301. スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス
《ネタバレ》 劇場公開第一作エピソード4を観た時、子供だましだとは思ったけれど、エピソード5で気に入り、エピソード6もそれなりに楽しめたので、サーガの全体像に付き合ってみようかと劇場に足を運びました。まさかここまで子供だましの能天気物語だとは・・・。語るべき内容がどこにもないし、幼い子供が死の危険と隣り合わせのようなレースに挑むことそのものがあまりに嘘っぽ過ぎるうえに、そのチャレンジにハラハラもしないお気楽さ満点の御伽っぷり。貧弱な羽でぼったりした体を宙に浮かせるガラクタ屋のキャラで「これに耐えられる年齢向けなのだな」と冷めまくっていたことを忘れもしません。 [映画館(字幕)] 1点(2012-03-18 19:26:15) |
302. 大地震(1974)
《ネタバレ》 地震というのは長くても数分間しか続かないため、それを見せ場とするパニック映画をどう2時間に持続させるかというのが1つのハードルだったそうです。そこに出されたアイディアが「ダム決壊」という二次災害。今なら舞台を海岸近辺にして大津波などをCGで描いたりできるんでしょうが、当時の映画技術の中でよく頑張った作品だと思います。高圧線が水に触れる恐怖を感じた初めての作品でした。小学5年生で体験したセンサラウンドの超低音振動の面白さも忘れません。『ミッドウェイ』『宇宙空母ギャラクティカ』などに活用されたあと廃れてしまいましたが、何か新しい試みで観客を楽しませようとする志は好感持ちます。ガードナーがはしごにかけた手を踏まれてからエンドまでの光景は観た当時ショックな終わり方でした。点数は劇場で観た当時の印象でつけました。 [映画館(字幕)] 8点(2012-03-18 13:18:36) |
303. SUPER8/スーパーエイト(2011)
《ネタバレ》 『スタンド・バイ・ミー』『ET』『グーニーズ』だのの既視感を言う人の多いこと! 子供の群像を扱ってファンタジックな冒険劇をやっただけで・・・。宇宙人の見かけに可愛げがないだの人間を食うからひどいだの、べつにいいジャンという感じでした。ライオンを野性に帰す話だってあるんだしさ。『ロスト』のように謎を引っ張りながらストーリーを進めていく見せ方はうまいなと思いましたし、主人公やヒロインもなかなかいいし、面白く見れました。列車事故の見せ方も、住宅地が戦場になってしまう展開も「うわっ!」と声を上げてしまうほど盛り上がれました。1つ残念だったのは、主人公とヒロインそれぞれの父親にどんな確執があるのかという謎の種明かしが「そんなこと?!」という内容だったことでした。誰が休んだから代わりに事故に遭ったっていう考え方は感情に入ってこないものでした。主人公が宇宙人に「気持ちは分かるよ」と語りかける短い内容は、映画として優しい気持ちにあふれていて良かったと思います。母を失ったばかりの彼が自分自身に対しての気持ちも含めて心から感じていることだから伝わったんでしょう。母の写真が入ったペンダントが主人公の危機を救うアイテムとして使用されなかった展開も「またかよ」感がなくて好感持てました。そのアイテムをラストに効果的に画面に登場させるけれど、それを手放す理由はちょっと不可解。「過去の思い出を手放して、母がいなくなったことを受け入れ、前に進む」という表れなのかもしれないけど、大事にして欲しかったな。その一方で現在生きている家族同士がしっかり手をつなぐ。このあたりがグッと来るだけのエピソードが散りばめられていたら、もっと好きになれたかも。 [ブルーレイ(吹替)] 8点(2012-03-18 12:08:59)(良:1票) |
304. ハプニング
《ネタバレ》 ミツバチの問題は実際にあってニュースにもなったけれど、そういうところから導入が始まったところは強く引き付けられました。けれど、そのこととはほとんど関係が見出せない展開に。植物の力に関しては昔読んだ『聖なる予言』など思い出したりしました。でも、なんともつまらないオチ。シャマランは毎回こんな感じですね。こんな中途半端なことしないで、徹底的に自然界が大変化して人間には完全に絶望的なラストにしてくれた方がまだインパクトあったかと。ほとんどの生物が硫化水素をエネルギー源にしていて、酸素が猛毒だった時代、植物の登場はすんごい天変地異だったわけで「風の谷のナウシカ」原作なみに、人間が存続し続けることが善というようなこだわりから距離を置いた自然界の大異変の話でも良かったのでは? [DVD(吹替)] 3点(2012-03-10 18:08:43) |
305. レスラー
《ネタバレ》 プロレスの舞台裏が面白く見れたぐらいかな。格闘技好きなんですがプロレスは格闘技じゃなくて見世物って感じなので、偏見でしょうけど、そういうものに人生かける人をあまり真面目に応援する気が起きないです。流血とか大病(なのに対戦)とか、そういうの生理的にダメ。レズビアンの娘もその設定背景がとくに感慨深いところもないし、デートすっぽかした父がダメなら、あと一回くらいチャンスやる器量もなく性格よろしくなさそうな女と同居してる娘も魅力がない。ダメ親父なのはもともと分かってるんだから、も少し可能性の方に目を向ければいいのに。それができないほど苦しめられてきたと心から伝わってくる描写には欠けてるし、それならそれでデート誘われて揺れるなよ、と思う。レズでもかまわないけど、同居の女がひどくヤナ感じにしか見えなくて、娘までクズにしか見えない。かつてヒーローだったなら、肉屋のバイトとかじゃなくてメディア使った何らかの仕事とかチャレンジできそうな気もするんだけど・・・たとえば「アイアンマン」の悪役をやるとか。ま、ステロイド剤とかヤクとかでボロボロになってそうな感じにしか見えない心臓病男のプロレスとか気持ち悪い。 [DVD(吹替)] 3点(2012-03-10 16:56:20) |
306. サマータイムマシン・ブルース
ところどころクスッと笑えるところはあるので2点にするのはやめときます・・・という程度の作品です。あとに何も残らない、内容は中身空っぽのおふざけ映画でした。 [DVD(邦画)] 3点(2012-03-10 15:33:34) |
307. アビス(1989)
《ネタバレ》 劇場で観て、もんのすごい感動しちゃって、映画館出てからも、しばらく現実に戻れなかったことを思い出します。クレーン落下シーン、指輪シーン、蘇生シーン、もう最高! 公開当時、この映画のように次から次へエピソード畳みかけてくる物語を他に知りませんでした。完全版も大好きでそっちにレビューをしてましたが、そこで書かなかったことをひとつ。バッドが深海へのダイブを遂げ、いよいよ爆弾処理にとりかかる直前、マグネシウムを燃やして照らす白色の松明が燃え尽き、薬品混合による緑色のライトに切り替えます。起爆装置のカバーを外すとコードが2本。黄色と黒のストライプのコードではなく、白と青のストライプのコードを切断しなきゃならないのに、緑の照明下で見る2本のコードは区別がつかない。よくもまぁ1つの物語にこれだけたくさんの小ネタを詰め込めるものだと感心しまくりでした。この難関クリア直後にはまたすぐ山、そしてさらに本当は、カットされた津波シーンも用意されてた(完全版で見られる)。次から次とエピソードを叩き込んでくるので、息切れしちゃう人もいるんでしょうが、1本でこれだけいろいろ楽しませてくれたら満足満足! というシロモノでした。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でおなじみアラン・シルベストリの音楽もいいです。 [映画館(字幕)] 9点(2012-03-05 02:20:51) |
308. ノーカントリー
《ネタバレ》 コーエン兄弟の映画って何が面白いんだ? というクチでしたが、これはなかなか楽しめました。けれど、ラストあたりのああいう描きって、やはり僕には「何が言いたいのかさっぱり分からん!」でした。「俺、頭悪いの?」「なに、雰囲気で感じればイイの?」「何か文学的情緒的ノリ?」「どういう意味? どういう意味???」と、ちょっと狼狽えて、それから「別にどうでもいいや、つまらねー終わり方!」と切り捨てました。この機会に、ここの他の方々のレビューを読んで、少し映画の見方をお勉強してみます。蛇足ですが『ウォー・ゲーム』で独特の目力で戦況パネルを見守って、最後は大らかに喜んでた将軍さんが、この映画の最後の方でヒゲハゲじいちゃんとして登場し、久々にお目にかかったのが何となく良かったです。このバリー・コービンさん、歳とっても目が放つ存在感は衰えてないなー。あの目はなんか惹かれるものがある。 [DVD(吹替)] 6点(2012-03-04 05:58:27) |
309. ソウ2
《ネタバレ》 1作目はけっこう知的好奇心をくすぐるような切り口で、そこがなかなか楽しめたのですが、2作目は冒頭のつかみから生理的に逆なでするグロ路線で「もう完全にそっち路線で狙うわけやね」とガックリ。知的なつかみは後からあるかもと、とりあえず増えた出演者の多彩を見守ることにしたけど、パズルを解いて行くようなスリルはかなり薄くなって、見せたいのはグロだけだと確信。完全にスプラッタ映画を観るモードに意識を切り替えました。クライマックス、1作目と繋がる意表をついた展開と思いきや、とくに大したことじゃなく「同じ場所使いました」ってだけの話でした。パパ警官まんまとハメラレ過ぎでバカ。というか、他のみんなもあまりに慎重さがなくて、グロいこと起こすためにわざとバカに動いてるでしょと突っ込まざるを得ない出来上がりでした。 [DVD(吹替)] 3点(2012-03-04 05:29:55) |
310. デッドクリフ
《ネタバレ》 『クリフハンガー』とか『バーティカル・リミット』あたりの高所宙吊りハラハラな感じとか『フローズン』みたいな足止めサバイバルの映画を気楽に楽しめたらそれでいいとレンタル。もともとそれ以外の内容なんてまるで期待していなかったので、しっかり期待通りに楽しめました。そこに加えて『悪魔のいけにえ』のレザーフェイスや『13日の金曜日』のジェイソンを思い出すような展開がプラスされようとは、思ってもみないサプライズで、まぁ「この組み合わせはアリだな」と受け入れて楽しめました。実際に名もない山で人っ子一人来そうもないような奥地に、ぽつんと一軒なんて光景を目撃すると「買い物はどうしてるんだ?」「何して生活して、何食べて生きてるんだ?」と不思議に思ったりします。「イノシシ猟って自分でさばいて食べるのかな?」とか想像したりしたあと、まるで人気のない山奥に孤立した環境での「日常の常識」がどんなものか考えだしたりすると、想像の幅はいろいろ広がって、この映画に近いことも空想しなくはないです。邦画で樹海なんか舞台にしたらすごく怖いの作れそう。昔そこに捨てられた子供が、死人を食ってるとか・・・自殺名所なのでいろいろ気遣いあって作られないのかな? [DVD(字幕)] 6点(2012-03-04 05:01:05) |
311. セブン
《ネタバレ》 サマセット・モーム作『人間の絆』を読み終えたばかりの頃に映画館で鑑賞。犯人は読書家で『人間の絆』も読んでいる。モーガン・フリーマン演じる刑事の名はサマセット。なんだか「ははっ」と笑ってしまうようなキャラクター設定に「こんなもんかいな」と思った記憶があります。見応えある映画として気に入ってますが、劇場で一回見たきりです。次ぎ観る時は初回の鑑賞で見逃した部分などにも注意しようと思うから、最初からきちんと見るだろうけど、大まかな気分的には「主人公の奥さんとサマセットがカフェで会うシーンと、犯人が自首してからラストまで見れば十分」と思っています。最悪のエンディングにもかかわらずヒットした珍しいタイプの作品ですが、この物語の結末は僕にとってはスカッとするものでした。何がスカッとしたかって「世間じゃとにかくこれが正しくてこれが間違ってて、それに逆らう奴はユルサネー!」みたいなバカがまんまと地獄に落ちるからです。実はこの映画が公開されていた頃、たくさんの本を読み漁っていたんですが、本気で「愛が全ての問題を解決する」みたいなことが書かれた本を読むと「じゃ、お前の愛する人を殺してやるから、その俺を愛してみろよ!」と想像し、想像で計画を実行し、著者に向かって「愛が解決するんだろ?」って言ってやってました。だからこの映画観て「俺ジャン!」とビックリ。指定場所まで犯人乗せて走る車内でのやりとり、深く考えたこともなく「正義とはこうだ!」と世間のヒステリックおバカ代表として主人公がしゃべくるので、ラストが気持ちいいんだよね。 [映画館(字幕)] 8点(2012-02-21 06:10:55) |
312. 赤ひげ
《ネタバレ》 若い頃に一度観ていて、いい映画だと記憶していたので、久々にレンタルして鑑賞しました。すっかり忘れていたのは山崎勉のエピソードのみで他は全て鮮明に記憶された映像の通りでした。それほどに記憶された物語であるにもかかわらず、若い頃にはなかったホロリと涙を流してしまう反応を何度か。歳をとったということもあるでしょうが、最近の映画でなかなかそういうリアクション起きない自分としては「貴重な映画だな」と感じざるを得ませんでした。加山雄三はこの作品でとてもいい役を与えてもらっていると初見時から思っています。これを機にもっと伸びる役者さんにもなり得た気がして、どうして若大将イメージで終わってしまったのか勿体無く思ってしまいます。三船敏郎は再見してみると意外と出番が控えめなのに気づきました。なのに、どっしりガッシリ安定感のある存在感を放ち映画の軸になっていることに感心。AKBの新作プロモ映像の参考にされたという、カンザシ女のシーンは、BGMなしでヒッチコックの『引き裂かれたカーテン』の台所格闘シーンを思い出す緊迫感で、今見ても見応えあり。物語が持つ雰囲気はなんとなくサマセット・モームの『人間の絆』(映画の方は未見)を思い出すなぁ。老人の死の瞬間の映像に、『人間の絆』での「この人の人生に敬意を払いなさい」のセリフがダブるんです。 [DVD(邦画)] 8点(2012-02-17 00:46:22) |
313. 暴行
《ネタバレ》 黒澤明の『羅生門』を観たことのある人は、それをアメリカ人向けに西部劇にアレンジしたらどうなるのかという視点で観ると楽しめるのではないでしょうか。どちらもモノクロだし、比較しやすいです。スタートレックでのエンタープライズ号初代船長カークとしてしか印象にないウィリアム・シャトナーが、こういうちょっとどこか文芸ぽい画の中に見られたのは、ちょっと意外感があって面白く感じました。そしてなによりもポール・ニューマンの若くてワイルドな外見が、これまで見たどの彼よりもカッコいいと思いました。というか、これまで彼を「カッコいい」と思ったことは一度もなかったんですが、この作品での彼の風貌は三船敏郎が演じた役どころとして釣り合いが取れていて納得できるものでした。 [地上波(字幕)] 6点(2012-02-01 02:56:58) |
314. フード・インク
《ネタバレ》 一握りの大金持ちだけが健康な食事にありつけ、他の人々は購買可能な有害食品で命をつなぎつつ毎日体内に有毒物質を蓄積していく・・・そんな近未来SF風の世界観を想像してみたことのある人は、きっと僕以外にもたくさんいると思う。そういう世界は想像するよりはるかに早く近づいているのではと思うこともある。この映画を観て、それはもう既に始まっているのだと感じた。スーパーで豆腐や納豆を買うとき「昔騒がれた遺伝子組み換え大豆のことは今どうなっているんだろう? あれから特に何の話も聞かない」と、よく思う。この映画はジャーナリズムがやらなければならないことを、きちんとやってくれていると思った。本当はこうした話題が日常のテレビの中であるべきだと思う。突然話題が変わるようでなんだけど、生物の遺伝子は多様性があって、そのおかげで危機的環境異変があっても特定の遺伝形質が生き延びられたりして種が保存し続けられるという。もし多様性が失われ1つの形質だけで栄えていくと、そいつらは危機的状況を受けたときに全滅することになる。そのことを考えると、食品の遺伝子そのものの問題ももちろんだけど、たった一企業が世界の食品生産を牛耳るという状況は極めてデンジャー。そういう状況を手助けしてしまう政治は悪政だと思う。しかも、そういうシステムによって蝕まれているのは健康だけではなく、労働環境も自然環境も精神衛生も破壊しているということに、この映画は気づかせてくれた。マイケル・ムーアのトリックスター的な悪ふざけや問題提起して投げっぱなしなのに比べて、非常に良質に感じたのは「健全なよい食品を要求してくれればアイディアを尽くして必ず届ける」と誓う一農夫の心を映してくれたラストカットと「システムを変えるチャンスが1日に3回ある」と具体的な行動案を示してくれたところ。そういえば『買ってはいけない』という本が話題になったことがあるけど、その本の情報にも問題が多々あったとか・・・この映画はどうなんだろう? と考え出すと真実はややこしいかもしれないけど、少なくとも自分が買うものに意識を向けることは大事だと思う。体調や気分が優れないなーと感じるとき、それは意外と日々の食べ物の影響だったりしないか、まじめに気になる。 [DVD(字幕)] 7点(2012-01-31 00:46:02)(良:1票) |
315. 悪魔の棲む家(1979)
《ネタバレ》 アカデミー授賞式でこの作品の音楽がノミネートで紹介されたとき、会場の拍手喝采がひときわだったことをよく覚えています。作曲したラロ・シフリンといえば『ブリット』だの『燃えよドラゴン』だの『ダーティ・ハリー』だのアクション系が目立ってた印象だったので、この映画での起用や曲調は意外に思ったものでした。そんなことがずーっと記憶の片隅にあり「一度くらい観てみようかな」とレンタル。一切の期待なしに観たのですが、ジェームズ・ブローリンの陰気な演技が序盤から「こいつ、いつ狂って何しでかすか分からん」オーラが出てて意外に楽しめました。結局、大して度肝を抜く出来事はないし、壁や階段から染み出す血(のようなもの?)も「それはないやろ」な感じですが、ブローリンの微妙な狂いっぷりが僕にはツボでした。ハッキリ狂っていると断定しきれない微妙さのため、平静を装い様子をみなければならない。でも、いつ突飛に恐怖の行動に出られるかもしれないムードもあり・・・そんな抑えられた微妙な狂い方がノれました。『シャイニング』より先にこの作品が作られていることは評価に値すると思います。家長が狂気に蝕まれていくという恐怖について、こっちの方が上だと思いました。確か実話がベースだったような気がするけど、そのせいで仕方ないのかもしれませんが、壁をぶち抜いて見つかった隠し部屋や、階段が抜けて落ちたドブ溜めみたいな何かは、古い死体らしきものでも出てきた欲しかったなー。 [DVD(字幕)] 4点(2012-01-29 03:13:06) |
316. キャピタリズム~マネーは踊る~
《ネタバレ》 初めて観る作品のはずなのに、所々で確実に見覚えのあるシーンがあって「あれれ???」な気分でした。まだそんなに物忘れしたりボケる歳ではないはずなんですが、そんな自分が過去に一度見たことを忘れ二度目の鑑賞ならば、よほどインパクトなかったと思えます。そうではなく部分的に別作品と素材を使い回ししてるなら、それもどうかと思いますし、とにかくキツネにつままれたような不思議な気分に陥ってしまいました。ラスト近く、家を奪われた住人が戻ってきて居座ったとき、警察がなにもせず去ってくれたのには感動しました。最後のほうで日本を引き合いに出してましたが、ムーアさんは日本の現実を知らないんだなーと思いました。ブッシュが大統領だった頃、日本郵便局にある大きなお金を欲しがる人々に操られて日本がどうなったか取材してみてほしいなと思いました。「日本はアメリカの植民地」なんて声もいくらだって聞けるのに、ムーアさんはナニ言ってるんだろう? と思ってしまう終わり方でした。そして、正当な権利のために怒り立ち上がることさえ「大人気ない」なんて非難されかねない日本において、労働者が金銭的にも精神的にも抑圧されずに闘うなんて難しそうだなーと寒い気持ちもなったりしました。「一人じゃ闘えない」とか言うのは「俺は闘ってる」という意味になると思うんですが、そんなこと言うようになったらムーアも「何様」な感じになった気がして残念でした。「あんたが言うようなことの大筋は言われなくても分かってるよ。偉そうに言うなら闘い方を示してみれば? それが分かれば動く人はいっぱいいるさ」という気分。作品中で闘っていた人々は言ってみれば『窮鼠』です。これ以上ないほど追い詰められたから猫を噛むのであって、まだ失うものを持ってるうちは「世間教の日本の大人」は大人しい。 [DVD(吹替)] 4点(2012-01-29 02:29:15) |
317. ゾディアック(2007)
《ネタバレ》 点数のつけ方に迷いますが3点で・・・。部分的にはそれ以上の点数つけたいところもあります。フィンチャーは『セブン』以外はほとんど自分の肌に合わない監督でしたが、この作品で「こういう手堅い抑えた作り方もできるんだ」と感心して観ていました。また、ギレンホールの演技がいい感じに見れたのはこの作品が初めてでもありました。殺害シーンは特別に凝ったことはしてないのに、それゆえリアルだからか、すごく心臓バクバクもので緊張しました。ゾディアックの腕時計をして、足を組んで話す容疑者のシーンは良質だと思うし、映画館の看板の文字を書いた本人を知らされたギレンホールの静かなパニックのシーンも盛り上がりましたし、ラスト近くでギレンホールとずっと目を合わせる容疑者の表情はなかなかだったと思います。そういう、良いところが一杯あるのに、全てを台無しにするような唐突な終わり方に唖然としてしまうしかありませんでした。未解決事件ということで、話の中心にある事件が解決しないで終わることは仕方ないとしても、生き残った事件被害者が数人の男の顔写真の中から犯人を特定したあとに、いきなり字幕でその後の説明をたたみかけて強引に終了させたような感じで、これはひどすぎると思いました。安直に字幕説明で終わらせるなら、ラストカットは店内での睨み合いで終わらせてほしかったなぁ。あのシーンを最後にすると犯人をヒーロー化しているような印象にとられるからなのかな??? あと、ロバート・ダウニーJr.の転落ぶりは理解できるのだけど、あんなふうに堕ちていくほどの心情をもっと丁寧に描き出してほしかったです。もしかすると、フィンチャーとしては、やりたい仕上げ方があったものの「犯人をヒーローに見せるな」的重圧から、意図どうりの仕上げ方が許されなかったのかもしれないですね。特典の解説聞いてると、そういう言い訳が目立って感じました。 [DVD(吹替)] 3点(2012-01-27 18:53:05) |
318. イグジステンズ
《ネタバレ》 僕の中ではジョン・カーペンターと同列のクローネンバーグで、期待は一切なしに暇つぶしに観るという接し方です。クローネンバーグのダサグロい趣味は十分に承知しているけれども、あんな気持ち悪いデザインのゲーム端末や携帯は、はなからリアリティがない。のっけにリアリティを感じられなければ、どんでん返しも活きない。脊椎に生態加工なんてさらにセンスなし。こういうものに平気で接する人々がメーカーを維持できるほどたくさんいるという世界観についていけなかった。クリチャーはゴム感ありありでさらに興ざめ。キャラの「待機モード」が印象に残ったくらいで、バーチャルへの風刺や警鐘もありきたり。もっと面白いシナリオが作れた気がする取っ掛かりに勿体無さを感じました。シナリオや映像での語りを練り込めば、新時代の『惑星ソラリス』みたいな名作にできたかもしれない気がして、ますます展開の軽さが際立って感じました。 [DVD(吹替)] 4点(2012-01-27 02:28:00) |
319. デストラップ/死の罠
《ネタバレ》 「力を抜いてみる作品」というイメージを持っているので、そのイメージで考えると6点あたりなんですが、初めてみたときの年齢(20代でした)もあるのでしょうが、かなり面白く感じたので7点で。2転3転する話が楽しかったこと楽しかったこと。舞台劇の舞台にカメラマンが上がってきて撮影しているかのような、こじんまりしたムードと、奥さんの大げさな驚き演技で「あ、そういう軽めの映画ね」という構えがきちんと持てて作品に接することが出来たのも良かったのだと思います。マイケル・ケインとクリストファー・リーヴが実はゲイ関係なんていう展開もなかなか面白く印象に残ってます。そういう目で見ると「ああ」と納得できそうな二人の感じが良く出来てるなと思ったものです。マイケルはいろいろクセのある役をこなしてきているし『殺しのドレス』でのキャラもあって犯罪者+ゲイというイメージは付けやすくはありますが、『スーパーマン』ことリーヴのあのファッションとゲイ演技は「うひゃひゃ」な面白さでした。ラスト、まんま舞台劇にシーン展開するのも印象的でした。軽いタッチの作品にマッチしてるといえばマッチしているけど、ルービック・キューブをモチーフにしたポスターはこの映画の出来をうまく伝えられていないのが残念。あのポスターでは「観てみようかな」の気が起きにくい。 [ビデオ(字幕)] 7点(2012-01-17 06:01:26)(良:1票) |
320. 推定無罪
《ネタバレ》 観たのはかなり昔のことだし、一回見たきり「また観たい」なんて一度も思わず今日に至ります。かなり昔に一度見たきりの記憶なので、大間違いしているかもしれませんが、真犯人が分かったとき、ハリソンのどアップの顔に目からツツーと涙が流れ落ちたと記憶しておりまして、それにドン引きしたんですよ。そうじゃなくても全体的にメリハリなく淡々とした運びだったし。 [映画館(字幕)] 3点(2012-01-17 04:50:38) |