521. オンリー・ザ・ブレイブ
昔は、消防士は英語でファイアマンだ、と習ったもんですが、すると「華氏451」にはその言葉通り、火を消すのでは無く火を点けるのが役割のファイアマンが登場したりして。 一方でこの森林火災の消防士もまた、必ずしも今燃えてる火を消すのが仕事とは限らず、木を切ったり、それこそ、逆に火を点けたりしてて、とにかく燃えるものを無くし延焼を防ぐのが、彼らのミッション。 建物消火以上に、我々にとっては馴染みが薄く、それ故に、映画の題材としてはそれだけで興味深いものとなります。冒頭、いきなり家の上空にヘリが現れ、プールの水をホースで吸い上げていく、なんてのもなかなか意表を突きますが、消防士なのに描かれる訓練が、我々の想像する「消防士っぽい」ものでないことに興味を引かれます。 それはどちらかというと、まるで野戦に備える兵士のような。 シカが駆ける野山の光景、と思いきや、カメラアングルが移動すると、すぐ向こうは山火事。燃え上がる「大惨事の光景」と、燃えていない「日常の光景」とが、その境界ではっきりと区切られていて。その大惨事が、じわじわとその領分を広げ、日常を浸食する。 この浸食さえなければ、まさに対岸の火事、であって、その光景に消防士たちが歓声をあげたりもするけれど、猛然とその浸食が襲いかかってきたら、もはや為す術がない。 実話に基づいている作品ではありますが、あえてストーリーの軸を隊員の一部のみにおいていて、スペクタクルの面では確かに火災シーンがクライマックスだけど、ドラマとしてはその後の学校のシーンにこそクライマックスがあって。 劇中でさりげなく描かれていた、その他の隊員たちの姿が、ラストにおいて、実際のモデルとなった人物と重なり、胸を打ちます。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-09-04 18:02:01)(良:1票) |
522. 岸和田少年愚連隊
大河内奈々子だけが東京ことばで、あとは関西弁のオンパレード、こういうのを見てると、逆に「関西在住の関東人」の逞しさ、みたいなものも感じつつ。 実際、彼女以外の出演者の殆どが関西に所縁のある人々で、「ヘンな関西弁」にズッコケる心配はありません。主役の二人を始め、プロの俳優ではない出演者も多いのですが、皆さん芸達者なのでその点も心配ありません。元雨上がり決死隊のアノ人も出てますが、吉本興業がちゃんと制作に関わっているので、闇営業の心配もありません? 私も大阪出身ながら京阪沿線なもんで、岸和田という土地には馴染みがなく、ああ、海があるんだなあ、なんていう地図見りゃ当たり前のことに改めてしみじみしつつ。そこで繰り広げられる、ケンカまたケンカ。ビーバップハイスクールほどは戯画化されておらず、犯罪スレスレ、命懸けの生々しさも。 ひたすら繰り返されるケンカの日々の先には、あのどうしようもない大人「カオルちゃん」がいて、ああいう大人になるのかも知れないし、ならないのかも知れない。そのカオルちゃんだって、昔はこんなどうしようもない中高生の一人だったのかも知れない。脈々と受け継がれるどうしようも無さ、破天荒さ。それがついに伝統にまで昇華したのが、あのだんじり文化。とまで言うと怒られそうですが。 そういや、一瞬、お茶の間のテレビに映る「たよし」のCMが、何とも懐かしい(大久保怜先生の熱唱!はよく聞こえないけど)。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-09-04 17:26:08) |
523. いれずみ突撃隊
時は戦時中、中国戦線の部隊へ転属となってきたのが、いれずみ入れたヤンチャ坊主の高倉健。いっぱしのヤクザ気取りだけど、大口を叩きすぎるところもあり、ちとアヤしい。古参兵によるイジメが横行する部隊の中で、持ち前の反骨精神で何かと反発しては、営倉に放り込まれたり。 それを時に厳しく時に温かく見守る上官は、表向きは隠しているけど実は、そのスジでは大変名高いお方。という訳で2人の間には独特の関係が。要するに、ウルトラマンレオとセブンの関係みたいなもんですかね。 健さんと周りの兵隊たちとの関係に加え、「慰安所」の女性たちも描かれ、彼女たちの生き様を見せつけて物語に幅を持たせます。 戦闘シーンは、何だか西部劇調。中国側の兵士をアメリカ先住民みたいに描いていて、ダイナミックではあるけど、こんな描き方して大丈夫なのか、とちょっと心配になってきます。こんな映画に出てることがバレたら、健さんの中国での人気に傷がつきそうな。とりあえず内緒にするべし? 若々しい健さんの活躍は、その無鉄砲さがコミカルでもある一方、戦争ならではの悲壮感もあって、ラストの余韻はなかなかのものがあります。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-09-04 12:54:34) |
524. ザ・サンド
かの名作『ブラッド・ビーチ/謎の巨大生物!ギャルまるかじり』、じゃなかった、あの傑作『血に飢えた白い砂浜』(どっちでもよろしい)のリメイクだ、みたいなことを聞いたような気がしたので、見ちゃったのですが、これが似ても似つかぬ作品。共通点なんて、どっちも途轍もなくツマラナイ、ってことぐらいでしょうか。 いや、砂の中に何か気味の悪いヤツがいる、ってのも共通ですけど、アチラはそれなりに「謎めいた事件から、大騒動へ」というパニック映画の語法が無くも無かったのに対して、コチラの作品はというと、わずかな人数の登場人物が最初からビビりまくり、大して何もしないまま無為に時間だけが過ぎていく、という趣向。ただでも安っぽすぎるCGを、さらに出し惜しみしてきて、「砂の中の謎の生物」と根比べしているのは、登場人物たちなのか、それとも見ている我々なのか。 全くハラハラしないまま(だって、見てても何の関心も持てない連中が、クダラナイことばかりしてるだけだし)、それでもお詫びのつもりなのか何人かはその生物の餌食となってくれるもんで、何となくオハナシは進む。どうでもいいけど、オハナシは進む。 登場人物たちはあまり賢そうじゃないとは言え、こういう映画に必要なのは、「たいして何もしないグズ」ではなく、「とんでもないことをやらかすバカ」。そういう意味の、バカさが足りぬ。 とりあえず、リメイクじゃなさそうだ、ということは、判りました。それ以外はよく判りません。 [インターネット(字幕)] 2点(2021-09-03 23:46:40) |
525. 愛の新世界
題材が題材なもんで、いきなりSMシーンが登場したりして、いささか露悪的なんですけれども。そして鈴木砂羽と片岡礼子の無軌道ぶりにはハラハラさせられもするのですけれど。それでも、何だか、サワヤカな気持ちになってしまう。それが、よいことなのかどうかはさておき。 ヒトによって好みは様々、性癖も様々。となれば、それに応えるアヤしい「お仕事」があって、それに従事するヒトたちがいる。そういうヒトたちを何となく「アチラ側の人々」などと考えてしまうのは、それはそれで幻想であったりもして、「お仕事」が終われば、そこにはその人の日常がある。そのどちらも、当事者にとっては間違いなく、自分自身そのもの。 SMの女王様だって、24時間、女王様という訳ではなく(とも限らないかも知れないけど)、日常もあろうし、夢もあろうというもの。夢と言うとちょっと胡散臭ければ、情熱を傾けられる、何か。 勿論、彼女たちばかりではなく、客にもイロイロある訳ですが。 社会のウラ側を感じさせる題材にはどうしても暗い印象が伴うけど、それだけに2人が街を走り続けるシーンが妙に健康的で、肯定感に溢れてます。 しばしば挿入される写真は、今の「素の姿」、だけではなくて、過去の姿、つまりそこには、子供時代からの人生、というものもあって。誰にでも背負ってきた人生がある、ということ。もちろんSMの女王様にだって。などと言うことを言い過ぎると、営業妨害だと怒られそうな気もしつつ。 この作品に欠けているものがあるとするなら、過去があって現在の日常があって、では将来はどうなんだろう、と。誰しも後悔無しでは、生きられない。 [インターネット(邦画)] 8点(2021-08-29 14:16:39)(良:1票) |
526. スター・トレックVI/未知の世界
《ネタバレ》 メンバーもだんだんお年を召してこられて平均年齢も上がり気味、何だか、窓際族ばかり集められてさっぱり新入社員が入ってこない閑職部門みたいになってきた、このスタトレシリーズ。しかし決してそんなことはなくって(多分)、この第6作では、あのいぶし銀の重鎮、ヒカル・スールーがついに他の船の艦長に就任。それはそれはもう、本当に嬉しそうな。ちっとも似合ってないけど。 という訳でこの「いったん最終回」たる第6作は、お馴染みのメンバーの後日譚を緩~く描くオマケ企画、かと思いきや決してそんなことはなくって(しつこい)、いよいよクリンゴンとの対立関係に終止符が打たれるのか?という、スタトレファンにもクリンゴンファンにも見逃せない展開。 和平交渉の直後、エンタープライズ号からと思しきミサイルがクリンゴンの宇宙船を直撃。責任を問われたカーク船長は引っ捕らえられてしまう。この事件を仕組んだのは誰なのか、そして犯行はどのようにして行われたのか?という、SFミステリの様相を呈してきて、ちょっと新趣向。謎解きにあたるのは勿論、我らが名探偵スポック! ああ、見るからに頼りない! まあ、我々も本格推理などこの作品には求めてないので、何となく謎解きがあって、何となく流刑地でのカークの危機があって、それらが並行に進んでいくのが、見どころ。 ただ、W・シャトナーではさすがにアクションシーンが持たないので、やっぱりここは無理にでもエンタープライズに新入社員を入れて、若手をタッグパートナーとして欲しかった・・・なんて事を最終回である本作に望むのは無理筋ですかね。 で、まあ、何となく大団円となって、壮大なる物語(?)は幕を閉じ、最後の出演者のクレジットが流れると、本人直筆なのか、手書きのクレジットが出てきて。いよいよ終わりなんだなあ、と、やっぱり、感慨深いものはあります。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-08-29 12:33:47) |
527. パージ:アナーキー
年に一度、犯罪が許され人間狩りの殺戮が行われる。実際のアメリカの銃社会においても、「私は銃所持に反対です」と言ってみたところで自分だけが安全になるわけでもなし、結局は何らかの形でリスクに向き合わざるを得なくなる。一種の寓話みたいなところがあって。 この設定からは、色んなバリエーションが考えられるよね、ということで、前作が自宅での攻防戦、「わらの犬」的な状況を設定したのに対し、第2作ではパージ開始までに帰宅できず襲撃の危機にさらされる、という設定から始って、今回はちょっと「ウォリアーズ」的、とでも言いますか。 前作が当たってそれなりに儲けたのか、第2作は還元セールっぽく、肉付けもしっかりしてパワーアップした感はありますが、やはり前作の閉鎖系の籠城モノには独特の緊張感があり、今回の開放系の筋立ては少し分が悪い印象。次第に次第に窮地へ落ち込んでいく、というようなコワさがあまり無く、一作目のインパクトを超えるには、さらに工夫が必要そう。 不安感の弱さ。緊張と緩和の弱さ。せめて夜明けぐらいはもう少し印象的に描いてくれたなら。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-08-29 09:44:54)(良:1票) |
528. ファンタズム(1979)
「エルム街の悪夢」の画期的な(のかもしれない)点とは、夢の中の殺人鬼、という設定により、超現実的なオカルトの「ワケのわからなさ」と、殺人鬼モノの素朴な「ワカリやすさ」とをうまくブレンドした点にあったのではないか、と。その点、この『ファンタズム』ではまだそういう融合は無く、あくまでオカルト路線そのものですが、夢で摩訶不思議を演出してみせるシーンには「エルム街」の先駆けのようなものも感じます。 何せオカルト、オハナシはちっとも要領を得ません。まあ、ホラー系の映画に出てくる「悪」なんてのは、「悪」そのものであって、そこには目的も何も無いのが普通、ではあるのでしょうが、この『ファンタズム』では、変な髪型のオッサンが出てきて、これが「悪」の存在らしいのだけど、何を狙っているのか、最後どうなればいいのか、まったく不明。凶暴な殺人鬼ならともかく、何しろただのオッサンなもんで。 といういかにもファジーな設定の中で、様々な得体の知れない事が起こり、こういうワケのわからなさ、何が起こるかワカラン感が、良いんですねえ。 あの謎の金属球。なんでこんなモノにこんな殺され方をしなければいけないのか。ワケはわからんけど、恐怖と残酷趣味とユーモアが一体になっていて。宙を飛ぶ凶器を側面から静止画で捉え、背景の映像を高速で流して見せる、なんてのは、よく見る演出ではありますが、もしかしてそのハシリなのかも。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-08-28 11:34:49) |
529. 木枯し紋次郎
《ネタバレ》 とある男の身代わりとなって罪を被り、三宅島に島流しとなってしまった木枯し紋次郎。だもんで、物語の少なからぬ部分が島流し先でのオハナシとなり、渡世人らしいエピソードはあまり無くって、何となくモヤモヤしています。それを補うように、多少、時間軸を行き来する語り口になっていたりもするのですが、あまり効果を上げていないようにも。 一方、冒頭のクレジットに「協力 三宅島観光協会」と書かれているところを見ると、実際に三宅島でロケ撮影をしたらしく、なる程、孤島らしい雰囲気が充満しています。 と言うわけで、どっちかというと、これは和製パピヨン、でしょうかね。 ただ、いよいよ島抜けを決行する段となって、小舟で大海原へ乗り出すも、嵐にあって難破する場面。流れついた先の光景が三宅島のそれと変わり映えがせず、結局、海岸の光景なんて島でロケしようがしまいが、大差ないんだなあ、と。それはいいとしても、このシーン、私はてっきり「三宅島にまた戻ってしまった」と思ったもんで、後で伊豆だと聞かされてズッコケそうになりました。三宅島ではない別の場所であることを示すカットが一発あれば、もっとスッキリしたかも、、、 という訳で、正直この辺りまではあまりノレなかったのですが、ここからは見どころ。紋次郎の前で繰り返されていく様々な悲劇(どうでもいいような殺し合いを含め)が、彼の虚無的な表情の向こうで彼の感情をひそやかに揺り動かし、最後の決めゼリフへと結びついていく。やっぱり、かっこいい。 [インターネット(邦画)] 6点(2021-08-28 11:05:07) |
530. ファンタズム II
とあるオネーチャンが前作のラストを幻視するところから始まって、で、数年後。主人公の役者がここで代わり、若干グレードが落ちた感があり、そもそも同一人物という設定なのか少し混乱しますけれども。 内容は前作を踏襲して、何だか得体が知れず何だかよくわからないオカルトテイスト。前作のあの、変な髪型の顔色が悪いオッサンとか、イウォーク族(?)とか、便利グッズもどきの金属球とかが相も変わらず登場。 一方で、前作でも見られた、銃撃だのカーアクションだのはパワーアップ。妖怪変化に対し火器で立ち向かうというのも無茶な話、しかも張り切って戦ってるのがハゲ親父(前作の頃からすでにハゲてたアイスクリーム屋)だからもう一つ様になりません。が、爆破だの火炎放射だのといった派手さを見せつつも、オカルト路線の基本は守っていて、おバカアクションにまではなっていないのが、節度と言えば節度。 結局は前作のワクを超えられずに、派手さの割りには小さくまとまってしまった印象ですが、変に続編の義務みたいに説明モードに入ってしまうこともなく、ちゃんとワケのわからないオカルトに仕上がってる点は、よかったかな、と。 主人公とヒロインに、もう少し魅力かあれば。 [インターネット(字幕)] 6点(2021-08-28 10:30:18) |
531. ハワイの若大将
正しくは「サライの若大将」。んなアホな。 ハワイと言いながら、どうせそんなシーンはごく一部でしょ、どうせ最初の30分以上はハワイなんか出てこないんでしょ、とタカをくくってたら、開始からギリギリ30分弱で、若大将はサライの空、じゃなかったハワイの空へと旅立ちます。 その理由というのが、カンニング騒動で青大将ともども大学を停学になり、それに合わせてハワイに渡った青大将が現地で悪行三昧、というほどでは無いにしても、とにかく彼を日本に連れ帰るべく若大将もハワイへ。 海外でも臆せず堂々としているのが、さすが若大将、といったところですが、早速パスポートと財布を無くしてしまい・・・という、全くヒネリも何もないありきたりな展開。とか言っちゃいけないのかな。海外旅行の珍しい時代、まさにベタネタの最先端といったところでしょうか。 あとはもう、別にハワイでなくてもいいやんか、という極めてどうでもいい展開。ただ、ワイキキの光景が今と本当に異なっていて、あの高層ホテル群がまだ殆ど建っておらず、日本の鄙びた海水浴場と大差無いように見える。なかなか貴重な光景です。ただダイヤモンドヘッドだけが、今も昔も変わらない。 で、早めにハワイへ来たと思ったら帰るのも早く、早々に帰国後、終盤はヨットレースを延々と見せられ、これがまたちっとも面白くない。 その面白く無さこそが、加山雄三そのもの、という気もするんですが、それを言っては身も蓋もないので。 [インターネット(邦画)] 4点(2021-08-26 22:17:57) |
532. 新宿純愛物語
ビーバップハイスクールでは物足りなくなった人のための劇薬級の映画。何がって、このデタラメさが。 ビーバップそのままのチンピラ若造仲村トオルが、さんざん単細胞ぶりを発揮した挙げ句、ヤクザも刑事も怒らせて三つ巴(?)の抗争へ。マシンガン、火炎放射器、手榴弾、日本刀で襲いかかってくる刺客たちとの、いつ終わるともしれぬ激闘が、一大クライマックスとなっています。 作中のシーン全てではないだろうけれど、タイトル通り実際に新宿の街中でロケ撮影されたシーンも多く見受けられ、しっかりと雰囲気を伝えつつも、その無謀さがまた何となく胡散臭かったり。 クライマックスの銃撃戦、爆破、炎上。日本映画もやればここまでデキるんだなあ、と。いや全然デキてないけどね。でも大胆、そして勢いがある。これを厚かましいとも言う。素晴らしいとも言う。ジョン・マクティアナンはもしかしてダイハードを撮る前にこの作品を見てたんじゃないかとすら思えてくる。いや、思うだけなら勝手でしょ。 それにしても、プロレスラー木村健吾よりもピッチャー江夏豊の方がやたら迫力あるのは、どうしたもんだか。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-08-25 23:08:06) |
533. ディスクロージャー
《ネタバレ》 例によって例のごとくいかにもエグゼクティブなマイケル・ダグラスが、デミ・ムーアに言い寄られて危うく貞操を奪われそうになる(今さら?)のを、柄にも無く自制心を働かせてしまったもんで、今度は彼女にセクハラで訴えられてしまう。という訳で以下、ひと頃のクリントン大統領みたいな情けない状況に置かれちゃう。 結局は何だかんだと偶然が続いて、彼は命拾いをし、彼女に一矢報いたりもするのですが(しかし彼女には社外にちゃんとポストがある、というなかなかの皮肉)、この作品を見てると要するに、こんな目にあったら、確かにこれだけ偶然が続きでもしない限り、まず助からんよなあ、と。そういう意味ではなかなか怖いオハナシです。 携帯電話持っただけで浮かれてるダグラス親父の前には未知のVR空間が広がり、このヒト、今回は何とかなったものの、早晩、時代に取り残されるんだろうなあ、と思わせられ、アナログ世代の最後のひと足掻き、みたいな感じが、これまたマイケル・ダグラスというヒトからは絶妙に染み出しているのでした。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-08-23 22:36:01) |
534. 女囚さそり 701号怨み節
シリーズ追うごとに、前衛的と言ってよいのかそれとも単にデタラメなのか、どんどんワケのわからない方向に突き進み、ついにこの第4作では監督交代と相成りました。そうするとやたら暗いオハナシになっちゃって。前作までのあのワケのワカラナサってのも、暗くなりすぎないように毒消しの効果でもあったのかな、と。 今回、さそりを目の敵にするのは、細川俊之。これが渡辺文雄とかだったら冷酷さの中にもユーモアが感じられるけど、普通に冷酷モードです。 一方、さそりが出会う元反体制活動家が、田村正和。なーんかヘンなんですけど、どこがヘンなんでしょうねえ。ははは。話し方はこの頃から、例の通りでありました。 で、この3人には、三者三様の「恨み節」があって、まあ、暗いのなんの。恨まれ役は一人もおらず、全員が恨み役。 4作の中では一番マトモ(刑務所がショッカーの基地みたいに描かれるのは不問として)な気がしつつも、これはこれで別種のアブナさのある、シリーズ最終作でした。 [インターネット(邦画)] 6点(2021-08-22 18:00:55) |
535. 神さまの言うとおり
《ネタバレ》 どうしてこんなに面白くないんだろう、とつい考えてしまう点では、これも「考えさせる映画」なんでしょうけど。 結局のところ、誰も何も「決断しない」のが、つまらんのかな、と。最初からいきなり不条理世界が始まっていて命を賭けたゲームが展開され、主人公ですらまるで背景がわからない存在なんだから、ここで次々死んでいく連中はこの作品の中では単なる「死体」でしかなく。主人公を含む中心人物たちもおよそ背景を有さない単なる「駒」となっていて、その割りにはグズグズと悩んでみせるのが、見ててさほど面白くない。悩みよりもここは、恐怖、じゃないのかしらん。 で、グズグズ悩んだ挙げ句に、急に「真相を見切った」と、我々見る側にわざわざ不必要な了解を求めてくる。納得なんてのは後でするもんであって、それをなぜ、先に納得させようとするのか? だもんで、ここには「理解」はあれど、「決断」がまるでない。これの繰り返し。ただただ、事件が起こり人が死に、だけど決定的にサスペンスが欠けていて。 全編通した一貫性もなく、これはもう、ただの思いつきの羅列に過ぎないんじゃないでしょうか。 [インターネット(邦画)] 3点(2021-08-22 17:38:03)(良:1票) |
536. ラストサマー2
《ネタバレ》 ブラジルの首都がリオで、カナダの首都がトロント?モントリオール?で、オーストラリアの首都がシドニー?メルボルン?で、スリランカの首都はコロンボである。そんな常識問題に正解しただけでバハマ旅行に行けちゃうなんて、羨まし過ぎるではないか、と思うところですが、そこは怒るところではありません。だって、誰がどう考えても「そこで惨劇が発生する」映画、なワケですから。 と言うわけで、今回は「海の孤島」モノ。そのまんまですね。陸の孤島とか、雪の山荘とかはよく聞きますが。しかしこの殺人鬼、夏になると現れるかつてのTUBE方式ですから、なかなかタイミングよく雪は降ってくれない(しかしTUBEだって紅白歌合戦に出たくらいだから、冬に殺人鬼が出てもおかしくないのです)。 それはともかく。まず一行が到着したら、高級リゾート地らしいのに客はいないし、従業員もあまりいない上にやたら愛想が悪い、ってのが上々の滑り出し。愛想が悪いか、キモチ悪いかのどちらか。自腹でこんなところ行ったら、ショックで寝込みます。このヤな感じが、ホラーの基本。 例の鉤爪殺人鬼も、チラチラと姿を垣間見せるチラリズムで存在をそこはかとなくアピール。若干、戦闘能力に欠けると思われた鉤爪も、ここでは様々な殺傷方法でその威力を見せつけ、こういうのもホラーの見せ場の一つです。 この作品、ストーリーに意外性がどこまであるかはさておき、クライマックスで見せる、いい意味でのしつこさには、サービス精神が大いに感じられ、そこが一番の意外性、でした。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-08-22 08:25:59)(良:1票) |
537. BEST GUY
『トップガン』のパクリ映画を作るだなんて、誰が聞いたって無謀そのものなんですが、岡田茂社長時代の東映だからこそ通ってしまった企画、なのかどうなのか。もはや、トップガンとはなるべく距離を置こうなどという意思も感じられず、諦めムードすら漂っており、まあ間違いなく「怪作」のたぐいでしょう。いっそ「壊作」とでも呼びますか。 あちらがトニー・スコットなら、こちらはアクションならこの人、村川透。なんか妙に納得しつつ、ちょっと違うような気もして。トニスコには遊戯シリーズは撮れんだろうし、村川監督だってトップガンは難しいだろう・・・。 ドラマ部分の演出は決して負けてないと思うんですけどね。あまり中身が無いのはお互い様。米国海軍に対抗してこちらは航空自衛隊の協力のもと、貴重かつ迫力ある映像の数々が登場します(一種の機能美ですな)。戦争とは無縁だと思ってる今の日本にも、こういう世界がある、ということ。ただ、映像が合成になったとたん、迫力が数段低下してしまうのは、これは元映画との比較が避けられないパクリ映画の宿命ですね。で、あちらがトムクルーズならこちらは織田裕二とくる。まあ、これも納得か。ケリー・マクギリスには財前直見。これは、何と言ってよいやら。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-08-22 06:54:37) |
538. ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎音頭
このシリーズからはすでに何人かの出演者が去っているとは言え、ついに主役の清水宏次朗までが逃亡! そもそもこのシリーズは超いい加減で、作品変われば、同じ役を別の人が演じたりするばかりではなく、同じ人が別の役を演じてたりもするので(どうせ不良ばかりで誰が誰やら見分けもつかないので、何の違和感も感じさせない、というシステム?)、ヒロシ役も、誰かヒマそうで命知らずの役者を見つけてきて変更してもよかったんじゃないの、と個人的には思うけど、あくまで個人の感想です。 と言うわけで、物語の中心には仲村トオルが一人。ただしその周りには不良オールスターズがわんさか登場し、ひたすら抗争に次ぐ抗争。主役が売れた2作目以降、やや迫力を欠きつつあったこのシリーズに、活力が戻って、まさに原点回帰。 ポリスストーリーでジャッキーが繰り広げた百貨店での死闘、あれを臆面もなくパクってるんですけど、要するに、日頃の鍛錬もテクニックもなく、根性だけで同じことをやらせようという、これぞビーバップ魂。だもんで、似ても似つかぬカオスになっちゃってます。いやはや痛快。一種の奇跡。 まだ死人が出てないのも、奇跡と言えば奇跡。え、出てないよね? [インターネット(邦画)] 8点(2021-08-21 11:41:51) |
539. 湯殿山麓呪い村
およそイヤな予感しか起きない、えらく小粒な印象の密室殺人事件、トリックはというと、例のあの名作ミステリ(自粛)と、例のあの名作ミステリ(こちらも自粛)を組み合わせだけだしなあ。とか言うのは、言いっこなし、かも知れませんが、少なくとも、映画として見せるには、余りに意外性もカタルシスも無くって。 即身仏に纏わる因縁めいた話が現代に繋がる、ってのは悪く無いんだけど、言うほど繋がってない、というか。 一体、この「真相」から、何を汲み取ればいいんですかね。と、ちょっと蚊帳の外に置かれた感。 とは言え、やっぱり、一体何なんでしょうね、この、ミイラというものに対するワクワク感ってのは。 [インターネット(邦画)] 5点(2021-08-21 11:17:10) |
540. 地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン
何と言っても中野昭慶氏のこれでもかという爆破シーンの数々。いや、これしか見所無いんですけど、ゴジラ映画低迷期をしっかり支えて、お釣りが来ます。 今回は3対2の変則タッグマッチ、片やギドラ&ガイガン(新人)&ゴジラタワー、これに対するは、アンギラスなんて殆ど戦力外なのでゴジラのローンバトル。危うしゴジラ。 もっとも、爆破につぐ爆破の演出の中、一番大変そうなのは、四つん這いで炎に一番さらされている、「アンギラスの中で演じてる人」ではありますが。 ガイガンの造形は、未来的宇宙的かつヒールを感じさせ、悪くないはず、なんですが、如何せん、ギドラがメインでその添え物的な扱いになってしまってます。まるで営業が新入社員を連れてお得意様に挨拶廻りしてるみたいな。 なにやら文明批判を匂わせるような匂わせないような中途半端な展開のまま、結局、怪獣界の「G」ことゴジラに闘いを挑んでいた宇宙人の正体も「G」だった、というオチ。 なぜか子供の頃、ゴジラ映画の中ではこの作品ばかりがやたらテレビ放送されてたなあ、という印象があり、よりによって・・・という気持ちが無かった、と言えばウソになるのですが、怪獣バトルとしてはそれなりに充実してたかな、と。 恐らくは相当に予算が限られている中で、ゴジラタワーの描写はセットとミニチュアを活用して、なかなかうまく描いてます。 [インターネット(邦画)] 7点(2021-08-21 10:56:37)(良:1票) |