2361. ニューヨーク 最後の日々
ある種、業界ネタっぽい馴染みのない世界のオハナシ。この、「こういう職業あんねんで知ってたか」的な業界ネタと、「娯楽作ちゃいまっせ地味でっせ」的なシブい作風と、「地味な作品だろうと何だろうと大いに演技しまくってやるぜ」的なアル・パチーノ、という、ややチグハグな三すくみの構造に、ちょっとついていけませんでした、はい。豪華な出演者が、ちょっと重しになっちゃてますかね。ある初老のパブリシストの、最後の仕事。この大仕事だけは成功させたい、という思いを抱きつつ、彼はその最後の仕事に臨むが、周囲の状況は次第に彼を追いつめていく。というより、彼を追いつめるのはむしろ、彼自身の思いであり、彼が背負ってきたパブリシストとしての過去のキャリアそのもの。過去の成功というものは、未来の安泰と引き換えに得たものに過ぎないのか? と言う訳で、特殊な職業を描きつつも一般的な人生の不安に踏み込んだ作品、でもそれにしてはキャスティングが特殊過ぎませんかねえ。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-12 23:55:39) |
2362. THE MYTH/神話
粘着テープ上の格闘が、楽しくて楽しくて。ホントにネタが尽きないですね、感心します。しかも、このあたりのエピソードが物語の中では一番どうでもいい、ってのが、これまた、思い切ったところ。物語に関係なくてもインドに行かないよりは行った方が楽しいし、インドに行った以上はインド人と戦った方が楽しいし、どうせ戦うならネバネバした所で戦うのが面白かろうと。さらにその粘着を口実にインド美人を脱がせてみよう、と。もう、大賛成ですね。で、そういう下世話な展開を一通り繰り広げた後は、澄ました顔で“神話”の世界へ、というこの白々しさ。いやあ、ジャッキー、やるね。インディ・ジョーンズシリーズ面白いからちょっとパクッてみようか、と。ジャッキーやるね。教授(?)がムヤミに強いのも意味不明で良し。と言う訳で、支離滅裂、脱線しまくりの楽しい映画でした。首チョンパされた人間が最後に見る光景の映像化。これはすごい。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-01-10 00:26:27) |
2363. 20世紀少年 -最終章- ぼくらの旗
広げまくった大風呂敷を一生懸命たたむのが、この「最終章」とやらの宿命なんでしょう、まあとりえず御苦労さまでした。まあ、何となくスッキリしましたよ、とは言っても別に、“ともだち”の正体が判ったからではなく、そんなもん“ともだち”の正体は鬼太郎のオヤジに決まっておろうが、と最初からまるっとお見通しであった訳でして(この言い方で合ってますか?)。このスッキリ感って何だろう、これは作品に対するものではなくて、自分に対するものですね。何というかまるで、以前から大嫌いだったヤツと久しぶりに会話をかわしてみて、意外にも平静な気持ちでいられた、そんな時に感じるような達成感ですね。 [地上波(邦画)] 5点(2011-01-08 17:17:51) |
2364. 続・荒野の1ドル銀貨
とりあえずマカロニウェスタらしい要素をフンダンにとり込んで、復讐、リンチ、銃撃戦と、見どころたっぷりです。その分、物語の方は何だか要領を得ません、まあ、欲張り過ぎですね。間欠的に発生する銃撃戦を、あまり深くは考えずに「まあきっとここは撃ちあう場面なんでしょう」と軽く受け流し、そのカッチョ良さに浸りましょう。え、カッチョ良いと言っても主演は所詮、ジュリアーノ・ジェンマなんでしょ、だって? はい。カッコモンゴメリー・ウッドカッコ閉じです。例によって例のごとく「結局この主人公は強いのか弱いのかどっちなんだろう」と思わせる、そこがミソですね。敵のヒゲオヤジと、味方のメガネオヤジ(大村崑と大泉滉を足した感じ。どこの国にもいるんだね、こんな人)が、なかなかいい味。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-01-08 16:45:13) |
2365. オレだって侵略者だぜ!!
アノ噂の(あまり噂にもなってないけど、一応、噂の)ドン・ドーラー作品が、『ギャラクシー・インベーダー』という、いかにもモットモらしいタイトル(原題)でDVD化されたのが、レンタル屋にこっそり置かれていたので、観させていただきましたが。いやあ、元のビデオタイトル『オレだって侵略者だぜ!!』の方が、内容にマッチしてますね。当の侵略者たる宇宙人、顔はいわゆるグレイ型宇宙人をドクロ風にアレンジした感じでワルそうだけど、首から下の姿は、“昭和ゴジラから尻尾を取っただけ”という感じ、モコモコして結構カワユイ。その色あいから“グリーンマン”などとも呼ばれるけど、正直、映像の状態が劣悪で、緑色なのかどうかもイマイチ不鮮明。で、登場していきなり家屋に侵入、夫婦を惨殺するという凶悪ぶり・・・だったハズなのに、その後の展開、主な悪役の座は“横暴オヤジ”に譲ってしまい、宇宙人の立場は単なる脇役、いや悪くすると、横暴オヤジの被害者と言えなくもなく。いとも簡単に捕獲されてしまうシーンでは、すみません、大爆笑してしまいました。しまいにゃこの宇宙人、登場人物たちから“きっと理解しあえるよ”的な親近感すら抱かれてしまうんだから、もう趣旨不明、一体冒頭の夫婦は何のために殺されたのやら。そりゃ「俺だって一応、侵略者なんだよっ」とも言いたくなりますわな。でまあ、さらに、UFOをたまたま目撃した若者と彼の元恩師が、宇宙人の行方を追って物語に絡んでくるのがミソと言えばミソなんですが、しっかし、物語の途中で日付も変わってるというのに、この2人、家にも帰らないで宇宙人を求めてさまよい続けているんですねえ(適当な脚本だ)。捜索の開始はずいぶんゆっくりしてたくせに。ってな訳で、約80分間のデタラメワールドに浸ることで、「アレ、映画って、正しく撮るにはどうしたらいいんだっけか」という不安感に導いてくれる貴重な作品であります。 [DVD(字幕)] 1点(2011-01-06 23:27:28)(良:1票) |
2366. ボーダー(2008)
《ネタバレ》 まあ一言でいえば、映画の出来自体が“ボーダー”ってなところですかね。ちょっと面白い構成で、2人に一人くらいはダマせるかも知れません。もっとも、何だかアクロイドとABCのそれぞれ悪いところを足し合わせたような印象もありますが。ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの“親子”共演再び。いや初共演かもね。確かにふたりを共演させましたよ、とばかりに2人を並べてみる。しかしわざわざ2人を並べるのが何だか安っぽく、印象としては「ジジイが2人」。ブライアン・デネヒーも合わせると、うーんジジイばかり。他にも俳優はナンボでもいるだろうに、何ゆえこんなにジジイばかり集めて犯罪サスペンス映画を作ろうとするのか? この絵ヅラを観てると、まず「アメリカの警察には定年が無いのか?」という感想が最初に来てしまいました。まあ、この映画最大のドンデン返しは、「これだけの俳優集めておいて、これだけ濃い演技させて、なのにまさか、こんなに薄い内容だとは!」ってトコロですかね。いや、驚きました、実際。 [DVD(字幕)] 6点(2010-12-28 01:20:04)(笑:1票) |
2367. アリス・イン・ワンダーランド
3Dで観てない私が悪いんですかね、2Dで観る限り、工夫の無い映画、余白の乏しい映画、したがって何の情感も感じられない映画としか思えなかったのですが・・・。カントクさんが映画で遊ぶのは大いに結構だけど、この程度の遊びには、付き合いきれません。なお、アリスの体が小さくなったり大きくなったりする際に、服のサイズが合わなくなる描写、これこそ全くツマラナイものだと思います。アリスの体が大きくなることと、アリス以外の世界すべてが小さくなることとは、同義であり区別は無いはず。しかしこの描写は、わざわざそこに区別をつけてしまった。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2010-12-28 00:41:19) |
2368. ジュマンジ
普通に楽しめる映画、くらいにしか思ってなかったんだけど、いやはや、今回観直してみて、改めてその面白さに大感動、ここまで人を楽しませようとするのか、とホロリときてしまいました(いったい今までこの映画の何を観てたのやら)。次から次に発生する危機また危機を、実にテンポよく描いていく小気味よさ。それも、その危機が一過性のものではなく、どんどん積み重なっていくのがスリリングで、何ともワクワクさせられるではないですか。一軒の家で行われているゲームから、奇想天外なモノが次々に現れ、映画の世界の中に広がっていく、という、この広がりの感覚。かつてのパニック映画を思い起こさせるものがあります。で、そのハチャメチャな展開を、しっかり一手に引き受けて「驚き役」に徹するお巡りさんの存在がまた楽しかったり。本当によくできた娯楽映画だと思います。CGについても、ツルンとした恐竜ではなく「毛の生えた哺乳類」を描いて見せたというのが、当時としては画期的。なお、サルが変だという批判も多いですが、これはCGがヘタというより、「人間っぽく描写したい」というジョー・ジョンストン監督の意向に沿ったものらしいです。確かに違和感のあるサルではありますが・・・ホンモノのサルより、愛嬌があっていいじゃないですか。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2010-12-25 05:37:17)(良:1票) |
2369. 拳精
《ネタバレ》 あまりにも残酷あるが故、少林寺に封印されていた武術書が、謎の忍者に盗まれる。で、その武術をマスターして武術界の盟主の座を狙う男に対して、例によって修行をサボってばかりいるジャッキーが、(例によって妙な)武術をマスターして立ち向かう訳ですが。ジャッキーにその武術を伝授するのが、何ともアホらしい白塗り白タイツ姿武術の精霊(宇宙人かもしれない)。ちょっと、8時だョ全員集合に時々出てきた“すわしんじ”を思い出させますね。この辺りのやりとりが、実に実にクダラナイのですが、こんなクダラナイ映画なのに後半のアクションのすごいこと、よくこれだけ一生懸命できますね。十八羅漢との死闘、ジャッキーの悲壮なまでの表情が印象的です。そして最後の少林寺での闘い。そのままひたすらアクション全開で行くのかと思いきや、ここでまたギャグに戻ってしまう。またこれがクダラナイんだけど不本意ながらもつい笑ってしまいます。しっかし。最後に明かされる意外な真相、なんですけれども、えー、アンタが真犯人なんだったら、別に武術書盗み出す必要もないやんか。ってか、今の地位にいる時点ですでに目的を果たし終わってると思うんですが、どうでしょうか。面白いからいいけど。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-12-25 05:06:54)(良:1票) |
2370. ジャスティス(1979)
裁判制度のいい加減さ。そのために人生を狂わせ、破滅する人がいる。そういう重いテーマを、コメディタッチで軽妙洒脱に描いた手腕が見事。脇を固める様々なキャラクターと、彼らが織りなすエピソードの数々が、時に重く、しかし基本的には楽しく映画を盛り上げながら、物語をクライマックスへと導いていきます。それが実に上手い。まあ、クライマックスの法廷シーン(のアル・パチーノ)には、賛否両論あると思いますが(そんなオチでいいのか~との声も多いでしょうが)、この辺りはもはや、勢いでイッチャエ、てな感じですね。 [DVD(字幕)] 8点(2010-12-20 23:15:51) |
2371. ハート・ロッカー
うわ。つまらん。と言って済ませる訳にいかないんだろうね、こういう作品がオスカー獲っちゃうんだから。戦場の映像が逐一、これでもかこれでもかと流れてくるようになって、ホンモノの映像の持つリアリティに、すっかり圧倒されちまい、作り込んだ虚構であるところの「映画」に対する懐疑が生じた訳だ。アメリカ映画界が自信を失った訳だ。怖気づいた訳だ、とまで言ったら言い過ぎか? そういう一連の流れにおいて、つまるところ、3Dに挑戦した『アバター』と本作とのオスカーレースってのは、「作る」立場と、「壊す」立場との、一騎討ちだったのね。そして結局、「壊す」方に軍配は上がった。でも、「壊す」だけじゃあしょうがない訳で。それとも、映画をいったん解体した上で、映像美学を再構築してみよう、ってか。「これは実際の映像です」的な映像の持つ力。もっとも、「ホンモノの映像のリアリティ」って、あくまでホントにホンモノであるからこそリアルなんだけど・・・。そういや対抗馬の『アバター』ですら、同様の手法を用いたシーンがあったっけ。でも、それに頼り切らない賢明さを持っていた分、『アバター』には救いがあった。本作は、映画を壊し、壊しただけで評価を受けてしまった。勿論本作にも作為はある、あるけど・・・面白くない(スーパーマーケットで立ち尽くすシーンなど、本気でアホかと思った)。これでいいのか、アメリカ映画。 [DVD(字幕)] 5点(2010-12-20 22:52:07)(良:1票) |
2372. ニュー・ジャック・シティ
マリオ・ヴァン・ピーブルズと言えば、『ジョーズ’87/復讐篇』で初めて観て、人懐っこい表情が印象的だったんですが。その後『エクスタミネーター2』を観てみたら(ええと、たぶん木曜洋画劇場です)、これまたマンガのようなスゴイ悪役ぶりで、大ウケしてしまいました。まさかこんなヒトが監督業に乗り出すとは夢にも思わなかったんですけどね。その彼の監督作品、いやがコレなかなかの意欲作。内容的に欲張り過ぎな面は確かにあって、黒人ギャングとマフィアの抗争があるかと思えば、警察側にも、人種間の摩擦や友情があり、ギャングへの個人的な憎しみがあり。虚飾に満ちた栄光、転落、そして不合理。という盛り沢山の内容で、これらを料理しきれずいささか散漫な印象は残ります。でも、いいじゃないですか。これだけ骨太な作品もなかなか貴重。丁寧な演出にも好感が持てます。監督本人も重要な脇役で登場し、端正な顔だちを見せてくれています。入魂の一作。 [DVD(字幕)] 8点(2010-12-16 23:54:36) |
2373. フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ
これぞプロレス映画。隣近所の迷惑も顧みず、壮絶バトルを繰り広げるは、文字通り血肉を分け合った大巨人同士。譬えるならばまさに、アンドレ・ザ・ジャイアントvsモンスター・ロシモフ、「二人民族大移動」by古舘伊知郎。いや、巨体ながら(アンドレと違って)この素早い動き、これはまさに、ジャンボ鶴田vsジャンボ尾崎。ってそりゃ野球選手だろう。いや借金王だろう。あ、プロゴルファーか。ま、とにかくですね。ひたすら怪獣のバトルを楽しめる映画が、この作品。カラー作品では合成映像が不自然に見えやすい(見えやすかった)ものだけど、本作は見事な処理で、臨場感も満点。理屈抜きで楽しんでください。とか言いつつ、うーん怪獣ってやっぱし爬虫類系とか節足動物系とかがいいなあ。サル系も悪くは無いけど、一匹ならず二匹となると、絵ヅラ的にはちょっとダサい。 [DVD(邦画)] 7点(2010-12-16 22:51:45) |
2374. 白いドレスの女(1981)
面白い!! ミステリとしての合理性よりもむしろ、妖しい雰囲気。そしてその中からふと冷酷なロジックが顔を覗かせる瞬間の不気味なサスペンスが、本作の魅力。脇役たちも皆、印象的に描かれているし、カメラも入念に選ばれた印象的なショットが多数で、映画を盛り上げます(オスカーがラシーンを遠目に見るシーン、ピストルを構えているように見えるのに次のカットでは手を下ろしているのは、ちと違和感ありましたが)。いや、本当に面白いです、この映画。ちょっとエロいけど。キャスリン・ターナーの、その手の動き、なんなんでしょ、はずかしいでちゅ。 [ブルーレイ(字幕)] 9点(2010-12-13 22:42:30) |
2375. ペイルライダー
《ネタバレ》 冒頭の襲撃の場面なんか、随分リキが入っていて、心ある映画ファンならば感激間違いなし!なんでしょうけど、私のように心の曇っている人間はどうしても、「ほら~こんな細かいカット割りを何日もかけて撮影するから、空が晴れてたり曇ってたりバラバラやんか~」と思っちゃうのです。すみません。イーストウッドって、目つき悪いですね。大きなお世話ってか。いや、この眼力があるからこそ、本作の主人公役にうってつけ。そうでもなければ、こんな(到底ありえない)モテモテ役を自ら演じるなんて、本来ならこれこそ許されざるモノですよ、全く。ま、とりあえずこの主人公、カッチョよいことは間違いない。007も手を焼いたジョーズを、一撃のもとにやっつける。でも金的は反則。この、ニセ牧師め(私の目にはどう見ても牧師に見えないのです)。主人公の過去が明かされないのが、いいですね。彼の過去を語る唯一のものが、背中の弾痕(やっぱし堅気じゃないよねー)。敵役の悪徳保安官が、またカッチョよい。6人の部下もカッチョよい。計7人が相手、6連発の拳銃では弾が足りない、さあどうする。どうするって、2丁持ってるから問題なしか。ガックシ。しかも2丁使うまでもなく、手際良く部下たちを倒していく主人公。最初は敵役たちカッチョよいと思ってたのに、途中から「あれコイツら弱いんじゃないの?」と思えてきちゃう。そういや丸腰の爺さん一人を撃ち殺しただけだもんなー。クライマックスの決闘の前にもう少し、敵役たちの凄みみたいなものを表現しておいて欲しかったかな。ま、でも、決闘シーンは、実にシビれる盛り上がりで、出色です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-12-13 22:18:26)(良:2票) |
2376. マーニー
赤色恐怖症?って何コレ『めまい』の二番煎じかよ強引な設定だなー。とか思いながら観始めたハズなのに、ふと気付くと夢中になって観ている自分がいる。いやいや意外に面白いですよ。単純に謎が提示されてそれを解決する、というタイプのミステリではなくて、謎ときの要素がいくつもあり、それだけに物語がどこに行きつくのかがなかなか見えない。それどころか、登場人物たちそれぞれの思惑が、事態を複雑なものにし、波乱とサスペンスを次々に呼ぶ、という趣向。というとホメ過ぎですかね。まあそんな大げさなもんでもないですけど、先が読めない分、ハラハラさせるシチュエーションが思わぬ形で登場することになり、我々を楽しませてくれます。と同時にヒッチコック自身もパツキン女優を好きに動かして楽しんでる訳なんでしょうけど。ただ、本作、あくまで娯楽路線のサスペンスで通して欲しかった気はしますね、最後に急に深刻ぶって見せたのが、やや違和感。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-12-13 21:45:41) |
2377. レスラー
《ネタバレ》 『ロッキー』という映画がありましたが、あの作品に続編作るとしたらそりゃこうあるべきでしょ、という内容の作品が、本作であります。よって内容は当然ながら(?)ロッキー・シリーズよりは『どついたるねん』に近づいてきちゃう訳ですけど(でも、本作の主人公を支えるストリッパーの彼女の役のマリサ・トメイが、何だかタリア・シャイアに見えてきて、やっぱりロッキーを思い出すのであった)。しっかし、この作品、どうなんでしょ。プロレスってのは八百長なんです事前に打ち合わせしてるんです要するに「ウソ」なんです、とコトサラに描くことで、映画を「ホント」っぽくしようとしてませんかね。で、プロレスファンもこれ観て「泣けた」と言う時、もしもそこに、「リング上の試合が真剣勝負じゃないことぐらい、プロレスファンにとっては常識さ」的なアピールを含めて言っているとしたら、やっぱりマズイんじゃないか・・・。とか言いつつやっぱり、感動しちゃうんですよね、本当に。カメラは主人公を演じるミッキー・ロークに密着し、まるでそれこそ「取材でもするかのように」密着する(歩く後ろ姿についていったり)。彼が意識を失えばカメラは止まる。そして、心臓発作を起こしバイパス手術を受けたことは、意識が回復した主人公と一緒に知ることになる。必ずしもカメラが主人公の一人称ということはなく、時には彼女や娘の視点に近付くこともあるけれど、大枠では主人公に影のように寄り添う。そんな中で、時々カメラが大きく引く瞬間があり、これがどうにも妙な気分、ヤな気分にさせられる。まるでこの瞬間は、主人公ではなく「私」の後ろからカメラが撮っているような。主人公も私も、そりゃあダメダメで無為な人生を送ってる訳で、だからこそヤな気分にもなるのだけれど、しかし何もかも中途半端な私と違って、主人公は最後にはプロレスの道をとことん生きることを決意する。要するにプロレスバカ。そう、プロレスラーってのは、プロレスバカなんです、だからこそプロレスファンはプロレスラーを愛し、憧れる。そういった「バカ」の部分、そして「バカ」になる難しさ(マズイ、猪木に洗脳されてきたか?笑)というものを、この映画は実によく酌んでくれているなあ、と思うのです。・・・でもでも、日本のプロレスが好きな人間としては、一応、「これだからアメプロは、なあ」と呟いておくのであった。日本のプロレスは世界最高峰。 [DVD(字幕)] 8点(2010-12-05 00:48:50) |
2378. ロード・キラー
《ネタバレ》 ちゃんとハラハラさせ、コワがらせてくれる。これって結構、貴重。よくツボを押さえたサスペンスです。まず、「こりゃ『激突!』か?」と思わせておいて、実は違う。『激突!』のトレーラーもたいがい理不尽には違いないけど、そこには明確な意思、「ひたすら主人公に襲いかかる存在」というテーマがありました。本作の犯人は違います。一体何がしたいのか、本気でワカラン(笑)。生きたまま下顎を切り取るというショック描写と、その一方では「裸でハンバーガー買ってこい」というアホな要求との、その落差(あなたなら、どちらを選びますか?)。こんな、何とも支離滅裂な犯人が、クライマックスでは妙に周到すぎるトラップを仕掛けてくる、という第2の落差。これが効果的でなかなかにコワイ。もっとも、巧妙過ぎるトラップなんてものが、およそ成功した試しが無いんですけど。犯人の死体発見、と思いきや、実は・・・という、伏線に基づいたオチもうまい。カユいところに手が届く、サービスの行き届いた作品でありました。それにしてもいいケツ。 [DVD(字幕)] 7点(2010-12-03 00:15:19)(良:2票) |
2379. ザ・シューター/極大射程
《ネタバレ》 手元の原作本(新潮文庫)についている帯には「『このミステリーがすごい!』2000年版第1位」と書いてあるのはいいとしても、さらに「キアヌ・リーヴス主演で映画製作迫る!」と書いてあるのは、こりゃどうなんですかね。主人公のボブ役にマーク・ウォールバーグってのはどうも似合わないよなあ、という気持ちも、改めてこの帯を見ると吹き飛んじゃいます(笑)。ついでに言うと、こういう帯付けないで欲しいなあ、内容的にはアクション小説なのに、わざわざ「これはミステリーです」と注意書きを付けるのは、「最後にどんでん返しがありますよ」と教えてるようなもんで、読む方も構えて読んでしまう。先入観無く読みたかったんですけどねえ。その点、この映画は、単なるアクション映画の振りをして、結局やっぱり単なるアクション映画でした、という親切設計。工夫もなくてイマイチ面白くないんですけどね。特に、他の方も書いてますが、最後の裁判の場面(およびヴィンセント弁護士の登場)を端折ってこうもアッサリ物語にケリを付けるというのは、思い切りがよいというか、気がきかないというか。 [地上波(吹替)] 6点(2010-12-02 22:41:55) |
2380. 第9地区
前半は結構、忍耐力が要求されます。ドキュメンタリを装うこと、ただその一点にリアリズムの表現を頼りきっているのが、この上なく薄っぺらくて、面白くないのなんの。大体、南アを舞台にアパルトヘイトの再現を宇宙人相手にやっているってのが、寓話と呼ぶ気も起らないアホラシさ。しかも『インデペンデンス・デイ』かと思ったら実は『ザ・フライ』でした、ってか。 しかーし。後半、物語の主眼が見えてくるに従い、ガゼン面白くなってきます。主人公は最初、宇宙人をコケにしていたし、我々もまた、醜悪な宇宙人を気味悪く、疎ましく感じている。この「宇宙人に対するヤな感じ」は、映画全編にわたる「バッチさ」の執拗な演出によるもので、これもまた“映像の力”と呼ぶんでもよいでしょう。この「ヤな感じ」は、どこかに嫌悪感を残しつつも、主人公の姿と心の変化とともに、我々の心からも徐々に消えていく。主人公と宇宙人が、信頼と裏切りの間で揺らぎながら共闘する、という、この荒唐無稽さ、ぶっ飛び具合が、ああ久しぶりにSFらしいSF映画に出会ったな、という感じ。いや以前に、これだけ正面切って、主人公の決断、そして成長を描いた、物語らしい物語ってのも、結構、貴重かも知れません。さらには、本作は「無表情の宇宙人の感情を表現する」という、映画演出の腕の見せ所(俳優の演技力に頼らない)に挑戦している点も、見逃せません。と言う訳で、後半、面白かったです、ホント、前半だけ撮り直してもらえないですかね。 [ブルーレイ(字幕)] 7点(2010-11-30 00:19:24)(良:1票) |