401. マガディーラ 勇者転生
バーフバリの原点だけあって、荒唐無稽の無茶苦茶なストーリー。現代劇と歴史劇を輪廻転生で強引に繋げ、ラブコメと踊りとアクションで一気に突っ走る、良くも悪くもインドらしさ全開。バーフバリ以上に荒削りで中弛みもあるが、このアホ臭さとチャラさが逆に元気が出る。終盤のクライマックスなんて「ホントこれで良いのかよ?」なノリ。エンドクレジットもやっぱり踊ります(笑)。 [ブルーレイ(字幕)] 5点(2019-01-04 19:00:59) |
402. 荒野の七人
『七人の侍』と比べられるのは仕方ないが、舞台設定を中世の日本から南北戦争後のアメリカに上手く落とし込んだものだと思う。躍動感あふれる有名なテーマ曲は言うまでもなく、文化や精神性の違いからくるエピソードの数々も興味深い。メイン7人がオリジナルに迫れていないとしても十分魅力的だった。 [地上波(吹替)] 6点(2019-01-03 15:56:05) |
403. ビューティフル・デイ
《ネタバレ》 いくらでも娯楽活劇に出来るプロットに状況説明も格闘シーンもあえて排除し、希死念慮を持った男の孤独をより一層強調する演出はレフン監督の『ドライヴ』を想起させる。父親からの虐待と従軍経験の絶えないフラッシュバックで、死にたくても死ねないのは介護しなければならない母親で繋ぎ止めているだけで、少女を救ったことからその日常が破壊される。生と死の狭間で揺れ動く男の心境にシンクロするように絶えず流れるジョニー・グリーンウッドの重層的なスコアが効果を上げ、特に湖の水葬シーンには美しさすら感じた。再び少女を救い出すも、彼女にはもう帰る場所がないし人を殺している。"救うことができなかった"自分に絶望して死んだって周囲は何も変わらないのではないか。だが、少女の一言に彼は微かな光を見出す。「明日はいい日よ」。決して明るい未来ではないかもしれないが、再生へ向けて不思議な余韻を残すエンディング。多くを語らない男の人生をホアキン・フェニックスの熱演で説得力のあるものにさせており、カンヌ男優賞は納得。 [ブルーレイ(字幕)] 6点(2019-01-02 08:54:28)(良:1票) |
404. 女は二度決断する
《ネタバレ》 虚無の物語。 ダイアン・クルーガーの熱演を以って、淡々とした物語を引っ張っていく。 主人公が薬物やタトゥーに手を出す、純粋な善人ではないグレーな存在だからこそ、 優柔不断からのあの決断に至ったのだろう。 たとえネオナチの若い夫婦が有罪で終身刑になろうが、自らの手で復讐しようが、 残された彼女には悲しみや苦痛が和らぐことがない。 復讐が虚しいことは分かっている。 けれど、もう心も思考も完全に擦り切れて、その後の人生も闘えなくなってしまった。 どこに希望があるの? 当事者でないと分からないけどそう思えた。 「ヘイトクライムはやめよう」と呼びかけても、 完全にキャパシティが超過して疲弊しきった現在のドイツと重なる。 [DVD(字幕)] 6点(2019-01-01 12:46:45) |
405. ザ・スクエア 思いやりの聖域
《ネタバレ》 崇高な理念を掲げる現代アートの欺瞞を暴く。誠実さと寛容さを掲げながらも、実は主人公自身がそれに当てはまらず、プライドの高さが仇となって、ドツボにハマるというもの。何度も出てくる物乞いのシーンを見ても分かる通り、普段は無関心なのに、利益になると見れば利用する尊大な態度があの炎上動画に集約されているのだろう。第三者が勝手に作ったとはいえ、本人は言い訳ばかりして、自分の愚かさに向き合えず、ひたすら周りに醜悪さを見せつける居心地の悪さ。一見社会的に進んでいるように見えて、個人主義と権利を重んじたために逆に綻んでいくヨーロッパの縮図のように思えた。 [DVD(字幕)] 5点(2019-01-01 09:43:49) |
406. ラブレス
《ネタバレ》 「避妊すれば良かった」。 同監督の『父、帰る』同様、説明的なストーリーテリングは避け、観る者に委ねる作り。 離婚調停中の身勝手な夫妻が主人公のため、常に醒めた目線で見届ける。 愛が欲しいだけで誰かに与えようともしない。 貰っても消費してさらに欲しがる。 その病理が冷徹な映像美から伝わる。 "要らない"息子が最後まで見つからないまま時が経ち、元夫は新たな子供を邪険に扱い、 元妻は今でもSNSに依存している。 ロシアによるウクライナの問題にしても、他者への無関心が貫徹していて、 これからも己のために底なしの幸福を求めて満たされない日々を繰り返すのだろう。 その愚かさに気付くことなく、風化していく捜索チラシと枝にはためくテープが息子の存在証明として残り、 記憶とともに忘れ去られていく、その非情さがただただ虚しい。 [DVD(字幕)] 6点(2019-01-01 01:15:58) |
407. 犬ヶ島
オールスターキャストから独創的な美術まで徹底的に作り込まれた唯一無二の世界観はウェス・アンダーソンならでは。しかし、今回は肌に合わなかった。独裁と迫害と虐殺の歴史を犬に例えるのは分かるが、盛り上がりが欠けたまま終わってしまった印象。いくらコンセプトが素晴らしくても、癖の強すぎる造形で行き場を失った犬の悲しみが迫ってこない。粗製乱造のブロックバスターとは別のベクトルで外観優先とも言える。それもまたこの監督の魅力かもしれないけれど。 [ブルーレイ(字幕)] 4点(2019-01-01 00:39:04) |
408. ROMA/ローマ
《ネタバレ》 ガレージの床洗いで水面に写る飛行機のショットだけで只者ではない。タルコフスキーを彷彿とさせる数多の水の表現が生と死を雄弁に語り、片付けられては転がっている犬の糞がどうにもならない不条理を表現する。東洋武術に代表されるシュールな光景が暴動に繋がっていく非現実感と、父親不在の脆く崩れそうなのに何気ない日常をやりくりする家族の現実感が表裏一体で、白黒画面の奥に色が見えるようだ。不安定な家族を救ったのは、恋人に去られ死産を経験した家政婦だった。彼女なしでは今の自分はいなかったとキュアロンが語るように、社会の片隅にひっそり生きる女性が一見輝いていなくても、"家族"として認められ居場所を見つけた、その過程に言葉で表現しようのない感情が湧き上がった。すぐに拭かれる水面の飛行機が果てしなく広がる大空へ羽ばたくみたいに。(追記)期間限定で劇場公開とのことで再視聴。小さなスケールとは思わせない緻密な撮影と隅々にまで行き届いた音響効果は映画館向け。観客席はがらんどうでヒットする映画ではないが、その貴重な体験に加点せざるを得ない。 [インターネット(字幕)] 9点(2018-12-30 23:15:00)(良:1票) |
409. バーバー
カラー版にて視聴。色が付いていても映像美は特筆すべきものがある。キャッチコピー通りの、少しでも人生を変えたい男が雪だるま式に取り返しのつかないところまで落ちていく。コーエン兄弟のテクニックが随所に注ぎ込まれた到達点であり、ベートーベンの穏やかなピアノソナタが、常に仏頂面のソーントンに哀愁を添える。 [DVD(字幕)] 6点(2018-12-24 22:02:19) |
410. エグザイル/絆
《ネタバレ》 空いたスケジュールの合間合間に撮影し、台詞も基本アドリブ。ほとんどプライベートフィルムに近いのにこの完成度。『ザ・ミッション/非情の掟』の続編意識はあるが、直接的な繋がりはないにせよ、見た方が一段と楽しめる。悪ガキみたいな天真爛漫さと銃を構えた時の男たちの渋さに悶える。仲間の弔い合戦の壮絶さと滅びの美学が光る男のファンタジーだ。 [DVD(字幕)] 6点(2018-12-24 21:59:38) |
411. ブリーダー
《ネタバレ》 ビデオショップで働く映画マニアを狂言回しに、コミュニケーションの不通と行く末の明暗が綴られる。レフン監督の母国であるデンマークが舞台で母国語のためか、監督のスタイルが確立しながらも初期作品ならではの荒削りさ、北欧の空気が感じられ、近年の分かりづらさは皆無。父親になる勇気がなく鬱屈を抱えるレオと、恋をするもなかなか踏み出せないレニーの対比。ささやかな希望が目の前にあるのに、その一線を越える覚悟を持つか手放すかにおいて、現実の我々と変わらないところにリアリティを感じさせる。変化のない寂れた町と彼らの閉塞感が強く共鳴する。 [インターネット(字幕)] 6点(2018-12-24 21:55:42) |
412. ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅
もなく不可もなく。エディ・レッドメインの好演である程度楽しめるものの、ハリポタのような熱狂が感じられない。魔法で何でも出来ちゃう、既に見慣れてしまった世界観に予想できる展開ばかりで、ワクワクが長続きしない。新しい基軸を打ち出せず惰性で作らざるを得ないところに、J.K.ローリングの限界を感じてしまった。 [地上波(吹替)] 5点(2018-12-24 21:52:47) |
413. 手紙は憶えている
《ネタバレ》 ストーリーは気になっていてはいたが、今まで見る機会を逃していた。復讐もののはずなのに、序盤から認知症のおじいさんと旅先の人々との交流を描いたロードムービーで呆気に取られる。こんな状態で本当に目的を達成できるのか。ところが次第に違和感が浮上していき、ユーモラスに紡がれるシーンが挟まれていたからこそ、血の凍りつく顛末が何倍にも際立った。当時の記録映像や回想に頼ることなく、小道具だけで虐殺の視点を反転させる演出は見事。"ユダヤ人"として戦後生きてきた男が、実際はナチ看守だった主人公に深い絶望を与えるやり方がえげつなくて、被害者はいつまでも"憶えている"。その業と執念が強烈に焼きつく。"手紙"という脚本通りに事が進むのかは目を瞑っておくとして、クリストファー・プラマーの貫録ある熱演のお陰で高品質のサスペンスに仕上がっている。あまり予備知識を持たずに見て正解の掘り出し物。 [インターネット(字幕)] 8点(2018-12-02 23:42:07)(良:1票) |
414. ハリー・ポッターと賢者の石
リアルタイムで原作にハマった世代であるし、全部は再現できないと分かってはいても2時間半で堅実にまとめ、退屈しないで楽しめたので概ね良かったものの、児童書とはいえ如何せん演出が子供騙しで幼稚すぎやしないか? 監督が監督なので仕方ない気がするが、見ていて恥ずかしい・・・ [映画館(字幕)] 5点(2018-12-01 01:35:47) |
415. グラン・トリノ
タイトルからしてアクションもののように思えるが、 イーストウッドの映画とは思えない低予算で地味な人種問題ものだ。 それもアフリカ系ではなく、アジア系というあたりが珍しい。 暴力には暴力で応えてきた彼の代表作『ダーティハリー』シリーズのセルフパロディ要素がちらつき、 そんな老い先の短い男が不寛容の世界において最期の答えを提示する。 対立と交流を織り交ぜたオーソドックスな筋書きながら、重厚さを出しつつサラッとした味わいに、 イーストウッドの貫録と余裕が感じられる。 欠点も少なくないが、それでも許容してしまうような温かさがある。 [映画館(字幕)] 7点(2018-12-01 01:32:36) |
416. チェンジリング(2008)
《ネタバレ》 中盤から猟奇殺人が絡むとは。映画では触れていないが、少年への性的虐待も含まれ、村の名前を変えるほど凄惨な事件だった。だからといって、そこにフォーカスすることはなく、腐敗権力に立ち向かうシングルマザーの闘いを貫く。闘う女の象徴である、アンジェリーナ・ジョリーを主役に据えたのはらしいと言える。重く救い難い映画が続いたイーストウッドだが、本作では彼女に"HOPE"(希望)と言わせる。最期まで息子が生きていると頑なに信じたらしく、希望の強度と狂気が表裏一体であればあるほど、女性が自立して生きていくには困難な時代であったと強く印象づける。 [DVD(字幕)] 6点(2018-12-01 01:28:27) |
417. ウォーターボーイズ
男子高校生がシンクロでひと夏の思い出を作るたったそれだけのお話。主人公たちの大根演技やら、空回りのギャグやら、そういう細かい部分は置いといて、ただひたすら「エールを送ろう!」という善意を一直線に押し通す。期待はせず単純に楽しむだけなら思ったほど悪くはない。 [地上波(邦画)] 5点(2018-12-01 01:25:07) |
418. アルゴ
《ネタバレ》 ポリティカル・サスペンスとハリウッド・ショービジネスのユニークな化学反応。『最後の猿の惑星』から作戦の着想を得たのが可笑しい。繋ぎ合わされていく写真の断片、言葉の分からない海外の恐さが脱出劇の空気を引き締める。ハリウッドの凸凹コンビによる掛け合い、航空機のアナウンスによる粋な演出がいい。地味だけど、欠点らしい欠点のないエンターテイメントの王道を突っ切っていると言える。ディレクターズ・カット版では、疎遠になった家族とのドラマを描いており、スピーディーさは少し削がれるが深みが出ていると思う。イラン側の扱いが気になるものの、信仰の名の元に扇動された人がたくさんいたわけで、誰が善く、誰が悪いかは一概に言えない。 [映画館(字幕)] 7点(2018-11-12 23:57:02) |
419. ゲーム(1997)
《ネタバレ》 遠い昔に見たことあったが、『セブン』を絶賛した自分には「こんなオチあり?」と憤慨した(当初はバッドエンドだったらしい)。それからこの映画の内容を忘れた頃にネトフリで配信していたので再見したら・・・意外と面白かった。ツッコミどころ満載だし、あまりにも回りくどい最高クラスのドッキリを完投するの、さぞや大変だっただろう。そう思うとスタッフたちのドッキリ後のバカ騒ぎに清々しさすら感じる。主人公は人間不信になり一旦"死んで"、新たな自分に生まれ変わるまでを見つめていく。そういう楽しみ方で良いと思えてきた。できれば仕掛ける側の視点で見てみたい。予想外のアクシデントと悪戦苦闘の数々に笑ってしまうから。 [インターネット(字幕)] 7点(2018-11-12 23:13:47) |
420. ファントム・スレッド
《ネタバレ》 冒頭10分でオートクチュールの仕立屋レイノルズと彼を取り巻く上流階級を隔たりなくスムーズに描く手際の良さに、ポール・トーマス・アンダーソンとダニエル・デイ=ルイスの徹底した芸術家肌を見る。埃一つ落ちていない、一つ一つが芸術品のような仕事場、面倒の無い規則的な習慣こそが彼の世界で彼の全て。ところがアルマという"未完成"な女性を気に入ったことから、静かな不協和音が生じる。自分にとって都合の良い、理想の"マネキン"として仕立てていくはずが、逆にアルマが彼をコントロールしようとする展開からホラー風になる辺りが新鮮。恋愛も結婚もお互いに妥協しながら維持していくものであり、レイノルズみたいな完璧主義者を陥落させるにはどうするかという一つの答えだろう。物事が進まないことを私のせいにするならば、逆に私なしでは生きられないようにしてあげるという、ヤンデレ的なSMプレイ。共依存にも思えなくないが、あえてハッピーエンドで終わらせる潔さを買う。一作一作完全燃焼で全力投球するダニエル・デイ=ルイスの引退作になるのかと思うと寂しい。 [DVD(字幕)] 8点(2018-11-08 18:50:39)(良:1票) |