4701. マレーナ
《ネタバレ》 初恋というのは、単に美しいだけではなく、往々にして、同時にアホでマヌケだったりするものです。それが嫌みなく両立してまとめあげられています。また、年上の憧れの人というのはいつまでも美しいままでいてほしいものですが、この話ではそれが容赦なく裏切られ続けるところが、切なくて良い。その中で、導入部分では500%エロ目線でしかなかった主人公が、ちょっとずつ変化していく語り口が巧妙です。2人の現実の会話はラストだけ(そしておそらく両者の生涯でこの一瞬だけ)というのも、ある種定石手段とはいえ、実際にやってしまえるのは偉い。 [映画館(字幕)] 8点(2003-03-14 00:12:34) |
4702. ニューヨークの恋人(2001)
《ネタバレ》 非常に良質なラブストーリーだと思います。恋愛とは本来、こういうものであったはずだということを教えられました。大事なのは、誠意であり、心遣いであり、社会的素養であり、勇気であり、凛々しさなのです。レオポルドがデートのBGM(だけ)のためにバイオリン奏者を手配する場面は、最高に笑えました。当然のことながら、安易に2人が寝ちゃったりしないのも、気品があって良いです。●再見して気づいたのですが、この作品では、(主人公2人も、それ以外も)いろんなポイントで、「言葉を尽くして(+選んで)真摯に意を伝えること」によって物事が解決していく場面が多い。その姿勢で一貫しているのが、単なる浮ついたラブコメと一線を画することにつながっています。 [映画館(字幕)] 8点(2003-03-12 22:27:22)(良:1票) |
4703. ドライビング Miss デイジー
《ネタバレ》 いろんなところで笑ってしまった後で、いつしかそれが涙に変わっていくという卑怯な映画。派手な映像や凝った設定がなくても、人の心の動きや変化が的確に表現できて、それが見ている側に伝わったら、感動は生まれるのです。文盲の問題や黒人差別の問題など、ベタな演出をしたらいくらでもできたと思いますが、この話の中心的主題はそんなところではないし、あえてそれをせずにこのレベルに達したのは素晴らしい。人物については、デイジーおばあちゃんは救いがたいほど頑固なのに妙に憎めないし、ホークの方も、単に有能なだけではなく、言動は結構俗っぽいところが面白い。最後、ボケたデイジーがホークの手を握るところでいつもぐっときます(2人の身体が接するのは、この場面だけなんですよね)。 [映画館(字幕)] 8点(2003-03-12 00:32:36)(良:1票) |
4704. 素晴らしき日
《ネタバレ》 コメディとしても面白いし、ストーリーもしっかりしていて、一級品の恋愛映画だと思います。初対面から露骨に反発しあっていた2人が、やがて理解しあい、そのうち惹かれあって、最後には素直になるという過程もきちんと描写されています。最後のキスシーンの場面にしても、本来キスというのはあんなふうにぎこちなくどきどきするものだということを久々に思い出させられました(笑)。そして、何といっても素晴らしいのは子役の2人で、主演の2人を食いかねないほどの演技力と存在感は見事でした。 [DVD(字幕)] 9点(2003-03-11 00:49:54)(良:1票) |
4705. 愛と野望のナイル
単なる冒険談に終わらず、その後(イギリスに戻った後)の2人をきちんとフォローしているのはいいのですが、大事なところがきちんと強調されずにさらっと流れているので、結局どっちつかずの中途半端な内容に終わっています。あと、冒険自体も、何であそこで旅が終わったのか?とか、結局バートンはどこまで行ったのか?とか、よく分からない部分が多かった。 5点(2003-03-09 21:09:47) |
4706. ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
一応、3時間退屈することなく見切ることができたので、それだけでも凄いことだと思います。ただし、見ていて何でいらいらするかというと、誰あろうフロドその人なんですよね。どう見ても頼りない上に、自分で何かをするわけでもなく、しかもすぐに(いろんな意味で)ふらふらどこかに行ってしまう。あれでは共感できません。退屈しなかったのは、レゴラスの格好良さと、リブ・タイラーの200万倍魅力的なミランダ・オットーの功績が大きい。 6点(2003-03-09 01:32:54) |
4707. 愛は霧のかなたに
単なる動物生態報告映画だったら嫌だなあと思っていたのですが、実際には、アフリカに着いた瞬間から目を奪うような展開が連続し、その中で主人公とゴリラの関係の変化を的確に捉え、適度に人間同士の関係の話も絡めながら、最後は予想外の方向に着地するという見事な構成でした。主人公が終盤で狂気じみてくるのも、逆に人間くさくてシンパシーを感じます。基本的に動物愛護運動は支持しませんし、ましてやアメリカからやってきて動物保護を展開するなどとは大きなお世話とも思いますが、この作品は、1人の人間の愛情の軌跡の記録として理解したい。 7点(2003-03-07 20:38:25) |
4708. JSA
《ネタバレ》 この作品が優れているのは、双方の言い分がまったく違っていて、さらに調査を進めると・・・という「羅生門方式」を導入していること。単に38度線付近で兵士が交流しました、というだけでは、ここまで濃い内容にはならなかったでしょう。導入部で手際よく提示される双方の陳述書は、そのまま対立し断絶する南北構造そのものですし、そうであるからこそ手法としての必然性があります。そしてそのことが、例えば4人が打ち解ける中にも一触即発の危険性やぎごちなさを残留させ、現実の暗い影を終始落とし続け、全体を奥深いものにしています。その中でも制作側の「祈り」のトーンもあわせて持続しているのが素晴らしいです。 [映画館(字幕)] 8点(2003-03-07 00:02:58)(良:1票) |
4709. エネミー・オブ・アメリカ
《ネタバレ》 圧倒的な情報網の設定も怖いけど、それを操っている人達が、特に悪人相だったり闇の仕事人風だったりするわけでもなく、ごく普通の技術者面でジュースやコーヒー片手に簡単に操作しているというのがさらに怖い。また、しつこいくらいにパソコン上の画面やマイク経由の音やカメラ映像を駆使したつくり方も、制作側のこだわりを感じます。音楽がトレヴァー・ラビンなのも秘かに嬉しい。ただ、レイチェルの件は結局何で起こったのかとか、途中再生不能を窺わせる肝心の証拠映像は結局どうなったのかとか、ブリルが爆破まで得意というのはそりゃ強引だろとか、細かいところはかなりいい加減な気がしなくもない。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2003-03-05 20:20:22) |
4710. タワーリング・インフェルノ
30年近く経った今見ても全然退屈しません。それどころか、変にデジタルな特撮技術で飾り立てていない分、かえって身近な恐怖を感じますし、後々まで心に残ります。いろいろな立場の登場人物が火の巡りにあわせてそれぞれの人生を変わらせていく様子は、全盛期の森村誠一の長編を読んでいるようです。あと、作品を引き締めているのは、消防隊のすべての人たちが、どんな指示・命令に対しても、一瞬で即時に対応していること。 [映画館(字幕)] 7点(2003-03-04 19:56:16) |
4711. 父の祈りを
単なる冤罪事件のドキュメンタリーではなく、父子の心の交流という点に焦点を絞ったのが勝因だと思います。冒頭からの主人公の独白の受け手が、終盤でついに主人公とクロスするという構成も格好良い。残念だったのは、15年という時間の経過が画面上でほとんど表現されていないことで(最後の法廷の場面でも、登場人物が少しも老けていません。私は、台詞で15年と言われるまで、刑務所内での期間は3~5年くらいかと思っていました)、この点をきちんと表現できたら、時間的な壮大さが明確になって、さらに感動が誘発されていたと思います。 7点(2003-03-03 23:48:16) |
4712. 戦場のピアニスト
《ネタバレ》 主人公がごく普通の人間である(ヒーロー的な活躍をまったくしない)からこそ、逆に怒りや哀しみが生々しく伝わってきます。本来の家から廃墟の屋根裏まで、生活環境が累進的に劣悪になっていくのが、そのまま、主人公の荒涼とした心境を象徴しています。そのすべての状況でそれに即した演技表現を存分に行ったエイドリアン・ブロディには拍手を贈りたい。そしてそれと同じくらい印象的だったのがカメラワーク。窓の外で起こっている悲惨な出来事を、ことさら映像的に強調することなく、部屋の中から主人公目線で追い続けるショットには背筋が寒くなります。どうしても気になるのは、仕方のないことかもしれないけど、台詞が英語であること。こういう民族性がからんだ作品では特に。 [映画館(字幕)] 7点(2003-03-02 21:29:31) |
4713. 危険な情事
《ネタバレ》 最初から最後までまったく飽きることがない、A級のサスペンスだと思います。劇場で見たときは、最後のバスタブの場面で、観客全員(私含む)の肩が一斉に「びくっ」と上がったのを覚えています。グレン・クロースは、単に怖いだけではなく、同時に、その男に頼るしか道がなかった人間の悲しさ、淋しさを表現しているのが素晴らしいです。そして、一方で、堅実な良妻像を的確に演じきって、それに対する侵略の恐怖を裏から描いて見せたアン・アーチャーの功績も見過ごせないでしょう。 [映画館(字幕)] 8点(2003-03-01 19:53:49)(良:1票) |
4714. いつも2人で
話の雰囲気は好きなのですが、時系列がぐしゃぐしゃで、何の場面なのかを把握するだけで時間が経ってしまい、ほとんど感情移入できませんでした。各シーンのピックアップの必然性も、よく分かりませんでした。 5点(2003-03-01 00:32:26) |
4715. 愛の選択
話自体は決してつまらないわけではないのですが、不思議なほど印象の薄い作品でした。展開が単調だからでしょうか?主題がはっきりしないからでしょうか?暖色系を周到に配置した映像はとても綺麗でした(2人の訣別の場面だけ、青が基調になっています)。 5点(2003-02-27 21:43:18) |
4716. プロヴァンス物語/マルセルの夏
何といっても、舞台の大半を占める雄大な自然の光景の美しさが見事です。その環境に逆らわずに人が過ごすように、ストーリーも、特に意外な展開も逆転もなく普通に淡々と進んでいきます。頭をひねったり悩ませたりする部分が一切ないので、見ているだけで自分も休暇に行ったような気分になれます。のんびりと休みながら映画を見たい人向け。 6点(2003-02-26 19:16:12) |
4717. ジュマンジ
《ネタバレ》 動物が壁を突き破って集団暴走するとか、屋敷がジャングルになるとか、床がいきなり泥沼になるとか、はっきりいって話としてはアホなのです。しかし、この作品が優れているのは、あくまでもそれを愚直に大真面目にごく単純な「双六ゲーム」のルールの中でやり通している点です(それに、ゲーム盤から問答無用で断定されると、かなり怖い)。サイコロはどこで振ってもいいはずなのに、律儀に屋敷の中にいちいち戻っていくのも、何ともいえないおかしさがあります。タイム・トラベル風に締めるラストも好みでした。●それと、改めて見てみると、当時13歳のキルスティン・ダンストの静かな存在感は凄い。子供目線で見た頼れる冷静なお姉さん、という役回りを完全に理解しているし、ロビンの突っ走り演技をピン留めしてバランスを確保するパワーすら感じる。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2003-02-25 21:49:08) |
4718. マンハッタン
話としてはまあまあ面白いと思いますが、どうしてこの登場人物達は、揃いも揃って、演技をする前にしゃべり出すのでしょうか?頭が痛くなりました。ただし、このクセの強い演出をものともしないメリル・ストリープの強靱な存在感は、やはり凄い。 [DVD(字幕)] 5点(2003-02-24 19:45:31) |
4719. ドラッグストア・カウボーイ
ひたすら救いのない絶望的な前半と、虚しさを抱えながらほのかに穏やかな静けさに包まれていく後半。抑えた会話の節々から漂う一貫した緊張感が見事です。80年代には優れた青春映画が多数生み出されましたが、これはそれらとは逆を行く「裏」青春映画の代表的一角、かもしれません。 [DVD(字幕)] 7点(2003-02-23 18:46:22) |
4720. さよならゲーム
《ネタバレ》 そりの合わない2人がスポーツを通じて共鳴し合っていく、というパターンはそれこそいくらでもあるわけで、その中でこの作品は何がしたいのか分かりませんでした。あえていえばサランドンの役柄で独自性を出そうとしたのかもしれませんが、せっかく人目を浴びないマイナーリーグを素材としていながら、かえってそこを「居心地良く」してしまうという逆の作用を果たしてしまっています(なので、ヌークがメジャーに上がるところにドラマとしての意味がありません)。 [DVD(字幕)] 4点(2003-02-21 20:09:45) |