Menu
 > レビュワー
 > Yuki2Invy さんの口コミ一覧。12ページ目
Yuki2Invyさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1615
性別 男性
自己紹介 基本的に3~8点を付けます。それ以外は、個人的に特別な映画です。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
6162636465666768697071727374757677787980
81
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
6162636465666768697071727374757677787980
81
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
4142434445464748495051525354555657585960
6162636465666768697071727374757677787980
81
>> カレンダー表示
>> 通常表示
221.  愛の小さな歴史 《ネタバレ》 
私も、昔家族を亡くした経験がある。が、幸いにも私の家族の幸せは、そのことで損なわれたりはしなかった、と信じている。  この映画に描かれるものは、家族を一度「失い」それを取り戻そうと藻掻く人々の渇望、というか。それがどんなに絶望的であっても、そして例えどんな手段を使ってでも、その一縷の望みに追い縋る彼らの焦燥感からは、むしろ自分がこれまで意識してこなかった「当たり前のように生まれついて家族が存在すること」の幸福をひしひしと実感できる。生まれついての家族というのは、選べないし、後からつくる訳にもいかないのだから、「亡くした」とて決して替えは効かない。だからそれを失う(或いは手に入れられない)ことには、他の人間関係には無い「取り返しのつかなさ」という絶望が生じるのだろう、とでも言うか。  演技面では、何と言っても中村映里子が出色。スレンダーながら実にキレの有るパワフルな怒りの演技は大迫力だったが、本質的には彼女の感情は怒りではなく(自分が家族を持ち得なかったことに対する)悲しみであり、それを的確かつ「熱く」演技に含ませた、という部分からも、非常に優れた仕事だったと思う。  ラストも、やや安直なようだが、これは監督が一番言いたかった非常に重要なコトであろう。家族は失えば、再びはつくれない。でも、新しい家族は、つくれる。それこそが愛の、人間の連綿たる歴史の最も肝心なコトなのだろう、と。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-10-09 21:47:35)
222.  ミッドナイトスワン 《ネタバレ》 
映画全体の質の高さに比して、演技面はやや微妙、というか、正直言って若干しっくりこない。草彅クンは特に前半、感情をイマイチ演技に乗せ切れておらず、キレが無い(ただ中盤以降の比較的早くから彼は大分落ち着いた役柄に変わってゆくので、前半であまり感情をむき出しにしない様にしていたのはあくまでバランスを考えて、ということにも思える)。もう一人の主役たる服部樹咲ちゃんも、演技未経験というだけあってその素朴なお芝居は「今できることを精一杯やる」という感じだし、その他含む全体としてもさほど演技のクオリティで何とかしよう、という感じでもなかった様に思う(主演ふたりの出来に対する、これもバランスなのかも知れないと感じる)。  ただ、草彅クンは見た目・雰囲気の面では、その部分のリアリティとここぞの場面で醸す哀愁が絶品であり、キャラクター自体の出来は素晴らしかったと思う。樹咲ちゃんも、とにかくバレエ場面が上手い&綺麗でこれも素晴らしかった。演技だけが役者の仕事ではないのだし、私は今作をこの2人でつくったのは成功だったと思う。  お話の内容の方は、率直によく出来ていた。LGBTを題材とした映画としてもかなり壮絶に悲劇的だが、それもこの題材のひとつのリアルな側面なのは間違いないだろう。叶わぬ願いを追い続けるよう宿命づけられた凪沙がただ自分自身で在り続けようとする様には、人間の気高さを思うのだし、そして凪沙と寄り添い生きた一果が夢を叶えて生きてゆく人生の中にきっと凪沙も生き続けるのだろうこと、それはある意味「母」と子の絆であり、凪沙が確かにこの世に残したもの、だったのだろうと思いたい。
[映画館(邦画)] 8点(2020-10-05 18:59:05)
223.  雨に唄えば 《ネタバレ》 
ジーン・ケリーとフレッド・アステアというのは、剛と柔と言うか、『北斗の拳』で言う所のラオウとトキと言うか。ケリーの踊りにはアステアには無いパワフルさ・アクロバティックさを感じ取れ(躰のナリもだいぶんゴツイですしね)、アステア一派の私としてもこっちはこっちで確実に素晴らしいと思うのですよね。  ミュージカル映画の史上最高とも称される今作、力強い踊りのクオリティについては、確かに他の作品に頭一つ抜きん出ていると言えるかも知れません。ケリーの種々のシーンに加え、ドナルド・オコナーの『メイク・ゼム・ラフ』も高度にアスリートな優れた出来だし、私は終盤の『ブロードウェイ・メロディ』も好きですよ(ただ確かに、冗長と言うよりはちょっと挿入が唐突、かつ脈絡も薄いというのは確かなのだけど)。そして『雨に唄えば』という20世紀屈指の名曲と雨中のその挿入シーンは、これも確実に映画史に残る名場面と言えるのだし。  一点、今作はケリーが絶対的メインで、故に女優が活躍するパート(踊りにせよ演技にせよ)がやや少なめだという点が、好みの問題ではあるが私としては少しだけマイナス。ただ、そうは言っても例えばジーン・ヘイゲンのコミカルで特徴的な演技とかは、これも個人的にはかなり面白く観れますのですけどね。
[DVD(字幕)] 8点(2020-09-21 23:15:19)(良:1票)
224.  TENET テネット 《ネタバレ》 
正直、コロナ収束までは完全自粛も已む無し、と腹は括っている。が、今作は別腹だ(文字通り死んでもIMAXで初日に観ると決めていた。モノのついでに『ミッドウェイ』まで観てしまったのは内緒)。  しかし、コレは……率直に、事前情報も無しに一回観ただけじゃどーにもならない映画に思えますですね。んでもって碌に理解もしてないのにレビューもクソも無いとも思うのだけど、とは言え今作、観客に理解とか納得とかキチンとさせてあげようという映画でないのも確かだろう。ならば、とりあえず初見での観たまま・感じたままを記しておくのも無意味ではないのかもと(だから近々に再見してなんか追記すると思います)。  ただ、話の大枠自体は割と単純、かつ結構「よくあるヤツ」に思える。世界を崩壊させかねない「アルゴリズム」。その悪用を企む敵と、それを防がんとする善玉の秘密組織(スパイ組織的なアレ)という。そこからの話の細かい展開の意味するトコロはほぼほぼ理解できなかった(特に主人公が「回転ドア」に入って以降はもう何がどーなってるのやら)のだが、率直に展開運びの全部が鮮やかにキレ好くキマッてるという訳でもない様にも思われたし(ラストなんか、かなり「アレッ」という感じで終わっちゃった様な気もする)、そこまで完成度高く内容の整合性が取れている訳でもない、という可能性も、実は大いにあるのではないか。  しかし、映像面の出来は正に圧巻だった。潤沢な製作費をひしひしと感じさせる、もはや今どき珍しいリアルにやっちゃった・つくっちゃった・建てちゃった各々のシーンも然ることながら、最大のコンセプトたる映像空間における部分的な「時間の逆行」をそこに被せていくCGのクオリティもこれも実写と中々区別のつかない超高品質ぶりで、150分の映像体験は確実に「今まで誰も観たことが無い」というユニークなクオリティを実現していた(ただこれは、チープでチンケなCGで塗り潰された様な『ミッドウェイ』に続けて今作を観た、ということが影響している可能性も捨て切れないが)。その他、ロケーション(風景)、小道具・乗り物、モブキャラに至るまでの各キャストの見映え&演技、更には肝心の個々のシーンの画づくりにせよ、どれを取っても全て監督が拘りに拘り抜いて(かつカネも惜しみなく使って贅沢に)つくり込んだ素晴らしい完成度であった。  結論、映像面の新規性・斬新さと、全体の(話の内容以外の)完成度の高さをもって、一旦のこの評価としたい。このうえ、話の内容の方の完成度が高いか低いかが判断可能になった時点で、±1というトコロだろうか。  ※2020/10/18追記 2回目はIMAXレーザーGTにて。解説サイトを熟読して再見したら、おおよそ全ての場面で十分な理解が得られた様に思う。その意味では、高度なユニークさを備える難解さ、ではあったものの、いったん慣れればそこまで難解すぎるというワケでも無いし、整合性や理解するためのとっかかりは十分に用意された作品だと感じる。ただし、それでも逆行カーチェイス(特にアルゴリズムの動きの部分)と、主人公の腕の怪我の描写については、未だに若干の不可解さが残ったまま、である。  理解が追いついたことで再見時に印象に残ったのは、ニールの存在感である。特にラスト付近は彼の働きが(作戦行動上も、また作品のクライマックスとしても)最も肝心な部分であり、ここをイマイチ理解していなかった初見時とは異なり、終盤が気持ち的にも色々とだいぶん盛り上がって観終わることが出来た。2回目の方が確実に面白かったし、皆様もぜひ2回目を楽しみにしていただければと思います。  まあ、かなり細部までよく出来た話だとは思うが、同時に大枠はやはりシンプルな話だというコトも再度理解した。評点は据え置きで。
[映画館(字幕)] 8点(2020-09-19 01:23:55)
225.  マーターズ(2007) 《ネタバレ》 
かなりハイレベルにグログロな映画で、拷問でズタボロになった少女らの「見た目」の悍ましさも然ることながら、特に話の内容の方が欧米映画にしては珍しく際立って悍ましい、という作品である(正直、頭がどうかしちゃってる、というレベル)。ただ、最大のポイントである「死後の世界を見るために『殉教者』をつくり出す」というアイディアは、あくまで個人的には説得力というか映画のコンセプトとしての質の高さを大いに感じるし、話の内容の方にここまで嫌悪感を感じられるというホラー、としても、だいぶん希少価値が高いとも感じられる。  その他の点にしても総じて色々と良く出来ているというか、巧みだと思う。特に、序盤からの訳の分からなさを意図的に残しつつ、パワフルにテンポ良く展開して段々と話が見えてゆく前半の展開運びなんかはホラー的に実に秀逸だと思うし、後半も単純にお話として相当に面白い。恐怖描写も、前半のキレの有る力技も、後半の陰湿な拷問の場面も、どちらも迫力や痛さ・エゲツ無さの点で出色である。全くの救いの無さも含めてネガティブ全開な作品ではあるが、ホラーとしては純粋に一流かと。もし今作が無かったら、2000年代のフレンチ・ホラー・ムーブメントの歴史的評価は、全く異なったものになっていたであろう。
[DVD(字幕)] 8点(2020-09-05 23:43:18)
226.  まぼろし 《ネタバレ》 
「あなた軽いのよ」スゴく好きな台詞ですね。何とも艶かしいですし、含蓄が深いというか。軽いヴァンサンに対して、重いのは、躰そのものであり、それこそ愛でもあり、共に過ごした人生でもあり。今や「まぼろし」となった彼の存在を軽いヴァンサンを抱くことで逆に実感した喜びも含めて、二度のこの台詞には様々な感情を垣間見ることが出来ます。映画全体としても、マリーが実際、何をどのように考えて(捉えて)いるのかが少し判然としない(まぼろしを見る程に夫を今だ愛していながら、ヴァンサンと情事に耽ることも含めて)ことも、比較的単純な話に奥行きを与えている様に思われます。その意味では、本作のランプリングで一番良いなあと思ったのは、名状しがたい「有無を言わさない」感、だったかと思います(何とゆーか、細身なんですけど実に「凄み」のある系統の美人ですよね)。  ラストも、これ私大好きなヤツですね。ジャンにも見える人影を過ぎ越してゆく彼女には、我々とは違うものが見えているのでしょう。彼女は、もう戻らない。そう感じます。
[DVD(字幕)] 8点(2020-08-19 19:09:03)
227.  ミツバチのささやき 《ネタバレ》 
まず、雰囲気が素晴らしいですね。キュートな子役を活かした可愛くて楽し気なものや、古い時代のノスタルジックさ・牧歌的なものを多分に含みながらも、やはり奥底に暗い世相を的確に反映する打ち沈んだ様な重さを湛えた静謐なその空気は、非常に緩慢でありながらも実にエレガントで私にはとても心地良かったです。画的な部分のクオリティも見事でした。例えば、広大な農地にポツンと佇む廃屋に子供2人が向かってゆくシーン、そして、これも子供2人が線路脇に佇み、その傍を巨大な機関車が通り過ぎてゆくシーン。子供の小ささと対象物の大きさの対比というか(それは単純なスケールだけの対比のみに留まるものでもない気がしますが)、優れたコントラストがとてもグッドだと感じました。  話の内容も希薄な様でいて、ちゃんと観てゆけばそこそこ理解も容易で、かつ中々に味わい深いものだと思います。この映画の良さというものは、雰囲気であったり、芸術的・文学的な諸々であったり、その意味では確かに繊細で奥ゆかしいものだと思います。ただ、そういうものをウリにしている系統の映画としては、その各々が各々に一定以上の水準で優れていて、かつ全体としても難解すぎない、という意味で、非常にバランスが良好な作品だと思っています。オシャレな映画を観たい!(と言うかそのものズバリ、アート系を観たい!)と人に言われたら、個人的にはイの一番にオススメしたい作品ですね。
[DVD(字幕)] 8点(2020-08-14 23:42:26)
228.  パンとバスと2度目のハツコイ 《ネタバレ》 
う~ん、ユルいというか、ハッキリしないというか。とりわけてフワフワとしているのが、主人公の女子。美大まで行ったのに絵を描くのも止めてしまった、彼氏からのプロポーズも断っちゃった、どちらも正直よく分からない理由で、という。それでも、なにか上手いこと社会の中には嵌っていて、つくねんと落着いちゃってて特に慌ててもいない(自分の人生をまるで突き詰められていない、というのに)。とは言え、もう一人の男の方も結婚経験があって子供が居るってだけで盛大に迷いまくってるし、伊藤沙莉だって、昔女の子を好きだった、という点を重く見れば、まだ「揺らぐ」余地を残しているのかも知れない。  でも、最近の25才って皆こんなもんじゃないでしょーかね。人の精神年齢は時代を経るに連れて「低下」していく一方だと聞きますし、私自身も25才の時に彼らより「チャンとしてた」などと言うつもりは毛頭無いです。そもそも、言い訳がましくもなりますが、こうなっていることの原因は、若者だけでなく社会の側にも確実に在る、と言いたいのです。ここん所の社会変革の流れとして、人は、自分自身の在り方や自分の幸せのかたちをそれぞれ独自に探し当てなさい、というのがメインストリームになって来ましたと。それは更なる多様性(=それがもたらすパラダイムシフト)を必要としていた資本主義社会の希求でもあった、と思っているのですが、果たしてそれが本当に「良い」ことであったのかと。自分でそれを見つけられる(=それだけの能力と時間とカネの有る)人にとっては、良いことでしょう。しかし、もしかしたら大多数の人々は、それを見つけることが出来ない(出来なかった)のかも知れない。そして、そんなものを探すよりも一般常識や宗教的価値観といった「長いもの」に巻かれてしまった方が、結局のところ幸せだったのではないか、と(殊に、今なお日増しに複雑化・高度化していく現代社会において、こそ)。  私自身は、彼らには非常に共感できるのですよね。それは、今作がこの「惑う」人々を、とても的確に描きつつも、同時にとても温かく描いている、からだと思われます。今作で一番好きなのは、主人公が「自分は孤独が好きなのではないか」と呟くシーン。正直私自身も、こんなふうに思う時期が確実にありました。でもだからこそ、そんな「答え」を出してしまうのはまだ早い、と彼女には言ってあげたい。それを結論付けられるような段階(そして結論付けなければいけない段階)に、色々な意味で君はまだ至ってないと思うよ、と。  深川麻衣の演技は、実に素晴らしかったと思います。彼女の中にあるのは本当にフワフワしたもので(孤独であり、不安であり、希望もあり)、それを表現するのは極めて難しい作業であったハズ。今後が楽しみですね。
[インターネット(邦画)] 8点(2020-08-05 21:58:44)
229.  男と女 人生最良の日々 《ネタバレ》 
アヌーク・エーメ、トランティニャン、共に90歳近いにも関わらず、なんと若々しく、そして素敵な齢の重ね方をしていることか。これは決して「つくりもの」では無く、実際に2人がこーいう感じに「イカしてた」が故に撮ることになったという映画なのだろう。  永い人生を健気に生きていくと、いつしか種々の柵は全て融けて、本当に美しかったものだけが残る、とでもいう様な。それが真実の愛であり、その人のその人たる純粋な美しさ、なのであろうか。この2人の様に年齢を重ねてみたいものだと思う。
[映画館(字幕)] 8点(2020-07-30 21:10:43)(良:1票)
230.  男と女(1966) 《ネタバレ》 
映画というよりも、むしろ詩と歌と絵、いささかミュージックビデオの方に近いとも思われる作品で、実はストーリーはあって無い様なもの、かも知れない。しかし、詩的で抒情的な愛の語らいは洒脱なフランス語で音的にも心地良く(フランス語って、愛を囁くためにある言語ですよね)、そして音楽は何と言ってもフランシス・レイの超傑作ウルトラ・スタンダード・ナンバー。なんと予算不足が原因とのことだけど、モノクロの綯交ぜになった映像面の美しさも実に味わい深く、ここに加えて、フランス的美意識のひとつの到達点とも言うべきアヌーク・エーメの芸術的な美人ぶりが正に至高、という。  愛とは甘さ、であるかの様にただ甘くて、最後に少しだけほろ苦甘く融けてゆく後味の良さも含め、あくまで雰囲気映画だが、その部類では随一、という作品。傑作かと。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-07-25 01:26:25)(良:2票)
231.  クォ・ヴァディス(1951) 《ネタバレ》 
古代中華のいわゆる「三王」、夏・殷・周の最後の王はいずれも、悪い(とされる)妃に誑かされて国を滅ぼした。このお話はつまり、神話的類型と不可分である中華古代史の特性を表していると同時に、歴史愛好者にとってのささやかなる希望的観測、即ち、古の人の世に王者たりし男というものは、その人の為に国を滅ぼすという程に深く女を愛するということが可能だったのかも知れない、というひとつの芳しい可能性を包含しているとも言えるのだ。  古代史の中に生きる人々からは、概して、より直情的で純粋な感情を感じ取ることができる。それは彼らが、過去から現在に至る過程で人類が身に付けてきた複雑な倫理観・価値観をいわば脱ぎ捨てた状態に在るからであろう。そして、人が人をただ純粋に愛し抜くには、今の世界もまた複雑すぎると言えるのかも知れない、とも思う。  本作は、キリスト教的価値観に応える部分を除けば、極めて単純な男女の愛の物語だ。尚且つ、男と女が互いに恋に落ちることの理由には何らの説明も為されない。これは、世界がよりシンプルで本質的な史劇の中だからこそ可能となることであり、そして、そこに無造作にも描き出される愛の結実にはまた、却って現代劇では得ることの出来ないひとつの高度な純粋性を感じ取ることが出来る様にも思われる。  最後に一言。史劇にこそ、描かれるべきは人の正しき在り方である。宗教的な価値観の表出に傾注しがちなこのジャンルの作品として、原典の持つその部分のテーマ性を決して疎かにしなかった本作には、個人的には非常に好感が持てるのである。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-07-25 01:26:23)(良:1票)
232.  フレンチ・カンカン 《ネタバレ》 
「ムーラン・ルージュ」って、むかし勝手になんかエロい言葉かと思ってました(スイマセン)。赤い風車、その名を冠するフランスの有名なキャバレーの誕生物語で、歌と踊りを交えつつ進行する構成はミュージカル風、と言ってよいだろう。その分(というのもなんだが)話の内容はかなり他愛の無いラブ&ドタバタ・コメディ風で、ここは気楽に観流してしまっても構わない、といって過言ではない。  圧巻はラストのフレンチ・カンカンである。映画がカラーになるのを待ちかねてました!という様な超絶カラフルな色彩の美しさ、跳ね上がる足の躍動感、弾ける女たちの笑顔。狭いホールに詰め込めるだけ詰め込んだとゆーようなそのギュウギュウなごったまぜ感は、正に一杯に宝物の詰まった宝石箱とでも言うか、実に見事。素晴らしきエンターテインメントの殿堂を時空を超えて仮想体験できる。  カンカン以外にも、ちょいちょい入る歌や舞台芸が結構クオリティ高かったのも印象に残る。4人ほどの歌手がちょっとずつ歌っていく中で唐突にエディット・ピアフ登場(ああ、残り3人も俺が知らないだけでさぞかし高名な歌手なのだろう、と)。あと『天井桟敷』のジャン=ルイ・バローみたいなパントマイマー?が出てきたと思ったら、やるのはなんと口笛、これが巧いコト!(どうやったらあんな澄んだ音が出るのやら)
[インターネット(字幕)] 8点(2020-07-23 17:22:48)
233.  マタギ 《ネタバレ》 
村落を襲う危険な巨熊との最後の戦いに挑む老マタギの話と、チビ犬を立派な猟犬(マタギ犬)に育て上げようとする老マタギの孫の話を軸に、東北の農村の生活風景を季節感豊かに織り交ぜて描いてゆく隠れた秀作。話の内容も普通にまずまず面白く観れるし、本物の熊を使ったクライマックスの対決シーンなどは緊迫感も中々素晴らしい。主演の西村晃は本物のマタギにしか見えない秀逸な役づくりでこの面の満足度も高い。一点だけ、特に前半は登場人物の訛りが非常に強烈で、何を言ってるのか分からないシーンも散見された(字幕が欲しい)。  あと、個人的に印象深かったのは、今は失われたであろう種々の農村の生活風景・風習の興味深い様子である。個々のシーンで特に面白かったのは、警察署長と飲んでるときに「ドブロク持って来い!」と言って署長が顔を顰める場面や、マタギ犬の大会の様子(ツキノワグマと犬を実際に対峙させるという)など。もう一つ、獲物は山神からの授かりものとして命懸けでこれと相対することを旨とし、旧式の猟銃と三発の弾のみを携えて山に赴くというマタギの精神性。これもまた、今は確実に失われてしまった日本人の在り方の一つであろう。
[DVD(邦画)] 8点(2020-07-19 23:47:40)(良:1票)
234.  セックスと嘘とビデオテープ 《ネタバレ》 
性欲は3大欲求のひとつでありながら、大概の人が常に満たした状態にある他のふたつとは異なり、必ずしも全ての人が常にこれを満たした状態にあるとは言えない様に思う。そもそも、どういう状態にあることが真に性的に満たされていると言えるのか、ということを考えさせられる様な映画である。  本作に登場する4人は、自覚している・していないに関わらず、4人ともに性的に「不健全」な状態に置かれている。中で、最も一見して端的に病的な状況に在る様に思われるグレアムのアプローチ、物理的に不能な自分に対し、やはり性的に「不健全」であろう女性たちに、カメラを通しての精神的な「解放(裸身を曝すこと)」を要求していくという、これも一見高度に変態的な行為が、むしろセックスの本質のひとつの「正常な」側面を明らかにしている。終盤に描かれるアンとグレアムの精神的な解放・結合(自己の曝け出しと他者の受容)こそが、変則的ではあるがセックスの(形而上的な)あるべき姿だとソダーバーグは言いたいのだろう。  あくまで個人的には、このソダーバーグの結論は、万人がこれを認めるというにはやや高尚すぎる、とも思う(それは、もっと高次元の人間の欲求の話だと)。そして誤解を恐れずに言えば、そんなことを言い出すのであれば、生物学的には性欲の最も重要な論点は正に結果、つまりは家庭・子供を持つということに帰結するべきだ、とも私は考えている(性の在り方が多様化する現在、こんなことを言うと、また袋叩きにあってしまいそうだということは重々承知の上で)。しかし、その意味でも本作が描く価値観は、現代でも通用するある種の先見性を備えていた、と言えるのかも知れない。中々どうして、今なお観る価値の深い映画だ、とも思う。
[DVD(字幕)] 8点(2020-07-19 15:12:26)
235.  続・夕陽のガンマン/地獄の決斗 《ネタバレ》 
言うて全員悪党だが、トゥーコの卑劣漢(小悪党)ぶりと、今作ではかなりなチョイ悪親父(つーか極悪親父)なクリーフおじ様はどちらも秀逸(これに加えてイーストウッドも平常運転なセクシーニヒル)。話の方はかな~り長ったるい、が、一貫性は十分なストーリー運びで(レオーネとしては)観易くないとも言い切れない(ここまで来ると好みの問題だが)。単純な西部劇的決闘シーンはやや少なめにも思うが、その代わりに南北戦争シーンがあったり(ここの物量は正直ちょっとビビるレベル)、何と言ってもラストは西部劇史上屈指と言うべきスーパージックリ撮って緊迫感もモノ凄い三竦み大決闘を存分に楽しめる。個人的にはこっちも大分お気に入り。
[DVD(字幕)] 8点(2020-07-09 01:16:16)
236.  ひとよ 《ネタバレ》 
全く見たことの無い話だ、という訳では決して無いし、結末も予想の範囲から大きく外れるというものでもない。多少の物珍しさが在るとしたら、罪を犯した母親というのが(良くある優しい賢母とゆーよりは)いくぶんおバカでだいぶファンキーな性格だという点くらいか。内容は決して悪くないと思うが、終盤の立ち回りの派手さと、その後、佐々木蔵之介が結局どうなったのかを描かない点には、正直に言うと少しだけ不満がある。  ただ、まず本作、大勢集めた豪華俳優陣が揃いも揃って実に素晴らしい出来だったというのが非常に印象に残る。最初「このドモリは無いだろ」と思った鈴木亮平も肝心のブチ切れるシーンは凄く良かったし(そこで効かせるためのドモリだ)、一番迷ってる佐藤健も、どこか腹黒さを含ませる筒井真理子も、唐突に元極道な佐々木蔵之介も、この人たちの中では割とマトモでホッとできる韓英恵も、母親役の田中裕子もモチロン、MEGUMIもかなり本格的な演技が率直に見事だし、チョイ役の千鳥大吾と斉藤洋介でさえ、いずれも奥行きの有る非常に味わい深い演技だった。  中でも私が一番印象に残ったのは松岡茉優。本作、決してシリアスなだけではなく、確かに随所に笑えるシーンも挿し込んであまり暗くなり過ぎずに(とは言え本質的にはごくマジメに)仕上がっているが、この質感の醸成に、松岡茉優の優しさ・明るさ・コミカルさの部分が非常に効いていた様に思われる(無論、シリアス面も決して悪くなかったし)。  笑えるシーン、と言う意味では、万引きされるためだけにワザワザ「復刻」したデラべっぴんがかなりツボだった(私、ギリギリ「世代」と言えなくもない年回りなのですよね)。
[インターネット(邦画)] 8点(2020-07-03 22:12:13)(良:1票)
237.  ランボー/ラスト・ブラッド 《ネタバレ》 
ランボーとは、ただ「怒り」なのだ。怒り狂っていることのみがランボーがランボーである証しであり、その存在価値の全てである。戦いの果てに得た安らぎの場所、愛する家族すらも、彼の怒りに火を点ける為の供物でしかないし、ランボーがその長い人生をどう生きてきたのか(という、映画4本も撮ってつくり込んだハズの背景部分の設定)も、そしてスタローンが実際には何歳になっているのかすらも、そこに何らの関係も無い。ただ、ランボーは怒り続ける。そして、退かず、媚びず、省みない。実に潔い映画ではないか。  無論、何に対してでも怒ってさえ居ればよいのか、という「問題」は在るのかも知れないが、本作の論点はそこではない。単純にして明快な、見事なまでの「原点回帰」。『ロッキー・ザ・ファイナル』を彷彿とさせる、流石のスタローンだ。
[映画館(字幕)] 8点(2020-06-26 22:09:34)(良:1票)
238.  ポセイドン・アドベンチャー(1972) 《ネタバレ》 
ハックマンに唯々諾々と従うボーグナインなど観たくないし、逆もまた然りである。激しく衝突しながらも生き残るために肝心な部分では見事なチームワークを発揮するご両人は、物語に(見た目的にも)重厚さと、そしてリアリティを吹き込むことに成功している。本作はスペクタクルとしても十二分に優れた作品なのだが、この2人に限らず、随所に描かれる人間の描写にリアリティと重みがあり、それが本作で一番面白い要素だと率直に感じる。  ふだん、牧師が人々に説くのは神の言葉、つまりはそれが正しい保証など無いものだとも言える。船の実際の状態など分かろうはずも無い状況で、強引なまでのリーダーシップを発揮するハックマンが皆の一応の信頼を集められる理由は、彼の言っていることの正確さではなく、彼がただ皆を可能な限り救いたいと強く願う意志の正しさにあると言える。この部分も個人的には中々味の有る設定だな、と思った。
[DVD(字幕)] 8点(2020-06-21 00:10:22)(良:2票)
239.  河(1951) 《ネタバレ》 
テーマとなっているインドの人生観は深遠なもので、この優れた作品でさえ、我々に明らかに出来るのはそのほんの僅かな一部分であろうことは想像に難くない。あくまで本作は、その価値観の一端に触れることを可能にしてくれる、という作品だと理解すべきだ。  最初、それを西洋人たる登場人物を通して描く、という建付けにやや違和感を覚えたのだが、最後まで観ると、むしろ西洋人がそれに感化される様子を描くことで、その高い精神性を顕彰しようという試みである様にも思える(まあ、単に西洋人を使わずに映画自体が撮れる状況では無かった、というだけのことかも知れないが)。  ストーリーの軸となっているのは、どれもありふれた人の生き様である。恋と愛、生と死、出会いと別れ、そのどれもが大いなる繰り返し(=流れ)の一部分であることを理解し、逆らわずにその流れに身を委ねるべきだ、と本作は説いている。と言いつつも、説いているという程に明示的である訳ではなく、あくまでそのように生きるインドの人々(と、そういう風に生きるのもイイかもね、と思いつつある西洋人)が描かれている、ということである。奥ゆかしい映画だと思う。  メインのストーリーと交互に描き込まれるインドの情景・風習も、カラーの美しい映像を通して非常に興味深く眼に映る。単純に、インドを見てみたい!という興味で観るのも全然アリだと思う(70年前だけど)。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-06-15 23:59:43)
240.  パターソン 《ネタバレ》 
いけませんねコレは。羨ましすぎるじゃないですか。平穏。ひたすらな平穏だからこそ、むしろ些細な出来事がみな愛おしく見えてゆく。この生き方には確かにひとつの真理が在る様に感じられるし、大袈裟かもしれませんが一種、人のあるべき最善の姿の様にも思われます(ちょっと大袈裟ですね)。それこそ、種々の宗教において定義される「隠者」の要素を、多分に、かつ現代的に持ち合わせている様な、とでも言いますでしょうか。  また、彼の仕事がバス運転手だというのも如何にも洒落込んでいるじゃあないですか。世の喧騒を離れて静謐に暮らしつつも、日々バスに乗っては降りていく数多の人々は必ず何かしらな葛藤を抱えて彼の傍を通り過ぎてゆく。そこから彼は確実にインスピレーションを拾い得て、自分の世界をより深化させていくのだと。  駄目ですね。人が皆この生き方を選べる訳ではないし、仮に自分はそれを選べたとして、選ぶべきなのか。人と人が欺き合い、出し抜き合う混沌の現実から逃避することは許されるのか。  精神もまた、老いるものだと思います。この映画から抗い難い魅力を感じ取れるように為ったということ自体が、自分の精神的老化を示しているように思えて仕方が無いのです。何とも複雑な気分にさせられる映画体験でしたね。
[インターネット(字幕)] 8点(2020-06-14 02:39:23)(良:1票)
040.25%
1120.74%
2191.18%
3905.57%
420312.57%
528017.34%
637423.16%
732320.00%
823314.43%
9704.33%
1070.43%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS