てる」とふと漏らしたことが発端。見終わっての感想は・・・、ま、雰囲気がね・・・、ちょっとね・・・。そう思うことは不謹慎なのか、やっぱり。 [ビデオ(邦画)] 6点(2009-09-10 16:43:40) |
209. ニジンスキー
《ネタバレ》 言わずと知れた、あの伝説のバレエダンサーのお話。言い伝えられているエピソードにかなり忠実に作られていると思います。ニジンスキー役の俳優さんはちょっとキレイ過ぎかな・・・。でも、アラン・ベイツ演じるディアギレフは、実際のディアギレフもこんなだったんだろうな、と思わせる眼力と迫力があって見応え十分。ジェレミー・アイアンズ初映画出演作品というのも感慨深いです。監督自身がダンサー・振付師出身だけあって、写真や絵画に残るニジンスキーの姿に忠実に舞台が再現されていてこれは本作の見所(あの「牧神の午後」もアリ)。しかし、やっぱり狂っていってしまう人の話は、見ていて辛いものがあります。その始まりはほんの小さなボタンの掛け違いなのに、あっと言う間にマリアナ海溝より深く大きな溝ができ、彼の人生そのものであった「踊ること」が出来なくなってしまうという悲劇。後味はあまり良いものではありませんが、好きです。見終わった後、必ずドビュッシーが聞きたくなる作品でもあります。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-09-09 11:39:19) |
210. ゴスフォード・パーク
アルトマン映画は割と好き。この作品も、らしい群像劇で面白い。でも、らしからぬ起承転結みたいなものが一応あって、これは意外。彼の作品はスクリーンの隅々にまで情報が詰め込まれているから、ずっと隅々まで見ないといけないので、そういう意味では疲れる。そして、本作もやっぱりそうだった。幕開けの音楽が素敵。続々出てくる登場人物たちの顔と名前は、そのうち一致してくるから、最初は分からなくても大丈夫。なんといっても階上と階下の描き分けが面白い。お互い蔑んでいる関係。いいねえ、いいねえ、こういう毒の撒き散らされ方。これぞ映画の真骨頂じゃないですか。ヘレン・ミレンの存在感はどうでしょう、スゴイなあ。エゴと欲の渦巻くお屋敷でのミステリー。衣装や美術も凝ったというだけあって見応え十分。何度見ても楽しめる。というか、見れば見るほど味わいが増す稀少作品。 [DVD(字幕)] 9点(2009-09-01 14:40:48) |
211. 女は二度生まれる
「(売禁法のおかげで)我々チョンガーには困ったもんです」「あら、でもいつも自家発電じゃ味気ないでしょ」(セリフ詳細違うかも・・・)なーんていう会話があけすけに飛び交って面白いです。芸のない娼妓の流浪の人生。こんな、誰にも愛されない人生なんて冷静に考えればかなり悲惨なはずだけれど、小えんさんにはそういう悲壮感はほとんどないんです。それだけに、あのラストシーンが鮮烈。不気味ささえ感じさせるそのコントラストが印象的でした。 [DVD(邦画)] 7点(2009-08-27 15:08:58)(良:2票) |
212. ボーイズ・ドント・クライ
《ネタバレ》 こんなことを言っては身も蓋もないけれど、人間社会から差別・偏見・イジメがなくなる日なんて、永遠に来ないと思う。人間に限らず、動物界でさえ(だからこそ、かも知れないが)マイノリティーは壮絶なイジメに遭う・・・。初めて見る稀少な存在・事例を、一体どれだけの人間が「無」の感情で受け入れることができるのだろうか? この作品は、そういう意味で極めて難しいテーマを取り上げたわけで、「差別はダメよ」というメッセージを伝えるだけならむしろ簡単、恐らくもっと饒舌になっていただろうと思う。作り手は、差別の完全排除が不可能なんてことは織り込み済みで、だからこそ、淡々と事象を描写するに至ったのだと解したい。それが故に理不尽な展開に納得できず、共感を得られない部分も多いのかも知れないが、これはこれで仕方のないつくりだと思う。ここで、安直に「性同一性障害は障害なんです。みなさん、もっと理解しましょうね」と障害をクローズアップし過ぎても、ヘタすれば上から目線になってしまう可能性もあるし、マイノリティーには問答無用で感情的に激しい嫌悪・排斥願望を抱く人間がいるのも事実。「とにかく嫌い(不気味)」を理由にする人に正論を盾にした説教臭いメッセージはむしろ逆効果とも言える。・・・ということを踏まえた上で、しかし、ジョンとトムの終盤の行為については、マイノリティーに対する感情的排斥願望ももちろんあっただろうが、ラナの心を奪われたことに対する怒りと嫉妬、あるいは「化け物」を受け入れたラナ自身に対する怒りを、ブランドンが最も屈辱感を味わうに違いない行為で以って解消したという要素が大きいように感じた。ラナ自身がブランドンが女性と分かった時点で拒絶していれば、凄惨な事件は起きなかったように思うからだ。最後も「化け物」を抹殺したいという感情よりは、自分たちのしたことを公にされたことに対する怒りから暴走した行為とも言えないだろうか。ここが、差別によるもの、と解されると極めて衝撃的だけれど、あくまで2人の男の自己愛・自己保身によるものと考えれば、それほど不思議でもない。ここは、あえて語り過ぎずに、見る者に解釈・判断を任せる姿勢は良いと思う。いずれにしても、作り手の志には敬服するが、評価の難しい作品。見ていて終始居心地悪く、それこそ好き嫌いで点数をつければ、この点数。 [DVD(字幕)] 5点(2009-08-27 11:33:31) |
213. ラフマニノフ ある愛の調べ
もともと好きではないラフマニノフだけれど、こういう映画でも見ればちょっとは好きなほうに針が振れるかも・・・、なーんて思って見た私がバカでした。これぞ「駄作」という呼び名がふさわしい。こういう映画は、思いっきりドラマ性を追求するか、芸術性に走るか、その軸足が定まらないと、こういうどーでもよい作品になってしまいます、みたいな典型例。ラフマニノフの音楽はそこそこ使われますが、演奏シーンは少ない方です。しかも、彼の伝説の技巧が披露されるシーンはただの一つもありません。じゃあ、ドラマ性はといえば、彼が演奏家と作曲家の立ち位置について、その狭間で苦悩するというのはサラ~ッと描写されますが、そのほとんどは、女とスタインウェイに悩まされた以外に、何に葛藤し苦しんだのかも分からない描写の数々です。最近流行の時系列をグチャグチャにする作りを取り入れていますが、本作ではそれさえメリハリになっていません。原題にある「ライラック」もほとんど生きていません。ラストに唐突に意味を持たせて使われますが、スクリーンの中では最高の盛り上がりを見せるに反比例し、見ている方は最高に白けます。かの有名なラプソディーが虚しく頭にこだまするばかり・・・。不幸にも、私はこの映画を見て、ますますラフマニノフにアレルギーを持ってしまいました。 [DVD(字幕)] 3点(2009-08-24 12:02:05) |
214. きつねと私の12か月
《ネタバレ》 印象深いシーンがたくさんあります。なにより、映像の美しさだけでも一見の価値アリ、という気がします。きつねの棲む森の美しさ、素晴らしさに息を呑みます。動物の主役はタイトルどおりきつねですが、他にもイロイロ出てきます。これも面白い。なかでも、きつねと大山猫の大立ち回りは見ものです。どうやって撮影したんだろ・・・、と、驚きの映像の連続。きつねが不自然にキレイ過ぎに撮られていないのもgoodです(毛がボサボサだったりね)。一方、人間の主役リラはそばかすだらけで、非常に愛嬌のある少女(また着ているもののセンスがすごくいい。さすがフランス!)。ラストシーンまで少女のリラしか人間は出て来ません。この子がとにかくスゴイの何の。急流の岩場も、真っ暗な洞窟へも臆せずずんずん冒険していきます。見ているほうがヒヤヒヤするくらい。もちろん、きつねが一緒だから、なんですけどね・・・。でも、単なる「子どもと動物の触れ合い感動話」で終わっておらず、厳しい結末が用意されています。このオハナシは監督の幼い頃の体験談がベースだそうです。後で調べれば、あの『皇帝ペンギン』(未見)の監督だったのですね。きつねは、人間界では小賢しくあまり良い扱いはされていないけれど、この映像を見るとリラがあそこまできつねに肩入れした気持ちが分かる気がして来ます。 [DVD(字幕)] 8点(2009-08-24 10:47:11)(良:2票) |
215. ピクニックatハンギング・ロック
高評価が多い中、心苦しいのですが、正直、非常に退屈な映画でした。確かに映像はキレイだし、少女たちも美しい、音楽もまあまあ・・・なんですけど。私の場合、こういう映像叙事詩的な作品は、思いっきり魅かれるか、メチャメチャ退屈かにハッキリ二分されます。本作は明らかに後者で、睡魔との闘い。好みの問題なのだけれど、やっぱりちょっとしまりがない、という印象は否めません。甘ったるくダラダラ~、みたいな。ミランダは確かに美しいけれど、ボッティチェリの天使だかヴィーナスだかはちょっと違うんじゃ? どちらかというとニンフ的、というか、ベルニーニのダプネの方が近い気が・・・。実話ベースという刷り込みがなければ、もっと点数低くしていたかもですが、この点数でお許しを。 [ビデオ(字幕)] 5点(2009-08-21 16:07:59) |
216. 愛のそよ風
《ネタバレ》 これは隠れた佳作だと思います。同じ歳の差恋愛を描いた『エレジー』より遥かに素敵です。どこが? そりゃ、恋に落ちる2人がです。『エレジー』は下心満々のエロ爺ィと、自分の魅力をしっかり自覚した若い女性のオハナシでしたが、こちらの初老のおじさんは、エロ爺ィではありません。子どもに毛の生えたような少女も、ヒッピーで素直で可愛らしい。別に恋愛の形なんかそれぞれなので、どっちでも結構ですが、映画として見ていたくなるのは明らかに本作です。ラブシーンの描写も素敵です。ただ、奇しくも両作品が共通して描いた歳の差恋愛の挫折要因は「男の方の自意識過剰」でした。「オレみたいなオッサンがこんな若い娘と・・・、何と思われることやら」ですね。そりゃまあ、色眼鏡で見る人は多いでしょう。世間体をより気にしてしまう、男の方が社会的生き物なんでしょうかねぇ・・・。こちらは、ちなみにハッピーエンドで、爽やかなラストシーンが用意されています。『エレジー』みたいに深刻な病気を持ち込まず、それもポイント高し。これは、きっとイーストウッドに同じような経験があるのだろうな、と思います。恋多き男ですから、彼は。彼のロマンチシズムが凝縮された、そして、彼の監督としての才能の片鱗が感じられる逸品です。 [DVD(字幕)] 8点(2009-08-20 14:11:50) |
217. 海をみる
これまた、不快指数の高い映画。でも、大して過激な描写がないのに、見ている者を不安にさせるつくりはさすが。さすが、だとは思うが、(以下余談)ああいうことを思いつく人とは一緒に暮らせないなー、と見終わった後しみじみ思ってしまった。だって、される可能性がゼロじゃないでしょ、思いつくってことは。才能なんかなくてもいい、ありきたりの感覚を持った穏やかな人が一番ね、一緒に暮らすには。 [ビデオ(字幕)] 6点(2009-08-19 15:30:50) |
218. ハラスのいた日々
流行語にもなった「清貧」の中野孝次氏によるエッセイが原作。彼は無類の柴犬好きなのですが、私も「犬は柴」派の人間なので、その偏愛ぶりに異常に共感します。あのつぶらなアーモンドアイ、立った耳、クルンとした巻尾は凛々しく愛らしいことこの上ありません。スキー場で行方不明になった下りをエッセイで読んだときも涙し、本作を見てもやっぱり涙しました。ハラスはとにかく賢いです。中野氏にとってもはじめてのワンコだったようで、思い入れもひとしおでしょう。だからこそ、あの有名なエッセイになったのだと思います。映画の中のハラスを演じたワンコも実に賢く可愛いです。映画としての出来は、そういうわけで冷静に判断できません。柴犬好きの方なら、見て損はない作品です。ちなみに、十朱さんは実生活でも柴犬好きの柴犬飼いだそうです。あ~、「犬のいる暮らし」(これも中野氏の著書のタイトルだが)もう一度したい! 「清貧」じゃなくて赤貧だけど、柴犬飼いたい! [ビデオ(邦画)] 7点(2009-08-13 15:33:08) |
219. 危険な情事
《ネタバレ》 話題になりましたねー、当時。渋谷の映画館で見ましたよ、友人と。まだ学生でしたもの、怖かったぁ~。グレン・クローズの顔が脳裏に焼きつきました。ところで、この数年後、日本版『危険な情事』とでもいいますか、黒木瞳主演による『略奪愛』という映画がありましたよねぇ。しかも、日本版は実話ベース(こえェ~)。そこそこ話題になっていたと思うのですが、なんと登録がないのですね~、ビックリ。略奪女が狂っていくところといい、浴室でのラストといい、ソックリです。違うのは武器が銃でないことくらいです。ちなみに、マイケル・ダグラスの役回りをしていたのは、今は亡き古尾谷雅人さんでした。グレン・クローズの略奪女に、古尾谷雅人の浮気男、の方が、キャスティングとしてはしっくり来る気がするのは、やっぱり私だけでしょうね。だって、黒木瞳じゃ狂女にしては怖くなさ過ぎだし、マイケル・ダグラスじゃ浮気してもアタリマエ過ぎるんだもん。 [映画館(字幕)] 6点(2009-08-04 15:28:22) |
220. スノーマン<TVM>
「ゆきだるま」の絵本を始めて書店で立ち読みしたとき、不覚にも泣いてしまった。・・・という話を何年も経ってから母親にしたら「へぇ~、あんた意外に繊細なんやなー、信じられへんわ」と怪訝な顔をして言われたことが、この『スノーマン』の絵を見るとイヤでも思い出して不快な気持ちになるのであった。ゆきだるまに泥をかけられた感じだった。あの人にとっては、単にあったかくなって溶けたゆきだるま、でしかなかったわけだ。その絵本がそのまま動画になっている。歌も物悲しくボーイソプラノが沁みる。あー、あんなこと、母親に言うんじゃなかった。言わなければ、この作品ももっと素直に鑑賞できただろうに。 [DVD(字幕)] 7点(2009-08-04 14:47:08)(笑:1票) |