701. アウトブレイク
《ネタバレ》 ウイルスやら怪獣やらをやっつけるために軍が町ごと消しちゃうってのはもうお決まりのパターンとして登場するのだが、この作品の公開当時ではお決まりというほどではなかったし、いきなり冒頭部で前触れ無しにアフリカの村を焼き尽くすというシーンを持ってきて観客に軍の非情っぷりを見せつけているのが功を奏し、なかなかどうして、ドキドキと楽しませてくれる。ご都合主義に走るのはハリウッドのお約束なんだし別にいいのだが、でもたしかにこの終盤の展開はちょいとやりすぎ。山に放した野生の猿が早々に見つかるのもアレだが、その前に宿主が猿だと判明する過程がご都合主義に過ぎる。ムリヤリな見せ場としてのヘリの攻防戦はまあいい、というかけっこう気に入っている。爆撃の阻止と指揮官拘束というご都合主義は許せる、というかむしろ天晴れ。 [DVD(字幕)] 6点(2008-09-10 14:50:59) |
702. アイ・アム・レジェンド
《ネタバレ》 『28日後... 』がゾンビではなく未知のウイルス感染者であったことを現実的に語ったように、この作品は吸血鬼ではなく未知のウイルス感染者であることを現実的に語る。辻褄を合わせることを要求する観客に映画が応えようとすればするほど映画は窮屈で面白くなくなってゆく。しかし『アイ・アム・レジェンド』は主人公がニューヨークに一人残された状態から始めて、それ以前を極力見せず、ニューヨークから脱出することもなくそこで全てを片付けてしまうという、言わば凝縮された瞬間だけを切り取って見せることで映画としての面白さを持とうとする。だが、正直そんなに面白くならない。面白いけど思ったほど面白くならない。ひとつには途中参加の親子の重要なわりに掴みどころのないキャラがある。ひとつには先に書いた現実的であることに縛られたゆえのもの。あともうひとつはよく出来たCG。冒頭の人間のいなくなった都会の殺伐とした風景は素晴らしいし、そこで鹿狩りってのがまたいいのだが、鹿が走り出した途端に作り物っぽくなる。動きが微妙に俊敏に過ぎるように思う。そんな些細なことって思うかもしれないけど、これは感染者の動きにも言えることで、あの素早い動きが、本物らしく見せるためのごまかしにしか見えないんです。犬を探しに入った倉庫にまだこちらに気付かない感染者たちが映されたときの恐怖感はなかなかで、超絶パワーを見せ付けるよりもただじっと立ってるほうが断然怖いのは一目瞭然であることを証明している。理由をこじつけなきゃならないし、見せなくてもいいものを見せなきゃならないし、ハリウッドも大変である。 [DVD(字幕)] 5点(2008-09-09 15:38:06)(良:1票) |
703. 復活の日
ハリウッドに負けないような娯楽大作を目指したのだろうが、邦画が大作を作ろうとすると、なぜかお話自体がやたらスケールのデカイものをもってきて、お話のスケールがデカイゆえに要らないシーンがてんこ盛りになって、なぜかいつもオールキャストで、オールキャストゆえの要らないシーンがてんこ盛りの映画になってしまう。この作品も例に漏れずで、冒頭、潜水艦から草刈正雄に廃墟と化した日本を覗かせるという『渚にて』へのオマージュらしきシーンから入ってゆくのはいいが、そこから時間が戻って延々と別に無くてもいいようなドラマを見せられる。いちいち書くのも面倒くさいほど要らないシーン(エピソードごとごっそり要らないのもいくつもある)だらけ。いっそのことガリガリにやせ細った草刈正雄が太陽をバックに歩くシーンから始まって、時々フラッシュバックでオリビア・ハッセーのキレイな顔を映して、あとはひたすら草刈正雄がフラフラと南下してゆくだけでいいような気がするが、そんな映画に金出さんはな。と、こき下ろしたが、この無駄だらけのショボイ映画にけして心地の悪いものではない懐かしさを感じてしまうのは何故だろう。そういう年代か? [ビデオ(邦画)] 4点(2008-09-08 17:57:47) |
704. 28週後...
コードレッドでしたっけ。えらい強引にそこに持っていきましたね。アメリカ軍のあり得ないずさんな管理と犠牲者当然の最終手段。復興の主導と失敗からしても、なんとなくイラク戦争に対する皮肉にも見えるんだけど、これはちょっとアホすぎ。画的にも感染者の高速移動を前作を上回って細かく割る&ブレまくりで、なんとなく起こってることを想像して見るしかない(映画なのに)。市民を片っ端から撃ち殺すという大量殺戮シーンは、いわばこの映画のひとつの見せ場となるべきもののはずなのに、市民のパニックに同調しているのか何を撮っていいのかわからないカメラがひたすらぼやっとした俯瞰映像と相変わらずの無意味なアップが繋がれるのみ。迫力も無ければ悲惨さも伝わってこない。大量の感染者とは異なる位置を確保する感染カーライルがいちいち登場するのもおかしな話だが、出てきたからって何があるわけでもなく。冒頭の人間カーライルが真昼間の青々とした草原を感染者たちにおもいっきり追いかけられるシーンと、同じく真昼間の草原に大挙押し寄せる感染者たちをヘリで蹴散らすシーン、良かったのはそれくらい。 [DVD(字幕)] 2点(2008-09-05 14:56:47)(良:1票) |
705. 28日後...
《ネタバレ》 人の気配が無いロンドン。この殺伐さ、この異様さがかなりいい。襲い掛かってくるのは、死人が蘇るゾンビと違ってあくまで人間。未知のウイルスによって凶暴化した人間。そこにドラマが生まれる。ゾンビなら例え自分の親であろうと一度は死んでるんだから親ではない別の生き物として見ることも出来ようが、こちらは感染者、つまり狂犬病にかかった人みたいなもん。だからゾンビが人を、人がゾンビを殺しまくることにホラーとしての楽しみを見出したこれまでのゾンビ映画とは違い、愛するものを殺さなければならないという悲しいドラマを付加させる。そこを突き詰めちゃうとかったるくなるんだけど、ギリギリのところでうまく抑えている。感染者のありえない高速移動も新しい化け物ぶりを見せつけていて面白い(が、新しいという部分が面白いのであってここから生まれるスタイリッシュさはどうかと思う)。終盤、軍の生き残りと合流し、そこで繰り広げられるエゴイスティックな思惑がうずまくドラマは、なるほどこれはダニー・ボイルの映画だったと気付かされると同時にそれまでギリギリ抑えられていたかったるさが一気に押し寄せてくるのだった。前半はけっこう面白かったのになあ。 [DVD(字幕)] 5点(2008-09-04 16:04:55)(良:1票) |
706. バイオハザードIII
お話自体はよく出来てると思うし面白いとも思うんだけど、もっとなんとかならんかったのか。まず主人公以外のキャラがけっこうおいしそうな役を持って登場するんだけど、全然薄い。薄いままに消えてゆく。アリス以外の名前なんて無いに等しい。前作で見せた「廃墟と化した街」ってのはすごく絵になるなあと思ってたんだけど、砂漠と化したラスベガスってのは確かにラスベガスは砂漠の上に造った街だったと再認識するだけで全然絵にならん。ルクソールのスフィンクスやパリスのエッフェル塔がポツンとあるだけでラスベガスってのもなんだかショボイ。お揃いの衣装を着た凶暴ゾンビ軍団(どうやって着せた?)は笑ったけど、そこで見せる怒涛のアクションが全然盛り上がらん。なんというか、、もっと弾けてほしい。 [DVD(字幕)] 3点(2008-09-03 12:13:34) |
707. バイオハザードII アポカリプス
前作のレビューでも書いたように全くのゲーム音痴なのだが、ジル・バレンタインってのも他のレビューを読むかぎりゲームのキャラらしく、しかも似てるの?まあ似てる似てないは置いといて、いかにもゲームの中に出てきそうなキレイな顔だなあと思った。で、意味無くセクシーコスチュームにしているところがグー(これもどうやらゲームと同じなんですね)。真っ赤なドレスに対抗するような真っ青な衣装がダブルヒロインの猛活躍を予感させるのだが、「魅力的な脇役」以上の存在にはならずガッカリ。ゲームでの役回りはどうなのか知らないけど、もんっのすごく勿体無いです。前作の建物内での抗争がいかにもRPG風だったが、今回も町中のカメラを使ってパソコン上に町全体を映し出し、主人公たちにあるミッションを課すことでRPGの面白さを最大限に発揮させている。でもホラーじゃなくてアクションなんだけど、全く怖くないというのはどうなんでしょ。 [DVD(字幕)] 5点(2008-09-02 13:38:28)(良:1票) |
708. バイオハザード(2001)
《ネタバレ》 ゲームは全く知りません(あらゆるゲームに無知です)。だからなのかどうかは知らないけど、思った以上に楽しめた。地下の研究施設を図解で見せて登場人物たちのいる場所を示すくだりは「ゲーム」へのオマージュでしょうか(特に無くたって支障は無いように思ったので)。ホラーよりもアクションに重きを置き、ひたすらかっこよくゾンビどもを殺しまくる。ミラの赤いドレスが最初、ものすごく浮いてたんだけど、ドレスに不似合いなバトルが繰り広げられるごとに赤いドレスが様になってゆく。ウイルスによって死んだ後に細胞が活性化されるとか取って付けたようなこと言ってたけど、だったらその活性化された肉を食い合えよ!とか一瞬思ったけどあくまで一瞬で、怒涛の展開が要らぬ説明によるこじ付けを取っ払う。ゾンビよりも怖い研究施設の防御システムがより楽しませてくれるが、怪物は蛇足。でも続編に繋げるためにも必要なものだったんですね。 [DVD(字幕)] 5点(2008-09-01 14:29:49)(良:1票) |
709. リリー・マルレーン
金髪の女がナチスとレジスタンスを行き来し時代に翻弄される。まるでヴァーホーヴェンの『ブラックブック』の原型である。その大袈裟ともいえるドラマの盛り上げ方までも受け継いでいるようにも見える。ここぞ!というところが笑っちゃうほど分りやすく、ご大層な音楽が鳴り始めたり、わざとらしく驚いた目を見せる人物の顔にズズズーンと寄っていったりといちいち大袈裟で、これって「メロドラマ」をあざ笑ってるのか?とか思ったりするほどなんだけど、おそらくは、これこそが「メロドラマ」なのだ!ということなんだと思う。元々「メロドラマ」ってのは、ここぞ!って時に音楽を流して盛り上げる、メロディ付きドラマなのだから。同じくニュー・ジャーマン・シネマの一人で年齢も同じヴェンダースが小津とフォードに恋したようにファスビンダーはサークに恋する。ファスビンダーの映画はどこか古臭いところがある。でもその古臭さは今の映画には無い「大衆娯楽」臭のような気もする。あるいは「スクリーンに映し出すドラマ」の原点がそこにあるから感じるものなのかもしれない。そしてそれは今、新しい。とにかく私は大いに楽しんだ。すごく面白かった。 [映画館(字幕)] 7点(2008-08-29 15:31:34) |
710. ローズ
《ネタバレ》 これはもうベット・ミドラーが凄い、ただそれだけの映画。パワフルに歌う半面あまりに弱い女。ベット・ミドラーの独壇場。ドラマ上でけっこう重要な役を担う人物もちらほらいるのだが、みんな負けてる。全然負けてる。なのにそんなことお構いなしに突っ走り、ステージでぶっ倒れるまでを力技で見せきる。ローズがいかにスーパースターなのかをベット・ミドラーの資質で見せる。ローズの弱さや孤独をベット・ミドラーの演技で見せる。ベット・ミドラーにおんぶにだっこの映画だが、軽々とおんぶにだっこしてしまってる。ロックだ。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-08-28 12:13:57) |
711. カストラート
見応え感がっちりな作品。こういうたいそうな映画は苦手なのだが、苦手な中にあって楽しめた部類。カストラートについてのあれこれには多くを語らず、兄弟の愛と葛藤のドラマを軸として見せてゆく。時代背景や音楽の歴史、(実在の)登場人物の背景、そしてカストラートの歴史など興味のつきない題材にもかかわらず、欲張らずに見せ所をしっかり絞った脚本の勝利。さらに衣装やセットも抜かりない。主人公は史上最高のカストラートと言われているカルロ・ブロスキ。今現在、カストラート自体が存在しないのでその美声の凄さは映画以上なのだろうが、その再現にボーイソプラノや数少ない男性ソプラノを使わずに、男性カウンターテナーと女性ソプラノの合成というまさにこの世に存在しない声で表現したのは納得と同時に感心。兄弟二人で一人の女を抱く、つまり3Pという特異な性生活が中盤にいかにも「プレイ」的な描写で登場するが、その行為が終盤に「プレイ」ではなく「愛の行為」として登場するくだりはなかなかの感動がある。5年以上前に観たっきりなので今観たらまた変わるかもしれないけど点数はまずまずの6点ということで。 [ビデオ(字幕)] 6点(2008-08-27 15:47:22) |
712. ドリームガールズ(2006)
どうでもいい映画だろうなと思ったら案の定どうでもいい映画だった。いや、それ以下か。そりゃ、エディ・マーフィー凄い!歌もめちゃうま!とかビヨンセってこんなにキレイだったのか!とかそういう映画からちょっとはなれたところの驚きはじゅうぶんあったし、いちいちダイアナ・ロスが頭にちらつきながらの鑑賞もなんともいえない感慨をもたらしてはくれたものの、盛り上がらんというか感動が無いというか。音楽の醍醐味はあるけどミュージカルの醍醐味は無い。だいたい生で素晴らしいパフォーマンスを見せれる人たちをこんなに細切れの加工しまくりの映像で見せちゃうのってめちゃくちゃもったいない。パフォーマンスはそれぞれに素晴らしいけど俳優たちそれぞれの魅力は映されない。アップでビヨンセの顔をとらえたらもっとしっかりきっちり映し続けてほしい。画面がパッパッパと変わるの早い。あと、これは評価とは関係ないけど、私の思うところのモータウン・サウンドとちょっと違うんだな。ま、でもハリウッドにしか作り得ない煌びやかさはある。それは認める。 [DVD(字幕)] 4点(2008-08-26 14:10:19) |
713. once ダブリンの街角で
これ見てから8ヶ月以上が経過しているのにまだ楽曲がちゃんと頭に残ってる。それほどに響くものが「歌」にはあったということ。映画はおおげさな感動を煽らないんだけど、せっかくこんなに響く歌が歌われてるんだからもうちょっと盛り上げてくれても、という消化不良感が若干残る。例えばストリートでえらい人だかりができて、なんてだけで収まらず、ものすごい大盛り上がりを見せるとか、それぐらいあってもいいぐらいの歌だと思うんだけど。女性が最初、女性というより女の子にしか見えず、掃除機を散歩させてるようなシーンが可愛かったんだけど、途中から女の子どころか子持ちってことが判明し、なんだかお互いにややこしい事情を抱えてるという設定が明らかになってゆくんだけど、そのあたりのドラマが淡白。無くてもいいくらいに淡白。映画の作り手も「歌」に力入れてて、実際思ったよりもいいのが出来ちゃって、本来「歌」を介した大人の恋愛ドラマのはずが、「歌」がドラマを食っちゃった・・みたいな映画。 [映画館(字幕)] 5点(2008-08-25 17:24:14)(良:1票) |
714. クジョー
《ネタバレ》 あえて「浮気」が描かれていることからもこの理不尽な恐怖の出来事はデ・パルマの『殺しのドレス』同様に浮気に対する罰と位置づけられるような気がするんだけど、子供が巻き添えとなっているという部分で、どうにものほほんとスリルを楽しむ雰囲気にはなれなかった。『シークレット・ウインドウ』にしたって『ショーシャンクの空に』にしたって浮気をした女には必ず罰が与えられているが、これはキングというよりもアメリカ特有のものなんだろうか。それとも襲われる人間は男よりも女のほうが興奮するというか、様になるというか、ただそれだとあまりに理不尽すぎるので襲われる側になんらかの不正を行わせるのだろうか。などと考えるような映画ではないかもしれんが・・。でも実際この作品に浮気のシーンはべつにいらんでしょ。 それにしても子供の泣き叫ぶシーンの迫真性といったら、マジで泣いてない?これ演技?とそこばっかり気になってしょうがなかった。車の中でどうにもしようがない状態が長く続き、当然ながら子供が脱水状態となる様が痛々しかったのだが、もうちょっと、いつ襲ってくるのかわからん恐怖感とか緊迫感とか欲しかったような。 [DVD(字幕)] 5点(2008-08-22 17:52:42) |
715. 黙秘
過去の事件の真相が今の事件を通して判明してゆくと同時に、母と娘の苦悩をも浮かび上がらせ、ラストに両方を開放させてしまうという素晴らしいストーリーなのだが、この苦悩の部分がけっこうヘビーなためか全体的に暗い。苦悩の根本は過去にあるのに過去のシーンよりも現代のシーンが暗く描かれているので余計にそう感じる。現代のシーンにおいての母のポンポンと出る憎まれ口に見られる痛快さがネガティブなイメージとうまく折り合っていて全体の暗い流れの中にユーモアを与えていたと思うので、この辺の痛快さをもっと強調してくれればもっとバランスのとれた娯楽映画になったような気がする。回想シーンへの導入部が実に解かりやすくストーリーに没頭できるのは良いのだが、その解かりやすいことに貢献しているだろう光の度合いの変化が妙にチープ感を出してしまっているような気もしないでもない。ストーリーもその見せ方もうまいなあと思うんだけど、先に書いたユーモアだとか画の重厚感だとか感情を盛り上げるための何かとか、ストーリーとは関係の無いところで細々としたものが欠けているという印象。 [DVD(字幕)] 5点(2008-08-21 13:30:30) |
716. ドリームキャッチャー
《ネタバレ》 えらいお話が散漫なんだけどそれなりに楽しめた。冒頭に4人の男たちが少年時代のあることを切欠に持ってしまった特別な力のために苦悩する姿が映され、興味をそそるなかなかの序章となっていると思ったが、その後のお話のむちゃくちゃな方向転換からすると、この序章はかなりくどい。だいたい結局4人も必要無かったし。未知の生物の出現後の唐突なエイリアン登場は面白い。頭パーン!は笑った。ここに4人の男たち以外にエイリアン壊滅に血肉を注いできた特殊部隊の大佐というのが登場するが、この人が狂ってる。特殊部隊とやらが登場するのはいいが、狂ってることでさらなるドラマを見せるから余計に散漫になる。「記憶の部屋」の映像化がしょぼいなりにも面白く、ここでのエイリアンとの戦いを最大の見せ場に持ってくるのが妥当だと思うが、中途半端な見せ場を多く持っているため印象薄し。中盤にあった狂った大佐の総攻撃が見た目かなりド派手なのに対し、クライマックスはけっこう地味。いちいち肩透かしをくらわせる侮れない映画。 [DVD(字幕)] 5点(2008-08-20 13:11:45) |
717. シークレット ウインドウ
《ネタバレ》 『恐怖のメロディ』を彷彿させるように湖から湖畔の屋敷へと流れるように見せてゆき、そのまま窓が映されたかと思うと窓を通ってソファーで眠るジョニー・デップをとらえるというヒッチコックに目配せしたような演出が、けしてイーストウッドほどの安定感もなければヒッチコックほどの驚きもないのだが、なかなかオープニングから楽しませてくれるではないかと期待が膨らむ。が、お話がしょぼい。そのうえ一応サイコサスペンスなんだろうが、全くドキドキしない。おそらくジョニー・デップがキマリすぎなのだ。寝癖全開の頭に小汚いガウンがここまでキマッテしまうのも凄いが、その凄さが映画に勝ってしまっている。ジョン・タートゥーロと役を入れ替えたほうがいいと思う。ブラビ主演の二重人格映画じゃないけど男前はやっぱり虚構のほうが合ってる。 [DVD(字幕)] 5点(2008-08-19 12:24:47) |
718. ミスト
《ネタバレ》 オチがダメなんじゃなくて、オチが許せない。観た直後なら0点付けてた。一面が見渡せるガラス張りのスーパーマーケットに閉じ込められるという展開が絶妙なシチュエーションで、映画という異次元の世界のポスターを描いてる主人公がまさに異次元の住人たちをガラス越しに見ることになるのだが、蛸の足のような、または食指のようなものをいきなり見せられた時点でちょっとガッカリ。それでもその後のイケイケなモンスターパニック路線に興奮。異次元の住人たちってただデカイだけかよ!とか思ったりもしながら、そのいかにもB級なノリも悪くない。ダラボンやるじゃん。と思ってたらこのオチ。最悪。原作は違う結末らしいが、仮に書籍でこの映画の結末をするならべつにいいです。問題なしです。たぶんこの後味の悪さを堪能できる。でも映画ではできない。映画と書籍の違いがここにある。ストーリーをひたすら追いかけてゆくという鑑賞ができる人なら問題無いかもしれないし、むしろ急転直下ともいえるこのオチこそを堪能できるだろう。でも映画は、映像は、本来、文字ほどストーリーを明確には語れないゆえに常に観る者の(それこそ十人十色の)想像力との共同作業で「世界」を作り上げてゆく。それゆえに疑似体験度は大きい。私の場合は子供がいるので特に後味最悪に感じたのかもしれない。でもたんに後味が悪いからダメってことだけじゃなく(後味の悪い映画は山ほどある)、その後味の悪さが、現実を、あるいは本質を描くための必然としての後味の悪さなんかじゃなく、たんに後味の悪さを狙ったものでしかないという悪意にも似た戦略からくるものだから許せないのだ。 ちなみに超ネタバレだが、自らの子を殺すから最悪なのではなく、そのあまりにも悲しい結末をチャンチャン♪的な結末にしてしまうから最悪なのだ。 [映画館(字幕)] 1点(2008-08-18 16:53:26)(良:2票) |
719. プラネット・テラー in グラインドハウス
大袈裟に飛び散る血、意味無くセクシー、堂々としたパクリストーリー、低予算B級映画群・グラインドハウスを模した2本立ての1本。なんだけどロドリゲスの映画は元来このグラインドハウス系なのでタランティーノ版ほどのパロディじみた面白さを感じなかったんだけど(1巻紛失は絶妙のタイミング!)、それでもさすがは得意分野だけあってあいかわらずビッチ系キレイなお姉さんがすこぶるセクシー。ローズ・マッゴーワンはこの世界でこそ活きる女優なのだと妙に納得。赤のマッゴーワンに対し、青のマーリー・シェルトンというのは『バイオハザードII』の引用?違うか。とにかくこの二人がサイコー。マシンガンは言わずもがなで、その前の棒切れの足もかなりイケてる。生きてゆくうえで必要のない無駄な取り柄がこの二人によって生き抜くために最も必要な取り柄となってゆくのが爽快。映画が最後に必要とするものは教養や道徳なんかじゃなく、「見た目」なのだ。人生に無駄だと思われたブリッジが、注射器さばきがひたすら美しい。 [映画館(字幕)] 7点(2008-08-12 11:12:15)(良:2票) |
720. デス・プルーフ in グラインドハウス
公開直後からいろんなところで(ここでも)ダラダラと続く会話がうっとうしいみたいなこと言われてたんだけど、どの会話のことか全然分からず、でも言われてみるとたしかに前半のクライマックスまでは会話が多かったんだけど、たぶん私は会話をほとんど聞いていなかったので気にならなかったのだろうと思われる。それほどに60年代あたりの映画のクレジットの出し方や古びたフィルムの模写ぶりなんかをニコニコしながら堪能していたということなんだと思う。そしてグラインドハウスムービーの真骨頂としての無駄にセクシー、過剰にバイオレンスなシーンがわざとらしく配置されるが、そのわざとらしさが巧い。そして計画的に作られたとは到底思えないアホアホなエンディングに度肝を抜かれる。2本立て映画の片割れ『プラネット・テラー』との、というかロドリゲスとの差異を最もわかりやすく見せているのがカーアクションのシーン。元来からCGをうまく映画に取り入れ、デジタルの可能性を念頭に置くロドリゲスに対し、タランティーノは頑なにフィルムの可能性を信じている人。CGにはCGの良さがあるが、生には生の良さがある。「迫力」とかそんなことじゃなく。路面に反応する揺れ、ジャンプしたときのサスペンションの撓み、着地したときの砂埃。生には生の良さがある。本人たちはグラインドハウスムービーを模して遊んでいるだけなのかもしれないが、この映画には間違いなく映画の醍醐味というものがある。 [映画館(字幕)] 7点(2008-08-11 16:15:08)(良:2票) |