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あにやん‍🌈さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2514
性別
ホームページ http://coco.to/author/aniyan_otakoji
自己紹介 宝塚とディズニープリンセスとプリキュアが好きな還暦+2おかま。
宙組は当分観ないわ。

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41.  アキラとあきら 《ネタバレ》 
 三木孝浩監督の「記録と記憶の三部作」3本目。   大手銀行で東大卒エリート銀行員としてのし上がってゆく二人のあきら。町工場の息子、山崎瑛と大手海運企業の御曹司、階堂彬。情に厚い瑛とクールな彬、正反対な性格の二人が銀行のシステムに翻弄されながら成長してゆく物語ね。銀行の融資を決めるのは業績の数字、記録が全て、そこに情を持ち込むことで苦境に立ってしまう瑛なのだけれど、その情こそが困難を打開することになるのね。  彬の親が死に、弟が後継者となるものの、系列会社を経営する叔父たちの策略によって赤字経営のリゾートホテルの連帯保証をして窮地に陥る、そこから二人のあきらが活路を見出してゆく展開がスリリングに描かれるわ。  父が窮地に陥った時に見放した銀行員、手を差し伸べた銀行員、子供の頃の記憶から銀行員を目指した瑛は数字の記録だけでは突き破れない、人の過去の記憶を拠り所に突破口を開いてゆくの。   池井戸潤さんの作品らしい社会派サスペンスとカタルシスの世界で、三木孝浩監督作品らしさは抑え気味な感じはするのだけど、光と影を駆使した演出は変わらないし、それになんと言っても爽やかだわ。もう竹内涼真さんの爽やかっぷりが全編を貫いていて、ドロドロした物語のハズなのに妙に清々しいっていう。  そしてこれは爽やかキレイな三木孝浩監督作品に共通する意外な特徴なのだけれど、悪役が本当にイヤ~な空気を漂わせてるのよね。ヤクザとか出てくるとハンパなくて時に映画のカラーをおかしくしちゃうくらいで。この映画のユースケ・サンタマリアさんと大島さん(児嶋だよ!)が本当にイヤ~なヤツでタレントとしてのイメージに影響出ちゃわない?って心配になっちゃうわ。だからこそのクライマックスではあるのだけど。この映画では木島さん(児嶋だよ!)と塚地さんがお笑い畑の人なワケだけど『TANG』のかまいたちの二人とは全く次元が違う恐ろしい存在感で同じ監督であっちはなんでああなっちゃったかなぁ?って思ったわ。   無駄なく2時間ちょっとにまとまった映画はちょっと甘い印象もあるけれどそこに描かれた希望を肯定的に捉えたいわ。   平日昼間の渋谷のシネコンはアタシみたいな年寄りと10~20代前半の若いコ達に二分されていて、でもその若いコ達がみんなとっても静かに真剣に映画を見ていて、ああ、このコ達がこの映画を真面目に受け止めているってもしかしたら未来も少しは明るいのかもしれないわ、とか思っちゃった。
[映画館(邦画)] 7点(2022-09-08 20:51:43)(良:1票)
42.  TANG タング 《ネタバレ》 
 三木孝浩監督の「記録と記憶の三部作」2本目。   記憶をなくしたポンコツロボットのタングと出会ったダメ男が妻に愛想つかされて家を追い出され、メーカーにタングを新品と交換して貰おうと旅に出るお話。メーカーの正規品ではないために交換して貰えず、タングを狙う怪しい連中に追われタングを誘拐され、更にタングの開発者の元へ・・・  話が進むうちにタングに愛着を抱いてゆく主人公と、感情のようなモノが芽生えてゆくタングと。開発者にとってはタングの行動によって得られた記録のみが重要だけれど、主人公とタングにとってそれは記録ではなく記憶となって大切なココロの繋がりになってゆくのね。   映画としては使い古されまくったお話。アタシがよく喩える『E.T.』フォーマットってヤツ。『ショート・サーキット』から『アイアン・ジャイアント』を経て『ロン/僕のポンコツ・ボット』に連なるロボット友達の系譜のアレ。そしてそれらを決して越えてはゆかない、今時そんなところをウロウロしてるの?ってシロモノでしかないのよね。  良かったのはタングの可愛さ。動きとか喋りとか本当に可愛いの。主人公のためにコーヒーを運んでくるシーンなんか健気で泣けてくるわ。  でもそのタングの存在に対して人間側がまるで応えられてないの。脚本でも演出でも演技でも。  三木孝浩監督の演出はこのテのハリウッド風エンターテイメントには全く不向きとしか言えないのよね。簡潔にキッチリ計算された作りが求められると思うのだけどダルい演技の間や同じような画を延々と続けるクドさによって密度に欠けて隙間だらけなの。ニノや満島ひかりさんの泣きの演技なんか、変化もなく長々とやられると本当にシンドいわ。  そのシンドさに輪をかけてしまうかまいたちの二人の浮き具合。あれは映画の演技ではなくコントだわね。見てて『模倣犯』の爆笑問題思い出しちゃったわ。なんでこの映画にかまいたちが必要だったのか、必然性がまるで見えてこない、理解できないわ。  あと途中で協力する学者の奈緒さん、アレで終わり?その後どうなったの?ってすっぽり抜けてる感じで扱いが雑だったわね。   タング以外に良かった点としては武田鉄矢が悪役だったところかしらね。アタシの中であの人って胡散臭いオッサンでしかないから金〇先生みたいに善人演じられると...ねぇ。  あと近未来SFって事で三木監督の長所の1つ、ロケーションの魅力が封じ手になっちゃうんじゃない?って思ったけれどCGを駆使しての世界描写、結構頑張ってたわ。美術的には見どころありってカンジ。   ただタングの可愛さを愛でる映画、っていかんせんそれだけではツラいカンジで三木孝浩監督、このテのジャンルは向いてないかぁ、と残念な思いを抱いたわ。つーか山〇貴監督が撮ってればいいんじゃね?みたいな映画ね。
[映画館(邦画)] 4点(2022-09-08 18:55:21)
43.  今夜、世界からこの恋が消えても 《ネタバレ》 
 三木孝浩監督3作品連続公開状態なのだけど、同時に3作品それぞれジャンルは全く異なりながら「記録と記憶の三部作」とも言える共通したテーマを持っているのね。   1本目のこの映画は事故の後遺症で眠ると記憶を無くしてしまう女子高生が毎日日記を付けて毎朝読み返すことで過去を知り日々を更新してゆく物語。失われてしまう記憶を記録で補ってゆくの。  そんな彼女に偽りの彼氏ができて、もちろん毎日知らない人からのスタートになるのだけれど、その日々の積み重ねがやがてかけがえのない記録になっていって、だけど・・・。彼の遺志に従って、彼女の親友と彼の姉は日記を改ざんして彼の存在を彼女の記録から全て消して。だけど彼女の中に残る記憶があって・・・。   原作は『50回目のファースト・キス』の設定から発展させた感は否めないの。絵を描くことで事故後の記憶が潜在的に存在しているってあたりなんか特に。毎日記憶を失ってしまうのにそれを教師と親友以外の周囲に秘密にして高校に通えてしまうという無理っぷり、毎朝記録を読む事で現実を受け入れリセット状態から毎日の生活を更新してゆく無茶っぷり、その辺は冒頭からタネ明かしをして物語上の秘密を彼氏の方だけに置く脚本でねじ伏せてる感じもあるわ。   彼女に楽しい記録だけを残すために死にゆく自分の存在の削除を依頼する、親友のために事実を偽る、弟の存在を消す、そして真実を知らされ記憶の中に存在していない彼氏の死に向き合う。それぞれの辛さが切なく胸に迫ってくる物語、でも監督お馴染みのテクニックによって魅力的なロケーションを背景に(江ノ島!湘南!水族館!花火!みたいな)光と影を駆使した、美しくキラキラしたイメージに包まれた、見終って意外なことに爽やかなラブストーリーって印象が残るの。描かれる悲劇すらも甘美なカンジね。これぞザ・三木孝浩!って映画。   福本莉子さんは『映像研には手を出すな!』みたいなぶっ飛んだ役がいい味出してるのだけど『思い、思われ、ふり、ふられ』やこの作品みたいな正統派ヒロインももちろん良いわよね。  でも今回の大きなカナメだったのは親友・泉役の古川琴音さん。二人の恋をずっと支え続けた彼女が実質的な主役みたいな感じで、泉が抱えた重圧、苦しみや痛みを見事に表現していたわ。彼女は脚本に書かれていた以上のものを表現していたと思うの。『十二人の死にたい子どもたち』でも注目したけれどこれからも期待できる役者さんね。   三木孝浩監督の青春映画が好きで毎回期待してしまうのだけど、この映画も三木監督のキラキラを堪能できる、純度の高い作品だったわ。
[映画館(邦画)] 9点(2022-09-08 16:13:56)
44.  ジュラシック・ワールド/新たなる支配者 《ネタバレ》 
【注:超ネタバレ】   「ドジスンってあのドジスン? もう全然イメージ繋がんないんですけど? アレ、そういうキャラじゃなかったわよね? 単に偶然の一致?・・・ってシェービングクリームの缶、やっぱりあのドジスンなのね!ドジスン、ネドリーと同じ死に方、ここも1作目に繋いだってコトなのね」  って映画の興味が持続したとこそこだけね。あとはもう何やってんのかしら・・・って感じの映画だったわ。ガッカリもいいところよ。   前作ラストでもう地球大変、一大カタストロフ?みたいなカンジだったワケじゃない。それが今回なんやそれ、『怪獣総進撃』の怪獣ランドかいな、みたいな状況でちっちゃくまとめたところから始まって恐竜そっちのけで007の出来損ないみたいな人間同士の追っかけっこ、世界を股にかけて陰謀を追います!ってジャンル変わってるし。前作では恐竜にぐーっとキモチ寄せてたのに今回は恐竜が障害物みたいになっちゃって前作より扱いが退化しちゃったわ。  さらわれたメイジーとブルーちゃんの子を追うオーウェンとクレア、巨大イナゴの出所を追うグラント博士とサトラー博士との二元状態で進行してゆくのだけど、どちらもキャラがどんどん出てきて入り乱れドタバタして散漫もいいところ。ドジスンはボスとしてはあまりにキャラが弱くてありきたりで抜けていて。シリーズ最弱ボスよ。まああのドジスンだからねぇ。  問題は全キャラ薄いのよ。あちこち立てようとして結果的に全員薄くなっちゃってるの。オーウェンはこれまでのシリーズほど活躍しないし、せっかくの再登場のグラント博士、サトラー博士、そしてマルコム博士もドタバタ要員でしかなくて。ちっともこれまで確立したキャラを活かせてないの。  エピソードの数々は見せ場作りのための『ジュラシック・パーク』らしからぬ画が刹那的に連なるばかり。もっと恐竜見せてよ、恐竜を。  ジアッキーノ先生の音楽すらもジョン・ウィリアムズ御大のテーマ曲を盛り上げるでもなく、自身が前2作で提示したテーマを活かすでもなく、なんかハンパに鳴らしちゃったカンジでジアッキーノ先生のファンとしてこちらも肩透かしだわ。  そりゃ『ジュラシック・パーク』から全作初日に見てるくらいにはリアルタイムで触れてきたがゆえの感動ポイントがないワケじゃないわ。だけどそういうファンの気持ちすらも上手に作品創りに利用できてないのよね。何やってるのかしら?   シリーズ完結、今までのシリーズの総括になると期待したのだけど、こんなドタバタが見たかったワケじゃないわ。唯一の萌えポイント、ブルーちゃんも今回出番が少なくて「あーもー!」ってストレス溜まっちゃったわね。
[映画館(字幕)] 4点(2022-07-29 19:44:57)(良:3票)
45.  キングダム2 遥かなる大地へ 《ネタバレ》 
 あら? 前作のレビュー書いてなかったわ。一応映画館で見たのだけど。個人的には「まさみ姐さん!たかお~w」って印象ね。それなりに面白かったのよね。でも今回はまさみ姐さん出てなさそうだったので、あーんまり食指動かなかったの。   だけどこれがまー面白いの!   前作のようなドラマは殆どなくて、ひたすら合戦なのよね。それなりにドラマがあるのは清野菜名さんの羌瘣くらいで。でも、そのドラマのなさっぷりが良かった、アクションに次ぐアクションで状況がどんどん変化してゆくのが面白いのね。  ハリウッドならば200億円くらいかかってそうな大スケールの中で大作感に圧倒されずにそれぞれの登場人物がしっかりキャラ立ちしてるの。もう戦ってばかりなのだけど戦闘の混乱と混沌の中に信、羌瘣、尾平・尾到兄弟、(カメ止め)澤圭の伍メンバーの命があって生き様があって。刀や槍を振り回して突き進む姿からこそ見えてくるモノが描かれているわ。  戦闘シーンの地理的な方向性が怪しいカンジはあったのだけれど(イマジナリーラインほぼ無視)、状況そのものは判り易く描かれていてひたすら合戦ながら単調にならずにダレ場ほぼなし。まあ信が傍観者になる総大将戦あたりはちょっと間延びしたかしら?   激しい戦闘の中で異彩を放って美しく舞う羌瘣がとても魅力的なのだけど、せっかくの清野菜名さんをもっとちゃんとキレイに撮ってあげられなかったのかしら? 随分老け顔に映っちゃってるカットが多くて、ああメイクさん、照明さん、カメラさん、どうした?みたいに思っちゃったり。そこは残念ね。  あとラストで山﨑賢人さん、吉沢亮さん、橋本環奈さんの3人がババーン!ってカッコつけてるカットがあるのだけど、嬴政と河了貂、今回殆どな~んにもしてないわよねぇ?  たかおは相変わらずヘンなたかおで大変良かったわ。   エンドロール始まっても最後の最後まで席を立っちゃダメな映画で、見終って続編はよ!ってなったわ。邦画でこれだけのスケール感出せるのって稀有ね。やっぱりCGを上手に使いこなせる佐藤信介監督ならではなのでしょうね。大作見た!って満足して足取り軽やかに劇場を後にできたのであったわ。
[映画館(邦画)] 7点(2022-07-28 20:21:06)
46.  GHOSTBOOK おばけずかん 《ネタバレ》 
 ラストのガッキーの涙、アレって2006年に製作されたタイムリープもの、2013年に製作されたラブファンタジー、2本の邦画と全く同じシチュエーションなのよね(各作品のネタバレになるのでタイトル伏せるわ)。三番煎じ。そういうとこだぞ山崎貴監督。安易にアレ好きコレ好きって反映させ過ぎなのよ。いっつも他人の借り物ってカンジが強いわ。この人、オリジナリティで勝負!ってあんまり無いわよね。   とは言え『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』で一切信用できなくなった山崎貴監督作品だけど褒められるモノは褒めるわ。勿論お金払わず貯まったポイントで見たけど。   『学校の怪談』を期待しちゃうとかなり違うかしらね。感覚としては『地獄堂霊界通信』に『くちびるに歌を』と『妖怪大戦争』(2005年版)混ぜたようなカンジかしらねぇ。『地獄堂霊界通信』、見た人ほとんどいないと思うケド。  映画は雑な作り。映画の中に存在してるハズの作品世界のルール、法則、それをちゃんと説明できてなくて、わざわざ神木くんがゴーストブックについて説明し損なう描写を入れてるのだけど、そういう問題でなく冒頭から延々と動機も目的も世界の成り立ち、カタチも語られないために前半はひたすらに空回りした混乱劇が続く状態で。  子供たちのキャラは良いけれどセリフは聴き取りづらいし演技のタイミングがぎこちないのよね。異世界に気付くのやたら遅いかと思うと馴染むのやたら早いわ。  登場するゴーストもなんだか一貫性、統一感に欠けてて古典的なモノやらオリジナルなモノやらモンスター系やらバラバラ。毎度のCGっぷりもまあ相変わらず。   ただ、それでも子供向け実写邦画として良い在り様を示していると思うの。夢と冒険、わくわくハラハラ、そしてほのかな恋。そういうのはアニメに任せておけばいいってモンじゃないでしょ? アニメは超人、天才の物語ばかりだし(それはマンガの実写化にも及んじゃってるけど)。等身大の子供の物語って必要だし、これはそこをちゃんと押さえてると思うわ。個性的な普通の子供たちが織り成す子供の世界、そこに大人のガッキーが良いアクセントになって絡んで。ガッキーはホントに魅力的ね。コミカルっていうかそこまでやっちゃう?みたいな状態だったりするケド。   なんだかんだと楽しい映画になってるので夏休みのお子様たちと親御さんにお薦めね。
[映画館(邦画)] 6点(2022-07-24 19:00:42)(良:1票)
47.  神々の山嶺 《ネタバレ》 
 ミステリーかと思っていたけれどあのカメラとその中のフィルムはマクガフィンってコトね。別にアレはなんでもよくて。山を目指す動機というか理由というか言い訳的な。   映画は姿を消した登山家を追うカメラマンの物語、時代が飛びまくるのでぼーっとしてると混乱しちゃうのだけれど(過去と現代、ではあるけれどその現代すらも今ここから見たらかなりの過去だわ)、エピソードの積み重ねによって深町と羽生の人となりが浮かび上がってくるのね。幾つもの流れを経て最後は2人のエベレスト登山(正確には単独無酸素登頂を目指す男とその姿を追うカメラマンという切り離された関係)に集約されて。その登山シーンは苦しさ辛さが伝わってきて見ていてシンドくて。そしてその先にある世界、2人を分かつ道がそれぞれの生き様を見せて。  日本の描写がたっぷりで登場人物も多くが日本人なので国産アニメーションのようにも見えつつ、シンンプルな人物のタッチと精緻な山の描写がアチラな感じ(その人物と背景の関係、過酷な描写は『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』を思い出させたわ)でハイブリッド状態。昭和~平成の日本の描写が見事、だったのだけれどただ一点、カタカナのーは縦書きにした時にはーでなく|になるのよ、ってのは誰かアドバイスできなかったのかしら? 縦文字看板が軒並み横棒状態だったわね・・・   映画を見ながら25年前に冬の日本アルプスで滑落死した元上司の事をずっと思い出していたわ。奥さんとまだ小学生だった息子さんと娘さんをのこして逝ってしまった常務。何故山に登るのか、アタシには理解できない世界だったし、今、この映画を見ても理解はできないけれど、そういう生があるんだ、っていうのは苦しさを伴って伝わってきたわ。   日本の骨太な、男臭い題材をフランスが映像化するって、今の日本の萌えまくりアニメ業界じゃ映像化するのは無理?ってなハナシではなくて今はもう世界中の才能が国境の分け隔てなく創造してゆける時代になってきてるのねって思うわ。今は人も映像も音も簡単に繋がれる世界なのだから協力しあってより良いものができたらいいわね。傍観者が偉そうに何語ってるのよ、ってカンジだけど。ごめんなさい。
[映画館(吹替)] 7点(2022-07-24 18:14:54)
48.  キャメラを止めるな! 《ネタバレ》 
 オリジナルよりもこちらを先に見ることは絶対お薦めできないし、オリジナルを見た後にこちらを見ることもあまりお薦めできない、ちょっと困っちゃうリメイクねぇ。ひと言で言っちゃえば、ちょっと音痴なコピー映画。見る前の情報ではオリジナル版から発展的な展開をする映画?って印象もあったのだけど、実際はまんまリメイク。映画内に出てくるメタ的な描写(オリジナル版の映像がチラリと映る)は逆に混乱要素にしかなってないわ。   最初の『ONE CUT OF THE DEAD』にあたる『Z』部分はオリジナル版にかなり忠実だけどテンポ悪くてカメラも(意図した部分以前の基本的なテクニックで)見劣りしてしまうわ。  二幕目の製作に至る部分の見どころは竹原芳子さんの出番が意外に多い!ってところくらいかしら。主演男優がいちいち監督に絡むのクドいし。  いちばん問題なのは三幕目の撮影の裏側部分かしらね。1つ1つのネタの描写がクドいの。ゲロとか下痢とかオリジナルの数倍引っ張るわ。そんなモンでテンポ悪くしてどうすんの?みたいな。監督が現場とコントロールルームを移動する描写を何度も繰り返すのもクドいばかり。  一方で護身術ネタのカナメな「ポン!」が無いので護身術がアクセントとしてちっとも機能してないし、脇のスタッフとキャスト一人一人の扱いが軽くなっているので群像劇としての魅力が薄くなっているわ。   全体的にテンポの悪い、あまり巧くない映画って印象で、冒頭部分の『Z』のぎこちなさが全編に渡ってしまっている感じがしてしまうわ。日本の要素をちょろちょろ盛り込むのもいいけれどリスペクトにしては日本人から見てあんまりキモチのいい感じではないのよね。   この映画のメリットがあるとしたら世界市場に売り込めるって事かしらね。どうしたって日本映画はなかなか西洋圏では受け入れられないものだし(マニアな人はともかく)。海外の人がこの映画から入ってオリジナル版も見てその巧さを知るのならば、この映画の存在にも意義が出てきそう。  或いは『怪しい彼女』みたいにもっともっと色々な国のバージョンが出来て各国見比べみたいなコトができたら楽しいかも。
[映画館(字幕)] 5点(2022-07-24 11:53:20)
49.  ベイビー・ブローカー(2022) 《ネタバレ》 
 『パラサイト 半地下の家族』を思わせる韓国の急な坂を正面から捉えたショット、『万引き家族』のように余計な前置き無しにいきなり本題に入ってゆく展開、冒頭から韓国と日本のハイブリッド感が強く漂っているわ。   捨て子を巡る実母と人身売買犯と刑事のロードムービー、それぞれが事情を抱えエゴを持ち、だけど何より子供の命こそがいちばん、という点で一致していて、なので暗い題材に思えながら意外に明るく軽妙な印象ね。  多くを語り過ぎず、事象を追ってゆく描き方は想像力を膨らませてくれる一方でドラマティックな画や大きな起伏に欠けるのであまり強く訴えてこない、淡泊な印象もあるわ。売るはずの赤ん坊に愛着を覚えてゆく、疑似的な家族になってゆく、追う刑事もまた同情的に意識が変化してゆく、それがドラマにはなりきれないままに流れてゆくような感じ。  ニセモノな家族の姿を通して家族のあり様を問う点でいつもの是枝監督だわぁ、って。でもそんなに巧くはない、そんなに鮮烈ではない、って印象を抱いてしまうのもまたいつもの是枝監督なのだわぁ。もっとコミカルに、もっと激しくても良かったんじゃないかしら。韓国映画として見るとどうしても個性とかアクとか弱い気がしてしまうのよね。   ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナという韓国映画界のベテランが作る世界は安定感があるわ。どなたの演技も安心して見ていられるの(あるときは復讐者同士、あるときは兄妹な二人、今回は直接対面するシーンが無かったのはちょっと残念ね)。だけどならばもっともっと魅せてくれて良かったんじゃ?とも思っちゃうのよね。抑制された表現が美徳、みたいなのは日本的ね。   生活臭の漂う韓国の風景は良かったわ。国を問わずロケーションの良い映画って素敵ね。
[映画館(字幕)] 6点(2022-07-14 15:16:36)
50.  ソー:ラブ&サンダー 《ネタバレ》 
 なんだか眠たいデキの映画だったわ。   『ソー』って元々MCUの中でも特に絵空事感つよ~いシリーズだったけれど(神様のハナシだしね)、今回はその傾向が相当強くて。この世界とは違うどっか遠くで起きてる出来事って印象で(実際に現実空間を示すような画が殆ど存在してないし)、ソーのキャラがひたすら浮いてる(浮世離れしてる、上滑りしてる)ので鬱陶しさ醸してるし。ほぼ全編そんな彼がメインなので色々山あり谷ありな物語のハズなのだけどどうにも単調に感じてしまって。  冒頭、ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの面々と共闘してる、ハズなのだけれどソーが場を荒らしてるのをただ眺めてる程度の軽い扱いでガッカリな感じだし(マンティスの顔がかなり変わっちゃったのだけど、どうして? 黒目がちな前の方が良かったわ)、せっかくのクリスチャン・ベールの悪役なのに出番少なくて前作のケイト・ブランシェット同様勿体ないとしか言いようのない扱いだし。子供をさらって以降、ソーたちを描くのに忙しくてその間殆ど動いてませんでした、って感じ。冒頭とラストにしかキャラが描かれてないのでナカミがすっぽり抜けてる感じなのよね。  せめてソーとジェーンのラブストーリーに酔わせて貰いたいところだったけれど、そういうキャラじゃなかったわね。ジェーンのマイティ・ソーっぷりは良かったけれど、これにて終了って幕引きしちゃったのが残念。   端役を意外な人たちが演じてたりするのだけど、そういう小ネタというかウケ狙いよりも、もっと本筋を面白くしてくれないかしら?って思ったわ。  良かったのはちょろっとだけどダーシーが出てきたこと。誰?今回ダーシーは出ないとか言ってたの。彼女の麗しい顔が見られて嬉しかったわ。
[映画館(字幕)] 4点(2022-07-08 21:34:00)
51.  映画 ゆるキャン△ 《ネタバレ》 
 テレビシリーズでは2期25話かけて女子高生たちの晩秋から初春までのほんの4~5か月の出来事を描いていたのね。描かれたのは数回のキャンプ。それもみんながひとまとまりになって、ではなくてソロだったり特定の人数だったりとわりとバラバラ。何か大きな出来事がある訳でもなく(軽装備過ぎて凍死の危機!っていうのは大きな事件だったかな)、ただキャンプを楽しむ姿をじっくりと(特に料理の描写には拘って)見せていたわ。   で、いきなりそこから10年くらい経過しちゃってるのが今回の映画版。みんな社会人になってあちこちで一人暮らしして車持っててお酒飲んで。正直なハナシ、飛躍し過ぎでしょ!って思ったわ。あのゆるキャンの世界にはもう戻らないの?って喪失感みたいなの抱いて。  それに今回は大きな目標が設定されて途中で障害や挫折があって山あり谷ありのドラマティックな展開、そこからはかなり『ゆるキャン』の持っていたユルいのんびりとした感覚がスポイルされてしまったわ(一切、ではないけれども)。  放置された公有地をキャンプ場として再生する、そのために休みを利用して遠方メンバーは名古屋や昭島から山梨まで通う、のだけれどもボランティアで多分ガソリン代も自費だわよね。どうしたってやりがい搾取感が漂ってしまうわ。キャンプが大好きだから、って大前提があるにしてもそこはキチンと筋が通されるべきじゃないかしら。なんか自治体の方は計画にGOを出しながら具体的な予算や資材人材なんかまるっきり放置って感じに見えるのだけど。  その上で遺跡が見つかって計画が白紙に戻って、って波乱万丈状態になるあたりでどんどん「らしさ」から遠ざかってゆくわねぇ、って感じちゃって。   ただ、だから駄目、とは言い切れないのよね。高校時代とは違ってそれぞれ社会人になって社会との接点が出来て立場が生まれて責任も生じて。成長した中で趣味に向き合う、変わらなくちゃならないもの、変わらないもの変えないもの、そんなことを描いていて。世界を先に進めました、という映画なのね。テレビシリーズが過去になってしまうのは淋しいのだけれども、それもまたあり方の1つね。  もう少し各キャラのゆるく明るい時間を見ていたかったのがホンネではあるのだけど(「ウソやで~」がどうにも不発だったのがなんとも)・・・
[映画館(邦画)] 6点(2022-07-03 18:30:55)
52.  バズ・ライトイヤー 《ネタバレ》 
 意外なくらいにSF映画。話のキーになるのがウラシマ効果で、その基本を理解していること前提ってハナシなのでピクサーのお子様向けアニメーションってイメージで見ると結構キツいカンジがあるかもしれないわ。『トップをねらえ!』とか『インターステラー』とかのノリね。って言うか話のベースがどうも『ロスト・イン・スペース』の影響がある気がするのよね。『宇宙家族ロビンソン』じゃなくネトフリのリメイクドラマじゃなくビミョーなデキだった1998年製作の映画版のアレ。なのでこの映画もまたビミョーなカンジがしちゃうのよね・・・   映画は最初から見せ場の連続で、だけどひたすらにドタバタしているので少しは落ち着け、って言いたくなるわ。それに猪突猛進、だけど延々と空回りし続けるバズ・ライトイヤーはそんなに愛着の持てるキャラではないし、途中で仲間となる連中は大変にウザいし(特に役立たずのヒゲ面!)、シンプルな目標に対してどんどんと失敗を繰り返してゆく展開は爽快という訳にはいかないし。ネコ型ロボットのソックスの有能っぷりが救いかしらねぇ。  不時着した惑星についてはもう少し説明が欲しかったかしら。「森と荒地に大きい虫と蔦状の触手、以上。」って状態でそれ以外の情報がまるで無くて。あの星こそが主舞台で、そして歴史を刻んでゆく場所なのに。  バズとアリーシャとのドラマはもっと劇的に盛り上がっていいハズなのにバズの自業自得感のある行動の結果としての時間経過なので落ち着きのない展開も手伝ってどうにも響いてこないのよね。  敵の宇宙船に乗り込むのがクライマックス、っていうのもありがち過ぎるほどにありがちなのだけれど、わざとそういうノリを求めてる感じもするのね。アンディが好きになるB級SF感。でも1995年のアンディ少年がどうしてこの映画を、特にバズを好きになったのか、どこにそういう魅力があったのか、ちょっとピンと来なかったかなぁ。   デザイン関係はSF映画としての意匠が全編に凝らしてあって魅力的だったわ。特にメカニックはカートゥーン的なノリは避けてハードな感じで。でも思い出すのがズゴックだったりVF-19だったりミネルバだったりと日本産アニメの影響が無きにしもあらず。  あと、縦に広いIMAX GTテクノロジーでの鑑賞ではイジーが船外に出るシーンでの宇宙の拡がりが効果的だと思ったわ。   あちこちに『トイ・ストーリー』シリーズに繋がる要素が散りばめてあるのは楽しかったわね。設定的にこちらこそが原点ですっていうカタチなので、この映画のバズやザーグが具体的にどうオモチャのバズやザーグに反映されたのか、みたいなのが描かれていて。   全体的には大味なSF大作ってイメージ。ピクサーは『ソウルフル・ワールド』『私ときどきレッサーパンダ』などここ数作、子供向けの壁を突き抜けてきてるのはいいのだけれど、そうなると今度はライバルいっぱいの世界になるのでその中での勝負となると甘くはないわ。  っていうかバズって「無限の彼方へ!」が決め台詞だけれど実際の映画は全然「無限の彼方へ」って話じゃなかったわねぇ・・・
[映画館(吹替)] 6点(2022-07-03 16:29:27)(良:1票)
53.  ザ・ロストシティ 《ネタバレ》 
 爆発をバックにサンドラを乗せた手押し車をチャニングとブラピが押して爆走するカット、大晦日の『笑ってはいけない~』(去年は無かったわね)のクライマックスの映像そっくりで笑っちゃったわよ。『笑ってはいけないトレジャーハンター』みたいなモノ? 実際はコメディなのにあんまり笑えなかったのだけどね。ブラピが突如アレなシーンとかチャニングのスレスレヌードとかむしろドン引きだわよ(あれ、女性がやったら批判されまくると思うのだけど男ならいいの?)。   映画は『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』とか『バイブス 秘宝の謎』とかを思わせる、女性が主人公のわりと展開がユルめなアドベンチャーね。大々的なアクションとか見せ場とかの連続!ってワケにはいかないので(ブラピがそれなりのアクションを見せてくれるけれど)、大スターが揃ってるワリに大作ではなくてB級一歩手前のそこそこなイメージ。しかもみんなイメージ通りの役なので意外性はないわ(ブラピが突如アレなシーンはともかく)。ダニエル・ラドクリフなんか最近すっかりああいうあんまり強くないアタマばっかりの悪役ってイメージになってきたわね。ちょいとセクシーでドジでドタバタしてますわよ、ってサンドラ姐さんもいつものサンドラ姐さん。いまだそのイメージを維持できてるのは凄いと思うけれど。  秘宝の謎もそんなに凝ったモノではなく(そこだけに集中してるので一点豪華主義的だけれども決して豪華じゃないっていう)、サスペンスもそんなに持続しなくて。カーチェイスあたりはちょっと頑張ってたかしら。火山結構ヤバめだったように思うのだけど、結局どうなったのかしら? 秘宝の正体が判って登場人物がどうなったか描かれたら後は別にどうでもいい、ってトコ? まあとにかく肩の力を抜いてなーんにも考えずにまったりと見てくださいね、ってカンジ。  映画館で見るほどじゃない気もするけど、家で見てたら途中で寝そうね。   エンドロールの途中に1エピソード入るのでさっさと席を立っちゃうと損するわよ・・・って言いたいところだけど、なんじゃそりゃ???みたいなエピソードなので最後の最後に脱力すること間違いなし!
[映画館(字幕)] 5点(2022-07-03 13:52:17)
54.  炎の少女チャーリー(2022) 《ネタバレ》 
 なんでへっぽこな前作の邦題をまたわざわざ持ってきちゃったの?ってカンジだけど、キングの『ファイアスターター』の再映画化というよりは『炎の少女チャーリー』のへっぽこさの再現みたいな映画なのでこれでいいのかもしれないわね。   今回も大した映画ではないわ。分厚いキングの小説からこってりとした人間描写を抜いてあらすじだけ抜き取ったらただのB級ホラーになるというのはさんざん繰り返されてきた事だけれど、この映画もまた同じようにB級の道をまっしぐら。  登場人物が少なく、舞台となる場所も決して多くはないのでとても狭い世界で展開する、まるで半径5Kmくらいで全ての出来事が起きてるみたいな映画なのよね。しかも登場人物の誰にも魅力を感じられないの。前作もそんな感じだったけれど、少なくともドリューのチャーリーはまだ愛嬌があったわ。今回のチャーリーは不機嫌っていうかちょっと邪悪さすらあるっていうか。ネコの一件なんかあれ自分が原因だし。酷いコね。犬猫が犠牲になる映画はそれだけで不快だわよ。あそこは大いなる力には大いなる責任が伴う、ってコトなんでしょうけどさ。  今回はチャーリーの能力が両親から遺伝してて発火だけじゃなくて予知能力や念動力もセットになってゆくのだけどクライマックスで何故か防火服の連中に発火だけで対抗して苦戦してるのよね。その前に念動力でも戦ってるのだから発火以外で戦えたハズなのに。発火の威力や作用も含めてチャーリーの能力をきちんと定義できてないので見せ場を作りきれてない感じだわ。  あとお爺ちゃんほったらかしだわね。流れから考えたらお爺ちゃんと寝たきりのお婆ちゃん、あれ殺されちゃったんじゃないかしら・・・   その上で拍子抜けっていうか、なんだそりゃ、みたいなオチになるでしょ。アレはつまり能力者同士で生きてくしかないんだ、みたいな話よね。原作や前作のラストは一応希望というか、チャーリーが社会の中で生きてゆける道みたいなものを提示してたと思うのよね。でも今回のラストは社会との断絶を示唆しているようにも思えるわ。ミュータントだけの世界、『X-MEN』みたいなハナシ?  「大いなる力には~」と共にこの映画、アメコミモノを意識してるわね。チャーリーはこの後、どっかの正義の味方組織に加入しそう。ユニバーサル映画は大コケしたダーク・ユニバースを諦めてないのかしら? そんなのキングが納得しそうにないけど。いっそキング・ユニバースとか作るとか? それはそれで見てみたいわね・・・ 
[映画館(字幕)] 4点(2022-06-26 13:11:39)(良:2票)
55.  FLEE フリー 《ネタバレ》 
 今週はたまたま『マイスモールランド』『FLEE フリー』と続けてスクリーンで難民についての映画を見たわ。   この映画はアニメーションだけれどドキュメンタリー。アフガニスタン出身の男性が家族と共に弾圧から逃れ、アフガニスタンからロシア、そしてデンマークへと至る苦難の道を描いているの。それは一筋縄ではいかない、送還されたり抑留されたり家族と離ればなれになったり、何年にも渡る逃亡の物語。人としての尊厳を奪われ、ただ生きることにすら許しを得なければならない理不尽さ。彼がゲイであることで更にその生は困難なものになるのね。   アニメーションは基本的にはシンプルなデザインで秒間せいぜい4~6枚程度の動画で描かれ、時に抽象的なタッチで描かれたり、当時実際に撮影された実写映像が挿入されたり(少しだけショッキングな映像があるので注意)。その、内戦を描く実写映像は戦争の現実をはっきりと示す一方、アニメーションは簡略化、抽象化されているがゆえに単なる事象を越えてイマジネーションを想起させる、普遍性を持ったものへと昇華されているようにも思うわ。一人の男性が回想する物語であると共に、過去から今に至ってもなお傷つき続ける難民の問題を広く認識させているように感じるの。   ここに描かれるソ連~ロシアは酷いものなのだけど、それはあの時代、あの国だからこその問題、ではないのは『マイスモールランド』を引用するまでもなく明らかなのよね。国家としての日本も決してロシアを笑えない冷徹さだわ。だから国家はともかくとして市民として個人として、どうあるべきなのかを突き付けられている気がするのね。レイシズムが増大して冷たい日本人が溢れてきている今の状況では絶望的かもしれないけれど(この数年で民族や国家、セクシャリティに対する差別主義者がとても増えた気がするわ、いえ、SNSの発達によって顕在化したのかしら?)、人としてあるべき意識、意志、尊厳を手放しては駄目だと感じるわ。
[映画館(字幕)] 8点(2022-06-10 20:50:39)
56.  犬王 《ネタバレ》 
 山田尚子監督の『平家物語』を見ていたお陰ですんなりと世界に入ってゆくことができたわ。『平家物語』のヒロインびわが見て触れて琵琶法師として語ってきた世界がここに語り継がれていて、ってまるで地続きのように見ることができて。   山田尚子監督の繊細な、静のアニメーションに対して湯浅監督は一貫して動のアニメーション。アニメーションの快楽は今回も爆発しているわ。  盲の琵琶法師ともののけの如き男がバンドを結成する物語、歌曲と舞踊が生み出す快感が画面いっぱいの絵巻として繰り広げられて。今に通じる青春映画のようでもあるわ。ただし、その背景には源氏に滅ぼされた平家の無常な世界があって、権力の介入による不条理な弾圧があって。  平家の亡霊を成仏させるたびに犬王が獲得してゆく人間らしさはまるで社会に摂りこまれてゆくようで、体制に反発し、あくまで信念を貫く友魚こそがロックな生き様を見せてくれるようで、二人の対比が最後には切なく迫ってくるわ。   ただ、ロックよりは琵琶や太鼓や鐘の音色のみで魅せて欲しかった感はあるのね。本来はそこに聴こえないハズのギターやベースの音がジャカジャカと入っていると、その音にこそレイヴ感が存在しているような印象を受けてしまうのよね。今の音に重ねる事で過去と今とを繋いでいるのは判るのだけれども、舞台装置も含めて今になり過ぎちゃってる、今の野外ライブを見てるのと感覚一緒、って感じになっちゃって。そこはもうちょっと工夫、音にも絵にも見せ方にも時代を意識させるデザインが欲しかったかな。  それから重要な歌唱シーンで肝心の歌詞が聴き取りづらかったのが残念。でもそれはハコの音響設備の問題かしらねぇ? 出力的には問題なかったのだけれども。  あと、中盤のかなり長いライブシーンはちょっとテンション維持できてなかったかも。そのアニメーションの暴走的な歪さは湯浅監督らしい、湯浅監督の魅力でもあるのでしょうけれども。   この無常なる青春映画、今に通じる表現についての物語、難点はありつつも楽しみ、そして考えさせてくれる映画だったわ。
[映画館(邦画)] 7点(2022-06-08 16:09:17)
57.  機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 《ネタバレ》 
 アムロがガンダムで生身のジオンの兵士を殺す描写があるのね。明らかに殺意を持って踏み潰すの。  そこまでのアムロはコミュ障もいいところで島の子供たちともギクシャクしつつもちょっとずつ距離を縮めてゆく不器用な少年ってイメージなのだけれど、それはジオン兵達に恐れられている白いモビルスーツのパイロットであり、戦争に身を投じる覚悟を持った存在であるって事が明確になる象徴的なシーン。  子供たちを守ろうと軍から離脱したククルス・ドアンも元は同じで、だけど選ぶ道が違う以上は戦争のシンボルであるモビルスーツの呪縛から解かれる必要がある、それはファーストガンダムのテレビ版から継承されてるわ。1つの挿話が1つの作品として独立する事でアムロとドアンとの在り様の差、対比が明確になっているってところは良かったと思うわ。   だけどひっかかりどころはいっぱい。まずファーストガンダムにリアルタイムで触れてた世代だけどオリジンには一切触れてないのでファーストとの違いが戸惑いポイント。ホワイトベースのガンキャノン2機とコアブースターの体制(ガンタンクとGファイター無し)は映画版に準じるとして、リュウさんは? なんでスレッガーさんがもういるの? っていうのはどうやらこれがジャブローよりも後だから、って設定らしく。知らんがな。   各人の性格はファーストと微妙に異なっているように思えるし(セイラさんはかなり柔らかい印象だし、ブライト艦長はやたら軟派になったし、カイさんは口ばっかり、スレッガーさんはなんだか役立たず・・・)、アムロってあそこまでコミュ障だったっけ?  アムロが何考えてるのかいまいち判んないのよね。会話で成立しそうな部分をあえて話させず表情とか動作とかニュアンスとかでなんとなく伝えようとしてるけれどあまり上手くいってない感じがして。作画と演出とで乗りきろうとして乗りきれてない、そんなシーンが沢山だわ。   島の子供たちが孤児であって、それぞれドアンに救われた存在である、っていうのは判るのだけど、それを具体的に示すのは戦闘で親が死んだ一人の幼い子の姿を回想するドアンの描写だけで、それで全てを察してね、っていうのはちょっと乱暴かな。何しろ映画の多くが子供たちの姿を描くのに割かれているのだから。あれだけ子供たちを描きながら(エンドロールまで含めて)そこに個々の物語がないのがねぇ。   あと、CGで描かれたモビルスーツはあえてセルタッチに寄せて、ウェザリング施して巨大感出すとかしないんでしょうけどガンプラっぽいわ。『ヤマト』といい『マクロス』といい、いにしえの作品も現代ではメカはCGっていうのがすっかり定着したわねぇ。   全体の印象としてはちょっとダルめ。アムロがてくてくと徒歩で移動してるシーンが頻出して『遠くへ行きたい アムロが触れ合うククルス・ドアンの島の人びと』みたいなカンジね。ガンダム登場時間自体は短いわ。   アムロがこの後に辿る道を思えば、この映画の中での生き方や選択が正しいなんてとても言えないのだけれど、この映画だけではそこまでは判らない、当然知識を持っていてこそ、っていうのがちょっとね。観客の知識に頼り過ぎなのよね。あと、最近の安彦良和さんのキャラクターのタッチ、馴染めないわ・・・
[映画館(邦画)] 5点(2022-06-08 15:15:32)
58.  ハケンアニメ! 《ネタバレ》 
 2つのアニメ番組の制作に携わる人々の姿を通じて、作品を創造してゆく動機、意志、苦悩、スタッフ間の摩擦、調和、制作にまつわる現実的な障害、問題、組織のあり様を面白く、そして感動的に描いているわ。  創作意欲に突き動かされればそれで作品が成立するワケじゃなくて、1つの作品が世に送り出されるまでにとても多くの人手と手順を踏む事になる、それが生々しい混乱劇となって興味深く見られるの。   個性的な登場人物に揉まれながら成長してゆく新人監督を吉岡里帆さんが好演。最初から最後まで飾り気のない地味なキャラなのだけれど、だからこその存在感があって。  そして彼女が(一方的に?)反目する事になるプロデューサーの柄本佑さんは淡々としながら要所要所でインパクトを与えるおいしい役どころ。個人的にはこちらの『サウンドバック』組を中心に見てたカンジで中村倫也さん&尾野真千子さんの『運命戦線リデルライト』組にはそんなには気持ちが動かなかったかも。   映画は2つのアニメが競いあって放送開始から最終話まで駆け抜ける様を描いているのだけど、その期間の設定ゆえ、ちょっとエピソードが足らない感もありつつ長さを感じさせもして。いきなり全てが進行中な状態から始まって大勢の人達、多くの舞台、多くのセリフが駆け抜けて、それでも監督の自宅やお風呂屋さんのシーンで緩急付けてるつもり、なのでしょうけれどゴチャゴチャした印象とテンポ悪くなってる印象とが混在しちゃってるカンジね。  2つのアニメの映像がかなり挿入される事で更にゴチャついた感が無きにしもあらずなのだけど、でもその2つのアニメはしっかりと設定、デザインされて、よく動いてちゃんと世界が確立している状態は見事だわ。   あと、大事なところがパロディなのはむしろ残念。『ライトスタッフ』や『アルマゲドン』や『モンスターズ・インク』やアレやコレやでお馴染みの横並びスローモーとか、エンドロール後のラストカットとか、この映画オリジナルな映像ではないって印象になっちゃって。   そしてどうしても気になってしまうやりがい搾取感。この映画はアニメ業界の実態を色々と描きつつも現場の闇からは目を逸らしている感じね。熱意にほだされて動く下請のアニメーターたち、だけど下請スタジオの多くのアニメーターがいくら働いても残業手当も受け取れず10万円未満の固定給で生きている現実があって、でもこの映画は現場の上の人達の熱意は描いても、それを支える下の方の人達の問題は語らない、そこが「あくまで娯楽映画として見てください」っていう、本編で描かれていたしがらみを突破してゆく意志に反してるこの映画の皮肉な限界。  今、映画の製作現場でのセクハラやパワハラ、違法な労働体制が白日の下に晒されている中、この映画はひと昔前の作品って感じがしないでもないわ。
[映画館(邦画)] 6点(2022-05-26 15:53:05)(良:1票)
59.  シン・ウルトラマン 《ネタバレ》 
 初代マンのリアルタイム世代なのだけどウルトラシリーズは『帰ってきた~』途中でリタイア状態で(ランドセルにガムのシールべたべたに貼りまくってたのにスノーゴンの回を見てから恐くて見れなくなっちゃった)、以降殆ど縁のない状態ね(『80』の前半部分だけは楽しんだ記憶があるのだけど)。  初代は大好きで、だから今回の映画は庵野&樋口コンビの毎度のセンスで作品を壊しちゃうんじゃないかって不安と、トラウマの再現を見せられるんじゃないかって不安とがあったのだけれど、後者は無かったものの、前者はそれなりにやらかしてくれたカンジね。   最初の3分の1くらいは楽しんだの。例のバカくさい短いカットの積み重ねと(文字読み切れないわよ、っていうか読ます気もないでしょ?)ヘンなアングルの連続ながらも『シン・ゴジラ』よりもあくまで『ウルトラマン』寄りな世界で、『ウルトラマン』見てる、って実感できて。怪獣が出てきてウルトラマンが倒す、その当たり前なウルトラマンのカタチね。  だけど中盤以降、世界情勢がどうだこうだ武力としてのウルトラマンがどうだこうだと語り始めてからはグダグダ。未熟で愚かな人類を利用しようとする者、抹殺しようとする者、それに抗うウルトラマン、それを大量のセリフで語ってドラマはエピソードの羅列、お団子状態。ウルトラマンは神ではなくて自我を持った一宇宙人ですよ、と。ウルトラマンの個が見え過ぎちゃってて神秘性ひっぺがしちゃってるわ。  今回それを描くエピソードや映像が凡庸なオタク臭いシロモノに見えて、ちょっと退化してる?とも思えたし。ごく一部の人間のセリフばかりで実態見せない大状況とか(『大怪獣のあとしまつ』みもあるわ)オタク肯定とか使徒みたいなゼットンとか。全体的になんか音痴なカンジがするのよね。   それに役者さんをローアングルと大アップで撮りまくってるのだけど、映り方に対して無頓着な気がするのね。女優さんは綺麗に撮ろうよ・・・ってもう気になっちゃって仕方ないの。  更に更に長澤まさみさんに対する数々の描写が無神経過ぎてもう。自分のお尻叩く描写の繰り返しとか巨大化時のローアングルとか執拗に体のニオイ嗅がれるとか、昭和オヤジのイヤ~な嗜好をそのまま映像化してるみたいな感じで(そこに意味があるとしてエロティックやフェティッシュに描く必要は一切無いわよね? 擁護派はアレコレ理屈こねるけれど実際ツイッターには長澤まさみさんの太ももがどうのパンツがどうの体臭がどうのってツイートが溢れてるのが現実でしょ?そういう人には何も言わないワケ?ウンザリ。違和感抱いてる特オタさんたちもいっぱいいるのが救いだけれど。っていうか、コレ、仮にも『ウルトラマン』なのよ?)、この人達ってそういうのアップデートできないままに朽ちていくのかしら?って思ったわ。   やっぱりね、ウルトラマンは子供を楽しませて、子供に夢を見せてこそだと思うのね。懐古じじいのオモチャにしちゃダメだと思うわ。『仮面ライダー』も不安だわね・・・
[映画館(邦画)] 5点(2022-05-20 14:21:12)(良:3票)
60.  トップガン マーヴェリック 《ネタバレ》 
 実際に役者さんが戦闘機に乗って撮ってる映像の迫力はもの凄いし、CGを多用してるようだけれどそれを全く感じさせない戦闘シーンに進化を感じたわ。  だけどナカミは良くも悪くも『トップガン』そのまんま。懐かしの80年代の世界。うわあ、今の時代にこんなの見せられてるんだぁ、って(ベッドシーンの映像表現なんかスゴいわよ)。   前作から36年が経過して、その時間の流れがしっかと映像に刻まれているわ。前作のキャラクターたちが辿った道、その重さ、残酷さ。だけど脳筋イケイケだった前作から何かが成長、進化するワケもなくそのまま脳筋イケイケな現在が展開してゆくのよね。ブルース・リー師匠の精神そのままに『スター・ウォーズ』のデススター攻略戦みたいな作戦に挑むマッチョたちの物語、過去の遺物なんて言わさない!って根性論の世界。マーヴェリックとグースの息子との不和だって根性論で乗り切ってゆくようなモノだし。ついでに音楽もメインはもちろんおなじみのアレね。  相変わらず悪い敵国だったら攻め入ってOK!って、だけどNATOに敵対する国を叩け!みたいなかなり生臭い状態なワケで。そこら辺、娯楽映画、ファンタジーとして割り切ってね、ってのも前作から変わらないのよね。あれだけのコトをしたらまず間違いなく開戦に至ると思うのだけど、そうならない世界のお話し。こことは違うマルチバースみたいなモン。   映画はトニーに敬意を表しているのかしら、前作のヤな撮り方まで踏襲しちゃってるわ。アゴと頭が切れた大アップ頻出とか逆光いっぱいとか。それでもスーパー35を70mmまでブローアップして粒子ザラザラだった前作に比べたら今回のIMAX版はかなりマシになったわ。   でもね、人殺しの道具な戦闘機をカッコいいと思っちゃうのもまた事実なのよね。戦闘機が飛んでる映像の気持ち良さ、大画面いっぱいの飛行ショットの爽快さは抗えないし、過去の遺物扱いされてもやっぱりF-14カッコいいわぁ、って。兵器に抱くカッコいいって感覚は戦意高揚のためのワナにかかった状態なのかしらねぇ。せめてそのカッコ良さは創作の中だけで完結していて欲しいものだけれど。   相変わらずのトムの俺様映画だけれど、それだけトムの頑張りっぷりもおなじみトム走りも見られるし、大迫力の映像と音響(前作はただやかましいだけだったけど)で迫力たっぷり、とりあえず頭カラッポにして見るのが吉、って映画。現実は全然別のハナシだけどね。
[試写会(字幕)] 6点(2022-05-17 13:14:56)(良:2票)
080.32%
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2421.67%
31234.89%
431812.65%
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654421.64%
745518.10%
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91827.24%
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