21. トロイ(2004)
《ネタバレ》 人間どうしの血なまぐさい戦いが古代から脈々と続いていることを眼の前につきつけられる。「後世に名を残したい」願いのある女神の子、無敵のアキレス。「勇者なのか愚か者なのか」戦い死ぬことはどちら側にもなりうるということもわかっている。最大の見せ場はアキレスとへクトルの一対一の勝負だった。肩を矢で突かれ運命を受け入れ死を覚悟したヘクトルの無念、胸をひとつきにされ息絶える終焉・・・しかし眼をとじたヘクトルの死に顔に監督は深い哀悼と美しき花をたむけた。1篇の詩のように、精神の気高さを余韻の残る一瞬の表情。勇敢なヘクトル、見事な死に様だった。無常観・残酷さ・無意味さ。その後アキレスの心境も変化する。勇者でも愚か者でもなくそこには悲劇あるのみ。見届ける女と王は慟哭し涙するしかない。その痛々しさと残酷さに私は愕然とするしかなかった。これが神話となり伝説となり吟遊詩人たちに語られ、現在に蘇る英雄伝の姿なのかもしれない…と映画は突きつける。哀しすぎる、たとえ「勇者」でも。幾千年の時を経て、語られる神話にはどんな現実が秘められていたのか思いめぐらすのもロマンなのだろうか。ところで小道具たち(文字とか神々や妖獣たちを具象化した壁画とか、儀式とか)があまり登場しなかったのが残念。でもラスト、小道具・・・じゃなくて大道具『木馬』が想像以上のディティールだったのが嬉しい。(あの首の曲がりぐあいが好き!)あれはオデュッセウスの策略だったとは・・・。 6点(2004-06-05 01:49:19)(良:1票) |
22. ロスト・イン・ラ・マンチャ
《ネタバレ》 私はこれを映画館で観てしまった。それはジョニーデップのポスターにひっかかった奴だからです(笑)ジョニーの出番は少なかったけど、でも観てよかった。私的には必見作であった。映画ファンの人は結構楽しめる(監督すみません…)内容だと思う。撮影わずか6日間に日替わりメニューのごとくハプニングに襲われ、とうとう撮影中止に追い込まれてしまっていた。そもそも見切り発車的で撮影すれば勢いで何とかなるぞ・・・みたいな感じであり、大作映画には商業的な一大プロジェクトとしての綿密な撮影プランがあると思っていた私は驚いた。監督の意気揚揚とした企画スタート時点と暗礁に乗り上げてしまった後の肩を落とすがっくり具合が寂しく哀しく、その傷みが凄くリアル。特にドンキホーテ役の俳優への監督の拘りが並み大抵ではなく、俳優交代はしたくない監督とスタッフとの信頼が壊れていく様が悲哀な物語以上だった。(ここに理想と妥協の舞台裏世界が展開されていた)私がなにより好きなのは、監督の映画愛とこまかいこだわりの数々、絵コンテ。この映画、どんな映画になるのか興味深々です。ギリアム監督の「ドンキホーテ」完成を祈ってます!! 6点(2003-11-20 22:50:42) |
23. 21グラム
《ネタバレ》 まるでポールの、霧に漂う幻とも思える記憶の断片たち。独白の「何回死ぬのだろう・・・」とは全編に閃くポールの「死」の暗示、カードのような断片だろうか。彼は心を刻まれて泣いている・・・。クリスティーナの「夫と娘たち」の死はみせていない。またジャックの奪った命もみせてはいない。狂おしい戻らない「過去」もない。「地獄はここにある」、そう、すべては心に。そして「未来」なのか「過去」なのか「現実」なのか、尽きかけた蝋燭の灯りのような混沌とした物語は錯綜する。ポールは「魂の重量」について触れる。それは彼のこれから失われる「記憶」のこと、なのかもしれない。 5点(2004-07-09 19:18:44) |
24. ぼくんち
どこかの島の小さな町という設定で、看板や町並みは懐かしさを誘うものでしたし大阪弁ということもあり、私の子供の時の大阪を彷彿させました。貧乏だけど、たくましく暮らす兄弟、姉、どこか妙な人々たちとのふれあいなど あたたかく惹かれる部分はあるのですが、残念ながらとても散漫な展開に感じました。テンポが悪いのです。笑いも間が悪かったです。ちょっと可笑しいなぁーというシーンも繰り返しが長いので疲れてしまいました。 4点(2003-12-11 21:43:46) |
25. ディープ・ブルー(2003)
まず最初に「画質が悪い!!」とはっきり言います。(期待が大きかったので、すみません…)これを映画というのは微妙です…映ってるものは凄いんですよ、うーんだから残念。私はNHKで放送されたBBC製作「海・青き大自然」(2001年)と「撮影現場から」(撮影秘話)を録画して何回も見ているほど、このドキュメンタリー番組は本当に素晴らしいと心から思っているのです。番組は45分間の8回シリーズでした。しかしまさか、2003年製作の本作のほとんどの映像がこのテレビドキュメンタリーから更に編集したものとは予想してませんでした。大スクリーンで迫力がありそうなものですが、テレビ用の画質なのか粒子が粗いのが目立ち苦痛でした。また背景がスカスカであったり、固体の美しさがピンボケのように滲んで浮き出ていなかったりと今の映画館でやるとは信じられないクオリティの無さを感じました。内容もダイジェスト版にテーマを与えるために相当力んでいるのが感じられました。音楽が自己主張してしまい、始終クライマックスのように壮大に盛り上がりすぎたのはとてもうるさかった。特に弱肉強食をショーのように派手に盛り上げるのは、大袈裟ですよ。波の音、水中の音に浸りたかった。それと感じ取れば良い事をいちいち「素晴らしい海の世界…」とかなんとかナレーション化するのもやりすぎでは。吹き替え版だったんでホント煩かった。ちなみにTV版は名前・場所・生態をわかりやすく解説していて、静かに楽しむ図鑑的な面白みが魅力だったのに映画版では失われてしまいました。編集は、結果が曖昧という中途半端シーンが多々ありました。映画として撮影されたものではないはずなのに、1度完成された内容をダイジェスト版90分に編集して、なぜ無理して「映像作品」として発表したのかホントに疑問です。●辛口ですみません。原因のひとつは著名人が多数絶賛しているちらしを観たから違う意見もあった方がいいかな~と思って。関西では東京から1ヶ月遅れの上映だったんでちらしに「日本で記録的大ヒット!」なんて書かれてるんだもん、くやしい…日本じゃねーみたいだ、ここ。というか、日本以外反応がわからない…モロ日本向けの作品なのかと思いそうなチラシだなぁ。有名オーケストラだし…。 [映画館(字幕)] 2点(2004-08-30 00:20:40)(良:2票) |