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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 616
性別 男性
自己紹介  「監督の数だけ映画が有るのではなく、観客の数だけ映画が有る」という考えでアレコレ書いています。
 洋画に関しては、なるべく字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くというスタンスです。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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561.  コンフェッション(2002)
 ジョージ・クルーニー初監督作品との事でしたが、その力量に驚かされた一方で、どうも既視感を覚えてしまう作風。  気になって調べてみたら、脚本がチャーリー・カウフマンだったのですね。  あぁ、何かに似ていると思ったら「アダプテーション」かと、大いに納得した次第。  悩めるクリエイターが体験した悪夢のような出来事、という点が共通しているように思えましたね。   とても実話とは思えない破天荒なストーリーだったのですが、それが作中で主人公の悩みにもなっており「こんな話、誰も信じてくれない」と嘆く形になっているのが面白かったです。  リアリティの無い展開になればなるほど、主人公の心境が理解しやすくなるという構造。   豪華な出演陣は画面に彩を添えてくれていますし、コーヒーカップの摩り替えなど、印象的な場面もありました。  ドリュー・バリモア演じるヒロインの、性に開放的な小悪魔のようでありながら、何処か母性を感じさせる女性像も好み。  観賞中は、上述の「既視感」が頭の中でチラついてしまい、あまり映画の世界に没頭する事は出来なかった状態にも拘らず、そういった長所をキチンと感じ取れたのだから、良い映画だったと思います。   一連のお話が真実が虚構かを考えるのは野暮な気もしますが、一つ気になったのは、主人公の妹の名前が「フィービー」である事。  これって、かの著名な小説「ライ麦畑でつかまえて」に登場する主人公の妹と同じ名前なんですよね。  つまり、このお話も創作ですよというメッセージにも思えたのですが、真相や如何に。
[DVD(吹替)] 6点(2016-05-13 12:21:34)
562.  コンドル(1975) 《ネタバレ》 
「新聞に出ると思うか?」  というラストでの台詞に、ドキリとさせられましたね。  この手の映画は、主人公が新聞社に真実を告げる事によって、無事にハッピーエンドを迎えるもの……という固定観念のあった頃に観たもので、その台詞に秘められた恐ろしさには、本当に背筋が凍る思いがしました。  主人公が真実を告発する前に殺されてしまうアメリカン・ニューシネマな結末よりも、更に恐怖や無力感、やるせなさを感じさせる結末ではないでしょうか。   冒頭の事務所襲撃シーンでの、日常が瞬く間に破壊されてしまうシークエンスも迫力がありましたし、マックス・フォン・シドー演じる殺し屋と向き合う事となる、終盤の緊迫感も良かったですね。  ただ、映画の中盤に関しては、CIAのワシントン本部の描写が非常にチープであった点や、ヒロインであるフェイ・ダナウェイとのロマンスに、今一つノリきれなかった点などが響いてしまい、少々退屈に感じてしまったのも事実です。   勿論彼女は美人さんだし、こんな状況下においてもベッドシーンに突入してしまう男の気持ちも、分からないではないのですが 「えっ? これって仲間を殺された復讐の為に行動する、ストイックな主人公の話じゃなかったの?」  と、どうしても戸惑ってしまいましたね。  こういった展開を迎えた以上、彼女も殺されてしまうのじゃないかな、と思っていたら、そんな事も無く、ロマンティックな会話と共に別れる事となり、ホッとさせられる一方で、どこか物足りないような気持ちにもさせられました。   観客がマスコミの力を信じられるかどうかによって、ハッピーエンドともバッドエンドとも解釈する事が出来そうな結末ともども、色々と判断が分かれそうな要素が多いのですよね。  どんな映画にだって当てはまるでしょうが、この品は特に「これを名作と感じるも、駄作と感じるも受け手次第」という側面が強いというか。  自分がプラスに思った上述の部分だって「後味が悪い」「殺し屋と撃ち合いもせずに会話だけで別れるだなんて拍子抜け」と受け取る人もいるでしょうからね。  そういった諸々も含めて、面白い映画だと思います。
[DVD(字幕)] 7点(2016-05-12 10:57:27)
563.  死霊の盆踊り 《ネタバレ》 
 エド・ウッド絡みの作品としては「プラン9・フロム・アウタースペース」「グレンとグレンダ」に続いて観賞した形となる本作。   さぁ、これぞ本命! とばかりに期待しつつ再生ボタンを押したのですが……何だか肩透かしな印象を受ける事になってしまいましたね。  それというのも、この作品からは上記二作品にあったような、監督の熱意というか、誠意があまり感じられなかったのです。  どんなに予算が少なくても、どんなに作りが雑であったとしても、監督本人は真面目に「面白い映画」を撮ろうとしていたんだな、という事が伝わって来て、それがこの監督の愛される理由なのかと納得させられた二本に比べると、何とも寂しい作りでした。   そもそも本作においてエド・ウッドは原作と脚本担当に留まっており、監督している訳ではなかったりするので、同列に考えていた自分が愚かだったのですが、どうしても「期待外れな映画」と思えてしまい、非常に残念。   実際は監督であるA・C・スティーヴン氏にも、決して熱意が欠けていた訳ではなく、何とこの映画の続編すら考えていたそうなのですが、どうしても画面からそれが伝わって来なかったのですよね。  ちょっと凝った趣向のストリップショーにて、踊っているダンサーさん達を延々映し出しているだけ……という印象を受けてしまいました。   場面が夜になったり昼になったりする出鱈目な導入部は、何だかんだでツッコミを入れながら楽しく観る事が出来ましたし、夜の帝王の間抜けな死に様などは思い出し笑いを誘ったりもするのですが、一時間以上も裸踊りを見せられた退屈さの方が、どうしても色濃く記憶に残ってしまう。  そんな、残念な映画でした。
[DVD(字幕)] 1点(2016-05-12 08:17:35)
564.  女子高生チェーンソー 《ネタバレ》 
 犯人の正体が意外過ぎて 「あれ? もしかして伏線を見落としていたかな?」  と思って、二度観賞してみたのですが、やっぱり伏線など無かった……そんな思い出がある映画ですね。   犯人のマスクを取ったら、美人女子高生が中年のオジサンに変貌。  しかも何故か顔だけでなく、首から下の体型まで変わっていたのだから、もう笑うしかありません。  超常的な兵器に関わっていた校長さんなので、もしかしたあのマスクも特別性で、体型を自由に操れる効果があったのかも知れませんが、そんな解釈を行う事すら野暮に思えてきます。   今になって考えてみるに、製作者側も「どうぞ笑って下さい」「どうぞツッコんで下さい」という姿勢で用意した、確信犯的オチだったのではないでしょうか?  こういった「狙って作った馬鹿映画」は初体験だったという事もあり、色々と印象深いものがありました。   映画単品として面白かったとは言い難いのですが、新鮮な衝撃を与えてくれた事、色々と話のタネになってくれた事を考えると、自分は死ぬまでこの映画のタイトルを覚えていそうで、ちょっと憂鬱になったりもしますね。  そんな諸々を含めて、愛すべき映画……とまではいかないけれど、どうも嫌いになれない映画です。
[DVD(字幕)] 2点(2016-05-12 07:15:12)
565.  プリズン・フリーク 《ネタバレ》 
 自分は刑務所を舞台とした映画が好きなのですが「その中でも一番のオススメは?」と問われたら、数多の有名作品を押しのけて「プリズン・フリーク」と答えてしまいそうですね。  そのくらい好きだし「もっと多くの人に観てもらいたい」と思わされるような、隠れた傑作と呼ぶに相応しい品なのです。   何と言っても、この映画の画期的なところは、刑務所映画であるはずなのに、観ていて嫌悪感を抱くような悪人が、一人も登場しない事ではないでしょうか?  勿論、法律上は囚人というだけでも「悪」でしょうし、主人公のジョンにしたって善人とは言い難いキャラクターなのですが、何処か愛嬌があって憎めないのですよね。  それは囚人同士の殺し合いを賭け事にしている看守達にも、黒人差別主義者の囚人のリーダー格にすらも当てはまります。  こうやって改めて文章にしてみると「いやいや、こいつら完璧に悪人じゃん」と我ながら思うのですが、いざ映画本編を観れば、やっぱり親しみを抱いてしまうのです。  中でも、こういった映画では憎まれ役になる事が多い「主人公達を狙っている同性愛者の囚人」が、妙にチャーミングだったりするのだから、まったくもって困りもの。  見た目は太った黒人男なのに、まさかまさかの劇中のヒロイン格ですからね。  人は見かけで判断するもんじゃないなぁ……などと、しみじみ感じました。   脚本も非常に凝っており 「刑務所のルールその1は『絶対に他人を信用するな』」 「キミはもう家族みたいなもんだから」 「ここから出られるのは、死んだ時だけだ」  などの台詞の数々が、伏線として綺麗に回収されていく様は、実に気持ち良かったです。  それでいて難しく考えながら観る必要は全く無い、というバランスも素晴らしい。  途中で「あれ? 何か急に台詞が説明的になったな?」と不思議に思っていたら、ちゃんと後で、その理由が解き明かされたりするんですよね。  なので観賞後に何かが引っ掛かったような気持ちになる事も無く、後味もスッキリ爽やか。   特に好きなのは、ラストの車中にて、ジョンとネルソンが和解する場面ですね。  一度は殺し合いすら演じた二人が、たった一つの曲を通して「偽りの友達」から「本当の友達」そして「家族」へと変わっていく。  その数分間が、何とも微笑ましくて、観ているこちらも一緒に歌い、一緒に笑いたくなってきます。   とても楽しい映画でした。
[DVD(吹替)] 9点(2016-05-11 15:57:36)
566.  リトル・ダンサー 《ネタバレ》 
 観賞後「良い家族だなぁ……」と、しみじみ呟いてしまいました。  家族だけでなく、主人公の周りにいる男の子、女の子、おじさん、おばさん、誰もが魅力的で、良い人ばかり。   それだけに、終盤にて彼らに別れを告げて旅立つシーンが、とても切なかったですね。  お婆ちゃんが、力強く主人公を抱きしめてから、あえて突き放すようにして離してみせる場面。  ずっと同じ部屋で暮らしてきた主人公の兄が「寂しくなるよ」と、弟には聞こえないように呟いてみせる場面。  どちらも素晴らしかったです。   似たような内容としては「遠い空の向こうに」という映画が存在しているのですが、あちらが夢を叶えてみせた主人公達を主題に据えた品だったのに比べると、こちらは主人公の夢を叶える為に手助けする周囲の人達を主題としているように感じられましたね。  印象深いのは、主人公にボクシングを教えていた中年のオジさん。  てっきり「バレエなんて男のやるもんじゃない」と、親父さんと一緒になって反対するポジションなのかと思いきや、物凄く親身に応援してくれるんです。  ロイヤル・バレエ学校を受験する事になった主人公の為に、小銭をかき集めて資金援助までしてくれたし、結果を不安視する主人公に対し「大丈夫、絶対に受かってる!」と励ましてくれる姿には、心温まる思いがしました。  こういった心地良い意外性って、本当に好きですね。   そして何といっても、この映画のクライマックスは、息子の夢を叶える為に父親がスト破りを決行するシーンでしょう。  あそこで興奮と感動を最大限に高めてくれたからこそ、その後の面接シーンでのドキドキ感、旅立ちのシーンでの寂寥感に、非常に巧く繋がっていたと思います。  何と言うか、観客の心の波を操る技に長けているのだなぁ、という印象ですね。   数少ない気になる点としては、面接の際、八つ当たりのような形で殴られてしまった金髪の少年に対し、主人公が謝罪してみせたり、きちんと和解してみせたりするシーンが無かった事。  それと、てっきりヒロインだと思っていた女の子が、途中から完全にフェードアウトしてしまった事でしょうか。  ただ、後者に関しては恐らく意図的に出番を減らしたのであり(序盤にて彼女の姿が、車の陰に隠れると同時に消えてしまう演出は、その暗示?)主人公の親友である少年こそがヒロインであったと判明する意外性の為の前振りでしょうから、一概に欠点とは言い切れないかも知れませんね。  それでも観賞中「あれ? あの女の子どこいったの?」と思ってしまったのは確かです。   対するに、真のヒロインと、そう呼んでも差し支えないであろう親友の少年に関しては、別れのシーンでの「失恋」を示すキスに、何とも言えない物悲しさを感じました。  片方は友情を抱き、片方は愛情を抱いている二人の映画として考えても、上質なものであったと思います。   それらの喜怒哀楽、全てが積み重なった末に、主人公が夢を叶えてみせた「未来」へと繋がるハッピーエンドの、素敵な味わい。  良い映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2016-05-08 09:46:24)(良:2票)
567.  ジャイアント・ベビー 《ネタバレ》 
 子供達が小さくなってしまう映画の続編として「今度は大きくなる!」という内容を持ってきたのは面白いし、その子が幼児である為に、大人達がひたすら翻弄される事になるというのも、ユーモアが利いていて良かったと思います。   ただ、自分としては前作の家族ドラマの延長のようなものを期待していたので、長女のエイミーの扱いや、魅力的だった隣家の人々に出番が無かった事に関しては、ちょっと残念でしたね。  最後の最後まで「彼らが応援に駆け付けてくれるのでは?」なんて勝手な期待を抱いてしまい、それが肩透かしな結果になってしまったのは、やや消化不良な感じです。   その一方で嬉しかったのは、小さな子供だった長男のニックが立派なティーンエイジャーに成長している事。  部屋でギターをかき鳴らしている姿なんて、もう見ただけで頬が緩んでしまいます。  今作ではベビーシッターの少女との恋模様まで描かれており、幼かった頃の姿を知る身としては、とても微笑ましい気持ちにさせられました。   正直、赤ん坊が車の中や家の中に収まるくらいのサイズの頃は、あまり楽しめなかったりもしたのですが、ラスベガスにジャイアントベビーが襲来する終盤に突入してからは、観ているこちらも大いに満足。  怪獣映画めいた非現実感と、巨大な存在を退治するするのではなく保護しなければいけないという斬新な感覚が混ざり合い、不思議な気持ちに浸る事が出来ましたね。    作中にて語られた「(赤ん坊にとって)パパは遊び相手、ママはママ」という台詞が、妙に心に残る映画でもありました。
[DVD(吹替)] 6点(2016-05-08 05:01:59)
568.  ミクロキッズ 《ネタバレ》 
 漫画「刑務所の中」にて、囚人が所内で観賞させてもらったビデオ映画として本作の名前が挙げられており、驚いた記憶がありますね。  これを観たら、さぞかし家族が恋しくなってしまうのでは……と思わされました。   作品そのものに関しては、これぞ安心して観られるファミリー映画といった印象。  ミクロ化してしまったら、散らばる機械の破片だけでなく、降り注ぐ水滴さえも兵器のような威力に感じられるという内容が、とても面白いですよね。  こういった設定であれば、間違いなく期待してしまうであろう「食べ物」「昆虫」などの要素を忘れず押さえてくれているのも嬉しい。  色々と知的好奇心をくすぐるものがあり、ちょっと穿った見方をするならば「教育ママが幼い我が子に観せたくなるような映画」という評価を下す事も出来そうです。   何よりもこの映画の優れた点というか、バランスの良さは、全編にわたって心地良いユーモアが散りばめられており 「たとえ子供がミクロ化しなかったとしても、この家族達のドラマなら面白そう」  と感じさせてくれる事にあると思います。  実際、自分なんかは冒頭部分の「宗教上の理由で別れたカップル」「小柄な息子と大柄な父親」などの件でも、充分に楽しめましたからね。  さながら連続ドラマの中の一話として「今度は子供達が小さくなる話」というのを観せてもらったかのような感覚。   大きなサプライズ展開も無く、強烈な感動を味わう事は難しいかも知れませんが、安心して心地良い作中世界に浸る事が出来る。  そんな映画です。
[DVD(吹替)] 7点(2016-05-08 04:31:04)(良:1票)
569.  グリーン・デスティニー 《ネタバレ》 
 この作品が、後世の武侠映画に与えた影響は大きいのでしょうね。  ただ、それゆえに、現代の目からすると斬新どころか、陳腐にさえ見えてしまうのが残念なところ。  それだけ模倣されてきた画期的な作品という事ではないか、と頭の片隅では感じているのですが、観賞中「これは凄い!」と唸らされる場面には遭遇出来ませんでした。   とはいえ、終始退屈だったという訳では決してなく、壁走りや竹の上を走る場面、剣を使って敵の剣のギザギザ部分を一気に削ぎ落とす場面などは面白かったし、テンションも上がりましたね。  今時はこんなシンプルな、分かりやすい引っ張り上げ方のワイヤーアクションには中々お目に掛かれないという事もあり、何やらストップモーションで動く怪獣を見るような、時代が違うからこその目新しさもありました。   ではストーリーはどうかというと、残念ながら好みとは言い難い内容。  まず、主人公であろうイェンの立ち位置が「悪い事をしてしまって大人に追いかけられている子供」という印象なのです。  善人とは言い難いし、かといって格好良い悪党でもない。  作中の雰囲気からしても、いずれ彼女に罰が当たるという事は随所から感じ取る事が出来るので、彼女に感情移入して物語を追いかけると、酷く居心地の悪い感覚を味わう事になるのですよね。  じゃあ俯瞰で楽しもうと距離を置いて観賞すれば、何だか家出娘が引き返せずにどんどん深みに嵌っていくのを見守るだけのような気分になって、やっぱり楽しめない。  結末もハッピーエンドとは思えず、スッキリしない後味となってしまいました。   好みの映画ではない、と断言出来たら気持ちも楽なのですが、上述のアクションの数々など、面白かった部分も確かに存在しているのが、悩ましいところですね。  著名な竹林での攻防シーンも、非常に緑が印象的で、白い着物が幻想的で、美しさすら感じました。  とかく知名度が高く、エポックメイキング的な作品という事もあり、何とも判断が難しい。  この映画は面白いかと問われたら、素直に頷く事は出来ませんが、そういった諸々を含めて、観る価値はあった映画だと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2016-05-07 07:51:36)
570.  グランド・マスター 《ネタバレ》 
 二重の魅力を秘めた作品だと思います。  武侠物としても、恋愛物としても楽しめる側面を備えている。   でも、自分の場合は上記の要素どちらに比重を置いて観賞して良いのか分からず、今一つ集中する事が出来ませんでしたね。  「ウォン・カーウァイ監督? なら格闘シーンはオマケ扱いで、恋愛模様がメインなんだろなぁ……」 「おぉっ、思った以上にアクションのクオリティ高い! 甘く見てた自分が馬鹿だった!」 「これ完全に武侠映画だなぁ、やっぱ映画に先入観を持つのは禁物だわ」 「あれ? このラスボス(と思われた人物)あっさり負けちゃったけど、どう話の決着付けるの?」 「……って、結局は恋愛映画かよ!」   と、こんな感じで混乱してしまった次第。  途中から終盤にかけては、トニー・レオン演じる葉問よりも、チャン・ツィイー演じる宮若梅の方が主軸に据えられているように感じましたね。  それでいて最初と最後をキチッと葉問で〆るのは生真面目な作りでしたが、それゆえに葉問が全然目立たない場面の長さも際立ってしまい、少々軸がブレているようにも思えました。   冒頭の雨中の格闘シーンを筆頭として、アクションは格好良く描かれていましたし、監督の得意分野とも言うべき恋愛描写の部分も良かったです。  不器用な自分としては、さながら左右から腕を引っ張られているかのような居心地の悪さを覚えてしまいましたが、器用な人であれば、その両方をしっかり楽しんで、満足出来そう。  そんな器用さを備えた人が羨ましくなる、ちょっと手の届きそうにない位置に咲いている花のような映画でした。
[DVD(吹替)] 5点(2016-05-06 05:21:05)
571.  千と千尋の神隠し
 難しい映画です。   隠されたメッセージだの寓意だのを分析しようとすると、どうしても「監督が可愛い女の子を色んな目に遭わせてみたかっただけのロリコン映画」という結論しか出てこないんですよね。  かつては反体制側の視点から作品を描いていたはずなのに、この作品では権力者側に非常に同情的になっている点など、色々と着目すべき事は多いのですが、それ以上に色濃く感じられたのが「大人は醜い豚」「この世は理解出来ない化け物ばかり」「そんな中で唯一の癒しである幼女は、こんなにも健気で可愛らしい」という主張だったりしたので、やはり自分にとっては、上記のような結論に達してしまう訳です。  もしかしたら、美少女が画面に出てくるだけで嬉しくなるような自分自身がロリータ・コンプレックスだからこそ、そう感じてしまっただけかも知れませんが、ちょっとそれ以外の言葉で表現しようとすると嘘になってしまいます。  自分の好きな「ドラえもん」シリーズや「シベールの日曜日」や「あの子を探して」などがロリコン映画であるという程度には、この作品もそうなんじゃないかなぁと。  ただ、この作品に関しては「そんなに大人が嫌いで、純真無垢な幼女が好きなの?」という作り手に対する疑問符のようなものが浮かんで来てしまい、映画の世界に入り込めなかったというのが正直なところです。   そんな大いに偏った印象を除外して考えれば、凄く上質な映画であるのは間違いないかと。  単純にアニメーションとしてのクオリティーが高く、画面の中でキャラクターが動くのを眺めているだけでも楽しいですよね。  逆境の中で主人公を助け、安堵感を与えてくれるハクの存在も魅力的だったと思います。  特に、竜の飛翔シーンに関しては圧巻の一言で、暫し呆然として見惚れてしまいました。  やはり、こういったタイプの映画は難しい事を考えずに、頭を空っぽにして観るべきだよな、と反省させられましたね。   ラストシーンにて「何だか全てが夢だったみたい」と感じさせてくれる非現実感というか、心がフワフワするような不思議な気持ちを与えてくれるのも(これが童心に返してくれる映画という事なのかな)と思ったりしました。
[DVD(邦画)] 4点(2016-05-02 22:45:33)(良:2票)
572.  誕生日はもう来ない
 鑑賞後、誰かにオチを話したくて仕方がない気持ちに襲われる映画というものがありますが、そういった観点からすると、この作品は非常にポイントが高いように思われます。   そして、衝撃的な結末という意味では文句無しなのですが「じゃあ面白かったの?」と問われれば、素直に頷きがたい映画であるのも事実。  バッドエンドであるという事もあり、気持ち良く笑い飛ばす事の出来る映画ではないのですよね。  衝撃に関しても、呆気に取られてしまったという要素が大きく、後味は良くないです。  この点、同じような吃驚オチでも、奇妙に爽やかな青春のテイストを感じさせてくれた「エイプリル・フール」という映画とは対照的。  両方を観賞済みの方と「どっちの結末が好み?」と語り合ってみたくなります。   終盤の死体を並べての誕生日会のシーンからは「悪魔のいけにえ」を連想させられて(もしやコレが元ネタなのか?)と思って公開年を調べてみたら、当然のようにこちらが後発の作品であったという事を、何だか印象深く憶えていますね。   監督さんは様々な結末を用意した後に、その中から最も面白いものを選んだという逸話を何かの本で読んだ記憶がありますが、他の結末がどんな内容だったのかを知りたいところです。
[DVD(字幕)] 3点(2016-05-02 21:49:21)
573.  デンジャラス・バディ 《ネタバレ》 
 女性警官同士のバディ・ムービーというのは初めてだったので、新鮮な気持ちで観賞する事が出来ました。   都会のエリートであるアッシュバーンと、田舎の乱暴者なマリンズ。  前者が後者に迷惑をかけられる事が多かった二人の関係性が、段々と逆転していき「あれ? これってもしかしてアッシュバーンの方がダメな女性?」と感じさせられていく流れが面白かったですね。  作中で「車が爆発するんじゃないか」と思ったら、本当に爆発しちゃった場面なんかも印象深い。  とはいえ、全体的にキツめのブラックジョークが多く、アッシュバーンが応急処置に失敗して相手を血まみれにしてしまうシーンや、マリンズが病院内での電話を看護婦に咎められるも銃を突き付けて黙らせるシーンなどは、ちょっと受け入れがたいものがあったかも。   最初は嫌っていたはずの相棒を認めて、周りに対して彼女を弁護してみせる件など、こういった映画における王道の魅力を忘れず備えてくれているのは、嬉しい限り。  特に「仕事で失敗してしまった後に酒場へ足を運び、飲み明かして憂さを晴らす」流れなどは、この設定ならではの「女の友情」を感じ取れて良かったですね。  ラストシーンにおける「アッシュバーンが飼っていたはずの猫」の件も、本来は傍迷惑な話なのですが、どこか微笑ましいものがあり、後味も良かったです。  そのまま内緒で飼ってしまうのではなく、ちゃんと猫を本来の飼い主に送り返す事を受け入れてくれたのが、ギリギリのバランスを保ってくれた感じですね。  嘘を見破ったマリンズの「全くコイツは……」と呆れながらも、彼女を見離せない事が伝わってくる雰囲気が、実に良い。   里子として育てられ、これまで家族が一人もいなかったアッシュボーン。  実の弟を刑務所送りにした事を、家族から責められ続けているマリンズ。  そんな二人が、共に過ごした時間を通して「姉妹」になっていく。  皮肉な笑いの中にも、微かな温かさを感じられる映画でした。
[DVD(字幕)] 6点(2016-05-02 21:21:33)(良:2票)
574.  エターナル 奇蹟の出会い 《ネタバレ》 
 ヒロインとの出会いから婚約までを描いた冒頭部分も、良質なラブコメ映画として、充分に楽しめる出来栄えですね。  けれど、この作品の真骨頂は、主人公が少年サッカーチームの監督に指名されてからの展開にこそあると思います。   「これって、もしかして……」という予感に応えてくれるかのように、チームの選手となった子供達が、超人的な身体能力で、大活躍!  そんなの全然リアルじゃないというツッコミを、完全にファンタジーな動きで吹き飛ばしてくれる様は、実に痛快です。   一刻も早く敗退してくれるように、という主人公の内なる願いに反して、チームが快進撃を続けていくのが、もう可笑しくって仕方ないんですよね。  あの手この手で監督自らチームを妨害して、子供達に薬を飲ませたり、デタラメな采配をしたり、気弱で活躍など出来そうもない子をキーパーに抜擢してみせたりするも、それが結果的に勝利に繋がってしまう不条理、もう最高です。   そして、この映画の秀逸なところは、そんな皮肉なコメディ映画というだけで終わらずに、もう一歩踏み込んだ内容を見せてくれた事にあると思います。  中盤以降、主人公の監督と、選手となる子供達の間に、家族のような絆が芽生えていく。  それを軽いタッチで、けれども大事な部分は押さえた上で描いてくれるのだから、観客の自分としても、気が付けばチームの敗北よりも勝利を願うようになるんです。  そんな願いを叶えてくれるかのように、とうとう主人公が自らの結婚よりも「この子達を勝たせたい」という想いを優先させてくれるシーンには、もう拍手喝采。  本気でチームの優勝を願って、応援させられる事になりました。   登場人物も魅力的で、主人公とヒロインだけでなく、恋敵役となる女教師と、新婦の幼馴染の男性なども良い味を出しているのですが、やはり何と言っても子供達のキャラクターが素晴らしい。  特にお気に入りなのは、キーパー役の二人。  小柄で気の強いテイルボーンは、途中でスタメンの座を剥奪されるも、さながらマネージャーのような立ち位置に収まって、ゴールの度に監督に抱き付いたりハイタッチしたりして喜びを表してくれるのが可愛いし、気弱な秘密兵器ダリクが魅せるスーパーセーブの数々は、観ているこちらの心をも鷲掴みにしてくれます。   ストリートチルドレンである選手達の塒も、妙に童心を刺激するというか、ちょっと住んでみたいなと思わせるような魅力ある造形だったりして、とにかくもう何もかもが好みな映画なんですよね。  決勝戦の前夜、主人公が子供達みんなと寄り添うように寝そべって、一緒に空を見上げるワンカットなんて、溜息が零れちゃうくらいに素敵。   面白いとか、笑ったとか、泣いたとか、そういった感情よりも何よりも「この映画、好きだな」という想いを強く抱かせてくれる。  そんな、特別な映画です。
[DVD(吹替)] 10点(2016-05-02 17:54:05)
575.  Dearダニー 君へのうた 《ネタバレ》 
 「ジョン・レノンからの手紙」というと、何だかそれだけを主題にして一本の映画が作れそうな魅力を感じますが、本作に関しては、決して彼からの手紙だけで終わる映画ではありませんでしたね。  手紙は確かに劇的な効果を齎してくれますが、それはあくまでも主人公ダニーの意識を変えて、行動を起こさせてくれたキッカケに過ぎないというバランス。とても好みでした。   それにしてもまぁ、アル・パチーノという人は本当に演技が上手いなぁ、としみじみ実感。  往年のロックスターだが、若い妻は浮気しているし、息子との関係は断絶中。  麻薬も手放せなくて、もう何十年も曲を書かずに、往年のヒット曲「ベイビードール」をツアーで歌い続ける日々を送っている男。  こんな具合に文章で列挙してみれば、幾つもの要素が絡み合った複雑な役柄のはずなのに、非常にシンプルな人間であると感じさせるほど、スッキリと演じきっています。   序盤に、ジョンからの手紙を読んで衝撃を受ける件も良かったですし、妻とその愛人とに別れを告げて、豪邸を後にする姿も、何だか妙に格好良い。  宿泊先のホテルにて、若い従業員達と小粋なジョークを交えた会話を繰り広げたり、お堅い女性従業員を口説いてみせたりする様が、観ているだけで楽しい気分にさせられるのですよね。  確かなスターのオーラを感じます。   終盤にて、苦労の末に完成させた新曲のバラードを歌おうとするも、客に要求されるのはいつもの「ベイビードール」。  迷った末に、寂しげな笑みを浮かべながらも「分かってる。皆が聴きたいのは、この曲だよね」と、望まれた通りの曲を歌い出す姿には、実に深い人間味を感じられました。  この主人公の選択に関しては、作中でハッキリと否定的に描かれており、実際に後になってから、新曲を楽しみにしていた女性従業員に非難されたりもしています。  それでも、何処となく「自分の理想を追い求めるよりも、客が望むものに素直に応えてみせたプロとしての姿」という切なさ、悲しさのようなものを感じさせてくれたのが、パチーノの演技が生み出す深みというものなのかも知れません。   その後の、長年の友人であるマネージャーが「ダニーは凄く良い奴だ」と彼の息子に語り掛けるシーンも素晴らしかったですし、ラストシーンにて、吉報を表すジンクスの「やぁ、トム」という息子の名前を呼びかける台詞で終わる構成も、凄く気持ちが良い。  実話を元にしたがゆえか、色々と煮え切らない部分もあり、主人公が一度は辞めたはずの麻薬に再び手を染める展開など、少し劇中との距離を感じてしまう瞬間もありましたが、総じて満足度高めの時間を過ごせましたね。  冷たい現実を内包しながらも、なお温かい映画だと思います。
[DVD(吹替)] 7点(2016-04-27 06:01:40)
576.  あるいは裏切りという名の犬 《ネタバレ》 
 ダニエル・オートゥイユといえば「メルシィ!人生」などのコメディ映画の印象が強かっただけに、今作には衝撃を受けました。  とてもシリアスであり、それ以上にシンプルな力強さを備えた刑事ドラマ兼犯罪ドラマであったと思います。   邦題は格好良いけれど、そこまで「裏切り」に重点が置かれた映画とも思えなかったので、観賞後には少し違和感を覚えましたね。  けれど自分のように、このタイトルのお蔭で興味を持つ方も多いでしょうし、プラマイゼロ、あるいはプラスの方が上、といった感じでしょうか。   主人公レオの存在感も素晴らしかったのですが、個人的に圧倒される思いがしたのは、悪役であるクランの方。  このキャラクターは、一概に「悪役」とは言い切れないくらいの深みがあるんですよね。  元々は主人公の親友だったのに敵対してしまう事になるとか、主人公の妻も交えた三角関係だとか、よくよく考えてみれば王道で、ありがちな設定ばかりなのだけど、観ている間は凄く新鮮な気持ちを味わえました。  理由を分析してみるに、恐らくは演じている役者さんの「うわぁ、こいつぁ如何にも悪そうだ!」という風貌と立ち振る舞いに、単純な「嫌な奴」であると思い込んでいたところで、少しずつ「善人」の名残を見せてくれるというギャップに、すっかり参ってしまったのでしょうね。   特に唸らされたのが、囚人となった主人公が娘を抱きしめられるように、そっと手錠を外してみせる場面。  そこには確かに善意や友情を感じられる一方で、同時に主人公の怒りを和らげるのが目的の罪滅ぼし、醜い誤魔化しといった負の感情も伝わってきて、非常に味わい深いものとなっています。  この映画で、最も印象に残るシークエンスでしたね。  こういった物語では、単なる背景設定だけで終わってしまう事も珍しくない「今は争っている二人だが、元々は親友でありパートナーであった」という要素を、実に上手く活用していたと思います。   そして出所した主人公が裏切り者に制裁を加えるべく動き出す終盤で、映画は最高の盛り上がりを見せる……と言いたいところなのですが、あまりにも展開が早過ぎて、あっさりと決着を付けた印象があり、少々残念でした。  確認してみたら、映画が始まって「主人公の逮捕」に至るまでが約一時間。  そこから二十分ほどで「主人公の出所」。  そして残り二十分で結末まで辿り着く訳だから、どうしても後半が駆け足に感じられます。  もう少し、主人公が刑務所に入る前と後のバランスを考慮して、多少上映時間が伸びるのを覚悟の上で前後の尺を同じくらいにしても良かったんじゃないかな、と思う次第。   ラストシーンに関しては「これって主人公も死ぬんじゃない?」と予想していた中で、娘と共に和やかなハッピーエンドを迎えてくれて、嬉しかったですね。  あぁ、そうか、だから主人公に復讐の引鉄をひかせなかったのか……と、しみじみ納得させられました。  亡き妻の仇に対して、自ら手を下す姿だって、そりゃあ絵になるかも知れませんが、残された娘の事を思えば、やはり主人公の決断は正しかったのでしょう。   静かなエンディング曲も相まって、ノワール映画とは思えぬほどに、優しい余韻を与えてくれる映画でした。
[DVD(吹替)] 7点(2016-04-25 21:34:13)
577.  フラッシュバック(2008) 《ネタバレ》 
 同名の邦題映画が、四つも登録されている事に吃驚。   自分が観賞したのはダニエル・クレイグ主演の青春映画でしたが、丁寧に作られた品であると感じました。  何といっても、登場人物達がデヴィッド・ボウイのファンであるというだけでも好感を抱いてしまいますね。  全編に亘ってノスタルジーをくすぐる匂いが漂っており、こういったタイプの映画としては、安心させられるものがあります。   基本的なストーリーラインとしては「ニュー・シネマ・パラダイス」との共通点が幾つか窺えました。  俳優として成功したは良いものの、今はもう落ち目と見られている主人公が、親しかった友人の死を知らされて帰郷し、そこで若き日の出来事を回想する事になる……といった形。   つまり、この亡き友との絆、友情こそが映画の骨幹となるだろうと予想していたのですが、中盤から彼の存在がどんどん薄くなってしまい、困惑させられましたね。  結局は主人公とヒロインの恋愛、そして人妻との不倫が中心であったように思えます。  それでも、メロドラマとして面白ければ構わないと頭を切り変えようとしたのですが、どうも上手くいきませんでした。   理由としては、まずヒロインとの仲が、それほど濃密には思えなかった事。  自分と同じ曲を好きな女の子、というだけでも主人公が恋心を抱く気持ちは良く分かります。  一緒にレコードを聴きながら口パクし、ブライアン・フェリーとバックコーラスとになりきっている場面などは、本当に楽しそうで良い場面でした。  ただ、そこから更に深い仲になろうとした矢先に、主人公は人妻の誘惑に負けて彼女との約束をすっぽかしてしまう訳で、観ているこちらとしては「そんなの別れる事になるのが当たり前じゃないか」と気持ちが冷え切ってしまったのです。  そこから復縁する展開になる訳でもなく、更に主人公は不倫をし続けて、遂には不倫相手の娘さんの事故死を招く結果となってしまいます。  ここまできたら、流石に主人公に感情移入する気持ちなどゼロです。   何といっても、子供の死に対して悲しみや罪悪感を抱く描写が決定的に不足していたと思いますし、不倫相手の人妻にしたって、死を聞かされて言い放つ言葉が「亭主に責められる……」って、子供を可哀想に思うのが先じゃないの? 自分の保身を真っ先に考えちゃうの? と大いに興醒め。  若い男との情事を楽しみたい母親から家を追い出され、一人遊びの最中に事故死してしまった幼い女の子が、本当に哀れでしたね。  海岸に流れ着いた機雷による爆死などという、非現実的な出来事だったので、実感が湧かなかったのかも知れませんが、もっと主人公達の「子供の死」に対する苦悩も描いて欲しかったな、と思います。   この後、親友に慰められる事となり、そして冒頭に繋がるのだろう……と思っていたら、それすらも無し。  終盤、実は不倫相手だった彼女も、自分が家を飛び出した後に不遇の死を遂げていたと知って、主人公がショックを受ける展開となる訳ですが、ここまで冒頭の「親友の死」を軽く扱うのであれば、初めから彼女の死を知らされて帰郷する形の方が良かったのではないでしょうか。   結局、ヒロインは残された親友と結婚しており、幸せな家庭を築いていた事も明らかになるのですが、帰郷した主人公と、夫を亡くした彼女が再びくっ付く、なんてエンディングにならなかった事には、ホッと一安心。  故郷を後にして、元の生活に戻っていく主人公の姿に「If There Is Something」の歌詞と、それを一緒に聴いた在りし日の二人の姿が重なり合う演出は、心に響くものがありました。   全体的に「好きな映画である」とは言い難いけれど「好きな場面」は幾つも見つける事が出来る。  そんな作品でした。
[DVD(吹替)] 5点(2016-04-25 16:12:06)
578.  素敵な人生の終り方 《ネタバレ》 
 設定からすると、如何にも感動物といった趣きの映画なのに、その内容はコメディという意外性が面白かったですね。  涙を誘うようなシーンもあるにはあるのですが、それよりも笑いの比重が大きかったように思えます。   自分としては、冒頭の悪戯電話を楽しんでいる主人公達に対して今一つ感情移入が出来ず、どこか冷めた目で画面を眺める事になってしまったのが残念。  そして、そんな悪戯電話の件以上に呆気に取られたのが、終盤におけるヒロインの台詞。 「(彼と不倫したのは)病気を使って同情させるからよ」  って、おいおいそこまで言うか、と衝撃的でしたね。  主人公が一途な愛情を抱いている存在なのだから、きっと優しい女性なのだろうな……という思い込みを、木っ端微塵に粉砕された形。   とはいえ、元々家庭がありながら不貞を働いていたカップルなのだし、そのくらいの落としどころが丁度良かったのかも知れませんね。  主人公も彼女も聖人君子ではなく、むしろ駄目な人間なのだというのが、何となく可笑しかったです。  道徳的には正しくなかったとしても、憎めない愛嬌のようなものを感じさせてくれました。   この映画は全編に亘ってそういった肩透かし感が強く「病気で余命僅かな主人公」「元妻との恋の再燃」というテーマを扱っておきながら「主人公の病気はアッサリ治るので、感動的な死など迎えない」「元妻とヨリを戻す事もなく、再び別れる事になる」という、王道の展開を踏まえた上での真逆な結末を迎えているんですよね。  結局、主人公は病気の告知を受けて自分の一生を見つめ直す前の段階と、何も変わっていないように見える。  ただ一つの大きな違いは、心を通わせられる友達が一人出来ただけ……という、静かな変化を描いた結末は、とても好みでした。   アダム・サンドラーと対になる、もう一人の主人公を演じたセス・ローゲンの存在も良かったですね。  彼の目線からすれば「一度は歩みかけたコメディアンとしての成功の道を閉ざされた後に、再び立ち上がって歩み始める」という、大いに青春を感じさせるエンディングにもなっています。   色々と意外な展開で驚きましたが、偶にはこんな風に「王道」「お約束」を逆手に取った作品も悪くない……と、そんな風に感じさせる一品でありました。
[DVD(吹替)] 5点(2016-04-23 16:54:56)(良:1票)
579.  最後の恋のはじめ方 《ネタバレ》 
 デート・ドクターという設定が面白かったですね。  女性目線なら、てんで的外れという可能性もあるかも知れませんが、その助言の数々には「なるほど」と思わされる事が多く、説得力を感じながら観賞する事が出来ました。   恋に関しては百戦錬磨で怖いもの知らずと思いきや、実は心に傷を負っている二枚目主人公のヒッチと、根は善良なのに全くモテない肥満気味の依頼人アルバートという組み合わせが、もう見ているだけで楽しい。  この二人がアレコレと苦戦しながら、お金持ち女性のアレグラとの恋を成就させようとしているパートが非常に好みだっただけに、途中からヒッチ本人の女性記者への恋が中心になっていったのは、少し残念でしたね。  勿論後者のラブストーリーも面白かったのですが、前者の内容を芯に据えた映画も観てみたかったな、と感じてしまいました。  それくらい、アルバートとアレグラとの恋模様には魅力があったと思います。   終盤、主人公達の正体が暴露されてしまい「よくも騙したわね!」と女性側がお怒りになるという、ラブコメお約束の展開に突入する訳ですが、ここでヒッチとアルバートの関係性が逆転し「キミは自分が売っている商品が何なのか、まるで理解していない」と、恋を売り物にするヒッチの方が助言を受ける立場になる場面なんか、凄く良かったですね。  ヒッチもヒッチで、秘密を暴いた女性記者サラに「アルバートは良い奴なんだ、あいつの恋を邪魔しないでくれ」という彼を庇う形で怒ってみせるのには、もう参っちゃいます。  こういった何気ない台詞で、主要人物に好感を抱かせてくれるのは本当に嬉しい。   クライマックスにて 「実は助言は全く関係無くて、等身大の彼自身に彼女は恋していたのだ」  と判明する件は、最高に痛快です。  比較的序盤から 「ヒッチは、あくまでも依頼人に恋のキッカケを与えるだけ」 「アルバートは助言通りに行動している訳じゃないのに、結果的に彼女に好かれている」  という事が示唆されていた為、裏切られたという衝撃も無く「あぁ、そうだったのか!」という、自然と笑みが浮かんでくるようなサプライズを味わえました。   その後の主人公カップルの和解に関しても、微笑ましく見守る事が出来て、後味爽やかなハッピーエンドを満喫。  気持ちの良い映画でした。
[DVD(吹替)] 8点(2016-04-21 17:46:01)(良:2票)
580.  親愛なるきみへ 《ネタバレ》 
 アクションではなく恋愛物のチャニング・テイタム主演映画は、これが初体験です。  こういった設定の映画では、どうしても主人公がナヨナヨしくて軍人には見えないというパターンが多くなってしまいそうなのですが、本作に関しては心配無用。  見るからに筋肉質で厳つい彼だけど、繊細な心情も丁寧に表現する演技を見せてくれて、違和感なく楽しむ事が出来ました。   さぁ、これからどんなストーリーが展開されるのだろうと期待が膨らむ序盤。  そして、中盤以降は……正直、王道過ぎるというか、何処かで観た事があるような展開に収まってしまったように思えて、残念でした。  遠距離恋愛をテーマとして扱っている以上、それは外せないのかもしれませんが「男が留守にしている間に寂しさに耐えかねて他の男と結ばれてしまう女」なんてものを、まさか終盤で堂々と見せられる事になるとは予想がつかず。  自閉症の父との絆、そして別れに関しても真面目に描かれていたとは思うのですが、それだけに優等生過ぎて面白みに欠けるように感じてしまいました。   一方、冒頭のシーンにて(あぁ、これは死ぬ間際の主人公が過去を回想するという形式なのか)と安易に考えていたところで、それを裏切ってくれる形となったのは気持ち良かったですね。  死の床にある父に向って、主人公が読み上げる手紙。  その文中にある「俺はコインだ」との言葉に象徴されるように、ストーリーの主軸は「コイン」と「父と子の絆」であって、恋愛要素はオマケに過ぎなかったのではないかな、とも思えてきます。  両方の要素を備えているからこそ魅力的なのかも知れませんが、自分の好みとしては、家族を主題にした映画か、恋愛映画なのか、どちらかに絞って描いて欲しかったところ。   色々と気になる点も多かったのですが、最後は主人公の男女が再会してハッピーエンドで〆てくれた辺りなんかは、何だかんだで嬉しかったです。  回り道はしたけれど、収まるべきところに収まったという形で、安心感がありました。
[DVD(吹替)] 5点(2016-04-20 21:44:02)
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