21. TRICK トリック 劇場版2
トリック満載ながら穴だらけの脚本にあえて突っ込まず、そのまま出演者のアドリブと演出のオフザケで観客と一緒に笑ってしまえ、という、とことんすれっからしの楽しみ方だが、それを演じているのがとんでもない美男美女という点で、ゴージャス感が出てすごく魅力が出たシリーズと思う。バカ脚本なので役者・演出が肩の力を抜いて好きなようにやれ、奇跡的にいい具合にそれぞれのアドリブがミックスされて、すごく独創的で面白いアベックキャラが造形できたと思う。せっかく作ろうとしてなかなか作れない人気キャラができたのだから、脚本にもっと新しい人材を加えて新しいプロットを考え出していけば、さらにドル箱にすることも可能なのにそうならず、乾いたぞうきんを無理やり搾り出したような既視感丸出しのストーリーで、残念な結果に終わった。お金をかけないでも、とにかくこの二人で作れば、そこそこ稼げるだろうという安易な発想でお手軽に作られた映画と思う。この監督はこういうテレビ局側の都合にほいほい乗って、器用にまとめ上げるから、重宝されて作り続けられるのではあるまいか? [DVD(邦画)] 4点(2007-08-29 20:28:35) |
22. LOVERS
《ネタバレ》 変にひねらず予想通りの展開にしておけば、映像はきれいだし、衣装はいいし、最高の美男美女だし、で、普通にもっと愛される映画になっていたと思います。何が目的で今までそんなことやってたんじゃーというあまりにもの展開と、何でもありだ、と言わんばかりに開き直ったようなファンタジーなラストに、感動するどころかしらけるばかりでした。物陰からいきなり殴りつけるようなドンデンで観客を突き放し、秋から冬へ一気に変化させるウソっぽさで、悲劇の必然性を台無しにしている。観客の気持ちを操作してやろう、という意図を感じさせては観客はしらけるしかない。 ウソで始まった恋が本物になって、組織と情に引き裂かれる恋の悲劇、というそもそも表現すべきだったテーマに対してすべての表現が従属してこそ感動できる映画になり、美しい絵が輝くはずだったのに。 [DVD(字幕)] 5点(2007-08-25 13:40:02)(良:1票) |
23. ミラーズ・クロッシング
すれっからしのクセに弟思いで妙に純情なところもある、ギャング達の中で全然たじろがないヴァーナの腹の据わった強い女性像が印象的。ジョンタトゥーロの相変わらず強烈に異質なチンピラ像、叩き上げで強欲なイタリアマフィアのボスも本当に実在しそうなド迫力。他のギャングの手下達もいかにも渋いそれらしさ。とにかく主人公であるはずのトムの印象が薄くなるほど、回りに登場する人物像がどれも個性的で濃く多彩。ギャングの世界を描きながら美しく、本当にクールな映画。 [DVD(字幕)] 9点(2007-08-24 20:47:32) |
24. 仁義なき戦い 代理戦争
平均点ベストランキングがすごい高得点で期待して観て見ましたが、この点数はなんかの陰謀では??? ひたすらガラの悪い男達がひたすら凄んで、しかしやってることは神戸のコワモテ組織のカサを着て相手を支配しようとしたり、顔役にとりいることで破門に追い込んだりで全然たいした事をしてないし、権謀術数ちっとも面白くない。メインの抗争(?)ストーリーとさしてかかわりの無いところで、作り物っぽい血の出入りシーンがあるだけでそれも強烈な音楽で煽ってるだけで特に工夫があるわけでもない。小林旭かっこいいけど何もしないし。陰謀が渦巻いて二転三転しながらものすごくリアル、強烈な銃撃シーンのギャング映画ミラーズクロッシングの足元にも及ばない。 [DVD(邦画)] 3点(2007-08-18 00:42:35) |
25. ボーン・スプレマシー
スパイ映画の中に官僚機構としてのスパイ組織をしっかり説得力を持って描いた点や、何も特別なものを使わずに相手の居室を調べ上げたり、手じかにある普通のものを創意工夫で武器にして難局を切り抜けるリアリティのあるキャラクター像が新機軸だと思います。組織に命令されて何でもやらざるを得ない一兵卒のボーンが、その気になって反撃すれば組織の総力を遥かに上回っている点がスカッとするし、それだけで終わらずあくまで個人の良心にもとずいて行動しようとする点が単なる娯楽作品に終わらない感動を与える。構成員による個人悪で暴走する組織と、個人の良心の対決という現代社会が抱える今日的テーマを扱っていると思います。娘に告白したからといって何が変わるのか? といくらでも危険を冒さないで済ませる言い訳が可能ですが、とにかく実質何も変わらなくてもできることを精一杯やる、というのがこの映画の答えなのだと思います。 [DVD(字幕)] 10点(2007-08-08 13:50:30)(良:2票) |
26. 007/カジノ・ロワイヤル(2006)
ジョーズが大ヒットすれば人間ジョーズを出し、スターウォーズが大ヒットすれば宇宙に 飛び出し、と時流に合わせて美女、ハイテク兵器、高級車、観光名所、ゴージャス趣味の お約束パターンで驚異の長期シリーズ記録を更新中の今回の趣向は、大ヒットスパイ映画 ポーンスフレマシーのリアル路線。リアル路線とはいえお約束ははずせないのであくまで もそれなりのリアリティですが・・・。007が服を着るといまいちフツーのおっさんぽい 点が特にリアルかも。(スパイの仕事はいるだけで目立つようではNGだし、駐車場の係りに間違えられるくらいが正解か?)。強烈な外観インパクトがない分アクションで頑張った点は好感が持てる。しかし有能だから何でもできてしまうぜ俺がやることに失敗はありえないぜ他の国や組織なんて俺の思い通りに何をやってもいいんだぜ、という自分の能力や目的に対する極端な自信過剰が倣岸不遜すぎて、同じようなことをやりながらも天性のおおらかさや余裕を感じたこれまでの映画的いい人ヒーロー像と違う点が気になった。役者が醸し出す酷薄な雰囲気に合っているといえばそうなのだが、これで観客に応援しようという気にさせるのか?映画としてはなかなかの出来で、少なくともMI3よりは面白い。 でも二人のうちどちらかが死ねば、大金がふいになるのに平気で道路にヒロインを放り出した素晴らしきおバカな犯人はいまいちか。 [DVD(吹替)] 8点(2007-08-08 13:18:15) |
27. マトリックス リローデッド
たぶん前作を観ていない観客を完全に無視した続編の作り方は、本作が初めてではなかったかと思います。でも既にDVDの普及で、前作を何時でも観れる環境になっていたから、それで全く問題ないのです。これは当時として続編映画作りのコロンブスの卵だったと思います。そして評判だった前作以上に制作費をかけ、VFXを発展させ、話をスピーディーで難解に深化させ、つまりすべてにおいて前作を上回っているのがすばらしいと思います。単なる娯楽SFアクション以上の余韻を残し、いろいろ考えさせる終わり方も私的に好みです。劇場で観ただけではかなりわかりにくいが、たぶんDVDで繰り返し観て考えてね、というのが狙いかと。そしてこれがネット時代の新しい楽しみ方の方向とも思います。同様のコンセプトが押井守のイノセンスなのでしょうが、こちらは根本的に眠くて見続けられない点がマトリロとの決定的な違いです。 [映画館(字幕)] 10点(2007-07-31 23:53:08) |
28. リベリオン
某レンタル店でマトリックスより面白い!とキャッチが書かれておりまして、マトリックス好きとしてこれは観ずにおれません。 制作費、SF世界観、、映画的斬新さ、どれをとってもマトリクスの足元にも及びませんがただ、ヒーローのラストの怒涛の最強ぶりは、ほとんどスミスにやられてばかりのマトリックスより数倍スカッとしてカッコいい。そもそも的に当てるためにはガンは的にあわせる以外なく、型など全く無意味なはずですが、演技力のある役者が、大真面目に大見栄をきって見事に成立させたチカラ技は観ていて楽しい限り、これが娯楽映画というものです。こどものココロを大切にしてしっかり作ったと思います。制作費の制約からほとんどのシーンは現代建築やら現行車両をほとんどそのままそれっぽく流用していますが、よく工夫して安いなりにうまく撮っていると思う。日本の剣道がベースなのもプラスポイントです。 [DVD(字幕)] 8点(2007-07-31 23:23:28)(良:1票) |
29. 鉄コン筋クリート
《ネタバレ》 テレビCMの疾走感と、こちらでもなかなか評価が高いということで期待してみたのですが、感動というわけにはいかなかった。空を飛びまわったり、殺し屋が満員の遊園地でいきなり銃をぶっ放しながら子供一人を殺そうとしたり、警察はひたすら孤児の世話をするだけだったり、やくざが脅されて簡単に親分を殺したり、とってつけたようなハッピーエンドだったり、なんか設定が見事にご都合主義でまじめに見る気になれない。ルパンでもハルヒでも設定はトンデモだが、それらはトンデモが面白い方向に作用してアニメならではの面白さに昇華しているのだが、本作は妙に生活感に懲り、基本ストーリーが街の再開発に対する老人の反感やら街のダニみたいなガキと新興ヤクザの縄張り争いのようなもので、ご都合主義アニメのくせに夢も若さもないし共感もできない。CGをばりばりで使いながら全部手描きで描き直してCG感を全然ださない画作りとアジアンテイストの日本風景はオリジナリティ有り評価できるがそれだけだった。監督はこの手法でアニメを作りたいがためにデフォルメしてごまかしが効く松本大洋のマンガを選んだのではあるまいか? [DVD(邦画)] 4点(2007-07-16 20:29:00) |
30. 親切なクムジャさん
《ネタバレ》 キリストもびっくり、天使のような親切を『武器』に他人を操ってしまう聖女とも、悪女とも見える、実は直感的で本心に忠実なだけの女のユニークな復讐劇。このストーリーの面白さは、現場検証で結び目の形に凝ったり、釈放されて指を切ったり、銃の装飾に凝ったりの天然直観型の主人公のユニークさにある。唯一の武器の『親切』で復讐の手がかりとなる人脈を組織し、自らの手ではできない復讐も、被害者家族への『親切』で果たしてしまうという、定型を超えた手段のユニークさにあると思う。ところが犯人を拘束してから主人公は脇にまわり、群集による残酷コメディ劇に変貌し、それが妙に長いぐだぐだの展開で主題を拡散させてしまったと思う。命には命をもって償うべき犯人の殺害主導に必要以上に凹ませたのは、前半女ボスを明るく毒殺した彼女の性格描写と整合しない、偽善的でメロドラマ的なものだ。復讐後に主人公が泣く描写を強く要求したイ・ヨンエ(コメンタリーによる)は、分かりやすく定型的な善人描写に固執することで物語の主題を拡散させてしまったと思う。 主人公の道徳観は内心のもので世間の掟から自由だから魅力があったはずだ。復讐を果たした後のケーキパーティも、求心力がなく無駄に長いが、これもイ・ヨンエと凄惨な復讐劇との関係の中和が目的ではないかと妄想した。 しかし清純派大スター(俳優でなく)としての大きな制約があったとはいえ、彼女が演じることで、主人公に説得力も魅力も面白さも出てきたのは間違いない。 [DVD(吹替)] 7点(2007-04-28 15:38:36) |
31. 2001年宇宙の旅
作者が全部わかって作っているのは芸術作品ではなく商品だ。言葉で簡単に説明できるということは、つまり新しい概念を含まないということであり、新しいものに挑戦しなかったということだ。人に無限の概念が理解できないように、経験できない宇宙の真実は理解できない。しかしそれについて芸術的直感を頼りに、理解できないまま映像化を試みることは、芸術家には可能であり、そのわからなくても表現していく行為の積み重ねこそが人類を進化させてきたのだ。わからなくても表現していく精神こそがが進歩の鍵だ。この当時に、スターウォーズのような作品でなく、こんな一般受けしない脚本にこれだけの制作費を投資して宇宙そのものを表現しようとしたアメリカの映画産業の懐の深さに驚く。しかしこの一歩により、どれだけ多くの宇宙科学者、宇宙技術者、宇宙物理学者がこの地球上に出現したか? そしてSFXを進化させ、後の米映画産業を隆盛させたか。人類を進化させるモノリスとはこの映画のことだったのだ。だからモノリスの縦横比率は映画の画面と同じなのだ。■ラストの私の解釈は、人類の次の進化は「時間と空間が別の体系で共時的に意識とつながる」というもの。その段階に達しない限りその概念は理解できず、つまり現人類には理解できない。共時的体系なので言語化、映像化はできない。その進化は有機体同士の対立、有機体と無機体の意識の対立(人間 vs HAL)を越えた果てに訪れる。 [DVD(字幕)] 10点(2007-04-27 21:52:19) |
32. オールド・ボーイ(2003)
この濃さは何?!!びっくりしました。これが韓流のパワーか、と。しかしこれ以降何本も韓国映画を観たが、この作品ほどの衝撃は感じなかった。この作品には、強烈なパワーと魅力があるが、それは、一番おいしいのは腐りかけの肉だ、というような危ない魅力だ。後味は最悪、むしろ観ないほうがずっと心安らかにいられたと後悔したくなる毒のある映画。それでいてこの監督の作品を追いかけたくなるのは、並外れてリアルで濃い強烈な刺激に魅かれるからだろうか。一気に引き込む始まり方、赤と緑と黒で構成する濃密な画面構成、斬新な闘争シーン、心に残るセリフ、クラシック音楽、鬼気迫る演技、謎解き、思いもよらない衝撃のラスト、すべてが渾然一体となって強烈な体験を作り出している。 [DVD(字幕)] 8点(2007-04-21 02:04:27) |
33. トゥモロー・ワールド
それがなければ生きる意味そのものがなくなるほど大切なものであっても、どこにでも数多く存在するものは、その大切さが忘れられがちになる。人の子も、金銭の多寡で序列をつける価値観で見ては、全く大した物でないが、子供こそ、よりよく生きようとするために必要な「希望」や「勇気」を与える、何物にも代えられない大きな価値があり、社会の崩壊を防いでいる。その忘れられがちな価値を、子供が生まれなくなった近未来という設定でクローズアップして、激しく感動させる映画にまとめ上げた。その一点に焦点が当たっており、総てが実にリアルなため引き込まれ、道徳的なテーマにも関わらず全く説教臭くなく、わざとらしくなく、映画として素晴らしく面白い。 大勢が子供のために自分の命を喜んで犠牲にしていくこと、緊迫感のある戦場で、命がけで戦う兵士達の総ての行動を止めさせるところで大きな感動を呼び、ラストの静かな終わり方も、この大きな感動を淡々と収束させて微かな希望で終わる。これだけ良質の感動を与えてくれる映画はなかなかない。 [映画館(字幕)] 10点(2007-04-20 01:44:49) |
34. 殺し屋1
《ネタバレ》 浅野忠信を垣原にしたのは映画としての華やかさが出てすごくいいと思うのだが、それであれば垣原の強さを印象付けるシーンをしっかり作ってあげないと、コワモテのヤクザ組員達がびびって彼に従う説得力が出ず、イチとの対決も盛り上がっていかない。ラストは垣原が耳に針を突き刺してから墜落して死ぬところまでが、垣原のこうあってほしかったという夢なのだろう。(だから額の傷が消え、それを確認したジジイは悲しそうに荷物を置いて退場する)ジジイは吊るされて終わり、子供は外を行くところが現実に起こったことなのだと解釈できる。血しぶきや臓物は派手すぎてお笑いの域、CGが頑張っている。三ヶ国語を操る香港女優が、英語まじりで私は立花ですというばかばかしさは大笑い。見事に歌舞伎町の無国籍性を表現している。キルビルやらオールドボーイやらいろいろ海外の作品に影響を与えている怪作。 [DVD(邦画)] 7点(2007-04-14 03:59:58) |
35. ホステル
なかなか辛口の超映画批評サイトで満点に近い評価をとっていたので、この手の作品はまず見ないのですが見てみました。もとより映画賞をとるような作品ではないですが、エンタメとしてすごく良く出来ていると思いました。90分テンポ良く進み、凄惨な中盤から緊張しっぱなしで、にもかかわらず見た後の爽快感、満足感はさすがです。麻薬と飾り窓の女のアムステルダム、世界で嫌われ者のアメリカ人、どこにでも行きそうな日本女子二人組みの旅行者などさらりとリアルな設定、これならマフィア支配の東欧の田舎で本当にありそうな感じです。殺される相手をとことん悪辣に描いておけば、殺し方が悲惨で残酷なほど、後味がすっきりするものなんですね。 [DVD(字幕)] 8点(2007-03-17 18:12:47) |
36. 25時(2002)
《ネタバレ》 逮捕されても起訴、裁判、判決までは保証金を払えば自由でいられて、判決後に刑務所に入る最後の日を描いた映画。莫大な保証金は父親がバーを担保にして支払っている、ということが描かれていないので、ラストの夢の父親の愛情の重みがもうひとつ伝わらないが、それでもリアルな男同士の交流には引き込まれ、十分に面白い。特にラストのナレーションと荘厳な音楽の中で描かれるまっとうな生き直しの夢は感動的で、でも夢でした・・で終わる絶望感は強烈。しかしNYだけでも大勢いるはずの刑務所に収監される、というちっぽけな自業自得を、ここまで荘厳な音楽の中で大悲劇のように描くのがもう1つ疑問だ。もっと悲惨で理不尽な悲劇はNYだけでもたくさんありすぎる。さらに主人公が恐れているのは、刑務所で男に襲われる恐怖がメインで、これは米映画でよく描かれるが、本当のことなのだろうか。こんなことが放置されているなら、実刑は一ヶ月も十年もたいして違わないくらいの重罰になり、人権問題になっていると思うのだが? 私はハリウッドの犯罪抑止策への協力プロパガンダと思っている。 [DVD(吹替)] 7点(2007-03-16 21:36:58) |
37. GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊
《ネタバレ》 【ネタバレあらすじ】プロジェクト2501で外務省は情報工作プログラムを作る。しかしそれはネットの海で独自のゴーストを発生させる。外務省プログラマーはバグとしてそれをネットから隔離するが、隔離されたプログラムは人形使いと呼ばれるハッカーになっていく。あせった外務省は人形使いを回収しようと躍起になり、真相を隠して9課を巻き込む。そんな中、外務省の依頼で、草薙は2501のプログラマーの亡命を阻止する。次に通訳にハッキングしようとしたた人形使いの行方を追跡するが、捕獲できたのは操られたダミーでしかなかった。その後人形使いはネットの中に追い込まれ、義体製造社にハッキングして義体を自ら製造、その中に入る。義体はトラックに破壊され9課へ収監される。そこへ外務省から部長と研究者がやって来る。ところが彼らは三人の光学迷彩で透明化した兵士を伴っていた。外務省は義体の中には人形使いがいることを告げ、義体の引渡しを要求。その時義体の中の人形使いは自己起動し「生命体」として亡命を要求する。これを見た透明兵士達は義体を奪って逃走、旧市街の廃屋に逃げ込み、戦車で義体を死守しようとする。草薙は単身戦車と対決、ぼろぼろになりながら間一髪でバトーに救出される。その場で草薙は人形使いにダイブ、人形使いの狙いは、似た者同士である草薙と融合し、自らは死にながら子孫を残すことで進化、より強力にネット界に存在できる本物の生命体になることだった。融合することで自分自身がなくなることを危惧する草薙だったが、人形使いから「人は絶えず変化するし、自分自身であろうとする執着は自分自身を制約するものだ」と口説かれ融合を承諾。融合直後、情報工作の暴露を恐れる外務省の武装ヘリに二人の義体は破壊されるが、草薙の脳殻はバトーがかろうじて確保、20時間後に自宅で少女の義体に再生させる。生命意識の上部構造にシフトした草薙はバトーの「ここに残れ」という誘いを拒み、広大なネットの海へと向かっていく。 ■イノセンス以来この監督の作品は敬遠してたのですが、こちらは深い内容の哲学エンタティメントでした。脚本家がいいのか? 記憶や生命哲学をみごとにネット時代のコトバで再構築し、さらにエンタティメント化、視覚化、示唆的な壮大な進化ストーリーにまとめています。この映画は世界の映画作家たちを上部構造にシフトさせるくらいの、先端的な意欲作だったと思います。 [DVD(邦画)] 10点(2007-03-09 15:01:27)(良:1票) |
38. スチームボーイ STEAM BOY
鉄でできたパイプやバルブでスチームを制御して空を飛ぶという、要するに出力だけを見て生み出すものの重量を無視する絵空事で壮大な物語を作っても、いまどきそんな妄想エセ科学に素直に興奮できる人は少ないだろう。反重力というオカルトなら現在の科学常識と競合しなかったと思うが、機械美そのものがキモなので、中途半端にリアルになり、ラピュタのわくわく感や夢がない。大友ブランドに目がくらんで、出発点で根本的にずれている科学リアリティ、そもそも現在のアニメターゲットに存在しない機械ノスタルジーのために大金をつぎ込んで、最後まで作りあげてしまった。作っている途中で根本的な無理に気がついてまとめる意欲をなくしたのか、無人島に漂流したようなかっこうの爺さんが出てきてからは、全ての登場キャラのリアクションが常軌を逸しはじめ豪快に破綻する。ロンドンは大破壊され瓦礫で死人の山であろうはずなのに何やら子供は大はしゃぎしているし、ロンドン大惨事のさなかで少年少女は何やら初恋チックだ。 [地上波(邦画)] 2点(2007-03-05 14:06:03) |
39. イーオン・フラックス(2005)
《ネタバレ》 いつまでも鎖国して同じ人間達同士で同じことを延々と繰り返しているんじゃねぇ、閉鎖して新しいものを生み出さない生などに生きる価値はねぇ とばかりに、南アフリカ出身の黒人のプロポーションを持つ白人女優が、髪を黒くアジア風ショートカットでさらにハイブリッドにした未来風忍者に扮して、完全統制同質循環ユートピアの兵士達を桜吹雪の中で殲滅します。 これは規制ばかりして自由にダイナミックに生きることを否定し、従順な仲間内だけで固まり異種の存在を受け入れない日本文化への批判です。だからこそこの映画の未来観はどことなく日本的なのです。 特に例えば「忠臣蔵」みたいに、同じ設定で延々と趣向だけ変えた安全で予定調和の映画を飽きずに作り続けて、進化が止まっている日本映画界に向けたメッセージ映画なのだと思います(笑)。でもこの箱庭風なクリーンで抽象的で潔癖な未来世界観は、日本人だからか結構好きです。薄汚いものをこてこて付け加えれば、それらしくなってごまかしが効く主流になったブレードランナー的ごった煮未来世界観から、センスがなければぶち壊しになる、なかなか困難なクリーンでエレガントな引き算的グッドデザイン未来世界観に挑戦したのがプラスポイントです。 [DVD(吹替)] 7点(2007-03-02 17:02:05) |
40. ジャッカル
ヤサ男のローテク職人狙撃に対する、マッチョのハイテクかず撃ちゃ当たる物量狙撃という、いかにも現代アメリカの考え方を示した仏版ジャッカルからの変化を見るのが面白い。もともと面白い設定をうまく換骨奪胎して現代ハリウッド娯楽対策にリメイクしたと思いました。リチャードギアの「テロリスト」は自分は独立戦争の兵士として戦っただけなのだから、暗殺阻止に協力したら釈放して国に帰せと要求します。 そして暗殺阻止に活躍した「テロリスト」を、局長が個人的に釈放してやるのですが、今(2007)見るといろいろ感じるものがあります。 つまり米独立戦争時の反乱軍、独占領下での仏レジスタンスも当時の英独から視ればまさにテロリストとであり、実際にそう呼ばれてましたが、無事独立を果たしてからは建国の英雄です。実はこの映画はテロリストという言葉の、別の方向から見た意味を考えるように、ささやかに要求しているのです。お金(油)のために大勢の犠牲者を巻き添えにして平気で殺す人間こそ本当の悪なのです。 [DVD(字幕)] 7点(2007-02-28 17:34:41)(良:1票) |