581. マイ・ビューティフル・ランドレット
当時(たぶん、今も)の英国内事情を切実に描きながら、どこかポジティヴな前向きさを感じさせてくれるなかなかの逸品。ダニエル・デイ=ルイスのマッチョなパンク野郎ぶりと、コインランドリーとの奇妙なミスマッチぶりがいい味出してます。どんな世の中でも、どんなに八方ふさがりでも、ささやかな夢を持ちながら生きていこうよね。たとえ無慈悲に踏みにじられることがあろうとも、ご同輩。スティ-ブン・フリア-ズ監督も、この小品が最も良いのではないかな。 8点(2003-06-06 12:31:14) |
582. マチネー/土曜の午後はキッスで始まる
ジョー・ダンテらしいB級映画への偏愛とノスタルジア趣味が、もうこれ以上ないくらい美しく結実した奇蹟のような傑作。相変わらず、ガキッぽい体裁でありながら、実は『13デイズ』なんぞより、いっそう切実に「キューバ危機」を頂点とした冷戦時代のアメリカ市民のメンタリティを描ききっていて、鋭い社会派映画にもなっているし。それに、あの、ヘンテコな巨大アリ映画をわざわざ作っちまう邪気も、いつもなら悪ノリに陥りがちなのに、気持ち良く笑って楽しめる。はじめてダンテを「好き」になりました、ワタシ。 9点(2003-06-05 18:44:34)(良:1票) |
583. マキシマム・リスク
まず何より、映画としてよく完成されている。いきなりヴァン・ダムが死んでしまう意外な冒頭から、「1人2役大好き(?)」なヴァン・ダム作品のパターンを踏襲しながらも、敵・味方の絡ませ方が実に納得できるものだった。見せ場にしても、さすがリンゴ・ラム監督らしいパンチとスタイリッシュさが効いているじゃありませんか。だてにフランスの演技派ジャン=ユーグ・アングラードを相手役に迎えちゃいないな、という立派に「アクション映画」の佳作であります。…文句のある者は、一歩前に出るように。 8点(2003-06-05 18:33:53) |
584. マウス・オブ・マッドネス
ちょっと理に溺れ過ぎかな…と思わせなくもないけど、実にスリリング! スティーブン・キングというより、まさにラブクラフト風な邪悪さが気色いいです。カーペンター作品としては、『エスケープ・フロム・LA』みたいな一見ノーテンキな作品の方が好みなんだけど、これは彼の「実は俺ってばインテリなのよ」という一面が最も良く出たものとして、評価したい。まさにメタ・ホラー・フィルムですな。 8点(2003-06-05 18:23:36) |
585. マイ・フレンド・メモリー
もう、圧倒的な素晴らしさ。松竹富士(もうなくなっちゃったけど)って映画会社の、それぞれ全然関係のない映画なのに『マイ~』と付ける、そういった一連の「感動作」シリーズ中でも、これはダントツに群を抜いて見事な映画です。ともに障害をもつ少年2人の友情物語という枠組みの中に、実に深い死生観や、「記憶し、その者のことを語り続ける限り、その者は“生き”続ける。そして『物語る』とは、そういった”語りつづけること”からうまれた」という主題(と、ぼくはこの映画から受け止めた…)を盛り込むなど、そんじょそこらの「芸術映画」なんぞよりずっとずっと高尚かつ思慮深いと思う。こんな悲しい内容だのに、柔らかなリリシズムとユーモアを随所に盛り込んだ演出が、これまた泣かせるのなんの…。主人公を演じた2人の少年はもちろん、シャロン・ストーンはじめ大人の役者たちも素晴らしい。特に『Xーファイル』からは想像もつかないジリアン・アンダーソンの、ペーソスあふれる姐御っぷりに拍手! 10点(2003-06-05 18:14:01) |
586. マーキュリー・ライジング
そんな、皆さんが酷評するほどヒドイ映画とは思えないんだけどなあ…。まあ、確かによくありがちな内容かもしれないし、アレック・ボールドウィンの悪役は、あまりにも絵に描いたような馬鹿馬鹿しさだしね。ただ、『シックス・センス』の時にも思ったのだけど、ブルース・ウィリスは子どもと絡むととても良い味を出すなあってのが、まず好印象。それに、自閉症児を演じる少年が結構イイ線いっていて、ラストの感動を盛り上げてくれるし、様々な欠点を補ってあまりある見どころの多い作品だと小生は信じとります。ほんと、デリカシーとハートのある捨て難い映画っすよ。《追記》ビデオで再見。やはり好感度し。ラストで、自閉症の少年がそれまで必死に自分を守ってくれたブルース・ウィリスの主人公をぎこちなく抱擁する。その“ぎこちなさ”ゆえのデリカシーに、またもナミダする。よって従来の「7」より1点追加! 8点(2003-06-05 17:44:15)(良:1票) |
587. マーヴェリック
ううっ…(感涙)。リチャード・ドナーの映画で、かくも皆さんに受けの良い映画などそうそうありますまい。彼をアメリカ映画の中でも傑出した(しかしあまりにも理解されない)天才(!)だと信じて疑わない者としては、それだけでもう大満足。ほんと、この映画にしても、撮影現場での和気あいあいとした雰囲気が、そのまんま画面に反映されている。この幸福感こそ、ドナー作品の最も大きな魅力のひとつだよね。すべてにメカニカルになった昨今のアメリカ映画界にあって、彼の「人間味」は実に貴重なものである、と言っておきましょう。とにかくまあ、メル・ギブソン以下あのジョディ・フォスターまで、なんて楽しそうで幸せそうなんだ…あ、嬉しナミダが出てきた… 8点(2003-06-05 12:51:53) |
588. ホワイトハンター ブラックハート
これは、イーストウッドにとって監督というより役者としての「野心作」じゃあるまいか。ジョン・ヒューストンをモデルにした破天荒な映画監督役を、これまで彼が見せたことのなかった腹芸たっぷりの演技で喜々としてこなしている。特に、あのセリフの多いことったら! まるで自らイーストウッドという偶像破壊を楽しんでいるかのような、と同時に、”映画というものの業の深さ”をかくも優雅に描き出すという、まさに円熟の境地。『真夜中のサバナ』でケビン・スペイシーが演じた役も、本当はこの頃のイーストウッド本人が演じていたなら、もっとスリリングだったろうなあ。 9点(2003-06-05 12:35:34) |
589. ボディ・ターゲット
ジャン=クロード・ヴァン・ダム作品中、確かに最も美しい作品。何と言っても、ロバート・ハーモン監督ならではのシャープな演出と画面構成のさり気ない才気にヴァン・ダムのアクションが映えて、ほとんど視覚的至福すら感じさせてくれる…とは、ちっとばかし大袈裟ですけど。ほんと、ハマッた時の彼の身体の動きは、ジーン・ケリー(!)に匹敵するんじゃないか。とにかく、単なるアクション映画以上の価値を見る者に与えてくれる作品として推奨いたします。《追記》 先日、ビデオが300円で投げ売りされていたので購入。あらためて見直すと、やっぱりこれが良いんですよ~。いわゆるハリウッドのアクションスターがおしなべて「肉食動物」系であるのに対し、ヴァン・ダムはどこか群れから離れた「草食動物」めいた趣がある。彼のアクションに攻撃性がどこか稀薄なのは、そのせいじゃないかな…。そして本作は、そんなヴァン・ダムのパーソナリティを最も見事に引き出したものであることを、再確認いたしました。よって点数も、8→10ということで。ほんと、ビックリするくらい美しい、そして愛おしい映画なんだけどなぁ・・・ [映画館(字幕)] 10点(2003-06-03 19:37:41)(良:1票) |
590. ポストマン(1997)
いろいろ欠点…というか、おっしゃりたいことはおありだろうと思います。が、ぼくはこの映画を高く評価したい。何なら、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』より何十倍も良いとすら、断言してもいい。ここには、ああいった誰にでもわかりやすい「良識」の代わりに、「世界は簡単に崩壊するが、その再生は容易じゃない」という苦い認識が語られるばかり。だから、郵便が当たり前のように届けられる世界の素晴らしさ貴さを、ここまで実感させてくれる「文明」批評作品も、そうはないと思う。あの、コスナ-扮する郵便配達人が「偽者(コピー)」なら、独裁者も(昔はコピー機のセールスマンだったという、原作にはない設定の見事さ!)「偽者(コピー)」でしかない。この「偽者」対「偽者」のドラマの持つ、多重性のラディカルさ。これぞ真の意味での偉大なポストモダン作品です。 10点(2003-06-03 19:18:45)(良:1票) |
591. ぼくの神さま
こういう単なる「カトリック礼讃の宗教プロパガンダ映画」風メロドラマを、さももっともらしい「良心作」として商売の道具にする風潮は21世紀にはなくなってほしいです。一方で、こんな”ある種の意図”がミエミエの映画を、何故そこまで絶賛したりホメたりできるんですか? …すべてにあざとく、すべてに類型的。死者にたいする痛みも悼みも、実のところない。オスメントの演技も、ただただ醜悪。すみません、この作品(映画、と言いたくない)って、ホントだめなんです。唯一、ロケ撮影による風景のみずみずしさと、ウィレム・デフォーに1点。 1点(2003-06-03 19:00:05) |
592. ポーラX
決して悪い作品だとは思わない。あの破滅的なまでに絶望まっしぐらの(内容も文章も)原作を、よくぞここまで映画化したと、ホメてあげてもいいくらいだ。が、一番のモンダイは、カラックスが自分で抱えていると思い込んでいる「絶望」とやらが、本人が信じているほど深いもんじゃないだろ…ってことが、図らずも透けて見える点。世の中、アンタ以上に”地獄”を生きてる者がいっぱいいるんだよ、お坊っちゃん。 6点(2003-06-03 18:44:27) |
593. ホーンティング
ウヒャ~、何なのこの評判の悪さ! 確かにちっとも怖くない「幽霊屋敷もの」なんて、インチキみたいなもんだけど、やたらグロに走ったり、暗闇でワッと驚かすようなショック描写に頼りすぎな昨今のホラー映画とは別の「冒険映画」として見る分には結構楽しめるじゃないですか。特に、この豪華キャストに合って実質的主役があのリリ・テイラーだとは…。この意表の突き方も、シャレっ気があってぼくは好きですね。 6点(2003-06-03 11:10:34) |
594. ホームボーイ
せっかくの高得点(これまでのところ…)に水をさすようで申し訳ないのですが、ミッキー・ロークというより、名撮影監督だったマイケル・セラシンの初監督作品ということですっごく期待して見たのに、これが…。凝りまくった照明と映像も、すべてはロークの自己陶酔的ナルシシズムに貢献するだけで、赤面するばかり。彼のファンにはたまらんのでしょうが、正直、単なるプロモ-ション映画じゃないですか。これって。 3点(2003-06-03 10:59:35) |
595. ホーム・アローン3
シリ-ズ1・2作がちっとも面白くない(どころか、あの主人公のガキに、言い知れぬ”反感”を抱いてしまった…)者としては、正直言ってこの3作目が最も楽しかった。あのマコーレー・某なるこまっしゃくれた子役に替わって主演に選ばれた男の子が、いかにも愛嬌たっぷりで、それだけでも高得点。そして、間抜けなテロリスト一味も、あくどいコミック調ドジっっぷりじゃなく、たんじゅんに”悪いやつら”ってのがいい感じです。なかでも、紅一点のあの女優、実にイロッぽくてカワユイかったし…。てなワケで、「必見!」とは決して申しませんが、結構見どころのある拾い物ではありますヨ。 7点(2003-06-03 10:49:33) |
596. 冒険者たち(1967)
中坊のころ初めてテレビで見て、大感動させられたものだった。でもその後、大森一樹だのあの年代の人間たちに語られ過ぎ、神格化され過ぎって感じで、大学に入ってリバイバル公開された時には、微妙な「反発」を覚えてしまい…。でも、トリュフォーの『突然炎のごとく』とはまた違う”男2人・女1人”の永遠の夏休みを生きるかのような関係は、今なお憧憬をかきたててやみません。だから、なおさら、後半の、3人の関係が”死”によって崩れ去っていくさまが、哀しく忘れられないんでしょう。とまれ、ジョアンナ・シムカスとレティシアの名前は、ぼくら映画ファンの胸にこれからも深く、甘酸っぱく、残り続けるはずです。 8点(2003-06-03 10:38:26) |
597. ボイジャー
サム・シェパ-ド扮する男の”孤高”なダンディズム(?)が、ほとんど滑稽すれすれで笑える。と思ったら、ジュリ-・デルピ-の登場で、一気にメロドラマの世界へ…。決して悪くはない作品だけど、この禁断の父娘の「愛」が、ちっとも悲劇として迫らない、一種の「観光地ロケ満載2時間ドラマ」風と言えなくもない。ちょっと残念です。 6点(2003-06-03 10:21:03) |
598. BROTHER
このところ、妙に批評家受けというか、映画賞狙いというか、つまりは世間的評価に「応えよう」とする意識が見え見えの作品が多くて、それはそれで見ごたえのあるものではあるんだけど、やっぱり北野武には「好きな映画を好きなように撮る」ことの方が良く似合う。…と思っているファンにとって、これは久々に「らしい」快作だった。たぶん、海外との合作という周囲の期待に対して、逆にデタラメやっちゃう”やんちゃ”ぶりが、良い方に出たんじゃあるまいかと。つまり、『ソナチネ』のテキトーなリメイクみた展開に、派手なドンパチと日本的な精神性(ヤクザの様式やストイシズムってやつね)を盛り込めば、ガイジンは喜んでくれるだろうって。このいい加減さとデタラメぶりこそ、キタノ映画の真骨頂! 小生、大好きです。 9点(2003-06-02 13:42:52)(良:1票) |
599. ピースメーカー
映画の後半、マンハッタンのど真ん中で爆破させるため核弾頭を持った男を、警察の狙撃手がビルの屋上から狙う。が、男の手前で、子どもを肩車した男がさえぎって発砲できない。その旨を無線で聞いたジョージ・クルーニーとニコール・キッドマンは、同じように「早く撃て!」と叫ぶ。再び、ライフルの望遠スコープを覗く狙撃手。大写しになる子どもの笑顔…。本来が正義の側に入るはずのヒーローとヒロインが、一人の子どもの死を顧みることなく核弾頭の爆発を防ぐことのほうを選択する。つまり、彼らはここで「アメリカ」という”国家”の立場にあることを図らずもも暴露している。ここまで、シビアに「ヒーロー」の実態をさらけ出した(しかも「娯楽アクション大作」で!)アメリカ映画なんて、なかったのでは。結果、カタルシスのないほろ苦い後味が残ることとなったけれど、観客をバカにしている(というか、バカになるようしむけている?)映画ばかりが横行する昨今、こうした志の高い映画は、とても貴重だと思う。ぜひ見てください。 8点(2003-06-02 13:24:19)(良:1票) |
600. ピンポン
意外にも賛否両論なんで、ビックリ! 全体的に、この映画は受け入れられ、評価されているんだろう…と、勝手に思い込んでいたので。映画見てから原作漫画を読んで、見事にハマリました。その後、映画のDVDを買って、やっぱり何度も見直してしまいました。つまり、どっちがというんじゃなく、どっちも好きなんです、ぼくは。何故? コミックも、映画も、「性」を介在させない、見事に少年期そのものの「清潔さ」を見事に、鮮やかに表出し得ていたから。高校生とはいっても、ペコもスマイルも、出会った頃の小学生時代からずっと彼らの”内なる時間”はとまったままだった。それがあらためて動き出すまでの「試練・葛藤」こそが、コミックの、そして映画のドラマの骨子だったのではないでしょうか。どちらも、そういった部分を、これ以上なくピュアに、古臭い”汗と泥と涙”の熱血スポーツもののパターンから程遠い「新しさ」で描いたものとして、ぼくは高く高く評価する者です。素ッ晴らしいじゃん、これ! 9点(2003-06-02 13:01:46) |