21. 羅生門(1950)
《ネタバレ》 3度目の鑑賞。ミフネ先生演じる犯人は、自分が殺したと主張。妻は自分が殺したと主張、志村喬演じる男が真相を最後に語るんですが、中々人間のエゴイズムを感じるというか、人間は皆ワガワガなんだなあと再認識。ミフネ先生は「グワハハハハ!」と、まるでDQN(笑)京マチ子は艶めいてて印象的。あと撮影が上手いなあって思いました。前進移動ってキューブリック以前にもう黒澤先生がガッツリやられてたんだなあって、改めて偉大さを思い知らされました。光と陰のコントラスト(人間の顔へのあて方が絶妙)、音楽の使い方(必要最小限!)、寄りの使い方、全てカンペキですね。 文学性は強いけど、決して娯楽性も失っていない。そこらへんが黒澤の凄い所だと思います。最後に羅生門に捨てられてた赤ちゃんを引き取りたいと志村演じる男が言った時、巻き込まれたくなかった故にウソの証言をしてた彼を疑う僧の台詞が凄く胸に響きました。この映画にハマりすぎると人間不信になりそうで怖いですね・・・。 [DVD(字幕)] 7点(2006-06-19 14:58:44) |
22. 十二人の怒れる男(1957)
《ネタバレ》 ヘンリーフォンダの存在感。1人で11人の反対意見に立ち向かい「疑わしきは罰せず」のスタンスで、法廷証拠の矛盾を突き1人また1人と陪審員の気持ちを無罪へ変えてゆく面白さ。回らない扇風機に夕立ち。差別発言を繰り返す3番へ注がれる冷たい視線。休憩中に繰り広げられるユーモアある台詞の数々。白熱する主張と反論。限られた閉鎖空間のみの展開でありながら全く飽きさせないシナリオ。弁護士が展開をひっくり返す映画は沢山あれど、一般庶民(建築士!)である陪審員が先入観を取り払い、疑問を投げかけ無罪を決めるこの映画のスタンスは、まさに民主主義であり本当に心地良い。またこういう映画って普通12人の陪審員の内、数人だけが目だってあとはオマケみたいな感じになりがちですが、この映画は個性豊かな12人が見事全員存在感がある。本当に凄いエンターテイメントだと思う。冒頭で退廷の際に映る被告の目が何とも切なげで、すっかり観客側を同情させてしまうあの演出から、すっかり気持ちはフォンダ頑張れになる所もわかりやすくて好きです(笑)あと終了後に法廷を後にする際、初めて名前を言い合う8番と9番。また疲れ果てた3番が階段を降りる姿等、全編が1つの映画の線になっていて観終わった後、本当に爽快な気持ちになれます。限りなく10点に近い9点を献上します♪ [DVD(吹替)] 9点(2006-01-30 11:17:03) |
23. 情婦
文句なしの大傑作!先を読もうとせずにストーリーを同じ時間で追って観られた平凡な人間だったからこそ、ラストのどんでん返しに「うわっ!」と驚けたと思うし、そんな自分に心から感謝。製作から50年近くも経つのに時代の全然先を行ってたビリー・ワイルダー監督の感性は今なお通じるものがある。本当に凄いの一言。 [DVD(字幕)] 9点(2006-01-16 12:34:55)(良:1票) |
24. 突撃(1957)
反戦映画としても勿論傑作ですが、88分という短い尺の中で、映画の中に必要な最小限のシーンだけで構成されているので映画自体も本当に完成度が高いと思います。ただキューブリックは反戦のメッセージは伝えているものの、カーク・ダグラス演じる大佐や、銃殺される3人に対して感情移入をわざとさせないような撮り方をしている気がした。だからこそ「神の視点」と呼ばれるのかなもしれないなと思いました。ただ、ラストの捕らえられたドイツ人女性役(クリスティアーヌ)の歌声や、あのシーンを観てて伝わってくる何とも言えない気持は、とても冷徹非情と呼ばれたキューブリックの撮ったシーンという感じはしない。だからか、観てて辛くなるシーンが続くこの映画もキューブリックファンとしては繰り返し観たくなるのかもしれない。 ジェラルド・フリードのドラム音を中心とした音楽も「非情の罠」「現金に体を張れ」と同様で初期のキューブリック映画との相性の良さを感じました。 [DVD(字幕)] 8点(2006-01-14 23:52:39) |
25. ローマの休日
15歳の時、当時の水曜ロードショーで何の気なしにかかってた映画を観たのが始まりだった。それまで映画に全く興味の無かった俺は「ローマの休日」の白黒映像にのっけからやられた。観衆に手を振るアン王女の美しさ、日本とは別世界のローマの高貴な街並み。男くさく自分とは正反対のナイスガイ。王女と新聞記者の禁断の恋。全てが斬新で全てに魅了された。「こんなに映画って美しいのか」と思った。このショック、この時の感動は今もなお忘れる事はない。それから暫くして誕生日に「ローマの休日」のビデオを買って貰った。字幕でノーカットで観た最初の感想。これがオードリーの声なのか、バイクのシーンはこうなっているのかあ、などカットされてた部分が自分の頭の中に吸い込まれていき、また別の感動があった。 そして、それから12年、、、。ノイズや音声全てが修復された決定版がついにDVDになった。涙が出るほど嬉しかった。こんなに素敵な作品は他にない。俺の映画バカの原点はここ。「いまを生きる」のラストで声を出してまで号泣した事や、「ショーシャンクの空に」で何度ラストを観ても鳥肌が立つ事も、「ニューシネマパラダイス」の晩年のトトが、キスシーンを繋げたフィルムを見て感動するシーンで一緒に泣いた事も、全部全部ローマがあったから。だから俺にとって、生涯のナンバー1は「ローマの休日」と誇りを持って言える。100点満点を付ける映画は何本かあるけど、120点という、絶対にあり得ない点を付ける唯一無二の作品。 最後は切ないけど、あの切なさも心地いい。本当に愛し合ってお互いが立場をわきまえあって、思い出として心に残す。直接的に公でそれを言えない2人が「間接的」に「1番好きな場所は(病気だと公式コメントしたにも関わらず)ローマです」と言い、「王女の望む友好の気持は、決して裏切られる事はないです」と間接的に「2人の思い出は絶対に表に出さないよ」と伝えた新聞記者のジョー。最後のプレス会見の時、最初にジョーが目に入った時の「なんでいるの?」っていうアン王女の表情が、また会えて嬉しいけど切ないわって表情に変わり、最後は笑顔でお別れをする。あの1場面だけで彼女の色々な表情が見れる。俺は多分もう100回以上はこの映画観てるけど、じじぃになるまで見続けたいと思う映画です(=^^=) この作品に出会えて本当に良かった…。 [地上波(吹替)] 10点(2004-09-22 19:04:40)(良:11票) |
26. 現金に体を張れ
犯罪映画は非常にこの時期多かったみたいですが、ダイナミックなカメラワークに、5人の犯罪グループが同じ時間にそれぞれがどのような行動をしていたかを克明に描き出し、見事です!熱い男、情けない男、強欲丸出し女、利用される男、人間の本能丸わかり正統派スリラーなのであります♪ ジェラルドフリードの音楽も◎。終わり方もカッコイイ!! 8点(2004-09-22 18:45:19) |
27. 渚にて
内容はひたすら、残りの寿命をまっとうする人類の生き様を描いたドラマ。メンバーも凄い。グレゴリーペックは既に大スターでしたが、その他にもエバガードナー、名優フレッドアステア、アンソニーパーキンスと豪華!内容はひたすら切ないし、刻々とその時が迫る人類の無力を感じます。 もし、人間が人間の力で地球の生命体の存亡に終止符を打つとしたら?皆自国を守るためとかいって核を保有したりしてますが、自国を守るより地球を守ろう!と感じてしまう秀作なんです。 5点(2004-09-22 18:39:45)(良:1票) |
28. 非情の罠
《ネタバレ》 67分の物語。日本初公開時は43分。切られたであろうおそらく暴力的なシーンはどこだか検討がつきますが、オリジナル完全版しか知らない私にとって、どうせ43分にするならもっとテンポ良く全体を進めた方がいいのでは?というくらい、ある意味キューブリックらしくゆっくりな展開です。 しかしながら目を見張るシーンも非常に多い。ボクサーが悪夢にうなされるシーン(ネガ反転映像が、高速で街中を直進するシーン)は、「2001年宇宙の旅」に出てきたスターゲイト突入のシークエンスを思い出すし、光と影のコントラストも、カメラマン出身のキューブリックならではの芸術的センス。ボクシングシーンも、スコセッシの「レイジングブル」や、タランティーノ作品に影響を与えた事は必至で、翌年の「現金に体を張れ」でより浮き彫りにされる事となります。最後の格闘シーンは、ビルの上を噂では許可を得ずに撮影したとか?マネキンのあるラストの格闘も実に大胆な構図でカッコいい! 「金が無いならアクションかサスペンスを撮影しろ」という時代に、今までに無かった大胆な撮影法で映画界に挑戦状を叩きつけたとまで言われた「非情の罠」。キューブリックの原点たるこの野心あふれる作品を、お時間がある方にはお薦めします。 [DVD(字幕)] 6点(2004-09-22 17:57:53) |