21. サンセット大通り
映画「マルホランド・ドライブ」に影響を与えた映画ということで観てみました。「女王」(自称「王女」)の奇矯な言動、執事の歪んだ愛情(ある意味、性的倒錯ともいえる)など、たしかにD・リンチ好みの題材です。結末を冒頭に持ってきているためにストーリィには意外性がないのですが、ハリウッドの内幕ものとして興味深い作品になっています。「女王」の「宮殿」の不気味さもうまく表現されており、製作当時としてはなかなかの衝撃作だったのではないでしょうか。私にとっては、バスター・キートンが出演しているのが儲けものでした。”wax works”扱いなのが、ちょっと寂しいですけどね。 7点(2004-05-25 15:40:36) |
22. バッファロー'66
手触りも物語もやさしい映画。起承転結の「転」のところで衝撃的展開を迎えるのですが(その先の展開は観てのお楽しみ)、全体としてはほのぼのとしています。映画全体が、C・リッチのほんわかした雰囲気に包まれているとでも表現できるでしょうか。なにより、主人公のキャラクタ設定が秀逸。風貌はワイルド、そしてキレやすい直情径行型の性格。にもかかわらず、変なところで神経質なのがおかしい。この映画の面白さは、主人公と周囲とのどこかずれた会話に負うところが大きいと言えるでしょう。主人公の両親の描写も、「この親にしてこの子あり」と納得できるものです。 8点(2004-05-25 15:34:22) |
23. スワロウテイル
本作の物語世界には、われわれの世界とは異なる濃密な空気が流れているかのようだ。時にその空気感が失われてしまう瞬間があるのは残念だが、総じて良くできている。CHARAの存在感には感心。いくつかのシーンが退屈だという悪評もあるが、退屈さを感じた記憶はあまりない。これは分割鑑賞したせいか。なお、日本映画でこれだけ字幕を読まされたのは初めてだ。 7点(2004-05-20 13:33:22) |
24. マルホランド・ドライブ
この映画はそう単純ではない。しかし、内容の分析については、ネットで検索すればいくらでも見つかる。そこで整合にして緻密な解釈を発見し、本作が細部まで作り込まれていることに気付いて感心したが、逆に理解してしまったことで、この作品への評価が下がってしまった(それでも8点)。やはり、いくつかの手品のタネのように、わかってしまうと面白くないことがある。人生はそう単純ではないものだ。もっとも、もう一度見てみればまた印象が変わるかもしれない。繰り返し見る気が起こらないという方は、奇矯な言動や性的倒錯が生み出す「濃さ」に辟易してしまったのだろう。10年以上前、映画「ツイン・ピークス」を見た時、私も同じように感じたと思う。しかし、年を経て色々なことを見聞し、体験していくうちに、多少の刺激では動じなくなった。今後、本作を繰り返し観ることになるとすれば、それは自分が鈍感になったからというわけだ。鈍感であるからこそ、物語の奥深くに向けて鋭敏になれる。人生はそう単純ではないものだ。 8点(2004-05-20 13:29:25) |
25. 黙秘
暖かい過去。寒々とした現在。自らの老い。町の変遷と離れていく娘。閉ざされてゆく心。そして輝きを止めた太陽の下で起きた事件。パズルのピースがあるべき所に収まったとき、ドロレス・クレイボーンの行動の「なぜ?」が明らかになる。幾つかのトリックが仕掛けられていて、本質的にはミステリィと言えるだろう。J・J・リー目当てでDVDを買ってみたが、キャシー・ベイツの老け役が秀逸。ラストの「投げキッス&手振り」は一時期わが家で流行った。 8点(2004-05-12 12:48:19) |
26. スズメバチ
敵に甘いところがなく、プロフェッショナルな非合法軍隊に徹しているところが良い。ありがちなアクション映画のように悪者がたらたらともったいぶって進撃を遅らせているのではなく、この映画では最終の銃撃戦が遅れるにはそれなりの必然性がある。何も考えないで見れば「それなり」の映画であろうが、画面から自然に感じられる緊張感をもってこの映画に臨めば、登場人物の成長と警備員(元消防士)の奮闘ぶりに感動できる。その意味ではアクション映画には珍しいタイプ。あれれ? と思うシーンが全くないとは言わないけど。 蛇足ながら、この他のナディア・ファレスの出演している映画を見たい方は、「クリムゾン・リバー」などいかがだろうか。 7点(2004-04-27 16:19:49) |
27. 隣人は静かに笑う
ティム・ロビンスって、ああいう演技もできるんだ、と感心した映画。あの口をあまり開けずに話す芝居がコワイ。テロというのは抑圧のはけ口(正当な手段では意見表明やその意見に基づく社会を実現することのできない個人・団体が、自己の意見を認めさせる目的でする表出行為)なので、匿名のテロってあり得るのだろうか? との疑問があるものの、よくできたサスペンス映画だと思う。 あと、どうでもいいことであるが、ジェフ・ブリッジスが名優か大根かという議論は、水谷豊が名優か否かという議論に似た側面があるのではないだろうか。どちらの意見に与するかは、あの癖のある演技を「味」と見るか、「わざとらしい」と見るかの差で決まる。 7点(2004-03-28 16:11:08)(笑:1票) |
28. ワイルドシングス
「B級エロティック・サスペンス」の枠を超えるものではないが、その枠内のものとしては、映像・脚本ともに上質。それに、デニス・リチャーズをとらえるカメラの視線がエッチであった。彼女は1971年生まれで、公開時27歳。ビル・マーレーはひとりで陽気にはしゃいでおり、全体の中では浮いている。が、そこもまた良し。 7点(2004-03-06 10:45:21) |
29. 15ミニッツ
この映画は、TVメディア批評のみならず、主要登場人物の一人が映画監督気取りであることからもわかるように、映画というメディアの批評でもあろうとしているようだ。このように考えると、他の多くの映画と同じようにいかにも頭の悪い悪役が登場するにもかかわらず、悪事が一定程度まで達成されてしまうこと、さらにはこの映画自体のパロディのような場面が登場することも、批評性の現れではないかという読みも可能である。前者はアクション・ヒーロー映画へのアンチ・テーゼと解釈できるし、後者に関していえば、パロディは対象への批評の上で成り立つ表現である。そして、TVや映画などといったメディアを通して社会を観察する「大衆の視線」にもかなり意識的だ。メディア・スターのナルシシズムは随所に描かれるし、今やその視線により善悪の基準となった大衆は、この映画では悪役に加担する共犯である。こうした批評性を内包しつつも、デ・ニーロ主演のクライム・アクションというエンタテインメントの衣をかぶせることによって、社会批評的メッセージを広く伝達しようとした意欲作といえるだろう。しかし、「みんなのシネマレビュー」での評価の低さを見れば、このメッセージの伝達には失敗したという他はない(ついでに言えば、エンタテインメントとしては当然失敗である)。私にとっては結構興味深い映画であったけれども。ちなみに、既に誰かが指摘していることだとは思うが、タイトルは、“in the future everybody will be famous for 15 minutes”(将来、誰もが15分間だけは有名になることができる時代が来るであろう)というアンディ・ウォーホルのそれ自体メディア批評的な箴言に由来している。 7点(2004-03-03 16:57:07) |
30. 未来世紀ブラジル
高校生ぐらいで初めて観た時には、その後味の悪さが嫌いだったが、世の中なんてこんなもの。社会の「変わらなさ」を思えば、この映画を観なくても鬱になる。歳を経れば、この映画も奇想妄想詰め込んだ楽しい「未来図」と思えるようになった。おじさん達に必要なのは「夢」なのだ。それが決して現実にならなくても。テリー・ギリアムの悪趣味は、観ていてとっても好ましい。 8点(2004-01-24 12:13:10) |
31. 追いつめられて(1987)
以前に一度,レンタルビデオで観て,この前テレビで見直しました。最初観たときは,やはりオチの印象が強かったのですが,今回観て,最後の最後に本当に主人公は追いつめられてしまった,という余韻を残して終わる物語だったのだと気付きました。国防省が「ユーリ」の存在を想定していたというのは実話っぽいですね。一番のワルは,結局,ジーン・ハックマン演じる長官であり,権力者のしたたかさもよく表現されています。一目惚れから真の愛へ,というラブロマンスの側面は陳腐であり,傑作とまでは言えないものの,スパイ物の秀作といえるのではないでしょうか。 7点(2003-12-15 14:28:52) |
32. マトリックス リローデッド
《ネタバレ》 1作目を凌駕するできばえ。完結編が持ち越しになった点にはあざとい商業主義を感じるが,結果的にはシリーズの楽しみが増加したように思う(エヴァンゲリオンの時のように)。 本作では私怨を晴らすために行動していたように見えるスミス(すでにエージェントではない)が,予告編を見る限り,実は重要な役割を果たすことになるようである。ここから察するに,次作ではスミスというシステムのバグを利用してネオがシステムの外に出るのではないだろうか。システム内部にいる限り,システムによって決定づけられた行動しかできないのであれば,第3の道をひらくためにはシステムの外に出るしかない。その手段としてスミスを利用する,と考えるわけである。しかし,レボリューションズでは,この発想を遙かに超える作品を観させてもらえることを期待する。 モーフィアスよりも重要な役柄の人物が登場する割に,ローレンス・フッシュバーンよりも存在感のある役者が登場していないことが,この映画の欠点であろう。特に,アーキテクチャーの「口先だけの男」的な軽さはいただけない。これは演出の問題かもしれないが。 最後に。ベインにはスミスのプログラムが憑依しているという明白な事実にすら気づかずにぼんやりと鑑賞している観客には観る価値のない映画であろう。この映画で本シリーズの表面的な(単に話題作だからという理由で映画館に蝟集する)ファンが一掃され,レボリューションズを快適に鑑賞できることを願う。 9点(2003-10-31 10:45:16) |
33. フリージャック
原作は「不死販売株式会社」。これのジュブナイル版を小学校の時に読んで感銘を受け,大学ノート2ページ分くらいの感想文を書いて先生に提出した記憶がある。その記憶をもとに映画館を訪れたものの,この映画には何の感銘も受けず。終盤で,ミック・ジャガーが高笑いしながら主人公を追いかけるシーンだけは良かったかな。 3点(2003-08-21 17:41:26) |
34. バニラ・スカイ
音楽的センスは良い。しかし,映像的センスの面では,原作の方が好み。お話も原作より分かり易くなっている反面,ラストについては救護員の説明以外の解釈の余地を狭めており,やはり原作の方が良いように思う。それに何といっても,オリジナリティの点では減点せざるを得ない。もう少しヒネりようがあったのではないか。それには目をつぶるとしても,なぜペネロペ・クルスまで同じなのか。これ単体でみれば,そんなに悪い映画ではないけどね。 4点(2003-08-11 10:56:05) |
35. YAMAKASI ヤマカシ
公開当時,有楽町の映画館にまで観に行ってがっかりした記憶がある。ベッソンらしさは,特殊部隊の突入シーンくらいですかね。まあ,ベッソンが監督してるわけではないけど。多くの方がおっしゃっているように,スタント無しのアクションが見せ場である。が,それでも挽回できないお話作りは,いかがなものかと。 2点(2003-08-11 09:46:17) |
36. オープン・ユア・アイズ
「何が真実なのだろうか?」と考えさせる知的な面白さがある。しかし、別様の解釈があり得るとはいえ、やはりオチが今ひとつだったと思う。トリックに乗ることまでも楽しめれば、最後まで面白く観ることができたのかもしれないが。もっとも、監督がまだ20代の若手であることを思えば、こうしたオチの映画を作る感覚も理解できなくはない。 6点(2003-08-10 21:20:39) |
37. 初体験/リッジモント・ハイ
いやあ、愛すべき青春群像劇ではないですか。アメリカでは、たまにこういう映画が作られますよね(観たことある範囲では、「アニマルハウス」とか)。若かりし頃のジェニファー目当てでDVDまで買ってしまいましたが、特典(インタビュー集)もなかなか充実してて良かったですよ。脚本は、キャメロン・クロウが高校でニセ学生をやりながら、そこで見聞した話を元に書いたそうです。ニコラス・ケイジも重要な役で出る予定だったようですが、若すぎたために撮影時間に制約があり、ちょい役にとどまったという話もありました。 7点(2003-08-06 20:41:04) |
38. 踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!
悪くはないです。オープニングシーンは、映画館で観た方が楽しめるでしょう。このシーンは、無意味なようでちゃんと伏線になってます。あと、エンタテインメントに徹している姿勢は買えますね。ちゃんとお金もかけてます。しかし、話がマンネリ化しており、新キャラでもその埋め合わせはできてません。「警察組織の矛盾」だけで、ここまで引っ張るのは難しいでしょう。そこで「監視と盗聴による捜査」を持ち出したのでしょうが、そのおぞましさの描写が中途半端でした。また、袴田課長(小野武彦)の影が薄かったのは、個人的には非常に残念。 6点(2003-08-05 10:09:10) |
39. アザーズ
どうも私には、ゴシックホラーというジャンルが肌に合わないみたいです。伝統的な表現で描写される幽霊には、何も感じません。最後の視点の転換があまりにも鮮やかだったので、「月下の恋」よりは高い点数を付けたいと思います。 4点(2003-08-01 21:07:43) |
40. ディーバ
好きな映画は、たいてい「わけのわからない迫力」のあるものなのだが、この「ディーバ」は例外。非常に真っ当な作りである。というより、ほとんど完璧な作品といってもいいのではないだろうか。サスペンスでもあり、ロマンスでもあり、ドタバタコメディでもあり、刑事ドラマでもあり、青春映画でもある。さまざまな要素を詰め込みつつ、一本スジの通ったストーリー展開。緻密に構築された端正な映像。ディーバと主人公との恋にリアリティを感じられるかが評価の分かれ目だと思うが、さすがにそれを感じられない無粋な人はここにはいないようで、嬉しい限り。フランス映画にありがちな、「話のわかりやすさよりも画の美しさを優先する」部分が見られたことだけが減点事由。そこがフランス映画のいいところ、という人もいるとは思うが。 9点(2003-08-01 21:07:29) |