301. 冬物語
《ネタバレ》 こんなに勝手なヒロインに好意的なラストを用意してるとこ見ると、ロメール監督ってとことんわがまま女子にも寛容だ。それも美人に限る、のかな。 恋人と連絡取れなくなった原因からしておバカさんな主人公だけど、コブ付きになってもモテること。恋人を二人掛け持ちして(またそれをメンズ両者が了承しているというのがフランス男の凄いところ)「どちらにしようかな」状態の彼女。うわー、経験も共感も無いわあ。同性としてあまり彼女が好きじゃないな。かなりの勝手な言い分で別れたいと言い出しておいて「私だってつらいのよ」とはとてもずるい。 描きようによっちゃ泥沼化しそうな三(四?)角関係だけど、さらりと事が済んじゃう。かの国との恋愛文化の違いをつくづく感じる一本でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-03-11 19:49:19) |
302. ハッピーボイス・キラー
《ネタバレ》 ハッピーエンドではないし、冷静に考えるとけっこう深刻な話だし。でも主人公の「幸せな」感覚の方に軸足を置いて描写してるもんだから、こっちも気持ちの整理のつけようがないまま呆気に取られてエンディングを迎えた感じです。 脚本が良く整理されているのでテンポよく説明がされて観やすい。R・レイノルズの無害そうな顔立ちに加えて、人語を話す犬と猫もキュートなので大変油断しますね。 職場のフォークリフトがガーリーピンクだったり、一人目の彼女が横たわっている時のワンピースの白色が(血糊もなく)際立っていたりと色彩感覚がポップ感の底上げに加点しています。 心の病を扱うデリケートなジャンルですが、監督が攻めの姿勢を貫いた結果強い印象を残す怪作となっています。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-03-06 17:51:05) |
303. デッドマン(1995)
《ネタバレ》 ‶退屈映画”は世に数あれど、観続けるのが苦痛になるものと意味は分かんないながら観入ってしまうものとあって、わたしにとってジャームッシュ作品は後者なのです。 不条理に巻き込まれて命が抜けそうな男(いや実はもうdead manなのか?)と、彼の魂を平穏に送り出そうと手助け(?)するネイティブアメリカン、ノーバディ。 この作品を正確に解説する術も技量も持ち合わせていないのですが、そうだな生と死のあわいを行ったり来たりしているかのような映像美とか、ほんとにあの世に片足突っ込んでいるような形相のJ・デップがハマっていて目が離せないとか、マトモな人物が出てこないそのシュールさの塩梅が個人的に好みであるとか、なぜこの映画が良かったのかと聞かれればこんな感じで要領を得なくなってしまうんだけれども。 ジャームッシュ贔屓の点数であることは認めます・・。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-03-04 23:26:31) |
304. エイトメン・アウト
《ネタバレ》 1919年のワールドシリーズ八百長事件を知るにはうってつけの教材。実録ものを扱いながら、選手一人ひとりの性格描写や入り乱れる賭博師たち、ケチんぼオーナーとスポーツ記者らの絡み、野球選手に憧れる子どもの目まで丁寧に盛り込み、なかなかドラマチックな作品になっています。 米世論からは‶アンラッキー・エイト”と呼ばれた選手たち。やっぱり同情してしまうなあ。八百長に関わっていないのに「知っていたけどチクらなかったから」追放とはこりゃ厳しい。よく知るチームメイトからたった2試合だからさ、と言われてきっぱり断るのもわたしの優柔不断な性格では難しいや。 そもそもの発端となっている吝嗇化オーナーの描写がもう少し欲しかったな。ここはひとつ逆ギレをかましてヒール役に徹してほしかったところ。 それにしても、シリーズ1試合めから早々と八百長は見抜かれていたのですね。わざと手を抜くってバレないようにやるのは難しいんだねえ。新米ピッチャーが先発で、皆つい夢中になって本気で試合に取り組んでしまった3試合目の爽やかさときたら。やはりスポーツはこうでないとね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-03-03 16:36:44) |
305. 春のソナタ
春のようにふんわりしていて、何か芽生えそうな気配も帯びて、まさに春を感じる作品です。 ロメールですからドラマチックな展開はもちろん無い(笑) 耳に入ってきた知らない人たちの会話に興味をひかれるような。「わかるわかる」でもあるし「それはないな」と思うのもアリだし。 何も起こらないけど軽快で、今作もファッションや家具に見られるおしゃれセンスがとても可愛くて素敵です。 哲学トークをしながら肉を切るお父さんの不器用な手つきも、見ていてちょっと楽しいトコロです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-03-01 22:46:09) |
306. 死霊館 エンフィールド事件
《ネタバレ》 人物がきちんと描けていること、派手さを抑えた画のトーンがうるさくなくてキレイ、という1作目の美点をちゃんと継承しています 。これ見よがしなCG技術で驚かしに来ないクラシカルなホラー手法が特徴的で、現象もポルターガイストという「撮るのが比較的簡単」なものですが、なんたって「実話」という重みが違います。 本編も陰気で怖いですがエンドロールの実人物写真の怖さったら二倍増し。勝手に家具が動くのは嫌だなやっぱり。 エンフィールド事件について色々調べてみますと、あの家の子らがわざとポルターガイスト的なイタズラを調査員に仕掛けることもあったそうな。全部の現象がイタズラではなさそうなのですが、あんなキョーフ体験の下にあって同じネタを自ら演出するなんてイギリスのガキんちょってなんてメンタルがタフなのかしら、と思いましたね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-02-23 17:12:50) |
307. マジェスティック(2001)
《ネタバレ》 記憶を失った男が流れ着いた田舎町の寂れた映画館。てっきり‶ニューシネマパラダイス”的な映画愛に満ちたテーマなのかと思ったらこれが全然違ってました。いつもはふんわりファンタジックなF・ダラボンにしては硬派なメッセージで意外でした。 個人の自由を謳う合衆国憲法を守りたい。代弁者として赤狩り批判をジム・キャリーにさせたとこがダラボンらしいというか、お堅い社会派作品になることを避けました。 ジム・キャリーの硬軟取り混ぜた芝居は作品の空気感にマッチしていて、器用な人だなあという印象を受けます。 この主人公って記憶を失う前だったら、弁護士の助言に従って法廷戦術による「タテマエの譲歩」をさほど抵抗なく受け入れただろうな。そう観る者に思わせることがすんなりとできるのはジム・キャリーの個性あってこそ。 生来‶軽く”生きてきた男が、別の人間の人生を生きることでかつての自分とは違う選択をした。ジム・キャリーはその対比をよりくっきりと印象付けることに成功してると思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-02-21 00:00:07)(良:1票) |
308. 007/ユア・アイズ・オンリー
いろんな国に舞台を移して、その都度アクションシーンに時間を割いていて、でもストーリーとしては大して面白くないので長く感じました。 積雪地方でウィンタースポーツ総大会を見せられたかと思うと、ギリシャの陽光のもとダイビングで潜り、その次は高山で崖登りもしているムーア・ボンド。体力必要イベントが総花的に繰り広げられるのを観てるうち、ボンドが何を任務としているのか忘れそうになります。 スキーやボブスレーの現場にバイクを持ち込んでの撮影はそれは大変だったことでしょう。スタントさんの苦労は偲ばれますが、今戦っている相手は誰だっけ、と思うこと数回で集中が途切れます。ロジャー・ムーアも10代の女の子が憧れるにしてはオジサンすぎませんか。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-02-17 23:56:33) |
309. ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー
《ネタバレ》 自意識ばかり強いのが高校時代。クラスカーストの中をなんとか生き抜いて、さて卒業となった2日間のお話。 自我を打ち出そうとがんばったり、トイレで陰口を聞いちゃったり10代てのはほんと面倒くさいよなあ、と懐かしく思い出されます。 友情と片思いと意地悪と思いやり。青春あるあるを21世紀の今風に綴っています。ヒロインが湿っぽく悩まずむしろガッツに溢れているのでカラリ、と楽しく観られました。 呼ばれてもいないパーティに思い切って飛び込んで相棒とケンカになったりもするけど、そりの合わない子の見えてなかった部分に触れることもできたり。ちょっとずつ人生の経験値を上げてゆくティーンエイジャーを見守るオリヴィア・ワイルドの目線に暖かさがあって、心地よかったです。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-02-13 23:48:44) |
310. 女王陛下の007
《ネタバレ》 ボンド俳優にジョージ・レーゼンビーという名前があるのを初めて知りました。他の5名は耳にしていましたが。 本作のみのボンド役、レーゼンビーはまずまず及第点とは思います。スタイルは良いしアクションも動けてるし。しかしいかんせんアクの強いコネリーの後任ではハードルが高過ぎました。獅子奮迅の働きをしてもレーゼンビーではせいぜい総務課長が頑張っている、という印象になってしまうのです。冒頭海から女を助け上げて「やあジェームズ・ボンドだよ」と自己紹介したとき、おそらく世界中が激しく違和感を抱いただろうと推測します。 お話の方は、終盤のコネリー版の能天気な馬鹿っぽさが払拭されてきりっと引き締まりました。吊るされた同僚の姿とか、ラストの非情さは007シリーズの中でも異彩を放つエッジの切れっぷりだと思います。 スキーでの追走劇は素晴らしい撮影技術で、画のブレも無くスピード感も堪能できますし、おそらく007の名を冠していなければレーゼンビーのアクション代表作として彼ももっと評価されたのではないでしょうか。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-02-13 17:14:28) |
311. 猟奇的な彼女
《ネタバレ》 ちょっと時代が進んだせいでしょうか。猟奇的というより‶乱暴で突拍子もない”彼女の無茶ぶりはあまり笑えませんでした。むしろ引きました。韓国のコメディはそもそもアクが強いですしね。 単なる暴力コメディで進んでいたのが、終盤になってすれ違い悲恋物語へと舵を切った力技には驚きました。相当な無理矢理脚本にも感じますが、伏線回収につなげるとは巧いことやるもんです。 でもさあ、‶会えない”と言ってて悲恋ぽい雰囲気だけど、彼女の家知ってるよね? [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-02-11 23:25:27) |
312. ワイルドライフ
《ネタバレ》 家族といえど元は他人同士。信頼していたのに、こんなはずではなかったのに、との思いと裏腹にポロポロと崩れてゆくある家庭。14歳の目から描写される母親の、母親業の決壊というべき姿がちょっと毒々しいほどに痛ましいです。 演技派J・ギレンホールの仕事に期待して観始めたのですが、このお話は妻であるジャネットがメインでした。山火事消火の応援に行ったきりのギレンホールの出番は三割ほど。戻ってからの裏切られた夫としての動揺、驚愕演技は流石でしたが。 ジャネットの心が移ろってゆく原因については詳しい描写がされていないので、見る側でいろいろ解釈できそうです。 夫にしてみれば青天の霹靂であったでしょうけど、萌芽はずっと前からあったのではないかな、と想像します。夫の転職で余儀なくされる何度もの引っ越しと、その度に途切れる自分の生活。代用教員の仕事だったり、人間関係だったり。常に良き妻、良き母でいようと無意識に自分に課していたけれど、夫がいなくなってまず良き妻のペルソナから剥がれていったのだろうな。 突然看板が崩壊したようにみえても、内部の支えは長いことかけて脆くなっていた。人間関係ってそんなものですよね。 エド・オクセンボールドの気遣わし気な表情が繊細な14歳をうまく表現していました。演技巧者三人によるビターでリアルな家庭劇です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-02-06 22:08:19)(良:1票) |
313. ナイト・オン・ザ・プラネット
人間てのは日々他愛のない時を過ごしているもので、誰にでも覚えのある‶さして意味のない”でも”確かに生きてた”瞬間を刻むのがジャームッシュ。ツボるかツボらないかはほんと人によりけり。そんな彼の映画がこんなに高得点とはちょっと驚きです。 わたしが好きなのはロスとニューヨークかな。ドライバーさんたちの中では一番ウィノナがキュートでよかったな。 [DVD(字幕)] 6点(2022-02-02 16:58:05) |
314. 007は二度死ぬ
《ネタバレ》 うわー、これは一体。ショーン・コネリーのキャリアに燦然と傷跡を残すすっとこどっこいな怪作ですね。あーあ日本が絡んでるなんて(泣) 冒頭からアヤシイもんな。エド・ウッドに毛が生えたレベルの宇宙船があろうことか敵艦(?)をぱくっと食べちゃう。自分でも何を言ってるんだか。 あとはもう、ボンドを女とイチャつかせるために話が展開していくみたい。太ったコネリーは数少ないアクションシーンもキレが無く老け込んだ感が強くて魅力的じゃありませんでした。誰ですかボンドの首に手ぬぐい巻くよう指示したのは。 日本の描写についてはもう何をかいわんや。「日本の女は胸毛が好きだ」って丹波さん何言ってるんすか。 [CS・衛星(字幕)] 3点(2022-01-31 22:48:37) |
315. 鉄道員(1956)
《ネタバレ》 頑固おやじに振り回される家族の情景。モノクロのしっとりとした質感とイタリアン美女に天使のような子どもの画でちょっと敷居が高くも感じますが、往年のテクニカラーを施して昭和感を出せば向田邦子脚本のドラマのような親しみやすさが一気に出ますねきっと。本質同じだもん。 親父はガンコで、でもそんなに強いわけではなくて。家庭を支えているのはしっかりした優しい母親の方で。そして幼い末っ子はいつも大人たちの秘密を知る立場で、「黙っていてね」と守秘義務を課せられる笑。結局筒抜けになっちゃうんですけども。 イタリア映画の人間ドラマによく見る「俯瞰した姿勢」が本作にも顕著で、人物らは状況を切り開こうと必死に動いたりしないです。なるようになるからね人生は、というスタンスが昔の日本映画の淡々とした味わいにも似ているなと感じます。 ガンコ親父を取り巻く環境は浮いたり沈んだり、ささやかな友人の思いやりが大きく周囲を感化して、ほっとする終幕に落ち着きます。優しい脚本に心なごみます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-26 18:22:24)(良:1票) |
316. キングスマン: ファースト・エージェント
《ネタバレ》 1,2作目でブリティッシュなスパイ活劇に悪趣味センスを小気味よく盛り込んだマシュー・ヴォーン、今度は歴史の中に自前の諜報活動をぶち込んでくるという離れ業を披露してくれました。 歴史に名高い人物らが次々とヴォーン監督の掌で踊り、戦い、謀略をめぐらして(きっと)ご本人より生き生きと楽しそうです。怪僧ラスプーチンやレーニンなどは見た目もそっくりですし。 そして実在の歴史人物の圧に負けない存在感を発揮しているのがレイフ・ファインズ。アクションものはどこまでイケるのかな、とノーブルな彼の顔立ちからいささか疑問でしたが杞憂に終わりました。吹き替えはあろうけど、剣術さばきも身のこなしも華麗です。この映画はどのアクションシーンも演出やキレに申し分なし、と思います。 キングスマンの1作目はまあ別格で、あのぱかっと人が二つ割になっちゃう悪センスがワタシは大好きなのですが、オジサン2人とオバサンとでスタートした渋めのバージョンもなかなか良かったです。 [映画館(字幕)] 7点(2022-01-23 14:33:31) |
317. ゾンビランド:ダブルタップ
《ネタバレ》 前作からなんと10年ぶりなのに、人物4人中3人の(笑)変わりの無さには驚きです。再会できて嬉しいな。 ゾンビがはびこる世界のサバイバルなのに、ちっとも深刻にならず悪ふざけなノリは前作どおり。タラハシーのこだわりがトゥインキーからイケてる車へと変わったり、能天気なおバカキャラのニューカマーが加わったりと工夫が感じられます。 惜しいのは10年経ってパワーアップしたゾンビの真骨頂が生かし切れなかったこと。変異して手強くなったぞ、というのは続編のセオリーですけども、話にあまり刺さっていなかった。 むしろ‶家族の絆”がメインテーマっぽくなっちゃって、‶対ゾンビ”のはっちゃけぶりを期待していた向きには物足りないですよね。タラハシーはファミリー向けミニバンをずっと嫌っていたけどね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2022-01-19 23:06:04) |
318. 007/ゴールドフィンガー
《ネタバレ》 ジェームズ・ボンドの伊達男っぷりとQのアイデア小道具が堪能できます・・が、なんだかマンガみたいな出来ですね。 今回ボンドって潜入しただけで何もしてなくない?結果ガスが無毒なものと替えられたっていうのも、女が都合よく変節しただけだし。なされるがまま爆弾に繋がれちゃってるんだもんなーボンド氏。少なく見積もっても本作中3回は死んでるもんなあ。 仕事ほっぽって女とみればくどきにかかる。ボンドの売りではあるけどここまでくると病気なんじゃないかという気がしてきた笑。 空中散布のガスでばたっと人が倒れるさまは吉本新喜劇にも見えて笑っちゃうしで、エンディングに「ゴーフィンガあー」とカッコよく流れた日にはごーふぃんがーじゃねえよ、と脱力しました。散々言いましたがS・コネリーの個人的魅力は落ちてないので退屈はしなかったです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2022-01-18 23:41:33) |
319. プライベート・ウォー
《ネタバレ》 実在した戦争ジャーナリスト、メリー・コルヴィンの生き様をロザムンド・パイクが迫真の演技で再現しています。ご本人が乗り移ったかのようです。 酷い現実に幾度も晒されてきた彼女の精神が徐々に突き崩されてゆく様子が、痛くて辛くて恐ろしい。化粧っ気の無い顔に目の下のクマ。眼光だけは鋭くて、下着は高級品をつけているのがまたちぐはぐで奇妙な迫力で。彼女の意識が幽玄的にぼやける表現方法が、気持ちの不安定さを感じさせます。 まるで本物の紛争地でロケをしたかと見まごうほどのリアリティが、紛争地の残酷をストレートにぶつけてきます。大変な圧を持った映画です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-01-17 23:20:32) |
320. 誰も知らない(2004)
《ネタバレ》 わたしは冬になると着込んだ子どもを見るのが好きです。三頭身がもこもこしている姿が単純にかわいいということもあるけれど、子どもに寒い思いをさせまいという親御さんの愛が感じられるからです。 だからこの映画はきつかった。ネグレクトという暴力にさらされる4人の子どもたち。下の妹は外出するための靴すらないではないか。 社会に衝撃を与えた事件でしたから、よく覚えています。冒頭で監督が述べているとおり、この作品は実事件をモチーフにしたものですから、報道された内容よりマイルドではあります。 映画はドキュメントではなく出来事の本質を訴える媒体であると考えるに、本作はその役割を果たしていると思えます。陰惨な描写のみに終わってしまえば観る者の心を折ってしまうし、それは監督の狙うところではないでしょう。 子役がお芝居しているように見えないこと、特に柳楽優弥の瞳の饒舌さには心を射抜かれました。柳楽が全身で訴える傷だらけの13歳。明を思うと心の震えが止まりません。 「誰も知らない」のではダメなんだやっぱり。明に手を差し伸べることができるなら、お節介おばさんに積極的になろうと思いました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2022-01-12 23:34:06)(良:1票) |