421. わが谷は緑なりき
《ネタバレ》 タイトルからしてカラーの映画を想像していたのですがモノクロだったのでちょっとビックリしました。また、ジョン・フォード監督の映画だということでアメリカの物語だろうと思っていたら、舞台はイギリスのウェールズなんですね。けど「俺はアメリカに行く!」の様に、アメリカ人のルーツっぽいセリフがあったりと、やっぱりアメリカっぽい感じもしてきます。 さて、この映画なんですが、ちょっとワルい人も中には出てきますよね。力任せに鞭を打つ暴力教師、組合を作ることに反対する親父(被雇用者側の立場を理解できていない。けど、本当は理想の父親像的な人間)、ありもしない事実をでっち上げ陰口を叩くメイドなどです。こういう“出来てない”登場人物を見ると、どんなに良い映画でも見ていてシラけてしまうため(話は変わりますが、私がジャック・タチを好きになれない理由はそれ。トロくて疲れる。)、見終わった直後はそういった理由でちょっとイマイチな印象があったのですが、家に帰ってきてみなさんのレビューを拝見して自分の心の狭さを痛烈に感じました。 というのは、自分の書くレビューはいつも、好きなシーンの寄せ集めみたいな調子になってしまい、この映画でのそれは、みんなが歌を高らかに唄っているところとか、ヒロイン役の人が綺麗だとか、自分の誕生日5月14日というのが出てきたこととか(2作目^^)、花畑の中で少年が歩き出すシーンや最後の回想のシーンが美しいといったことだけで、特に記すものもないように思えるのですが、みなさんのレビューを拝見すると、このような“分析”では説明のつかない素晴らしい作品だという気がしてくるのです。 高得点をつけていらっしゃる方々のレビューはどれもカッコイイ。映画は理屈詰めで理解するものではない、心で見るものなんだと教えて下さる。私にこんなレビューが書ける日はいつのことになるのやら・・・。 ということで、映画の見かたを教えてくれたこの映画と熱いハートを持ったみなさんのレビューに感謝。そして、このサイトにも。とりあえず、現時点ではこんな点数で。 [映画館(字幕)] 6点(2006-01-22 22:05:32) |
422. 三文オペラ(1931)
期待して観てしまったせいか、テンポの悪さにガッカリした。作中の全てのシーンが盛り上がりを欠いた単調なストーリー。全くといっていいほどに起伏が存在しないのでは。結婚式もショボイ。というか、結婚するまでの女の心理描写もゼロだったし、ホテルについて行った時も結構あっさりついて行ってしまったので、あれれ?という感じでイマイチよく解りませんでした。ラストの戴冠式も、序盤からあれだけ仄めかしといて、たったあれだけかよ!と、がっかりしてしまい、自分にとってはかなり後味の悪い作品でした。 [映画館(字幕)] 4点(2006-01-21 16:41:58) |
423. メトロポリス(1926)
《ネタバレ》 この映画こそがクラシック映画の醍醐味を堪能できる映画なのではないでしょうか。 クラシック映画の最大の魅力は“国籍人種及び時代を問わず、いかなる環境の下で鑑賞しても楽しむことの出来る普遍性を有する”ところにある、と私は考えているのですが、本作品はそれが見事なまでに表現されていると言えるのです。21世紀のこの時代に観ても十分に説得力のある先見性ではありませんか。 “手と頭脳を結ぶのは心”この決め台詞にシビレました。 どんなに時代が進んで機械化が進もうと、それを作って動かしているのは必ず人間であり、また、その人間同士の間においても、気持ちの通うことのないやりとり(現代社会に当てはめてみれば、メールやFAXのみでの伝達など)ばかりでは駄目なのだというメッセージを既にこの時代から訴えているのです。 また、会社勤めをしている自分にとって、この映画は現代社会の企業の縮図であるような気がします。会社の上層部の人間と現場で働く人間とが上手く連携をとっていかないと企業としての成長が見込めないということは、仕事をしたことのある人にとってはごく当たり前のことですよね。 映画序盤にいきなり登場する巨大なセットで観客の心を一気に掴み、ラストのクライマックスに向けてテンションを上げていくといった、明らかに観客を楽しませようと意識した作りに仕上がっているところもフリッツ・ラングのエンターテイナーとしてのプロ意識のようなものが感じられ、好印象なのであります。 〔追記〕後日、DVD(淀川長治100選のヤツ)で鑑賞したら、劇場で観たオリジナル版(122分)に対してDVD版92分と、30分も削られているではありませんか。確か、日本の歓楽街“ヨシワラ”という言葉が出ていました。しかも、オープニングのタイトルも滲んでいて“Metropolis”の文字が見えず、序盤の巨大なモニュメントも目の部分より上が画面からはみ出ているし、それに、劇場で見たときの荘厳なオーケストラの音楽もなく、終始単調なピアノの音がただ流れていただけで、かなり物足りなかったです。DVD版だと8点です。 [映画館(字幕)] 9点(2006-01-21 00:17:07)(良:2票) |
424. キートンのハード・ラック(悪運)
《ネタバレ》 一見、ストーリーが繋がってないようにも見えますが、まぁ、辛うじて繋がっているようにも解釈できます。狩に行くのはキートンだけではなく、あれだけの大人数の志願者がいたということだったんですね。 キートンが乗った馬がとても可愛くて、足のポーズを真似したり、上にぶら下がっているキートンをちゃんと背中に乗っけてから歩き出すという可愛らしい性格がとても気に入ってしまいました。 ひもを引っ張ったら熊がやってきてしまったところや、最後のオチなどのような意味不明で常軌を逸した常人には到底考えもつかないアイディアというのは、ギャグの部類としては私にとって一番好きなタイプのギャグなのです(^_^) [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-08 22:17:00) |
425. 散り行く花
《ネタバレ》 結構期待して観てしまったせいか、やや感動というものが薄らいでしまいました。 よく考えてみると、序盤の旅立ちまでのシーンは後半と結びついていなかったように思えます。青年が旅を諦め街に定住するまでの過程と厳しい現実に絶句し絶望のどん底にいる様をもっと描いた方がよかったかも。実際、彼もルーシーと一緒にいることによって幸せを感じていたのですから。 彼女の方も中国商人の店にかくまわれて彼に親切にしてもらっているときはとても生き生きとしていて、それまでの怯えた表情が嘘のように明るい顔をしていたのが印象的でした。 最後、ルーシーが笑顔を作ったのは、ほんの少しの間だったけど幸せを感じられたからだと思います。それと、わずかだけどバローズに対しても父親への愛があったように感じられました。 [ビデオ(字幕)] 7点(2006-01-08 13:18:58)(良:1票) |
426. キートンのハイ・サイン(ザ・ハイ・サイン)
《ネタバレ》 これは面白かった!全体的にみても、満遍なく面白いギャグがあって楽しめるのですが、やはり最後のからくり部屋を使ってのアクションが一番笑わせてくれました。キートンはやっぱこうでなくっちゃ!って感じで、このシーンは特に好きです。初めはひと部屋ごとに見せて次に2部屋同時、最後に4部屋全部を同時に見せるというように、ストーリーを盛り上げる工夫を凝らしていて、それが上手く機能しているところがナイスです。 銃で撃たれた人が歯医者に駆けて行ってしまったのと、「ゴルフならやります」のセリフの意味がよく解りませんでしたが、とにかく面白かったです。 [ビデオ(字幕)] 8点(2006-01-07 23:48:53) |
427. 思ひ出
《ネタバレ》 「逆流」(1924)との二本立てで、澤登翠さんの活弁&生演奏付きで鑑賞することができました。 エルンスト・ルビッチ。私はここにまた偉大な映画作家を発見することが出来たようです。 まず、邦題が素晴らしい。そして全体的なラブストーリーに加え、至るところに笑いを散りばめたストーリーがとても面白かったです。ラブシーンの粋な見せ方といい、細かな笑いといい“面白かった”のひと言ではとても片付けられない素晴らしい作品です。 カティーと出会い、彼女に心魅かれていく王子の心情もとても上手く描かれていたり、学生仲間で青春を謳歌したりと、それだけでも十分に満足なのですが、それよりも、王子が国のために政策結婚を迫られ、最後にもう一度だけ会いに行く、というのが堪らなく心打たれるのです。 「最後にもう一度だけ会いたい・・」「もう一度だけ彼女に会うことが出来れば覚悟を決められる・・」男の私にとってはこの気持ちが痛いほど解ります。お互いに自分の命運には逆らえないことを知っているだけに、本当に辛いです。意を決したかのように馬車に飛び乗るシーンはもう、涙なくしては観れません。 そして、ラストのパレードのシーンで見せた、王子のちょっと寂しそうな表情。人間誰でも、思い出すと切なさがこみ上げてきてしまうような「思ひ出」を胸に抱きながら歳をとっていくんだなぁと、心にジーンと染み入る感慨深いラストシーンでした。 [映画館(字幕)] 9点(2006-01-06 22:23:24) |
428. 逆流
《ネタバレ》 「思ひ出」(1927)との二本立てで、澤登翠さんの活弁&生演奏付きで鑑賞することができました。 上映時間も短く、見るべき箇所があまりないようにも思えますが、一つ挙げるとすると、やはり主人公役の阪東妻三郎の格好良さでしょう。この映画の作られた当時は若干23歳。大正13年の作品ながら今の平成の時代の美男子のような風貌です。きっと、その当時としてはかなり宇宙人的なイメージを博していた事と思われます。 その妻三郎ですが、こんな短い作品でもさまざまな表情を見ることが出来、早くから大物ぶりを感じさせています。 序盤の、操(剣術の師匠の娘)に見せる明るい表情で好青年な一面を見せたと思えば、母が亡くなったときや姉との会話のシーンで見せる悲しみや怒りの表情。そして、ラストの鬼の形相といい、若き千両役者って感じが漂っています。 ラストでの“殺戮の虚しさ”を前面に押し出した無常観が何とも言えず、ストーリーもあっという間だったということもあり、ちょっと控えめに6点とさせて頂きます。 [映画館(邦画)] 6点(2006-01-06 22:18:19) |
429. 怪物團
私が観たのも「フリークス」(デジタルリマスター版)というタイトルでした。 まず、この時代にこんな映画が存在したというのがすごいと思いました。こういうのって、映画が世に満ち溢れ、映画に対して飽きが来るころになって作られるような印象があるのですが、映画創世期のこの時代から早くもこんな作品を作ってしまう、という事に驚きました。 さて今の世の中ですが、バリアフリー化が進んだお陰でひと昔前よりも身体障害者の人たちが社会に出ることが多くなってきたと思われます。そのせいか、この映画の中のフリークスの人たちにはさほど驚きもなく、ストーリーもやや退屈に感じられました。よく考えてみればわかりますが、この映画のストーリーって、健常者同士に置き換えて考えてみれば(例えば、美女とブ男)普通に映画やドラマなんかに出てきそうなストーリーではありませんか。おまけに、ラストの復讐劇でもさほどスリル感を味わうことができなかったので、ここは控えめに5点とさせて頂きます。もし仮に、あと10年昔に観ることができてたとしたら、今よりも衝撃を感じることができたのではないかと思います。 [映画館(字幕)] 5点(2005-12-24 15:58:17) |
430. ロバと王女
冒頭の、本の表紙をめくるところから始まる通り、まさに御伽噺。完全に絵本の中の世界です。何のひねりもないストレートな物語なので、煌びやかな映像と美しい歌声を堪能することに専念しましょう。 ドヌーヴの美しさは今まで観てきた映画でわかっていましたが、相も変わらず美しいドヌーヴの、あの長くて綺麗な髪の毛は恐らく彼女自身のものに違いない、と勝手に信じ込んでいます。 [映画館(字幕)] 7点(2005-12-18 17:30:28) |
431. フレンチ・カンカン
《ネタバレ》 自分は映画に関しては素人同然ですが、エラソーな事を言わせてもらうと“良い映画は最初の10分でわかる”と断言したい(その逆もまた然り、ですが・・・)。うまく説明できないけど、最初のギャバンの登場シーンやらローラやら口笛やらが最高に良かった。この映画はここには書き尽くせないくらい見どころが多くて本当に困ってしまうのですが、まず、この映画が有する微妙なコメディの要素に注目。となりのカフェでお茶をしていたカップルは初めからカップルでいたわけではなく“白い女王”をダイナマイトで爆破したときの衝撃がきっかけでくっついてしまい、そのままずっと最後まで一緒にいて、事あるごとに登場するっていうのが、本当にチョットなんだけど微笑ましくて妙に面白いのです。また、ニニとその友達との会話で「芸人って身を任せなきゃダメなのよ。」「初めての人はポーロって決めてたのよ。まだ時間もあるわ。」と言うなり、ポーロのところに駆けていったシーンなんかはふき出しちゃうくらい笑えます。そのすぐ後、ニニがポーロの店に行っておじさんがいないのを確認すると、目配せだけでポーロのことを誘うシーンがありますが、あのシーンに完全にヤラレました!今どき、あんなキュートでロマンティックな誘い方をする女性はいないでしょう。 そして、何と言ってもラストのカンカンシーン。少し前までしょげていたニニの別人のようなあの笑顔にビックリ!これぞプロ魂。プロ根性でしょう。ダンサーの登場シーンのゾクゾクするほどの高揚感もさることながら、これでもかと言わんばかりのカンカンの連続に感動です!このように、映画のクライマックスをきちっと作り、観客を楽しませようとするエンターテイナーとしての心意気に感激しました。 これは、プロのエンターテイナーによるプロのエンターテイナーの映画です。当然10点。 [映画館(字幕)] 10点(2005-12-17 22:53:59)(良:1票) |
432. 素晴らしき放浪者
《ネタバレ》 すんません、平均下げます。どうしてもあの放浪者が好きになれないんです。観ててイライラしました。プレゼントした宝くじが当たってそのまま結婚しちゃうというのも含めて、至るところにコメディの雰囲気が感じられましたが、やっぱりダメみたいです。楽しめません。 途中、夫人がブーデュに襲われたのもビックリしましたが、そのあとの夫人のあの表情にもビックリしました(これもコメディ??)。 最後に、冒頭に出てきたあの黒い犬と再会してハッピーエンドとなるのだろうなぁと期待していたのですが、結局最後まで出てこなくて拍子抜けしてしまいましたし・・・。 結局この映画は、私のフレンチコメディに対する苦手意識がますます強まっていってしまっただけの一本でした。 [映画館(字幕)] 5点(2005-12-04 21:46:27) |
433. 道(1954)
《ネタバレ》 まず、フェリーニは人間がどういうものであるか、男というものが、女というものがどういうものであるかが非常によくわかってると思った。 例えば、ザンパノとキ印のトランペットの教え方。ザンパノは、ジェルソミーナが失敗すると鞭で叩き罰を与える。罰を受けまいと努力させる方法で、犬などの動物に教えるときによくある方法。それに対し、キ印はまず褒める。どんなに下手でもとにかく褒めてジェルソミーナのやる気を呼び起こす。褒められて自信をつけたジェルソミーナはさらにやる気を出して練習に励む。どちらが正しいと言うわけではないが人間性の違いがハッキリと表れているひとコマ。 そして、修道院の納屋で一晩を過ごしたときのジェルソミーナの言った「私のこと少しは好き?」というセリフ。当然の如く、ザンパノには軽くあしらわれるのだが、どうしようもなくなってザンパノの気を引こうとしてトランペットを吹いてしまうジェルソミーナ。愛されることによって自我を確立するという、女性にありがちな性質をとても上手く描いていると思う。 そして、これまでに多くの方が指摘なさっているので今更語るほどでもないが、ラストシーンのザンパノの慟哭もこれまた男性にありがちなパターン。 終始、ジェルソミーナの仕草がとてもチャーミングで、微笑んだ顔もしょげた顔も何から何までいちいち可愛い。多少頭は弱いのかもしれないが、一緒にいたらこっちまで笑顔になってしまいそう。こういう女性も魅力的であり、当然高得点である(笑)。 [映画館(字幕)] 8点(2005-11-12 10:16:10) |
434. そして船は行く
《ネタバレ》 この映画は何故セットとわかるように撮ったのだろう??初めのうちはこのあからさまな雰囲気が凄くイヤで、何度席を外そうかと思った事か。最後のスタジオ全体とスタッフを映したのもどうもよくわからない。何故セットであることを前面に押し出さなければいけないのだろうか。何故ナレーションが必要だったのか。全くもって意味のわからない映画だった。 [映画館(字幕)] 4点(2005-11-06 20:25:43) |
435. 戦艦ポチョムキン
だめだ。意味がわからない。階段シーンにも何も感じるところはなかった。この映画で俺は相当な馬鹿だと自覚した。乳母車よりも子供の母親の表情が印象的だった。 この監督の作品は自分には合わないらしい。「ストライキ」も同じ日に観たが、あちらは不覚にも寝てしまった。澤登センセイ、ごめんなさい。 [映画館(字幕)] 5点(2005-10-30 03:32:08) |
436. 危険がいっぱい
《ネタバレ》 この映画最大の疑問は、ドロン扮するマルクが何故あんなオバサンに好意をもっていたのかという事。その辺りの心理描写が描かれていないように思います。それと、偽電報の内容ですが、あれだけだとちょっと解りにくい。雰囲気からバーバラを陥れようとしているのは解るのですが「問題は解決した」だけではチト辛い。 自分の誕生日5月14日牡牛座というのが作中に出てきたのと、随所に見られるカーアクション(車を運転する人もスゴイがそれにぶつかる人や逃げるドロンも体を張っていてスゴイ!)、そして何と言ってもアラン・ドロンの色気にオマケして7点。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-10-28 19:09:35) |
437. キートンの強盗騒動(悪太郎)
《ネタバレ》 邦題が少しばかり???なとこを除けば、総じて楽しめたと思います。中でも、エレベーターを使って逃げまくるシーンが特に好き。針を動かせばエレベーターそのものを動かせるという発想がばかばかしくて面白い。釘をたたいて針を1階まで来れなくすれば降りてこられなくなり、振り切れば空めがけて吹っ飛ぶという下らなさ。また、最初は人間だと思っていたらマネキンで、インディアンのマネキンかと思いきや今度は本物の人間だったりと、単純な一発ギャグの寄せ集めではなく、ちゃんと繋がりがあるところがいいですね。 ちなみに、中盤あたりで馬の蹄鉄を放り投げたのは「蹄鉄を後ろに投げれば福が来る」という迷信をもとにしたプロットらしいです。 この作品でキートンを初めて見たのですが、キートンって端正な顔立ちをしているんですね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2005-10-16 01:08:39) |
438. いぬ
《ネタバレ》 この映画はモノクロ映画独特のクールさがあると思う。シブい!玄関を開けたときにわざと影を作って顔を見えなくしたり、シリアンが宝石類を土から掘り起こすシーンなんかは、ストーリーの構成上(モノクロ画像によって)程よく影を作って映しているのが上手いと思った。走っている車を外側から映している場面の、あからさまに合成である部分を除けば、映像面ではかなりイイと思う。 ただ、やはりストーリー面をとってみるとかなり難解で、私にとっては完全にお手上げ状態。繰り返し観てみて大筋は把握できたけどこれは間違いなく難しい部類。最初に見たとき“花輪”とか“葬儀”とかの意味が解りませんでしたからね。そのせいで、最後にモーリスとシリアンが撃たれた理由が全く意味不明でした。 あと、ヌテッチオ役のミシェル・ピッコリは絶対に配役ミス。もっと存在感があってズル賢そうな顔の人の方が適していると思う。 [ビデオ(字幕)] 5点(2005-10-10 12:38:44) |
439. 勝手にしやがれ
《ネタバレ》 これはまぁ、2本立てで一緒に観た「男性・女性」よりかは幾らかマシかと言ったところ。 ここでも出てくるイライラさせるシークエンス。ベルモンド扮するミシェルに何度も電話させては一向に繋がらない。数えてないが、一体何回電話させたのだろうか? 自分より前に投稿なされた方々が仰る、カット割りの細かさや手持ちカメラを用いた大胆な撮影方法というのはさほど気にはならなかったが(気づかなかった部分もアリ)、自分はむしろ、ストーリー中盤でのベッドでの会話が特に印象に残った。会話だけであれだけ長いシーンが出てきたのはちょっと驚きである。会話の内容そのものは特別な面白味がある訳ではないが、ワンシーンの長さにビックリさせられたと思う。 あと、ラストでパトリシアの言った「最低って何?」というセリフとその時の表情には何か背筋が凍るような感覚に襲われた。 【2022.10.10追記】 17年ぶりにたまたま劇場公開されていたので再鑑賞しましたが、点数は変わらず。 再見して感じたのは、カット割りの独特さと照明の拙さ。 カット割りについては17年前にも違和感を感じていましたが、今回の再見で照明が酷いことに気が付いた。 映画序盤でのベルモンドの車中でのセリフ「海が~、山が~、都会が~、勝手にしやがれ!」というシーンなど、折角の名シーンなのにベルモンドの顔に光が当たっていなかったり、ジーン・セバーグがカフェの奥を歩くシーンでも同様で、これについては疑問が残るところ。 車内や屋内のシーンなのだから照明はいくらでも何とか出来た筈なだけに、勿体ないなと思いました。 ただ、オープニングで深々と帽子を被ったベルモンドと女優の顔を画面のセンターに据えたショットとのクロスカットは“ゴダール”を感じさせてくれ、あの2枚のショットだけでゴダールの映像と分かるって、やっぱり偉大な映像作家なのかなとも感じました。 [映画館(字幕)] 5点(2005-10-08 03:38:20) |
440. 男性・女性
《ネタバレ》 本作と「勝手にしやがれ」の2本立て上映でゴダールデビューしてきました。 ゴダールは難しい、ってかなり以前から聞いていたので今まで躊躇していたのですが・・・そのままずっと躊躇したままでいた方が良かったみたいです。 まず、この映画は何を言いたいのかが全くわからない。一番気になったのが、男女間の会話。似たようなセリフが繰り返し出てくるために、全然先に進まない。その間、カメラを同じ位置に固定して撮っているので画面上にも変化がなく、より一層退屈さが増す。こんなシーンが2度ほどあった。しかし、このシーンで流れる音楽が良かったせいだろうか、何故か嫌いになれない。理屈で考えるといかにも不毛な会話って感じなんだけど。特に、女の子がリンゴを齧りながら喋るシーンでの女の子の表情がとても良く、些細でしょーもない会話なんだけど、楽しそうに喋る表情がとても生き生きとしていたのが印象的だった。 ストーリーの途中で、夫婦喧嘩のもつれで旦那を殺してしまったり、いきなり切腹する男がいたり、マッチを借りた男が石油をかぶって自殺したりと、本題に結びつきそうもないシーンがこの他にもいくつか出てきたのも、ややドキュメンタリーっぽさがあって、いまいちよくわからない映画でした。 [映画館(字幕)] 5点(2005-10-08 00:45:39) |