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鱗歌さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 3959
性別 男性
年齢 53歳

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2341.  まあだだよ
クロサワ節炸裂。これは映画なのか。もはや、演劇の中継を観ている気分というか、いやそれこそ、カブキ中継でも観ている気分になるのですが。冒頭のカットなどは、「先生」の登場を、扉に固定したカメラと、画面外から聞こえる喧騒で表現するあたり、“映画の企み”と言えなくもないかも知れませんが、これとて、舞台演劇でもとりそうな手法。そしてあとはもう、演劇中継よろしく、一歩も二歩も引いたカメラが視線を適宜入れ替えつつ、俳優たちの演じる世界を捉え続ける、という趣向。しかしその中に時々、映画ならではの切り返しがあったり(壁だったハズの場所にカメラが置かれる)、時間や空間を超えてシーンが繋ぎ合わされたり。映画の内容は、いくつかの独立したエピソードからなり、(『夢』で見せたように)オムニバスに近く、その点では構成に弱さがあるかもしれませんが、もうそんなことどうでもいいくらい、おおらかな気持ちになる映画、でもあります。ジジイがビールを一気飲みするという、ただそれだけの手に汗を握るサスペンス。ラストシーンはほとんど『2001年宇宙の旅』。所ジョージは大役を見事にこなしてさすがだけど、坂東英二は変だ。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2011-03-01 22:29:20)
2342.  プロジェクト・イーグル
“ゴールデン洋画劇場定番ジャッキー映画”の中では正直、あまり好きではないのです(カンフーがやや控えめで、アクションがもひとつハジケていない感じ)。そういう、あまり好きではない作品であっても、やはりこれだけアイデアがたくさん盛り込まれていると、やっぱり感心してしまいます。クライマックスがナチスの地下基地での戦い、ってのも、陰気な上にアホらしく、パッとしないのですが、ここでもアイデア満載であれやこれやと楽しませてくれます。そもそもそれ以前に、砂漠のシーンで無意味にトカゲが歩いているのを見て、ああ、しょーもないことに手間暇かけて撮影してるな、エライな、と感心する次第。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2011-03-01 22:00:18)(笑:1票)
2343.  OK牧場の決斗
後半1時間でようやく本題に入るような感じで、映画前半は必要なのか(いや必要だろうけど、も少し工夫がないものか)と思わんでもないけど、後半、特に最後の30分くらいの盛り上がりは相当なもの・・・と初めて観た時から思ってた訳じゃないのでワタシも偉そうなことは言えない。観るたびにだんだん興奮が増していくような。クライマックスの銃撃戦は、緩急をつけることで見事な緊迫感を演出。カッチョ良過ぎ。それにしてもデニス・ホッパー、さすがの彼も、若い頃はこんなにサワヤカだったのだ。リー・バン・クリーフはあんまし変わらんが。バート・ランカスターも例によって、角ばってる。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-03-01 21:35:33)
2344.  眠狂四郎 魔性剣
黒ミサの変態儀式が無駄に長々と描写されたり、チャンバラが無駄に多くしかも無駄に流血シーンが多かったり、なかなか見どころの多い作品であります。中でも圧巻は、狂四郎視線で描かれる殺戮シーン。こりゃやり過ぎ。さらには狂四郎を狙った無駄な爆発シーンまで。無駄の数々、実に素晴らしいですね。で、物語はと言いますと、今回の狂四郎、しょーもないイキサツからある女性の命を奪ってしまい――とは言っても、悪いのはどう考えてもこの女性の方なので――少なくとも、「命を奪ってしまった」と狂四郎は思いこんでしまい、自責の念から(あまり反省しているようには見えないけど一応)、残された少年・鶴松の身を守ろうと奔走するオハナシ。実は鶴松は岩代藩主の隠し子、かつては邪魔者として消されかけたが、今では世継ぎの第一候補。しかし狂四郎は、“鶴松は世継ぎとなることを望んでいないのダ”と、ひたすら岩代藩の邪魔をする。うーむ、それでいいのか。さらにはそこに、狂四郎を狙う女性刺客も参戦したりして、なかなか賑やかな展開ではあるのですが、少年を前にした狂四郎が、気持ち悪いくらい“イイ人”なもんで、ものすごーく違和感あり。普通に好青年、非常にサワヤカ。いったい本作のどの辺りが「魔性剣」なのでしょうか。ラストなんか、「狂四郎のくせに、何をそんな、名作映画っぽいセリフでシメるんだよ」と、少し怒りを覚えるほど感動的(←まあ、そんな理由で怒るのもどうかと思うが)。いや、いい映画でした。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-02-24 23:31:49)(笑:1票)
2345.  シテール島への船出
映画の中心に置かれている物語は、まー言ってみりゃ「頑固ジイサンが帰って来て、ひと騒動」ってヤツですが。しかしこれが、まるで神話のごとくゆったりとした時間の中で描かれ、しかもその「神話」が「神話」のままでいることができず、現代社会の中で居場所を失っていく。それがもうタマランのです。かつての闘士であり今は亡命者である「父」。歴史そのものでもあり、神話でもある。また現代に生きる主人公にとっても、自らの存在のルーツとして、心の一部に巣食って離れることのない存在。その「父」、亡命先から帰ってきた「父」は、周囲から追い立てられ、この国にも居られず、亡命先にも受け入れられず、居場所を失っていく。ただ「母」だけは、その「父」にかつて捨てられながらも結局は彼を無条件に受け入れていく。美しいシーンのオンパレードなのですが、ラストシーンは涙無しでは観られない、その美しさと切なさは特筆モノ。こりゃ『シテール島への船出』というより、ほとんど“補陀洛渡海”の世界ですな。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-02-22 23:22:35)
2346.  アイランド(2005)
「問題提起してます」的なテーマを絡めたいかにもSFらしい設定も良いし、アクションシーンにおけるカークラッシュへのコダワリも嬉しい。問題は、その“SFらしさ”と“スピーディで豪快なアクション”という両者を繋ぎ合わせるために、“映画中盤で背景を全部説明してしまう”という安直な方法を取ってしまったこと。中盤でいったんネジを巻き直してしまう。テンションもいったん途切れてしまう。せっかくリキの入ったアクションシーン、謎を謎のまま引っ張っていくのにフル活用しちゃえばよかったんじゃないのかなあ、と。まあ、力を抜いて楽しめる作品、であることには間違いないけれど。
[地上波(吹替)] 6点(2011-02-18 01:54:22)
2347.  トロピック・サンダー/史上最低の作戦
ブラックなのはいいとしても、何だかノリの悪いコメディ。でもどうしてもこの映画を作りたかったのね。どうやら映画業界に対して相当、鬱憤が溜まっているようですね。そう思って観ると、同情を感じてしまいますが、でもこんなにストレートに鬱憤を映画にぶつけられたんじゃあ、今度はコチラの鬱憤が溜まってしまうではないですか。
[ブルーレイ(字幕)] 5点(2011-02-14 23:25:30)
2348.  モンキー・ビジネス
檻から抜け出したチンパンジーが、実験室にあった薬品を適当に混ぜ合わせ、出来上がったのは若返りの秘薬。しかもこいつを飲料水に混入してしまい・・・というワケで、収拾不能、ひたすらハチャメチャな、この映画。出演者たちの怪演、また怪演、カメラの前で展開されるのは、もはやほとんど“修羅場”と言えますね。チンパンジーや赤ちゃんの演技など、本来なら観ててもう少し感心するところなのですが、周囲の怪演ぶりに圧倒され、影が薄くなってしまうほど。いやあ、笑った笑った。ちなみにワタシもその昔、化学の学生実験で、実験後の薬品を適当に混ぜまくってたけど、何か役立ちそうなものを合成できたためしはありません(マネしちゃダメよ)。あと、この映画のケーリー・グラントの役作りは見事だと思います(こういう化学者に何となく憧れるのです)。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-02-14 23:12:18)
2349.  ワイルド・スピードX2
第1作は「クルマ好きがクルマ好きのために作った映画」というニオイがプンプンして、私のようなクルマ音痴は蚊帳の外、という感が無きにしも非ずだったけど。で、そういう面は当然本作にもあるのだけれど。でも、(物語などそっちのけで)基本的にすべてをカーアクションに結び付けちゃおう、ってのが良い。チェイス、レース、クラッシュを繰り広げるために、テキトーなストーリーでこれらを結びつける。パトカーが無意味にたくさん出てくるのも良い。カッコイイ車よりも、パトカー軍団のクラッシュにヨダレが出る。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-02-12 10:27:40)(良:1票)
2350.  蝋人形の館
前半の長めの助走から、中盤はややイジワルにショック描写を畳み掛け、そしてクライマックスの“大崩壊”へ。物語の風呂敷を適度に広げて適度にこれを畳んでいく手際もなかなかのもの。ほっといたらどこかに埋もれ去ってしまうようなタイプの映画なので、今のうちにゼヒ観ておきたい映画です、これは拾いモノ。形あるものが“溶ける”ということが、いかにスリリングか。出色のクライマックス。
[ブルーレイ(字幕)] 8点(2011-02-10 23:09:31)
2351.  秘密戦隊ゴレンジャー 爆弾ハリケーン
ゴセイジャーが終了し、来週からゴーカイジャーってのが始まるそうですが。しっかし、最近のスーパー戦隊シリーズに比べると、やっぱし“ゴレンジャー”ってのはスゴイですね、1話単体で見ると見事な程にまるでストーリー性がなく、ひたすらアクションのみで成立しています(スタントがスゴイ)。このデタラメさが心地よい。さて本作(よく親に連れて行ってもらった東映まんがまつりの一本なので、当時観たのかも知れないけど・・・どっちみに覚えてるワケがない。笑)、ゴレンジャーが四国を舞台に大暴れ。まずそもそも、ゴレンジャーがのんびり「さんふらわあ」で出動するのがワケワカラン(どうせ後でバリドリーンとかバリタンクも登場するくせに)。しかし船上ではさっそく妖しい美女と遭遇(彼女の忘れものの中に、謎の発信機を発見!)。あとは格闘また格闘。四国の地理もほとんど無視し、あちらこちらに出没する強引な展開もグー。圧巻は松山城での死闘。実に素晴らしい。
[DVD(邦画)] 4点(2011-02-07 02:46:30)
2352.  12ラウンド
主人公の刑事に対し、彼を逆恨みする犯人が、12ラウンドにわたるイヤガラセを繰り広げる映画。いちいち「次は第●ラウンドだ!」とか宣言する犯人のマニアックさに比べ、さほど映画自体が“数”に対してこだわるような演出でもなく、この“12ラウンド”ってのは何だか、尺を埋める言い訳に過ぎないような。1ラウンドごとに区切っていくことで、様々なアクションを何の工夫もなく盛り込めるという趣向。消防車でのクラッシュシーンなどはなかなか盛り上がり感涙モノ(あくまでワタシ個人的に。ターミネーター3のクレーン車クラッシュと並んで、子供の頃からの夢だったクラッシュシーンなもんで)。しかし路面電車の暴走シーンはイマイチ何をやりたいのか、アタフタするばかりで、もひとつパッとしない。しかもこういうアクションを、いちいち区切って提示していくのが、いかにも段取り臭くてノリが悪い。最初は「え、今ので1ラウンド分かよ、せこいな」と思わんでも無いけど、12も続くとお腹いっぱい、結構くどい。もっとも、実はその展開の中に、涙ぐましいようなストーリー上の工夫が隠されていることがラストで判るのだけど・・・この辺りは何だか『ダイ・ハード』で聞いたようなオハナシで、これじゃあ『ダイ・ハード2』よりよっぽどコチラの方がダイ・ハード2だよなあ、監督さんよ。あと、プロレスラーならばやっぱり、“12ラウンド”よりも、“一本勝負”でしょ、と。
[DVD(字幕)] 5点(2011-02-07 01:59:37)(良:1票)
2353.  天国の日々 《ネタバレ》 
柔らかい光に包まれた大自然の中で、農場で働く人々もまた、しばしば“単なる人影”として描かれ、大自然と一体化しているように見えますが、その人影の中から主人公たちの表情が浮き上がってきて、切ない物語が綴られていきます。寄る辺なき労働者のビルと、妹であり映画の語り手であるリンダ、そして兄の恋人アビーの3人の一行。ある農場の期間労働者としてこき使われているうち、アビーは農場主に見染められます。農場主は余命いくばくもないため、ビルはアビーに農場主との結婚を勧め・・・と言う訳で、ようやくビルは平穏な生活を手に入れるのですが、その裏には、恋人を他の男と結婚させてしまうという大きな代償と、農場主からの疑惑の視線による緊張感を伴った、表面的な平穏さに過ぎません。この物語が静かに描かれていく中に、自然の風物の映像が何度となく挿入されるのですが、その挿入映像の中のひとつかと思われた“イナゴ”が、大群となって物語の表舞台に躍り出て、その欺瞞に裏打ちされた平穏さを突如打ち破ってしまう瞬間の怖さ。大炎上する麦畑の光景、その映像もコワイ、流れる音楽もコワイ。後はひたすら追いつめられ転落していくしかないのですが、その果敢ない行く末の虚しさよりも、映画ラストで、生き残った者たちがそれぞれまた新しい生活へと向かっていくこと、死者が忘れられていくことの方に、幾層倍の虚しさを感じます。怖い映画でした。映像の美しさ故に、残酷な映画でした。うーん、でも何で使われている曲が『水族館』なんだろう(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-02-03 00:15:19)(良:1票)
2354.  トランスポーター2
トラポンシリーズ第2作。1作目を超えようとかいう気負いはまるでなく、おーんなじような映画をもう一本作ってみました、という趣向。まさに“シリーズもの”の鑑、長続きする秘訣です(まだそんなに続いてはいませんが)。今回、凄腕の主人公が請け負った仕事は「子供の送迎」、しかしこの子供が例によって例のごとく、悪の組織に狙われるのでした。しかしこの組織、最初は医者になりすましてこの子供に何やら怪しげな注射を打とうとたくらむ、たったそれだけの事を遂行するのにどえらく大掛かりな計画を実行しておりますが、しかも主人公の活躍によってこの計画が頓挫するやいないや、「じゃあ今度はB計画だ!」。抜け目が無いにも程がある、もしや、子供を送迎する運転手がとてつもない凄腕だったりしたらA計画が妨害されるかもしれないよね、とか予想してたんですかね。こういう無茶苦茶さがナイスです。ちなみに敵の首領は、剣道?の達人、らしいけど、その後の展開にはあまり関係無し。この辺りのテキトーさもなかなかのもの。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2011-01-29 16:23:20)
2355.  ニューヨーク1997 《ネタバレ》 
カート・ラッセル演じる主人公スネークの反骨精神もさることながら、映画自体がまさに反骨精神の塊、「状況を説明してやるものか」とばかり、一人合点に映画は進み、「盛り上げてやるものか」とばかり、サクサクと映画は進む。このワケのわからなさ、とりとめの無さ、音楽の安っぽさ、それでいて網膜に焼き付いて忘れられなくなる光景の数々。これぞまさに“深夜放送映画”の王様ですな。ラストで(予想通り)カセットから音楽が流れた瞬間、ボーグナインのいかつい顔が脳裏をよぎり、ちょいと泣けてくる。
[DVD(字幕)] 8点(2011-01-29 00:11:36)
2356.  サバイバル・オブ・ザ・デッド(2009)
ダイアリー・オブ・ザ・デッドの姉妹編というか、まあそういう言い方をすればロメロ作品は姉妹作だらけになっちゃうんですが、ダイアリー~から派生したオハナシになっています。しかし内容的にはまるで南北戦争の頃まで時代を逆行しちゃったような感じ。ある島における、反ゾンビ派と親ゾンビ派(まあ、手短に言えば、ですが)の対立が、その島へ辿り着いた兵士たちの視線で描かれる、という趣向。うーむ。どうしてもゾンビでないとダメなんですか、他のモンスターじゃダメなんですか、と仕分け人に仕分けられてしまいそうですが、たぶんロメロ監督なら「はいダメです」ときっぱり返答してくれることでしょう(でも本当にダメなんでしょうか・・・?)。それにしてもこの作品、“ゾンビもの”と言うには人間たちのキャラが立ち過ぎてるというか、要するに作品の骨組みが見え過ぎちゃってるんですかね。ロメロ印のゾンビという免罪符でも効かないほどに。で、いささか緊張感に欠けてしまっているようにも思います(そもそも、ゾンビが人間しか食わないのかそれとも動物も食うのか、なんてこと、正直、どっちでもいいですしね)。ただし、残酷描写の方は、なかなかイイ感じに悪乗りしてて、ブラックな笑いを呼びます。と言う訳で、何だかこの作品、地味ながらも、「やりたいこと全部詰め込んでやったぜ」みたいな感じもあり、もしやこれでロメロゾンビは打ち止めになっちゃったりして?とか思っちゃうのですが・・・。
[DVD(字幕)] 6点(2011-01-26 23:44:11)(良:1票)
2357.  戒厳令(1972) 《ネタバレ》 
ロメロ監督の某ゾンビ映画を観た直後に本作を観ると、戒厳令下の冒頭シーンが何だかゾンビ映画にソックリだなあと。むしろロメロ映画が政治映画にソックリというべきなんですかね。それにしてもこれまた力作のこの映画。南米の某国にて、あるアメリカ人が殺害される。そこから映画は過去に遡り、彼が反政府組織に誘拐されてからの一週間が描かれる訳ですが。ただ、その描かれ方が、単純に「物語」として、事件の顛末や登場人物の感情を追いかけるものではなくて、ドキュメンタリ調の断片的なシーンがパッチワークのように錯綜的に積み重ねられていき、その中では、拷問シーンも会議のシーンも同レベルの扱い。そしてその描き方は、まるでキュビズムのように各部をデフォルメして強調し、状況のグロテスクさをえぐり出していきます。最後はまた主人公の葬儀のシーンとなり、流されるオルガン曲(バッハの幻想曲とフーガ)が感傷的な気分を醸し出すけれど、それは突然に断ち切られ、事態は何も変わっていないこと、また同じことが繰り返されるであろうことが仄めかされて映画が終わります。「これは感情の問題ではない、政治の問題である」と言わんばかりに。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2011-01-23 08:51:28)
2358.  ケイン号の叛乱 《ネタバレ》 
これはどういうオハナシかと言いますと、暢気な部長と暢気に楽しく仕事ができる職場でヨカッタな~、と思ってたら、突然部長が変わり、これがとんでもないクソオヤジで、ちっとも会社が楽しくなくなっちゃった。しかも、「今の会社があるのは、あの新しい部長が昔頑張ったお陰なんだぞ、わかっとるのか」とか説教されても、正直、カンベンして下さい(笑)。という作品でして、あくまで劇中の事として他人事として観るならば、いやーなかなか深い内容でありました(笑)。多彩な登場人物、艦上でのマスゲーム的な兵士の動き、嵐の描写など、様々な見せ場を交えつつ、スリリングな法廷劇へと進んでいく面白さ。そしてラストでは、映画を勧善懲悪的に楽しんでいた我々に冷水を浴びせかけるように、意外な方向に向けられる矛先。あえて憎まれ役にハンフリー・ボガートを起用したあたり、彼のちょっと不器用そうな「ただのオッチャン」的な感じが、ラストにおいて(つまり彼が姿を消してから)絶大な効果を上げているように思えます。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2011-01-18 23:16:28)
2359.  アンストッパブル(2010)
わかっていたこととは言え、自分がこういう映画にヨワイこと、改めてつくづく思い知らされました。お涙頂戴の要素なんかまるで無いけど、映画観てる最中、もう涙が出て仕方が無い。それは、ひたすら運動エネルギーの巨塊として描かれる暴走列車のド迫力に、ただただ圧倒されるから(こういう映画を観てると“鉄チャン”の気持ちが少し理解できる)。そしてそのエネルギーの前には無力な人間の姿と、それでもなお暴走を止めようと列車に闘いを挑むその姿には、震えが来るほどの感動が。いやあ、暴走列車モノにハズレなし(例外はあるけど)。殆ど条件反射的に感動してしまいます(でも一部例外が)。以前、『暴走機関車』という映画がありましたが(メッチャ好きなんです)、本作は、この映画と、この映画の元になったクロサワ脚本の両方を合わせた感じ。暴走をどう食い止めるかに主眼が置かれている点はクロサワ脚本に近いけれど、列車の破壊的なパワーにこだわった描写は、コンチャロフスキーの映画版の方(四重連!)を思い起こさせます。D・ワシントンの仁王立ちの姿もJ・ボイトを思い出させるし。暴走列車モノ、最高です。アトミック・トレインなどは例外ですけど(しつこいってば)。さて本作ですが、映画中盤、列車の暴走の模様がテレビ中継によって描写されていくのが、いささか要領良過ぎるようで、何だかチャッカリしてる気もしたのですが、実はコレも意味がありそう。というのも、映画前半では「家族に“言葉”では気持ちが伝えられなかった」2人の主人公が、後半では、テレビという“映像”を通じることで家族との距離が縮まっていく、という、ちょいと洒落た仕掛けになっているのですね。また、運転席のミラーも重要な役割を果たしていて、もちろん暴走列車への闘いにおいても重要なのだけれど、主人公2人の関係をもこのミラーが表現していて、映画前半では不信の視線、後半では信頼の視線を表しているのが心憎いところ。ところで、デンゼル・ワシントンの役どころ、サブウェイ123の時とちょっと似ている部分もあり・・・そしてそしてこれもサブウェイ123の時と同様、列車の窓は、何故か濡れているのでした。
[映画館(字幕)] 10点(2011-01-18 22:39:11)(良:2票)
2360.  バッド・ルーテナント
ヘルツォーク作品が“ハミ出し者の物語”と言うならば、この作品におけるハミ出し者とは、ニコラス・ケイジ演じる主人公ではなくむしろ、ヘルツォーク監督本人か。そして、ヘルツォーク作品が“文明と自然の対立の物語”と言うならば、この作品ではそういう二元的な対立を描くのではなくむしろ、文明そのものの中に潜んでいた野性をえぐり出した作品とでもいうべきか。まあ要するに、アメリカ社会に対してものすごーい色メガネで見ている訳ですが、それが社会批判になっているという感じではなくて、何だか本気で興味津津の視線でアメリカを観察しつつ、それを戯画化しようとしています。ああ、何も辺境の地に赴いて命掛けで映画を撮らなくても、実はこんな身近なところに、不条理で刺激的な世界があるんだなあ、と。と言う訳で、悪徳警官の悪徳ぶりを描いたサスペンスのような体裁をとっていますが、不条理モノ、ブラックコメディ、と言った方が当たっているかも知れません。悪徳警官と言っても、何か超越的な存在などではなく、悪いコトばかりしつつも一生懸命小市民的に生きている。何が災いし、何が幸いするやら。その人生の皮肉を眺めているのは、ワニ、イグアナ、そして魚。ラストの手持無沙汰感覚。
[DVD(字幕)] 8点(2011-01-15 16:30:06)
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