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R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

●今週のレビュー
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661.  サイバーネット 《ネタバレ》 
後にハリウッドスターとなるようには見えないアンジェリーナ・ジョリーの若かりし容姿が拝める。当然ながらスターのオーラもセレブのオーラも無いが、学生には不似合いな独特の唇の形がどうにも色っぽい。ちなみに主人公を演じたジョニー・リー・ミラーはアンジーの最初の旦那だそうだ。お話はタイトルから想像できるとおりコンピューター関連なのだが、その筋に全く無知であってもじゅうぶん理解できる分り易いお話と分り易い表現となっている。ただし、ハッキングやゴミ箱ファイルのコピーやウィルスとかというサーバー内のアレコレを映像で表現してくれているのだが、この筋に全くの無知な私でもこの映像表現とその映像を元に戦う構図に安っぽさを感じてしまうのだがこの筋に詳しい人から見てどうなんだろう。天才的なコンピューターオタクが身近に集まりすぎという出来すぎな設定も作品を安っぽくしている。さらに片方が坂本龍一もどきの怪しい日本人二人組みが出てきて、そこから世界中のハッカーが攻撃参加するクライマックスへとなだれ込むところは子供向けヒーロー番組のノリ。その攻撃が実際にはどういったものなのかもよく解からないので大味な展開と攻撃を表現する映像にごまかされたような気がしてならないのだが・・。
[DVD(字幕)] 3点(2008-11-11 10:30:05)
662.  イーグル・アイ
シャイア・ラブーフは、いかにも厄介な事件に巻き込まれそうな顔をしている。同じ顔の兄がエリートだというのが想像しにくいくらいに。その困惑の表情が実に冴える。正体不明の何者かからの指示に従う男女の行動をその正体不明の何者かが援護してゆくという展開がまず繰り広げられる。D・J・カルーソー監督が以前に携わった『ニック・オブ・タイム』のようにタイムリミットを課しながら、同じくラブーフ主演、スピルバーグ製作総指揮の『トランスフォーマー』のように命を吹き込まれたかのような重機を使い、はたまた『ダイハード4.0』や『ミニミニ大作戦』(リメイク版)のように信号を自在に操りながら。スピード感はあるが反面、アクション(とくにカーアクション)はひどい。最近の流行らしい何かと何かがぶつかったり爆発したりするどアップの画面の短いカットの応酬の間に信号機やら重機が映し出されるのだが、その両者(何者かの操作とそのせいで起きる混乱)の因果関係を画面で見せずに想像で納得してもらうようなふざけたモンタージュに辟易。面白いのはどこにいようが監視されているという絶体絶命感。誰かの携帯電話、電光掲示板、カーナビを通して指示される展開にあり、そこに電車を止めたりドアにロックしたり、あらゆる機器を瞬時に使えるってのが面白さに拍車をかける。要するに面白いシチュエーションを見せてくれるが盛り上がるはずのアクションシーンで盛り上がれない作品。手垢のついた題材をもってアクションで盛り上がらなければキツイものがある。
[映画館(字幕)] 4点(2008-11-10 15:34:59)
663.  スニーカーズ 《ネタバレ》 
これけっこう好き。たしかに豪華キャストがその豪華さを全く発揮せずにいるのはもったいないようにも思えるが、豪華キャストだと思うからそうなるのであって、それぞれの役者たちはきっちりとそれぞれの役を魅力的に演じている。彼らのそれぞれの分野でのプロフェッショナルさをもっと大袈裟に見せてくれてもそれはそれで楽しいだろうが、抑え気味の中にもそれぞれの個性をちゃんと見せている。キャラ分けもストーリーの小さな抑揚に従事し、とりわけ盲目ゆえの音のプロが指南する音を頼りに場所を特定するシーンはなかなかに巧い展開。さらに盲人に車を運転させる痛快救出シーンもドラマを盛り上げる。ラストのそれぞれの希望の品を告げるシーンの告げられるジェームズ・アール・ジョーンズの顔がそこだけコメディになってて大いに笑えるのもいい。シリアスな場面でもう少し危機感を出してくれてたら傑作になり得た作品だと思う。
[DVD(字幕)] 6点(2008-11-07 16:20:49)
664.  黄金の七人
子供の頃によくテレビで見ました。で、去年(だったか?)レンタル屋に並んでるのを発見して久しぶりに見たのですが、『黄金の七人』というタイトルが私の中でどうやら一人歩きしていたらしく、もっと「七人」がかっこよく活躍するイメージになっちゃってたのでちょいと拍子抜け。でも無駄のない分り易い展開と貫かれる軽いタッチは老若男女に受け入れられる娯楽作なのだとあらためて思わされた。いかにも60年代のシャバダバ系音楽(これはなんというジャンルなんだろう?)とファッションが作品に色を染める。このお洒落さとヒロインの過剰にならない(ファッションは過剰だけど)お色気とコメディがうまくかみ合っている。
[DVD(字幕)] 6点(2008-11-06 11:47:30)
665.  御誂治郎吉格子
貴重なフィルムということらしいが全く古さを感じなかった。お話はありがちではあるんだけど場面の展開がスムーズというか・・、ある場所からある場所への移動シーンが端折られていて、そのうえサイレントにありがちな説明字幕も入れずにそれでも混乱させずに見せてしまうってのは相当に練られた脚本と編集の賜物なんじゃなかろうか。会話字幕も簡潔にして出すタイミングも出されている時間も適当に良く、こういうところでも映画のリズムを作っているんだろうかとすら思った。一階から二階に続く階段がまさに一階と二階のシーンをうまく繋ぎ合わせる。と同時に二階の部屋から出るにはその階段を使う以外は窓から出るしかないということを分りやすく提示してもいるのだが、その二階の窓から出るという状況をも何気に二階からの眺めを時折挟むことで観客に示唆しているのだ。と思う。そういう細やかな配慮があるからフィルムの劣化を超えて映画を楽しめるのだと思う。
[映画館(邦画)] 7点(2008-11-05 17:26:34)
666.  ルパン三世 カリオストロの城
大人になって見直したことはないのだが、見る度に心底楽しんだことは間違いなく覚えている。もしモンキー・パンチの漫画しか知らずにこれを見たら戸惑いもしただろうが、宮崎ルパンはテレビで何度も見ているのでじゅうぶん受け入れられる。そもそもテレビアニメの後期ルパン(赤いジャケットのやつ)よりも初期の宮崎ルパンが好きだったし。というか後期のはパッチリ目の峰不二子がイヤだった。ただ、この作品のルパンは同じ宮崎ルパンであってもテレビ版よりも遥かに優しくて大人。だらしなさやスケベな面にこそキャラクターの面白さが現れていたテレビ版とは打って変わる。そこに「ルパン三世」としては物足りないものを感じるわけだが、言い換えればすでに培われたキャラクターに頼ることなく面白いものを作り上げたともいえる。実際この映画の面白さはルパンや次元や五右ヱ門のキャラにあるのではなくアクションシーンにある(クラリスは例外)。このアクションの一つ一つが心底楽しいのだ。ラストの銭形のセリフには感動しないどころか気持ち悪いとさえ思ったのだが、それはやっぱりテレビ版との違和感がそう思わせたのだろう。それでもあえてそうすることで1本の完結した映画として昇華させているのだと思う。
[ビデオ(字幕)] 7点(2008-11-04 17:25:15)
667.  犬猫
どこにでもありそうなストーリーのうえに心に響くとか画に圧倒されるとか全く無いのになぜか満足感を得ることができる映画。動かないカメラの前を犬とともに横切る女。同じ構図で横切れない女。同じことをやらされて、でも全然同じにならない二人の差異を面白おかしく見せるこのような古典的にしてシンプルな構成で作品は覆われている。この作品は純粋なまでに映画であろうとする映画である。映画とは関係の薄いところから抑揚を取り入れれば万人受けもするだろうに。しかしそこに映画はこうじゃなければいけないといったような「頑なさ」というものはあまり見えない。監督にはあるかもしれないけど見えない。それがかえって作風にもマッチしていていい。
[DVD(字幕)] 7点(2008-10-31 13:46:42)
668.  子猫をお願い 《ネタバレ》 
今どきの若者たちのコミュニケーションの手段として必須アイテムである携帯電話が映画でも重要な役回りを持っている。ケイタイは5人の女の子それぞれがそれぞれに連絡を取る手段として頻繁に登場するが、5人の繋がりを強固にするものではなく、むしろ繋がりを希薄にするものとして登場している。いつでも連絡が取れるという便利さに甘える一方で、無いと繋がりを持続できないという不安を生むケイタイ。かかってきた相手によって電話に出る出ないを決めることができ、コミュニケーションというにはほど遠い独りよがりなものとなる。目の前に友人がいても誰かからの電話に邪魔される。そこに実際に会わなければ渡せない「子猫」を介すことで正常なコミュニケーションを模索しているのかもしれないと思った。5人組の中の3人の物語なんだけど残りの二人、つまり双子が異質な存在感を噴出しているのだが、この双子がいなければ作品の仕上がりが暗くて重いものになっていたと思う。そのうえ双子は単なる「お笑い」担当ではなく、実は深いところで重要な役回りを演じていたのかもしれない。中国系であるとか、家庭の事情の複雑さとか、そのせいで5人の中でこの双子だけが家庭から独立した存在でいることとか、最後に猫を回収し解き放ってやる役回りであることとか、なんか意味があるんだろうな。
[DVD(字幕)] 6点(2008-10-30 13:18:49)
669.  キャット・ピープル(1942) 《ネタバレ》 
狼男の女版みたいなもんだが、ホラーというよりサイコサスペンス寄り。女が実は豹に変身するキャット・ピープルなのだということを取っ払っても、一人の女のトラウマを抱えた恋愛悲劇として成立するところに面白さがある。言い伝えられるモンスターというのは案外こういったトラウマや恐怖心から生み出されることが多く、この作品はそれを逆手に取ったようなカタチとなっている。直接的な恐怖シーンが一切無いのはこの時代なら当然の制限に従ったに過ぎないのだろうけど、だからこそ昔の映画の表現にはさまざまな試行錯誤と創意工夫がみてとれるのが面白い。(鑑賞環境は覚えてないけど、たぶんビデオかな)
[ビデオ(字幕)] 7点(2008-10-29 12:56:21)
670.  こま撮りえいが こまねこ 《ネタバレ》 
こま撮りとは思えないスムースな動きに驚いた。映画内映画がはっきりとこま撮りなので余計にそう感じたのかもしれない。光も室内と屋外の差はもちろんのこと、朝と昼にも差がちゃんとあるし、光の当て方でこまちゃんをより立体的にも見せている。こまちゃんのおじいさんはどうやら映画監督だったらしくおうちには猫型オスカー像がありました。映画ポスターも貼ってあったんだけど、じっくり見たいなあ。物足りない点はマジメに子供向けなのはいいんですが、ちょっと毒がなさすぎってところ。こまちゃん、純粋すぎ。その中でラジ坊とカラスの対決に見るラジ坊の良い子を装った策略の毒気がなかなか良い。子供はこうじゃなくっちゃ。
[映画館(邦画)] 6点(2008-10-28 13:12:27)(良:1票)
671.  こねこ 《ネタバレ》 
最近、生後約1ヶ月の子猫を拾って飼いだしました。そんなときに観たもんだからたまりません。めちゃくちゃかわいいです。寝ていると足の指を噛まれたり、初めてのおトイレに拍手したり、棚に置いてあるあらゆる物を落とされたり、いちいちウチのかわいいかわいい子猫ちゃんと同じ。猫好きの義父が猫をして「神の作ったもののなかの最高傑作」と言っていたが、たしかにこの可愛さを目の当たりにすれば納得のお言葉。トラックの幌の上に乗ったまま寒空の中を遠くはなれた場所まで運ばれてゆくのだが、このときのあきらかな合成にはショボさよりも愛を感じる。大人の猫たちが人間顔負けの演技をするのは、まあわかるのだが、主人公の子猫ちゃんの危なっかしい素振りは演技じゃないから出せる本能を刺激するかわいさが充満している。ラストも感動的です。お父さんが音楽家であることがラストシーンへの伏線としてちゃんと活かされている。これはたぶん猫好きじゃなくても楽しめますよ。
[映画館(字幕)] 7点(2008-10-27 13:53:32)
672.  大いなる幻影(1999) 《ネタバレ》 
『ニンゲン合格』同様に、生きることの根源としてある自己の存在価値についての葛藤が描かれているのだと思う。女はカーテンで隠された郵便窓口で働く。外部との接触を阻まれた世界で外部との接触を切望しているふうでもある。彼女の地図に日本は存在しない。自分が今いる場所において自らの存在を確立できずにいる。男は対人関係のわずらわしさから逃れるためにあえて自ら存在を希薄にしてゆく。この世界に存在すること自体に苛立ちを持ちはじめる。そして本当に体が透き通ってゆくのだ。恋人たちが公園で遊ぶ。男と女のあいだをボールが行き来する。ボールを通してそれぞれの存在を確認することで女は喜び男は苛立つ。そういった構図はなんとなく理解できるのだが、なんとなく意味ありげなシーンに埋め尽くされた映画は大きな展開があるのかないのかすらよく分からないままに淡々と静かに過ぎ去ってゆく。ちょっと厄介な映画。これもまたずいぶん前に観たものだが、再見の意欲が湧かずにいる。観たら観たで何か発見できるかもしれないのだが。ラストは唯一大きな展開を見せてくれるので安堵と混同した感動がある。郵便窓口の境界線を突き破って女は自らの位置(存在)を確立する。男は存在を消してしまったにもかかわらず存在を消した状態ごと女が受け入れたために存在を消した男として存在するという存在証明を手にする。書くとややこしいな。まあ、どうとでもとれる映画でもある。
[ビデオ(邦画)] 6点(2008-10-24 16:39:04)
673.  ニンゲン合格
自らがこの世界に存在する意味や価値を問う。『大いなる幻影』『叫』そして『トウキョウソナタ』へと繋がるテーマの源流がここにある。あるいは『アカルイミライ』を経て『トウキョウソナタ』に結実する「家族」という特別な人間関係の本質が描かれる最初の作品でもある。その方法として黒沢清は主人公を10年間眠らせる。10年間存在を消す。10年間家族からひとつのピースを削る。家族の見た目の崩壊と再生が繰り返されることで最初から崩壊も再生もしていないことが露呈されてゆく。黒沢清が描く現代の家族はフォードや小津の映画のような父が守り続ける家族とは対称の位置にある。しかしその悲しい現実を黒沢映画は深く受け入れる。深く受け入れたところから今を描く傑作が生まれるのだ。「オレ、存在した?」この直接的な問いかけが心に染みる。この場合、問いかけというより確認かもしれない。ちゃんと存在したことを確認できた者はそれだけで人間として合格なのだ。
[ビデオ(邦画)] 7点(2008-10-23 15:28:38)
674.  蜘蛛の瞳
『蛇の道』は一目でとんでもない傑作を見てしまったという感慨に襲われたが、この、『蛇の道』とは別個の話でありながら姉妹品のような位置を持つ『蜘蛛の瞳』にはただひたすら戸惑うのみであった。北野武映画の常連が占めていることもあってかどうも北野映画の模倣のような印象があって、しかも微妙にはずしている。違和感という言葉がしっくりくる。この作品を観てからずいぶん経つが、この違和感がどうにも気になってしょうがなく、いつのまにかこの違和感こそがこの作品の魅力なんじゃないかと思うようになってきた。違和感の最たるシーンが哀川翔と菅田俊の追いかけっこなのだが、「追いかけっこ」という躍動する動きを全く無視して、追いかけっこする二人が黒い点になるくらいの超ロングで撮っている。通常ではありえない撮り方。そういえばその後の『カリスマ』『ドッペルゲンガー』でも型にはまらない、というよりあえて型に合わない演出をしてみせている(『ドッペルゲンガー』のレビューにも以前書きましたが)。これは映画はこう作らなきゃいけないという間違ったルールへの反抗なのか。とにかくところどころのこういった違和感、あるいは破綻がオリジナリティへと変貌し、独自の魅力を発散している。菅田俊が化石を「一度死んだものが別のものとなって生きる」と評する。ここは『蛇の道』で描いた死者が別の場所で生者となることに通じている。そして黒沢清が描き続ける「幽霊」のとらえ方が表れている。
[ビデオ(邦画)] 7点(2008-10-22 13:54:23)
675.  スウィートホーム(1989)
『ポルターガイスト』が82年だから、これはやっぱりショボイです。でも体の切り口だとか溶け具合だとかのグロさは今流行りの血しぶきが大袈裟な低予算スプラッターと比べても引けをとらない大袈裟スプラッターぶりを見せてくれるうえに、湯気があがる肉塊のおどろおどろしさは他に類を見ないインパクトを持っている。当時は『タンポポ』『マルサの女』と立て続けにヒットを飛ばす伊丹十三がホラーを作ったみたいな宣伝だったと記憶してます。レベッカのNOKKOや古舘伊知郎といった異色のキャスティングもさすがは従来の邦画にはなかったエンターテインメントを作り出す伊丹十三だと感心したものでした。でもあらためて(それでも数年前ですが)観てみると、商品としての価値をあげる伊丹の演出と作品の中でのホラー演出とが妙にチグハグしている印象を残しているような気がします。風に揺れる影の演出はなるほど黒沢清だと思った。ラストのファンタジーな展開はかなり浮いている。そしてそこが一番ショボイ。怖いけどムリヤリな感動が邪魔をしている。
[ビデオ(邦画)] 4点(2008-10-21 14:16:31)
676.  トウキョウソナタ 《ネタバレ》 
黒沢清は目に見えぬものを見えたかもしれないと思わせてしまう。それはホラーというジャンルにおいてじゅうぶん発揮されてきた。しかし『アカルイミライ』という傑作がホラー以外でもその力を発揮できることを証明してみせた。だから黒沢清の非ホラー映画を心待ちにしていた。この待ちに待った黒沢清の新作が傑作であることは当然なのだという、作品にとっては非常に酷な期待を持って観たのだが、全く期待は裏切られることなく、そして期待を裏切られないということがこんなにも幸せなことなのかと感動した。『トウキョウソナタ』に登場する家族のそれぞれは、これまでの黒沢映画が描いてきた人物同様に、自らの存在価値を見出せずにもがいている。この世界に自分は必要なのか。この家族に自分は必要なのか。「お母さん役もそんなにいやな事ばかりじゃないよ」と小泉今日子が演じる佐々木恵が言う。そこに「お母さん役の人」はいるが「佐々木恵」という個人はいない。お母さんでいることから外に出て何かを見る。真っ暗な夜の海辺にオレンジの薄明かりに照らされる小泉今日子の顔が映し出された瞬間に、あぁ黒沢清の映画だぁと何かがこみ上げてくる。圧巻はラストにも訪れる。希望という目に見えないものが間違いなく映されるのだ。ドビュッシーの「月の光」を主人公である少年が奏でる。その美しく優しい音色と少年を照らす光と決定的なカーテンのゆれ。このカーテンのゆれはゾクゾクっとした。神懸かっている。神懸かっているにもかかわらず、それはやっぱり当然なのだ。なぜならこれは黒沢清の映画なんだから。
[映画館(邦画)] 9点(2008-10-20 18:28:56)(良:2票)
677.  バットマン(1966) 《ネタバレ》 
ジョーカー、ペンギン、リドラー、キャットウーマンが手を組んだ。史上最強の敵を迎え撃つバットマンとロビンがお馴染みの歌に乗って颯爽とバットモービルで出動!単に演出がヘタクソなのかそれともギャグなのか判断しかねる微妙なラインを攻めてくる。セットも小道具もチープなのかギャグなのか判断しかねる微妙なラインを攻めてくる。バット梯子って・・(笑)しかも「BAT RADDER」って書いてあるだけのただの梯子なんですけど。でもみんな一生懸命に戦っている。ラストも意味なくビルの窓から帰るのだが、ロープ垂らして降りてゆくなら(しかもゆっくりと)普通に玄関から帰ればいいんじゃ・・・(笑)。いや~、脱力系バットマン。和ませてもらいました。
[DVD(字幕)] 5点(2008-10-17 15:16:06)(笑:1票)
678.  バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲 《ネタバレ》 
バットマンよりも敵キャラが濃いほうが面白いというのはジョーカーやペンギンが証明してくれたわけだが、今回のMr.フリーズは一見存在感がバットマンを超えているようで、前作「フォーエヴァー」のトゥー・フェイスやリドラー同様にキャラクターよりもそれを演じる俳優の濃さが勝ってしまっており、シュワはシュワ自身の個性が強すぎるにすぎない。ようするに有名どころに敵キャラを演じてもらうことを売りにして、実際その有名どころが出てますよというのがわかりやすく提示されている映画。マンガチックな世界観はそれはそれでいい味出してるのに、こういう映画から遠く離れたサービスは、モンローはモンローじゃなきゃいけない、ボギーはボギーじゃなきゃいけないという時代じゃないんだから止めてほしい。バットガールも中途半端。コスチュームさえあれば誰でもなれちゃうってのは別にいいが、出るなら出るで、もっと活躍してほしい。まあでもロビンを含めた3バカトリオ・・じゃなくてヒーローたちのヒーローらしくない行動はそれなりに面白い。3人がそれぞれの大袈裟な乗り物で登場するシーンのバカバカしさはけっこう好き。
[DVD(字幕)] 5点(2008-10-16 15:20:22)
679.  ダークナイト(2008) 《ネタバレ》 
冒頭の銀行強盗シーンで一気に引きつけられた。まるで『ヒート』の冒頭部のようにこれ以上ない「つかみ」にやられた。前作はバットマンに現実味を帯びさせたゆえのつまらなさがあったのに、この作品はなぜかかっこいい。前作のレビューにバットマンのプロットを借りた別の物語だと思えばそれなりに云々と書いたが、今作はまぎれもなくバットマンのプロットを借りた犯罪映画だ。だから面白いのだ。アクションシーンは前作同様に何がなんだかなのだが、アクションシーン自体が少ないのでそれほど気にならない。それでも前作が最初から最後まで「正義とは」を語るだけだったように、今作もまた「正義とは」が語られ、バットマンの対称としてジョーカーを位置づけることでそもそも「正義」の必要性への疑問まで持ち出してくる。犯罪が蔓延った世界に均衡をもたらすために犯罪者に恐怖をもたらすバットマンがいる。バットマンがいる世界に均衡をもたらすためにジョーカーがいる。そして均衡を得るために少しずつ歪んでいった世界に真の均衡をもたらすのがカタチとして存在しない希望の光。という話。結局、終始説明の映画であることに段々と苛立ってはくる。ここにこの映画に対するイヤな、それでいて大きなしこりのようなものを感じる。あーだこーだ言ってないで犯罪映画を楽しませろよと思うのだ。このあーだこーだはおそらく次回作に引き継がれるのだろう。
[映画館(字幕)] 6点(2008-10-15 14:51:57)(良:2票)
680.  バットマン ビギンズ
二次元的でシュールでダークな世界観で描かれたティム・バートン版。その世界観に色鮮やか且つ安っぽい光を取り入れてマンガチックさを増幅させたジョエル・シューマカー版。クリストファー・ノーランは先の監督のような創意工夫を全くせずに、時流に乗ってひたすら現実味を帯びたバットマンを見せる。バットマンのプロットを借りた別の物語だと思えばそれもアリだとは思う。しかしである。最近、「フェアリーテイル・シアター」なる米テレビドラマが劇場公開されてて、バートンとコッポラの作品を続けて観て、二次元的なバートンはそれなりに魅力的だが、奥行きをしっかりと見せるコッポラのほうがいいと単純に思ったものだが、ノーランのバットマンはあえて二次元的なバートンよりも奥行きが感じられない。しかも内容は最初から最後まで延々と説明である。「ビギンズ」とか「ライジング」とかってのは作品の性質上往々にして説明が支配してしまうものなのだろうが、この作品はバットマンの成り立ちを説明するに留まらず、というかさらにしつこく「正義とは」というテーマを説明する。いろんな人が画面に登場しては各々の正義を語る。まさか観客に「真の正義」とやらを問いかけているのか?そんなこたぁパンフレットの中で語ってくれ。そのまえに何やってんのかよく見えない「なんとなく戦っている」シーンをちゃんと「戦っている」シーンにしてくれ。
[DVD(字幕)] 3点(2008-10-14 15:10:29)(良:2票)
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