381. 地獄の黙示録 特別完全版
《ネタバレ》 【ウィラード】諜報部隊の暗殺要員。故郷では歓迎されず、妻と離婚、戦場に戻るが、戦争の偽善と欺瞞を知っており、精神を病んでいる。カーツ暗殺を命じられるが、戦争の実態とカーツを知るに従い彼に同情し、心の平衡を保てなくなってゆく。カーツの分身でもある。 【カーツ】エリート軍人で、実績も申し分ない人物。戦地で恐怖と狂気を体験し、魂を病む。ベトコンが躊躇なく子供の腕を切断するのを見て、恐怖の克服の仕方を学ぶ。倫理や道義心など捨ててしまうことだ。それに気づいたとき彼の心は自由となり、軍隊を離れ、王国の支配者となる。そこでは彼は神のように振る舞い、処刑された死体がごろごろ転がっている。生と死の境が曖昧だ。一方で苦悩が消失したわけではない。そこでウィラードに自分を殺させ、自分の物語を息子に伝えてくれることを願い、それを演出する。彼にとって自分の死も取るに足らない。魅力的ですらある。 【感想】戦争はどうして止まないか?それは戦争に美しさがあるからではないか。その命題を誠実に追求して完成させた作品。◆ウィラードが前線に到着してからわずか10分足らずで戦争の凄まじさ、悲惨さ、凶器を表現出来ている。監督の力量に脱帽。キルゴアはカーツの対極にある人物。狂気に苛まれているのは同じだが、戦争を楽しんでいる。まだ心の均衡が保たれている。奥地に進むに従い、狂気と混乱が増す。指揮官が居ない前線、もはや誰と戦っているのさえ不明な混沌。正義も大義も無意味だ。兵士たちは戦争に踏みにじられている。農園を守るフランス人は、自らの正当性を主張するが、すでに敗北は決定している。ウィラードの部下も精神を病み、次々と脱落してゆく。カーツの王国は原始的社会。神話が生きている世界だ。カーツ暗殺は、牛を捌く儀式と並行して描かれる。すなわちカールの死も神に捧げる儀式。カーツが死んで神話が完成した。それが「Apocalypse Now(現代の黙示録)」◆戦争の美しさとは何か?神と一如となる体験かもしれない。人間にその原初的な誘惑があるからこそ、戦争は潜在的に魅力的で、無くなることはないのだ。反戦のための映画ではなく、戦争が存在する根源的理由を抉り出した問題作。戦争の美しさは、導入部のナパーム弾と音楽でエレガントに表現できている。監督の狂気だろう。だが心の平衡を保つためには、時に狂気に触れてみるものいいかもしれない。 [ビデオ(字幕)] 9点(2011-02-14 14:09:56)(良:2票) |
382. 疑惑の影(1943)
《ネタバレ》 ワルツの場面から一転、乱雑な裏町の様子が映し出される。陰鬱な顔で葉巻をくわえベッドに横たわる男。床にはお金が散らばる。大家が来て、知人が訪ねて来たという。誰にも住所は教えてないのに。刑事と察した男は窓から刑事を見てつぶやく。「証拠は何も無いはずだ」掴みはOK。観客の興味を引く術を心得ている。◆娘チャーリーに共感する立場からすれば、恐怖は十分感じられる。叔父のことを敬愛するが故に疑惑を持ち、殺人犯と判明し、誰にも打ち明けられず、自分の命も狙われる。殺人犯と共に暮らす恐怖とやるせなさ。図書館に走るシーンでハラハラさえるのはさすがだ。一方犯人に共感する立場に立てば、解せない事が多い。殺人の新聞記事を不自然に隠し、疑惑を招く。証拠となる指輪を不用意にプレゼントし、取り返した後も処理しない。目が悪いとか捨てようがないという伏線が欲しい。娘殺害のための階段の細工や排気ガスの充満した車庫に閉じ込めるトリックも稚拙。最後の無計画で衝動的な殺害アクションと墓穴は平凡。それに冷静に考えれば指輪は決定的な証拠とはなりえない。娘を殺す動機が薄い。犯人の心の闇が十分に描けていないと思う。未亡人に対する悪意を吐露したり、冒頭シーンで精神的に疲弊した様子を見せるくらい。世間の荒波に揉まれたシーンや未亡人殺害シーンを省いているので、人間像が分りづらいのだ。観客に犯人と分った時点で、犯行シーンを挿入すれば良かったと思う。◆犯罪心理サスペンスにしては、展開がスマートすぎる。もう少しひつこさ、あくどさが欲しい。特に未亡人殺しの詳細が不明のままなのが不満。叔父が殺人者であることが重要で詳細の提示は不要と考えたのだろう。だが警察は叔父を追ってくる。手がかりは無いらしいが、彼が容疑者なのはどういう理由でか?写真を目撃者に見せると言っていたがどうなったか?東部で犯人と疑われた男が飛行機のプロペラに飛び込ん死んだ。それで事件解決では、あまりにもなおざりすぎる。そして突然の刑事の娘へのプロポーズ。取ってつけた恋愛パートは完全に失敗している。◆サブキャラがだれも丁寧に描かれていて賞賛に値する。二人の子供は言うまでもない。推理小説マニアで少しぼんやりした隣人などは魅力的だ。息抜きにはうってつけの存在。娘の同級生だった酒場のウエイトレスも印象的だ。彼女は娘の身近にある影の部分の象徴だ。 [DVD(字幕)] 7点(2011-02-14 05:24:41) |
383. ディーバ
《ネタバレ》 物語は少し複雑。メインは郵便配達人ジュールとディーバであるシンシアの純愛。ジュールは運命のいたずらで3つの組織に追われる。買春組織の暴露テープを持っていることで警察に。同じ理由で殺し屋に。そしてレコーディングしないシンシアの録音テープを持っていることでレコード会社に。さらに複雑なのは売春組織のボスが、警察の殺人課の上司であること。このため捜査状況が殺し屋に筒抜けとなる。レコーディングテープはベトナム人少女アルバに預けて置いて無事だった。暴露テープは殺し屋に奪われそうになるが、謎の男(アルバの恋人)に助けられる。暴露テープは謎の男が殺し屋のボスに売る。後にボスはジュールを殺そうとして、謎の男に殺される。 ◆感情移入を損ねる要素がある。アルバが平気で万引きする。ジュールもそれを咎めない。ジュールがシンシアへの愛の代償として黒人娼婦を買う。ジュールは逃げ回っているだけで最後まで成長せず無力である。主人公なのだから活躍して欲しい。最初は無力でも途中からヒロイズムを発揮するか、知力でピンチを乗り切るかすべき。謎の男に助けられているばかりでは、シンシアの愛を獲得する資格は無い。要するに主人公の印象が薄いのだ。ここが最大の不満点。謎の男ばかりが目立ちすぎる。ジュールがライブを録音し服を盗むのは、幼い愛の表現として許容できる。 ◆最大の魅力はシンシアの歌だろう。実に力強い。随所にユーモアの要素もある。二人の殺し屋のキャラも立っている。何でも嫌いな殺し屋は特に印象的。ジグソーパズル、動く波の模型、壁の画、バイクなどガジェットも豊富。構図やマ撮り、彩使いなど映像がスタイリッシュ。 ◆不可解な点もある。①レコード会社の人は、テープを探してジュールの家に押し入ったが、何故テープをずたずたにしたのか。腹いせだろうか。また謎の男から違うテープを渡されるだけだが、何故確認しないのだろうか。②最後の場面、唐突に無人の舞台となる。説明が欲しい。テープが途中で止まって、また始まるが誰が操作しているのか。③謎の男は、テープを売った金をどうしたのか? ◆ミステリー要素も恋愛要素もそこそこの出来で、良くまとまっている。アクションは陳腐。普通に考えれば、ディーバが狙われてジュールが助けるのだけれど、意表を突く展開が好ましい。本筋と離れた部分で、謎の男と不思議少女の抜群の存在感が映画を稀有なものにしている。 [DVD(字幕)] 7点(2011-02-13 11:59:21)(良:2票) |
384. 殺しのドレス
《ネタバレ》 エレベータの惨殺シーンや最後のバスルームでの殺害シーンなど演出は素晴らしい。動きながらの長回し、大袈裟な音楽を流しながらのスローモーション、分割画面、耽美的な映像に凝るのは結構なことだが、もう少し脚本に凝るべきではと思う。バランスが悪いのだ。実に残念な作品と思う。◆サイコ殺人なのに被害者が一人では物足らない。最初と最後の殺人は夢である。最初のシャワー殺人は主婦の性的欲求不満の表れを示している。最後のは観客を喜ばせるお遊びにすぎない。蛇足である。◆犯人は大柄で女装した男とすぐにわかるが、これは意図的だろうか?だとしたら、その狙いは何だろうか?サスペンスでは考えられない。やはり分らないと思ってやっているのだろう。観客との間にズレがある。◆登場人物だが、主婦の不倫相手は再び姿を現さない。見ず知らずの不倫相手をベットに寝かせたままどこへ行ったのか?娼婦と一緒にいた目撃者もしかり。刑事も頼りない。娼婦を脅して、医者を探らせるのはどうかと思う。殺されていたら責任問題に。主婦の夫は義理の息子にも警察にも無視されている。こういう不自然さが目立つ。伏線が収束されていない。主婦は不倫相手が性病と知り、絶望に突き落されるが、すぐ殺される。どうでも良い挿話に何の意味があるのか。観客を驚かせる遊びと考えているのだろうか。本筋で驚かせて欲しい。結局男らしい男、父性が存在しない。いつまでも少年である監督のやりたい放題になっている。志◆美術館でのしつこく粘着質のカメラの長回し+スローモーションの意味は何?本筋と無関係で、男女の出会いの場としての意味しかない。どれだけ時間と労力使っているの?「手袋落としましたよ」「ありがとう」で済む話。それにアメリカじゃタクシーの中でヤッテもいいのか?娼婦がクリニックに潜入して捜査するにしても、色気じかけ。エロが全開すぎる。犯人の二重人格やトラウマよりも、被害者の悩みの方を深く描いてどうするのだろう。力の入れ方が間違ってはいないだろうか。それにい精神科医が性同一障害と多重人格者で殺人鬼という設定は安直で、ひねりがなさすぎる。◆犯人は客のホテルから出る娼婦を待ち伏せして追跡するが、どうやって娼婦の居場所を知ったのか?自宅を知っているのなら、自宅で襲えば良いのに。◆少年の隠し撮りだが、最後の客が出たあと、先生が出て来なかった事に気づかなかったのか? [DVD(字幕)] 6点(2011-02-13 06:44:30) |
385. 赤い影
《ネタバレ》 怖くも面白くもなく、楽しめませんでした。ジョンとローラの夫婦の物語。赤い服を着た娘が、池で水死する。ジョンは教会の修復の仕事でベネチアに来ており、妻も同行。妻は盲目の霊媒師と出会い、亡き娘とのコンタクトに成功。霊の世界で元気にしていることを知り、娘の死のショックから立ち直る。霊媒師が言うには、ジョンに危険が迫っているのでベネチアから立ち去りなさいと亡き娘が警告しているとのこと。ジョンはそれを信じない。一方周囲で不思議なことが起る。赤い服の影が現れては消え、連続殺人が発生。寄宿学校の息子が怪我をして妻は帰国。ジョンは修復作業中、空中物見台から落下しそうになる。その後いない筈の妻が霊媒師と一緒にいるのを目撃。警察に依頼して探すが、結局人違いと判明。妻は戻ってくる。ジョンは警察にいた霊媒師に謝罪し、家まで送る。ジョンが帰ると霊媒師は急変し、「彼を行かせてはだめ」などと叫ぶ。そこへローラ登場。ジョンを探す。ジョンは赤い服を来た人物を発見し、追跡する。追い詰めるジョン。向き直った人物は気味悪い老婆の顔。刺殺。◆解釈。ジョンに自覚はないが、未来を見る能力があった。書斎でスライドに無い筈の血があるのを見て、娘の死を予感。その血は自らの死ともつながっていた。ではジョンを死に至らしめたものは何か?赤い服の人物の正体は?連続殺人と関係があるのか?妻の幻の意味は?何の説明もないまま物語は終る。細かいが、ジョンが赤い影追跡中、わざわざ門の鍵を閉めるシーンがある。これによって妻が追跡できなくなるのだが、どう解釈するか。無意識に妻を守ったのか、無意識に助けを遮断したのか。いずれにせよ妻は鍵を開けようと思えば開けれたわけだし、追跡の最中にわざわざ鍵をかけないだろうと揶揄する意見もある。ジョンは妻がいるのを知らなかったのだし。◆オカルトものとは知らずに観るとがっかり。霊媒師はフェイクで、牧師が連続殺人の黒幕と思っていた。演出は趣味が悪い。意味無く長いベッドシーンや水中から引き上げる死体然大音量と共にくどいフラッシュバックの大袈裟さ。登場人物をみな薄気味悪く見える。唯一良かったのはジョンが空中物見台にいるときに材木が落ちてきてぶつかるシーン。これは迫力があった。衝撃のラスト?一目で血糊と分るんですが。帰国せず、ベネチアで葬儀を上げるのも解せないなあ。 [DVD(字幕)] 4点(2011-02-13 00:18:11) |
386. 冷血(1967)
《ネタバレ》 1967年の米映画でモロクロは珍しい。監督にはこだわりがあるのだろう。1954年の「雨の朝巴里に死す」 ではカラーだ。深い陰影の演出が印象的。窓を打つ雨の反射を顔に受けながら、最後の告白をする場面は特に印象的。煽情的にならずに抑えた演出は好ましい。◆刑務所仲間の二人ディックとペリーが合流して被害者の家に押し入るまでを描き、次は犯行後の場面となる。殺害の場面を謎とし、クライマックに持ってくるドラマティックな構成だ。観客は悲惨な結末を知っているので、背筋が氷るような恐怖を感じるという仕掛け。意地悪で切れやすいディックと親切で常識的なペリーならディックが発砲したのだろうと思わせておいて、実際はペリーが実行犯だったという意外さもある。徹底したリアリズムで絞首刑の瞬間までも描く骨太の映画。原作がノンフィクションだ。◆二人は囚人仲間のガセネタにより犯行に至った。本人はほんの冗談で悪気は無かったのだろうが、バタフライエフェクトで、最悪の結果がもたらされた。反省しているのだろうか、それとも懸賞金をもらってほくそ笑んでいるのだろうか。運命のはかさなを感じる。◆平和に暮らしていた被害者四人の様子、二人の殺人犯の生い立ちが丁寧に描かれている。観客は十分に共感できるだろう。二人は共に悲惨な境遇で育っている。特にペリーは酷い。母にも父にも見放され、養護施設で育ち、軍隊に入り、戦争により負傷している。死ぬ直前でも父親を憎んでいるという。愛しながらだ。彼らが犯罪に染まってもおかしくない。環境が犯罪を作るのは真実だろう。だからといって彼らを擁護は出来ない。自分の撒いた種は自分で刈らなければならない。◆テーマの一つに動機無き殺人がある。彼らは最初から殺人をする気だったのか?そうではあるまい。覆面用の黒のストッキングを探していたころからも分る。被害者の父親の言動がペリーの父親がペリーを殺そうとするフラッシュバックを生んだのが悲劇につながった。極度の緊張感と疲労で彼の精神が悲鳴を上げてしまったのだ。ほんのちょっとしたキッカケが悲劇を生む恐ろしさ。ガセネタが本当だったり、黒のストッキングが買えていれば違う展開になっていた。◆救いようのない冷血な犯罪。心根は優しい二人、死刑を下すのにも冷血にならなければならない。二重の意味で悲劇だ。命の大切さを透徹な精神で描ききった稀有な作品と思う。 [DVD(字幕)] 9点(2011-02-12 11:58:41) |
387. シーラ号の謎
《ネタバレ》 映画プロデューサーのクリントンは妻を轢き殺した犯人を見つけるために容疑者6人を集め、ゲームを始めた。集まったのは全員が落ち目の映画人で、ゲームの賞品の映画への参加に飛びついた。6人は、それぞれ「前科者」「ホモ」「密告者」「万引き」などと書かれたカードを受け取り、毎日停泊する港に隠された証拠を探し、誰がどのカードを持っているか当てるというもの。ゲームが最後まで進めば犯人が自ずと知れると思えた。だが二日目にしてクリントンが殺害される。犯人を推理する中で脚本家トムの妻リーがシーラを轢き逃げし、逆上してクリントンも殺したと告白。その後自殺を遂げる。事件が解決したかに見えたが、真相は別にあった。メインの犯罪だけでなく、6人の秘密もあり、クリントンのゲームの真意の真相もあり、飽きさせない。アクシデンによる犯行の変更、SHIELAの文字遊び、証拠となる煙草や凶器のアイスピック等にも無理が無い。複数の要素に逆転があり、非常に良く練られた脚本と思う。 ◆最後の謎解きがみんなの前で行わないのが惜しい。みんなが真相に驚くところにカタルシスがあるのだ。船室のインターコムで二人の会話が聞こえていたというオチは見事。 ◆結局真犯人であるトムを警察に突き出すのではなく、リーから受け継ぐ予定の遺産500万ドルで映画を製作するという”ハリウッド的解決”は面白い。真相を暴いたフィリップもクリントンを殺そうと潜水中を狙って船のエンジンをかけたのだから、説得力がある。全員が落ち目の映画人という伏線が効いている。トムは元恋人のアリスと結ばれることを願っていたが、アリスは本気ではなく不倫を楽しみたかっただけだった。クリントンがみんなを集めた真意は、妻の真犯人をつかまえることではなく、6人の秘密を暴いていじめるゲームだった。これもハリウッド的な自虐だろう。 ◆腑に落ちない点もある。休暇で地中海クルージングは分るが、大の大人が六日もかけたゲーム遊びに熱中するかということ。しかも大層なお金と手間暇がかかっている。お金持ちのやることは分らないね。それとリーがクリントンを殺した(ように見えた)シーン。逆上したとしても、あの場面である必然はなかった。フィリップが船室を点滅させてトムをおびき寄せるのはやや不自然。 [DVD(字幕)] 8点(2011-02-12 07:44:39) |
388. レイジング・ケイン
《ネタバレ》 脚本に穴がありすぎる。元凶は児童心理学者である父親だが、犯行の動機は研究材料集め。まず一人の多重人格者を作り上げ、幼児における人格形成過程を研究発表。次に大人になった彼を利用して別の赤ん坊を誘拐し、実験に使うつもりだった。その間彼は誘拐罪で捕まり、精神病院に送られ、偽装自殺している。その彼に実験を続ける理由があるだろうか?死んだ彼がどうやって研究を発表するのか。彼が児童心理に異常なまでの熱意を示す理由はなのか。何も提示されない。多重人格になったカーターがちゃんと教育を受け、医者になり、きちんと家庭を築いているのも無理がある。最後には女装した女性人格者が出てくるが、どのような人格形成過程を経て女性人格が出現するのか説明してほしいものだ。行き当たりばったりの印象が強い。◆行き当たりばったりと言えば妻の不倫もそうである。そもそも女医が瀕死の妻に付き添う患者と恋仲になるだろうか?そんな設定にした理由が分らない。もっと自然な設定で充分である。プレゼントを間違うのも、夜中にホテルに出向いてプレゼントを入れ替えるのも無理がある。夢や幻想を交えながら妻の心理を描写しているが、お門違いである。多重人格である夫(犯人)の複雑な心理をこそ描写すべきなのだ。ごく普通の妻と対比することで夫の異常さが強調されるのだ。妻の深層心理を描いても観客を混乱させるだけだ。◆観客への最大のトリックは溺死体だろう。沼で発見された女性死体は物語の流れから言えば妻である。しかしこれは最初の被害者だった。顔を見せられ恐怖の表情なので区別がつかないのだ。クロロフォルムで眠らされたことになっているが、その後妻と同じく車に入れられ沼に沈めらたのだろう。そして途中で蘇生したので、苦しんで爪に傷がついたと説明できる。それにしても妻はあの状況でどうやって助かったのか?脱出して病院や警察に行かなかったのは何故か。腑に落ちないのである。◆老嬢心理学者がカツラであるというのはうまく考えた設定だ。あれでカーターは変装して警察から脱出できた。でもどうして裸足なのか?そしていつの間に花やオレンジなどを買ったのか?◆カーターが二重人格者であることはすぐに察しが付く。半ばまで伏せておいた方がサスペンスが持続したと思う。◆階段とエレベーターを移動しながらの動く長回しや、雨の中子供が落ちるストップモーションなどは印象に残った。 [DVD(字幕)] 5点(2011-02-12 03:53:19) |
389. 絞殺魔
《ネタバレ》 【事実】1931年ボストンでデサルヴォ誕生。両親堕落、アル中、暴力、娼婦を連れてくるような悲惨な家庭環境。17歳で軍隊入り。5年間ドイツに赴任。結婚して娘(障害者)誕生。毎日5,6回性交する性欲過多。1956年9歳女子への性犯罪で軍隊除隊。1960年モデルのスカウトマンと偽り、部屋に侵入し、サイズ測量する犯罪300件。不法侵入罪で逮捕、強制猥褻としては裁かれず。11ケ月服役。妻から「あなたが真人間になるまで」と性交渉停止宣言。1962年6月から1964年1月までボストン絞殺魔事件発生。被害者11~13人、19歳~85歳。基本的に紐状のもので絞殺し蝶結び、強姦、性器露出。1964年11月別件の連続強姦事件で逮捕。被害者300人。1965年精神病院。その言動によりデサルヴォが犯人ではないかと怪しんだ同室の男が弁護士に通報。弁護士にあっさり自白。犯人しか知らない事実を知っていた。司法取引。1967年絞殺魔としては裁かれず、強姦罪で終身刑。1968年映画製作。1973年刑務所の独房で刺殺される。犯人不明。40年後最後の事件の精子DNA鑑定で無罪が確認。次の理由で犯人の可能性大。①性犯罪を繰り返す。②全事件でアリバイ無し。③犯人しか知らない事実の自白。④逮捕後事件が止む。【感想】不思議な事件だ。被害者の年齢の幅が極端に広く黒人も犠牲者。女性そのものへの憎悪があるようだ。警察のプロファイルも「母親を憎悪している若い白人男性」だった。最初の事件では部屋が物色されている。映画では二重人格説を採用。オランダの「超能力探偵」が事件に挑んだのも事実。◆物証が無いと言うが、いくつかある。先ず歯型を較べれば簡単に判定がつく。犯人の遺留品と思われる定規、箒、瓶、ドアノブなどの指紋、現場のススと靴のススの照合。◆次々起る殺人と性犯罪者を片っ端から逮捕する様子を描く前半部分。実験的なマルチ画面を多様しているが効果は薄い。画面に集中できないのだ。それでも次々起こる連続殺人には誰でも自ずと興味が湧く。犯人が判明してからは少々退屈。彼の過去に触れられていないのが不満。動機が提示されない。「人格が変わると殺人者」では誰も納得しない。その理由を示して欲しい。ジギル博士とハイド氏じゃないのだから。彼が裁かれた強姦にも触れていないのはどうしたことか。迫真の演技は良いが、密室でのカメラアングルが平凡で画面から緊迫感が伝わらない。 [DVD(字幕)] 6点(2011-02-12 00:37:41) |
390. ジャガーノート
《ネタバレ》 爆弾処理のサスペンスもの、同時に進む犯人探しの捜査もあざやか。構成は合格だ。だが残念に思えるところが多い。第一に伏線が活かされていない。乗船に脱落した海軍のメンバーに変わって船員が参加するが、その後活躍しない。船員の嘘を見破った町長も、結局何の活躍もしない。浮気したことあるのと奥さんに問われるが、あの奥さんじゃ誰だって浮気したくなると思うよ。捜査員の一人の家族が船に乗っている。彼の苦悩が思いやられるが、さほどの心情も表わさず普通に心配するだけ。これらはもったいないですね。彼らをヒーローに仕立ててこそ映画は面白くなるというもの。第二に演出の問題。子供が勝手に厨房に忍び込み、子供を探しに来た給仕と共に爆発に巻き込まれる。給仕は死亡するが、子供はそれを嘆くどころか、父親にそのことを誇るような電話をする。母親も給仕に対して何とも感じていないようだ。悲劇を盛り上げる気がないのか。船長とその恋人の曖昧な恋は最後まで煮え切らないまま。美人でもない中年の恋人に辟易。爆弾が仕掛けられてあり、生きるか死ぬか、絶体絶命のピンチである。それなのに仮装パーティなど開くか?皆思いっきりつまらない顔をしているが、それなら参加しなければいい。このあたりの不用意な演出で作品に散漫な印象になっている。追い詰められた乗客の演出が必要。爆弾は二回爆発するが、被害かよくわからない。爆発で穴の開いた船を見せていないから。船長も妙に落ち着いている。爆弾のある部屋を閉鎖しておけば、全部爆発しても船は沈まないと思えてくる。爆発があっても乗客の態度に変化はない。これではだめ。徐々に盛り上げなければ。監督はパニック映画の基本がわかっていない。最後はキャラ設定。犯行手口と犯人のキャラが合致しない。刑事に船のパンフを見つけられただけで鼻血を出し、すぐに自白。動機は自分を重用しなかった政府への復讐とお金。金の回収に失敗すると、取り決めは全てキャンセルと丁寧に電話。あの方法では失敗するだろう。平凡過ぎて、複雑なトラップを仕掛けた犯人とは思えない。「スピード」の爆弾犯のような毒が欲しい。一方主人公の破天荒な言動や行動は個性的で好ましい。犯人は上司だったわけだが、両者の関係をもっと踏み込んで欲しかった。作品に重みが出る。七つのドラム缶をどうやって運んだのか?船があれだけ揺れて爆発しないのは何故? [DVD(字幕)] 7点(2011-02-11 10:42:39)(良:1票) |
391. 大巨獣ガッパ
《ネタバレ》 ガッパの子は何を食べて毎日50㎝も成長するのか。何も食べないと言っていたけど。気になるのは、あの檻(研究所の施設)からどうやって出したのかということ。巨大化した子ガッパが通れる出口は無いはずである。壁を壊して出せても運ぶのはもっと大変。子ガッパは暴れず、おとなしく従ったようだね。ヘリ2機で子ガッパを輸送するとは自衛隊も捨てたものじゃない。体が帯電しているのによく作業が出来たと思う。それと鳥に帰巣本能はあっても、自分の所在地を遠隔地の仲間に知らせる能力はないだろうと思うけど。羽はあるけど、ほとんど羽ばたかないで飛行するのは凄い。熱線も吐くし、常識を超えた生物だ。 ◆母ガッパは茹ダコを加えていたが、子供にやるためだとしても、まだ子供が見つかってもいないのに、気が早すぎるではないか。茹でるのには熱線を利用したのだろうが、戦車をも簡単に溶かしてしまうほどの超高温である。まともに当てたら焦げてしまう。タコに直接当てず、周囲の水を沸騰させたのだな。芸が細かいではないか。意外と繊細なところがあるね。目は怖いけど。飛べるのに熱海に上陸したときは海からだった。きっと大ダコを採っていたんだね。 ◆子ガッパのテレパシーを受信して日本にやって来たのに、子ガッパの居場所が分らないのはどうしたことか。羽田に連れて行っても子ガッパの声を拡張機で流させなければ気づかなかった。良くわからないね。音には敏感らしいけど、石油コンビナートを踏みつけて爆発させならが移動しても音や火は全然気にしてないね。 ◆オベリスク島の住民はあの結末で良かったのだろうか。3匹のガッパを島で引き取ることになるのだが。しかも火山活動は大層活発である。地震はガッパのせいではなく、火山性地震だろう。危険すぎる。その割に火山灰などはひとつも見当たらないのは不思議だが。それに米潜水艦が助けた島民は少年だけ?他の人どうなったの。 ◆「ここは一度見たことがある。プレイメイトランドの模型にそっくりだ」という発言があったけど、単なる偶然?何故そっくりなの。 ◆プレイメイト社だけど、将来はないな。国民が真実を知ったら非難の嵐でしょう。税関を無視して未知の生物を持ち込んでいるし。記事を発表したとき問題にならなかったのが不思議。でも社長は改めて親子の愛を知ったので、得るものがあった? [地上波(邦画)] 3点(2011-02-10 06:44:20) |
392. ペイチェック 消された記憶
《ネタバレ》 マイケルは(M)パクリの天才技術者。新3Dディスプレイもたった2か月で完成。機密保持のため開発期間の記憶は消される。そこまでする必要があるか甚だ疑問。◆Mはオールコム(O)社との3年契約の仕事を受諾。誰でも躊躇、リスクが大きく、内容も知らない。動機は金。これでは主人公に感情移入できない。◆Mは未来を見れる装置”未来ビュー”を開発。未来では、未来ビュー発明の影響で戦争が勃発し、核戦争が勃発していた。Mはウイルスで未来ビューを機能不全に。◆Mは記憶を消されるが、それなら自分宛のメッセージを密かに送っておけばよい。例えば切手に暗号化した情報(メモやアイテムの使用方法)を付加しておくとか。恋人に頼むとか。意味不明のアイテムを自分に送っても用をなさないリスクがある。◆刑事がMの煙草を吸うのは偶然。この場面をMが未来ビューで見た筈がない。未来を知ってからアイテムを用意したのだから。煙の中で特殊眼鏡を着用するが、どうしてそれに気づくのか?記憶は無いのだ。メモの数字とロトが一致するのを知るもの偶然。外部とは接触不可なのにエジソン社の鍵を入手している。◆原作ではアイテムは7つ。未来を見て、未来から物質移動させてきたものと説明だ。会社は悪く無く、開発目的は圧制に苦しむ民衆を支援するもの。Mも機械を破壊はせず、会社の経営に参画する。◆途中までアイテムを使ったサバイバル頭脳戦だったのに、アクションになり、最後は機械を爆発させるだけという単純な結末に脱力。だったら最初から爆発するように仕掛けておきなさい。流れも悪い。命がけでO社に侵入したのに、未来ビューのウイルスを除去して自分の未来を見るなんて流暢なことするな。時間が無い。またそのような危険な場所に恋人を連れてゆくな。それに記憶がないので恋人は赤の他人としか見えないはずだが。敵子分もMを追わず自分の未来見てるし。◆未来社会のはずなのにビルや車など現代社会そのもの。「マイノリティ・リポート」に較べるとB級。◆O社の見たMの未来はこうだ。MはFBIに拘束される。それはMの提出した特許(実はO社が勝手に提出)がデッカーの技術を応用したものだったから。残った記憶を調べるめに脳内を操作され脳温上昇で死亡。一方Mの見た未来は、O社で銃で撃たれるというもの。矛盾がある。◆設定は魅力的だが、内容が薄っぺらで、人類を大惨事から救ったというカタルシスを得られない。 [DVD(吹替)] 6点(2011-02-08 02:54:38) |
393. 七人の侍
《ネタバレ》 【感動】①農民の境遇に同情した侍が、金、出世に無縁の野武士との私闘に命を張る。ヒューマニズムとヒロイズム。②言葉では百姓を罵倒していた人足が、心底では窮状に同情しており、勘兵衛が断ったとき、飯を突き出して説得する。③心離れた侍に菊千代が百姓の実態を訴える。「百姓は嘘つきで業突張りだ、そんな百姓に誰がした」④菊千代が火中から救出した赤子を抱いて「この赤子は俺だ」と叫ぶ。 ・勝四郎が食事を削り、娘に米の飯を与える。娘はそれを最貧困の老婆に渡す。それを知った侍が食事を削り、子供たちに与える。⑤決戦前夜、勝四郎と村娘との恋の激情。⑥勘兵衛を師と仰ぐ勝四郎の成長ぶり。⑦「勝ったのは百姓達だ」と心憎い言葉を残す勘兵衛。大地に生きる者が勝利者、戦に生きる者の心は虚しい。【悲劇】①百姓利吉の妻は野武士に差し出されていた。野武士の砦を襲ったとき、利吉の姿を見た妻は火中に飛び込む。そのとき利吉を助けようとした温厚な侍平八が射殺される。②戦術上離れ屋は見放される。長老は自らそこに残って死を選ぶ。③菊千代と良いコンビを組んでいた弱い百姓代表与平が戦死。④人格の高い久蔵が戦死。仇を討ちに行った菊千代は敵と差し違える。久蔵と菊千代とは表面上正反対の存在だが、心ではつながっていた。【野武士】40人もいるのに屑揃いで無能、同じ戦法を繰り返す。鉄砲も弓も甲冑も馬もあり、村は四方から襲撃可能なのに。いきなり斥候が殺され、奇襲を許す。村の木柵は焼き払えば良い。近くの家も火矢で焼けば、防ぐのは困難。槍襖などは鉄砲と矢で蹴散らせば良い。隠れている小屋も焼く。何軒かの家も火矢で焼いておいて談合を持ちかけ、ゆさぶりをかけるのが定石。一旦引いて、数か月後に奇襲するのが最上手段か。侍が去るのを待つべし。復讐するなら村ごと焼き払えば良い。【その他】①婆さんに人殺しさせるのは良くない。止めてあげないと。②長老の死が理解不能。③百姓を無力な存在に描いているが、秀吉の刀狩令が出たことでも分る通り、当時は百姓も武装していた。④青年がほとんどいないのも疑問。⑤せっかく甲冑や槍、奪った鉄砲があるのに活用しない。弓矢が当っただけで死ぬ。⑥馬から降りた野武士が弱すぎる。悲鳴を上げて女の鍬に追い立てられる。剣豪が一人ぐらいいても良い。⑦菊千代を除いて侍達の体格が貧弱。⑧ラスボス不在が残念。 [DVD(邦画)] 10点(2011-01-27 23:45:09) |
394. マイノリティ・リポート
《ネタバレ》 【犯罪予知装置】殺人の被害者と加害者の名前と発生時間は分るが場所は不明。名前は顔認証で分るとしても時間はどうして知るの?未発生の犯罪で逮捕は人権無視。両者に警告をすれば良い。お互い気を付けるでしょう。保護するのも良い。殺人が起きても犯人はすぐ逮捕できる。◆予知者三人の同意はとれているのか?そこをクリアしないと人権無視。【未来社会】あちこちで勝手に網膜認証があり、勝手にCMが始まるプライバシー無視社会は非現実的。目玉移植は体内の拒絶反応があり難しい。コンタクトや義眼でごまかせそう。ロックされた車からはすぐに脱出可能。動く花などの小ネタは不要。◆犯罪予備者を弁明の余地も与えず監禁する制度に問題。刑務所では無く、カプセルの中で眠らされると反省する機会も無い。【目玉】ヤクの売人に目玉が無い。目玉交換手術。網膜認証。目玉っぽい木玉。管理社会のメタファー?【予知者アガサ】自分の母の殺人に関して知っていたのなら、警察に言いなさい。自分を拉致した捜査官アンダートン(A)の味方なのは何故?予知協力がいやなら言えば良いのに。色んな事が分るようだが、それならAの息子ショーンの行方を捜してくれ。【アガサの母親アン殺害】黒幕は殺人者を雇った。男が未然に逮捕されたあと同じ格好、同じ方法で殺害。でも顔と名前と時間は分る筈。それはエコー(残響)として破棄される。黒幕はデータも消したが、マイノリティリポートとしてアガサの頭に保存されていた。それをAが引き出して解決。見事。【Aの殺人】黒幕にお金で頼まれた男がAの息子の殺害犯のふりをして自ら殺されるように誘う。家族へお金を渡したいから。Aは殺害を留まるが、男はAの銃の引き金を無理やり引く。自殺。これはAが予知を知らなければ起きないことで、最大の矛盾点。予知があったから確認しに現場に行った。黒幕はどうやってあの場所にAが出現することをあらかじめ知ったのか?【息抜き場面】殺人サスペンスでは、ヨガや目玉コロコロなどの笑う場面は不要。息抜きなら休息するなどほっとする場面を作れば良い。【Aの妻ララ】目玉一つで簡単にセキュリティを破って侵入、職員を銃で脅してAを救出。不自然。元警官だったなどの伏線が欲しい。殺人ゼロ社会を目指すなら先ず銃規制せよ。【その他】黒幕が小じんまり。しかも殺人ゼロ社会を目指した善意による殺人。だからカタルシス無し。悪を悪として描け。 [DVD(字幕)] 7点(2011-01-26 04:46:38) |
395. 穴(2001)
《ネタバレ》 悪女の奸計と狡知により完全犯罪が成功したわけでなく、総て偶然ととっさの嘘の産物。こういう映画を作った関係者を付け上がらせてはいけません。どんどん突っ込みましょう。 ①リズはマイクに片思い。リズの親友フランキーとジェフはラブラブ。野外研究授業をさぼって四人でシェルターで三日間過ごす?あんな不気味なところ誰が行くか!野外授業の方が絶対楽しい。 ②リズが鍵を閉めたわけだが、そのことに誰も気づかない。自然に鍵が閉まるわけがないのに。 ③10日目にフランキーが食道の血管の破裂による心臓麻痺で死亡。それでも言い出さないリズ。水と食料がわずかで、死体と一緒に過ごす方を選択をする理由がわからん。 ④コーラを黙って飲もうとしたジェフをマイクが殴って過失致死。ちょっと不自然。 ⑤18日目リズが扉を開けると、真相を知ったマイクが激怒。リズを殴りにはしごを登って墜落死。マンガだね。 ⑥電燈が徐々に消えてゆき、トイレの水も流れなくなるけどどうして? ⑦警察に電話したときキャーと叫ぶのは芝居? ⑧警察に真相を言えないリズ。とりあえず男友達マーティンのせいにする。すぐにばれる嘘をつくな。 ⑨警察はリズに「どうやって出てこれたのか?」を追求すればよかったのに。誰かが鍵を開けたのは明白。身体検査をすれば鍵は発見できた。 ⑩マーティンは釈放されるとリズの家に。リズを糾弾するが逆襲に遭い殺される。鍵をポケットに入れてダムから川に投げ込まれる。弱い男だね。そもそもマーティンは警察に監視されていた筈だが。 ⑪警察はマーティンを自殺と判断するけど根拠がない。そもそもリズ発見の日にはマーティンは海外にいた。どうやって鍵を開けられる?また犯人だとして、いつまでも鍵を持ってないでしょ。捨てるでしょ。 ⑫精神科医にシェルターに行きたいと言い出すリズ。意味不明。勝手に中に入る二人。そこで真相をしゃべるリズ。不自然、不可解。 ⑬精神科医の同僚がやってきて「マーティンが自殺した。まずいことになったな」と精神科医を責めるが、なんでそうなるの?精神科医はマーティンとは接触してないのに。 ⑭「彼は年老いることも私を裏切ることもない、永久に。いつまでも理想の恋人のまま」勘違いも甚だしい。お前が殺したんだ! ⑮誰も手記を残すことを思いつかなかったのか。 ⑯扉の傍ならケータイつながるでしょ。 [DVD(字幕)] 3点(2011-01-25 07:44:16) |
396. ハワイ・マレー沖海戦
《ネタバレ》 東宝が海軍から依頼され、海軍賛美・国威称揚・戦意高揚を目的として作られた生粋の国策映画。それにも関わらず、毒々しいプロタガンダはさほど見られないので現代でも安心して鑑賞できる。「スマートな海軍さん」と親しまれていた海軍のイメージを大切にしている。何と言っても円谷英二による日本初の特撮映画として有名。特撮の出来は大変良い。◆海軍飛行予科練習生、練習航空隊の訓練ぶりが詳細に描かれているのも興味深い。飛行機や軍艦の実物が登場し、記録映画としても大変貴重。◆海軍から依頼されたにも関わらず、実際の空母等の資料はほとんど提供されなかった。これに対して東宝側は憤慨したらしいが、当時空母赤城、加賀、飛龍、蒼龍はすでにミッドウェー海戦で撃沈されており、その事実は国民に隠されている状況だったことを考えると海軍の対応は無理もないと思われる。◆優秀な兵士を育てるコツは、死ぬことを怖がらせないこと。精神論、大和魂を強調する教育方針。「自分のことごとくは、かしこくも大元帥陛下のために捧げ奉ったものである。そう肚をくくれば、何も怖くは無くなった」当時多くの人がこの言葉を信じたことだろう。戦争は必然で、国や天皇のために命を捧げて発奮、戦争に勝利しさえすれば、家族は幸福になれると信じていた。単純な論法である。◆家族は淡々と描かれる。姉や妹は主人公のことを気にかけているが、母親は「海軍にやった以上もううちの子ではない」と気丈に軍国の母ぶりを発揮。少年の夢にも現れない。それ以上は検閲があるので描けない。 [DVD(邦画)] 5点(2011-01-25 04:10:55) |
397. 蜘蛛巣城
《ネタバレ》 黒澤映画としては最も重厚な作品。全編を貫く陰惨で怪異で重苦しい雰囲気。鷲津は権勢欲の虜となり主殺しと裏切りの罪を犯した。森の物の怪が未来を予言し、妻が謀反をそそのかしたということがあるが、根底には人間不信がある。戦闘と裏切りと死を繰り返す戦国の修羅の世に生きる武者にとって、人間性を失わずにいるのは難しい。人を信じることが出来ないで過ごす人生は、心が休まることがなく、灼熱に焼かれるような苦しみの連続だろう。物の怪の予言は戦死した武者の亡霊が復讐を企てたもの。鷲津が特別野心が大きく、心が弱かったわけではない。たまたま欲望の陥穽に落ち、魂が悲運の蜘蛛の巣に絡み取られてしまったのだ。 ◆原作では主人公は華々しく戦闘に討つて出て戦死するが、本映画では裏切りにより、刀を抜く間もなく惨めに射殺される。より惨めな死に様を提示することにより、道を踏み外した人間の愚かさ、因果応報の恐ろしさを見せつける。原作の洞窟の三人の魔女を糸車の老婆と武将の亡霊に改変したのも成功している。日本人にしっくりくるのだ。 ◆次の場面が省略されている。①北の館の前主が謀反に失敗し、自決して、部屋が血染めになる場面。②鷲津が眠っている主を槍で殺害する。③鷲津の使いの暗殺者が僚友三木を襲って殺す。④鷲津の妻の死産と狂ってゆく様子。最後にどうなるのか。⑤最終戦闘場面。何れも死を描く場面。考えて見れば、死が直接描かれるのは鷲津の矢だるま場面だけ。それでもいたたまれないほどの陰惨な印象が残るのは映像の力によるものだろう。白黒なのに血が夢に見るほど怖ろしく見える。凄惨な場面をあえて排除したのは監督の観客への配慮だろうが、どこか物足りなさを感じる。鑑賞後。どこかぶつ切り感が残るのだ。想像させるのは重要なこどだが、バランスが難しい。 ◆独特の映像美には讃嘆するしかない。それだけで十分鑑賞の価値あり。もし監督がホラー映画を撮ったら、とてつもなく怖いものが出来上がっただろう。 ◆違和感を覚えたのは、鷲津と三木の二人だけで森を抜けて城に向かう場面。いくら戦闘が終了したとはいえ、準戦闘状態にある中で大将が単騎で行動するはずがない。しかも別々の場所を守る二武将が揃って登城などありえない。二人だけ本隊とはぐれたなどの設定にすればよかった。 [DVD(邦画)] 8点(2011-01-24 22:03:36) |
398. 夢(1990)
《ネタバレ》 【日照り雨】軒先のセットは氏の家を再現したもの。黒沢氏の父は元軍人で厳しかった。家の厳しさよりも怖ろしいもの見たさの好奇心がまさった子供時代。虹はあこがれで冒険の象徴。人生の冒険の始まり。日照雨は「蜘蛛巣城」の森のシーンにつながる。【桃畑】4男4女の中で育つ。16歳で夭折した姉への追慕。伐採された桃の木の精霊との交感。伐採されたのは氏の幼年時代。涙が流れる。家族愛にも経済的にも恵まれた家庭環境であったことが窺い知れる。【雪あらし】努力すれば報われるという氏の人生哲学。雪山登山は困難を極める映画作りの象徴。雪女は母性の象徴。「雪は暖かい、氷は熱い」は、逆境こそが人生の糧になるということ。母親には甘えることができたようだ。画家を目指して挫折。映画界に入り、監督になれたのは33歳。天才ではなく努力の人だった。【トンネル】氏は体が弱く、兵役経験無しだが戦死は身近だった。さまよう戦死者の魂。戦争の無意味さと残酷さ。彼らの死に誰も責任を取らない。戦後すぐ反省をこめて撮った「わが青春に悔なし」の頃の夢か。爆弾を巻いた犬は特攻の象徴。若く散った特攻隊員の魂が氏の良心を激しく吠え立てる。【鴉】尊敬するゴッホ。画の修行時代ゴッホの画を見たあとでは全てのものがゴッホのタッチに見えたという。「どんな自然も美しい。自我を失くすと自然は夢のように絵になる。そのためには機関車のように働く」映画作りに共通する言葉。ゴッホを追うのは画家になりたいという望み。飛び立つ鴉は魂の解放の象徴。【赤冨士】「生きものの記録」と同趣旨。人間は自然の一部であることを忘れ、科学で便利さを追求し続ける人間の愚かさ。氏が子供時代、父の生家の秋田で生活した経験が影響している。自然と共存する人たちの生きざまを知ったのは貴重な経験。 【鬼哭】核汚染により鬼と化してしまった人間の地獄絵図。鬼の苦悩は氏の苦悩そのもの。人間と自然を心より愛しているが故に現実の人間に対する怒りと煩悶は強い。氏の人類への警告は生半可なものではない。 【水車のある村】 水車は自然を利用する人間の知恵の象徴。理想郷を描く。石に添える花の挿話は体験談。葬式の歌は、自然と調和して生きている人たちへの賛歌。103歳の老人は老境に達した氏の理想の姿。初恋の人は青春の象徴。その葬儀で嘆き悲しむ代わりに、喜び祝い行進する。すでに死を受容する心境にある。 [DVD(邦画)] 7点(2011-01-24 10:27:12)(良:2票) |
399. 新・刑事コロンボ/初夜に消えた花嫁<TVM>
《ネタバレ》 次のような企画会議が行われたと予想される。「良い脚本が上がってこないね」「どーしよう、もう時間が無い」「マクベインの小説で映像化権利を買っといたのがあるんだけど」「コロンボと違いすぎるじゃないか」「異色なものがあってたまにはいいでしょ」「そーだなあ。このごろマンネリぎみだからな」「数字がとれるかな」「マクベインの名でとれるでしょ。それときれいな女優を使ってなんとかもたそう」「じゃあ、そうするか」「このシリーズもそろそろ潮時かな。ピーターもいい年だし」「絞りとるだけ絞りとる。これが業界の常識でしょ」「まあね」 ◆次の3点においてコロンボシリーズを逸脱している。①倒叙形式じゃない。②推理が皆無。③犯人が射殺される。良い脚本がなくて、エド・マクベインの小説を利用しただけ。花嫁が初夜に誘拐されるというアイデアは面白い。だが犯人にたどり着く推理は無くて、ただ地道に結婚パーティの写真を調べるだけというのはいただけない。もう一つは車を目撃した老人に車のカタログを見せて確認してもらうだけ。犯人はモデルである花嫁に横恋慕したのはわかるが、その目的は結婚式を上げてから殺すという不自然なもの。母親が父にメスで喉を掻き切られ殺されたらしいが、それを再現してどういう意味があるのか? [ビデオ(吹替)] 3点(2011-01-24 08:29:39) |
400. 鳥(1963)
《ネタバレ》 映像的に随所に見せ場はあるが、人類の終焉を予想させる内容を描いた作品にしては迫力不足。古い作品でオプチカル合成のチープさは言い訳が立つだろうが、脚本のドラマパートのチープさは言い訳が立たないだろう。◆高飛車でいたずら好きな上流階級の女と弁護士の奇妙な出会いは面白い。が、そこから恋愛に発展していくわけでもない。それなのに女が男の家に行きつくまでの描写が長いが、何を言いたいのか?鳥を部屋に置いてくるなんていたずら返しにしては度が過ぎていないか?「鳥」だからペットショップで出会うというのも芸が無いだろう。「ラヴバード」も物語に絡らない。男の母親が不気味で女を嫌っているが何故か?これがあるから、その後母が自分のことを語る場面があるが、共感できない。平凡で幸福そうな家族が動物に襲われてこそ万人が共感する。高飛車なヒロインを応援する人も少ないだろう。女教師と弁護士の過去の恋愛も活かされていない。準主役の女教師が死ぬ場面が省略されている。妹の少女は泣き叫んで逃げるだけの役回り。登場人物がぜんぜん噛み合わないのだ。人間が描けて無いので、苦悩や苦痛が伝わらない。皆が協力して知恵を出し合って危機から脱出するからこそ盛り上がるのだが、逃げ回るだけの登場人物に失望。◆肝心なパニックパートにしても、小さな町を鳥が襲っただけ。小規模な鳥の反乱で終わっている。広がりが無いのだ。警察や軍隊との闘いくらいは見せて欲しかった。大人しい鳥がただ止まっているだけの凡庸なエンディングにはただ、ただ失望。せめて防具つけて松明で鳥を追い払いながら車に移動するくらいの演出がほしい。人類滅亡かと思わせるほどの衝撃的なエンディング希望。「終末だ、世界の終わりだ」とわめく人物が登場するが、滑稽としか見えない。鳥が全人類を敵として攻撃し始めたということを分らせるカットが必要だろう。子供を襲うシーンが多いが、子供は助かるのは分っているので恐怖は感じない。鳥がいる中を避難させるのも不自然。女が二階で鳥に襲われるシーンがあるが、ドアを閉めればいいだけじゃないか。◆確かにサスペンス撮影はうまい。でもアクションが弱い。多カットで見せる細やかな演出も不発ぎみ。人工的すぎるのだ。ただ暖炉から急襲する鳥大群と、飛行している鳥目線で見せる炎上する町の俯瞰カットは素晴らしかった。 [DVD(字幕)] 6点(2011-01-21 05:04:49) |