521. スリーピー・ホロウ
《ネタバレ》 なかなか評価が難しい映画である。脚本は7点、演出は10点ということで平均すると8.5点なので、8点か9点にすべきかで悩むところ。 まず、本作を謎解きモノと考えればたぶん点数は低くなるでしょう。色々と風呂敷を広げた割にはストーリーが上手く整理ができていない上に、ストーリーを追った所で黒幕が誰かということに対して伏線が上手く張られていないので、観客やイカボットが黒幕を突き止めるという謎解き独自の面白さに対して評価はできない。 ホラーという点から見てもたぶん点数は低くなるでしょう。この映画を観て、ホラーだと思う人がいるのかどうかも分からないが、(首はいっぱい飛ぶけど)怖いと感じさせる部分は皆無と言ってよいのでないか。ホラー的な要素という点に対しても本作は評価はできない。 したがって、この映画はホラーでも、ミステリーでも、サスペンスでもない気がする。むしろ、新しいジャンルをバートンが創り出したのではないだろうか。バートン独特の世界を楽しむというのが、この映画の鑑賞スタイルのような気がする。スリーピーホロウを舞台に繰り広げられるスモークが掛かったようななんとも不気味な世界。ホースメンや魔女の妹、死の木など、今までの映画に観たことがなくどれも素晴らしいとしかいいようがない。 ただし、やはりこの手の映画なら登場人物等をもう少し整理して「謎解き」の要素を深めた方が映画としてはより評価されると思う。 また、本作は「魔女」をテーマに扱っている。黒幕は、母が周囲から魔女だと思われたため、村から追い出された恨みを抱えており、イカボットも母が魔女だと父から思われたため、母を父に殺されてしまうというトラウマを抱えている。それゆえ、イカボット自身、神を信じられなくなり、科学というか、原因と結果や理性といったものしか信じられなくなるというバックボーンがある。 そういう設定であるにもかかわらず、それらが何かうやむやにされた感がある。黒幕とイカボットはバックボーン自体は同じであるにもかかわらず、そういう設定が上手く説明・利用できておらず、ラストのオチとしては上手く落ちない感がある。科学信奉者が非科学的なものに挑戦するとういう設定自体は面白いが、その設定が上手くストーリーには噛み合わなかったかなという気がする。また、彼がこの事件を機にどのように変わったのかという視点を分かりやすく組み入れても良かったと思う。 [DVD(字幕)] 8点(2005-08-14 16:18:35) |
522. ミッシング(2003)
映画自体は真面目に創られており、役者も子役を含めて上手い人ばかりでしっかりと演じられていると感じる。 しかし、映画ははっきり言って、面白くない映画としか言いようがない。 原作を知らないので映画化すべきか否かという根本的な問題は置いておいて、なんでこうも面白くないのかの原因を考えると「演出」と「脚本」に問題があったのではないだろうか。 「演出」の問題点は、圧倒的に緊迫感が欠如していると感じられる。 自分たちがいつ殺されるのかも分からない、リリーが無事なのかどうかも分からない、相手もよく分からないという状況下において、それぞれやけに余裕が感じられる。 極めつけは、救出後に山の頂上に陣を張っている際に、父が大切にしていた十字架を返すシーンだ。このシーンは、断絶していた父と娘が心から和解するシーンで、映画のキモでもある大切なシーンである。十字架が和解の象徴にもなっている。そういう大切なシーンだからこそ、戦闘状態という一種の緊張感とは異なる空気になっているが、どうにも相当の違和感を感じる。このシーンだけが緊張感がないと言っているのではなくて、やはり映画全体に漂う空気があまりよろしくない。もっと生きるか、死ぬかといった空気が必要ではないだろうか。 「脚本」の問題点としては、この映画は「親子の断絶と和解」が一つのテーマになっているはずである、にも関わらず論点がやや不明確になっている点が問題だ。この映画には、ジョーンズとマギー、そしてマギーとリリーという二組の親子が登場する。一方は母を捨てて突然いなくなってしまい亀裂が完全に入っている、そしてもう一方は暮らしに不満を抱き、母に対して怒りを抱えており今まさに亀裂が入りつつある。こういう二組の親子がいて、対比的に色々と面白くできそうなのに全く利用できていない。 一方の娘は父の気持ちを理解して再び愛する気持ちを取り戻し、もう一方の娘も母の気持ちを理解して再び愛する気持ちを取り戻すという二点がこの映画には必要であるが、ジョーンズとマギーの話で終わっているのが勿体無いと言える。しかも、「自分がいると家族に迷惑になる」というやや具体性に欠ける父の訳の分からない独白でしかないのも、感情移入ができない点となっている。 それにしても、アカデミー賞を取った次回作がアメリカだけでなく日本までもこれほどまで無視されようとは…。 [DVD(字幕)] 4点(2005-08-14 00:16:52) |
523. エドtv
アイディアは面白いし、最初のうちは映画にのめり込めた。しかし、ラストに行くに従い、だんだん尻すぼみになっていく。結論を言えば、この映画は起承転結のうちの「転」と「結」がイマイチだと思う。 掘り下げれば色々と深い部分が描けるはずなのに、表面の浅い部分で終始してしまったのが名作になり得ない点だろう。レビュワーの点数が6、7点に集中し、9・10点を付ける人はおらず。一方で0~2点を付ける人もいないというのが、この映画を最も端的に表していると思う。 一言で言えば、「面白いんだけど、イマイチな映画」の代表作かもしれない。 描くべきポイントとすれば、まずは当初のアイディアである「脚本なし、俳優なし、編集なし」というコンセプトが、思いもよらない視聴率の増加によって、だんだん歪められていくという視点が必要ではないか。 「真実」を写すはずが、いつのまにか「嘘」を写すことになっているという視聴率主義の恐怖や、マスメディアの姿勢・限界などのポイントをクローズアップすれば映画が面白くなると思う。そのためにも、あの女性プロデュサーはかなり重要な役柄なはずであり、あの扱い方には問題がある。 そして、プライバシーや尊厳の問題。 どこにでも何にでも相手の気持ちを考えることなく、カメラに写そうとする今のメディアを徹底的に糾弾して欲しかったところである。 人の恋愛を追うくらいならまだしも、恋愛や結婚の破綻など当事者なら誰しも放っておいて欲しいものであり、また親しい人を亡くしたときにでもメディアは首を出し、平気で人の心を踏みにじろうとする。さらに、誰しも人に知られたくない秘密は抱えているものだろう。そういう人々のプライバシーに土足で上がり込む現代のメディアに対して痛烈な批判を込めることが必要ではなかろうか。 さらに、エドが人気者になるに従い、だんだんと有頂天になっていき、他人からチヤホヤされるに伴い、人の気持ちや痛みを分かろうとする心を無くしていき、他人(友人、恋人、家族)との距離がどんどん離れていくという視点もあった方が良かったのではないかと思う。 このままでもそこそこは面白いけど、題材が良いだけに非常に勿体無い映画というのが個人的な感想。 [DVD(字幕)] 7点(2005-08-13 23:59:08) |
524. チーム★アメリカ ワールドポリス
《ネタバレ》 「魁!クロマティ高校」があわや公開差止を食らうところだったのに、本作がアメリカで普通に公開されるというのは、やはりアメリカ人の懐の深さというか、表現の自由ということなんでしょうか。クロマティ自身はアメリカ人なんだけど。 しかし、パラマウントはよく公開したなあと思う。今回登場した人物プラスマイケルベイとベンアフレックは、パラマウントとの関係はおかしくならないのだろうかと心配してしまう。 この映画のなかで一番大爆笑できたのは、ゲロシーン。周りはちょっとヒキ気味だったけど。その他にも、手をバタバタさせるSOSシーンとパールハーバーのテーマにはなかなか笑いのセンスを見出せるが、個人的には「スターウォーズ」などヒネリを効かせた笑いや、ゲロや下ネタとは異なるもう少しハジケた感じの抜けた笑いももうちょい欲しかったというところ。 しかし、本作は人形劇にしたために映像の幅が広がったという利点を感じる。あの二人のベッドシーンは実写では到底無理だし、アニメでも無理だろう。人形だからこそできる微妙なリアル感がでた面白いシーンだと思う。俳優たちが吹っ飛ぶシーンや黒猫のシーンも人形劇だからこそというのはあった。憂いに満ちた表情など人形であることのギャップを利用することによって、なかなか良い効果が生じさせたのではと感じる。 【深いネタばれ】本作は、ぱっと見では①テロ撲滅を名に世界の警察を名乗るアメリカへの批判、②政治的な発言が目立つ俳優への揶揄、③テロ国家への非難を感じられる。 しかし、①については、実は最後には0.01秒差で世界を救うのはアメリカであるし、②についても、主人公自身が実は俳優であり、俳優が世界を救うというストーリーになっている。 非難する点と映画の結末が矛盾する形となっていることを考えると、制作者は案外、真意を悟られないように実は計算して創っているのではないかという気がする。③に関しては、どれも似たようなものだがチ〇〇がアメリカであり、マ〇〇がアメリカが内政干渉する国であり、ケツの穴がテロ国家という図式であり、世界がクソだらけにならないよう、ケツの穴を取り締まることは大事であり、チ〇〇のような世界の警察は必要悪なのかもしれないではないかというメッセージは一応込めていたような気がする。 [映画館(字幕)] 7点(2005-08-07 23:54:49)(笑:1票) (良:2票) |
525. ヴェラ・ドレイク
《ネタバレ》 本作は2004年のアカデミー賞監督賞、主演女優賞、脚本賞にノミネートされた映画である。 確かに冒頭の数分を観ただけでも分かるマイクリーの素晴らしい演出に、イメルダ・スタウントンも迫真の素晴らしい演技をしていた。脇の役者も皆よい演技をしていた。 劇場では感動して泣いていた人も見られ、決して悪い映画ではないと思うが、あえて点数についてはちょっと低めにしたい。 個人的にマイクリーに対して深い思い入れはないのだが、彼の監督作「秘密と嘘」「人生は、時々晴れ」は点数云々とは別にして、本当に素晴らしい映画だと思った。 「家族」「夫婦」などをテーマにし、そのテーマを深く見つめた結果のいわゆる「落としどころ」という感じの‘告白’が観るものの胸を打つというのが彼の映画の特徴ではないだろうか。 この映画にも確かに落としどころはあるようにも見えるが、あまり心には響かない。というよりも響く前に終わってしまったというのが正直な感想である。 映画のポイントがピンぼけになっているとしか思えなかった。 ヴェラの行為は確かに人助けではあるが、脱法行為である。その彼女の長年の秘密は家族である息子、娘、夫でさえも知ることはなかった。その秘密を知ったときに、家族がヴェラに対する気持ちがどのように変化していくのかについてポイントをもっと絞った方が良かったのではないか。 夫や息子が物分かりが良すぎるのが問題だ。怒りや不信などがあってこそ、はじめてヴェラを本当に許せるようになれるのではないか。本作でも、もちろん夫は内面では怒り、息子も「恥だ」と母を蔑んだが、心の動きを描くに際して、比重や扱いが軽すぎやしないだろうか。 なぜヴェラがそのような行為をするのかという彼女の気持ちに対して、家族は真摯に向き合っていないのも本作に入り込めない理由になっている。 また、堕胎行為に対する是非、例えば法廷にて彼女が救った女性などを証人にたてて情状酌量などを訴えるということ、をあえてぼかした創りになっているが、これについて描くべきか否かは正直悩むところであるが、家族の心の変化にポイントをきちんと置いていないのでやや疑問かなと感じる。 彼女の行為に対して、どのように心を整理すればよいのかを‘家族’と同様に考えるためにも、堕胎の是非も描いてもよかった気がする。 この映画のセリフにあったように「白か黒か」で映画を観る人には向いていないと思う。 [映画館(字幕)] 4点(2005-08-06 23:26:06) |
526. ピーウィーの大冒険
アメリカのテレビ番組で相当な人気があったというピーウィーハーマンのキャラクターを活かすために創られた映画。一般の日本人には馴染みが全くなく、時たま奇声を発する彼をすんなり受け入れるのは個人的にはかなりしんどかった。 個人的にはピーウィーのセンスとは全く合わず、笑いの対象としては真逆であり、観るのは正直苦痛だったけど、バートンワールドがあらゆる部分に浸透されている感じがしており、映画自体は意外と楽しい映画に仕上がっているという印象。 もしピーウィーを受け入れられるのなら、結構楽しめるかもしれない。 しかし、映画の中身は何もなく、すっからかんと言っていいでしょうね。ピーウィーが成長するわけでもなく(製作者はそういう趣旨を入れているかもしれないが)、ピーウィーと出会った人達がピーウィーの何かに感化されて変わるわけでもないのが惜しい気がする。もっともシモーヌはピーウィーに感化されて、フランスに旅立ったのだが、逆にこれはちょっと突飛すぎて、ストーリーが違った方向に進んだ気がした。 でも、バートンのセンスだろうか、ピーウィーとシモーヌが見た朝日がとても印象的に残っている。 それにしても、一般の日本人からはよく分からなかったのだが、バートンはテキサスの人達を馬鹿にしているのかどうなのか。その他に、見方によっては、ハリウッドを多少批判しているようにも映るが、どうなんだろうか。 [DVD(字幕)] 4点(2005-08-01 00:54:24) |
527. ビートルジュース
この映画をようやく今ごろになって初めて見たのだが、やっぱりバートンは凄いとしかいいようがない。バートンワールドのイメージの深さや奥行きを改めて感じる。 本作は死後の世界や幽霊をテーマにしているにもかかわらず、ホラーとは言い難い独特の世界、実にバートンらしい「遊び」が盛り込まれた世界観が出来あがっている点が素晴らしいと言えよう。 ストーリーとしても、アレックとジーナは水死であるため、生きている人達と同じような造形という点がなかなか映画にいい効果を与えていると思う。 登場人物の中でぱっと見、一番気が弱そうな二人が、一筋縄ではいかないモンスターっぽい家族を追い出そうとする逆転現象がなんとも言えず、面白い設定だ。 そして、その関係を面倒にしてしまうビートルジュースの存在もまた面白い。 彼の出番が少々物足りないかなと思うけど主役ではないのであんなものでいいのではないか。 この映画を見れば、マイケルキートンがバットマン役に相応しくないというのがやっぱりよく分かる。 [DVD(字幕)] 7点(2005-08-01 00:44:48) |
528. マーズ・アタック!
点数の分布でまさに賛否両論に分かれている点が、この映画の特徴ではないだろうか。 バートンらしいグロさや悪趣味に嫌悪感を示す人がいる一方で、それをバートンらしいユーモアと解する人がいる。 あの宇宙人にセンスを見出せる人、見出せない人。バカバカしさや悪乗りについていける人、いけない人。見る者のセンスによって、様々に意見が分かれるというのは実に面白い。 この映画を笑えないと思う人のセンスが悪いとは全く思わない(むしろ全面的に賞賛する人は少数と思う)が、個人的には、この映画に関するバートンのセンスは概ね素晴らしいと感じる。 この映画はセンスのよいお馬鹿映画という評価が下されているが、お馬鹿映画と一言で済ませられない位、実は凄い良い映画だと思う。 まず、豪華な役者陣の演技やセリフが非常に素晴らしい。 演技やセリフだけで、そのキャラクターの個性や内面がよく分かるように描かれている。これだけ多数のキャラクターが描かれていれば、キャラクターを混同したり、そんな奴いたっけ?という感じにもなりかねないが、どのキャラクターも活き活きと演じられているため、皆それぞれ存在感が充分あった。 速攻で死んでしまうジャックブラックにせよ、首だけになったピアースブロスナンにせよ、役になりきって演じられている。もちろん二役を演じたジャックニコルソンも。 個人的には、パムグリアーと「大統領を早く逃がせ」という二人の子ども達がなかなかのお気にいり。 さらに気に入ったのは、火星人が死んだ後に、黙々と火星人の死体や戦いの後始末を描いたシーンだ。 このシーンには、戦いの虚しさや悲惨さをバートンは一応込めたのではないだろうか。また、ボクサーのチャンプには家族の愛を感じることもできるし、ピアースとサラの二人の関係にはどんな姿や形になろうとも消えることのない人間の普遍的な愛情も描いていると思われる。 馬鹿馬鹿しさだけではなく、ちゃんと描くべきところもしっかりと描いていると感じられる点が評価したいところである。 この映画を完全に理解するために欲しかった知識としては、①トムジョーンズって一体誰よ?彼と「よくあることサ」に対する評価・扱いは?②火星人を死んだ理由のあの歌に対してアメリカ人が抱くイメージを知りたいところ。 ①と②をなんで選んだのか、バートンのセンスを知るためにもこのあたりの知識が欲しいところである。 [DVD(字幕)] 8点(2005-07-31 22:15:51) |
529. PLANET OF THE APES/猿の惑星
《ネタバレ》 ラストの地球に戻るまで、バートンらしさに欠けた毒にも薬にもならない平凡な出来だなと思っていた。確かに細部にはこだわり、バートンはバートンなりに頑張っていたように思えるが、あの脚本では、誰がどう頑張っても、たかがしれているだろう。しかし、ラスト地球に戻ってからの様子を見て、色々と考えさせられるような部分がでてきた。 まず1点目。レオが戻る際の宇宙船からの視覚的な地形とコンピューターの情報から、ラストに地球に戻ったのは、まぎれもない事実だろう。その地球がエイプに乗っ取られていたという事実と、セードがリンカーンほどの英雄に祭り上げられていたという事実がある。こられの情報を総合的にみてみると、最初にレオが降り立ったのは、実は地球だったのではないかという気がする(かの地から見上げた際、一瞬写った天体が異様だったのに矛盾があるが)。そう考えると、初代に負けず劣らず、実はあの星は地球だったというオチが含まれていたのではないか。地球上の生命は核戦争なり、なんらかの原因で絶滅していたのではないだろうか(馬は宇宙船に実験用に積まれていたと思料)と考えると、意外とブラックのような気がする。 そして2点目。劇中ではセードはオリに閉じこめられ、人間とエイプは共生するような途を進むのではないかという風に描かれていたように思われる。しかし、歴史ではセードがエイプ解放の英雄に祭り上げられている。このシーンには、やはり「人間」の人間たるゆえんが実は描かれているのではないかという気がする。共生の途が選ばれたとしても、人間は数においても圧倒的多数であり、また、エイプ以上に凶暴で狡猾な動物である。そんな人間が、エイプと共生できるはずがない。あの後、権力争いによって、エイプ排斥運動が起きたと思われる。そして、あの地で人間とエイプの逆転現象(エイプの奴隷化)が起きたのではないだろうか。そこでセードが解放され、銃を利用して、奴隷となったエイプを立ち上がられて、人間達を葬ったのではないだろうか。あのラストのセードのリンカーンシーンだけで、実は「人間」の権力主義・暴力性が描かれていたのではないか。そう考えると、やはり意外とブラックのような気がする。もっとも、パラレルワールド説とか、セードがレオの宇宙船であの星から地球に行って、地球を占領したとか色々と考えられるけど、自分はあのラストを観て、このように考えてみた。 [DVD(字幕)] 5点(2005-07-25 23:28:28) |
530. アイランド(2005)
《ネタバレ》 近未来を舞台にクローンをテーマに扱ってもマイケルベイにはお構いなし。相変わらずのベイ・ワールドが展開される。ある意味、凄えなと思わせるこだわりが彼にはあるようだ。本作は頭を空にしてアクションを楽しみたいという人に向く映画であり、クローンを扱ったアイデンティティや人間性をテーマにした映画を観たいとか、近未来の管理社会やクローンの危うさをテーマにした映画を観たいという人にはあまり向かない。そうは言ってもバッドボーイズとは違って、あまりおふざけなしの映画には仕上がっているので、なんとか観れる映画にはなっているとは思う。そして「バッドボーイズ」でもおなじみの激しいカーアクションは一つの見所になっている。「バッドボーイズ」では、クルマの上からクルマや死体を投げ落としていたが、今回もなにかを投げています(荷台から荷物が落ちて、後ろがとんでもないことになっているのに運転手は走り続けるところがマイケルベイらしいところ)。 以下ネタバレ【マイケルベイのここが嫌い】 ①「捕まえるのは無理だ!もう殺しちまえ」といきなり言ってしまうところ。一応、大事な「商品」らしいのだし、クローンの育成には恐らく莫大な時間と費用が掛かるのだろうし、サラ本人は死にそうな状態なのに、殺していいのか。契約とかもあるだろう。 ②「軍にばれたらやばいからオマエ達に頼む」というのが大前提。にもかかわらず、ブシェミを惨殺→(ブシェミカード使用により)警察の介入を許す→今度は警察を襲撃。そんなことしてたら、しまいには軍動くぞ。しかも、再度のカード使用では警察に動きなし。そもそも論を無視した激しいアクションには笑けてくる。 ③おもむろにジョーダンがパンツの中から拳銃を取り出すところ。セキュリティも何もあったもんじゃねえな。金属探知機か何かで調べられたら御仕舞のそんな無謀な計画が上手くいくと思っているのか。 ④全く途中のストーリーとは関係ない部分で、フンスーが裏切るところ。それは本当に勘弁して欲しい。ストーリーに多少絡ませるくらいできるだろう。汗かきすぎだし、そもそも銃持っているからって、リンカーンを撃ち殺すなよ。 ⑤ラスト大将一人で自らリンカーンに立ち向かうようなところ。あとから、いっぱい黒服も来たけど、その後、どっかに行ってしまっているようなところ。 ⑥「アイランドはあったわ。それはわたし達よ。」まじで意味分からねえ。 [映画館(字幕)] 3点(2005-07-24 02:14:42)(笑:3票) (良:2票) |
531. バッドボーイズ(1995)
まず第一に、ローレンスがうるさいだけで、彼の存在がコメディ映画として、いい効果を与えられているとは思えない。彼の存在は映画にとってむしろマイナスではないか。 クスリの科学関係に強いタイヤ屋をスミスが吐かせる際は、本当に彼の言動は見てられなかった。 そして、この映画のストーリーに文句をつけるのは、この映画の鑑賞方法を間違っているとは思うのだが、やはり触れざるを得ないだろう。 そもそもこの映画は、警察のヘロインを盗まれて、FBIとかが動き出す前に内密に犯人を捕まえなくてはならないというような設定があったような気がする。 それなのに、なんで市街地であれほど銃撃戦を繰り返しているのか理解に苦しむ。しかもテレビにも撮られているし。 さらに一番不可解だったのが、「出前が来たようね」と言って、確か肉を食わない姉ちゃんが、ハンバーガーの出前を取りに行くシーンだ。 ローレンスの嫁と鉢合せるところを撮りたいがためのシーンではあるが、大事な重要参考人の証言者が無防備に扉を開けるという設定は観客を馬鹿にしているとしか言いようがない。 しかも、ローレンス嫁に見つかるくらいだから、敵にも直ぐに発見されるという都合のいい発言がさらに火に油を注いでいるかのように馬鹿にしている。 そして1階に降りた瞬間に、敵の襲撃を受けるという展開…。こんな安っぽいシナリオになんで大金を注ぎ込めるのか全く不思議だ。 そもそも、この映画のストーリーは全般にわたって、わざと話をややこしくしていないか。 次に、ラスト付近でクルマに乗りながら、いきなり「オマエには黙秘権がある」とか言う神経に対して、またそこでぶちギレですよ。 人を無差別に撃ち殺しておいて、急に警察面するなと。そしてローレンスがスミスに言うセリフ「(フーシェは)殺す価値がない」は、警察官が言うセリフじゃないだろ。 道楽でやっていると仲間から思われているスミスの夢は何なんだ。警察官が夢で、立派な警察官になるために日々努力しているんじゃないのかよ。 一旦は止めようとするも、合法的な殺人をして、彼は立派な警察官になっていくのでした。ある意味面白い映画かもしれない。Ⅱとはさらに一味違う、人を怒らせる映画だと思う。 [DVD(字幕)] 1点(2005-07-19 01:34:10) |
532. オープン・ウォーター
《ネタバレ》 題材の良さを活かし切れていないかなというのが第一印象。個人的には、わざわざ映画館に足を運ぶよりも、DVDで充分かなという感じがした。 あえてなのかどうか分からないが、変なストーリーやエピソードを組み入れずに、素材をそのままの状態で召し上がれ、というのがこの監督の狙いのような気がする。 しかしながら、そういう狙いがあったとしても描くべきポイント等はきちんと描くべきだったと思う。個人的には、この題材をどのように調理するかのポイントとして①演技、②人間、③恐怖の三つがあるのではないかと思う。 ①『演技』 役者の演技をあまり非難したくないのだが、どう見ても彼らは上手くない気がする。彼らの演技では、ああいう状態に陥った際の気持ちや心の動揺など正直いって、観客には何も伝わらないのではないか。 恐らくああいう状態に陥った際の心の動きとしては、「(船がいない)一時的なパニック」→「(救助隊が来るであろう)楽観的な予測」→「(助けにこない)不安」→「(完全に海に取り残されたという)恐怖」→「(死にたくないという)パニック」→「(生きることへの)諦め」という段階を経ると思われるが、これらの心情や精神状態が演じられてはいない。 ②『人間』 ああいう極限状態になった際にどうしても出てしまうのが人間性である。本作でも「こうなったのはオマエのせいだ」と罵る場面もあるが、あれではやはり弱すぎる。 人間の汚い部分、綺麗な部分を両面見せるべきだろう。上手くやらないと「I LOVE YOU」が響かない。 そのためにも、ダイビングに行く前、彼らがどのような「夫婦」であったのかの情報を観客に上手く伝えるべきだったと思う。序盤は刺身の「つま」のような飾りではない。素材を活かす「わさび」のようなものだ。 ③『恐怖』 サメという物理的な恐怖も確かに大事だが、海に取り残されるという恐怖はむしろ精神面の恐怖(助けに来るものがいない、早く助けが来ないと溺死する、サメに襲われるのではないかと精神面でパニくる等)が重要と思われる。やはり①の演技と、物理的ではない恐怖を演出できる腕が重要になってくる。 また、肉体的な変化も描き足りないだろう。脱水症状や太陽の熱さ(曇ってはいたが)や海水の寒さは描くところだろう。そこを②の夫婦としてどう助け合い、励まし合ったのかを描くべきだろう。 [映画館(字幕)] 4点(2005-07-18 21:29:18) |
533. 人生は、時々晴れ
どんよりとした曇りがちな表情があふれる中で、いったい、いつになったらこの人たちの人生や表情は晴れるんだと我慢しながら観ていたら、やっぱりさすがにマイクリー、ラストは非常に上手く締めてくれますね。このラストのまとめ方は素晴らしいの一言。 自分にはファミリーがないので、それほどジャストフィットしなかったけど、中年夫婦ややや家庭危機があるファミリーが観れば、もの凄く感動するんじゃないかなと思われる映画であった。 とにかく、家族がいるにもかかわらず「孤独を感じた」という言葉は胸を刺す。 家族の在り方、夫婦の愛、人と人との向き合い方など、観て良かったなと思える映画であった。 確かに、役立たずかもしれないけど、自分への愛も尊敬も何もなければ、家族である意味はないな。 [DVD(字幕)] 6点(2005-07-18 02:32:06) |
534. 秘密と嘘
10点を付けようか迷うほどの傑作だと思った。 久々に人間を描いた映画らしい映画を観た充実感を味わえるような気がする。 演出、脚本、演技のまさに三拍子揃った素晴らしい作品としか言いようがない。 個人的には、本作の役者(特にシンシア)の表情の変化がいいと思う。 冒頭は皆、どことなく表情が曇り気味でどんよりとした不幸せな感に満ちている。それもそのはず、それぞれがそれぞれに人には言えない秘密を心に抱えて生きている。 シンシアやモーリス家族だけでなく、モーリスが写す被写体の人々にも一瞬見せる笑顔の下には、人には言えない秘密を抱えているようにも思われた。 しかし、シンシアとホーテンスとの出会いをきっかけにシンシアが大きく変わる(特に表情)のがとても印象的だ。シンシアが変わり、またホーテンスの表情も豊かになっていく。 そしてあの誕生日会へとストーリーが繋がっていく…。 生きている以上、誰しも心に傷を負ってしまうのはやむを得ないのではないか。かくいう自分も色々と傷を負っている気がする。しかし、その痛みを分かち合える人がいるから人々は立ち直れるのだなあと気づかされた。確かに自分も傷を負ったときには、家族や友人に傷を癒してもらった気がする。本作は「家族」や「親子」をテーマにはしているが、広い意味で「人と人との関係」としても描かれているのかもしれない。 そう考えると、あの写真家の先輩みたいな人には、傷を分かち合える誰かがいなかったのかもしれないから、あんな風になってしまったのではないだろうかとも感じた。 それにしても、「人生は不公平」だとか、「人生ままならぬ」といったセリフが聞えてくる中で、ラストでは「人生っていいね」いうセリフを聞けるとは思えなかった。ラストの三人の会話や表情も心に響く。 [ビデオ(字幕)] 9点(2005-07-17 03:44:38)(良:1票) |
535. パール・ハーバー
鑑賞前は、観るに耐えないほど凄まじい駄作という期待感を持っていたのだが、観終った第一印象としては、怒りで手が震えるほどというものでもないかなという感じがする。0点を付けようと思っていたのに、やや期待ハズレだった。 もっとも、観終わった後に「結局何がやりたかったんだ」という印象は確かに持ったが。 史実がどうのこうのとか知識がないため自分には分からないが、ブラッカイマーとマイケルベイの映画に対して史実と違うと怒るというのは、彼らの今まで創ってきた映画を見れば、ちょっと筋が違うかなという気もする。例えが悪くて申し訳ないが、プロレスを八百長だと文句をつけるのと同じような感じがする。 史実云々よりも、この映画の最大の欠点は「長さ」ではないだろうか。決して「長い」映画を否定するつもりは全くないが、「長さ」に見合う「質」が問われるべきだろう。 この映画には残念ながら、「長さ」に見合う「質」が圧倒的に足りない。 真珠湾攻撃をテーマにしているにも関わらず、レイフとダニーとイブリンの三角関係や、レイフとダニーの友情などを描くというのは、なかなかのチャレンジャー精神が感じられ、それほど悪い設定でもないと思う。しかし、描き方が非常に甘すぎる。もっと重厚かつシリアスに彼らの関係を描くことができれば、真珠湾攻撃の悲劇との相乗効果があったのかもしれない。 残念ながら、彼らの関係が中途半端に軽い感じに描かれてしまっているため、「空虚さ」が二乗三乗され、映画が虚しく感じられるようになってしまっている。せっかく爆撃シーンがよく撮れているのに相当勿体無いと思う。そのため結局、何を伝えたいのか分からなくなってしまっている。戦争の悲劇も何も伝わらずに、単なるアメリカ万歳の映画で、普通の感覚の日本人を怒らせるだけの結果となってしまっているのではないか。 マイケルベイの映画というのは本当に難しいと思う。 看板だけ見ると「バッドボーイズ」は刑事モノと思うし、「アルマゲドン」は宇宙モノ、「パールハーバー」は戦争モノと思うのだが、中身が想像とは全く違う別モノを観させてくれる。看板と中身のギャップが、ある意味では観た人の失望に繋がっている気もする。 [DVD(字幕)] 4点(2005-07-16 19:40:24) |
536. アルマゲドン(1998)
マイケルベイは嫌いな監督であり、感動するところもほとんどないとは思うが、娯楽映画と割り切れば、映画自体はそれほど悪いものではない。 荒唐無稽の設定である掘削屋のおっさん達が宇宙に行くというあり得ない設定が意外と悪くない気がする。 天才科学者でもヒーローでもないただのおっさんが地球を救う。 このおっさん達は、ただのおっさんではない。どいつもこいつも奥さんに逃げられたり、あるいはクズに近いどうしようもないおっさん達である。 そんなおっさん達が、クズでなくなり、輝きをもち、誇りをもてるようになるというのはある意味面白い設定かなと思わせる。 天才でもないなんでもないおっさんの手に地球の運命が委ねられ、意外と地味な方法で地球を救うのは多少評価してもよいポイントではないだろうか。 しかしもっと面白くなりそうな点がいくつか見当たる。 まずブルースウィルス扮するハリーが意外と薄っぺらなキャラクターのような気がする。 ハリーとグレース親子にはもっと親子の対立をアピールした方がラストがより感動させられるような気がする。「戻ると約束して・・」と宇宙に行く前にグレースが言ってしまうと、グレースがハリーのことを愛しているという結論が出てしまっている。 むしろ仲違いさせたまま、宇宙に送って、ラストにグレースが父のことを心から愛しているということに気づかさせる方がより親子のストーリーとしては際立つのではないだろうか。 また、ハリーのリーダーとしての資質を問われるような出番を掘削時にいくつか用意しても良いだろう。AJとの対立ももう少し描いておかないとラストの「オマエに任せる」という言葉も上手く活きてこない。 序盤・中盤には訳の分からんほどトラブルを仕掛けているのに、掘削時には地味なトラブルばかりで、意外と派手さがない(もっともアルマジロが一台吹っ飛んだりしているが)。せっかくのハリーの出番である掘削時が一番地味になってはいないか。 さらにトルーマンの存在ももったいないと感じる。 出番としては核を地表で爆発させるかどうかのやりとりに彼の大きな存在があると思うのだが、尻すぼりしている感を受ける。遠く離れてもハリーとトルーマンには何故か訳のわからん信頼関係が結ばれているという設定がもっと色々あっても良い気がする。 マイケルベイの映画はなかなか評価が難しい。 [DVD(字幕)] 7点(2005-07-16 05:13:02) |
537. バッドボーイズ2バッド
本作を面白いというレビュワーをモチロンいるため、あまり感情的にはなりたくないのだが、これはさすがに酷すぎるの一言。 あまりの下品さとタチの悪さに怒りを通り越して呆れるばかり。面白さと下品さを勘違いしているのではないか。そうは言っても、笑えるシーンもいくつかは見受けられたが、やはりこの映画の製作者の神経を疑わざるを得ない。 観る人を選ぶのか、それとも自分がこの手の映画を面白くないと感じるようになったのかは分からない。しかし、同じブラッカイマー製作でも「ビバリーヒルズコップ」は面白いと思っているのだが。 あまり論評する気も起きないのだが、面白くないとする根拠を挙げないと議論にならないと思うので、こんな映画にマジになるなという批判もあろうが、いくつか理由を挙げてみる。 ①面白くもないのに無駄に長すぎる。こんなしょうもないストーリーにどうして146分も必要なのか理解に苦しむ。100分以内に押さえて、より緊迫感を出したり、テンポ良くすべき。 ②死体で遊ぶな。死体をおもちゃにしすぎ。死体をクルマで轢くシーンを見て誰が面白いと思うだろうか。死体に限らず、死体を切り刻んでテーブルに置いたり、電車で轢いたり、爆破したりとやっていいことと悪いことの区別もあろう。 ③無抵抗の人に対する態度。ボーイフレンド、耳を吹っ飛ばされた人、店内をメチャクチャにされた人に対する彼らの態度は常軌を逸している。単なるいじめにすぎない。マイクの「俺タチはデカだ」というセリフが虚しく響くだけ。 ④マイク、マーカス、警部の関係。「ビバリー~」ではいがみ合いながらも心の底では信頼感で結ばれていた。本作では、警部と二人には信頼関係などないようだが、マイクとマーカスの関係に信頼関係等が感じられず。こいつと相棒を組んでてよかったという「すっきり感」がまるでない。そのため相棒解消や転属願いなども浮いてしまっている。 ⑤ストーリーや人間関係等が無駄に複雑になっている。何を狙っているのかがまるで分からん。どうしようもない映画なのに何故ここだけ頑張るのか分からん。頑張る部分が間違っている。もっとストーリーをひねるなり、サプライズさせるなりにすべき。 ⑥ラストのキューバ絡みは警察の仕事ではない。もはや説明不要。 以上の問題により、本作で得られるはずの、すっきり感やアクションの凄さなどが損なわれる結果となっているのではないか。 [DVD(字幕)] 0点(2005-07-03 20:18:14)(良:2票) |
538. 宇宙戦争(2005)
《ネタバレ》 序盤の凄まじく圧倒的な迫力は鳥肌モノであり、傑作の予感さえ漂わせていたが、どんどんとあらぬ方向にストーリーが進む。しまいには、あまりのご都合主義に「理屈じゃない。頭で考えるな。感じろ。感じるんや。」と自分に言い聞かせていたが、最後のラストでやってはいけないこと(微生物のことではない)をやってしまい一気に興ざめをした。 ストーリーとしては①真の勇気とは何か②ティムロビンスの存在③地球人の宇宙人への攻撃の描き方についてやや疑問を感じる。 ①については、宇宙人に対して無鉄砲に戦うことが勇気ではない。戦わずに家族を守るということも本当の勇気といえるのではないかというメッセージが込められていたと思う。その対立軸としてロビーという存在が必要だった。したがってトムには最後までロビーを説得させる必要があったのではないか。仮に説得できなかった場合にはロビーを死なせる必要があったと思う。ロビーを生かすということはロビーの行動を肯定してしまっていることになる。ロビーに限らず、自分が期待した「家族愛」という視点がかなり欠けてしまっている気がして残念だ。ラストは「済まない。ロビーを死なせてしまった」というトムのセリフを期待したのに…。それにしても人間ドラマに関しては感動させられる部分は微塵もなかった。 ②については、彼が本当に死ぬべき存在だったのかが理解できない。殺されるほどのpanicとcrazyっぷりが足りないのではないか。彼の存在に価値をつけるとすれば宇宙人侵略という危機にかこつけて、火事場泥棒的に自己の欲望を満たそうとする者という扱いにすれば良かったのではないか。この関連としては、人々のパニックぶりと暴徒化という視点は描かれているもののオリジナルに比し扱いが薄くモノ足りない。この視点は非常に重要だと思うのでもっと厚めに扱って欲しかった。 ③確かに本作はトムの目線で終始ストーリーが進むため、軍による宇宙人との戦いを描く必要はないと意見もあるが、そうだとすれば手榴弾や「鳥がいるぞ」等は蛇足のような気がする。「観客が何を期待するか」と「ラストのオチ」を重視すれば、オリジナルのように核兵器を使うというのは論争があろうかと思うが、地球側の攻撃力の強さを示した方がよかったのではないか。破壊力のある攻撃が全く効かない相手が微生物という微小なものによって滅ぶという落差こそが観客の驚きとなるのではないだろうか。 [映画館(字幕)] 7点(2005-07-03 00:51:31) |
539. 宇宙戦争(1953)
《ネタバレ》 見方によって違うとは思うが、正直いって本格的な作りに驚いた。本作が50年前の映画とは思えない。鑑賞前は、特撮技術については稚拙で子供だましでショボイものを見せられるかと思う と不安で一杯だったが、そんな不安は吹き飛んだ。 もっとも訳の分からない緑色の光線を発しながら動く物体がワイアーで吊しているのがバレバレであったりしているが、そういう技術的な問題でもないだろう。技術を超えた情熱を感じる。「恐怖」を描こうとする情熱は今も昔も変わらない。むしろ昔の方が情熱は高かったのではないかとも思える作品だと感じる。あの宇宙人の描き方としても「サイン」の宇宙人とどんな違いがあっただろうか。 その他に、この映画の特筆できる点としては以下の二点が挙げられる。 まず一点目としては、「宇宙人の恐怖」だけではなく、「パニックによる暴徒の恐怖」を描いていること。さすがに「宇宙人」に対する恐怖は現実的な問題ではなく、技術的な問題もあるため、正直いって今の人々に対してそれほど恐怖を与えることはないが、「パニックによる暴徒の恐怖」は現実的な問題だ。天変地異によりいついかなるときにでもパニックを起こすことはあり得る話である。これには現実的かつ相当な恐怖を感じざるを得ない。 もう一点としては、人類の叡知が否定され、もっとも身近なものにより物事が解決された点だ。人類の科学的な叡知である核兵器によっても対抗できず、人類の文化的叡知である宗教であっても何の助けにもならない。それらで解決できなかったことが、ウィルスという我々の身近にありながら、自然の驚異という未知なものにより解決されるというのは素晴らしい発想である。宇宙という未知な問題と自然という未知な問題を同時に描かれている点も特筆できるところだろう。 あまりストーリー上では発展していない印象だが「愛」についても描こうと努力している点も誉められるし、あまり目的を明らかにせずにひたすら地球を破壊し続けたり、対話を求めても問答無用に殺傷する宇宙人の姿にも、冒頭恐怖を感じなかったと述べたが、やはりある程度の恐怖を感じずにはいられない。 [DVD(字幕)] 6点(2005-06-30 00:41:09) |
540. スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐
《ネタバレ》 EPⅡは渋谷で鑑賞。その時はコスプレ集団がいっぱいいて祭り気分に浸れた。今回は有楽町日劇1(21時30分)で鑑賞。今回もトルーパーがいっぱいいるかと思いきや、ほとんどいなかったのが残念だった。やはり有楽町は大人の町なのだろうか。しかしライトセーバー持ちこんでいる人が多々おり、それなりの独特の祭り気分には浸れる(EPⅠの頃は映画に興味がなくてどういう雰囲気か分からず)。 内容として「①いかにアナキンがダークサイドに陥ったのか」と「②アナキンとオビワンの溶岩での一戦」と「③パルパティーンの真の姿とその強さ」がどのように描かれるのかが興味があった。 ①に関しては、大きな軸としてパドメの死をいかに止めるかがダークサイドに陥る要因に描かれており納得できた。愛に固執してはならないというジェダイの教えが活きている気がする。さらにパルパティーンの策略により、ジェダイ評議会とアナキンをわざと対立させるようにし、アナキンを孤立・反発させるように仕立てており、論理的に脚本はよく出来ていると思う。演出としてもアナキンが一人たたずみ思い悩むシーンが好感的だ。あの「静」があるからこそ、心の内の「動」を感じることができる。また、通商連合を皆殺しした後に涙を流すシーンも効果的だった。パドメの最後の言葉と上手くリンクしている気がする。 ②に関しては、概ね良かったと思われるが、場所を動かすだけでなく、戦闘に何らかのもう一工夫あったら良かったのだが。ラストもちょっとあっけない気がした。「地の利」だけではオビワンにアナキンを倒すだけの戦闘力があるとは思えない。せっかくあの場所にパドメがいるのだからどっかで利用されるのかと思ったのだが。しかしアナキンが燃えあがるところはいい。ダースベイダーになるためにはあの位の激しい演出は必要だろう。 ③に関しては多少不満。動きが他よりもトロいと思う。まあヨーダに反撃食らって慌てるところは良かったが。ウィンドゥとの一戦は良かった。アナキンに引き返せない場所を創るために、わざと追い詰められる演技は最高だ。 さらに評価できる点としてはⅠ~Ⅲに掛けて民主主義の崩壊と独裁的帝国の誕生を描いている。ただのSFとは一線を画す。また、ジェダイの騎士惨殺には感じるものがあるし、ジェダイの子ども達も末路も描く必要はあったと思う。アナキンが更に越えてはならない一線を越えたと感じられる大事な場面だ。 [映画館(字幕)] 9点(2005-06-26 01:58:39)(良:4票) |