581. シックス・センス
《ネタバレ》 すげえ・・・666だ・・・マジかよorz 五感で感じられない幽霊。 霊を感じるのは「第六感」なのか。 主人公は子供を更生させる事を仕事にする男。 どんな不安や悩みも一身に受け止め、付きっきりで相談に乗ってくれる。 だが仕事熱心なあまり、妻をあまり構ってられない悩みも抱えている。 ある事件を境にそんな妻の夫への態度は冷たくなってしまう。しかしそれは・・・おっと。 そんな主人公はある日、不思議な少年に出会う。 彼は「霊が見える」という。 霊の見えない他の子供からはイジメられ、霊の見えない母親は、そんな息子に不安を抱く。 現実にいる体の病気が原因でイジメられたり、家族から冷たくされる子供もいるが、霊が見えるというだけで体は健康だ。 それだけに母親は辛い思いをしていた。 そんな時に主人公とその子は出会った。 最初疑っていた主人公も、親身に聴く内に徐々に霊の存在を意識はじめる・・・。 事件も無事に解決し、母親とも打ち解ける事ができた子供。 だが、主人公に訪れる「真実」とは・・・? 度肝を抜くラストが衝撃的すぎる。 だってあのブルース・ウィリスがだぜ? ダイ・ハードのマクレーン刑事がだぜ? まさかあんな事になるなんて・・・。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-14 15:46:17) |
582. 3時10分、決断のとき
《ネタバレ》 ジェームズ・マンゴールドによる「ウォーク・ザ・ライン」「17歳のカルテ」「アイデンティティー」に並ぶ傑作。 今後もマンゴールドの最高傑作の1つとして語られる作品だと思う。 「決断の3時10分」のリメイク。 前作を遥かに上回るメリハリとテンポの良さ、充実したガンファイト。 静かな前作も良かったけど、本作は娯楽にもドラマにも力が入った充実振り。 冒頭のシーンや仲間が集う場面もよりドラマティックとなり、鉱山での銃撃戦はかなりの見応え。 主人公が孤独な戦いに追い込まれていくシーンも説得力が増した。 ラッセル・クロウの二面性と葛藤を強く感じられる演技、 クリスチャン・ベールの素晴らしいチンピラ振り。 この二人が立場を超えた絆を結ぶやりとりは面白い。 何より二人共良い髭面! ベン・フォスターの冷酷さ、 ピーター・フォンダの渋みのある演技も見事。 ただラストは意見が分かれると思う。 前作とあまりに違う顛末だが、主人公が最後まで孤独と向き合い、自分の正義を貫いたのは良かったと思う。 そんな映画。 世間的にも世界的にもリメイク版の評価の方が上のようだ。俺はどちらも好きだぜ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-14 07:59:58) |
583. ベンジャミン・バトン/数奇な人生
え?これフィンチャーなの?ってくらい丸くなったねフィンチャー。 F・スコット・フィッツジェラルドの短編の映画化で1991年から転がり続けてきた企画をデヴィッド・フィンチャーが手掛けた作品。 「ゾディアック」あたりからちょっと丸みが出てきたかなーなんて思ってたけど、「セブン」の頃を思うと鋭さは無くなったけど落ち着きというか、作品に余裕が出て来たと思う。 以前は短時間にありったけの情報をブッ込む感じだったけど、今は少し長くして情報を飲み込みやすくしたというか。 この映画は彼の作品の中でもっとも優しい部類には入るだろうね。 生まれた瞬間から80歳の老体。見た目こそ老いた姿だが、肉体年齢は赤ん坊そのもの。 年月が経つにつれて彼は若返り、普通の人間が歳を重ねるように生をまっとうしていく。 ブラッド・ピッドのメイクは、本当に老人から若者の姿にうつり変わっていくようだ。 見た目は「幼いが故に言葉をまだ覚えていない子供」、実際は・・・そんな主人公の最期は切ない。 ただ、元々が短編だからこの映画はちょっと長すぎてダレを感じてしまった。もう少し短くて密度があればもっと面白かったと思う。 [DVD(字幕)] 8点(2014-09-07 21:40:44) |
584. ALWAYS 三丁目の夕日
《ネタバレ》 古沢良太の佐藤祐市と組んだ「キサラギ」は両手で中指凸立てるほどうんざりするような映画だったが、山崎貴と組んだこの映画は凄く良い映画だと思う。 古沢良太、俺が悪かった。「キサラギ」散々disってゴメンよ。 この映画は西岸良平の「三丁目の夕日」を原作とするとてもノスタルジックな作品だ。本当に映画を見たなあって気分になったよ。 CGで再現されたとは思えない、実写のような雰囲気を持った下町(続編でゴジラが出た時は「この監督は馬鹿なのか」と良い意味で思ったけど) それもその筈、三丁目の住宅はセットで、各地から「当時の匂いを残す」物が掻き集められた家だ。 子供の頃から「こち亀」とか「オトナ帝国の逆襲」といったいわゆる“古き良き”と色褪せない懐かしさの共存したような作品を見てから自分には、物珍しさをそう感じなかった。 でも、茶川と淳之介が時間をかけて家族の絆を深めていくシーンはベタだけど良いなと思った。 高度経済成長といっても人々はまだ戦争の傷をかかえて生きているし、その悲劇を繰り返さないために平和な時代を一生懸命に生きていた。 金は無くても、心は豊か。 確かに過去を美化しすぎているのかも知れないけど、この映画がCGという“幻想”を使うように、今を生きる人間が過去への“憧れ”をこの映画に投影しているのでは無いだろうか。 光ばかりで闇の部分は少ない。 だが、現に「戦争なんか二度とゴメンだ」というメッセージだけは本当だと思う。闇を語るのはそれだけでいい、もううんざりだ・・・そういう映画が一つくらいあっても良いんじゃないかな。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-07 21:35:22)(良:1票) |
585. キサラギ
《ネタバレ》 この映画を再見しようと思ったキッカケは何だっただろうか。 脚本の古橋良太なら「三丁目の夕日」で感動し、 監督の佐藤祐市ならカーリング映画「シムソンズ」の面白さに心打たれた事がキッカケだった。 それに「シムソンズ」でも佐藤祐市と組んだカメラマン川村明弘の仕事振りに心を揺さぶられたからなのです。 「キサラギ」の窮屈さが苦手という人にも開放的な「シムソンズ」をオススメしたいし、心の中をさらけ出しつくす「キサラギ」か人間の善良さを信じ抜く「シムソンズ」か。好みが分れるのも無理はないだろう。 いずれも“嘘”をひっぺがして“真実”をさらけあう面白さ。 俺はこの映画に対して散々罵ってきた。あなた方は「一貫性がない」とか「手のひら返し」とか、散々に私を罵る事でしょう。 それを覚悟で、俺はこの映画を見直し素直に面白いと思えた感動のもと、この映画のレビューを再び書いていきたいと思うのです。 エレベーターでふと現れた独りの男。何もない屋上、回る鉄の音、室内の異様な“暗さ”。 その暗い理由も、クライマックスで“真実を語る”ように煌く星々を際立たせるための漆黒だった。 匿名掲示板という偽りの自分、直接顔を合わせる時も“仮面”を被ったまま。一人、また一人集まるアイドル(偶像)に魂を奪われた人々。 クールを装う男、流される男、話に置いてきぼりをくらう男、明るすぎる男、何かを押し殺しているような男たち。 織田裕二「いいじゃないですか~」 「踊る大捜査線」では「真下正義」として活躍したユースケ・サンタマリアの鉄仮面。 パーティー気分だった主催者に対して、他の人間は真面目に追悼。でも何処か冷めた様子。 その理由も伏線。泣く男と冷めた男たちの違い。初見時の俺は、その辺の巧さを見逃し、完全に忘却していたらしい。 この映画は脚本の映画だ。確かに再見して映画的演出が冴え渡っているシーンが多いのがよく解ったが、やはりクライマックスの“あの瞬間”を盛り上げるために脚本が頑張っているのです、セリフの一つ一つで頑張っている映画です。 その一つ一つをより鋭く効かせる映画的演出の数々。 カチューシャという遺品、コレクションという火種、出入りは自由だが“ある瞬間”には閉ざされ密室を作り上げる。窓の外の雨、一触即発の緊張。 ド突き合い、ナイフ、右手に輝る切っ先、指紋でベッタベタになる遺品たち。 それに中々ハッキリ写されないアイドルの顔。 「シムソンズ」もまた主人公が憧れるアイドル的存在に影響を受ける作品だった。 あの映画は最初から顔や行動をハッキリと映していたが、この映画は“あの瞬間まで”徹底的に顔を映さない。 腹痛のせいで事情を中々掴めず除け者にされる塚地。この映画の“デブ”は最初憎悪の対象として描かれる。 あの頃の俺「貴方ちょっと黙ってて!」 初見時の俺は、その空気に犯されていたらしい。何故あれほど塚地に殺意がわいていたのか何となく理解できた。 だって農家なのに腐ったりんごパイ食って腹下すの?なんて思ったりしてさ。 本当にウザかったのは真下正義の方だったのにね。 あと警察仕事しろ。 今は後半で“化けの皮を引っぺがして”大活躍する塚地の演技力を賞賛したい気分だ。 「嘘だっー!!!!」と思わず叫び「何でもいいや」と諦めながら。 ほらおまえらヌード(幼女)だぞ喜べ。 回想を語るアニメーションは「シムソンズ」の頃から登場。 散乱する食い物、手紙、ストーカー、モヒカン、クッキー、エロムードになる照明、ダンボール、キャンドル、椅子を掴んでぐるぐる。 ここまでセリフばかりだなあと思っていると、あのクライマックスの素晴らしさで一気にもっていかれる。 黄色いクッションが“スイッチ”になり、満点の“星空”が語る真実!!彼等は嘘をついていなかった。 俺は何故このシーンを見逃していた!?おおおあの頃の俺のクソ馬鹿野郎があっ!! そんな俺のように初見時と再見時で印象がガラリと変わったという体験がある貴方。 ラストの如月ミキと一緒に踊って嫌な気分を発散してしまいましょう。 [DVD(邦画)] 9点(2014-09-07 19:55:57) |
586. GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 インターナショナル・ヴァージョン
《ネタバレ》 「攻殻機動隊」のレビューは既にしてあるので、今回は「インターナショナル・ヴァージョン」の感想。 日本版キャストで演る前に先にアメリカ・フランスで上映したやつを凱旋公開したver.だそうだ。 冒頭に漢字の“漫画”とアルファベットの“MANGA”をクロスして組み合わせたようなマークが出てくる。 オープニングの説明文も「IN THE NEAR FUTURE-...」とすべて英語で書かれている。 「インターナショナル・ヴァージョン」のキャストは日本版よりも若い印象を受ける(バトーが青年みたいな声になっとります)。 いや逆に言ってしまえば、日本のキャスト陣が良い意味でドスの効いたメンツで構成されているという事なのかも。 ともかく、どっちの素子さんも声に艶があってカッコイイですハイ。 でも日本語より英語の方が雰囲気があると思うのは気のせいだろうか? 絵のタッチも洋画みたいな感じですし。 たまに「fu●k off」とかガヤで聞こえんのは気のせいですねハイ(商店街での銃撃戦とか)。 人形遣いは国際的にも男の声なのね(「2.0」でも英語版はトム・ワイナー(Tom Wyner)です)。 「The Net is Vast and Infinite(まったくネットは広大だわ).」 [DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2014-09-04 06:37:09) |
587. GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊2.0
《ネタバレ》 「GHOST IN THE SHELL」そのものに対しては今更言う事は無い。 08年にCGの演出や一部セリフの入れ替えがされた「2.0」。 音がよりリアルになってコッチの方が好きという人もいるだろうね。音響は最高レベル。 ただ、個人的にCGを使う必要性はまったく無いと思うんだけど。 あのオーパーツの塊みたいな素子やヘリの作画がCGに置き換えられてしまったのはちょっと残念。 緊迫感も旧ver.の方があったかな。 特に戦車戦はそう思った。素子が腕に捕まってゴーグルが割れるシーン。 旧ver.は装甲を破壊されるようなグシャッて感じだったが、「2.0」はガラスをパリンッと割られるような感じでちょっと軽いと思った。バトーが素子の助けに間に合うシーンは重さが増したように感じたけど。 ヘリのセリフが違うとその後の印象も結構違うのね。 一番ビックリしたのは、前作じゃ「ナウシカ」のクロトワ(家弓家正)だった人形使いが「ナウシカ」のクシャナ殿下(榊原良子)になったという事だ(押井的には「パトレイバー」の忍さんですよねー) [DVD(字幕)] 9点(2014-09-04 04:06:37) |
588. ナイトメアー・ビフォア・クリスマス
《ネタバレ》 子供の頃はちょっと怖かった(サリーがバラバラになりすぎて)けど、見直してみるとこんな素晴らしい映画だったのか~。 時期的には冬(クリスマス)や秋(ハロウィン)に見る心温まる話だけど、ヘンリー・セリック&ティム・バートンの不思議な世界観は夏のほてりきった体もひんやり癒してくれる。怖くて、楽しいミュージカル。 滑らかなストップ・モーションは「キングコング」のウィリス・オブライエンや「アルゴ探検隊の大冒険」のレイ・ハリーハウゼンの流れから進化し続けた技術を感じさせる。 バートンを笑う事は今までの歴史を笑うことに等しい。いや、そのユーモラスで素晴らしい映像世界は笑いながら拍手喝采を送るしかないっ!! 物語は「ハロウィンで人々を脅かす事」だけが生きがいであるハロウィン・タウンの住人たちの狂騒から始まる。 ハロウィン・タウンの王として君臨(といってもみんなが一番偉い人と勝手に祭り上げているだけなのだけれど)するジャック。 彼だけが“ハロウィン”だけにとらわれる事の虚しさを知り、何か変化を起こしたい、どうにかしたいと悩んでいた。 ふとした事で知る“クリスマス”という楽しさ、暖かさ。 ジャックはハロウィンタウンの人々を変えようとするが、誤解が誤解を生みどんどんおかしな方向へと話が進んでいく。 その様子が本当におかしいのなんのって。 ここの住人どんだけ発想物騒なんだよ。誰が生首を喜んで受け取るんだオイ。 あの赤い服は返り血じゃないってば(笑) サンディ・クローズ(返り血サンタ)、サタン・クルス。 ジャックのアジで大爆笑。バートンのブラックユーモアがノリノリすぎて最高ですハイ。 しかし、狂騒の果てにジャックは自らが招いた過ちに絶望するが、失ったもののために彼は自分の使命を果たそうと奔走。 ウギー・ブギーとのやり取りはハラハラ、つうかサリーが身を挺しすぎて笑うに笑えなくなってきた。どんだけ四肢吹っ飛ぶのアンタ。死屍じゃなくて四肢累々。休んでいいよサリー。バラバラ系女子(ry ラストの雪世界で二人が結ばれるシーンがとにかく美しい。 ジャックが孤独に昇った丘は、まるで二人の永遠の愛を祝福するように月明かりと雪で白く輝いているのだから。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-03 22:03:29)(笑:1票) (良:1票) |
589. 恋人までの距離(ディスタンス)
《ネタバレ》 「ビフォア・サンライズ」。 とても素敵な映画だ。これほど平和で、これほど人の心を揺さぶる恋愛映画は。 ゲーセンで不良がナンパしてきたり、ギター持った男が奇声をあげてきたり(「スクール・オブ・ロック」)とか、そういうハラハラする“イベント”はまったくないと言っていい。本当に一時の静かな出会いと別れなのさ。 音楽も冒頭と終盤までほとんど無い。 列車の中でふと出会った男女二人。最初は一人で暇な時間を潰すための会話だったが、やがて互いの心の傷を見せ合って溶け合う中となっていく。 列車にはじまり次々と移動して移動して移動して、喋って喋って喋りまくる。結んだ髪もあっと言う間にほどけるくらいに。 なのに不思議と飽きることなく、延々と聴いていたいような穏やかな時間が流れる。街からは出ないけど、移動しまくる様子はこの映画も立派なロードムービーなのだろう。 手相占いのばあさんとか、二人に絡んでくる人々の会話も面白い。 ゲーセンで体ごと動かしてゲームを愉しむ様子。確かに、解ってても体ごと動いちゃうよねーあーいうのって。 人気の無い公園での交わり。 夜が明け、昇るサンライズ(朝日)は別れの時間が迫っている知らせ。 彼女が三つ編みでラフな服装になっているのは事後を物語るのだろうか。 列車の前でハッとして「もう・・・お別れなのね」なんて表情をする場面はもらい泣きしそうになったよ。 続編の「ビフォア・サンセット」も素敵な映画です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-03 19:37:30) |
590. ラ・ジュテ
《ネタバレ》 クリス・マルケルによる傑作SF映画。 近未来の廃墟となったパリ。その地下で拘束される男が過去(観客から見た“現在”)と現在(観客から見た“未来”)を時間旅行する物語。 何処かディストピア小説を思わせる構成は、後の「12モンキーズ」にも受け継がれている。 「フォトロマン」と呼ばれる白黒のスチールを連続して映す手法(要は紙芝居(ry)は、後のゴダールや押井守の「紅い眼鏡」など様々な映画に影響を与えたという。 冒頭の空港と女性の記憶、目覚めればそこは戦争で廃墟と化した街。 実験が繰り返され己を失いそうになる主人公。彼は世界を救う救世主となるのか、それとも時の奴隷のまま終わるのか。 別の時代から来て出会う男女が見つめるセコイアの木。 このセコイアの木が「めまい」と「12モンキーズ」を繋げていく。 「12モンキーズ」では劇中の映画の中に「めまい」が出てくる。それぞれに共通する事は、全員脳味噌の中をぐるぐる掻き回されているという事だ。 鳥の膨大な鳴き声と共に目覚める女性・・・あのシーンにはどういう意味があったのだろうか。 博物館の幻想的な雰囲気・・・“凍った太陽とある女”の記憶で締めくくるラストは切ない。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-03 19:35:16) |
591. 天使ガブリエルと鵞鳥夫人
《ネタバレ》 イジー・トルンカによる聖職者が欲望に負け身を破滅させる様を描いた作品。 オープニングのアートアニメーションによる「お盛ん」な始まり方してヤる気満々です。 トルンカのアニメーションは恐ろしく滑らかであり繊細だ。 人形の表情はほとんど変わらない。だが、光の変化や効果的な音楽によって人形はまるで生物のように画面を縦横無尽に動き、観客が受け取る表情は千差万別に変化していく。 しかしトルンカもスゲエよなあ。何せ聖職者を天使の格好にしてまとめて“堕落”させちまうんだから。ガブリエルもとんだとばっちりだ。 股間のモザイク(笑) 聖職者が天使のマネで審判を下していく。 そんな聖職者が豊満なナイスバ(ry ・・・麗しい鵞鳥夫人の虜となる。男は禁欲を捨て、情欲へと奔る。しかし夫人のおっぱいは卑怯だ。もっと驚いたのは見開いた眼は本当に鳥みたいな眼!でも眼を閉じるとやっぱりスゲエ美人。 夜這いのシーンは面白い。 猫が発情する中、羽付けた天使が梯子をイソイソと登るんだもの。 夫人もなんてスケスケのエロい寝巻きでお出迎え。受胎告知(物理)。 美しい音楽が余計に笑いを誘う。 だが、情欲に溺れた天使を“天”は見逃さない。 家政婦は見た。 やがて天使は翼も衣類も捥がれ地の底に墜落する。この辺はヤケにサスペンスフルだ。 “天使”を匿うじいさんが策士&赤ん坊LOVEで憎めない。つうか赤ん坊ww 夫人が“天使”の羽を見てうっとりする中、肝心の“天使”は・・・なんてラストがお気に入りです。 [DVD(字幕)] 9点(2014-09-03 19:33:59) |
592. 運命じゃない人
《ネタバレ》 やはり映画の本当の面白さというものは、一度だけでなく二度、三度見て初めて発見できるようだ。 最初余り惹かれなかったのに、どうしてこうも引き込まれる“何か”を感じるようになるのだろうか。 この映画を再評価するキッカケは何だったのか。そうだ、画面を支配する豊かな“黒”のコントラストだった。 フィルム・ノワールやジョンアルトンのキャメラ、クリント・イーストウッドの映画を思わせる暗黒の空間。 それに男達を破滅へと導く運命の女(ファム・ファタール)たち。 だが、この映画の題名が示す通り劇中の女達は彼らの“運命”とはならない。 恐ろしく平和なまま、ほぼ何も変わらないで終わるあっけなさ。 俳優たちの何処かそっけなく冷めた雰囲気も手伝い、余計にそんな印象を受ける。 「現金に体を張れ」や「パルプ・フィクション」といったジグソーパズルを組み上げていく流れだが、先達と比べると余りに物足りなく感じるだろう。俺も欲を言えばあと30分足して一発ブチかまして欲しいくらいだ。 その分、突拍子な脱線や意味もなく人を殺傷して台無しにするようなマズさも無い、その安心感が心地良い見事なシナリオで出来た傑作である。 マンション、ドアのポストに鍵を入れる女。 その女の語りから始まるファースト・シーン。 男に逃げられた女、女に逃げられたサラリーマン、探偵、ヤクザと様々な人物の視点が積み重ねられていく。 会話が多くを占めてはいるが、冒頭の鍵の場面や妙に印象的な探偵の黒衣、タクシーを追うスピード感、浮気調査を物語る写真の数々など映像で魅せるシーンも多い。 神田が探偵だったのは意外だった。まさか今までの流れでヤクザが出るなんて誰が想像できただろうか。いや、宮田のワケあり風な彼女の話からして気になってはいたけどさ。 神田のパートになると突然マフィア映画みたいな空気が流れはじめる。 かといって、神田が出会うヤクザたちは人殺しの集団というよりは、本当は気の良い不良という感じ。ボスがスゲーくだけています。 むしろ「殺すぞおっ!」と言っていたトラックのオッサンの方がヤクザみたいだった。 あれで本当に死んでたら完璧ギャグ。 最初は神田の良い奴ぶりに惚れ、何時の間にかボスのカッコ良さに惚れる映画です。 自ら組員のために危険を犯す行動的なボスとかマジ理想の上司。 [DVD(邦画)] 9点(2014-08-31 19:40:36) |
593. 磯の源太 抱寝の長脇差
《ネタバレ》 「河内山宗俊」に収録された特典を再見。 山中貞雄の幻の傑作と言われる「抱寝の長脇差」。 かつて双葉十三郎さんが伊藤大輔「忠次旅日記」と並ぶ作品と絶賛し、後に「切腹」を撮る小林正樹が伊藤作品とともに夢中になった時代劇の傑作だったという。 残念ながら現存するフィルムは約1分の断片のみ。ほぼ殺陣の場面のみで、何かストーリー的なものを感じられるのは主人公らしき男が抱える男の亡骸?と終盤にチラッと女性が登場するのみ。 このようにストーリーはまったく掴めないが、それでも山中貞雄独特の殺陣を見る事が出来る。 「丹下左膳」のような洗練されたものはまだ無いが、高速で複数の男たちと斬り合っていく。鍔迫り合いの多さに驚く。後年の「丹下左膳」や「河内山宗俊」はほとんど鍔迫り合いをせずに一瞬で切り払うという感じ。 「抱寝の長脇差」の頃はまだ模索中だったのだろうか。 斬り合っている最中に、男が敵を足蹴にする場面が2度出て来たのには更に驚いた。コレは他の時代劇でも中々見られる光景じゃない。 [DVD(邦画)] 9点(2014-08-31 03:41:37) |
594. 血煙高田の馬場(1937)
《ネタバレ》 忠臣蔵といえば堀部安兵衛。 堀部安兵衛と言えば高田馬場の決闘! 坂東妻三郎主演「血煙高田の馬場(決闘高田馬場)」。 正月番組の一言で片すには惜しい密度を誇る、傑作娯楽時代劇だ。 40数分の短縮版とはいえ、テンポ良く歯切れの良いストーリーと4回もスピーディーな斬り合いを楽しめる。 ほとんど鍔迫り合わずに、しかも音もなく敵を切り倒していくその速さは息を呑む。 しゃがれ声のバンツマの切れ味、女相棒の原駒子に名優・志村喬の手堅いメンツ。 バンツマが「叔父さん」のモノマネを長々とする場面はクスッと笑ってしまう。 ファースト・シーンからお祭り騒ぎ、度肝を抜かれるシーンだったぜ。 喧嘩の仲裁どころか「俺様も混ぜやがれ」という三度の飯より喧嘩好き。 弱いものを虐げる野郎は許さねえ、この義侠心。 斬り倒した男たちを「星」にしてしまう洒落も粋だ。 ラスト6分間のダイナミックな展開は圧巻だが、幕切れは少し唐突に感じた。 だが、とにかく時間を忘れて楽しめる快作! 以前見た伊藤大輔の「決闘高田の馬場」の断片とは微妙に違うんだよな。 伊藤大輔版は大河内傳次郎主演。真上から撮影された人の群れを突き破るように猛烈に走り去る場面、決闘場面もクローズアップとロングショットを交互に組み合わせた場面だった。いずれも凄い迫力だ。 マキノ版のバンツマを真横から捉えたフルスピード、ロングショットで捉えられたラストバトルも迫力満点だったぜ。 「鴛鴦歌合戦」や「弥次喜多道中記」もDVD化したんだから、この作品も早くDVD化してくれないだろうか。 [ビデオ(邦画)] 9点(2014-08-31 02:32:44) |
595. 眠れる森の美女(1959)
《ネタバレ》 すごい。 凄い。 凄い! 何なのこのアニメは。 今回「マレフィセント」の予習としてアニメ版も見たが、スッゲーの何のって。 オープニングの壮大な行進、 メリーウェザーのドジ踏みの連続と汚名返上振り、 そしてマレフィセントの圧倒的な存在感。 16年間ゆりかごを根気よく探せるその根性は見習いたい。そして教えてくれた。人は成長する、何時までも“赤子”ではないと。メリーウェザーは別とし(ry 原作の妖精なんか100年だぜ。たまげたもんだ。 12人のイカレた魔女が融合してマレフィセントなんてチート魔女になったんだろうね。 スタッフ「100年なんて待ってらんねえよ!」 マレフィセントvs王子&メリーウェザー(魔改造ファンネル)の戦いが熱い。スゲえ動きだ。 ストーリーは普通だが、映像は一度は見ておきたいド迫力だった。 凄すぎて鳥肌たっちゃったよ。オーパーツの塊! [DVD(字幕)] 9点(2014-08-31 02:25:56) |
596. ソウ
《ネタバレ》 最初この映画を見た時に感じた嫌悪感は何だったのか。 餓鬼(中坊)だった俺はジグソウのクソ野郎に殺意を覚えたこと、 低予算とか触れ回る割には編集技術の高さとか演出に「低予算」という説得力を感じられなかったこと、 BGMがうるさすぎて俺の中でしばらくギャグ映画という位置ずけになってしまった事。 というか、映画は本来低予算が当たり前だ。 ハリウッドも低予算だからこそディティールとかシナリオ、演出、俳優で勝負していた。 それがいつの間にか金を無駄にかけ時間も無駄に長くなり、低予算のB級的感覚を持った映画を白眼視する馬鹿が増えて“珍しく”なっただけに過ぎない。 クリント・イーストウッドとかスピルバーグとか、今でも想像より遥かに安く早く面白く作っている。それが当たり前の事だったからだ。 だから、ワンによるこの映画もその辺のA級を自認する退屈な文芸映画よりも遥かに面白い。 それは再見してその面白さに気付く事が出来た俺が保障しよう。 この映画を見直そうと思ったのも「死霊館」の面白さに感動したからだし(「死霊館」の方が俺は好き)、短編の「ソウ」に心を打たれたからだ。 ただ、短編の得体の知れないクソ野郎に振り回されるというのが最大の魅力だった筈なのに、この映画はクライマックスであっさり謎解きをしてしまう。 短編のエピソードは“影”だけで表現されていたのに対し、この映画ではガッチリ描写される。この場面だけでも短編より金かけているよね(面白いから別に良いんだけどさ)。 ほっぺがクルクルパーの人形とか、長編で思う存分殺りたい放題。白人も黒人も黄色人種も一人ずつ確実にブッ殺されていきます。 闇、水の中の男の顔、ハッキリしない暗い部屋、突然電気がついて明るくなり、この部屋が密室だという事が分かる。互いに素性をよく知らない、鎖に繋がれた二人の男、それぞれに与えられたヒントと“鍵”、中央に転がる“痛々しい”男、握りしめられた拳銃、画面の向こうでふんぞり返るクソ野郎の存在。 しばらく闇の中にいて突然明るくなるのだ。眩しさでしばらく眼を開けられない。 ポケットの中のヒント、レコーダー。 最初のうちは二人とも鍵を共有する精神的な“余裕”があった。試行錯誤を繰り返して先に進もうとするが、謎のメッセージに踊らされる二人。 トイレに手を突っ込むとか色々キツすぎる。画面の向こうのクソ野郎に弄ばれ、徐々に恐怖が苛立ちに変わっていく二人。そこに与えられる“鋸”。最初の15分は前に見た時より楽しめた。 そこに回想だけならともかくジグソーを追う外の人間やら凶悪犯との追走劇やら、別の映画で見たかったアクションばかり入ってくる。 それで外の人が頑張って犯人を…と思ったら実は!というのが狙いなのは解るけどさ…なんかねえ。 回想の処刑ショー、早回しで恐怖を強調するのはヒッチコックの「裏窓」を思い出す。 写真でゾッとする瞬間、ビデオのヒント、複数の赤い布、カメラのフラッシュで照らす、明かされる真実。二重三重の罠。 そしてああやっぱり音楽のせいでギャグ映画に。そもそもシリーズ化されている時点でギャグ映画確定じゃありませんか。 頑張れオッチャン!頑張れママ!父さんも脚をオープン・ゲットして今逝くぞー!顔面蒼白すぎて泣いた。 ジグソウ「地獄でまた会おうぜっ!」ガッシャーン 何でこんな奴に説教されなきゃならないのだろうか。まったく頭にくるほど面白い映画だ。 ・ソウ(短編) 俺は長編よりも、長編の元になった短編の得体が知れない恐怖の方が好きなんだ。 様々な不協和音が響くオープニング。 机で向き合う男が二人。警官と憔悴した謎の男、警官が男から事情を聴く。 捕えられるまでの記憶、捕らわれた後の記憶の中の恐怖。弄ばれる苛立ち、生きるために一線を越えなければならない葛藤。 鍵を得るための作業が“影”で演出される巧さ。この時点でジェームズ・ワンはズバ抜けた何かを持っていた。 帽子を被る人形のウザさといった。 この短編の内容は長編版「ソウ」において、別の人間によって繰り返される。こんな面白いもの、反復したくもなるぜ。 [DVD(字幕)] 9点(2014-08-27 02:32:30) |
597. ゆきゆきて、神軍
《ネタバレ》 凄まじい。恐らく邦画史上最も凄まじい部類に入るドキュメンタリーになるだろう。 過去の旧日本軍内で実際に起きた事件の真相を探っていく流れが本当に凄い。鉄拳飛び交う情報収集、行き着く先に待つ答えがいやはや。 本当に全力で右に進む映画だ。突き抜けすぎて逆に笑いがこみ上げてくるくるくらい馬鹿な“何か”がこの映画にはある。 日本人なりに「戦争とは何か」を考え抜いた一つの答えがこの作品に刻まれているのだろう。この映画は99%奥崎謙三で出来ています(嘘) [DVD(邦画)] 9点(2014-08-26 22:32:51) |
598. 流れる
《ネタバレ》 川がその流れを止めないように、時代はどんどん流れ続ける。傾いた芸者置屋も華やかな花柳界も、女も男もいずれは流されてしまう。 だが、それでも流れない奴は流れない。そんな人々の日々を淡々と綴った映画だが、淡々と言っても女達が口舌の刃でジャジャンガジャンと踊り毒づきド突き合うようなドロッとした話なんですけどね。 何せ初っ端から必死に稽古をする少女が去った後、彼女たちは挨拶でも交わすように罵り合いを始めるのである。 本当に肉厚というか、豪華すぎて信じられないくらいの面子だ。 田中絹代は歳相応で抑え気味の演技が素晴らしいし(溝口健二作品の絹代も凄いけど無理のない演技と高感度はこの映画がダントツ)、 山田五十鈴と杉村春子も妙な美しさ感じられる。 それに栗島すみ子の存在感(若い時の彼女は是非とも「夜ごとの夢」「淑女は何を忘れたか」等を御覧下さい)! 若い高峰秀子と岡田茉莉子の対比も効いている。とにかくこの映画、女、女、女の映画である。 花柳界の春真っ盛りといった具合の光よう。通りを歩く女性達の足取りも何処か楽しげ。一方、借金踏み倒しで傾きかけた芸者置屋はから元気というか、何処か暗い影が差す。取立人を酒で酔わせて“逃げる”日々も限界が近い。 芸者の世界は30過ぎたらBBAというほど選手生命短し恋せよ乙女。「君と別れて」といい、この辺の描写の生々しさよ。 それをせせら笑うように自由な猫は家と外を出入りする。 「人間よりも猫の方が大事」・・・今の時代はちょっと洒落にならんセリフになってしまった。 そこに家政婦はミタじゃないけど女中のお春さんこと山中リカがやって来る。最初この女性が田中絹代とは気付かなかった。 彼女は女達の様々な噂を耳にするが、彼女の心がそれで流れる事はない。それを観客同様に傍観するのかと思えば、彼女の存在が芸者たちを引っ掻き回したりもする。かといって狂言回しという役割でもないし、不思議な存在だ。 子供も大人も怖いもんは怖い注射。それを「針が折れたらもっと大変よ」なんて黙らせてしまうお春さんは賢い。 もっとも、一番女達を振り回すのはタチの悪い男ばっかり何ですがね。男という濁流に流され翻弄される女たち。 満たされない女達は踊り、嘲笑い、哀しみ、怒り、憎しみをブチまけていく。 空も「稲妻」を鳴らして泣きじゃくる。 [DVD(邦画)] 9点(2014-08-26 16:59:53) |
599. キック・アス
《ネタバレ》 再見。 雲を突き抜けるようなオープニング、男の回想・赤いマントをまとい、ヘルメットを被り、地にダイブする。タクシー「解せぬ」。 ある男が叶えられなかった夢、誰もが抱えているかもしれない夢に挑戦したいという想い。 この「KICK-ASS」は、そんな夢に向かって拳を血に染めていく男たちの闘いを描いていく。とにかくぶっ飛ばせ! ご機嫌な音楽とは対照的な冴えない男子友達が二人いるだけでも充分やで、辛いことはオナッて忘れる、熟女でイケるとかレベる高すぎだろおまえ、ゴミ箱は息子を発射する捌け口に。 民族wwあるある。 あこがれの女性、僕は普通の人間さ。 スパイダーマン「おう」 第9地区「せやな」 突然すぎる死、車が横切るように変わるカット、物騒なオッサンがいるから話もできない、カツアゲ、見て見ぬフリ…そんな自分に腹が立つ!生まれ変わりたい! ネットで誰でもコスチュームを買え、ヒーローの「真似」はできる時代。彼はそんな時代にちょっとした冒険に出る決意をかためる。 そしていきなりマフィアが小指をペンチで潰されようとしている尋問、友達になりたくても親のせいでなれない。 凶暴なツインテール少女の逆襲。ダーティ・ロリー。 秘密兵器、マスクが幼い少女と青年に勇気をくれる。おっかない銃を構える強面のオッサン連中に殴り込める勇気を!好きなこと(銃殺)。 弾丸、拳銃、鉄拳、健脚、包丁をブチ込みまくる! 暗闇で炸裂する銃撃戦、死を乗り越えて受け継がれる復讐の意志、闘う決意。たった一人で二挺拳銃と鋼の拳で殴り込む大乱闘!高らかに鳴り響く「荒野の用心棒」の音楽! 「何も問題ありません(だからバズーカ貸して)」 「こんばんわー(バルカン砲)」 男女平等キック!男女平等首絞め!男女平等机に叩き付け!男女平等パンチ!男女平等バズーカシュートオオオォォォッ!!!汚ねえ花火だ。これ絶対入ってるよね。 絶体絶命の危機に駆けつける“戦士”の一撃。ジョン・フォード「捜索者」の如く命を抱きかかえ家に帰ろう。 初めての学校は鉄拳でご挨拶。 「俺の出番を待ってろよ!」 [DVD(字幕)] 9点(2014-08-24 08:18:36) |
600. 夜と霧
《ネタバレ》 第二次世界大戦下、アウシュビッツ強制収容所で起きたユダヤ人の虐殺。 その出来事を記録したフィルムや写真を再編集して一つの映画にしたアラン・レネの短編。 同じナチスの非道を記録したミハイル・ロンムの「ありふれたファシズム・野獣たちのバラード」は、虐げられた人々よりも実行した関係者たち、ヒトラーの演説を冷静に聞く聴衆の分析といった部分に視線が向けられていた(それでもホロコーストや吊るし上げなど虐殺の記録は多い)。 この作品は戦争の悲劇性や、実行者の罪を問おうという趣旨はありません。あくまでありのままの事実を淡々と記録した映像なのです。 現在(撮影当時)の収容所跡地を映したカラー映像、そして過去の出来事を白黒のフィルムで映していきます。 収容所に列車で連行されていく人々。前半15分は収容所での生活、後半15分は人々が殺された“後”をひたすら映していくのです。 髪を剥ぎ、首を切り、炎で焼き尽くす・・・どうしたらこんな惨い事を平気で行えるのか、同じ人間が人間にこのような事をできる・・・考えただけでも背筋が寒くなる光景が続きます。 骨と皮になった人々、折り重なるようにして山盛りになった死体、炎で焼かれ黒焦げになった人間・・・まるで人間が家畜を屠殺するように人間の死体が重ねられているのです。 もっと怖いのは、それを黙々と埋葬する人々の映像。ブルドーザーで死体の山を埋めていく、皮と骨だけになった遺体を運ぶ人間の姿。彼等はあの光景を生で見て、何を思ったのでしょうか。 初見で眼を背けなかった人は、立派です。私はこのような映像を見る度に眼を背け、逃げ続けてきました。それは人の自由です。ですが、この映像を撮った人々は眼を背けずに何十分も何時間も骸となった人々を見続けたのでしょう。そう思うと、逃げてはいけないのだと考えるようになりました。 今ではこういう映像に慣れてしまったのか、見たその日の夜にうなされて寝付けないなんて事は少なくなりました。それだけ私が血も涙も無い人間になってしまったのでしょうか。時々自分が怖くなります。 彼らを殺した人間は、その手でまた飯を喰らっては人を殺していたのだろうか。考えるだけでも恐ろしく、本当に悲しい事です。 [DVD(字幕)] 9点(2014-08-21 20:52:52) |