201. ブラザー・ベア
ネタバレ 全体的にまとめると「報復の連鎖を如何に断ち切るか」に尽きる。 兄を死なせた熊の正体は子熊の母親で、登場人物は基本的に全員善人。 伝説を元にしているとは言え、そう簡単に大団円はないだろうし、ただの子供騙しで終わっている気も… 熊に戻った仇と一緒に幸せに暮らしましたは綺麗事にすぎず、善意の強制にも見えてしまう。 愛憎の葛藤にもう少し踏み込むべきで、話し合いのできない絶対正義のエゴイストもいて、 互いに深い傷跡を残した脇役のエピソードも入れていたら違っていたかもしれない。 映像は綺麗だし、人間視点と熊視点とで画面の比率が変化する演出は新鮮だっただけに、 カートゥーン末期の寂しさとディズニー単体の質の低下を感じてしまった。 [DVD(吹替)] 4点(2022-10-17 21:48:07) |
202. デス・レース2000年
モラルはないし、アホくさくて下らないし、中途半端に社会風刺を盛り込むしのザ・B級。 ミニ四駆みたいな殺人カーに間抜けな犠牲者たち、そこそこ楽しめるアクションシーンで良い暇潰しにはなる。 「美味い」、「安い」、「早い」を体現した吉野家みたいな映画。 [DVD(字幕)] 5点(2022-10-17 21:27:50) |
203. アイ・アム・レジェンド
ネタバレ 前半は孤独な男のサバイバルドラマとして面白かったのに、後半から凡庸で残念な結末に辿り着く。 中盤に脱落した相棒の犬が大きな存在として作品の質に貢献していただけに。 原作や別エンディングだと価値観の逆転が強調されていたようで、 そっちの方がまだコクがあって良かったかもしれない。 (そうなるとウィル・スミスのキャラ的に厳しいため、軌道修正が利かなかったのだろう)。 ちなみにDVD特典のサイドストーリーの方がグロテスクで本編より印象に残っている。 [DVD(字幕)] 4点(2022-10-12 23:12:38) |
204. プレデターズ(2010)
ネタバレ オリジナルの『プレデター』という良作がある以上、超えられないのは事実。 ならばとB級に徹して、ギリギリ楽しめる仕様にはなっていたかと。 『CUBE』みたいにいきなり異世界に放り込まれるシチュエーションで集められた戦闘のプロ。 メンバーの中で極道が良い味を出してるが、逆に中盤のフィッシュバーンはいらなかった。 あれが作品のテンポも切れ味も鈍くしている。 唯一非戦闘員の医者が実はシリアルキラーだったという設定は面白かった。 序盤で脱落したRUF戦闘員が後に二度オスカーを取る名優となるマハーシャラ・アリとは… これが一番の驚愕ですね。 [地上波(吹替)] 5点(2022-10-12 22:49:09) |
205. ソードフィッシュ
『マトリックス』を引き合いに出した宣伝に騙された。 冒頭のバレットタイム演出は物語に引き込むのに効果はあったと思うが、 これが最大のクライマックスでその後の展開は凡庸。 あまりにも無用な要素を取り入れて複雑にしすぎ、どんでん返しのカタルシスも感じられず。 B級ならB級に徹するべきかと。 ジョン・トラボルタもヒュー・ジャックマンもハル・ベリーも魅力的なのに勿体ない。 [DVD(字幕)] 4点(2022-10-12 22:20:06) |
206. ヒトラー 最期の12日間
ネタバレ ヒトラーとナチス・ドイツを絶対悪として描かず、崩壊までを事実に沿って淡々と描き出した姿勢を評価。 冒頭の温厚な紳士のヒトラー、敗戦濃厚でひたすら憔悴し滑稽にも見えるヒトラー、 そこにはモンスターではなく、どこにでもいる人間だからこその恐ろしさ、狡猾さ、弱さを秘めている。 如何に残虐非道な戦争犯罪を起こしても、負けてしまえば悲惨な運命を辿り、禍根を残すことはどの国でも同じ。 アイデンティティ・クライシスから逃れるための自己保身から生まれる、 信じたくない、認めたくないと引き下がることもできず、深い傷を負うさまは、 今日のネット社会における政治クラスタやウクライナ侵攻のロシアと重なる部分があった。 そういう意味ではラストのユンゲの言葉は必要だったと思う。 [DVD(字幕)] 7点(2022-10-12 22:06:11) |
207. ボーン・コレクター
ネタバレ 人生で初めて見たサイコサスペンスもの。 猟奇的な雰囲気はなかなかであるが、やっぱり犯人のインパクトがなさすぎる。 身体を動かせないデンゼル・ワシントンの危機はラストと発作くらいなので、 最後まで引っ張るには厳しい設定。 アンジェリーナ・ジョリーは頑張っていたが、双方とも無駄遣いとしか。 『羊たちの沈黙』と『セブン』が傑作なのは本編とは無関係な要素を排除したからで、 記憶に残らないのは思わせぶりな贅肉が多かったとも言える。 [ビデオ(字幕)] 4点(2022-10-09 22:43:55) |
208. レオン(1994)
ネタバレ 昔見た記憶が朧気だったので再視聴した次第。 孤独で不器用な男と利発な少女の絆はありきたりであるが、血生臭いバイオレンスが加わり、 ナボコフの『ロリータ』を思わせる幼さと妖艶さが男たちを破滅させる匂いすらある。 この年齢でしか出せない危うさをナタリー・ポートマンが見事体現してみせる。 子犬のような目のジャン・レノ、狂人にしか見えないオールドマンも適材適所、キャリアベストの魅力を放つ。 闇の世界で同じルーチンで生きてきたレオンはマチルダという新たな生きがいを見つけ、 純粋に彼女の幸せを願いながら、光の世界に生きることも許されず死ぬことになってしまった。 残されたマチルダはこれから如何に生きるだろう? 教育を受けられなかった彼と同じく闇の世界に足を踏み入れる負の連鎖に陥ってしまうのか。 続編の構想があったようだが、情報過多にならなかったからこその想像の余地が深い余韻を生む。 [地上波(字幕)] 7点(2022-10-08 21:17:03) |
209. 101匹わんちゃん
ネタバレ 幼い頃、ビデオで何度も見ていた思い出。 とは言え、子犬が誘拐されてから脱出を決意するまでの展開は少しダレるか。 クルエラの強烈なキャラクター性に尽きる。 成犬になるまで待てば良いのに(良くないが)、すぐにでもという狂気こそクルエラたる者だろう。 作曲家の妻とは友人らしいのだが、犬の毛皮に拘る彼女に対する妻の曖昧な対応は如何なものか。 曲の大ヒットで大金持ちになれたから田舎の屋敷に引っ越して101匹買えるでしょうけど、 近親相姦リスクに多頭飼育崩壊、クルエラの逆襲と問題が山積み。 ディズニーよ、本当にこれで良いのか…という大団円ぶりがある意味清々しい。 [ビデオ(吹替)] 6点(2022-09-29 22:34:44) |
210. リアル・スティール
ネタバレ 落ちぶれた元ボクサーとほとんど面識のない息子の再起もの。 描かれている話は'80年代を思わせる王道のスポーツものでありつつ、 ロボット・ボクシングという近未来要素が取り入れられる。 ロボット同士の無機質な試合に興奮できるのか?という疑問が湧くが、 おんぼろな練習用ロボットを媒介にして、断絶していた父子が次第に心を通わせ、 クライマックスの試合へと盛り上がっていく展開は上手い。 そのロボットに感情があるように見えて、宿らせないのが大人のアプローチ。 三人四脚で困難を乗り越えていく。 そして決勝戦。 練習用ロボットのシャドー機能によって、ここぞとばかりに人間の肉体が活きていく。 息子は父親のかつての雄姿を見る。 試合に負けても勝負に勝った。 最高潮のエンディングのまま、後日談を一切描かない潔さが良し。 [DVD(字幕)] 7点(2022-09-29 21:59:08) |
211. I am Sam アイ・アム・サム
モヤモヤする映画だと思った。 7歳の知能指数しかない男が子供を作れるのか、 普通に働けるのかというリアリティの無さは置いといても。 ここでのめり込めるかで評価が分かれる 一番の白眉は荒々しい性格のショーン・ペンが ピュアで知的障碍を持つ男を見事に自分のものにしたところ。 ダコタ・ファニングもミシェル・ファイファーももちろん名演で、 ビートルズのカヴァーで誤魔化した穴だらけの物語を何とか見れたというのが大きい。 「個人的にはストーリーは並以下、配役はほぼ満点という印象の作品だった。」 レビュアーの意見でこれが一番腑に落ちた。 [映画館(字幕)] 5点(2022-09-29 14:50:20) |
212. クローバーフィールド/HAKAISHA
ネタバレ 全編POV撮影をブロックバスターに織り込んだ(恐らく)最初の作品。 一般人目線で描かれるため、何が起こっているのか分からない、 真相も一切明かされない、その混沌が恐怖を煽る。 あれほどのパニックでも頑丈なビデオカメラに、大怪我している割に結構歩ける恋人は気になるが… 怪物の正体は最後までハッキリ見せない方が却って良かった気がする。 上書きされる前の幸せだった時のビデオ映像が後味の悪さを際立たせる。 何気ない日常が明日には一瞬で破壊されるかもしれない。 怪獣はありえなくてもそんなリアリティがどこかあった。 [DVD(字幕)] 6点(2022-09-29 14:32:53) |
213. 2001年宇宙の旅
ネタバレ 20年ぶりに視聴。 たゆたうような眠りを含めて全身で体感する映画。 現在の観点では若干の古さは感じても、色褪せない魅力を放つセットと世界観、 現実味を帯びてきたAIへの警鐘、そして人類の新たな可能性── 分かりやすさはないものの、ゼロから作り上げたキューブリックが 未来のフィルムメーカーたちに与えた影響は非常に大きい。 彼にしか作れない、そして誰もその中に入れない聖域を作り出した。 [インターネット(字幕)] 8点(2022-09-24 14:37:27) |
214. マスク(1994)
ジム・キャリーとキャメロン・ディアスが魅力的。 主演二人と作品の相性が抜群で、全盛期と言っても良いくらい全てをかっさらう。 ジム・キャリーの顔芸のお陰でCGショットを大幅に減らせたというエピソードがあるくらいで、 燃え尽きてしまう心配をするくらいハイテンションのままテンポ良く突き進む。 頭を空っぽにして楽しめるコメディの快作と言ったところ。 ハイレベルな演技をこなした犬のマイロに助演男優賞を。 [地上波(字幕)] 6点(2022-09-24 00:40:04) |
215. 竜とそばかすの姫
ネタバレ メインの歌が素晴らしいが故に危うく誤魔化されるところだった。 『サマーウォーズ』が2000年代のネット社会を総括した作品なら、 本作は2010年代のネット社会を総括した作品だけど焼き直し感は否めず。 なぜリアルで歌が歌えないのか、"U"世界の竜に惹かれるのかが説明不足で、 リアル恋愛事情、ネット自警団、ドメスティックバイオレンスといろんな要素を詰め込みすぎて、 それぞれが上手く機能していない、場面重視の細田守ならではの悪癖が際立つ結果に。 "U"に登録してすぐに注目の歌姫なんて出来すぎで、ここでストーリーが破綻しているというか。 虐待受けているのに簡単にネット環境使えるとか、すず一人で東京に行かせるのもありえない。 力技で無理矢理世界観に引き込むので余計タチが悪い。 誰も脚本について異論を挟めない状態なのかな… 奥寺佐渡子カムバックとしか言いようがない。 前作の『未来のミライ』に比べれば、スタジオ地図は本作で何とか首の皮一枚でつながった状態だ。 次回作も地上波で待つ形になるでしょう。 [地上波(邦画)] 5点(2022-09-24 00:17:30) |
216. ハムナプトラ/失われた砂漠の都
普通に見るなら面白いと思う。 子供の時はおぞましい展開と恐怖演出の数々にガタガタ震えていたが(苦笑)。 人喰いスカラベが結構キツい… オリジナルはホラーの古典らしく、本作がリメイクと後から知った。 インディージョーンズを彷彿とさせるアドベンチャー大作へと 換骨奪胎したのが成功の秘訣だろう。 主役のブレンダン・フレイザーは、重役からのセクハラ被害等の心労で半ば引退しており、 20数年で体型も変わってしまったようだが演技派としての大復活に期待したい。 [DVD(字幕)] 5点(2022-09-16 22:38:26) |
217. 座頭市(2003)
ネタバレ 北野武本人も勝新太郎の座頭市を超えられるとは思ってはないし、 だからと言って変に意識しなくても良くないしで、 積み木崩しのようなギリギリのバランスで作ったのがこれ。 金髪やらジーンズやらタップダンスやら時代考証はお構いなし、 彼にしては異色のマンガチックでシンプルな勧善懲悪娯楽活劇。 勝新の豪快さと差別化するようなスピーディーで洗練された殺陣。 これだけなら良作なのだが、 人間ドラマに比重を置いている割には薄いし中弛みを感じてしまう。 もう少しストイックにコンパクトに纏められなかったのか。 実は盲目ではなかったという設定を見るに、 名前で呼ばれているのは冒頭のみで、自ら本名を名乗るシーンがなかったことから 本物(勝新太郎)とは別人のもう一人の座頭市ではないかな。 [映画館(邦画)] 6点(2022-09-16 22:10:15) |
218. フォレスト・ガンプ/一期一会
フォレストはアメリカの理想であり憧れだ。 純粋で無欲で、努力を努力と認識せず、知らぬ間に富と名声を手に入れる。 ただ、一緒になりたいジェニーだけを除いて── 彼が駆け抜けた戦後アメリカ現代史をマジックリアリズムで織り込んだ本作。 どこが良いのかと聞かれると返答に困る。 でも、スッと入ってくるくらい印象に残るエピソードばかりで、 同じくマジックリアリズムの手法を用いた『アンダーグラウンド』に近い気持ち良さがあると思う。 自分がしたきたことは自分に返ってくる。 フォレストは誰かの幸せを願い、ジェニーは社会に反抗する勝手気ままの人生を送った。 もちろん、中身が分からないチョコレートの箱と同じで、必ずしも良い方向に働くとも限らない。 混迷化する現在、フィクション以上に現実は物事を二極化しすぎている。 「これが良いから」と扇動して、「これはダメだ」と断罪するくらいに。 ただ、「身近な誰かを一人でも幸せにしたのか」と本作は幸福論の真理を突いていて、 歳を経ることに分かるようになった。 [地上波(吹替)] 8点(2022-09-11 10:47:14)(良:1票) |
219. ローラーガールズ・ダイアリー
ネタバレ かつて人気子役としての絶頂からの転落、そして見事な復活劇を果たしたドリュー・バリモアにとって、 母親との確執という実体験を取り入れながらもエレン・ペイジ演じる主人公に投影していた部分は大きいだろう。 真に打ち込めるものとかけがえのない仲間を手に入れた少女の物語を元気いっぱいに描き出す。 ドリューにとって本当にやりたかった人生なのかもしれない。 確かに捻りもないくらいベタで欠点も少なくないけど、特筆すべきはエンディングで、 たとえ決勝で負けてもナンバー2と誇り高く自分たちを肯定するシーンは素晴らしかった。 演じている誰もが楽しそうで見ている側にも伝わってくるのが良い。 [DVD(字幕)] 6点(2022-09-11 00:46:00)(良:1票) |
220. ピノキオ(1940)
かなり知られているのに意外とレビュー数が少なめ。 近年は原典に近いマッテオ・ガローネ版が世に出て、 これからディズニー実写版、ギレルモ・デル・トロ版とリリースされるらしく、 クリエイターの何がピノキオへと駆り立てるのか… ということで、小学校に上がる前に十数回見ていた記憶を手繰り寄せる。 シビアな描写もトラウマになる描写も鮮明に記憶に残っていて、 登場人物によっては救いのない顛末を迎えたりと82年後の今なら問題になる箇所も少なくない。 ただ、反面教師として見ると非常に教育的で、これでも原作に比べてかなりマイルドらしい。 ディズニー実写版のさらなる改変にむしろ不安を感じるくらいだ。 今のアニメーターなら真似できるのかと思うくらい、手描きでの表現力は最高峰。 思い出補正で甘めの点数になってしまいますね。 [ビデオ(吹替)] 7点(2022-09-11 00:13:08)(良:1票) |