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イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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521.  必死剣 鳥刺し 《ネタバレ》 
藤沢周平の「隠し剣」シリーズの一篇を映画化した平山秀幸監督の時代劇。山田洋次監督以外の藤沢周平原作映画を見るのは初めてだったが、かなり本格的な時代劇でなかなか面白かった。打ち首覚悟で藩主(村上淳)の側室(関めぐみ)を斬殺したトヨエツ演じる主人公・兼見の処分がなぜ軽かったのかという点は最後まで興味を引くし、この主人公の生き様とでも言おうか、それを描いたドラマとしてもよく出来ていると思う。この兼見と吉川晃司演じる別家との対決、およびその後の大人数を相手にした決闘シーンがすごい迫力で、最近はCG処理されることの多い流血シーンを血糊で撮影したりしていてかなり気合が入っていてこれぞ本物の時代劇という感じがした。そして最後に兼見が繰り出す必死剣 鳥刺し。先ほども書いたように最初、側室を殺めた時点から死を覚悟しているような兼見だが、この技はまさにそんな兼見の執念がにじみ出ていて本当にすごかったし、兼見を利用するだけしておいて側室同様に道理に反することをし、結局は鳥刺しによって命を落とした家老・津田(岸部一徳)や最初に兼見に殺された側室の最期は兼見とは対照的でなんとも皮肉めいている見事な結末だった。最後のシーンが来るはずのない兼見を待ち続ける里尾(池脇千鶴)というのも余韻を残すうまいラストシーンだった。ただ中盤あたりに兼見と里尾の濡れ場があったのは余計だったかな。それに岸部一徳を時代劇で見るとたいがい悪役なので意外性に乏しく、側室役の関めぐみもわかりやすすぎる悪女でちょっと残念。とはいえ、トヨエツを時代劇の主役で見るのは初めてかもしれないが、静かな抑えた演技で味のある演技をしていてとても良かった。それにかなり久しぶりに見た平山監督の映画だったが、また平山監督の映画に興味がわくにじゅうぶんな出来だったと思う。
[DVD(邦画)] 7点(2012-07-06 23:28:32)(良:3票)
522.  ザ・ヤクザ(1974) 《ネタバレ》 
日本のヤクザを描いたシドニー・ポラック監督によるアメリカ映画だが、製作総指揮に俊藤浩磁、撮影に岡崎宏三、撮影所は東映京都という合作仕様。外国映画の中の日本と言うと日本人が見て違和感を覚える場合が多いが、この映画はその描写がかなりまともで、ロバート・ミッチャム演じる主人公と高倉健演じる元ヤクザとのドラマも見ごたえがあって面白かった。クライマックスの殴り込みのシーンはほとんど東映のヤクザ映画そのままな感じで、ドスを片手に敵と戦う健さんを見ているとハリウッド映画じゃなくて本当に東映の任侠映画を見ている感覚になり、少し妙な感じがするのも事実だが、ハリウッド映画でもヤクザを演じて様になっている健さんはやっぱりこういう役がいちばんのハマリ役なのだろう。ほかの日本人キャストも岸恵子(外国映画とはいえこの人をヤクザ映画で見るとは思わなかったなあ。)、岡田英次と海外の映画に出演経験のある人をキャスティングしていて抜かりがない。日本を舞台にしたアメリカ映画で健さんが出演というと「ブラック・レイン」が思い出されるが、こちらのほうが日本を描いたアメリカ映画としての出来は上のように思う。でも、ロバート・ミッチャムが指を詰めるシーンはちょっと笑ってしまった。
[DVD(字幕)] 7点(2012-06-28 15:54:57)
523.  酔いがさめたら、うちに帰ろう。 《ネタバレ》 
西原理恵子の夫のアルコール依存症闘病記を「サード」の東陽一監督が映画化した作品。こう聞くと重苦しい映画のように思うが、東監督は主人公をあくまで客観的に見つめることで、けっして重くならないようなつくりにしている。アルコール依存症の患者の描写が主人公含め全くリアルでないのもおそらく意図的なものだろう。確かにこれではアルコール依存症の本当の意味での怖さというものは伝わらないかもしれないが、東監督はあえてリアルさを抑えて客観的に描くことでこのだらしない主人公の滑稽さを強調することで観客に主人公に対して同情の余地を与えないという狙いがあったのではないだろうか。アルコール病棟の患者たちの日常は病気に関してはリアリティーがないものの、そのほかは実際の入院患者たちの日常を垣間見ているようである。どことなく「サード」の少年院を思い出してしまうが、ここがドキュメンタリー出身の監督らしいところかもしれない。ただやはり「サード」のほうがこういうドキュメンタリータッチの演出は活かされている気がする。浅野忠信は「風花」でも酒を手放すことのできない男を演じていたが、本作でも酒に溺れる男を違和感なく演じており、「風花」のDVDのメイキング映像において、本当は酒が飲めないふうなコメントをしてたと思うが、それが信じられないほどの演技を見せている。永作博美演じる妻の「一度好きになった人のことをなかなか嫌いにはなれない。」というセリフが印象的だった。ラストの海で戯れる家族とエンディングの忌野清志郎「誇り高く生きよう」が余韻を残す。
[DVD(邦画)] 7点(2012-06-07 13:55:07)
524.  八日目の蝉 《ネタバレ》 
特に興味もなかった映画だったのだが、見ているうちにだんだんと引き込まれた。他人の子どもを赤ん坊のときに誘拐して育てながら逃避行を続ける女・希和子(永作博美)を描いた過去と、成長した娘・恵理菜(井上真央)の葛藤を描く現代が交互に出てくるが、二つのパートとも丁寧で秀逸なつくりで、日本映画らしい日本映画になっている。本当は永作博美演じる希和子は憎らしい存在なはずなのに、話がすすむうちにこの二人が愛おしく微笑ましく見え、本当の親子ではないことをつい忘れてしまうほどだった。それだけに希和子が逮捕されるシーンは切ない。赤ん坊を誘拐された家族にとっては一刻も早くわが子に戻ってきてほしいという気持ちは分かる、でも誘拐された赤ん坊にとってはこのまま本当のことを知らずに育てられるほうがしあわせかもしれない、ふとそんなことを考えてしまった。あまり出演作を見ていないせいか現代パートで主人公を演じる井上真央には明るいイメージがあるのだが、暗い過去を持ち、その過去を肯定するまでの主人公をうまく演じており、幅の広さを感じた。ラストの恵理菜の決意も泣ける。暗く重苦しい映画だが、女性の強さや希望といったものを感じられるいい映画だったと思う。また、現代の希和子をあえて出さずに終わったのはいい意味での裏切り。後半の舞台である「二十四の瞳」でお馴染みの小豆島(二十四の瞳映画村が撮影協力としてクレジットされている。)の美しい風景も印象的だ。おそらくここでの生活が二人にとってもっとも幸福な時間だったのではないだろうか。
[DVD(邦画)] 7点(2012-05-24 18:02:04)(良:1票)
525.  櫻の園(1990) 《ネタバレ》 
はじまってしばらくはガールズトークばかりで少し冗長に感じていたが、不思議と退屈することなく、むしろ最後まで面白く見れた。演劇部の生徒役は全員がオーディションで選ばれたらしいけど、全員が初々しく、自分が馴染みのない役者ばかりなためもあってか、すんなりと映画に入っていける。また、中原俊監督の映画を見るのはこれが初めてだったのだが、映像が美しく、若い登場人物たちの描き方も秀逸。実際の女子校とはだいぶ雰囲気が違うのかもしれないが、男である自分でもこの女子校の雰囲気に憧れを抱かせてしまうのはすごいと思う。志水(中島ひろ子)と倉田(白鳥靖代)の同性愛的な関係が出てきたのには驚いたが、この二人が並んで繰り返し写真を撮るシーンはこの映画の中でも非常に美しく印象的で、まさに名シーンだと思う。全体を通して流れる「ショパンの主題による変奏曲」も効果的に使われていて、この曲だからこそこの映画の雰囲気も生きてくるのだと思う。人によっては好き嫌いは分かれるかもしれないが、個人的には見てよかったと思うし、じゅうぶんに佳作といえる映画だろう。あと一つ、上演が中止になるかもというくだりで、先生達にとっては毎年の恒例行事でも3年である自分たちには今年しかないんだと話すシーンは思わずそうだよねと感情移入してしまった。
[DVD(邦画)] 7点(2012-05-17 23:59:59)
526.  復讐するは我にあり 《ネタバレ》 
今村昌平監督の代表作の一つで、実在の連続殺人犯を描いた作品。どうも濃そうで今まで敬遠していたが、今回やっと見た。前半の殿山泰司と垂水梧郎を殺すシーンから既に引き込まれた。主演の緒形拳は見事な熱演で主人公を演じていて、リアルすぎて怖い。実際の殺害現場で撮影したという今村監督のこだわったドキュメンタリータッチの演出も映画にリアル感を生んでいる。描かれる人間関係もどろどろとしていて、主人公を含め、主要な登場人物に誰ひとりとして感情移入できないが、わざとそういうふうに描いているようにも思う。今村監督の映画はあまり見ていないのだが、このどろどろとした人間を描くのが今村監督の持ち味というか特徴なのだろう。三國連太郎と倍賞美津子が緒形拳の遺骨を海にまくラストシーンは重々しく、投げた遺骨のストップモーションの繰り返しはこの主人公の執念を表しているようであるが、それがどこか喜劇的な演出であるというのがすごい。難を言えば清川虹子と小川真由美の親子が登場するあたりから少しダラダラ感があったのと、途中から時系列がよく分からなくなるのがマイナスだが、じゅうぶんな力作だと思う。全体的に重々しい映画であるが、川島雄三監督の映画の常連俳優であるフランキー堺が川島監督の助監督だった今村監督の映画に出演しているのはなんだか嬉しい。
[DVD(邦画)] 7点(2012-05-02 15:22:52)
527.  あゝひめゆりの塔
のちに戦争映画の大作を何本か手がけることになる舛田利雄監督によるひめゆり学徒隊をテーマにした反戦映画。主演が吉永小百合と浜田光夫というのが不安ではあったが、「日本海大海戦 海ゆかば」のような中途半端な恋愛要素はなく、ひたすら悲劇的な末路を辿る少女たちの運命が丹念に描かれていて思ったよりはずいぶんいい映画だった。何回かリメイクされている「ひめゆりの塔」とは直接は無関係な映画だが、それでもこういう映画は見終わって何か考えさせられるものがある。白黒作品というのもリアリティーがあってそれのおかげで生々しさもより伝わりやすいものとなっている。でも冒頭の現代のシーンは最初よりもラストに持ってきた方が効果的だったと思うし、吉永小百合は熱演しているが、やはり少し演技力は微妙ではある。しかし、全体を通して神山征二郎監督の「ひめゆりの塔」(唯一自分が見たことのあるひめゆり学徒隊を扱った映画。)と比べると重みが全く違う作品になっている。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-05-01 12:04:52)
528.  快盗ルビイ 《ネタバレ》 
「麻雀放浪記」に続く和田誠監督の第2作。「麻雀放浪記」では渋い男たちの世界がモノクロ画面の中にこれでもかと言わんばかりに展開されていたが、この映画は小泉今日子主演のアイドル映画。小泉今日子はさして好きな女優というわけではなく、アイドル時代の出演作を見るのも初めてだったため、ファン以外にはきつい映画かもしれないと思いながら見始めたが、なんともお洒落な映画でなかなか楽しめた。ルビイこと加藤留美を演じる小泉今日子がなんともかわいらしく、それでいて真田広之演じる下の階のダメ男をうまく自分の泥棒計画の相棒にしてしまうという小悪魔的な女を演じており、すごく魅力的だし、元々小悪魔的なイメージの強い人なのだが、そのイメージはおそらくこの映画からできたものなのではと思える部分もある。対する真田広之の三枚目のダメ男も思ったほど悪くなく、この二人のやりとりを見ているだけでもじゅうぶんに楽しめ、主演のふたりが「たとえばフォーエバー」を歌うシーン、窓から二人で星を見ているエンドロールが素敵だ。そのエンドロールでカーテンコールのように出演者がクレジットされる演出もいい。天本英世や名古屋章(二人とも「麻雀放浪記」にも脇で出ていたな。)といったチョイ出のわき役たちも光っている。映画としては特に傑作というわけではないが、サクッと見られる娯楽映画の王道的作品だろう。面白かった。
[DVD(邦画)] 7点(2012-01-21 13:52:41)(良:2票)
529.  あにいもうと(1953) 《ネタバレ》 
成瀬巳喜男監督による文芸作品。タイトル通り兄と妹を描いた物語なのだが、これがけっこうドロドロとしている。それでもこの映画に出てくる兄妹はどこか他人事ではない気がしてしまうのも事実で、兄(森雅之)が妹(京マチ子)を妊娠させた男(船越英二)に暴力を振るうシーンはこの兄の妹に対する素直な思いが伝わってきて感動したし、もしぼくが同じ立場なら相手の男に対して同じことをするのではないかとつい思ってしまった。だから、そのことを巡って起きる終盤の二人の凄まじいケンカのシーンは、兄と妹、双方の気持ちが理解できるような気がする。しかし、ラストのもんがさん(久我美子)に兄に対する思いを打ち明けるシーンがこのドロドロとした兄妹愛を描いた映画のラストとしては実に後味がよく、このシーンがあるからこんなドロドロとした映画を見終わったあとでもさわやかな印象が残り、成瀬監督の余韻の残し方のうまさを感じる。大映作品であるためか京マチ子や船越英二が成瀬作品に出演していているのが珍しいし、ほかの成瀬作品と比べてストレートに感情を表現するシーンが多く、終盤のケンカのシーンの凄まじさもあり、映画としてはなんだか同じく成瀬監督の「あらくれ」に近い印象。兄を演じる森雅之が少しミスキャストのような気がするのが惜しいところだが、それでも成瀬監督らしい人間の描写が素晴らしく、じゅうぶんに佳作といえる映画だと思う。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-12-24 14:44:51)(良:1票)
530.  破戒(1962) 《ネタバレ》 
「炎上」、「ぼんち」に続いて市川崑監督が市川雷蔵を主演に起用し、被差別部落問題を描いた社会派映画。雷蔵は「炎上」でもコンプレックスを抱える主人公を熱演していたが、この映画でも自身が部落の出身であることに苦悩する主人公の小学校教師を演じており、「炎上」同様に雷蔵は時代劇スターとしてではない演技派俳優としてのうまさを発揮していて、初めて見た雷蔵の出演作が「炎上」だったせいかこういう苦悩する若者という役柄は雷蔵にとって現代劇でも時代劇でもはまり役だと思う。映画としても力作で、前年市川監督がテレビドラマでやっていながらもう一度映画でやりたいと思うほど原作に惚れ込んでいたというのがよく分かる。雷蔵演じる主人公 丑松が教え子たちに自分の出自を告白するシーンはとくに演出も演技もかなり力が入っており、思わず丑松に感情移入して感動してしまった。長門裕之演じる丑松の同僚教師もいいし、モノクロ画面をフルに生かした宮川一夫のカメラも美しく見事。しかし、いい映画であることは確かなのだが、ちょっと全体的に力みすぎていてあまりにも重苦しく好きな映画かと言われればちょっと微妙というのが正直なところ。丑松が尊敬する自らも部落出身である部落民解放運動家の猪子を演じる三國連太郎は実際に養父が被差別部落出身であることを公表しており、だからかもしれないが、この猪子という登場人物にはものすごいリアリティーと説得力が感じられる。
[DVD(邦画)] 7点(2011-12-22 13:48:40)
531.  この子の七つのお祝いに 《ネタバレ》 
増村保造監督の映画での遺作となった角川春樹製作のサスペンス映画。増村監督の映画は既に20本以上見ているが、大映以外の作品を見るのはこれが初めて。冒頭の殺人事件のシーンは血が派手に飛び散るショッキングな演出で、ほとんど市川崑監督の金田一耕助シリーズのようなノリで、(音楽を大野雄二が担当してるし。)これだけで本当にこれが増村監督の映画なのかと思ったが、岩下志麻演じるヒロインの何を考えているのか分からないミステリアスさや、女の情念の描き方などはいかにも増村監督らしい部分だ。しかし、何か物足りない。ヒロインを演じる岩下志麻は復讐に燃える女を好演しているが、「鬼畜」などで既に強烈なインパクトのある怖い役がはまり役になりはじめた頃の岩下志麻では、どうもそのインパクトだけが先行してしまい、背景のドラマにあまり入っていけない。これが大映時代増村映画の顔だった若尾文子ならまた印象は違っていたのではないかと思うが、増村監督の演出にも衰えを感じる。たとえばこんなことは書きたくないが、岩下志麻の演技力にすべて頼ってしまっているような感じで、若尾文子や安田道代、緑魔子、野添ひとみといったこれまでの増村映画の主演女優が見事に増村監督の色に染まっていたのに対し、増村監督でなければ出せないような岩下志麻の魅力というものを感じなかった。ラストも増村監督にしては湿っぽい。それから「青空娘」でセーラー服姿の若尾文子をかわいらしく撮っていた増村監督だが、この映画では高校時代という設定でセーラー服を着た岩下志麻の写真が登場する。山田洋次監督の「いいかげん馬鹿」でのセーラー服姿が初々しかった岩下志麻だけど、その頃は20代。もうこの映画の頃は40代で、増村監督得意の変態的な演出かもしれないが、やはりおばさんが高校生のコスプレをしているようにしか見えず違和感がある。(笑えることは確かだが。)せめてその部分は若い頃の岩下志麻の写真を使うべきだったんじゃないのか。話自体はそこそこ見ごたえがあり、見ている間は退屈しなかったのだが、やはり遺作だからか出来としては今まで見た増村映画の中でははっきり言ってイマイチ。久しぶりに見た増村監督の映画だっただけに残念。でも、できれば増村映画に本格的にはまる前に見ておきたかったなという気持ちはある。今まで見る機会にあまり恵まれなかったんだからまあしょうがないんだけど、やはり増村映画をたくさん見た今になって初めて見たらなんだか物足りなく、まして遺作がこれなんだと思うとこの監督の映画を好きな者としてなんだか悲しくなってしまう。大目に見て6点くらいなのだが、寝物語に「あなたのお父さんは悪い人。大きくなったら仕返ししてね。」と毎晩のように幼い娘に言い聞かせ、「とおりゃんせ、とおりゃんせ」と歌うヒロインの母親を演じた岸田今日子が怖く、インパクトが非常に強い。出番は多くないのだが、間違いなくこの映画の登場人物の中でいちばん印象に残る。かなり甘めだとは思うのだが、この岸田今日子の存在感に1点プラスの7点。それにしても増村監督はこの時58歳。この後も何本かテレビドラマの監督を手がけた後に62歳で他界しているけど、ちょっと若すぎる。もう少し長く生きていてほしかった。
[DVD(邦画)] 7点(2011-12-07 02:44:30)(良:1票)
532.  うる星やつら 完結篇 《ネタバレ》 
原作の最終エピソードを描いた劇場版第5作。テレビシリーズが原作の終了を待たずに終わってしまい、ファンの要望に応えるかたちで作られた作品だそうだが、ほかの劇場版と違って原作となるエピソードが存在するためか、多少詰め込みすぎな印象があるものの、それでもこのシリーズに少しでも思い入れがあればじゅうぶんに楽しめる内容になっている。地球の存亡のためにあたるがラムと鬼ごっこをするという展開は完全に第一話と対になっていて、最後にきて改めて「うる星やつら」という作品の肝はあたるとラムの鬼ごっこにあるのだなと感じさせてくれる。それに加えて記憶喪失装置の作動によってあたるがラムの角をつかまなければ記憶が消されるという展開もドラマを生んでいて、寝ているあたるにテンが泣きながら「お前のこと、忘れられてせいせいするわい。」と悪態をつくシーンや、いよいよリミットが近づいたときにサクラが弁天たちにかける言葉が感動的。この後の鬼ごっこの結末にも思わず感動した。「うる星やつら」の幕引きとしては最高の終わり方ではないだろうか。作風的にはあまり劇場版という感じはしないのだが、丁寧に作られていて、ファンの期待を裏切らない作りなのが好感が持てる。声優陣の演技も気合いが入っていて、これが最後という雰囲気がよく出ている。中でもかつてラン役だった井上瑶をカルラ役で起用しているのは偶然ではなく、最後のお祭りにどうしても彼女を参加させたかったというテレビシリーズからの関係者の思いがあったのではないかと、ついそんなことを考えてしまうキャスティングでこのアニメの制作メンバーの絆の深さも感じられた。ただ、本当にこれで終わっていれば潔かったのになという思いもあって、本作を見たあとで先週見た(この映画の次作である)「いつだって・マイ・ダーリン」を見ていたら、「いつだって・マイ・ダーリン」の感想はボロボロだったかもしれない。
[DVD(邦画)] 7点(2011-11-17 14:53:26)(良:2票)
533.  朗かに歩め 《ネタバレ》 
小津安二郎監督のサイレント映画。冒頭のシーンなんかは完全にハリウッドのサイレント・コメディーのようなノリで、もうここですでに日本映画ではないような印象があるが、内容はヤクザな男がふとしたきっかけで堅気のヒロインと知り合い、恋に落ちるというちょっと「男はつらいよ」シリーズを連想しそうな話である。が、日本的な雰囲気と、外国映画のようなモダンな雰囲気が混在しているので、ある種、無国籍映画のような印象を受けた。主人公と舎弟の男とのやりとりは見ていてなんだか微笑ましく、とくにこの舎弟の男がいい味を出していて、彼がいるからこそ、モダンなだけではない人情話としての側面がより強調されているのではないだろうか。主人公が警察に逮捕されるシーンでの舎弟のセリフにはジーンとした。それに連行されていく主人公に対して「待っていますわ。」と声をかけるヒロインにも切なさを感じる。ここで終わりではなく、最後は主人公とヒロインがめでたく結ばれるというハッピーエンドなのが心憎い。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-09-25 14:22:57)
534.  風の中の子供 《ネタバレ》 
清水宏監督の映画を見るのはこれが初めてだが、子供の描き方が小津安二郎監督以上にイキイキとしていて、主役の子供二人を見ているだけで楽しいし、それでいながら戦前である当時の状況もかいま見えて面白かった。清水監督はロケ撮影を多用する監督として知られているみたいだけど、なるほど、この映画でも三平が預けられるおじ夫婦の住んでいる田舎の情景がロケならではの効果をあげていて、見ていて懐かしい気持ちになれたし癒される。腕白な子供の描写もうまく、木に登ったり、たらいで川を下っていくシーンなどはいかにも子供らしい子供というのがよく出ている。離ればなれになった二人の心理描写もよく出来ており、ひとりかくれんぼをしている善太にいないはずの三平の「まあだだよ。もういいかい。」と声が聞こえてくるシーンはもうそれだけで善太のさびしさが伝わってくる。それにおじ夫婦の家に預けられることになった三平が泣き出してしまったり、預けられたその日に木に登って家の方角を見たりする切ない。ターザンのものまねや、オリンピックの話題など時代性も盛り込まれているが、ここまで古い映画だと古臭いと思う以前に当時はこんなのが流行っていたのかと興味をひかれる。父親が警察に連行されて、二人が離ればなれになってからはちょっとつらい展開ではあるのだが、二人がずっと明るくて元気なので安心して見ていられるし、笑えるシーンも多い。最後、疑いが晴れて無事に帰宅した父親を走り回りながら呼び続けるシーンは本当に秀逸で、ここでも清水監督の子供の感情を引き出す演出のうまさを感じた。見る前はよくないという評判も聞いていた映画だったので、少し不安な面もあったのだけど、見てよかったと思えたし、小津監督の「生れてはみたけれど」や「お早よう」のような子供が主役の映画の佳作だと思う。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-09-24 19:49:49)(良:1票)
535.  座頭市兇状旅 《ネタバレ》 
シリーズ第4作。どうやら本作からシリーズとしての基本が固まったようで市の殺陣もこの間見た初期作2本と比べて大幅に増えていて、冒頭の市が相撲大会に飛び入り参加するシーンなど娯楽的要素も強まっていて安心して見ていられる。ただ、娯楽要素が強くなった分、ドラマ部分がなにか物足りない。1作目と2作目に登場したヒロイン・おたね(万里昌代)が再び登場しているが、もうちょっと市とおたねの関係にスポットを当てたほうがドラマとしても深みが出ただろうし、予告編で使用していたおたねがのぶ(高田美和)に「あなたは私が持っていたものをみんな持っている。」と話すシーンが時間の都合上か本編ではカットされてしまっているのも残念だし、殺されるシーンもあっさりとしていて、せめてそのあと、市との何らかのやりとりがほしかったところだが、おたねを殺されて怒りに燃え、悪人たちを斬りまくる市にはとても感情移入できたし、自分をだまそうと持ちかけたのはおたねだと言われても信じようとはしない市におたねに対する思いというものが伝わってくる。それだけにおたねの心理描写が不足しているのが残念。こういう結末を用意するならやっぱり予告編にあったおたねとのぶのシーンはカットしないでほしかった。それがちょっと惜しいけど、個人的にはやっぱりおたねは市を裏切っていないと信じたいなあ。すべてが終わり、市が旅立つエピローグ・シーンは今見るとまるで「水戸黄門」のエンディングのようだが、これもシリーズとして軌道に乗ったということの証明かもしれない。
[DVD(邦画)] 7点(2011-09-14 22:52:29)
536.  新・座頭市物語 《ネタバレ》 
「座頭市」シリーズ3作目で初のカラー作品。初期作品とあってかまだそんなに派手な殺陣シーンはないが、その分、市の内面の描写がしっかりとしている。市がヒロインに求婚されて本気で堅気になろうと決意する展開はどこか「男はつらいよ」シリーズの寅さんのようではあるが、このシリーズではちょっと珍しいし、市を兄の敵と狙う男がそれを知ってわざと賭博で負けるのもべたではあるが、ちょっとウルッとくるものがある。剣の師匠(河津清三郎)を倒した市がその妹であるヒロインに「やっぱりこんな男です。」と言い残して去っていくラストシーンも切なかった。ただ、この剣の師匠の人物描写が浅く、ラストの対決もここがもっとしっかりとしていればもっと違う印象になっていたと思うし、ドラマとしても深みがあるものになっていたのではないかと思うと少々残念な気がする。とはいえ、久しぶりに見る座頭市(そういえば大映の時代劇もかなり久しぶりに見た気がする。)で、全体的にはなかなか楽しめた。
[DVD(邦画)] 7点(2011-09-02 01:40:58)
537.  緋牡丹博徒 二代目襲名 《ネタバレ》 
シリーズ4作目。今回は原作が存在するためか、これまでの3本とややストーリーの趣が異なっており、音楽担当も主題歌を手がけた渡辺岳夫から木下忠司に変更されているのだが、ほとんど違和感もなく楽しめた。おじ(嵐寛寿郎)の遺言により、国の鉄道事業を請け負ったお竜(藤純子)が川船頭たちと対立するという筋立てだが、川船から鉄道への移り変わりをテロップで説明するというのは、このシリーズでは珍しいような気がする。小沢茂弘監督の映画はこれで初めて見たが、やはり東映時代劇をやっていた監督らしく、娯楽映画としての見せ方を心得ていて飽きさせない。ラストの決闘シーンも見ていてかなり盛り上がることができた。それに今回もお竜はカッコよく、藤純子は個人的にはどちらかと言えば富司純子と改名してからのほうがいいと思っているのだが、このシリーズをずっと見ていると若い頃の彼女もいいなあと思えてきて、思わずこのシリーズの次回作が早く見たいなと感じるようになった。3度目の登場となる高倉健も相変わらず渋い。あえて難を言うならば長門裕之を前半で退場させてしまったのはなんかもったいないし、若山富三郎演じる熊虎が登場しないのは少し残念な気もするが、まあそれでもおもしろかったんだからいいか。残念といえば行きつけのレンタル屋に1作目からこの4作目までしか置いてないのも残念だ。このシリーズ機会があれば残り全部見てみたい。
[DVD(邦画)] 7点(2011-08-10 02:24:54)
538.  緋牡丹博徒 一宿一飯 《ネタバレ》 
シリーズ第2作。コミカルなシーンやキャラクターを増やすなど前回よりも娯楽性が増していて、今回も面白かった。脚本も書いている(今回は野上龍雄との共同。)鈴木則文監督の映画はこれが初めて見たのだけれど、前回の山下耕作監督の演出との違いも見ていて面白いし、それにお竜を演じる藤純子が前回よりも美しく感じるのは、やはり鈴木監督が自分で脚本も書いているからというのもあるのかもしれない。鶴田浩二はあまり東映の映画では見てないけど、なんかこう、粋なかっこよさを感じる。ドラマとしては前回に比べてやや物足りない感があるものの、それでも笠松(天津敏)に騙され、犯されたことを悔いて死のうと考えている菊池(村井国夫)の妻をお竜が説得する場面や、西村晃と白木マリの夫婦の絆が感動的だった。でも最後、鶴田浩二が射殺されるのはなんか強引に感じるし、笠松組のナンバー2みたいな菅原文太の最期もえらいあっさりとしているのがちょっとなあ。この二つ、とくに鶴田浩二扮する風間周太郎とお竜の別れはもっと別な形のほうが良かったんではないか。たとえ殺されるのであってももっとドラマチックな何かがほしかった。面白かったのは確かだけど、個人的にはお竜のキャラも含めて前回のほうが好きかなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2011-07-27 02:33:36)
539.  海がきこえる<TVM> 《ネタバレ》 
映画専門な感のあるスタジオジブリには珍しいテレビ用単発アニメ。ヒロインがこれまで見てきたジブリアニメのヒロインと比べてかなりイライラする性格(ひょっとしたらジブリアニメのヒロイン史上最悪かも。)だったり、未成年の飲酒シーンがあったりして、(冒頭のお断りテロップにビックリ。)これ、本当にジブリなのかと一瞬思ってしまったが、同時にそこがちょっと新鮮に感じられたりもした。高校生の青春を描いたアニメとしてはむしろよく出来ていて、友情や恋など「耳をすませば」のような青臭さを感じてもおかしくないのにそれをあまり気にせずに見られたのが不思議。同窓会前夜に昔殴ってしまったことを謝る松野には自分にもそういうところがあるかも知れないと思い、つい感情移入してしまった。同窓会のシーンも印象的で、とくに「私たち、狭い世界に生きてたんだね。」というセリフに昔の自分を思い出してしまい、当時の自分の価値観というものがいかにどうでもいいものであったかを思い知らされるときがあるのでなんだか共感できたし、すごくリアリティーを感じ、ちょっぴり切なくなった。いつも欠席している同窓会だけど、今年はちょっと行ってみようかという気にも少しなったかな。全体的に見てジブリっぽさはあまり感じられない作品で、実質若手スタッフ育成のための企画だったようだが、最近のジブリアニメにはないよさ(本職の声優使ってる以外で。)は確かにある作品に仕上がっている。
[地上波(邦画)] 7点(2011-07-17 02:01:29)
540.  カンゾー先生 《ネタバレ》 
今村昌平監督といえば自分の中では今やすっかり日活時代の川島雄三監督の助監督というイメージが強くなってしまっていて、監督作を見るのも10年ぶりくらい。晩年の作品ということもあってか、あっさりした作風なのだが、今村作品にそんな馴染みがない(「楢山節考」以前の監督作は見ていない。)せいか、思ったよりはなかなか楽しめた。最初はヤブ医者が主人公の軽い喜劇のように感じていたが、次第に主人公の人間ドラマに焦点が移されていく。医者として肝臓炎をなんとかしようと思うあまり研究に没頭し、成功譚になって終わりなのかというところで、そう簡単にはいかないぞとばかりに屈折を味わう主人公の人間的な弱さが描かれていたのが良かった。登場人物たちも主人公はじめ、坊主やモルヒネ医などは癖のある人物に設定されており、どことなくではあるが、川島監督の映画に近いものを感じるのはそれだけ今村監督にとって川島監督の影響が大きいからなのかもしれない。「サヨナラだけが人生じゃ。」という鳥海のセリフに川島監督を思い浮かべずにはいられない。それと山谷初男の遺体を墓から掘り出すシーンにブラックさが感じられるのもいい。柄本明は主演というイメージがなく、少し不安に思ったが、飄々と好演している。しかし、途中降板した三國連太郎の代役として鳥海の役からスライドして主人公を演じているのだが、「開業医は足だ。」をモットーとしていて、走るシーンが多く、本当にこの走るシーンを三國連太郎が演じる予定だったのかはちょっと疑問が残る。まだ無名時代の麻生久美子が初々しくも大胆な演技を見せていて、今までも何本か出演作を見ているが、どちらかと言えば地味な印象が強かっただけにちょっと新鮮に感じた。広島に原爆が落ちたあとのキノコ雲を舟の上から見ているラストシーンがなんかシュール。このシーンを見て「黒い雨」につなげたいのかと一瞬思ってしまった。「黒い雨」には9点つけてしまっているが、それでも今まで見た今村監督の映画の中では本作がいちばん見やすくて楽しかったし、なによりも今村監督の映画を見ていて川島監督の影響を初めて感じられたことが嬉しい。(といっても「楢山節考」や「黒い雨」を見た頃は川島監督の映画もまだそんなに見ていなかったのだが。)「黒い雨」より点数は低めで、思ったよりは面白かったと最初に書いたけど、個人的に今村監督に川島監督の助監督というイメージが強くなってしまった今となっては本作のほうが「黒い雨」よりは好きかもしれない。
[DVD(邦画)] 7点(2011-06-30 15:54:05)
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