21. ロマンシング・ストーン/秘宝の谷
《ネタバレ》 大麻の運び屋が着ているTシャツの「Grateful Dead」に「満足した死人たち」の字幕が・・・。何か詩的でさえありますね。もう頭から離れなくて困ってます。 [DVD(字幕)] 8点(2008-09-25 00:25:17) |
22. 狼よさらば
《ネタバレ》 「殺してしまったあ」とか言って身悶えていた割には、相手にしっかりパンパンと止めを刺し、挙句の果てに最後はあのポーズ。おまけに実行犯は野放し。さすがブロンソン。実にいい加減というか、豪快というか、フツーはもっとおかしくなったり、暴走して止められないとか、殺ってくうちに楽しくなっちゃって、最後に返り討ちに遭うとか、そういう展開にするものだが、彼の場合はもう淡淡と仕事をこなすだけで、正義感でやってるんだか、憂さ晴らしなんだか、趣味なんだかよくわからないというのが恐ろしい。よって共感もできないし、正義とは何かとか、殺人とは何かとか、最初からそういう方向にさえ行かないというのが凄い。とはいえ西部で銃に目覚め、自警団としてヒーローに祭り上げられるというプロットは、アメリカならではである。この点で、しっかりアメリカの社会や歴史、伝統文化の本質を描いていることが、本作を単なるB級作品とは、一線を画したものにしているのだ。しかしこの後の暴走ぶりを考えると、やっぱり何も考えてないんだろうな。 [地上波(吹替)] 8点(2008-08-10 23:19:34)(笑:1票) (良:1票) |
23. フィクサー(2007)
《ネタバレ》 ストーリーのブツ切りに不親切な演出。またもやソダーバーグ一派か。ぼおっと見ていたせいか、馬のエピソードは、パンフを読むまで気づかなかった。フィクサーというのは、悪徳弁護士の意味もあるらしいが、普通の日本語の感覚からすると違和感がある。かといって原題だといまいちだし、最近こんなのばかりだ。本作で凄いのはやっぱりティルダ・スウィントンだろう。「フツー」のキャリア・ウーマンが殺人にまで手を出してしまうというのも恐ろしいが、それ以上に脇の下に汗じわーっとか、腹の肉ぶよっとか、もう正視に耐えない衝撃映像の数々には戦慄を覚える。何百億ドルもの訴訟を一人で仕切るなど、人間の限界を超えているというものだ。リーマンの鬱病なんてレベルじゃない。さすがアメリカ。殺人シーンも妙に機械的で怖いし、誰もが何気なく極限状態に陥っている様に、観ているこちらの神経までギリギリと締め付けられるようだ。正義を貫き勝利を手にしても、ハッピーエンドにならないのがいい。 [映画館(字幕)] 9点(2008-07-07 00:59:21) |
24. 大いなる陰謀
《ネタバレ》 現在のアメリカが抱えるジレンマや分裂状態を、ここまで凝縮してわかりやすくコンパクトに仕上げた脚本はお見事。原題のエピソードだが、かつて我が国の軍隊も同じようなことを言われたことがある。「末端の兵士たちは優秀だが、指揮官がダメだ」と。この辺は現代でもあまり変わっていないのだろう。わが国でも十分通用するテーマだ。しかし三人の大学生のような優秀な連中ならともかく、偏った連中や凡庸な愚民ども(もちろん私も含めて)が下手に政治づいたりしても、またあさっての方向にいってしまうので、難しいところではある。まあ本作をわざわざ観たいと思うような人なら、そんな心配はないのでしょう。その存在を感じさせないのが最も理想的な政治と言ったのは誰であったか。狂気すら漂うトムの演技は圧巻。レッドフォードは男性ホルモン不足なのか、おばちゃんみたいだ。メリルはまあいつも通り。「第二次大戦は五年で終わった」というセリフがあったが、当時は従軍記者たちが最前線から命がけで記事を配信していたのだ。これも「特殊部隊は足が速い」云々というセリフの通り、アフガンの雪山に特殊部隊のヘリボーンでは、確かに取材もできないだろう。現地で何が起きているのか、結局のところ誰にもわからないというのが恐ろしい。 [映画館(字幕)] 9点(2008-07-07 00:57:38) |
25. アメリカを売った男
《ネタバレ》 アメリカでは、カソリック教会の神父が、長年にわたって子供たちに性的虐待を繰り返していたということで、以前から問題になっている。しかも一人や二人ではなく、全米の教会において。魔女狩りや異端審問というのもあるし、カソリックの世界というのは元々そういう倒錯趣味を内包しているのであろうか。そういえば福田和也氏が雑誌で「カソリックは人間の中に悪魔と神が両方いる、というのが基本的なコンセプト。告解すればOKって」というようなことを言っていた。2ヶ月という期間設定、時間にして2時間弱で、スパイの複雑怪奇な心的内面をよく描いていたと思う。脚本もいいが、クリス・クーパーさんの不気味な演技が素晴らしい。彼が勤務中に見てたゼタ子の映画は「エントラップメント」かな?そっちも騙し騙されって内容だった。しかし実話とはいえ、新米の若造がよくここまでやったなと思う。セクハラ捜査のつもりが、50人の捜査員に監視されていたとは、きっと本人も驚いただろう。二人の壮絶な心理戦は最高にスリリングだ。まだPCが普及し出した頃の話で、何バイトとかWANとか言っているのも、その分野に詳しい人には、きっと面白いことだろう。ラストも最高。ローラ・リニーさんもいい。国立公文書館というのだけはよくわからなかったが。 [映画館(字幕)] 9点(2008-03-27 04:02:51) |
26. ソロモンとシバの女王
《ネタバレ》 恐らく異教徒のスペクタル・ダンスシーンが、最大の見所の一つだと思うのだが、今見ると笑ってしまう。どう見てもブロードウェイ・ミュージカル風である。しかし主演女優のジーナ・ロロブリンダーさんはすんごいです。今時あれだけエロい女優が、果たしているだろうか。ソロモン王がハーレムの女たちを差し置いて入れ込むのも納得である。もう一つの見所は、クライマックスの戦闘シーンである。CGというか、アニメというか、イスラエル軍の鏡攻撃で、エジプト軍が谷底へと落ちていくシーンが、これでもかと言うくらい延々と続く。「タイタニック」並みの大虐殺である。神の怒りは恐ろしいのだ。当初はタイロン・パワー主演で撮影が進んでいたのだが、彼が心臓発作で急死したため、急遽ユル・ブリンナーが代打を務めた。ロングでは、タイロンの映ったショットが採用されているらしい。旧約聖書のエピソードを、一大スペクタクル・ラブストーリーに仕上げるセンスは見上げたものだ。 [DVD(字幕)] 8点(2008-01-12 02:30:52)(良:1票) |
27. ティアーズ・オブ・ザ・サン
《ネタバレ》 今観ると、アフリカもののはしりのような気もする。しかし名作の仲間入りはできなかった。問題は戦争映画なのか、感動作なのか、いまいち方向性が定まっていないことであろう。軽い演出の戦闘シーンに、重苦しい音楽のせいか、戦争娯楽作としてのカタルシスはあまり感じないし、かといってヒューマニズム感動作にするには、キャラもストーリーも掘り下げが足りない。何と言っても、あの展開でブルースが最後に生き残るのが一番まずい。国境前で敵を引き付けるとかして、モニカの腕の中で死ぬとかしないといけない。最後に子供が「Freedom」とか叫んでも、興ざめも甚だしい。普通にダイ・ハードをやった方が良かったのではないだろうか。この監督さんは妙なところで生真面目なのか、突き抜けたところがないので、アクションではなく、人間ドラマとかをやった方がいいのではないだろうか。 [DVD(字幕)] 6点(2008-01-12 02:28:32) |
28. セイント
《ネタバレ》 バル・キルマーの演技はまあまあ楽しめた。特に詩人に扮した時の、マジなのか冗談なのかよくわからないナルシスティックぶりがいい。しかしシューの方が、どうも終始ヘラヘラとして、緊張感がないのがいただけない。それに悪役の御曹司も、演技が上手いとは言い難い。以前テレビで観た時は、ロシア以後のシーンが丸々カットされていたので、今回初めて観たら、何だか取ってつけたような感じになっている。モスクワのアジトで、カメラを介して話していたのは、米大統領なのかな?硬派でサスペンスフルなストーリー展開に、軽妙でおしゃれな泥棒映画の雰囲気をブレンドし、セイントの心の闇を絡めて、そのどれもが中途半端に終わっているという実に稀有な作品。さすがにセイント自体のキャラクター設定は魅力的なのに、勿体無い。しかしこのB級感も含めて、結構嫌いな作品ではないのだ。ロジャー・ムーアは、以前テレビでセイントを演じた縁でカメオ出演したそうです。そっちの方が面白そうだ。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-12 02:24:32) |
29. エネミー・ライン
《ネタバレ》 迫力の空中戦、顔の欠けたマリア像から虐殺現場を得て、リアリズム戦闘シーンへと、メッセージ性と娯楽性を両立させた秀作と思いきや、もうエンディングがあまりにもバカすぎて、笑いが止まらなかった。音楽を被せて、強引に超ハッピーエンドにする必要がどこにあるのか。DVDの特典映像によると、カットされたシーンもあるようだが、せめて相棒の遺体を回収するとかしないと。最後まで、監督がスコット弟だと思い込んでいたのだが、全くの別人である。しかしながら同じCM出身(だっけ?)ということで、スピーディで鮮烈な映像センスは素晴らしい。特にヘリのベタなカッコよさは、スコット兄にもひけを取らないだろう。しかし地雷で吹き飛ばされるシーンの、超スローモーションは少々やりすぎか。いやいや、きっと観客に地雷の恐怖を伝えたかったのだろう。決して悪趣味なわけではありません。ハッチでの索敵シーンも不気味で、臨場感に溢れている。演出のアイデアは豊富に持っているようだ。今後に期待。戦争映画は好きなので、まあまあ楽しめた。 [DVD(字幕)] 7点(2008-01-12 02:22:07) |
30. 迷子の警察音楽隊
《ネタバレ》 いい映画であることは間違いない。しかしとことん地味だ。え?もう終わり?というくらいあっけなく終わる。クライマックスに気付かなかった。完全に宣伝に騙されてます。和平条約を調印したとはいえ、イスラエルとエジプトは敵対国家同士である。しかしそのような事実は、劇中では全く触れられていない。映像でも、そこがイスラエルであることを示すものはほぼ皆無。人々も、実にあっさりと敵国人を受け入れている。例えば、実は夫や息子が中東戦争で死んで云々とか、そういったエピソードが出てくることを最後まで期待していたのだが、結局何もなし。ぎこちなく、気まずい空気が全編を覆っているだけである。しかし案外これがリアルなのかもね。恐らくこれは不親切というより、良心的に寡黙と表現しておくべきなのであろう。主人公の隊長さんのごとくに。あるいはミニマルというべきか。まあストーリーはともかく、映像的にはなかなかのスタイリストだし、ワンカットも効果的だ。ジャームッシュとか、ヴィム・ヴェンダースが好きな人なら気に入るのではないだろうか。女主人と若者のエピソードには驚いたが、年輩者が越えられない壁も、血気盛んな若者があっさりと越えてしまうというあたりに、両国の未来が暗示されているのではないか、と私は解釈した。スイカの切り方がいいですね。 [映画館(字幕)] 9点(2008-01-12 02:19:08) |
31. グッド・シェパード
《ネタバレ》 くらーい作品である。画面も暗けりゃ、ストーリーも暗い。そして何と言っても一番暗いのがデイモン君。詩人志望というところからしてもう救いようがない。実は私も好きなんですが。その彼が何となーく言われるままにスカル&ボーンズに入社し、デキ婚し、OSSに入局して、CIAが創設されて云々、という話。しかしこの場合、優柔不断というより、ある種の虚無主義なのであろう。愛国心とか、ヒロイズムといった感情は皆無に見える。出世欲や金銭欲でもない。6歳にして父親の遺書を隠した時から、秘密と欺瞞に人生を捧げることが決まっていた、というのはル・カレの「パーフェクト・スパイ」的な解釈。スマイリーをもう少し邪悪にすると、ああいうキャラになるかな?あるいは家族や人間の絆を組織に求めたのか?「ゴッド・ファーザー」のスパイ版にして、「スパイ・ゲーム」の昔版。現代版は「シリアナ」あたりか。しかしジュニアみたいな甘ったれた若者をスカウトしてたら、そりゃアルカイダには対抗できんよね。ロバート・ベアさんが怒るのも当然です。マヌケな失態の数々も、重厚な演出のせいで笑うに笑えず、ひたすら恐ろしく、気が滅入る。確かに「ミュンヘン」のライターだけのことはある。エリック・ロスは「クイーン」「ラスト・キング・オブ・スコットランド」の英国人脚本家と何となく存在がダブるのだが、いずれにしても素晴らしい才能だ。キャストもえらい豪華である。ジョリ子にあんな風に迫られたら瞬殺だろうな。 [映画館(字幕)] 8点(2007-11-28 02:48:30) |
32. キングダム/見えざる敵
《ネタバレ》 基本的に「マンハッタン無宿」「ブラニガン」「フレンチ・コネクション2」「ブラック・レイン」と続く、異文化交流熱血刑事アクションの系譜に位置する作品といえよう。しかし今の時代、敵がテロリストで舞台がサウジとなると、無茶やって喧嘩して事件解決して仲良くなってハッピーエンドとはいかないようだ。犯罪捜査を基本にしつつ、ポリティカル・サスペンスの要素を絡め、対テロ戦闘の火力をぶち込むという荒業をやってのけた脚本はお見事。サウジの暗部に切り込み、セリフ一つでテロ戦争の不毛を表現したあたりが「ダイ・ハード」やら何やらとは一味違うところだ。もちろん脚本に負けず劣らず演出もいい。ハイウェイを疾走する黒塗りのRVを追いかける流麗なカメラワーク。臨場感溢れるブレブレなハンディカメラ。怒涛のカーチェイスとアクション・シーンにはぞくぞくした。ハイウェイで襲撃されるシーンの滅茶苦茶な編集がもうたまらん。戦闘の恐怖、銃の恐怖、テロの恐怖をまさに体感できる。「こっちは安全ですよ~」、ボーン。大佐役のアシュラル・バルフムさんもいいですね。プロローグもおしゃれです。体感アクションと知的スリルの双方を味わえる秀作である。 [映画館(字幕)] 9点(2007-11-03 23:51:04)(良:1票) |
33. ナショナル・トレジャー
《ネタバレ》 世界中を股にかけたとレジャー・ハントの話と思いきや、突然独立宣言を盗み出す話に突入するので、一体どうなるものかと心配したのだが、これがテンポもよく、謎解きも面白い良質な娯楽作であった。この企画にしてディズニーを引き込むあたりが、ブラッカイマーの敏腕たる所以なのであろう。確かに「?」の部分もいろいろあるが、メーソン、テンプル騎士団、独立宣言とこのテのネタが好きな人にとってはたまらない。ここまであからさまにメーソンのことを前面に出して大丈夫なのか?とも思ったが、恐らく前面協力なのであろう。ハーヴェイ・カイテルの指輪が憎い。彼は珍しくスマートな役だが、微妙にはまっていないのが笑える。歴史の浅いアメリカで、ここまで楽しい謎解きができるのであれば、我が国でも、と思うのだが、こちらのトンデモ系の人々ではまるっきり画にならないことはまず間違いない。向こうの人は何事においてもスマートで羨ましい。ヤッフーで検索してるのも面白い。しかし最初の暗号はどうやって解いたんだ? [DVD(字幕)] 8点(2007-09-21 15:23:32) |
34. 初体験/リッジモント・ハイ
《ネタバレ》 イーグルスやジャクソン・ブラウンなどのアサイラム系音楽が好きなので、以前から観たいと思っていた一作。プロデューサーの一人であるアーヴィング・エイゾフは、元々そのアサイラム・レーベルのプロデューサーである。音楽と映画の抱き合わせ商法は、本作が先駆けか?本編はノーテンキな青春コメディで、ストーリーも何もあったもんじゃないのだが、ぶつ切りの構成を音楽でつなぐ手法で、最後まで観れてしまうのが凄いところ。当時MTVが黎明期だったこともあり、意外とエポックメイキングな作品として、評価が高いのだ。キャストも豪華だしね。結構無茶やってるのに悲壮感がないのは、時代のせいもあるだろうが、これはやはり脚本のキャメロン・クロウにして為せる技なのであろう。「エリザベス・タウン」などを観ると、あまり成長していない気もするが、いずれにしても作品の随所に見え隠れするヒューマニズムとスウィートさが、他のエロ青春バカコメディと一線を画するところだろう。フィービー・ケイツは今どうしているのだろう? [地上波(吹替)] 8点(2007-09-13 23:04:13)(良:1票) |
35. ザ・シューター/極大射程
《ネタバレ》 タイトルとポスターは満点。しかし極大射程と言いつつも、主人公が実際にそのようなスナイプに挑むわけでもない。スナイプの細かい描写があるのは最初だけで、後半はセガール並みにサクサクと、実にあっさりと敵をスナイプしていく。そういう点でのカタルシスはあるが、キメの一発をビシッと決めるような緊迫感はあまりない。でもこの方がリアルなのかな?本来地味で陰気なスナイパーと派手なアクションヒーローというのは、相反するものだと思うのだが、マークはもうやりたい放題に両立させている。良くも悪くも70年代ノワール・アクションと、80年代ヒーロー・アクションの雰囲気が半々といったところだろうか。でもやっぱりセガールに一番近いと思う。このテのアクションは好きなので、結構楽しめた。裁判とか真実をどうのこうと言わずに、あっさりと殺っちゃうところも嫌いではない。FBI長官のセリフがいいですね。しかし悪役が、「お代官様」「お主もワルよのう」レベルなのが興ざめである。テンポとスピード感はあるが、この設定ならもう少し重厚なポリティカル・サスペンスにもできたはずである。監督は元々こういう軽いというか、微妙に抜けてるセンスなので仕方ないか。 [映画館(字幕)] 6点(2007-08-07 12:06:33)(良:1票) |
36. ストリートファイター(1994)
実は結構好きなんです、これ。今でもテレビでやってると、ついつい見てしまうのですよ。しかし著しく評価が低いのです。そもそも内容から言って本作は、ゲーム好きなキッズ向けの作品だと思うのですが、ゲーム好きの大きなお友達が、真面目に観賞して、評価を不当に貶めているという気がするのです。いやいや、ちびっこ向けでも多少無理があることはわかっています。安っぽいセットに、ださい衣装に、Bクラス俳優の大根演技は、キッズにとっても失笑ものでしょう。しかしゲームの設定に、独裁者のテロリスト、国連軍やステルス艦をぶち込んで、人質救出ものに仕立てた脚本は、見事というべきでしょう。何せ私なんて、人質救出というだけでアドレナリンが噴出して、萌えまくりですからね。ヴァンダムが演説をぶちかまし、上司の命令を無視して、ステルス艦に乗り込んで救出に向かうシーンなどは、もう感動的ですらあります。こういうベタベタぶりがたまりません。カイリー・ミノーグというのがまた、よくわからないけど絶妙なキャスティングです。独特の開き直りと、常人離れしたセンスと、突き抜けた爽快感が実に気持ちいい良作である。ゲームを知らないのが幸いしたか。 [映画館(字幕)] 7点(2007-07-13 03:33:10)(良:1票) |
37. 肉体の悪魔(1947)
《ネタバレ》 夭折の天才、レイモン・ラディゲによる不朽の名作の映像化である。よってあまり期待せずに観たのだが、そのせいかこれが意外にも良かったので驚いた。しかし原作のウリが精緻を極める心理描写で、映像で再現すべく果敢にもチャレンジしていたフシがあるが、やはり限界があるということもよくわかった。ジェラール・フィリップはとても美しく演技も上手いのだが、いかんせん16歳というには微妙である。それでも駄々をこねたりするシーンで、一瞬子供のように見えるのは、流石と言うべきか、やはり問題なのか。私としては、もう少し陰気で怜悧なガキの方が良かったと思う。それでも作品のメインテーマである、戦時中という特殊な状況とか、若さゆえの過ちといった部分は、映像やストーリーのあちこちに巧妙に織り込まれている。レストランで「ワインにコルク臭がする」と、ソムリエにクレームをつけるシーンが微笑ましい。しかし16歳のガキが目の前でこんなこと言い出したら、フツーはワインの瓶でぶん殴るだろうな。まあ恋愛映画という括りで捉えれば、主役の二人もいいし、メロウな雰囲気を充分堪能できる。原作のファンでも、観ておいて損はないであろう。 [映画館(字幕)] 8点(2007-07-13 03:28:06) |
38. クィーン
《ネタバレ》 有楽町で観たついでに皇居まで足を伸ばしたが、特に見るべきものはなかった。我が国の皇室もこのくらいはちゃけた姿を見せてくれた方が断然面白いのだが、まだまだ先になりそうだ。元々イギリスは市民革命の発祥国であり、王室の存在が、伝統と国民感情の微妙なバランスの上に成り立っているという事実を、改めて思い知らされる。国家と王室の危機を乗り切った、女王と首相の対応は見事と言うべきであろう。逆に保守党の首相であれば、あそこまで世論に迎合した対応はできなかったかもしれない。政治とは摩訶不思議である。この二人に比べて、周囲の人々がボロクソに描かれているのが面白い。女王の孤独と威厳を、あくまでスマートかつハートフルに描いたイギリス映画界(とイギリス人)の心意気は確かに素晴らしい。しかしそれ以上に私としては、毒舌の応酬と、威厳に満ちた野生の鹿を、一転して断頭台の象徴に仕立てあげる、ダークサイド表現に感銘を受けた。最後にレヴューついでに薀蓄を一つ。ラストで女王と首相が歩いているのは、ワデスドン・マナーの庭園で、かつてのロスチャイルド邸である。現在はナショナル・トラストが管理している。 [映画館(字幕)] 9点(2007-07-13 03:26:27) |
39. ラストキング・オブ・スコットランド
フォレスト・ウィテカーは、どんな役でも楽しそうに演じるのだが、本作はいつにも増してノリノリな印象である。何せ初登場の演説シーンからして度肝を抜かれる。あの地も割れんばかりのダミ声。人懐こい笑顔とユーモアのセンスには、誰もが惹きつけられることだろう。それがどこをどう間違えたのか、内に秘めた狂気がだんだんとエスカレートしていき、気付いた時にはもう遅いという次第。このじわじわ感が本当に怖いです。そういえばウィテカーは、「ハスラー2」でも、どことなく似たような役を演っていたな。史実を巧みに取り入れた脚本は実にお見事である。本作の後に「特攻サンダーボルト作戦」を観れば完璧であろう。ついでに「食人大統領アミン」も押さえておきたいところだ。元大統領は最近までサウジで生きてたんですね。大虐殺のシーンはないのだが(グロはある)、見えないことで逆に、その恐怖がじわじわと伝わってくる。そこに青年医師の、無自覚などうしようないダメっぷりが加わると、鑑賞後も長く、何とも言えないイヤーな感覚が残ることになる。他の作品ではあまり経験できない、複雑な感情を呼び起こすという点で、本作は優れた作品である。 [映画館(字幕)] 9点(2007-05-08 01:34:24)(良:1票) |
40. ブラッド・ダイヤモンド
《ネタバレ》 最後は少々できすぎという気もするし、結局「キンバリー・プロセス」の宣伝をしているわけであるが、この辺の大人の事情は察してあげましょう。レオ様のカッコよさには、女性ならずともメロメロになるに違いない。「俺を捕まえた振りをしろ」、パンパン。最高である(おいおい)。ジェニファーとフンスーもいいです。M4、ハインドヘリ、元32大隊の傭兵部隊、リアリズム系の派手な戦闘シーンには、戦争映画ファンもきっと満足するに違いない。三菱パジェロ、ふそうバスなど日本車の大活躍も印象深い。確認できなかったが、ピックアックトラックの中には、恐らくトヨタもあったに違いない。ゲリラにとっても、下手な武器よりよほど役に立ってたりしてね。そう考えるとデ・ビアズのみならず、日本企業にとっても案外他人事ではないのかもしれない。まあ自動車は武器やダイヤモンドとは違うのだが。そう言えばトヨタが南アに自動車を売って非難を浴びていた時代もありました。息詰まるストーリー展開、大迫力の戦闘シーン、感動の家族愛、カッコいいレオ様と、娯楽作としてハイレベルであると同時に、紛争ダイヤモンドと少年兵の実態、混乱するアフリカの現実を巧みに取り入れて、真摯なメッセージ性を両立させた脚本と監督の手腕は、お見事である。とは言え、鑑賞後の印象は良くも悪くも意外と軽い。これも監督のセンスなのか。ともかくエキサイティングで泣ける良質の社会派娯楽作であることは間違いない。男性の皆さんはぜひとも彼女と観に行きましょう。レオ様はカッコいいし、切ないロマンスもある。最高のデートムービーである。もちろん本当の目的は別のところにあります。TIA! [映画館(字幕)] 9点(2007-05-07 12:02:06)(良:2票) |