321. ゾンビハーレム
《ネタバレ》 冒頭「The Evil Dead」(邦題:死霊のはらわた)のコミック片手に熱弁を振るうオタク男が出てきた時点で、掴みはOKといった感じ。 他にも、恋人と別れたばかりの男、ゲイの男、プレイボーイに、離婚の危機を迎えている男という、バラエティ豊かな面子が、彼女や彼氏や妻の罵倒を背に旅に出る導入部は「Wild Hogs」(邦題:団塊ボーイズ)っぽいしで、どちらの映画も好きな自分としては、嬉しくなっちゃいました。 そんな中年男達のドライブ旅行にて、バスの運転手を務め、唯一の女性メンバーとなったキャンディが、あっさりゾンビ化しちゃうのだから、意外性も抜群。 何せ彼女、メンバーの誰かと恋人になりそうな気配があったし、鹿の死体を片付ける件では、一番男らしく(?)て頼もしい姿を見せていましたからね。 彼女だけは紅一点としてゾンビ化せずに、一緒に戦ってくれるんだろうなと予想していただけに、それを気持ち良く裏切られました。 舞台となる町に子供の姿が見えない事を含め、徹底的に「男VS女」という構図に拘ったからこそ、思い切り良く彼女を序盤で退場させたのでしょうね。 結果的に、それは大成功だったかと。 斧を持った花嫁ゾンビに、両手に鋏を装備した美容師ゾンビと、登場する女ゾンビ達が個性豊かなのも嬉しい。 中盤にて、今まで遭遇した女ゾンビの中で、誰が可愛かったかと男達が品定めするシーンなんて、如何にも「旅の夜」ならではの会話って感じがして、楽しかったです。 上述の場面に限った話ではなく、全体的に男性目線で作られた品であり、女性ゾンビを指して「あいつらは頭が悪い」なんて言い放つシーンもあるから、女性が観ると、ちょっと抵抗があるかも知れませんね。 物を投げたら女ゾンビの巨乳に命中して跳ね返る場面とか、思わず笑っちゃったけど、上品とは言い難いです。 玩具屋で即席の火炎放射器を作る件はワクワクさせられたし、ゾンビ映画ではお約束となりつつある「ゾンビの振りをして、襲われないように移動する」が「女装して襲われないように移動する」になっている辺りも、クスッとさせられました。 ラストも物凄く爽やかで、仲間の絆を確認し合い、皆で笑顔になって、走って終わりというハッピーエンドっぷり。 彼らの背後には大量の女ゾンビが迫っており、根本的な解決にはなっていないのですが、それでも友情の強さの前には、些細な問題と思えてくるのだから凄いです。 ショッピングカートに男を乗せて、それを押しながら爽やかに終わるのは「What to Do in Case of Fire」(邦題:レボリューション6)の影響もあるのかも知れませんね。 気になった点としては、そんな終わり方で「友情は素晴らしい」と感じさせる内容であるにも拘らず、作中で友達の中から死者が出てしまっている事が挙げられそう。 皆して楽しそうに笑っているけど、友達が死んだばかりなんだよなぁ……って事が、どうしても引っ掛かっちゃうんですよね。 ちょっと残酷な物言いとなりますが、所謂「殺され要員」ならキャンディや、途中で出会った軍人さんもいる訳だし、こんなに明るいハッピーエンドで纏めるなら、男友達グループの死者はゼロにしても良かったんじゃないかなと。 その方が、ラストの爽快感も強まったように思えます。 とはいえ、総合的には満足感の方が大きかったですね。 こういう「当たり」と出会えるから、ゾンビ映画の棚を漁るのを止められないんだよなぁ……と、しみじみ感じました。 [DVD(字幕)] 7点(2017-06-20 06:40:49)(良:1票) |
322. デスバーガー
《ネタバレ》 テンポが良くて、音楽もキマっていて、楽しく観賞出来る映画です。 この手のティーンズホラーだと、リアリティレベルというか「主人公達が見舞われる災難は、どれくらい非現実的な物なのか」が途中で気になってしまう事が多いのですけど、本作は早い段階で、それに対する答えを示しているのですよね。 始まって十分程で「この殺人鬼は超常的な力を持っている。何でもありのタイプだよ」と教えてくれるので、観ている側としても受け入れやすいし、何でもこいという気分になれる。 この辺りのバランスが、結構絶妙でした。 例えば、もう十分遅れるだけでも「えぇ……現実的な殺人鬼かと思ったのに、何でもありのタイプだったのかよ」と落胆していた可能性がありますからね。 殺害シーンをスタイリッシュに編集して、素早く流し、死に様をしつこく見せず、サラッと済ませる辺りも好印象。 ディープな方には物足りなく思えるかも知れませんが、自分のように「怖いのは好きだけど、残酷なのは苦手」というタイプにとっては、程好い感じでした。 日本の怪獣映画風のヘラバーガーのCMも、実に馬鹿々々しくて良い。 「さぁ、行こう」と「最高」を掛けたと思しき「へら~ば~が~だ、さ~いこ~う」というCM音声も、作中で何度も流されるせいか、クセになっちゃうものがありました。 子供が遊ぶ為のプレイスペースにて、ゴムボールの海の中から、ピエロ顔の殺人鬼がゆっくりと起き上がり、店内の壁に描かれたピエロの絵とシルエットが重なるシーンなんかも(上手いなぁ)と素直に感心。 ヒロインが「ヴァージンを捨てる」という死亡フラグを立てた上で、ちゃっかり生き残る結末なのも面白かったですね。 一種の定石破りであり、それと察した観客に対して、シンプルな結末で煙に巻いてくれるという形。 この辺り(ホラー映画好きなら、説明しなくても分かるよね?)と作り手は思っていたのかも知れませんが…… もうちょっと分かり易く、作中の人物に「こういう場合って、生き残るのは処女だけのはず」くらい言わせてみても良かったかも。 その他、不満点としては「蝋燭を持った殺人鬼にアルコールを噴き掛けて、火達磨にする」というクライマックスにて、炎のエフェクトが微妙に感じられたくらいでしょうか。 元々期待せずに「楽しい暇潰し」とも言うべき時間を求めて観賞したせいか、満足度は高かったですね。 スラッシャー映画ではあんまり見かけない「NG集」が収録されているのも嬉しい。 劇中で無残に殺された女性が、死体メイクのままで元気に笑っていたりするのを見ると、ほのぼのしちゃいました。 こういう映画を好きって言うのは、ちょっと勇気が要りますけど、やっぱり好きです。 [DVD(吹替)] 6点(2017-06-19 05:09:52)(良:1票) |
323. スーパーサイズ・ミー
《ネタバレ》 「この実験は明らかにおかしい」「条件が偏り過ぎている」「監督側は意図的に身体を壊す為、無茶をしているとしか思えない」等々、書きたい事は沢山あります。 でも、どうやら実験に対する批判というか、検証については既にやり尽くされた感があるようですね。 「一ヶ月マクドナルドのメニューだけを食べ続けても、必ず身体を壊す訳ではない」「むしろ健康になる事もある」「ダイエットだって出来る」という事が世界各地で実証されており、作中の実験結果に文句を付けるのは、遅きに失するように思えます。 なので以下は、なるべく純粋に映画としての評価を。 場面転換などで多少ぎこちなさを感じる部分もありますが、音楽やアニメーションを駆使して、観客を飽きさせないような作りとなっているのは嬉しいですね。 S、M、L、スーパーサイズのポテトの袋や、ジュースの紙コップを並べる事によって、視覚的に大きさを分からせる演出なども、テンポ良く行ってくれています。 作中で繰り返される主張は酷く歪んでいるように思えるのですが、一応「アメリカ人の健康に対する危機意識を高める為」という大義名分が掲げられている為、嫌悪感を和らげてくれるのもありがたい。 「ビッグマックを毎日食べているけど、全然太っていない」「運動をして鍛えているので平気」というタイプの人達を登場させているのも、一応の公平性を感じられました。 「病院にもマクドナルドがある」「大統領やキリストを知らない子供達も、ドナルドは知っている」「小学校で、生徒がコーラとスナック菓子の昼食を取っている」という場面が挟まれるのもショッキングであり、問題提起に成功しているかと。 エンディング曲も、何だかクセになる魅力があったと思います。 これらの点は、長所と呼べそうですね。 で、短所というか、気になる点なのですが……これは、ちょっと多過ぎて挙げ切れないです。 あえて一言で表すなら「悪趣味」な作りである事でしょうか。 わざわざ吐瀉物を映し出すという視覚的な悪趣味なんかは、まだまだ可愛い範疇。 ちゃんと医者から「脂質の摂り過ぎには注意してね」と言われて、笑顔で握手した上で始めたはずなのに、全然注意していなかったり「摂取カロリーを減らして」と助言を受けているのに、それでも減らさなかったりしたのには、流石に呆れましたね。 ここの場面は「マクドナルドのメニューは脂質が多い」「カロリーが高い」という印象を与える為には外せなかったのでしょうが「医者の忠告に反して意図的に暴飲暴食している主人公が卑怯なだけ」としか思えませんでした。 食品業界側の言い分を提示する際にも、その直前に「彼らは圧力団体」「非難の矛先を他の物に向けようと努力する」というナレーションを行い、たっぷりと偏見を植え付けた上で弁明する人を映し出しているのだから、やり切れない。 極め付けはラストの演出で「スーパーサイズは、もう止めにしないか?」→「サンダンス映画祭での上映から六週間後、マクドナルドはスーパーサイズの中止を発表」→「マクドナルドでは、この映画との関連は無いとしている」って流れには(うへぇ)と声が出そうになりました。 観客に「映画の影響でスーパーサイズが販売中止になったんだ。この監督は凄い!」と思わせたいのでしょうけど、あからさま過ぎてゲンナリです。 ただでさえ胡散臭くて偏向的な内容だったのに、これでトドメを刺されちゃった気分。 ここで「現在、スーパーサイズの販売は中止されている」くらいのテロップ表示で済ませてくれていたら、もう少し本作に対する信頼度も回復出来ていたかも知れません。 ちなみに、本作の主演と監督を務めているモーガン・スパーロック氏は「デスバーガー」というスラッシャー映画にもカメオ出演しているのですが、本当にチョイ役といった感じで、印象に残りませんでしたね。 そちらの映画を先に観賞済みの自分でも、全く憶えていない役柄でした。 こういった品を作った人だからこそ、マクドナルドを連想させるスラッシャー映画にカメオ出演させたのでしょうし、それなら作中で無残に殺されてしまう役の方がオイシかったんじゃないかなぁ、と思います。 いっそ犯人役にしても良かったかも知れませんね。 [DVD(吹替)] 2点(2017-06-18 11:57:20)(良:1票) |
324. ディアボロス/悪魔の扉
《ネタバレ》 「都会に引っ越すと、周りの人が悪魔のように見える」という寓意的な御話なのかと思いきや、さにあらず。 本当に悪魔が出てきて、しかもそれが主人公の父親だったというオチには驚きました。 「何時かは負ける日が来る。人間ならね」「父の事は知りません」などの台詞によって、序盤から伏線が張られていたとはいえ、非現実的過ぎる展開なのですが、それでもさほど戸惑わず観賞出来たのは、やはりアル・パチーノの存在感ゆえなのでしょうね。 ジョン・ミルトンという名前、天国で仕えるより地獄を制した方がマシという行動理念からするに、その正体は恐らくルシフェルなのだと思われますが、それだけの大物を演じていても、まるで違和感が無いのだから凄い。 息子相手に熱弁を振るうシーンなんて、凄く楽しそうに演じているのが伝わってきました。 「彼女を看病してやれって言っただろう?」などの台詞により、あくまでも選択したのは自分、悪いのは自分と相手に思い込ませるやり口なんかは、正に悪魔的。 近親相姦で子を作るようにと薦める辺りも「悪魔とは、人を堕落させる存在である」と実感させられるものがあり、印象深かったです。 それでいて、息子の事は彼なりに愛しているのではと思わされる一面もあり、そんな人間的(?)な部分も含めて、魅力あるキャラクターに仕上がっていたと思います。 冒頭で無罪を勝ち取ってみせた数学教師が、殺人犯として逮捕されたと知らされる件。 そして妻が実の父親にレイプされた後、自殺する展開など、主人公にとっては悲惨な展開が続く訳ですが、最終的には「夢オチ」「もう一度最初の場面からやり直し」という着地をする為か、後味も悪くなかったですね。 夢オチっていうと、何だかそれだけで拍子抜けというか、評価が下がりそうになってしまうものですが、本作は最後にもう一捻り加える事で、夢オチならぬ現実オチとして成立させている。 「悪魔が存在するのも、そいつが父親であった事も、全て事実だった」という形で終わらせているのですよね。 今度こそ善良な道を選び、上手くやってみせるという主人公の決意を嘲笑うような悪魔の笑みが、非常に印象的でした。 もしかしたら、本作で描かれたのは「初めての父子の出会い」ではなく、こんな風に何度か出会いと別れを繰り返しているのかも知れないな……と思わされる辺りも、面白かったですね。 父と子、どちらかが完全な勝利を収めるまで、無限に続く輪となっているのかも知れません。 [DVD(吹替)] 6点(2017-06-16 11:05:56)(良:1票) |
325. ラン・オブ・ザ・デッド
《ネタバレ》 「ゾンビ」+「パルクール」という組み合わせの、一発ネタのような映画かと思いきや、さにあらず。 予想以上に真面目に作られており、驚かされましたね。 とはいえ「パルクールゾンビならではの魅力」という意味では、序盤の「壁蹴り階段降りシーン」くらいでしかそれを感じられなかったし……そういう意味では、期待外れとも言えちゃいそう。 人間ドラマが中心となっており、ゾンビは障害の一つに過ぎないという扱いなんですよね。 ・主人公のコールはウイルスに感染済みであり、薬を使っても十八時間後には発症してしまう。 ・時間切れになる前に、唯一抗体を持ってる可能性があるアンジェラを見つけ出し、無事に保護しなければいけない。 という構造になっており、非常にゲーム的な作りなんです。 この辺りは「安っぽい」「薄っぺらい」と感じる人もいるかも知れませんが、自分としては、分かり易くて好印象でした。 それと、メイン主人公のコールだけでなく、サブ主人公としてアンジェラの元彼であるジョーが用意されている辺りも良かったです。 (ははぁん、コールは死んじゃうからジョーをもう一人の主人公として生存させるって訳か……) とばかり思っていたのに、まさかの両者死亡エンドでしたからね。 これには、本当に吃驚しました。 でも、バッドエンドという訳ではなく、二人とも「無事にアンジェラを逃がす事が出来た」という満足感を抱いて死んでいくので、後味も決して悪くないんですよね。 それぞれ「大手製薬会社に雇われて、汚れ仕事を色々とやってきた始末屋」「麻薬中毒の少年を誤って射殺してしまった元警官」という暗い過去を背負っており「アンジェラを救い、人類を救う事」が「贖罪」であるという風に描かれている。 基本的に主人公が死ぬ映画ってのは好みじゃないのですが、これは冒頭の時点でコールの死が示唆されている事も含め、あまり抵抗を感じず楽しむ事が出来ました。 その他、難点としては、低予算なのが画面から伝わって来てしまう作りな事。 そして、主人公二人は罪悪感を抱いて鬱屈としているし、アンジェラは受け身なお姫様ポジションだし、その他の人物も自分勝手な言動が目立つしで、登場人物に感情移入しきれなかった事が挙げられそうですね。 総合すると、自信を持ってオススメ出来る……という程ではありませんが「意外とイケるよ」という意味で、ゾンビ映画好きには、こっそりと推薦したくなる。 そんな一品でありました。 [DVD(吹替)] 6点(2017-06-12 06:49:56)(良:1票) |
326. ゾンビスクール!
《ネタバレ》 子供が大人を殺しまくる映画といえば「ザ・チャイルド」などの先例があります。 でも、子供がゾンビになるというパターンは初見の為、新鮮な気持ちで観賞する事が出来ましたね。 中盤以降は、お約束の籠城展開になる訳だけど、その場所が小学校というだけで、もう面白い。 「携帯電話の持ち込みは禁止」という校則+「ゾンビによる電話線の切断」という展開によって、入念に外部との連絡を遮断し、何とか脱出に成功したと思ったら、実は学校の外も地獄と化していた……というオチも、お約束だけど良かったと思います。 そんなベタな展開の一方で「主人公とヒロインが結ばれない」「序盤に腕を引っ掻かれたので、絶対に主人公もゾンビ化すると思っていたら、大丈夫だった」などのセオリー外しも、意図的に行っているのですよね。 主演のイライジャ・ウッドが「ホビット」と言われて意味深な反応をしたり、車にされた落書きの「しゃぶれ」というワードが伏線で、その犯人である子供を「しゃぶれ」と言ってから轢き殺すシーンがあったりと、脚本も色々と凝っています。 子供ゾンビが死体で遊ぶ残酷描写、そして彼らをピッチングマシンやカンフーを駆使して薙ぎ倒す大人達の描写なども、それぞれ「観客が見たいもの」を分かっているというか、サービス精神が感じられて、嫌いじゃないです。 ……っと、ここまで書いて気付いてしまったのですが、どうも本作って、ちょっと素直に褒め切れないような、微妙に感じる部分が多かったのも確かなんですね。 基本的にはゾンビ映画というだけで好みだし「主人公達は教師」「舞台は小学校」「ゾンビとなるのは子供達」というキーワードだけで(これは絶対に面白いはず!)と期待し過ぎたのかも知れませんが、それを差し引いても、観賞後の満足度は高くなかったです。 理由の一つとしては、根本的に敵が弱い事が挙げられそう。 序盤こそ(引っ掻かれるだけで感染するタイプか、こりゃあ子供ゾンビといえども油断出来ないな……)と緊張感も味わえたのですが、結局「大人は感染しない」という事実が中盤にて明らかになり、それ以降は死亡者すら出なくなりますからね。 これは流石に落差が激し過ぎるというか、何だか敵が勝手に弱体化したようにも感じられ、ノリ切れなかったです。 なんせ本当にゾンビ達が「凶暴な子供」というだけなので、一対一では「武装した大人」が圧倒的有利なんですよね。 じゃあ数の暴力で攻められるんだろうなと思ったら、一対多数でも結構余裕だったりして、全く危機感が無い。 その「敵が弱い」「主人公側が負けそうにない」という画面作りなせいで、ヒロインの彼氏による自己犠牲シーンでも(無理して残って戦わず、一緒に逃げれば良かったのでは?)と思えてしまうし、その後に「皆の為に犠牲になったアイツが、実は生きていた」展開をやられても、全然興奮しなかったです。 作り手側としては「実は生きていた」展開に説得力を持たせる為、敵に囲まれた状況から脱出しても不自然ではないような設定したのかも知れませんが(そりゃあ、あのくらいの強さの相手なら死なずに済んでも不思議じゃないよな……)と思えてしまったし、本末転倒ですよね。 最後に火を点けてゾンビ達を燃やすクライマックスに関しても、劇中人物はグラサンで格好付けて決めているのに、観ているこっちはといえば、完全に白けモード。 (貴重な液体燃料を使わなくても、そのまま逃げれば良いじゃん……しかも、ついさっき車がガス欠になるって展開やった後にコレかよ)なんて、意地悪な考えが浮かんできたくらいです。 一番不満だったのは、主人公グループに付き従う二人の子供達。 本当にもう「子供は全員悪役ってのも気分が悪いので、一応味方側にも付けておきましたよ。しかも男女の黒人と白人でバランスが良いですよ」くらいの存在価値しか見出せなくて、終盤に至っては台詞すら皆無で、実に勿体無かったです。 黒人少年の方なんかは、授業の際に主人公の書いた小説を読み上げるシーンがあったんだから、その後に「先生の書いた御話、面白かったよ。続きが読みたい」くらい言わせても良かったじゃないか、と思えましたね。 そうすれば「主人公にとっての、初めての読者」という関係性が生まれ、両者に絆が育まれるし、彼が糖尿病で倒れた際に、危険を承知で主人公がキャンディー菓子を調達しに行くシーンも、更に劇的になったんじゃないかと。 何て言うか、個々のパーツは決して悪くないんだけど、それらを乱雑に繋いでしまった……という印象ですね。 もうちょっと丁寧に作ってくれていたら「好きな映画」と断言出来そうだっただけに、勿体無い映画でありました。 [DVD(字幕)] 5点(2017-06-09 12:23:23)(良:2票) |
327. 機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY
《ネタバレ》 これは、ちょっと度肝を抜かれた作品。 軽い気持ちで観たところ(そこまでやるか!)(ここまで面白いのか!)と様々な衝撃を受ける事になりました。 文字数制限のギリギリまで使い、劇中で登場する「サイコ・ザク」の恰好良さについて熱く語りたい気持ちもあるのですが、その場合ガンプラや原作漫画の話題に逸れてしまいそうなので、ここはグッと堪え、映画本編の話を。 主人公二人は、軍規違反のラジオを用いて、音楽を聴きながら次々に敵兵を殺していくという、型破りなキャラクター。 その片方はジャズを好み、地球連邦軍に所属。 もう片方はポップスを好み、ジオン公国軍に所属。 そして連邦所属のイオはガンダムに乗り、ジオン所属のダリルはザクに乗って戦う訳だけど、どちらかといえば後者が主軸になっている辺りが、面白いバランスでしたね。 敵役の象徴であるザクに乗り、主役機のガンダムと戦う兵士の物語としては「ポケットの中の戦争」という先駆者が存在している訳ですが、本作はそれに引けを取らぬ程の名作である、と感じました。 ザクに乗った兵士がどんなにマシンガンを撃っても当たらない、視認出来ない程の速度で移動し、気が付けば目の前に現れて、ビームサーベルの一撃で無慈悲な死を与えてくる……という「ガンダムと戦う事の恐ろしさ」も、入念に描かれているのですよね。 そんなガンダムに搭乗するイオが「本当は戦いたくないのに、仕方なく戦う主人公」というテンプレとは一線を画する「戦うのが好きで、戦争って狂気の中でしか生きられない男」という性格設定なのも面白い。 そもそも彼にガンダム(=フルアーマー・ガンダム サンダーボルト宙域仕様)が与えられた理由が「これに乗って戦い、死んでもらった後に、英雄として喧伝する為」というのだから、凄い話です。 対するダリルも魅力的なキャラクターであり「傷痍軍人だけで結成された特殊部隊『リビング・デッド師団』の撃墜王にして、義足を装着した狙撃手」という肩書きだけでも、痺れてしまうものがあります。 金髪で鋭角的な美男子のイオとは対照的に、黒髪の穏やかな好青年といった容姿であり、哀愁を帯びた佇まいが、実に良かったです。 それと、基本的に本作は「戦争映画」としての純度が高い作品なのですよね。 優しい言葉を掛けてくれた女の子も、ガンダムに憧れる少年兵達も、次々に戦死していく理不尽さを、しっかり描いている。 特に後者は「ガンダムが無事に敵艦隊に辿り着く為の囮、捨て駒」という扱いなのだから、もう参っちゃいます。 「彼の右手を切れ!」の台詞も衝撃でしたし、怪我人を助ける振りして、自分が脱出ポットに乗り込む男という卑劣な描写があるのも良いですね。 モビルスーツによる戦闘を恰好良く、爽快感を得られる程に描く一方で、こういった「戦争とは本来酷いモノなんだよ」ってシーンを忘れずに盛り込む事は、とても大切だと思います。 ポインターでのビームサーベル誘導による敵兵の殺害など(そんな使い方があったか)と唸らされる描写もありましたね。 ア・バオア・クーの決戦にて、両脚が無いサイコミュ高機動試験用ザクと、片腕を失ったジムとの戦いを描き「手足を失ってでも殺し合いを続ける」人間の業の深さを強調している辺りも良い。 思えばそれは「めぐりあい宇宙」のガンダムとジオングの戦いでも象徴的に描かれているメッセージであり、本作が紛れもなく「機動戦士ガンダム」の系譜に連なる作品である事を感じさせてくれます。 戦いを終えて、サイコ・ザクの爆発を見届けるダリルの姿も、音楽と相まって、忘れ難い魅力がありましたね。 現実で手足を失っても、夢の中でだけは自由に動き回れていたのに、とうとうその「夢の中の手足」すらも失われた事を実感し、寂しげに佇む姿。 様々なものを失った代わりに手に入れた勝利が、如何に空しい代物かと、しみじみ感じさせる力がありました。 唯一の難点は、原作の関係上、あるいは「宇宙世紀という名の史実」の関係上、一年戦争を終えても、宇宙移民紛争に決着は付かない為「俺達の戦いは、まだ終わらない」という中途半端な結末である事でしょうか。 それでも、ラストシーンにおける「勝利を得た代わりに、絶望を背負って生き続けなければいけないダリル」と「敗北を経て捕虜になっても、諦めずに戦い続け、見事に脱出成功してみせたイオ」という両者の対比は、お見事の一言。 なので、やっぱり、この結末で良かったんじゃないかな……という想いも強かったりしますね。 ガンダム好き、あるいは戦争映画好きであれば、是非とも観賞し、その世界に浸ってみて欲しい一本。 オススメです。 [ブルーレイ(邦画)] 9点(2017-05-31 20:17:21) |
328. プロゴルファー織部金次郎
《ネタバレ》 正直、武田鉄矢という人は苦手だったりもするのですが、これはスッキリした娯楽作品として、素直に楽しむ事が出来ました。 極道やら賭け事やらの要素が詰め込まれ、あと一歩で陰鬱な路線に傾きそうなところを、きちんと踏み止まり、明るく仕上げている。 基本的には人情噺なのですが、主人公がトーナメントを勝ち抜いていく爽快感も描かれている為、スポーツ物としての魅力も備わっていましたね。 ゴルフの知識が無くても分かるよう、ヒロインの桜子さんを通じて専門用語について解説したり、修造親分を通じて「ゴルフが上手くなる方法」を教えてみせたりと、初心者にも経験者にも配慮した作りとなっている事にも感心。 バックスピンの描写が大袈裟なのも、映画的なハッタリとしては有りだと思うし「行け、行け! 池?」などの駄洒落が散りばめられているのも、微笑ましくて良かったです。 不満点としては、主人公の娘達が最後に登場せず、ちょっと扱いが中途半端に思えた事でしょうか。 終盤は修造親分の死にスポットを当てていた為、そちらに専念した形なのでしょうけど「父さんはお酒ばかり飲んで、ゴルフの練習しないから、一生試合に勝てない」という言葉を覆す活躍をしてみせた訳だから、それに対する娘達の反応も知りたかったところです。 それと、狸の食べ物を主人公が横取りしたシーンは、ちゃんと謝る描写も欲しかったですね。 些細な事ですが、そういう描写が有るか無しかによって、主人公に対する好感度が大きく変わってくるように思えます。 ラストホールにて、修造親分の幻影が現れる件は感動的であり、涙腺が緩みかけたのですが、一度で終わらせずにその後何度も出てくるもんだから、ちょっとやり過ぎに感じられたのも残念。 基本的には好きな描写ですし、良かったと思うのですが、一度きりの登場でビシッと締めてくれた方が、より好みだったかも。 特筆すべきは、何といってもエンディング曲の素晴らしさですね。 「いつか観た映画みたいに」って、ゴルフとは全然関係無い歌詞だったりもする訳ですが、そんなの吹き飛ばしちゃうような力がある。 良い映画と、凄く良い曲、両方を満喫させてもらいました。 [DVD(邦画)] 6点(2017-05-29 20:35:00) |
329. 名探偵コナン 時計じかけの摩天楼
《ネタバレ》 冒頭にて、十分近くも掛けて「このシリーズのお約束である『眠りの小五郎』の場面」「あらすじ」「コナンが装備しているメカの説明」まで披露してくれるという、実に親切設計な一品。 予備知識が無くとも楽しめるように……という、作り手側の配慮が感じられました。 「ボク、子供だから分かんないよ。何かヒント教えて」という甘え声での台詞など、コナン(=新一)が自らのハンディキャップを逆手に取って、犯人から情報を引き出す件も面白かったです。 蘭とのロマンスも含め、ちゃんと「子供になってしまった高校生探偵」だからこそ出来るストーリー展開にしているのですよね。 作中には「新幹線大爆破」や「ジャガーノート」など、過去の名作映画から拝借したネタも多いのですが、こういったコナンならではの魅力も忘れずに盛り込んである為、観客としても抵抗無く楽しめる感じです。 モリアーティ教授をモデルにした怪し過ぎる建築家が、そのまま犯人だったのには笑っちゃいましたけど、作劇として「犯人は誰か?」より「どうやって爆発を食い止めるか?」に重きを置いた結果なのだろうなと、納得出来る範囲内。 記念すべき映画第一作だから、犯人にはビッグネームが元ネタの人物を配したいという考えもあったのかなぁ、と推測する次第です。 電車ではなく、線路の方に爆弾が仕掛けられていると見抜く件や、爆弾解体のシーンにてモノクロ画面にし、赤と青の配線のどちらを切ったのか分かり難くする演出なんかも良かったですね。 特に後者に関しては、初見の際にかなり感心させられたのを憶えています。 難点としては、立て続けに事件が起きる構造上、テレビの数話分を繋げてみせた「総集編」めいた色合いが濃い事が挙げられるでしょうか。 それと「赤い糸が無い」「コナンのままじゃ駄目」という独白で終わる形なのも、ギャグ描写とはいえ、少し後味が悪かったです。 この作品の特性上「たとえ見た目が変わっても中身が同じだから蘭とも愛し合える」あるいは「歩美ちゃん達と一緒に過ごすコナンとしての人生も悪くない」なんて結論にはならず「何時かは新一に戻りたい」という願いをコナンが抱き続けるのは当然なのでしょうが、ハッピーエンドの後にそれをやられちゃうと、やっぱり寂しい。 後は……コナンの仲間である少年探偵団の活躍が無かったとか、気になるのは精々そのくらいですね。 娯楽作品として、バランス良く纏まっている映画だと思います。 [DVD(邦画)] 6点(2017-05-28 16:45:12)(良:2票) |
330. 猫の恩返し
《ネタバレ》 「猫舌のお前さんには向くまい」「お前こそ鳥目だろ」 という鳥と猫とのやり取りが印象深い。 作品全体の印象としては、丸く綺麗な小石、といった感じですね。 尖って良い部分も無く、悪い部分も無いという。 児童向け作品らしく、伏線とその回収も分かり易くて ・幼少時に出会っていた猫との再会。 ・「何処かで見たような……」という台詞。 ・遅刻していた主人公が成長したのを表す為に、早起きするようになる。 等々、微笑ましい気持ちで各シーンを見守る事が出来ました。 猫好きな観客の欲求に応えてくれるように、作中の猫達は魅力的に描かれていたと思いますし、その時点で、ある程度は満足。 じゃあ不満点は何だろうと考えてみると、終盤の盛り上がりに欠ける事が挙げられそうですね。 もう少しこう……画面を見ているだけで楽しくなっちゃうような、動きのある活劇要素が欲しかった気がします。 折角バロンと王様との一騎打ちがあったのに、あっさりと前者が勝って終わりというのでは、如何にも寂しい。 それと「恰好良いから」という子供っぽい理由で好きだった男性に興味を無くす事を、前向きに描いているはずなのに「主人公がバロンを好きになった理由」が「恰好良いから」としか思えない辺りも気になります。 見た目に囚われず、内面の恰好良さが分かるようになったという意味なのかも知れませんが、バロンというキャラは見た目の時点で恰好良く描かれている訳だし、何だか中途半端な印象が残りました。 エンディング曲については、凄く良かったですね。 「猫の国から現実世界に戻ってきた主人公が、いつでも傍にバロンがいてくれると思いながら日々を生きていく」という感じで、歌詞も作品に合っていたかと。 正直、退屈に感じた時間も長かった映画なのですが、この曲が流れ出すラストシーンだけでも「観て良かったな……」と思えました。 [DVD(邦画)] 5点(2017-05-15 10:44:12)(良:1票) |
331. 塔の上のラプンツェル
《ネタバレ》 基本的には女性向けのストーリーなのですが、所謂「王子様」役のフリンを語り部に配し、男性でも抵抗無く観られるバランスとしている事に感心。 名作童話が原作である為、どうしても「古き良きテイスト」を重視しそうなものなのに、演出から若々しい感性が伝わってくるのも良かったですね。 序盤にラプンツェルが唄う場面はスタイリッシュな魅力があったし、とうとう外に出た後に「はしゃぐ」→「落ち込む」を繰り返すギャグも分かり易く、好印象。 ラプンツェルの長髪をアクションの道具として活用している辺りも上手かったし、動きだけでなく「四十五回勝負」「三回勝負」という形で言葉の笑いも取り入れているし、感動的な自己犠牲もあるしで、本当に色んな面白さが詰め込まれているのですよね。 「女性客」「男性客」「恋愛が見たい人」「アクションが見たい人」「笑いたい人」「泣きたい人」と、幅広い観客層を意識して作られた、丁寧な品であると感じました。 中でも自分のお気に入りは、酒場で盗賊達が唄い出すシーン。 「命奪うより心奪いたい」 「こんな暮らししていても、夢見る心は未だ無くしてない」 といった具合に、歌詞も素敵でしたし、何より一見すると悪人にしか思えない盗賊が、実は良い人というか「悪人でも夢を持っている」という意外性を秘めていたのが、本当に好みでしたね。 劇中でも一番の名場面じゃないかな、と思います。 その一方で、終盤の展開は少し不満というか、予定調和過ぎるように感じたので、そこは残念。 上述の盗賊達が、それぞれ夢を叶えてくれるハッピーエンドだったのは、文句無しで素晴らしいと思うのですが、その直前の「フリンの自己犠牲がラプンツェルの涙によって覆される」「結局、ゴーデルは単なる悪人であり、育ての親としての情など無かった」という展開のせいで、興醒めしてしまったんですよね。 ここら辺を、もうちょっと自然に仕上げてくれたら、皆笑顔でハッピーエンドを迎える結末を、更に楽しむ事が出来たかも。 そんな具合に「本質的には女性向け」「終盤の展開が好みではない」などの要因があるにも拘らず、しっかり面白かったのだから、やはり質の高い作品なのでしょうね。 世の中には、色んな客層を意識し過ぎて、色々と盛り込み過ぎて、破綻してしまう映画もありますが…… 本作は、そういった類の中でも成功例としてカウントされそうです。 [DVD(吹替)] 6点(2017-05-15 07:07:10)(良:3票) |
332. 借りぐらしのアリエッティ
《ネタバレ》 こういった設定の映画である以上「小人から見た世界」が面白く描かれていれば問題無いと考えながら視聴した為、まず満足。 部屋に飾られている大きな時計が人間の腕時計だったり、お茶を淹れる際にも水滴が大きかったり、猫や狸が巨大な獣だったりと、色々楽しかったですね。 逆さに伏せられた硝子のコップを、物珍しい美術品のように眺めるアリエッティというシーンも印象深い。 ……ただ、虫が巨大なサイズで気持ち悪かったのは難点かも。 ダンゴムシをボール代わりにして弄んだりする描写なんかは、ちょっと引いちゃうものがありました。 タイトルになっている「借りぐらし」に関しては、いくら作中で「人間から借りているだけ」と主張されても、明らかに泥棒だよなぁ……と思えてしまい、ノリ切れず。 もうちょっと小人なりに人間の生活に貢献しているとか、借りた分を些細なお手伝いなどで返してみせる描写があれば納得出来たのでしょうが、小人はひたすら人間を恐れて隠れつつ盗みを働いているだけですからね。 ただ単に「借り」と「狩り」のダブルミーニングにしたかっただけでは? と感じられました。 ドールハウスと小人の寸法がピッタリ同じというのは、ご都合主義だとばかり思っていたのに「実は小人の為に作らせた代物」だったと判明する辺りなんかは、上手い脚本だなと感心。 アリエッティの母親救出の件で、さながらスパイ物めいた音楽と演出になったり、窓を開ける際に「人間には出来ない事でも小人なら出来る」と示す流れになったりするのも良かったですね。 原作の元ネタと思しき「秘密の花園」を読んでいるシーンなんかも、思わずニヤリ。 「秘密の花園」→「床下の小人たち」→「借りぐらしのアリエッティ」の三作品には、それぞれ四十年以上の間隔が空いている事を思うと、魅力的なストーリーラインは時を越えて受け継がれるのだと、しみじみ実感させられます。 そして、事前に調べなくても「ヒロインの描き方が全然ロリコンっぽくない」という時点で宮崎監督作じゃないと気付いた本作なのですが、これも結果的には良い作用を齎したんじゃないかと思えます。 小人の美少女なんて、如何にもフェチ心をくすぐる題材だし、やりようによっては幾らでもエロティックに出来たのでしょうけど、そちらは極めて薄味な作り。 それが物足りない人もいるのでしょうが、自分としては好みなバランスでした。 むしろ脚本と監督の溝というか、作中の台詞と全体の流れが噛み合っていないのでは? という点が気になりましたね。 脚本を書いた人がビッグネームな時に起こりやすい現象なのですが、監督さんが脚本に気を使って、書かれていた台詞をそのまま採用してしまったがゆえに生じる違和感のようなものがありました。 その最たるものが「君は僕の心臓の一部だ」というクライマックスの台詞であり、確かに感動的なのですが、それまでの流れを考えると、どうしても(そこまで言う程の深い交流があったかな?)なんて思っちゃうのですよね。 死にゆく病人と滅びゆく種族とで、シンパシーを感じたのだろうけど、長年連れ添った恋人同士じゃあるまいし……なんて、ついつい意地悪く考えてしまいました。 別れのシーンは、台詞だけでなく、音楽や演出も悪くなくて、グッと来るものがあっただけに、そこが凄く残念。 それと、中盤に母娘で針仕事をしながら「この大きな袋は何なの?」と娘が尋ねるも、母親は答えないというシーンがあるんですよね。 ここ、てっきり気球かヨットの帆を作っていて、それが引っ越しの際に役立つのではと予想していたのですが、見事に外れました。 こちらは、ちょびっとだけ残念。 でも、本作には「薬缶に乗って河を移動する、静かなエンディング」の方が似合っていたようにも思えますね。 希望の象徴と言うべき海のポスターを効果的に活用し、単なる悲劇では終わらせず、より良い明日に向けての「旅立ち」を感じさせる終わり方であった点も含め、中々に心地良い映画でありました。 [DVD(邦画)] 6点(2017-05-10 10:18:04)(良:1票) |
333. スパイダー パニック!
《ネタバレ》 これは好きな映画ですね。 手に汗握る緊迫感とか、物凄いセンスの良さがあるとか、そういう訳じゃないんだけど、定期的に観返したくなるような魅力がある。 分析してみるに、やはりモンスターである蜘蛛の描き方が良かったんじゃないでしょうか。 見た目も怖過ぎず、気持ち悪過ぎずで、そこはかとなく愛嬌があるし、殺し方もそこまで残酷じゃない。 銃を持った人間と一対一なら負けちゃうけど、数の力を活かせば圧倒出来る。 移動速度も素早く、徒歩の相手なら楽勝で追い付き、バイク相手なら逃がしてしまう事もある。 知能は道具を扱える程ではないが、原始的な狩りの術は習得済み。 そしてオスの三倍も大きいメスという、視覚的にも分かり易いボス格の存在…… 様々な点でバランスの良い、名敵役といった感じでした。 主人公側の戦力も程好いバランスでまとまっているし、何と言っても主武装がショットガンというのが自分好み。 モールに立て籠り、襲い来る蜘蛛の大群をショットガンで迎え撃つ場面とか、もう本当に大好きなんですよね~ こういうゲームがあったらプレイしてみたいなぁ、なんて思っちゃいます。 人物設定も良くって、男性主人公と、子持ちのヒロイン、幼い息子、年頃の娘と、もう完璧な布陣。 何でなのか分からないけど、こういう組み合わせって琴線に触れるものがあるんですよね。 「君も子供達も、纏めて幸せにしてみせるよ」という、男としての自尊心みたいな物が満たされるからかな? 息子くんの背伸びしている感じや、娘ちゃんの思春期な感じも、実に好ましかったです。 ・バイクに乗ったままジャンプし、空中で蜘蛛に蹴りを食らわせる。 ・金網越しに突き出た蜘蛛の足を、チェーンソーで一気に斬り落とす。 ・武装しろと言われた男が、ホッケーマスクにチェーンソーという「ジェイソンのようでいて、実は武器のチョイスがジェイソンじゃない」恰好をしてみせる。 等々、印象的な場面が色々と配されていて、観ている間ずっと飽きさせないのも良い。 客が少ないモールに、蜘蛛から逃げてきた人々が大挙して押し寄せるのを見て(ようやくモールに客が来たか)と喜ぶ町長のシーンなんかも、惚けたBGMと併せて、味わい深いものがありました。 誰も本気にしていないと思っていた「エイリアン襲来を警告するラジオ」のリスナー達が、終盤に駆け付けてくれるのも良いし「巨大蜘蛛に立ち向かうよりも勇気が必要な告白」をヒロインに対して行ったら、アッサリ受け入れてもらえて拍子抜けしつつ死地に赴く主人公って展開も、これまた素晴らしい。 無事に敵を一掃し、お約束のハッピーエンドを迎える結末まで、とても楽しい時間を過ごせました。 [DVD(吹替)] 8点(2017-05-03 07:40:53)(良:1票) |
334. ウォーリー
《ネタバレ》 これは、ちょっと困った一品。 何せ観賞後の自分の感想はといえば「性別というものが存在しないロボット同士の愛を描いた映画」だったりしたのですよね。 で、そういう観点でレビューを書こうと思いつつ、念の為に情報収集してみたら、どうも映画のパンフレットではウォーリーが男の子でイヴが女の子と表記されているらしくて……もしも、それが公式設定だとしたら、ちょっと寂しいです。 「じゃあ結局は、人間の男の子と女の子の恋愛をロボットに置き換えてみただけじゃん」という気がしちゃいますからね。 一応、映画本編から受ける印象としても「イヴという名前の時点で、イメージ的には女性キャラなんだろう」ってのは分かる気がします。 でも、そこはやっぱり性別不詳だからこそ良いというか「性別なんて存在しないロボット同士でも愛情(あるいは友情)は生まれる」というメッセージ性を受け取った身としては、主役の二体を「男の子」「女の子」に分けるのは無粋じゃないかなぁ……と思った次第。 そんな具合に、出鼻を挫かれてしまったというか「自己の解釈と作り手の意図が大きく外れている可能性」を感じてしまい、何だか憂鬱な気分に襲われたので、以下は簡潔に良かった点を。 まず、特筆すべきは宇宙船アクシオム内の描写。 中々のディストピア感が漂っており「船内という閉じ込められた世界」ならではの息苦しさも伝わってきました。 移動も機械任せにして肥満しきった人類の姿は、滑稽であると同時に醜くも感じられ「これはもう人類はダメかも分からんね」なんて思わされたくらい。 それだけに、彼らが機械の支配を拒否して、自立して、地球に帰還する結末が心地良い。 作中でキーアイテムとなる「靴の中に生えた植物の小さな芽」が、エンディグにて巨木に成長しているというオチも良かったです。 名作映画、名作絵画などのオマージュ演出も、綺麗に決まっていたかと。 正直、前半は退屈で「こういう台詞が殆ど無い実験的な内容なら、二十分くらいのショートアニメの方が切れ味鋭く決まったんじゃないかなぁ」と思えたり、主役二人が可愛過ぎるというか、ちょっと仕草などが「あざとい」萌えキャラに思えてしまい、ノリ切れなかったりもしたのですが、難点と呼べそうなのは精々そのくらい。 観賞後は、誰かと手を繋ぎたくなるような……そんな映画でありました。 [DVD(吹替)] 6点(2017-05-02 08:54:33) |
335. タイムクラッシュ・超時空カタストロフ<TVM>
《ネタバレ》 なんたる後味の悪さ。 普通、こういった歴史改変を扱ったタイムマシンネタでは「より良い未来に変わる」「結局は元通り」のどちらかになるのですが、本作では徹底して「主人公の行いによって未来がどんどん悲惨になる」という内容になっているのですよね。 飛行機や地下鉄の事故から人々を救った英雄的行為が「億単位での人口の変化」「原発事故によるカリフォルニアの消滅」などの未来に繋がってしまうという、皮肉過ぎる展開。 しかも息子を救う事が出来てハッピーエンドかと思われた空気の中で「歴史を変えた大犯罪者」と主人公が断罪される形で幕を下ろすのだから、本当にもう「そこまでやるか」と呆れちゃうくらい。 細かい矛盾点というか、気になる点も沢山あって、例えば冒頭で重要人物かと思われた「黒服の時間旅行者」が中盤にてアッサリ死亡する場面なんかは「えっ、何でもっと抵抗しないの?」「何で暴走する列車の先頭車両に立ち尽くしたままなの?」と感じるし、リセット云々の作中の専門用語の説明が足りていないように思えるしで、観賞後にモヤモヤが残ってしまうのは残念。 それでも「過去にあった災厄の数々の現場写真に、いつも同じ顔をした男が映っている」という不気味な導入部、事故を止めようと奔走する主人公の姿など、観賞中は飽きさせない魅力と勢いがあり、不満よりは満足度が高い内容だったと思います。 正直、こういう後味の悪い映画は苦手なのですが、ここまでやられると「参りました」と脱帽する気持ちも大きいですね。 九十四分という上映時間の分だけ、しっかり楽しめた一品でした。 [DVD(字幕)] 6点(2017-04-27 20:56:02) |
336. 憧れのウェディング・ベル
《ネタバレ》 「そうそう、こういうのが観たかったんだよなぁ……」と、ニンマリさせられる一品。 期待通りのラブコメといった感じで、安心して楽しむ事が出来ましたね。 音楽の使い方も良いし、出てくる料理も美味しそうだし、観ていて気持ち良い。 指を斬る、膝を射られるなどの「痛い場面」もありましたが、それも残酷になり過ぎない程度の撮り方をしている為、気にならない範疇。 「大丈夫。死にやしない」「誰か死んだ訳じゃあるまいし」という台詞の後に、葬式のシーンに移るというネタを天丼でやっちゃうのも、不謹慎ながら笑っちゃいました。 ラブコメお約束の「互いに浮気してしまう」というネタにしたって、女性側は酔ってキスした程度、それを知って自暴自棄になった男性側も本番直前までしか行ってないという形にしており、非常に配慮して作られているんですよね。 観客目線での「何も考えずに楽しめる映画」って、作り手側からすると、凄く気を使わなきゃいけないから大変だなって、改めて感じました。 「ドーナツ実験」の件も中々興味深く、面白い。 目先の利益に飛びつくタイプは、駄目人間が多いという実験結果に対し、それなりの説得力を感じていただけに、主人公がそれを否定し「出来たてのドーナツが貰えるという保証が無い」と指摘してみせる流れには、ハッとさせられるものがありました。 恋の当て馬となる男女についても、教授は最低男だったけど、オードリーの方は「口が悪いだけで、根は良い子」ってバランスだったのも好みですね。 両方とも「嫌な男」と「嫌な女」として描かれていたら、流石にゲンナリさせられたでしょうし、上手い着地だなと思います。 終盤にて、プロポーズのプランを再び台無しにするという、冒頭に繋がる脚本も鮮やかだったし、その後のスピーディーな結婚式も最高。 物凄い傑作という訳じゃないし、映画史に残る一品でもないでしょうけど…… こういうタイプの、観賞後に幸せな気持ちに浸れる映画って、好きです。 [DVD(吹替)] 7点(2017-04-26 23:46:27)(良:1票) |
337. ブリタニー・マーフィ in 結婚前にすべきコト
《ネタバレ》 男性目線のラブコメが好きなので「邦題に反して男達が主役の映画である」という情報を元に観賞。 まさか、ここまでラブコメ要素が希薄とは予想だにしておらず、流石に驚きましたね。 マリッジブルーな主人公と、それぞれ悩みを抱える男友達連中が自らの人生と向き合い、前身してみせるというお話で、どちらかといえば青春映画といった趣きの一品でした。 その「男友達連中」に、様々なタイプの人物が配されており「これから結婚して父親になる主人公」の他にも「既に結婚して父親になっている男」「父親になれない男」「男しか愛せない男」「結婚出来そうもない男」と、非常にバラエティ豊かな面子が揃っています。 この映画の良いところは、そんな風にタイプの異なる男達が、全員エンディングにて、冒頭よりも幸せになっている事でしょうね。 結婚しても、父親になっても、父親になれなくても、男しか愛せなくても、結婚出来なくても、人は幸せになれるのだというメッセージが伝わって来て、とても温かい気持ちになれました。 「男と女の間に友情は成立しない」なんて言葉があるけど、この映画では「同性愛者の男性と、異性愛者の男性の間に友情が成立している」という形なのも、興味深い。 自分の友達がゲイだと知り「やっぱり男同士のカップルだと、女みたいに面倒な事を言い出さないから楽なのか?」と質問するも「そんなに簡単じゃない。男女のカップルと同じ」と素っ気無く答えられるシーンなんか、妙なリアリティがありましたね。 終盤にて「絶縁状態だった父との和解」「無精子症である事を妻に告白」という感動的な場面があり、個々のエピソードとしては中々良かったと思うのですが、話の流れとして「あるがままの自分を相手に受け入れてもらう場面」が二つ続いている形になっており、そこは少し残念。 また「結婚出来そうもない男」がストーカー紛いの行動を繰り返し、最後も「元恋人(あるいは、その弟)の車のシートに小便する」なんて悪戯で溜飲を下げて終わる辺りも、流石にドン引きです。 作り手としては「感動だけでなく、こういった馬鹿々々しいコメディタッチな結末を迎えるエピソードもあった方が良い」と判断したのかも知れませんが、自分としては笑えなかったし、折角のハッピーエンドに水を差されたような気分。 それでも、結婚式当日にて、悩みを乗り越えた皆が楽しそうな笑顔になっている姿を見ると「良いなぁ……」と、しみじみ思えましたね。 登場人物が幸せになる姿を、ゆっくりと見守る事が出来る、優しい映画でありました。 [DVD(吹替)] 6点(2017-04-26 04:55:05) |
338. ツーリスト
《ネタバレ》 こういった旅行気分を味わえる映画って好きですね。 列車に、船に、豪華なホテルと、観ているだけで楽しくなっちゃいます。 男性ならアンジェリーナ・ジョリーと、女性ならジョニー・デップとのロマンスを疑似体験出来るようにも作られており「恋」と「旅」とを求めて観賞するなら、まず満足出来る一品かと。 その一方で、サスペンスとしての魅力は薄めであり、あんまりハラハラドキドキはしなかったのですが、本作の場合、このくらい緩めの緊迫感が丁度良かったように思えますね。 なまじ血が飛び出したり、身の毛もよだつような恐ろしいシーンがあったりしたら、せっかくの「程好いバランス」が崩れてしまっていた気がします。 主人公カップルが出会った際に、ジョニー・デップ側が「ごめんなさい」と謝っており、それが後の伏線になっていたりする辺りも上手い。 所謂「主人公こそが犯人だった」オチな訳ですが、犯人といっても悪党から金を盗んだ義賊に近い立場である為、受け入れ易い形になっているのですよね。 また、アンジェリーナ・ジョリー側も「実は警官だった」という事が中盤にて明らかになる為「一方的に彼女を騙して、酷い男だ」という印象には繋がらず、自然な仕上がりになっていたと思います。 目立った難点としては、数学教師という設定が活かされていない事。 そして、金庫を開けて正体をバラすシーンにて、周りに警官が一人も残っていなかったのが、都合良過ぎるように思えた事でしょうか。 前者に関しては、金庫の暗証番号を数学の知識を駆使して解き明かす(つまりは、ヒロインと警察に最初から暗証番号を知っていた訳ではないと思わせる為に演技する)展開にしても良かったんじゃないか……なんて思いましたね。 この手の騙し騙されモノとしては珍しく、後味爽やかなハッピーエンドであった点については、凄く好み。 緩くて温めなロマンス旅行映画として、しっかり楽しめた一品でした。 [DVD(吹替)] 6点(2017-04-19 18:55:08)(良:1票) |
339. テイキング・ライブス
《ネタバレ》 これは困った一品。 イーサン・ホーク演じるコスタの存在意義が「好青年と見せかけて実は犯人」という以外には思い付かないようなキャラクターの為、観ていて早々に犯人に気付いてしまうのですよね。 キーファー・サザーランドという大物を起用し、彼が犯人かと勘違いさせるべくミスリードを行っているのは分かるのですが「それで騙そうとするのは、ちょっと無理があるよ」という感じ。 最後の「実は妊娠していなかった」オチに関しても、事前に医者に告知されるシーンなどがなく、いきなり主人公のお腹が膨らんでいる展開なので、その瞬間からもう「本当に妊娠しているの?」と疑ってしまうんです。 だから、その後に真相が明かされても「あぁ、やっぱり」と嘆息するしかない訳で……本当に困っちゃいます。 そんな具合に、どうにも脚本が肌に合わなかったのですが、それでも何だかんだ退屈せず観られたのは、役者さんの力が大きいのでしょうね。 アンジェリーナ・ジョリーは前半の「出来る女」っぷりと、中盤以降の騙された「弱い女」っぷりの演じ分けが見事でしたし、彼女とイーサン・ホークの演技合戦を眺めているだけでも、何だか得した気分。 演出に関しても「相手を突き飛ばして車に跳ねさせる場面」や「エレベーターの中で犯人が母親の首を捥ぎ取る場面」などは中々ショッキングであり、良かったと思います。 低予算な映画が脚本によって救われて、傑作に仕上がる事がありますが、本作の場合は逆に、脚本の不備を役者さんの力によって補ってみせたというパターンではないかな……と感じられました。 [DVD(吹替)] 5点(2017-04-19 02:05:42)(良:1票) |
340. パーフェクト・ゲッタウェイ
《ネタバレ》 ミラ・ジョヴォヴィッチの悪役は珍しいけど、結構良い感じだなぁ……と思っていたら、最後の最後で裏切りというか、彼女も被害者であったかのような展開になるのが残念。 元々彼女ってキツい顔立ちの美人さんですし、今回は徹底して悪女という路線を貫いても良かったんじゃないかと思えました。 同監督作の「ピッチブラック」が「悪人だと思ったら実は善人だった主人公」の話であるのに比べると、今作は「善人だと思ったら実は悪人だった主人公カップル」の話となっており、どうしても後味は悪かったですね。 途中から登場するカップル二組に主人公交代しているし、そちら目線で見ればハッピーエンドなのでしょうが、今一つその目線の変換がスムーズに行われておらず、彼らに感情移入する前に映画が終わってしまったという形です。 法螺噺っぽく口にした「頭蓋骨をチタニウムで埋められた」という一言が伏線となっている点には感心させられたし、練り込まれた脚本なのは分かるのですが、何というか「気持ちの良い裏切り方じゃなかった」という感じですね。 この手の「主視点の人物こそが犯人である」ネタって、よっぽど上手くやってくれないと褒める気になれないし、本作においては「自分達が犯人のはずなのに、何故か他のカップルに怯える主人公達」の描写が頻繁に出てくるので、ちょっとアンフェアな印象が強いです。 結婚式の映像で二人の顔が映らなかったり、脚本家のはずなのに映画の話になると歯切れが悪くなったりする時点で、観客としても「この主人公カップルは怪しい」と勘付くから、それほど意外性がある結末でもないし、その一方で「じゃあ、結局なんで他のカップル達に怯えていたの?」という疑問が残ったまま。 答えとしては「自分達が犯人だとバレるのを恐れていた」「別に犯人とか関係無く危ない奴らだと思っていたので怯えていた」「完全に被害者カップルになり切って演技を楽しんでいた」などが用意されているのでしょうけど、作中で明確にコレと示される訳でもないので、宙ぶらりんな印象なのですよね。 オチをバレないようにする為の紛らわしい演出が多過ぎて、そういうのは「上手い」っていうより「姑息」なんじゃないかと思ってしまいました。 物語の舞台となるハワイの景観は素晴らしく、観ているだけでリゾート気分を味わえる辺りは、好印象。 それと、普通なら真っ先に容疑者リストから外してしまうような怪しい男を演じていたのが、今やすっかり大物となったクリス・ヘムズワースというのも、上手い配役でしたね。 当時は単なる脇役に過ぎなかったのでしょうが、現代の目線からすると「怪し過ぎるけど、彼が演じているなら意外と犯人って事も有り得るかも……」と思える為、目眩ましとして非常に効果的であった気がします。 上述の通り、オチには納得出来ませんでしたが、程好い緊張感が味わえたし、なんだかんだで楽しめた一品でした。 [DVD(吹替)] 5点(2017-04-18 23:02:08)(良:1票) |