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かっぱ堰さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1244
性別 男性
自己紹介 【名前】「くるきまき」(Kurkimäki)を10年近く使いましたが変な名前だったので捨てました。
【文章】感想文を書いています。できる限り作り手の意図をくみ取ろうとしています。また、わざわざ見るからにはなるべく面白がろうとしています。
【点数】基本的に個人的な好き嫌いで付けています。
5点が標準点で、悪くないが特にいいとも思わない、または可も不可もあって相殺しているもの、素人目にも出来がよくないがいいところのある映画の最高点、嫌悪する映画の最高点と、感情問題としては0だが外見的に角が立たないよう標準点にしたものです。6点以上は好意的、4点以下は否定的です。
また0点は、特に事情があって採点放棄したもの、あるいは憎しみや怒りなどで効用が0以下になっているものです。

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641.  太陽の王子 ホルスの大冒険 《ネタバレ》 
古いアニメと思ってほとんど期待していなかったが、冒頭から狼との戦いのスピード感で予想を裏切られた気分になり、序盤で舟を操る主人公の背景を太陽が横切ったところなどは少し驚かされた。かなり力の入った動画のようだが、ただ途中、なぜか静止画ばかりが続く場面があったのはさすがに制作上の都合を勘繰らざるを得なかった。 音楽面でも聞くべきものがあり、ヒロインの独唱のほか、管弦楽を背景にした合唱の場面もあったりして歌劇とかオラトリオのような印象を出している。非常に微妙ながらソビエト連邦の大衆向け音楽の雰囲気が感じられたのは時代の反映かと思うが、劇中でも歌を大衆の心理操作に利用しようとする人物が出ており、そういうことを制作側がどの程度意識していたのかはわからなかった。 お話としては子ども向けには地味かも知れないが、終盤で巨大怪獣同士の戦いのようになっていたのは昭和特撮の影響かと思ったりする。真っ正直な主人公が秘密の多いヒロインに翻弄され、単純バカのように詰られていたのは思春期物らしい印象だが、結局は主人公のまっすぐな意志が事態を打開していたのは人の世の正道を示したようで清々しい。男子たるものやはりこうあるべきだろうと思わせる。 結果としては大感動作ともいえないが、「まんが映画」という触れ込みの割には素人目にも出来の違うアニメに見えた。  以下はよけいなことかも知れないが、ストーリーの基本は地縁共同体が団結して外敵を撃退した話になっており、敵は単純に人を滅ぼそうとしていたのであって支配と搾取を目的にしていたわけではない。また最終的に村長の地位が揺らいだようでもなく、倉を壊した場面以外は階級闘争の要素もない。東映の労働争議が制作姿勢に影響を及ぼしたとの話があるようだが、劇中で言っているのは「団結」までであって、自分としてはそれ以上の社会的な問題意識を提示しているようには見えなかった。「団結」だけなら労働者の団結も国民の団結も同じである。 ちなみに「ヒルダの子守唄」はまともに聞くとものすごく皮肉な歌詞なので笑った。解釈はそれぞれだろうが個人的には、生態系と同じように人間も複雑につながった社会を作っており、利害の対立がありながらも何とか成り立っているものであるから、単純思考で誰かを悪人にして叩けばよいというものではない、ということかと勝手に思った。
[DVD(邦画)] 7点(2017-07-05 19:44:53)(良:1票)
642.  バイロケーション 《ネタバレ》 
原作も一応読んだが、映画化に当たってはかなり手際よくまとめたようで、映画だけでも全体像はわかる。前宣伝ではラストが衝撃的とされていたようだが、実際は最後だけがひっくり返るような構造ではなく、徐々に観客の思い込みが覆されて自然にラストにつながる展開に見えた。結末が「表」「裏」の2種類あるのも基本的には肯定できる。ただ背景事情の省略のために最後までわからないこともあり、また御手洗という男は映画ではほとんど不要な人物になっている。 題名の現象に関しては、この映画で二重人格の実体化のような意味づけをされているのは原作を超えた趣向である。しかしそれだと本来は本体に統合するよう努めるのが筋ということになり、劇中で共存が理想というようなことを言っていたのは明らかに変である。物語中の状況ではやむを得ない発想だとしても、「裏」の最後の独白など聞くともう外部の常識が通用しない閉鎖世界ができてしまったようで、かなり独りよがりな印象になっていた。こういう変なところに踏み込まないで止めていた原作の方はまともである。 映像的な面では全般的に好印象だが、人や物が霧消する表現は少々安っぽい(演出上の意味のある場面はあったが)。キャストに関しては、まずは滝藤賢一氏が原作でも描写された凄みのある表情を見せている。また主演女優はこれまで可愛気がない人だと思っていたが、今回は女性的なところが前面に出ていたようで、特に結婚後の様子は可愛らしくも見えたのが意外だった。この映画で最もいいと思ったのは実はこの点である。また酒井若菜という人も嫌いでない(けっこう好きだ)。  なお冒頭の外国の場面は、19世紀のリヴォニア(現在のラトヴィア共和国)で起きたとされる事件の再現映像のようなものかも知れないが、仮にこの手の現象が実在するとすればこれ以前のはるか昔からあったはずで、現象自体が19世紀から発生し始めたかのように台詞で説明していたのは変である…オカルトの世界で話題になったのが19世紀のヨーロッパから、というならわかる。 ちなみにここでしゃべっていたのは何語なのか。リヴォニアの寄宿学校の事件とすればフランス語かドイツ語を使っていた可能性があるのでは。
[DVD(邦画)] 5点(2017-06-30 19:48:23)
643.  ゴメンナサイ 《ネタバレ》 
携帯サイト「魔法のiらんど」で公開されたケータイ小説を原作とした映画である。原作の全3章のうち前の2章分を映画化している。 この映画と同時期に、同じく携帯小説を原作として、同じ監督と同じ主演(鈴木愛理)で製作された「携帯彼女」(2011)とはなぜか出来が段違いで、実際それほど革新的でもなく超怖いわけでもないが、映像や音響面で結構いい感じを出している。主要キャストはアイドルながら結構シビアな役柄で、劇中人物の発言によれば「貞子versus鬼」だそうだが、特に黒羽さん役などはこれで本当にアイドルなのか(本当にこういう人なのではないか)と思わせるものがある。主演の人も前記の映画より少し大人っぽい美少女に見えて結構だ(ナレーションは下手)。ちなみに個人的にはアイドルに関心がないが、相楽樹さんが目立っていたのは嬉しい。 全体構成としては、本来のお話の外側にアイドル映画の枠組みをもう一つ被せておいて、その枠組みも最後にはぶち壊して虚構性を最大限に否定してみせる趣向は面白い(「ファンの人とか見るんだよ」という台詞が生々しい)。冒頭の作品紹介の際に主演の人の態度が変だったのも、後になればそういうことだったかと思わせる。  ところで参考までに書いておくと、自分が本来好む実話系怪談の世界でいえば、実話という触れ込みで読者に実害が及びそうな話を予告なしに読ませるのは、少なくとも商業作品では禁じ手と思われる(最近はそうでもないかも知れないが)。 この映画は実話ではなく「フェイクドキュメンタリー」だそうだが(厳密にはラストのみ?)、原作が携帯小説であり、著者の実体験を匂わせる作りになっていることから再現ドラマの趣がある。現実問題としては台詞にあったように呪いなど真に受ける警察もないわけだが、しかし同じく台詞にあったように、呪われていると本人に自覚させることで、いわば高感受性者には精神面で実害が及ぶ恐れもなくはない。そういう合理的観点からしても、何の警告もなしにこういう映画を多数の観客に見せることはしないのが無難なはずである。 そういう配慮もなかった結果、ネット上あるいは日常会話で若年者が垂れ流す無責任な話を大人が平気で映画化(その前段で書籍化)してしまった印象があり、映倫は通っても倫理面で問題があると思わざるを得ない。劇中でも若年者の思慮のなさを嘲るような台詞があり、そこまでわかってやっているのであればイノセントともいえない。原作もかなり毒気のある小説だが(ふりがなが必要な読者にこういうのを読ませるか?)、さらに映画では最後の章を除去してオープンな構造にしたこともあって、作り手の悪意さえ感じられる状態になってしまっている。 そういうことで点数としては抑えておく。本当は少しいい点を付けたかったが残念だ。  追記:主要キャストのうち嗣永桃子(ももち)という人は本日2017/6/30をもって芸能界引退とのことで、惜しまれつつも祝福されながらの引退らしいのは他人事ながら喜ばしい。15年間お疲れさまでした、これから頑張ってください。
[DVD(邦画)] 1点(2017-06-30 19:48:20)
644.  ×ゲーム(バツゲーム)(2010) 《ネタバレ》 
この原作者の著作は読む気にならないが、今回は原作がどうなっていたのか気になったので読んだ。 原作でも根本原因はいじめだが、起こったことは単なる性格異常者の猟奇犯罪という印象が強い。それだけでは不足と思ったのか、映画では組織的な復讐ということにして社会性を持たせているが、そのためにかえって荒唐無稽の度合いが増してしまっている。また話を大きくした割に、最後に糾弾すべき相手が特定されずに拡散してしまったのは、いわば社会派崩れの腰砕けという印象もあった。 いじめる側や黙認した教員の悪質さを強調して観客の憎悪を煽るのは、映画の見せ場である残虐行為を心理的に肯定させるためだろうが、劇中の大学教員の発言によれば、こういう映画ができるのも世間がそれを望んでいるからだと言い訳していたようで、結局は一般大衆の嗜好に媚びた形になっていたようである。登場人物のうち金持ちの同級生は行き過ぎた復讐という意味合いを出すための存在だったのだろうが、結果的にはあまり印象に残らず、この男が語った心の傷の説明も取ってつけたように思われた。  また原作では性格異常者の極端な執着としか思えないものを、映画では悲しく痛々しい愛情という印象に変え、破滅的なラブストーリーとして一定の共感が得られるよう再構成したと見える。これはアイドル映画としての性質からも十分理解できる。 それと同時に主人公の男の境遇にも憐憫とやるせなさを感じなければならないのだろうが、しかしこの男は最初から態度が極めて苛立たしく(本物のバカ)、自分としては真っ先に死んで当然だと決めつけていたら主人公だったというのが意外な展開で、最後までこの男には同情する気に全くならなかったのは作り手の意図に沿っていなかっただろうと思われる。  そのほか映像化という面では悪い印象はなく、主役の人物も苛立たしい(バカな)人間像を好演している。刑の執行時のおふざけ感などはいいとして、残酷描写はそれほど徹底しておらず(尻に穴がない)、真に迫っているのは登場人物の顔芸だけだったようだが、それも残虐なだけの映画ではないという作り手の意図を反映していると解することはできる。 ただ現実問題として、自分としては見ていて最初から最後まで不快感しかなかったというのが実態だったので、それをそのまま反映した点数にしておく。関係者の皆さんはご苦労様でした。
[DVD(邦画)] 1点(2017-06-30 19:48:18)
645.  お兄チャンは戦場に行った!? 《ネタバレ》 
同じ監督の「沈まない三つの家」(2013)と同時に撮影されたもので、これだけが別の小編として編集されたとのことである。当然ながら同じ川が重要な舞台になっている。 導入部に刺激的な要素を持ってきているが(人体損壊・流血)、全体としては心温まる家族(兄妹)の物語である。当初は劇中の兄に同情もできずにこいつはバカかと突き放した気分だったが、そのうち事情があることもわかり、また何より妹が兄と観客の間を取り持ってくれているように感じられて、最終的にはこの兄に対する制作側の温かい視線にも共感できるようになる。結果的には最初の凶行も前向きな決断だったのだと納得した。妹の方は最後に何か変化があったのかどうかよくわからなかったが、次は妹の側が兄に背中を押されるような場面もありうるのかも知れない。 なお自作中に下世話なものを出すのがこの監督の特徴だが、今回は少し毛色の違ったものを出してきている。
[DVD(邦画)] 7点(2017-06-24 09:39:42)
646.  沈まない三つの家 《ネタバレ》 
「チチを撮りに」(2012)、「湯を沸かすほどの熱い愛」(2016)と同じ監督の映画で、やはり家族がテーマだが雰囲気は同じでもない。いかにも人工的な世界を作り込むのかと思ったらそれほどでもなく、また一つひとつの場面に細かい意味を込めているようだがわざとらしさは感じない。意外に普通の感覚で見られる映画になっており、どちらかというと「琥珀色のキラキラ」(2008)に近い印象である。  この映画で川が意味するものはよくわからないが、文字通り水に流すということのほか、自然かつ否応なしに前に進めていくという意味か、また題名との関係からすれば浮かすということもあるかも知れない。三つの家族それぞれに物語ができているが、ある程度の共通項として“必要とされること”が台詞に出ているほか、感覚的には“赦し”も大きな意味を持っていたように思われる。登場人物の中ではコンビニ店長が意外に重要人物で、キーパーソンというほどでもないが結節点にはなっており、顔の印象からしても“赦し”を体現していた感じである。また相模家の叔父がかなりいい男で、自分がこの映画の中にいるならこの人物の役でありたいと思った(痛いのは嫌だが)。自分がどうあれ誰かに必要とされるのは嬉しいことだ。  この監督の特徴と思われる露悪趣味に関しては、今回それほど気に障るところはない。見るからに下世話なものは出ていない(終盤で流下した液体は排泄物ではないと思われる)が、性的な危うさということでは、近親間の性愛感情(娘から父?)が背景に隠れていたようである。また不道徳という面では、神田家の妹役の松原菜野花さんが今回も万引きをさせられていた。ちなみに神田家の姉は非常に賢明で先読みする人物だったようで、おかげでDVの脅威は回避されたのだろうと思っておく。 ほか、やはり極端な誇張表現が若干あってどうも馴染めないが、それも監督の個性ということで納得するしかない。今回は川にマグロはいなかった。
[DVD(邦画)] 7点(2017-06-24 09:39:38)
647.  スイッチ! ~短篇.jpルーキーズ第2弾~ 《ネタバレ》 
一応説明しておくと(第1弾のところでも書いたが)、「短篇.jp」という動画コンテンツの配信サイト(現在は停止中)が運営されていた時期に、新人監督育成の目的で製作されたのが「短篇.jpルーキーズ」である。この第2弾を含めて第3弾まで製作されており、それぞれDVD化もされている。 内容としては監督の違う全6話のオムニバスになっている。以下それぞれにコメント。  【ジャパニーズセラピー】 全否定。 【永遠と10分】 オチ付きの小噺のようで面白い。世の中絶対に正直に言ってはならないことがあるわけだが、この2人は自然体のようで結構だ。新婦はなかなか愛嬌がある。新郎役の深水元基が若い。 【洗濯女】 予告編でヒントが出ているがそれでも意味不明。人物がいなくなったり出たりする、風景の非現実感、昼夜の突然の転換といったあたりは夢を見ているような感覚。宇宙人の夢だったのか。 【ウチの○○知りませんか?】 川崎市多摩区在住の家族の話。ほのぼの系で楽しいが、下世話なもの好きの監督らしく排泄物ネタも出している(犬と女子高生)。ちなみに予告編が非常に端的に内容を語っていて、ほとんどネタバレである。 【たとえば、てるみの場合。】 話の内容と人物の姿をわざと一致させていないようでわかりにくいが、どうやらハッピーエンドだったらしい。心が昔に戻っているのか、また10年も待たなくてよかったはずだという思いもあるか。「開いてる」というのは連続性の表現のようだが可笑しい。 【東京はみだしゲーム】 ラストがありきたりだが感動的でないこともない。弟と話していると地が出て来るようなのはよかった。特に若い女性など、それこそ兄弟とでも会わない限り、東京で(屋外で)方言丸出しでしゃべることもなかっただろう。  第1弾のように共通の登場人物で統一感を出すこともなく、画面サイズも違う小品を寄せ集めた形になっている。自分としてかなり愛着を覚える話もあり、一つだけ無視すれば全体としては見ごたえのあるものになっていた。
[DVD(邦画)] 6点(2017-06-24 09:39:36)
648.  独立少女紅蓮隊 《ネタバレ》 
DVD特典の対談を聞くと、発想の原点になったという渋谷のエピソードには共感できるが、わかるのはそこまでである。 まず、この映画の属するシリーズの名称からすると笑える映画として作られたもののはずだが、実際には申し訳程度の悪ふざけを入れてあるだけで、具体的に笑わせる場面は皆無である。国家体制に対する皮肉な笑いという理屈付けをしているのかも知れないが、現実問題として笑えなければ少なくともコメディではない。 コメディでないとすればシリアスに取るしかないわけで、劇中の「王国」が監督の出身地であることからしても、どうしても真面目に取らなければ済まない雰囲気はある。見る側の世代や主義主張によっては無条件で賞賛されそうな体裁なのは厄介だが、実在しない政府機関のありそうもない所業や人物像を創作してまでわかりやすい悪者を用意するのは幼稚で卑劣である。 しかし同時に、なぜか日の丸を背景にした宣伝写真とか非人道的なテロリスト養成とか思想統制を思わせる「プロパガンダ」といった言葉などマイナスイメージのあるものを平気で使っており、こういうものをこの映画として肯定しているということなのか、あるいは冗談めかした逃げの姿勢ということか。若年者が仲間内で面白がるようなものに真面目に突っ込むと冗談だから許せと言われそうで腹立たしい。 それでも最大限好意的に見るとすれば、いい加減な部分は全て娯楽映画としての飾りに過ぎず、要は「王国」の民の心情を伝えることが中心テーマだったと取れなくはない。住民の切実な思いというのは確かにあるだろうが、しかし未成年者の思い付きのようなストーリーに乗せて伝えるのでは無責任な自己表現以上のものにはならず、映画全体に通底する茶番感とあいまって反感だけが残る。そもそも母親がナショナリズム(民族主義)のためにわが子が戦いに赴くのを支持するなど常人の感覚では信じがたい。 最終的には「王国」自体のことよりも、「王国」をネタにして自分の反抗心か何かを表現したい、またはそういう人々に評価されたい映画にしか見えなかった。実際の意図はどうあれ最低限、反感を煽って「王国」とそれ以外の離間を図るようなことはやめてもらいたい。平和ボケの時代の無責任な映画に今さら苦情を言っても仕方ないだろうが。 なお点数は中身と無関係に付けたので参考にはならない。上記以外の面での評価は別のところで誰かがしただろうと思っておく。
[DVD(邦画)] 5点(2017-06-21 19:32:13)
649.  トワイライトシンドローム デッドゴーランド 《ネタバレ》 
ゲームの映画化とのことで、同じ年に公開された「デッドクルーズ」のいわば姉妹編である。低予算らしく安手の雰囲気で、その辺はあらかじめわかった上で見る必要がある。  この映画は遊園地を使った殺人ゲームという趣向で、ゲームキャラだとどれだけ殺しても良心は痛まないのか、というような問いかけも一応入ってはいるが、どちらかというと罪もない一般人が生命を賭けたゲームを強要される(+主人公が人間的に成長する)という、よくあるパターンに単純に乗った形になっている。 全体構成としても特に目新しさはないが、少なくとも序盤の展開にはけっこう意外性がある。また全身が黒いので目に入らないとか声が喉につっかえるとか、劇中人物が嘲笑されると笑い声が入るとか普通の風景と思ったら罠だったというような細かい面白味もなくはない(感電死した人はご苦労様)。ほか客観的にみれば自律進化型ピエロの挙動といったものも見どころなのかと思われる。 最後の場面では、主人公の「同じこの空の下で」という台詞自体はいいと思ったが、「空」という言葉がそれ以前のストーリーと関係ないため唐突で、かつその直後の不吉な状況には直結するのでせっかくのしあわせ感が失われてしまうのは残念だった。結果的に満足感の高い映画ともいえなかったが、まあ初めから全く期待しないで見ればそれほどの落胆もないと思われる。  なおキャストの中で、主人公のメイ役(荒井萌)がひときわ可愛らしいのはこの時まだ13歳だったからで、チカコ役の星井七瀬という人に可愛がられていた(実妹と同年齢とのこと)という話は和むものがある。また完全にどうでもいいことだが、メイキングを見るとデブオタ役の俳優のオールアップ時に、花束を持った監督がはるか彼方から疾走してきてそのまま俳優に抱きしめられていたのは、どういう事情でそうなったのかわからないがとりあえず可笑しい。和気藹々とした現場だったようで結構でした。
[DVD(邦画)] 3点(2017-06-17 08:31:30)
650.  トワイライトシンドローム デッドクルーズ 《ネタバレ》 
ゲームの映画化とのことで、同年公開の「デッドゴーランド」のいわば姉妹編である。低予算らしく安手の雰囲気で、同じ監督の「オトシモノ」(2006)が超豪華大作のように思われる。  この映画は客船に乗った若者が殺人ゲームに巻き込まれるという設定で、舞台は船内限定(撮影場所は陸上もある)だが、船外が見える場面も多いので閉塞感はない。ちなみに船は八丈島と東京の間を運航する東海汽船の「さるびあ丸」だそうである。 基本的にはホラーゲームを本物の人間でやったらどうなるかという前提で一貫しているが、この映画では特に「リセット」に着目して、殺される者の身になってみろ、ということを表現していたらしい。序盤はまだコミカルにも見える(失笑するところもある)が、やがて暴走してとりかえしがつかなくなるという展開で、最後には型どおりの悲劇的結末を迎えるが、全員生き残ることもできたはずだという思いを残す作りになっていた。細かい点としては、多層のプロムナードデッキを使ってゲームらしい移動を見せていたのはなかなかいい。また「お母さん」なるものの登場が唐突なのは笑った。 最後の場面は、登場人物とカメラの動きに加えて船自体の速さも感じられ、並航する船も見えていたりしてダイナミックな映像になっている。ここは状況に翻弄される登場人物の姿が強調されていたようでもあり、若干くどい(かなりしつこい)が印象的な場面になっていた。最初から全く期待しないで見たわけだが結果としては意外に悪くなく、安手にしても見どころがなくはない映画に思われる。  なお主要キャストの女優4人はそれぞれ好印象で(男は見ていない)、特に主演女優はきっちり存在感を出している。登場人物はそれぞれキャラ立ちしていたが、相互の関係性が「聲の形」(2016)と似たような感じで、こういうのは人類共通の基本パターンのようなものかとも思った。
[DVD(邦画)] 4点(2017-06-17 08:31:28)
651.  トワイライトシンドローム-卒業- 《ネタバレ》 
ゲームの映画化とのことで、元がどういう話だったかは知らないが、この映画に関しては高校最後の夏休みに起きた思いがけない出来事という体裁になっている。 最初は感傷的な雰囲気で始まるが、直後になんちゃって式に開き直ってコメディ展開に移行する。まずは女子高生のじゃれ合いとかガールズトークに付き合わされて、そのあとみんなでプールに行って水着になって水中撮影というサービスもある。そのうち通りすがりのバイト男が本格的にからんで来るとラブコメ風味も出て、気恥ずかしくて笑ってしまうとか少しキュンとさせられるとか何気に泣かせるところもあってとりあえず楽しい。全体としてはミステリー風の構造ができていて段取りよく進んでいくが、終盤に至ってもまだ嬉し恥ずかしの場面など入れてあるので和まされる。最後は題名の「卒業」を受けた形で切ない余韻を残しながらもすっきり終わり、結果的には登場人物みんなの笑顔が嬉しい爽やかな(少し古風な?)青春映画になっていた。ちなみに少し怖いところが1か所あったが、ここでかすかな音が先触れになるという趣向は非常によかった。 なお主演の酒井若菜という人のことは当時よく知らなかったが、この映画を見る限り美少女ともいえない代わりに何ともいえない愛嬌のある顔をしていて和む。年少時の子役とも連続性が感じられて微笑ましい。
[DVD(邦画)] 6点(2017-06-17 08:31:22)
652.  オルド 黄金の国の魔術師 《ネタバレ》 
わりと新しいロシア映画である。冒頭表示される文字は縦書きだがロシア語だろうから字幕が出ないのは変だ。 題名の「オルド」は「帳幕」と訳していいかどうかよくわからないが、とりあえず劇中に出る「黄金のオルド」という言葉は、チンギス・ハーンの長子ジョチを祖とするキプチャク・ハン国(金帳汗国、ジョチ・ウルス)を指している。映画はこのキプチャク・ハン国とモスクワの府主教アレクシイとの関係を描いており、年代的には序盤の暗殺が1343年、終盤の暗殺が1357年で、日本では南北朝時代に当たる。 考証的なことはよくわからないが見た目でいえば、ハンの都(恐らく「サライ」)はみすぼらしいようで結構な壮大感がある。皇太后が宮殿ではなく郊外に住んでいたのは遊牧民の伝統を固守する人物像の表現だろう。劇中のモンゴル人がやたらに野卑で粗暴なのはロシア側の蔑視感情の表れかも知れないが、その性質を受け継いだといわれるロシア人自身も、他国の文明人から同じように見られていたのは言うまでもないことである。 一方、モンゴル人がキリスト教会のある粗末な村に来て、知り合いだったらしい住民と立ち話を始めたのは何かと思っていたら、これがモスクワ大公イヴァン2世に対し、キプチャク・ハン国が要求を突き付けた場面だったというのはかなり度肝を抜かれた。そのあと鶏のいる裏庭で大公が見せた必死さがまるきりその辺の一般人のようなのも笑った。ちなみに字幕の「王子」は明らかに誤訳で(英語からの重訳?)、これは「公」と訳すのが適切である(歴史的には「大公」とされている)。  物語の面では、説明を排して専ら状況を見せる形になっている。 最初の1/3くらいはヨーロッパ人がほとんど出ず、文化的素地の全く違う意味不明な風習を見せられるのが面白い(泣き女のようなのがいい)。ロシア人が出て来てからもすれ違ってばかりのようだったが、人命尊重の観念がないだけで実は気のいい連中だというところも見えていた。皇太后は最初から親和的、臣下の男も同情的で、ハンも言葉は乱暴ながら“少し待ってやろう”という意思を最初から示していたと解される。 ストーリー上のメインになるのは「奇跡」だろうが、本当に奇跡が起きたのかは不明瞭である。府主教の受難によって神の慈悲が下されたと思うのもいいだろうが、あるいは本人が何もしていないと語ったように本当にたまたまだったとも取れる。以前にウラジーミル(モスクワ近隣の都市)の疫病を終息させたというのも同じとすれば偶然の連続だが、毎度の身を捨てた行動があったからこそ後に聖人に列せられたということかも知れない。なお劇中アビニョンからの使者が登場して助け助けられしていたのは、正教会もローマ教会もない唯一の神の意思が働いたことの表現か。 またこの映画の立場として、信仰心のない「黄金のオルド」はやがて衰退し、ロシアは生き残ったと言いたいのかも知れないが、これもそれほどはっきり示されているわけではない。この映画を見たロシア人は、モスクワ・ロシアと正教会の正統性を主張する立場から都合よく解釈することが認められているが、それ以外の人間なら、たまたま起こった出来事を並べて描写しただけと取るのも勝手だろうと思われる。これは、単なる事象の連なりにどう意味付けをするかという、いわば歴史解釈に関する一種の問題提起になっているようでもあるが、ただし単なる羅列と捉えてしまうと、映画としてのストーリーがないも同然になってしまうのが問題である。やはり歴史には物語が必要だということか。  結果として様々な面で興味深い映画であり、また映像が美的なのも印象深かったが、しかし娯楽映画としては難があるので他人には勧められない。ちなみにこれを見てから、昔のドイツの音楽グループ「ジンギスカン」の曲を聞くと気分が出る(「めざせモスクワ」Moskauなど)。
[DVD(字幕)] 8点(2017-06-10 09:27:53)
653.  略奪の大地 《ネタバレ》 
1988年のブルガリア映画で、DVD化されているが画質は悪い。原作は結構な大作歴史小説らしく、この映画も164分もの長さがある(勝手に前後編に分けて見た)。劇中年代の1668年は、日本では江戸時代前期(4代将軍家綱)に当たる。 舞台になっているロドピ山地はカルスト地形の多い場所とのことで、映画の中では山口県の秋吉台のような風景や岩をくりぬいたような洞窟が映っており、物語中の処刑穴?や“神の目”の場面でも生かされていた。文化面でも婚礼など地元の風習や建物などが興味深く、いわゆる「ブルガリアン・ヴォイス」のようなものも聞かれる。一方で有名な?オスマン軍の常備歩兵イェニチェリは、応援で来た400人の歩兵隊として映像化されており、台詞で実際に「イェニチェリ」と言っていたようだが字幕では「近衛歩兵」と訳していた。  劇中ではオスマン軍の暴虐ぶりがさんざん描写され(串刺しの串を作るところからの映像化は初めて見た)、実際こういうこともあっただろうとは思うが、しかし映画として作られた内容をまるごと史実として捉えるわけにもいかない。隣国を貶めてナショナリズムを煽っているようでもあり、部外者としてはほどほどに見ておく必要がある。特に異民族/異教徒に孕まされたからといって、母親が自ら産んだ子を殺すなどという感覚は信じられない。またオスマン帝国は異教徒に寛容だったというのが一般的な見方だろうが、この映画で特定地域が突然「改宗か死か」を迫られた理由が納得いくよう説明されていたとは思えない(少なくとも字幕では)。 そもそもオスマン帝国の支配が及ぶ以前、太古の昔からこの場所でキリスト教徒のブルガリア人が平和に暮らしていたわけでは全くなく、6世紀頃?に初めてスラヴ人が大挙して侵入し、続いて7世紀にブルガール人が来襲してスラヴ人を支配、ブルガリア帝国の成立と滅亡と再成立といった抗争が繰り返され、その間9世紀にキリスト教を受容するといった経過があったわけで、その過程で劇中に見られたような惨劇が(トルコ人と無関係に)なかったともいえない。この映画での印象がどうあれ、歴史上の悪役がトルコだけということはないはずなので、その辺は部外者として押さえておく必要がある。映画のためにオッパイまる出しにした皆さんはご苦労様だった。 ちなみに自分がこの映画を見て本気で怒ったのは、登場人物が食物をわざと踏みつけにして歩いて行った場面である。劇中の悪業は作り物だが、これだけは映画制作時に間違いなく現実にあった不道徳な行為である。  物語の面では、まず人間ドラマはよくわからないので放棄する。人間関係が変に複雑で原作を消化し切れていないようでもあり、また心情面で、登場人物のこだわりが部外者には理解できないところがある。 一方で社会的なテーマとしては、①生き延びること、②民族性を守ること、③キリスト教信仰を守ることが、この順番で重要だということらしい。映画では③をいったん諦めたようだったが、ラストではまたどっちつかずの(希望とも取れる)どんでん返し的な出来事が起こるので困惑する。しかし実際に現代でもブルガリア人でありながらイスラム教徒という人々が存在しているらしいので、そういう割切れない現実を前提にしながら、要は②が本当に大事だと言いたかったのかも知れない(①は当然として)。当時の現地の世相は知らないが、やはりナショナリズム高揚のための映画として捉えるのが妥当ということか。 結果としてかなりの力作のようでもあるが、やはり他国民として受け取れる限度というものがある。ちなみに好きになれる人物は誰もいなかった。
[DVD(字幕)] 5点(2017-06-10 09:27:50)
654.  花戦さ 《ネタバレ》 
華道家元池坊に伝わるエピソードを題材にした原作の映画化である。自分は無粋なので花を愛でる習慣はないが、美というものが確かにそこにある、ということは映像から納得させられる。また千利休との関係を強調した物語のため、いわゆる三千家も製作に協力している。主人公が初めて利休を訪ねたときに突然泣き言を言い出したのは、映像では見えない作用を利休の茶が及ぼしたという表現のようで興味深かった。  原作はわりと淡白な感じの小説で、最後の勝負など本当にこれだけでよかったのか、という思いが残るものだったが、映画では序盤の岐阜城と終盤の前田邸の対応関係が明瞭で、庶民にできる最高度に強烈な反撃という印象も強まっていておおむね納得させられる。この場面では観客としても息を詰めるようにして見入ってしまい、その余韻は鑑賞後もしばらく後を引いた。また全体としてのメッセージも明快で、美と芸術家を賞揚するにとどまらず、秀吉含め全ての人それぞれの個を咲かそうとする物語になっている。素直にそう思えるだけの愛おしさが劇中人物には感じられた。 ほか秀吉との対比ということだろうが、美的なものへの関心の高さや批評精神など、京の町衆の文化水準の高さが表現されている。それは原作も同じだが、映画を見るとジョークのレベルも高かったようで感心した(少し古風で漫才風?)。  登場人物に関しては、序盤では主人公が変人すぎて呆れたが、終盤はそれらしい人物像に収まっていたようで悪くない。人を覚えられなくて苦労するのは個人的に共感できるので、茶室の場面では見ている方も泣き笑いになった。この主人公に寄り添う弟の人物像もいい。 また「れん」というのは原作にない人物だが、映画の飾りとしてのヒロインというだけでなく、掛け軸のサルなど見ても、父親を含めた形での存在意義がちゃんと付与されていたようで安心した。外見的には可愛らしいが(森川さん本当に可愛い)それだけでなく、最後には芸術家としての側面を含めた人物像も見えて来る。主人公がこの人の名を呼んで手に取った蓮の花が、本当にこの人らしく見えたのは感動的だった。 そのほか人懐こく笑う町娘はどこかで見たと思ったら、「湯を沸かすほどの熱い愛」の妹役(鮎子ここにあり)の伊東蒼(あおい)という人だった。子役も含めて役者揃いのように思われる。  結果としては小説を何となく映画化しただけのものでなく、単なる華道家元のPR映画でもなく、花がきれいだった、で終わりの映画でもなく、それ自体の存在意義をちゃんと主張する映画になっている。人に勧めるかは別として自分にとってはいい映画だった。
[映画館(邦画)] 8点(2017-06-03 22:49:26)(良:1票)
655.  好きっていいなよ。 《ネタバレ》 
原作がどうなっているのか知らないが、とりあえずこの映画に関してはエピソードを5個つないだ総集編のように見える。もともと孤立的だった主人公が、最初のエピソードで男と出会ったのをきっかけにして人間関係を広げていき、最後に最大の危機を乗り越えて題名の言葉に至る、という構成自体はまとまって見える。 しかし各エピソードが掘り下げ不足のように見え、形式論だけ述べて簡単に終わってしまう印象がある。また延々と自分語りをするとか登場人物同士で説教し合っているようなのがかなり変な感じで、恐らくは原作からの縛りがあったであろう不自然な台詞をそれなりにこなさなければならない役者の皆さんはご苦労様だった。  登場人物に関しては、主人公(ヒロイン)は特に好きになれなかったが、最後まで地味な顔に見えたのは方針として徹底している。主要人物で一番感じがよかったのがおっとりした友人で、胸がスイカかどうか関係なしに和むキャラクターだった。ほか男は基本的にどうでもいいわけだが、金髪の男はなかなかいい奴なのに最後まで独りだったのは不運を背負わされた感じで残念だ。 この映画で若年女子の皆さんがキュンキュンしたとすれば成功なのだろうが、ちなみに自分が少しキュンとしたのは「…考えどこなの」と言っていた役名なしの女子(ちゃんと高校生に見える)で、自分がこの高校にいたらこの人が好きになるだろうと思ったが、恐らく実際は高望みである(どうせおれなんか相手にしてもらえない)。ほかバイト先のお姉さんは感じのいい人で好きだ。なんでこんな映画を見ようとしたか自分でもわからなくなったが、見てしまったからには自分なりに見どころを探すということが重要だ。
[DVD(邦画)] 3点(2017-05-30 19:54:32)
656.  男子高校生の日常 《ネタバレ》 
題名からすると男しか出ていないようで見る気が薄れるが、実際見れば男女比が均衡しているので悪い印象はない。男は要はバカばっかりだが、くどくならないのでわりと気分よく見ていられる。女子の不敵な態度とか酷薄な感じも悪くなく、主人公の妹の強硬姿勢も見ていて心地いい。個別の台詞としては「温暖化そんな甘くないっつーの」という突き放した一言が個人的に好きだ。 男女それぞれ日常会話で騒ぐ場面が多く、話の内容自体に大した意味はないわけだが男女別の特徴は出ている。同じ監督の「私たちのハァハァ」(2015)も見たことがあるが、若い連中のわちゃわちゃ感のようなものを好む監督なのかも知れない。また原作由来かも知れないがギャグネタが可笑しいところもあり、登場人物の行動(演出)で失笑させられる場面も多い。物語の面では特に何だというほどのものはないが、年に一度の非日常のハレの日を何となく迎え、実はそれぞれ期待するところのあった男3人の思いが実を結ばず終わった侘しさと、明日からまた日常が戻って来るという諦念を残したラストに見えたのは悪くない。 登場人物に関しては、今回は目当ての女優が三浦透子さんと山谷花純さんの2人いたので個人的には豪華キャストだったが、ほかにコンビニのお姉さんにも目を引かれてしまったりする。また「チームしゃちほこ」の当時のメンバーが全員出ていたようで、劇中ではマイナー扱いだったが自分でさえグループ名だけは知っている。名乗り部分にものすごい脱力感を覚えるグループだった(ただし4年前)。 以上、人生への啓示を得られるようなものでは全くないが、自分としては単純に面白かった。これはけっこう好きだ。全国的に評判がよくないようだが悪い点はつけられない。  ちなみに中身と関係ないが、撮影に使った海の見える学校は静岡県沼津市の廃校ではないかと思うが、今回を含めて自分としてはここで撮った映画を3つ(または4つ)見たことがあり、その全部に前記の三浦透子さんが出ていたりする。近年かなり便利に使われているらしい。
[DVD(邦画)] 6点(2017-05-30 19:54:30)
657.  ソドムの市(2004) 《ネタバレ》 
ホラーという分類だが怖くはない。「発狂する唇」(1999)のようなものかと思っていたらそれほど酷くはなく、結果として因果応報の物悲しい物語が一応できていたようではある。しかしそれ自体に心を動かされるようなところは特になく、また個人的感覚としては、表層的なおふざけ感と根底のストーリー部分との内的整合を図るのが困難であり、互いに悪影響を及ぼしてしまって両方ともまともに受け取れない。冒頭からして美術・衣装関係とか年代設定がいかにもふざけた感じのため真面目に見る気が早々に失われ、以降は全て醒めた目で見てしまうので劇中提供される笑いにも素直に乗れず、結果として自分が笑ったのは2回だけだった。冗談めかして低予算なのをごまかす手法を開発しようとした印象もあるが、楽屋ネタのようなものが複数出ていたのは悪ノリの類でしかない。 なお舞台挨拶を見ていると、こんな映画でも女優はちゃんときれいな格好をして出て来るので感心した。出演者の話によれば、監督が映画美学校の授業の際、自分が権力者になったらつまらない映画を作った者は死刑にするというような話をしたそうで、そういうことが既に公開直後からネタにされていたようである。 ちなみに余談として、劇中出た「栃木国際銀行」は時事問題がらみと思われるが意図不明である。
[DVD(邦画)] 2点(2017-05-27 10:19:03)
658.  日野日出志のザ・ホラー 怪奇劇場 地獄小僧 《ネタバレ》 
日野日出志という漫画家の作品から、全6話を別々の監督が選んで映像化したうちの一つである。なお導入部は各話共通のものを使っているのでこの映画固有のものではない。 「監修」として高橋洋氏の名前が出ており、公開月日は前後するが「ソドムの市」(2004)と同路線のようでもある。ところどころにマンガそのものの表現を混ぜているのが特徴で、これは低予算なのを“もともとマンガだから”と開き直る手法かも知れないが、実写にマンガを入れればふざけた映画としか受け取れず、登場人物が真面目な顔をするほど茶番の印象が強くなる。茶番として作ったのならそれも一つの考えだろうが、少なくとも原作マンガはそれ自体としてまともに作られたものだったろうから、全部が全部ふざけた映画としてしか見られなくなるのはさすがに問題がある。最後はもうどうでもいいから早く終われという感じだった。 ちなみにこれを見たあと原作を読むと、原作にけっこう忠実にできていることはわかったが、だからといって上記の悪印象が薄れるわけでもない。また映画では、少年が元の(染谷将太の)姿に戻る際の法則性もよくわからなくなっていた。 まあひと昔以上前のものにいまさら何を言っても仕方ないわけだが、自分として一つだけ肯定できるのは、墓地(というか死体の埋却場)にあった風車状の設置物が、現実的な意味は不明ながらもこの場の性質を端的に表現したものとして受け取れることだった。要は雰囲気でごまかしているだけなわけだが。
[DVD(邦画)] 2点(2017-05-27 10:19:01)
659.  日野日出志のザ・ホラー 怪奇劇場 怪奇!死人少女 《ネタバレ》 
日野日出志というホラー漫画家の存在は知っていたが、絵柄が独特なこともあり、よほどのマニアが読むのだろうと思って以前は無関心だった。この映画はそれを映像的にリバイバルした形で、全6話を別々の監督が選んで映像化したうちの一つである。白石晃士監督といえば現在の邦画ホラー界では有名人だろうが、この時点ではまだそれほどの存在感はなかったものと思われる。  序盤は明らかに戦後期を意識した作りになっており、原作は1987年(昭和62年)の発表のはずだが映画は昭和30年代以前にも見える。大仰なショック音楽とともに題名が表示され、ドロドロしたバックの上にクレジットが出るのは昔の怪奇ドラマのようで笑ってしまう。その後もわざとらしく杭打ちの音や犬の遠吠えを入れてみたり、昔風の音楽が鳴り続けたりするのがユーモラスである。主人公が放浪を始めてからは少し冗長な気もしたが、ラストはまたあっけらかんとしてほのぼのとした印象になっており、別に大感動作というわけでもないが、最後に一応の救いを持たせてあるのは悪くない。 ちなみにこれを見たあと原作を読むと、オチの普遍性という意味では原作の方が上のような感じである。主人公をめぐる状況を殊更にシビアにしたのは映画独自のことで(監督の個性?)、原作の方は意外に穏健で良心的に見えた。  なお主演女優は制服姿が一応可愛らしいので、未来ある若手女優がこんな映画に出るべきでない、と言いたくなったが本人には特に不満はなかったらしい。メイキングを見ると、この女優と共演の森下能幸氏との関係性が可笑しい(先輩役者のはずだがなめ切っている)。
[DVD(邦画)] 5点(2017-05-27 10:18:57)
660.  ある戦争 《ネタバレ》 
アカデミー賞外国語映画賞の2015年(88回)ノミネート作品とのことで、日本でいえば「たそがれ清兵衛」(2002)と同格だが、個人的感覚ではこれの方が上である。出演者インタビューによれば、この映画の監督は「演技ではなく状況に反応する」ことを求めるのだそうで、「シージャック」(2012)に続いてドキュメンタリー調に見えるのもそれと関係あるかと思われる。また問題提起はするが答えを与えない監督(脚本家)とのことで、この映画も文字通りの“考えさせる”映画になっている。  内容としてはアフガニスタンで治安維持活動に従事するデンマーク軍部隊の隊長が、民間人の殺害容疑で裁判にかけられる話である。監督によれば、デンマークでは実際にそういうことが現地指揮官の心配事になっているらしい。 まず劇中では誰も明言していなかったが、爆撃の結果として攻撃が止んだのならその場に過激派がいたこと自体は明らかであり、誤って民間人だけを死なせたというわけではない。恐らく爆発物のエピソードのように民間人を盾にしていたと想像されるが、そういう状況で、いざというときに自国民(軍人)と外国人のどちらを優先するかの問題だったと思われる。劇中の検事(法務官)は、人類社会の正義を代表しているようでいて実は単なる手続論の話しかしておらず、存在確認さえすれば殺人ではないと言っていたのも同然である。また弁護人の立場は台詞に出ていた通りであって、どちらの主張にも絶対的な正当性は感じられない。判決がどうなるかは出演者にも知らされていなかったとのことで、自分としてはけっこう驚く結末だったが、判事が諸事情を勘案の上で妥当な結論を出したということなら尊重する必要がある。 ちなみに日本では、最後は国家が悪い軍隊が悪い戦争は嫌だと言えば済むことになっているが、デンマークほどの民主国家なら軍の派遣を決定したのは疑いなく国民自身の判断ということになるだろうから、そういう逃げ場はないことになる。国全体として劇中の妻/母のような立場を取るなら派遣などやめるという選択もありうるが、基本的には国際貢献としてあえて汚れ仕事を引き受けているという考え方だろうし、これに関してもデンマーク国民の判断を尊重するしかない。ただ、自分の国に関してそういう判断をするのは一国民としても確かに難しい。とりあえず南スーダンからはみな無事に帰って来られそうで幸いである。  なお、主人公に対する副隊長の批判的発言は自分としても非常に耳が痛いことで、これで主人公が自分に似たタイプの人間であることが知れてしまった。副隊長はそつなく賢い男だろうが主人公も悪い奴ではなく、一度は事実を認めようとしたことからも個人的には共感度の高い人物像だった。そもそも女性通訳にこの男の弱点を衝かせるような筋立ては卑怯だ。
[DVD(字幕)] 8点(2017-05-21 16:26:18)
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