581. グラン・プリ(1966)
カーレースが延々続くと飽きてきそうですが、カメラワークの工夫もあってそうは感じませんでした。大画面で見たら、かなりの迫力でしょうね。レーサー視線の映像は酔いそうですが……。画面分割は、成功したかどうか疑問。「喜」と「悲」を切り替えるシーンがいくつかありましたが、これは効果的でした。 物語としては、レーサーというのはレース以外に女のことしか考えていないのかと思いそうです(笑)。死と隣り合わせのレースに賭ける生き様を描いていてそれなりに見られました。おかげで長時間も気になりませんでした。女優さんではエヴァ・マリー・セイントよりもジェシカ・ウォルターの美しさが印象的。三船敏郎の口元を見る限り、ちゃんと英語をしゃべっていたようですが、英語の声は明らかに本人とは違っていましたね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-11-04 11:13:57)(良:1票) |
582. 時代屋の女房
《ネタバレ》 大人のためのファンタジーといった風情。主要人物はちゃんと生活しているのですが、どこか浮世離れしています。ただし色恋となると話は別で、みんな生き生きしてきちゃいます。なーんか困った人たちだなぁ(笑) 例外が2人いて、平田満の鈴木さん。ほかの人たちはみんな自営業なのに、この人だけ教師という月給取りであることでも、違いはわかります。もう1人はもちろん真弓さん。こちらは浮世から離れすぎて、ほかの人たちもついて行けない様子。まったく正体不明でこの世の人とも思われない。だから二役をさせたのは間違いでしょう。印象的だったのは、今井さんが駆け落ち相手に会おうと出かけるエピソード。結果はさもありなんということなんですけど、こういうところは妙に現実的。やっぱり、色恋には一生懸命なようです。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-10-30 19:57:46) |
583. フロント・ページ(1974)
《ネタバレ》 最初の30分くらいは本当につまらなくて、見るのをやめようかと思いましたが、なんとか最後まで鑑賞。後半はそう苦痛でもありませんでした。コメディとしてはまあまあ笑える。しかし結局、何がやりたかったのか。選挙にからんでの司法や警察の態度を批判したいのか、誇張した記事を書きまくる新聞を風刺したいのか。どちらにしろそのあたりが弱い。それとほかの映画でもそうですが、ウォルター・マッソーという人はあまりにも悪人面で、面白そうなことをやっていても笑えない。笑うより反発心の方が湧いてきて、たとえば最後のオチも犯罪行為としか思えず、後味が悪い。全体の印象として、コメディとしてまじめすぎるんです。もっと突き抜けたものがほしいところ。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2012-10-28 09:56:22) |
584. 豚と軍艦
《ネタバレ》 序盤はヤクザものかと思いましたが、良質の青春映画でした。欲に振り回される大人、その大人に振り回される若い2人。先の見えない生活に爆発して悲惨な最期を迎える近太は哀しいですが、春子に希望を託すラストが見ていてさわやかでした。コメディとしてはまあまあ笑えました。加藤武の暴走ぶりがいいし、死にきれなかった兄貴が生命保険の看板に掴まるところは特におかしい。しかし本作で一番光っていたのは吉村実子。決して美人というタイプではありませんが、顔つき、特に視線が力強く印象に残ります。 セリフがやや聞き取りづらく、人間関係や話が見えにくいところがあって残念。そのせいかどうか、基地の問題(「アメリカにたかる」という構図)を扱っているようですが、あまり感じられませんでした。しかし『俺たちに明日はない』のような、“破滅型青春ドラマ”として見る価値はありました。けっこう豪華なキャストも見ものです。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-10-27 18:05:52) |
585. 智恵子抄(1967)
《ネタバレ》 言うまでもなく高村光太郎の智恵子抄ですが、そのままではドラマ化しにくいのか、佐藤春夫の小説版を原作にしています。 2人の出会いから智恵子の死まで、ていねいに撮られています。序盤のややぎこちない関係から結婚まで、見ていてほほ笑ましいのですが、そんな中にも後半への伏線がちらほら……。こうした構成はうまい。それにしても、高村光太郎は芸術家として激情型だと勝手に思っていましたが、本作ではそれほどでもない。厳しさは感じさせますが、智恵子の前だとなんだかフニャフニャになるのがおかしい。 後半智恵子がおかしくなってからは、もう岩下志麻の独擅場。ここですごいのは、智恵子が最初は正気な時もあって、自分が狂っていくことを自覚しているということ。これは怖い。このあたりから最終的におかしくなるまで、目が離せません。本作での智恵子さんはたおやかではかなげなイメージがあるので、暴れたりする時には哀れさが増す、ような気がしました。 全体としていいと思いますが、時間の関係かエピソードの羅列に流れたのが残念でした。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-10-22 20:14:05) |
586. 赤い陣羽織
《ネタバレ》 製作はなんと歌舞伎座。原作はもちろん木下順二の戯曲ですが、歌舞伎座でもよく上演されるようで、十七代目勘三郎は歌舞伎座での初演者らしい。映画化されたいきさつはよくわかりませんが、好評だったのでしょう。 コメディというか「滑稽劇」ですが、今見ると苦しいところもあります。とはいえ、一応楽しく見られました。権力者への風刺劇として、山本薩夫の監督起用は適任でしょう。ドラマの盛り上げ方もうまい。 しかし本作の見どころは、なんといっても香川京子と有馬稲子の両女優。香川京子は「できる奥方」を凛とした美しさで演じています。それに対して有馬稲子の方は、誰からも言い寄られるあだっぽい女房役で、これまた美しい。この2人の亭主が、そろって気が弱くあたふたしてばかりなのも、おかしいところ。戦後「女と靴下は強くなった」と言われたそうですが、この作品などそれを象徴しているのかもしれません。出演者はみな楽しそうで、特に多々良純あたりはかなり乗ってました。見ている方も楽しくなります。 [地上波(邦画)] 7点(2012-10-21 11:25:17) |
587. 古都(1963)
《ネタバレ》 これはまず、なにはさておいても岩下志麻の二役がすばらしい。もちろんメイクもあるでしょうが、育ちの違いによってかもし出される雰囲気まで伺えます。たおやかだけど弱さもある千重子。芯の強さをもつ苗子。2人が並んでいると本当に別人のようで、とても合成とは思えません。 物語としては、「育ちの違いによってできた、越えようにも越えられない大きな壁」を扱っています。その作の舞台を京都に選んだというのは、さすが川端康成。主人公2人以外の人も、このテーマを強調しています。長門裕之演ずる秀男は、クレーに触発されたデザインの帯を織ってしまうほど、現代的な若者です(デザインした父親との対比も生きていますね)。しかしそんな秀男でも、その壁は越えられなくて、結婚相手に苗子を選ばざるをえません。千重子の両親も、そんな壁はないような発言をしていますが、それだけに現実の厳しさが思い知らされます。これで悲恋ものならありきたりですが、姉妹の話にしたところが新鮮で、成功してると思います。 映像面では、なんといってもにわか雨のあと日が差してくる、あの場面が最高です。2人の間に希望の光が差すようで、とても美しい。全体的にはセットが多いようで、もう少し当時の京都の街並みを映してほしかったところです。市電も一瞬しか登場しなくて残念。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-10-15 20:32:12)(良:1票) |
588. 妖星ゴラス
《ネタバレ》 これも昔テレビで見て以来。覚えていたのは「南極に基地を作って地球を動かす」ということと、怪獣マグマが出てくることくらい。改めて見たら、かなりまじめに作ってあります。地球を動かすのに660億メガトン必要だという計算は、正確なのだそうな。それを基に大法螺をでっち上げるのは愉快です。この映画はそうした地に足のついたところがあるのがいい。最初の隼号の犠牲もありそうですし、そのあとの予算をめぐってのやりとりなど、全然SFではありませんが、「現実らしさ」にひと役買っています。それに乗じて(?)細かい部分がけっこういい加減だったりするのには、笑ってしまいますが。人間ドラマが足りないと感じたのか記憶喪失が扱われていますが、全体から浮いた感じがします。水野久美の彼氏も誰だかよくわからないし。もしかしたらマグマ登場のためカットされた部分があって、そこでなにがしかのドラマが展開していたのかもしれませんが、そこまではわかりません。なんにせよ、もう少し時間があれば補足できたと思いますが、当時は二本立て興行が基本でしたから、限界だったのでしょう。こういうところでは常識を越えられなかったか。 クライマックスには東京が大津波に襲われるのですが、3.11以降にこれを見ると、いずれこんなことが現実に起こるかもしれないと不安になります。しかし危機が去ったあとは、みんな拍子抜けするほど気楽で、街の再建に意欲を燃やしています。現在の日本にもこうした意気があればいいと思いますが。そういう点では、現在こそ見る価値があるかもしれません。ただ、本作の基本は「科学の力で自然災害を回避する(人間の知恵と科学の勝利)」ということですから、それを考えると複雑ですが……。ちなみにゴラスは彗星でも隕石でもなく、黒色矮星というものだそうです。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-10-14 21:26:25) |
589. 姉妹(1955)
《ネタバレ》 これは名作。基本は姉と妹を中心に家族を描いた作で、2人姉妹なので簡略版『若草物語』といった感じ。短いエピソードで構成されているのも共通していますし、はっちゃんの家へ掃除に行くあたりも、『若草物語』を連想させます。序盤は笑える話が多く引き込まれて見ていると、徐々に重いテーマが顔をのぞかせるあたり、うまい構成です。社会問題についていろいろ取り上げていますが、現実的なのは問題提起をしても大して解決されないまま終わること。多くのエピソードが連なっているということもありますが、世の中の問題はそんな簡単に解決できないということを素直に現しています。そんな社会の“壁”に対し、やはり素直な想いで立ち向かってゆく中原ひとみがものすごくさわやか。彼女のまっすぐな気持ちが本作最大の魅力でしょう。 この作品、原作も絶版ですし映画のDVDも廃盤のようです。作中「めくら」や「かたわ」といった言葉が出てくるのが原因かもしれませんが、時代がどうのこうのというよりは、そうした言葉を使わないと表現できないこともあるのです。本作ではまさにそうした使われ方をしており、単純に「差別語が出てくるから」という理由で入手困難であるとすれば、非常に残念です。これはぜひ、多くの人に見てもらいたい作品ですので。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-10-13 20:14:52) |
590. 三人の名付親
《ネタバレ》 えらく宗教色の強い西部劇ですねぇ。悪人が出てこない西部劇。冒頭での三人組のやりとりから、強盗はするが必ずしも悪い人ではないという描き方をしています。やはり「人は生まれながらにして罪を背負っている」という、キリスト教的な考え方が根底にあるのでしょうか。母親を助け赤ん坊を守ることが贖罪となって、三人が救われるという構図のようです。水を求めてさまよううちに死ぬというのも、「神の国に行く」と考えれば、救いになるのでしょう。生き残ったボブは、さすがに法律的な罰からは免れ得なかったようですが。そうした宗教的な意味を抜きにしても、のどの渇きという極限状態に置かれてもなお、人間として大切なものを守り通すという物語はすばらしいと思います。映像では、砂嵐の場面が圧巻。演じる方も撮る方も大変だったでしょうね。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-10-12 21:31:37) |
591. 80日間世界一周
《ネタバレ》 むかーしNHK総合テレビで見たことがあります。なぜ放送されたのか、今もって不明です。改めて見直すと、原作がフランスで映画はアメリカ製作なのに、イギリス的雰囲気がよく出ていたのがマル。ユーモアも十分ありますが、時としてドタバタになるのがアメリカ風か。要所要所で「ルール・ブリタニア」を流すのも、気が利いています。 序盤は観光映画かと思うような展開で、正直退屈。スペインでのフラメンコと闘牛が長すぎます。しかしその後はテンポよく進んで、飽きずに見られました。アメリカ以降また少し粗くなってきますが、最後ロンドンに帰ってきてからの話があるからでしょうか。悪いとは思いませんでした。 マイナスとしては、やはり最後に日付変更線の問題がわかること。几帳面なフォグなら、日付や時間をちゃんとチェックしていそうです。それとも当時のアメリカには新聞がなかったのでしょうか。あと、人物の心理描写まで手が回っていないので、フォグと姫とのロマンスがとってつけたような感じになってしまいました。全体としては、フォグとパスパルトゥーとの関係を越えた友情物語としての印象が強いです。ほんと、フォグは召使いのためにいろいろとやってますねぇ。不思議なくらいです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-10-11 20:00:50) |
592. 戦争と平和(1965-1967)
《ネタバレ》 原作は読みましたが、ほとんど忘れていて、途中から展開が全然読めません。とりあえず覚えているあたり(第2部)までは普通に見られました。が、後半は単調でどうにも飽きてしまいました。演出面でもなかなか興味深いところがあったのですが、後半になるとワンパターンに思えてきます。飛行機での撮影やカメラを延々横に動かしていく手法は、ちょっとしつこい。また、特に第4部では展開が早く、たとえばなぜナポレオン軍が撤退したのか、あれではよくわからないでしょう。原作が有名なので端折ったのかもしれませんが、ロシア人ならともかく、なじみのない人には不親切に感じられます。 大人数のエキストラを使っての戦闘シーンは、迫力があって見ごたえがありました。しかし先にも書いたとおり、同じことの繰り返しで飽きてきます。戦争の悲惨さはよく描けていたと思います。エキストラといえば、舞踏会など社交界の場面もすばらしかったです。原作では、物語の合間に作者の論考が度々はさまれています。そうしたところも映画に取り入れていましたが、ちょっと食い足りない気もしました。 キャストでは、なんといってもピエール役のセルゲイ・ボンダルチュク。イメージにぴったりです。ナターシャ役のリュドミラ・サベーリエワも素敵。それ以外の出演者も、原作の人間像を大切にした配役だったと思います。 力作ですし、立派な映画だと思いますが、それだけに後半失速したのが残念。戦闘場面など見せる要素はいいのですが、思想的な点ではやはり原作にはかなわないでしょう。ということで、少々辛めの点数をつけておきます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2012-10-08 21:44:23) |
593. 東京キッド
《ネタバレ》 けっこう面白い。喜劇というよりはコントの要素が強いようです。ただ、邪魔になった子供をなんとか置いてきぼりにしようとするのはあまり笑えない。子供をバーに連れて行って金を稼ぐというのも、時代を感じさせます。笑いの点では、エノケンと堺駿二がとぼけた味を出していました。 で、美空ひばりですが、「子供の頃から大人の歌い方」とよく言われますが、本当だということがわかります。「おじちゃん、おばちゃん」と子供っぽいのに、歌うと大人そのものというアンバランスが変。ある意味、これが一番おかしいかも。とはいえ、うますぎて笑えないわけですが。クレジットされていませんが、「悲しき口笛」も聞けます。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-10-06 21:16:48) |
594. 招かれざる客(1967)
《ネタバレ》 一応人種差別をテーマにした映画のようですが、実際に見るとそれが意図的に隠されている。出会ってわずかな期間で結婚を決めるとか、その日の夜に男が旅立つのでそれまでに決めないといけないとか、「父親が娘を嫁にやりたくない」シチュエーションだらけ。これなら相手が白人でも逡巡するでしょう。娘が無分別にも結婚を希望しているのも、計算ずみ。そうやって父親の反応を一般化しておいて、黒人メイドの反応などで人種問題をチクチクと突いてくる。これは大上段に振りかぶって取り上げられるよりも、はるかに好感が持てます。なによりも、「差別する人間=悪」というステロタイプの結論に陥らないのがよろしい(途中で例外はありましたが)。最後に父親が認める際も、自分の若かりし頃に思いをはせるという粋な計らい。親同士の話し合い、父と息子の対話など、見ごたえがありました。主題歌も魅力的。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-10-02 20:13:41) |
595. 天地明察
《ネタバレ》 一応、面白かった。特に前半は笹野・岸部ご両人の存在感が大きい。後半は宮崎あおいの奥方が要所を締めていました。笑いをとるところも心得ています。問題は、公家を悪役として強調しすぎていて、話が味方と敵との争いという話に単純化されてしまったこと。山崎闇斎の最期にしても、そうした流れの中に取り込まれてしまって、史実と異なるのが必ずしも悪いとは思いませんが、ああいう扱いはどうでしょう。また、一年・三年・数十年と年を経たというのが感じられず、結果として「積年の宿願」であるはずがあまり盛り上がりも感じられず、それが相まって薄っぺらい印象になったのは残念でした。題材としてはもっと面白くなりそうなのですが。その一方で、「昼間の星」とか、最後のクレジットで場違いな歌を使わないとか、いいところもありました。なにより、長さを感じず鑑賞することができました。 [映画館(邦画)] 7点(2012-09-23 11:34:31) |
596. シコふんじゃった。
スポーツものとしては……まあ普通でしょう。あまり熱血していないところが、個人的には好みでした。一応コメディのようで、笑いをとろうとしていることはわかりますが、ほとんど笑えない。でもそれなりに楽しめました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-09-18 20:39:17) |
597. 遥かなる山の呼び声
ストーリーとしては割とあるパターンですが、人物描写・心理描写のきめ細かさで見ごたえのある作品になっていました。登場する人はみな、人としてあるべき姿(ありたい姿)を体現した、人としての理想像ですね。人と人との心のふれあいを描いた人情劇として、高レベルでした。耕作の兄や民子の従兄弟など、ちょっとだけ登場する脇役にも味があります。こうなると『故郷』もぜひ見たいですね。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2012-09-17 08:06:58) |
598. 鉄道員(ぽっぽや)(1999)
《ネタバレ》 やっぱりちょっと長いなぁという感じ。静かな雰囲気を出そうとしたのかもしれませんが、もう少しリズムよく運んでほしかった。だいたいにおいて、私は本作のような「不幸の叩き売り」話は嫌いなのですが、これはキャストで何とか見られるものになっていました。あざといお涙ちょうだいはこちらが白けるだけです。 それにしても、あの娘はいうならば死神だったのか。これだけが発見でした。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2012-09-15 18:17:35) |
599. 二等兵物語
《ネタバレ》 こういう名画が隠れていたとは、まだまだ映画の世界は深いです。前半は隊長の愛人がらみや悦子さんの伯母さんなど、かなり笑わせてくれます。後半は柳田親子を巡る話を中心に、軍隊の無茶ぶりを描写。このあたりはほかの戦争映画にもありますが、戦争が終わると知って物資を確保しようとする上等兵たちに、主人公凡作が思いっきり逆襲するのが見もの。こちらも胸がスカッとして、持って行き方がうまいです。ここですばらしいのは、凡作は「集団における信頼の大切さ」を説くのですが、これが軍隊批判にとどまっていないということ。学校におけるいじめが大きな問題として取り上げられている昨今、この信頼の重要性は胸に響きます。こういう意味で、今の時代にも通じる作品であると思います。ただ、最後の「平和が続く機械」というのは、ちょっと感心しません。平和というのはモノではなく、人間の心で維持していくものだと思いますから。 とはいえ、全体としてはすばらしい作だと思います。あまり知られていないようですし、ソフトも廃盤のようですが、もっと多くの人に見てもらいたい映画です。シリーズの2作目以降も見てみたいですね。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-09-10 21:18:12) |
600. ひばりの森の石松
《ネタバレ》 俳優・美空ひばりといえば、晩年に2時間ドラマで刑事を演じていたことぐらいしか記憶にありません。ということで、「森の石松? 大丈夫か?」と思いつつ見たのですが、大丈夫どころかみごとにはまっていました。調子がよくておっちょこちょい、おかげでちょっとイライラさせられるところもありますが、それもまた魅力でしょう。前半の仇討ち騒動より、後半でのお姫様とのふれあいが、ホロリとさせていい感じ。竜宮城での若侍はりりしくてあくまでかっこよく、茶摘み娘のお君ちゃんとあわせて、それぞれ魅力的に演じ分けているのはお見事。とっても楽しい映画でした。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-09-06 21:09:02) |