681. 溝の中の月
《ネタバレ》 ベネックスは、果たしてどういう人なのだろう? オタクな「ディーバ」と過激な「ベティブルー」の間に製作された興味深い一本。 この映画では、危ういところで何とか正気を保っている。 二人の女性の間で揺れ、迷路にさまよいこむジェラールデパルテゥ。 怪しい魅力を放つのは、当時のアイドルスター、ナスターシャキンスキー。 エンディングの曲が何もかも表してる。 音楽とは言えない程、破たんした曲から、まっとうな曲へと変わっていく様が この主人公の、気持ちのありようを表してる。 ベネックスは、真っ当な人ではなかろうか? ますます興味深くなってきた。 今日は、このまま「ベティブルー」を再見することにしよう。 [ビデオ(字幕)] 7点(2018-07-21 02:39:16) |
682. パーマネント野ばら
《ネタバレ》 死のにおいのする映画だ。 都会は、その圧倒的にぎやかな情報群で、人の死に鈍感である。 しかし、地方は誰それの死は情報的に大きな話題性を持つ。 それ故、地方の方が「死」のにおいが漂う。 ただでさえ、有望な若者は地方を離れ、都会に行っている。 その置いてきぼり感と、寂しさで、地方の人間は過激になる。 この映画は、そんな地方の漁村の話である。 菅野美穂、小池栄子、池脇千鶴、夏木マリ、4人の名女優が話を彩る。 後半の菅野美穂のエピソードが強烈だ。 一番しっかりしてそうな彼女が、一番弱かった。 観終わって、死と隣り合わせででも生きていこうとする人たちの健気さが胸をうった。 [DVD(邦画)] 7点(2018-07-14 20:59:59)(良:1票) |
683. クヒオ大佐
《ネタバレ》 いや~、吉田大八監督作品はツボにはまる。 彼の最初の作品「腑抜けどもよ~」も観て、興奮のあまり、すぐDVD買っちゃったし・・ 結婚詐欺の軍人もどきの話なんだけど、吉田監督は「紙の月」でもそうだったけど、 簡単に裁かないんだよね。 庶民が悪に手を染める話なんだけど、その人の世界観を壊してしまうような 裁き方をしないところが、この監督のやさしいところ。 僕は、そういう監督の演出がとても大好きだ。 ラストの軍がやってきて、彼が命令を下すあたりの夢の部分がとても大好き。 吉田監督作品は、これからも目が離せない! [DVD(邦画)] 8点(2018-07-14 17:17:55) |
684. 私の男(2013)
《ネタバレ》 う~ん、ラストが消化不良の感もしないではない。 あの二人の孤独な魂の癒しのラストではない。 浅野さんのどうにもたまらない気持ちで映画は終わる。 あのような災害の結果、こんな二人ができたのだから、 ここでは思い切って、神への思いなども出すと、癒しのラストに行けたのではないか? 熊切監督は「海炭市叙景」でもそうだったが、こんな人たちいますよ、というとこで 映画を終えてしまう。 やはり観ている側としては、二人に罪がないのであれば、さらにその先の、救い(浄化)のラストが観たかった。 地方都市には、カッとなり見境もなくなる人間をほったらかしてますよ、というとこだろうか? [DVD(邦画)] 7点(2018-07-14 14:37:33) |
685. バーディ
《ネタバレ》 「フェーム」のアランパーカー、有名な今作を鑑賞。 若者の瑞々しい感性は「フェーム」、現実に押しつぶされそうな痛々しさは「ミッドナイトエクスプレス」。 鳥の目線で翔んでいく映像体験は、音楽系監督ならではのもの。 そしてニューシネマに有りがちな鬱っぽいラストじゃ「ない」ところが、「スヌーピー」を生んだアメリカらしいオチ。 精神を「病んでる」人のあっけらかんとしたところの描写が巧い! それにしても・・親より、友人が付きっきりなんだね(笑) [ビデオ(字幕)] 8点(2018-07-12 01:33:46) |
686. アキレスと亀
《ネタバレ》 アートは、一体、人生かけてやるほどのものか? この映画ののなか、一番の悪は、画商である。 人生かけて作品つくっている作家に、商売上のアドバイスを 軽い気持ちで送ったりする。 あの少年が、いい師匠に出会わなかったのも、不運である。 これはコメディなんだから、と言えない、色々考えさせられる武の映画である。 たけしさんが、テレビのバラエティで体張って、笑いをとっていたのも、 どこかでアートとつながるものを、笑いに見出そうとしていたからだろう。 でも、最後の字幕の文字の、文字とは言えない文字には、笑った。 [DVD(邦画)] 7点(2018-07-11 15:39:59) |
687. あの夏、いちばん静かな海。
《ネタバレ》 たけしさんの暴力映画とは違う、もう一つの側面。 「菊次郎の夏」や「キッズリターン」と同じ感じの映画。 サーフィンを扱っているが、ホイチョイプロが手がける映画などとは違った、 都会の地元民の静かなテンポの映画だ。 地方からやってくる賑やかな連中とは違う、地元映画の味わいがある。 そして、主人公が華やかな仕事についてないとこなど、明らかにたけしさんの 東京が発信する文化に対抗している、骨のある映画になっている。 さらに洗練された久石譲の音楽が、羨ましい仕上がりにしている。 素敵な映画。 (後記) この映画の前年、桑田佳祐の映画「稲村ジェーン」に対して、たけしが「稲村~」に対して評論している。 そしてたけしは、その桑田への具体的な指摘を、本作を創ることで反論してみせたのだ。 桑田もこれに対して、もう一本映画を創ると宣戦布告している。だが、これは実現しなかった。 惜しむらくは、このバトルを後世の人間が確かめたく、「稲村ジェーン」を観ようとしても、 高額なVHSを購入するしかないのである。是非、「稲村ジェーン」のDVD化を! [ビデオ(邦画)] 7点(2018-07-08 22:01:09) |
688. アウトレイジ 最終章
《ネタバレ》 う~ん、前2作は好きだったが・・ やはり大友の最期は自殺じゃないと思う。 例えば、唯一気を許した女とどこかに消えるとか、或いはその女に殺されるとか、そんなラストであって欲しかった。 おいらは高倉健と違うって言われそう。 う~ん、アウトレイジって、女性出てこないもんね。 川上麻衣子とか出せば良かったのに・・・ でも、そうなるとアウトレイジではなくなっちゃうんだよね~。 無理に最終章、創んなくて良かったんでわ。 [DVD(邦画)] 6点(2018-07-07 23:02:18) |
689. 彼女がその名を知らない鳥たち
《ネタバレ》 いやぁ、前半と後半では全く観方の変わるミステリー。 前知識なく観てたので、これがただのラブストーリーではないと気づいたときの 衝撃。久々のどんでん返し。 ちょっと生命力の弱そうな女性を蒼井ゆうが好演してる。 そして、怪しげな、でも愛すべき男性を阿部サダヲがまたいい演技してる。 もう阿部サダヲには負けたよ。 彼の純情さに、最後はもう涙腺開きっぱなし。 好青年の竹ノ内豊のクズっぶりが、新鮮だった。 [DVD(邦画)] 8点(2018-07-07 17:31:05) |
690. アルジェの戦い
《ネタバレ》 アルジェリアの独立に至る経緯を描いたドキュメンタリー風である。 非常に映像的にも見やすく、見応えのある場面で構成されている。 がしかし、何と何の対立で、という説明があまりにもされておらず、白紙のままで見ると、 ちょっとついていけない場面もある。 あの居酒屋でのテロは、ヨーロッパ居住区でおこなったのであろうか? 検問をくぐりぬけたから、恐らくそうだろう。 平和ボケの日本にいるためか、ピンと来なかった。 映画の途中で史実を確認して観ると、すっきり来た。 英雄(?FLNのやり方にはちょっとついていけないとこもあったが)アリの爆死を 国民が見守り、静かな怒りとなり、ラストの大暴動へとつながる。 本作はコスタガブラスや「無防備都市」などのような政治スリラーである。 見応えある一本。 [DVD(字幕)] 8点(2018-06-30 23:39:46) |
691. 星のない男
《ネタバレ》 カークダグラスが、星のない、憎めないがイマイチ「男」として物足りない人物を 好演している。 まるで「OK牧場の決斗」のドクホリディの若いころを描いたような映画。 無名の作品だが、このサイトで高得点なので鑑賞。 前のレビュワーさんが的確なコメントを寄せてますね。 高得点を与えるだけの思い入れの強い作品だったんでしょうね。 僕も観て、色々考えさせられました。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-30 23:36:40) |
692. 紙の月
《ネタバレ》 銀行員の横領ってよくニュースで見るけど、痴情のもつれとかそういうのではなく、 正面切って、これをテーマにした日本映画は初めてではないか? 確かに一万円稼ぐのがどれだけ大変かを知らずに、毎日何十万、何百万の金を扱ってたら、 そりゃどこかでマヒしそうな気もする。 しかも彼女には子どもの頃の親から金を盗んで、貧しい子に寄付をして、そこに充実感を覚えてた 過去がある。 一旦火がつくと、止まらない。 犯罪をしてる時に、ウキウキするBGMが流れるのは、彼女が生きている実感を感じていたからだろう。 ラスト、ガラスを割って逃げるところに、自分を解き放ったすがすがしさが画面にほとばしってた。 彼女がどうなるかは、神のみぞ知る、か・・ [DVD(邦画)] 7点(2018-06-30 14:15:54)(良:2票) |
693. ミステリー・トレイン
《ネタバレ》 いや、俺もそう思う。 異郷の地で聞く、真夜中の暴走族のバイクの音や夜行列車の音。 あれはどこに行くんだろう? ジャームッシュの「ミステリートレイン」のタイトル通り、まさにミステリーだ。 夜行列車から見る風景にも似て、寂しい心に突き刺さる。 ワインを一本空けて、観たからか、ジャームッシュの演出は笑いのツボにはまった。 ジャームッシュは酔わずに酔う、酒仙のような映画だ。 彼の映画のテンポが、酔った時の感覚に近いのに気づいたのは、発見だった。 永瀬くんのジャームッシュ映画の初登板。 「パターソン」を観て、時間の経過をしみじみ思う。 それにしてもジャームッシュはロードムービーの、まさに孤独の詩人だ。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-24 21:55:40) |
694. 花様年華
《ネタバレ》 ウォンカーウォイは目のつけどころが面白い。 この人のもつ「映画らしさ」がとてもユニーク。 共に伴侶に裏切られた男女の微妙な関係を、センスある音楽とともに描く。 「花様年華」という言葉は、満開の花のように、成熟した女性が、一番輝いてる時、のことらしい。 つまり、タイトルからして、マギーチャンを描いた映画なのだ。 難攻不落の女性が、ふと心がゆらぐ瞬間を描きたいがために、一本の映画を創っちゃうカーウォイの「映画らしさ」が興味深い。 不倫映画といえば、デニーロの「恋に落ちて」が僕なんかすぐ浮かぶ。 でもこっちの映画は、最後男性が彷徨い(さまよい)人になっちゃうとこが、そしてその役者が トニーレオンだというとこが、なんか説得力あって、面白い。 う~ん、カーウォイ面白いな。 [ビデオ(字幕)] 7点(2018-06-24 20:56:55) |
695. ブエノスアイレス
《ネタバレ》 う~ん、ウォンカーウォイの映画は、好き嫌いあるなぁ。 「恋する惑星」は好きだが、「天使の涙」は嫌いとか・・ 「花様年華」は好きだが、「ブエノスアイレス」は嫌いとか・・ 今作は「スプリングフィーバー」を思い出した。 中国発同性愛映画。 でもあれだね、「スプリング~」は女性に抱かれた途端、見えてる世界が輝くのに対し、 この映画はほとんど女性が出てこない。 女性の出てこない映像には、綺麗なものは感じられないなぁ。 いかにイグアスの滝や地球の果ての映像にイカシタ音楽が被さってても・・ でもカーウォイのセンスの秘密が分かった気もする。 [ビデオ(字幕)] 6点(2018-06-24 20:55:11) |
696. パラダイス・アレイ
《ネタバレ》 レスラー映画って少ないんですよね。 ミッキーロークの「レスラー」とか「カリフォルニアドールズ」とか・・ それを「ロッキー」のスタローンが監督。 同じく下町風で、いい塩梅に仕上がってる。 しかもスタローンは、強い弟の美味しい役はやらず、 ちょっと調子のいい次男役を好演。 これが後で効いてくる。 下町の苦さを一番味わう役どころ。 今までの敵役レスラーと酔っぱらうシーンは名場面でしょう。 派手さはないけど、中々の佳作です。 [DVD(字幕)] 7点(2018-06-23 19:18:02) |
697. バリー・シール/アメリカをはめた男
《ネタバレ》 アメリカにはめられた男? 密輸王ってどんなに悪かと思ったら、はめられてキングになっちゃった話だった。 こわ~(;゚Д゚) [DVD(字幕)] 6点(2018-06-18 00:00:50) |
698. のぼうの城
《ネタバレ》 面白かった。 「忍びの国」で気になった和田竜の原作である。 本作ともども負けはするが、ただでは負けぬ戦模様を題材にすると、とてもいい話を練り上げてくる人のようだ。 のぼうの城側の配役がいい。 のぼうには野村萬斎しか考えられない。 歴戦の勇者は佐藤浩市にふさわしい。平成の三船敏郎といった貫禄がある。 そして山口智充が実にいい。時代劇をやるために生まれてきたような風貌だ。今後の出演作が楽しみだ。 先に本城が落ちて、開城をさせられるラストが、いかにも史実らしくていい。 今後も和田竜時代劇はチェックだな。 [DVD(邦画)] 7点(2018-06-16 15:31:01) |
699. パターソン
《ネタバレ》 ジャームッシュが好きだ。 彼がいるから、また生きていける、そういう感じだ。 彼の映画がまた観られるから、また生きていけるとも言える。 もの言わぬ隣人のような映画だ。 あの「事件」が起きて、最後、永瀬正敏が天使のように現れるとこなんか 最高だ。 また好きな映画ができた。 今宵はジャームッシュの昔の作品でも観てみるか、という気持ちになった。 [DVD(字幕)] 8点(2018-06-09 22:11:32)(良:2票) |
700. 三度目の殺人
《ネタバレ》 面白かったし、興味深いテーマではある。 しかし、あんな風に事務的に死刑が決まるような描き方してていいの~!? 法廷劇の名手シドニールメットですら、ここまで法廷を侮辱した展開はしてないよ~!? ラストもやもやが残るようにしたのは演出なんだろうな。 タイトルの意味も成程とは思うものの、ドキュメンタリー出身だからだろうなぁ・・ 本作品の公権力に対する描き方にはちょっと退いてしまう・・ 是枝監督作品は家族ものが好きだなぁ・・ この分野(法のあり方とか)の問題意識には、下手にドラマに組み込むのではなく、 ちゃんとしたドキュメンタリーで観たい。 じゃないと鑑賞後の世界の見え方が一変したよ? それが狙い(苦笑)? [DVD(邦画)] 7点(2018-06-09 22:09:44) |