221. 知りすぎていた男
《ネタバレ》 前半部は謎めいた展開で引き込まれますけど、中盤から伏線回収というか謎解きが始まると突っ込みたくなるところがだいぶ出てきます。まず言えることは、諜報員ルイ・ベルナールの行動が謎というか穴だらけなんじゃないでしょうかね。ジェームズ・スチュアート夫妻に接触してくる動機もなんか辻褄が合わないし、あんなに群衆でごった返している広場でスチュアートに出会ってダイイング・メッセージを残すなん偶然が過ぎるでしょ。彼はロンドンの公安部が差し向けた諜報員らしいけど、誰にも漏らしていないはずの息子が誘拐されたという情報がスチュアート夫妻がロンドンに到着する前に公安が把握しているというのはどうしてなの?誘拐犯夫婦がスチュアートたちに接触してきた理由に至っては理解不能。まるでベルナールがスチュアートに死に際に接触するのを予知していたみたいです。 とまあかなり穴が見える脚本ですけど、名匠ヒッチコックの手にかかるとけっこうハラハラドキドキさせてくれるのが憎い。ジェームズ・スチュアートはもちろんマッチョな活躍を見せるヒーローというタイプじゃないので、こういう冷静なようでいて役に立たない行動で右往左往するキャラがイメージ通りです。やはり奥さんのドリス・デイの方が序盤から鋭い観察力を見せる名探偵みたいで、悲鳴で要人暗殺を防ぐし最後は『ケ・セラ・セラ』を歌って息子を救い出すし、もう大活躍ですよ。二階で息子が吹く口笛があんな遠くまで響くってのは、ちょっと盛り過ぎですけどね(笑)。 ところでヒッチコック御大はどこで顔を出してましたかね?判らんかったなぁ… [CS・衛星(字幕)] 6点(2023-01-22 21:50:11) |
222. 眠れぬ夜のために
《ネタバレ》 こんな決して大作とは言えない映画に、なんでこれほど大量のカメオ出演者がいるのかが不思議、それもハリウッドの業界人がやたら多い。これはたぶん、『トワイライト・ゾーン』の悲劇的な事故の後で、もう映画を撮れないんじゃないかとまで言われたジョン・ランディスを励まそうとハリウッド人脈が結集した結果かもしれません。とは言っても、デヴィッド・ボウイの無駄使い、あれはないよなぁ… 主人公が不眠症ということでしたが、どう考えてもこの設定が活かされた脚本とは言い難い。この出来事がやっと眠りにつけたジェフ・ゴールドブラムの見た夢でした、っていう最悪の夢オチになるのかなとさえ思いながら観てましたが、終わってみればただの巻き込まれ型アクション映画だったという事実の方が、私にはサプライズでした。人はバンバン殺されるし、イラン人・フランス人・英国諜報員(?)・謎の大富豪とあとからあとから登場するし、なんか理解しにくいストーリーです。唯一コメディ的な要素は、序盤から死体の山(犬まで)を築いてゆくジョン・ランディスも加わったイラン人四人組みたいですが、微妙過ぎてあれじゃクスッともできませんよ。全般的に洒落っ気が不足です。でもミシェル・ファイファーだけは良かったなぁ、チラッと側面からだけどヌードまで見せてくれてます。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2023-01-19 22:43:59) |
223. ホーンティング
《ネタバレ》 糞ホラー映画として公開以来罵声が浴びせられている本作だけど、自分としてはハードル下げて観ればそこまで貶さなくてもいいんじゃないかという気もします、まあ遊園地のお化け屋敷アトラクションだと思えばいいんじゃない?それにしてもドリーム・ワークスが製作するホラーって微妙な出来が多いんじゃないでしょうか。 もちろんロバート・ワイズの『たたり』のリメイクなわけですが、『たたり』のジュリー・ハリスとよく似た雰囲気のリリ・テイラーをエレノア役に持ってきたのはオリジナルへのリスペクトかな。他の登場キャラもかなり寄せているキャスティングだと思います。オリジナルは、序盤はエレノアという不幸な人生を送ってきて精神的に不安定な独身女性の妄想なのかと誘導する撮り方だったのですが、その要素は本作では薄いですね。時はCG映像の隆盛期、後半はCG使ってやりたい放題・見せたい放題のモンスター映画の様な展開ですが、技術が未発達の60年代の方が見せ方・怖がらせ方に工夫があったなあ。特に後半は画面が暗くて観づらかったしね。でもさすがドリーム・ワークスだけあって、セットや美術にはカネかかってますね。 考えてみれば、この映画って懐かしの『ヘルハウス』とストーリー的にはそっくりなんですね、そりゃネタ元が一緒ですから当たり前か。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2023-01-16 21:51:58) |
224. 血とダイヤモンド
《ネタバレ》 3億6000万円相当の価値があるダイヤ原石を税関前で強奪することを計画する宇津木組(ボスは田崎潤)。ところがその計画は思わぬルートで漏れて、小柴(佐藤允)がかき集めた四人組によってダイヤは横取りされてしまう。ダイヤの保険を引き受けた保険会社から調査を請け負っていたゴロツキ私立探偵黒木(宝田明)は、ダイヤを警備するガードマンの線から利恵(水野久美)が強奪に絡んでいると見抜いて保険会社と密約してダイヤ争奪に割り込んでくる。神戸港の倉庫に逃げ込んだ小柴一味だが、小柴は犯行の際に負った銃創がどんどん悪化してゆく。彼らは町の外科医・秋津(志村喬)父娘を拉致して来て、小柴を治療させる。こうしてハイエナされた宇津木組やダイヤ故買商、そして警察も含めた一夜限りの大乱戦が幕を開けるのであった。 監督の福田純は捻ったストーリーを書く東宝の脚本家として知る人ぞ知る存在ですが、監督としてはその才気が邪魔したのか評価は決して高くない。その中でも『百発百中』と並んで本作は隠れた傑作として名高い。どちらも宝田明が主演で、この両名はコンビを組むと不思議な化学反応が起きるみたいです。この映画は佐藤允一味や水野久美たちの背景事情などはほとんど語られることはないストーリーテリングですけど、ほぼ一晩の佐藤允一味・志村喬親子・宝田明の言動だけに絞った脚本には東宝には珍しいフィルムノワール色が濃厚です。とにかく序盤を過ぎると登場人物たちの裏切りの連続、まるでゲーム理論で言うところの“囚人のジレンマ”を具現化したような壮絶さです。まあ警察以外では志村喬親子以外は大なり小なり悪人なんですが、意外とそれまで演じることが少なかった水野久美の悪女キャラが彼女のイメージ通りでかえって新鮮でした。行き掛かりで宝田明と文字通り“血を分けた兄弟分”関係になった佐藤允ですが、劇中ずっと銃創で悶え苦しんだ挙句の壮絶な死にざまは見事です。 悪党一味はそれぞれが普段のイメージとちょっと違う演技を見せてくれたのが良かったですけど、志村喬だけは『生きる』の主人公の様ないつものキャラでした(笑)。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2023-01-13 22:34:33) |
225. アングスト/不安
《ネタバレ》 これって、ワイドショーなんかで見かける犯罪再現フィルムを映画にしたような代物で、そこに脚本家が妄想した犯人の心象モノローグと精神鑑定医(らしき人物)の分析を被らせただけです。「モノローグを聞いているとこの男が犯行に至った気持ちが理解できるようになる」なんて解説がありましたが、こっちとしては悪いけど一ミリも理解も共感もできませんでした、ただ不快なだけです。この映画のキモであるキチ〇イ犯人が家宅侵入してからは無意味じゃないかと思うぐらいの長回しが多く、普通に編集したら三分の二ヘタしたら半分ぐらいの尺で済んだんじゃないですかね。極端なほどのローアングルと今ではドローンを使うだろうというぐらいの高さからのクレーン撮影には確かに禍々しさを感じさせてくれますけど、肝心の内容がここまで胸くそ悪いと全く無意味でしょう。犯人のキチ〇イ役の俳優は見覚えある顔立ちだと思いましたら、『Uボート』で“幽霊のヨハン”と仲間から呼ばれていた印象深い機関員、アーウィン・レダーでした。あんな超大作で爪あとを残したのにその直後にこんな自主映画みたいな作品でキチ〇イを演じるなんて、本人はけっこう乗り気でオファーを受けたらしいですけど、ヘンな風に意識が高いタイプの役者みたいですね。監督は本作で多額の負債を背負ってその後は一本も商業映画を撮れていないそうですが、当然の報いです(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 2点(2023-01-10 19:06:29) |
226. モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン
《ネタバレ》 モンティ・パイソン製作の最大の問題作と言えば本作。もともとパイソンのくどい英国ギャグは日本ではウケがイマイチだったうえに宗教をテーマにしていたので大して話題にもならなかったけど、記録を見ると西欧では普通に公開できた国はほとんどなかったみたいです。でもよく観ると、この映画はキリスト教というよりも宗教自体が持っている狂信性や当時の党派性に執着した左翼陣営、そしてユダヤ人そのものに対する強烈な皮肉が感じられます。そもそも主人公ブライアンはイエス・キリストの隣家に生まれた別人で、チラッとですけどイエス自身が説教しているシーンもあるぐらいです。つまりブライアンはイエスが活動していた時期にいた全くの別人という設定ですが、キリスト教信者たちにはこういうシャレは通用しなかったわけです。まあこれはキリスト教だからこの程度で済んだわけで、これがイスラム教のマホメットだったらおそらくパイソンのメンバーは一人残らず暗殺されていたでしょうね(笑)。 割とパイソンは好きな自分ですが、この映画のギャグには胸やけがさせられたところが多かったです。マイケル・ペイリンの吃音というか滑舌の悪さが強調されるギャグは彼の得意芸ですが、宗教的とは違う意味でコンプライアンスにうるさい日本の地上波ではもう放映不可能でしょう。でもブライアンが苦し紛れにする説教(?)にはけっこう含蓄のあるセンテンスもあり、ここはさすがインテリ集団モンティ・パイソンと評価されるところでしょう。ラストで歌われる“Always Look on the Bright Side of Life”は名曲、今や英国人に愛されるポピュラーソングになっているそうで、フォークランド紛争で撃沈された駆逐艦シェフィールドの乗員たちが、救助を待つ間に歌って頑張ったという実話にはなんかほっこりさせられます。 [ビデオ(吹替)] 6点(2023-01-07 22:30:41) |
227. ベン・ハー(1959)
《ネタバレ》 『タイタニック』も『ゴッドファーザー』も存在していなかった昔、ハリウッド超大作映画の代表と言えば間違いなく本作『ベン・ハー』、なんせ試写会では昭和天皇・皇后までご覧になっているぐらいですからね。そして『ベン・ハー』といえばやはりチャールトン・ヘストン、本作の前も後もノミネートすらされていない彼の唯一のオスカー受賞作で代表作、じっさいのところヘストンの他の代表作は?と問われてとっさに思い浮かばないから困ったもんです(あとは『猿の惑星』ぐらいかな)。そう言えばどっかの医薬品メーカーが“ベン・ハー”という商品名の水虫薬を販売してましたよね、今でも店頭に並んでいるのかは知りませんけど、このネーミングはどういうセンスなんでしょうかね(笑)。 戦車レースのシークエンスがあまりに有名ですけど、サブタイトルにある通りにかなり宗教色が濃厚な物語です。たしかに超大作に相応しい美術関係の造りこみ具合ですけど、スペクタクル・シーンは戦車レースの他は意外と少ないというかほとんど無い。その分役者の演技を的確にコントロールするウィリアム・ワイラーの力量のおかげで、文芸大作として立派に成立しています。ユダ・ベン・ハーはイエス・キリストと同時代人という設定でまるでイエスを狂言回しの様に見せるストーリーテリングですけど、イエスの姿は後ろ姿か遠景でしか見せずセリフすら一言もなし、これは大映の『釈迦』でお釈迦様の見せ方にそっくり真似されていますね。まあキリスト教信者には素直に琴線に触れて納得がゆくんでしょうが、信仰に縁がないこちとらなので復讐の鬼となったユダがイエスの姿を見ただけで普遍の愛に目覚めるというお約束の展開にはついてゆけませんでした。ワイラー自身もユダヤ系の人なので、ユダヤを過酷に支配するローマ帝国にユダヤ人を虐殺したドイツ第三帝国を想起させるような意図があったんじゃないでしょうか。 三時間半もある長尺なのでなかなか見直すチャンスが少ないんですけど、お正月休みにのんびり観るには向いているのかもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-01-04 22:00:10) |
228. 最後の戦い
《ネタバレ》 記憶の限りでは、自分が観たセリフのない映画はこれだけ、他には『人類創生』みたいに猿人が彼ら独自の言語(唸り声?)を発するだけという珍品はありましたけどね。この映画は決してパントマイム劇ではなく敢えてセリフを全廃することによって映像に観客を集中させる斬新な手法なのかと思いきや、人類が大気汚染によって声帯の発語機能を失ってしまった世界のお話しというのがリュック・ベッソンの設定だったそうで、それじゃあちょっとダサくないですかね。でも日本版ソフト発売時に、勝手にセリフを創って日本語吹き替えバージョンなんてものが出来なかっただけでも幸いかな。出演俳優も最小限だしさぞや低予算で撮られたんだろうと当然思いますけど、なんと330万フランもかかってしまったそうです。なんでそんなに?と訝しくなりますが、撮影経費というよりもベッソンに降りかかった数々の金銭トラブルの結果みたいで、24歳の若造がよくもめげずに完成させたものだと褒めてあげたい。 確かにセリフが無い分映像を必死で追いかけることになりますが、それでもストーリーというか世界線が理解できたとは到底言えません。中盤以降はジャン・レノを含めた三人の男が一人の女を巡って1対2に分かれて攻防を繰り広げていたということは辛うじて判りましたが、その女が死んでしまったのにラストで唐突にもう一人の女が現れ、つまりこの物語はオスがメスを求める(メスがオスを求める)生物本能がテーマだったというわけです。哲学的な語り口と思わせといてのこのオチは、やっぱ中二病が抜けきらない感が今でもあるベッソンらしいデビュー作ですね。 [CS・衛星(字幕なし「原語」)] 5点(2022-12-30 23:01:02) |
229. マダムと泥棒
《ネタバレ》 ずいぶん昔にコーエン兄弟版リメイクの『レディ・キラーズ』を観ていたのでだいたいのストーリー展開は把握していましたけど、このオリジナルとは同じブラックコメディでもだいぶ色合いが異なっている感じがします。共通点としては、不気味なメイクの“教授”役のアレック・ギネスが、『レディ・キラーズ』で同じ“教授”だったトム・ハンクスの違う意味での気持ち悪いキャラに繋がっているところでしょうか。そう考えると、“元祖・百面相俳優”アレック・ギネスの面目躍如は見どころで、まるで貧血気味でやせ細ったドラキュラにしか見えないんです。もちろん“悪は最後には滅びる”という結末は一緒ですけど、このオリジナルの方がおばあさんのキャラが意外と真面目で、毒気も割と薄かったのはちょっと残念でした。教授たちが音楽練習と称して籠ったのは二階の部屋で、ここもコーエン版では地下室からトンネルを掘ってゆくという逆位置になっています。中盤の強奪したカネをおばあさんに自宅まで運ばせる展開は中途半端なドタバタで、演出には古さが否めないですね。すっとぼけた演出ではありますが一味は仲たがいが始まって最後は殺し合って全滅するというラストはちょっと凄惨で、いかにも50年代英国映画という風味が濃厚でした。正直なところ、自分には『レディ・キラーズ』の方が好みかな。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-12-27 22:29:43) |
230. ハッピー・デス・デイ 2U
《ネタバレ》 前作がホラー+ラブコメという図式だったのに対して、この続編では完全にホラー要素がSFに置き換わっております。タイムループならぬ次元ループとも呼ぶべき現象、これを全人類の99%が理解できない量子力学という呪文を使って説明してしまう荒業、ちょっと強引すぎるきらいはあるけど何となく納得させてくれたような気がします。前作でツリーのループで毎回冒頭にだけ登場していたアジア系のライアン君、実は彼は卒業研究で量子反応炉なるトンデモない装置を開発してしまう天才的な学生で、本作ではとくに前半で大活躍を見せてくれるところが見どころです。まさかのライアン君のループ地獄が展開してこれも仰天の二人のライアンが出現して量子反応炉が暴発、なんとツリーの方がやっとの思いで抜け出したはずのループ状態に逆戻り。正直この展開には観ていてほんとにびっくりさせられました、まるでこの映画は前作と同時に脚本が書かれて撮影したんじゃないかと思うぐらいです。明らかにこの後は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズを意識した展開になるのですが、前作公開後にこの展開を構想出来る脚本家は、類まれなる才能の持ち主であることは確かです。実際には本作が期待ほどヒットしなかったので構想は萎んでしまったみたいですけど、さらにシリーズ化するプランはあるみたいですね。実現すれば、まさに21世紀の『バック…』シリーズときっと評価されることでしょう。 それにしても、ツリーとカーターおよびライアンを演じた俳優たちは、この二作で何度ほとんど同じような演技(ツリーが目覚めてカーターの部屋を飛び出すまでのシークエンス)をさせられたことでしょうかね、編集マジックで軽減されているかもしれないけど、彼らにはまさにループ地獄ですね(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-24 22:58:26)(良:1票) |
231. ハッピー・デス・デイ
《ネタバレ》 ホラーとサスペンスとラブコメの絶妙なミックス、考えてみればけっこうな数が製作されているタイムループものに新風を吹き込んでくれた一作だと思います。主演のジェシカ・ローテはたしかにJDを演じるにはちょっと苦しいお年頃でしたが、前半のクソが付くほど嫌な女からどんどん心が清らかになって可愛げが滲み出るようになってゆくところなんかは好演だったんじゃないでしょうか。ストーリーとしてもタイムループものには付き物の矛盾は最小限、というか勢いに任せたストーリーテリングで突っ走って乗り切ったという感じでしょうか。何度も殺されては生き返るけどだんだん体調が悪くなってくるし、体表面は普通だけどレントゲンを撮ると内臓は医者が驚くほどのダメージを受けているなんてところは、なんか謎めいていて面白い。でも苦しいのはマスクを被った殺人鬼の正体で、ネタバレになるので詳しくは言えないけど、やはり一人じゃないってことなのかな。いろいろとばら撒かれた伏線も割と綺麗に回収しているや、ラストのどんでん返しみたいな展開もセンスが良かったです。エンディングの「この話しって『恋はデジャヴ』になんか似ていない?」というセリフも、けっこう強烈な楽屋オチじゃないかな。 なんか皆のレヴューによると続編『2U』も凄いらしいですね、早速観てみましょう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-12-21 21:44:02) |
232. マーシャル博士の恐竜ランド
《ネタバレ》 ラジー賞を二つも獲得したり映画会社の重役の首を飛ばしたりとダメなエピソードで知られるこの映画、でも思ったより楽しめたから自分は特に文句はないです。映画としての出来が酷いというよりもあまりにバカバカしかったからなのか、とすればラジー賞選考委員はちょっとシャレが判らなすぎるんじゃないかな。私は観たことないがオリジナルのTVシリーズと違い過ぎてワースト・リメイク賞をとったのかもしれないけど、データを見る限りオリジナルと登場キャラはほとんど一緒、どっちもコメディなんだしねえ。ただこの監督は順調にキャリアを重ねてきてたのに、本作以降はどうも映画を撮らせてもらえなくなってるみたいで、それはお気の毒。 とは言ってもギャグのレベルは下ネタを交えながらも、かなりの低レベルであるのは確かです。ストーリーもあってないようなもの。でも個人的な感想ですが、ウィル・フェレルのコメディ演技はこういうレベルの映画には最適な気がします。どっちかというと昔のジェリー・ルイス風の顔芸コメディの系統ですから、日本人にはウケが悪いのかもね。真逆の芸風のビル・マーレイが供に『サタデー。ナイト・ライブ』の出身であるのが面白いところです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-12-18 22:42:27) |
233. 死霊のはらわた(2013)
《ネタバレ》 オリジナルが“グロい&気持ち悪い”がテイストだったとすると、このリメイクはひたすら“痛い”を追求する映画でした。片腕や手首を自分で切り落としちゃうはチェンソーで足切りされるは、マチェーテで素足がスノコ斬りされるし極めつけは文字通り“釘付け”にされるところ、思い出しただけで背筋がゾワッとします。でも、やっぱオリジナル版に比べると落ちるんだよなあ、それなりにまとまってはいるんだけどね。 もちろんプロットは同じなんだけど、オリジナル版の設定をミラーイメージみたいに再構築するという工夫が感じられました。オリジナル版のシェリル=アッシュの姉がミア=デビッドの妹となるわけです。実は最後にミアがアッシュの役割を果たすというのもサプライズでしたが、彼女が電気ショックで正常に戻るというハチャメチャな展開やまさかのハッピーエンド(?)という幕の閉じ方はちょっと支持できませんね。オリジナル版でアッシュがけっきょく使えなかったチェンソーをリーサル・ウェポンとして使う発想は、時空を超えての伏線回収なのかしら?たしかに兄妹の関係やらドラマ性が加味されていたのは今風ですけど、ラブクラフトのネクロノミコンを引用した前作なのに今度は死霊の正体を単純に悪魔としてしまったのは、個人的にはちょっと許せないです。 それにしてもミアちゃん、悪魔に勝って放心状態なのはいいけど、手首を切り落としたことを忘れちゃってんじゃない?経験したことないけど、すっごく痛いと思うんだけど… [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-12-15 20:54:38) |
234. 死霊のはらわた(1981)
《ネタバレ》 初見のときはすでに成人後だったけど、予備知識もなくレンタルしたビデオを深夜に同僚と観て、自分も含めて全員が震え上がった記憶が鮮明に残っています。私は「こんな気色悪い映画二度と観るもんか!」と固く心に誓ったもんでしたが、『死ぬまでに観たい映画1001本』に選出されるぐらい評価が高いらしくて、再見してみました。ところが『死霊の…』まで記憶していましたがその先の単語が思い出せない、たしかひらがなだったはず。そりゃ無理もないかもしれませんよ、『死霊の…』と邦題が付いた映画は検索すると『…いけにえ』『…たたり』『…したたり』と山ほどあるんですから、まあ『…盆踊り』は別格ですけどね(笑)。 弱冠21歳でこれを撮ったサム・ライミは、やはり天才じゃないでしょうか。それなりに苦労して資金集めの果てに完成にまでこぎつけたんでしょうけど、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や『パラノーマル・アクティビティ』などの後年の自主製作映画と比べてその完成度は段違いです。この時代にラブクラフトからネクロノミコンを引用してきたのも、新しい発想だったと思います。ステディカムで撮った映像も斬新と思っていたら、なんとカメラを二本の棒で挟んで全力疾走するという原始的な手法だったそうで、やっぱ低予算ですし苦労してたんですね。登場人物も男女五人だけ、余計な描写は一切なくてひたすら憑りつかれた姉や恋人たちと血まみれ粘液まみれになったアッシュの死闘を見せるだけに徹する潔さ。何故か地下室にあったチェンソーを一度は手にするも結局は使わないところなんかもあの映画へのオマージュというかネタで、こういうコメディすれすれのところは後のサム・ライミが撮るホラーでも見られる特徴なんです。クレジットを見ると、アイヴァンやテッドのサムの兄弟たちなどもゾンビ役で出演しているんですね、さすがにほとんど素人の出演者にあんなグチャグチャのメイクをして演技させるのはムリだったということでしょう。つまり三人の女ゾンビは実は男だったというわけです(笑)。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-12 21:56:04) |
235. ラスト・ショー
《ネタバレ》 1952年の米国テキサス州の、何もない片田舎の寂れた町。大戦後の米国は消費ブームで賑わいテキサスはオイルビジネスが活況だったにも関わらず、まるで大不況の30年代からタイムスリップしたような活気のない住民たち。中には近くの油井でひと山あてて裕福な家庭もあるけど、相対的に貧富の差が激しい。そんな町にも高校があって卒業してゆく若者がいるけど、世界一裕福な国の若人とは思えない覇気がないどんよりとした青春を送っている。 これはニューシネマ全盛期に撮られたピーター・ボクダノヴィッチの最高傑作と評価されてますが、明らかにニューシネマとは違った感性の作品だと思います。ジュークボックスやカーラジオからはハンク・ウィリアムズなどの曲が聞こえてきますが、そもそも音楽担当は起用されておらずオリジナルの劇伴音楽は皆無、『ペーパームーン』も同様でしたがこれが当時のボクダノヴィッチ・スタイルです。ジェフ・ブリッジスがティモシー・ボトムズを殴るのとラストでサム・ボトムズがトラックに轢かれて死ぬ以外は、ほんとに何も起こらないストーリーだと言えます。でもこのストーリーは、若者たちと親世代の中年組とにはっきり分かれたストーリーテリングなんだけども、両者のキャスティングと演技が絶妙なバランスを保っているのが上手い演出でもあります。いわば両者の橋渡し役的な存在だったベン・ジョンソンが急死してからはこの田舎町をかろうじて繋いでいた絆が崩れていったような気がします。若者組で唯一大人と親密だったのはコーチの妻と不倫関係だったティモシー・ボトムズも盛りのついた牝猫のようなシビル・シェパードに翻弄された挙句にかけがえのない友を失ってしまいます。最後に不倫相手のもとで許しを与えられる結末には、カタルシスはないけどほのかな光明が感じさせられました。 『アメリカン・グラフィティ』よりも一回り前の世代のお話しですけど、陽気な『アメ・グラ』と似たような題材でありながらも、対照的なテイストの映画でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2022-12-09 22:39:00) |
236. バーニング・オーシャン
《ネタバレ》 2010年に起きたメキシコ湾原油流失事故の原因となった原油掘削施設の爆発事故の実話映画化。この手の実話災害映画の王道のパターンのストーリーテリングなので既視感が強いが、さすがに爆発炎上の映像は「どうやって撮影したんだろう?」と唸るほどの迫力はある。しかしドラマ性というかマーク・ウォールバーグとカート・ラッセルおよびジョン・マルコヴィッチ以外の登場キャラへの掘り込みが浅くて誰が誰だか判らないのは弱いところです。一般人には馴染みがない石油採掘が重要なテーマなので、その仕組みや工程をもっと判りやすく描いて欲しかったところです。尺も短めで同種の映画に比べてコンパクトにまとめられているのは良いとしても、その分こういった説明不足感がつきまとってしまう逆効果はあります。爆発が起こってからの経過も、施設のそばに停泊している作業船内の対応が同時に見せられますが、その映像がディープ・ホライズン内なのか作業船の対応なのか区別がつきにくいところでした。とかくハリウッド映画はこういう実話ものでもヒーローを誕生させる方向に持ってゆくのが常套手段ですけど、その後に米国史上最悪となった原油流失と事故の責任についてはほとんどスルーしてしまっているのは、なんだかなあと思ってしまいます。いくら死者が11人出て生存者も大変な目に遭ったと言っても、この事故はやはり人災でブリティッシュ・ペトロリアム社や現場の従業員に最大の責任があることは確かなんですからね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-12-06 23:34:25) |
237. 暴力金脈
《ネタバレ》 東映実録路線もついにネタが尽きたか、とうとう総会屋が主人公の映画を製作することに。総会屋なんて稼業はコンプライアンスが厳しい現代では絶滅危惧種で、もはや金融業界の人間でも「そういや、かつて総会屋なんてものがあったということは聞いたことがある」という程度の存在ですが、いわば経済ヤクザのはしりみたいなものだったんじゃないでしょうか。だいたいにおいて、資本主義国家の中でも日本の株主総会は他国では考えられないような異質なものだったから(今でもそうかな?)、総会屋みたいな職業(?)が成立出来たんでしょうね。最盛期には一万人いたそうですが、現在では警察の調べでは190人程度しか総会屋はいないそうです。正直とっくに絶滅したって思っていましたが、こんなグローバル化した金融界で、この人たちはどうやって食べているんでしょうかね? 本作は当時まだ現役バリバリだった大物総会屋・小川薫がモデルなんだそうです。松方弘樹が演じる大阪のチンピラ総会屋が東京で成り上がってゆく物語ですが、松方はこれが初の主演映画です。中盤までの展開はかなりコメディ調で、それが中盤以降はだんだんシリアスになってゆき総会での松方の大演説ラストとなります。これは前半は笠原和夫で後半が野上龍雄と執筆した脚本家が分かれたせいかと思いますが、このタッチの違いはかえってこの映画の弱点となってしまったかと思います。笠原は御存じ『仁義なき戦い』で有名なヤクザ映画のドン、小川薫のことにも精通していて彼の取材がこの企画の元ネタです。対するそれまで任侠もの脚本がメインだった野上は経済ヤクザのことは全く判らず、それで近親相姦まで持ち出してくるドロドロ劇にしてしまったんじゃないかと思います。山城新伍・田中邦衛・小沢栄太郎と言った面々も顔を見せますがみなそれぞれ一エピソード程度で、実質として松方弘樹と梅宮辰夫がメインでそこに丹波哲郎が絡むというストーリーテリングでした。それでも丹波は相変わらずの存在感を見せ、ラストの総会は松方の奮闘も空しく仕切り役・丹波の勝利に終わった感じで、どこか無常感がある幕切れでした。 これ以降に総会屋が主人公の映画は存在しない異質の作品ですけど、その後にVシネマなんかで闇金稼業が題材になる現代まで続く潮流の先駆けとなったのかもしれません。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-12-03 22:56:07) |
238. 地獄の花園
《ネタバレ》 徹頭徹尾ヤンキー漫画のパロディで、脚本を書いたバカリズムのこのジャンルに対する愛が感じられるぐらいです。彼はこの前に『架空OL日記』という怪作を撮って自ら制服コスプレして主演までしているぐらいで、どんだけOLが好きなんだよ、と思わず突っ込んでしまいます。主演の可愛い平凡OLが永野芽郁、まあ彼女が本性を表すだろうなということは予想が付きますけど、思った以上にアクションの動きがキレキレでなかなか良かったです(もっともCGのおかげだったかも)。学生時代はスケバンやレディースでトップをとっていた連中が就職してOLになり、それでも各社で裏OLを従えて抗争を繰り広げるという世界線がバカバカしいけど面白い。この裏OLたちもケバい化粧だけど社内では普通にOL仕事をこなしている、そして時には社内にまで乗り込んでの大乱闘を繰り広げるけど、一般OLや上司たちはそれがまるで目に入らないような無関係の存在、まるで社内に異世界が拡がっているような世界観がまた面白かった。“地上最強のOL”小池栄子もまつ毛を無くしての怪演、でもなんか10歳は若返ったような感じで、ちょっと見では彼女とは気が付きませんでしたよ。監督は知る人ぞ知る関和亮、劇場映画は初監督ですが彼は初期からMV監督としてPerfumeのブレイクに貢献し、海外アーチストではOK Goの『I Want Let You Down』という度肝を抜かれるような映像のMVを手掛けている鬼才です。彼ならデビュー作でこれぐらいの映画なら難なく撮っちゃえるでしょうね。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-11-30 23:02:36) |
239. デスペラード
《ネタバレ》 『エル・マリアッチ』を観たのはずいぶん前で、てっきり引き続いてのアントニオ・バンデラス主演だと勘違いしていました。本作は前作の1,000倍の製作費がかかっているらしいけど、そんな低予算だった前作にバンデラスみたいな当時としてもそこそこ知られている俳優が起用されるわけないですよね。よくよく考えたら前作の続きの様なお話しみたいだけど、全然別物みたいです。ひとえにロバート・ロドリゲスが潤沢なバジェットを得て、やりたい放題を実現させたって感じの仕上がりです。ストーリーはかなりハチャメチャで、あり得ないぐらい敵の弾が当らないバンデラスがもうギャグなのかと首を傾げたくなるぐらい。でも集団相手では無敵なのに、敵が一人だとあっさり撃たれたりナイフでハチの巣にされたりするのがちょっと不思議。この映画ではロバート・ブシェミやタランティーノそしてダニー・トレホといった渋い面々が登場するのに、みんなあっけなくというか無意味に退場しちゃうのがわけ判らん。極めつけがバンデラスが呼び寄せる助っ人二人組で、ギターケースがマシンガンやロケットランチャーになっているといういかにもロドリゲス趣味が爆発のガジェットを武器にしているのに、あっさり討ち死にしたのがなんか勿体ない。ここら辺は「オタクに予算を与えて自由に映画を撮らせると大惨事になる」というハリウッドの箴言を彷彿させてくれます。この映画でもっとも辻褄が合わないところは、冒頭あたりで恋人を殺してロドリゲスの手のひらを打ち抜いたのはプチョのはず、でも演じているのはどう見ても後半のプチョとは違う俳優が演じている。つまりロドリゲスは過去にプチョと対面しているのに、プチョの容貌すら判らずに追いかけているし、プチョも自分を殺そうとしている男の顔も知らない。ましてプチョが○○だったと途中で気づくなんて、お前ら二人とも初対面の時にふつう気が付くだろう!と矛盾しまくる脚本なんです。まあここら辺がロドリゲスらしいところなんですけどね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-11-27 21:34:45) |
240. 雷撃隊出動
《ネタバレ》 湿っぽいストーリーなので現在の視点からはまるで反戦映画の様に捉えられがちですけど、まあこれは普通に戦意高揚プロパガンダ映画だと思います。帝国海軍の雷撃機部隊をメインに据えていますが、そもそも海軍航空隊は43年以降は華々しい勝ち戦はほぼ皆無、さすがに実話での景気が良いお話しにはできなかったんじゃないですか。すでに特攻隊が編成されたという事が大々的に新聞等で報道された後ですからねえ。 迷彩された甲板やゼロ戦の部隊番号からして、空母瑞鶴とその航空隊が撮影に参加していることは明白で、貴重なフィルム映像資料となっています。おそらく時期としてはマリアナ沖海戦からレイテ沖海戦までの間でしょう。円谷英二の特撮は戦争末期ということもあってスケールダウン感はぬぐえませんが、雷撃機に正面から撃ち込んでくる高額処理された曳光弾には、さすがに迫力がありました。 公開時にはレイテ沖海戦に惨敗して瑞鶴も海の藻屑と消えて連合艦隊は実質的に壊滅していたのは有名ですけど、撮影中もさすがにスタッフは戦争の行く末が危ないことは実感していたんじゃないかな。現代人としては理解しがたいところがありますが、当時の日本は軍部も国民もいわば“滅びの美学”というようなものに憑りつかれていたような気がします。劇中でも「米国は人命の損失がいちばん堪えるから、10人殺してひとり戦死すれば勝てる」なんてセリフがありましたが、実際には殺すどころか敵艦に近づくことすらできずに一方的に撃墜されていたのが現実です。こういう心理状態にまで追い込まれていますので、ラストで敵艦隊壊滅の代償で雷撃隊が全滅しても製作側も観客もちっとも反戦的なメッセージというふうに受け取ることはなかったはずです。 興味深いことに、ナチス・ドイツも戦時中プロパガンダ映画をけっこう製作していますが実際に進行している戦争を題材にしたものは皆無、反ユダヤ主義プロパガンダや明るいコメディ調の軽い娯楽映画が大半なんです。終戦間際になってナポレオン戦争時代のプロイセンの戦いを再現した大作映画を製作したぐらいで、徹底的な現実逃避が貫かれています。これは映画プロデューサーとしても有能だった宣伝大臣ゲッベルスの方針で、国民に鞭だけじゃなく飴をしゃぶらせることを忘れないナチスらしい政策でした。そういうところを比べると、日本の軍部は幼稚というか馬鹿正直なんですね。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2022-11-24 22:03:52) |