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R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

●今週のレビュー
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721.  カポーティ
この映画を見る限りカポーティは犯人、中でもペリー・スミスに興味を持っているようにみえてしまうのだが、「冷血」を読むと、作者の興味は犯人ではなく事件そのものであり、事件にまつわる全てのことに異様な執着を持っていたことがうかがえる(ような気がした)。そうでなきゃ被害者の生前の描写や事件前と事件後の街の描写をあんなにも明確に(頭の中に画が浮かぶくらい)文章で魅せてしまうなんてことは不可能。そのあたりの私の思い込み(?)のせいで、「作家と犯人」という構図自体になんだかサイコスリラーものによくある「犯人に同化してゆく捜査官」みたいな安っぽさを感じてしまった。興味の的はともかく、たしかにカポーティのまるで子供のような、あるいは乙女チックな興味の抱き方は妙に納得。フィリップ・シーモア・ホフマンが実際どこまでカポーティにそっくりなのかは知らないし、似ていようが似ていまいが映画には関係の無いことではあるのだが、あの独特のしゃべり方が悲惨な殺人事件に興味を抱くという反倫理的な無邪気さを表現するのに一役買っていたのは間違いないと思う。迷作(私は好きですけど)『悪魔をやっつけろ』の撮影秘話は嬉しい反面、とってつけた感がありあり。
[DVD(字幕)] 5点(2008-08-08 17:56:50)
722.  スイミング・プール 《ネタバレ》 
ラストカットで答えだしてるようなもんだから、解釈であれこれ語り合うほど自由度は無いように思ってたんですが・・。愛人に邪険にされた中年女の妄想の中での復讐といったところでしょ(?)。で、もちろんシャーロット・ランプリング=リュディヴィーヌ・サニエ。主人公が別荘に着くまで、そして着いてから部屋に落ち着くまでの異様な長さと特別必要とも思えないシーンの数々が伏線めいていて、序盤から映画への好奇心を煽りまくる。それら伏線めいたシーンの数々の中にはたしかに伏線だったものもあれば、伏線なのかもしれないけど私には解からなかったものも多々あって、でもたぶん全ての意味無さそうなシーンが全てなんらかの意味を持ってそうな雰囲気だけは充満していて、その雰囲気だけでこの映画はじゅうぶん見応えのあるものになっている。それでも意味ありげなシーンの放置状態が長引きながらも新たな意味ありげなシーンが次から次へと投げ込まれてゆくことで徐々に観続けることが面倒くさくなってくるというデメリットも。それでもサニエの若々しく眩しい裸体が画面から目をそらすことを許さない。
[DVD(字幕)] 6点(2008-08-07 12:16:50)
723.  夜になるまえに
キューバ革命が反米の象徴として語られることが多いから、革命の別の視点が描かれているという点では興味深いところもあるんだけど、一人の作家の一生を描くにあたってあまりにもマジメというか、あまりにも本当っぽいというか。もちろん本当のお話なんだろうけども、細かいエピソードにおいて例えばそれらが本当であろうが嘘であろうがどうでもいいんだけど、どっちにしてももっと嘘を見せて欲しい。嘘と言ったら語弊があるか、もっと幻想的に描くとか詩的に描くとか荒唐無稽な描写を入れるとか回想シーンをありえない世界観で描いちゃうとかストーリーを絞ってもっとドラマチックにしちゃうとか。主人公が芸術に生きる人なんだから尚更。好みの問題だとも思うんだけど。どうも「伝記」って苦手。
[DVD(字幕)] 4点(2008-08-06 13:12:07)
724.  氷の微笑2
前作の悪女なのかそれともそう思われてるだけの実はか弱い女なのかわからないという設定とは違い、あきらかな悪女として描かれる続編はそれだけで損をしてしまっている。そんな劣勢の中でシナリオはそこそこ頑張っている。シャロン・ストーンの容姿はギリギリセーフ、というか実年齢から考えればこれもよく頑張ってる。ただ、ここにきてまだシャロン・ストーンのお色気を画的に前面に押し出してくるのはちとキツイ。ネタばらしもちとくどいかな。
[DVD(字幕)] 4点(2008-08-05 12:16:17)
725.  恋は邪魔者
これ観たのが某レンタル屋で新作か準新作かって時なのでずいぶん前になるのだが、『メリーに首ったけ』『キューティ・ブロンド』などに続くプリティ・ピンク・シリーズと銘打った作品で、このシリーズはたいていヨメさんのリクエストで借りているんだけど、あんまり印象に残っていない。他のシリーズ作品と比べると毛色が違う。おバカさが無い。レニーがとにかく可愛くないなあと思って観ていたのはよく覚えていて、でも『キューティ・ブロンド』でもそうなのだが、観ているうちにだんだんその可愛くなさが味になってくるんだけど、ちょっとキャラが作りこみすぎた感があって苦手かも。ミュージカルのようなオーバーアクトは作品の世界に合ってたし、サスペンス映画なみの凝ったカラクリもそれなりに楽しかったが、こういうところに凝るとどうしても作品としての印象が薄れてしまうのがもったいない。
[DVD(字幕)] 5点(2008-08-04 16:06:42)
726.  O侯爵夫人 《ネタバレ》 
ロメールのコスプレ劇はコスプレ劇なのに歴史大作でも文芸作品でもなく、いかにもロメールな、優しい語り口の小品といった感じの映画でした。この「小品」が侮れない。お?!と思わせるオープニングから物語に引き込み、なんてことのないお話の中にどこにでもある些細な喜びや悲しみを観る者にしっかり提示し、けして退屈させず、そうこうしながら物語を堪能させる。怒り心頭の父親が大泣きするところは笑った。いつもきりりとしたお父さんが「むああああ」って、お父さん泣きすぎ(笑)。でもちょっとジーンとしたりもして。号泣するお父さんの横で小芝居を続けてるお母さんがまた笑っちゃう。でもこれもやっぱりジーンときた。ああ、ジーンとしながら笑っちゃう、幸福感が充満したようなこの感じがたまらん。エンディングも好き。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2008-08-01 17:10:23)
727.  ヴェラ・ドレイク 《ネタバレ》 
男が作った社会の中でどうしても犠牲になってしまう女たち。その時代の社会がどうであれ、社会と程よく付き合っていこうとする人間ほどヴェラを凶弾する。取調べに当たった二人の警官の態度の違いがそうであり、息子と娘の態度の違いがそうであり、旦那の弟とその妻の態度の違いがそうである。最も分かりやすいのが裁判官の言い渡す重い判決。ヴェラが寸分違わない善行の人であることは時代背景をよーく理解しないと納得してもらえないところかもしれないがマイク・リーはその時代性をさりげなく語っている。ここはドラマ成立のために手を抜けないところなのだが、ドラマの成立に反比例して映画は退屈になってゆく。全体的に暗い色調は伝統的なイギリス映画臭と同時に暗雲とした結末を予感させるのだが、退屈に感じているうえに暗いとなったら、もうお手上げ。ただ、イメルダ・スタウントンの涙にはやられた。まるで自分の母親が泣かされてるような感覚を覚えた。
[DVD(字幕)] 5点(2008-07-31 14:52:59)
728.  4ヶ月、3週と2日 《ネタバレ》 
手持ちカメラで追いかけるだけじゃここまでの不安感は出せない。この映画は音が凄い。物をテーブルに置く音や足音や息遣いが気分が悪くなるくらい響いてくる。音が襲ってくる。不安感と書いたが、それだけじゃなくて、焦りや憤り、怒り、孤独感も。主人公はルームメイトにも恋人にも、違法である堕胎手術をするかわりに見返りを強要する男にも、そして自分自身にも憤りを感じている。延いては社会全体に憤りを感じている。その社会は孤独な者をさらに孤独にせしめ、弱者をさらに追い詰める。堕胎手術を頼んだ女と頼まれた男は、男の計画通りに進まなくても、2対1という数的有利となっても、お金が支払われても、堕胎が行われてもけして変わることはない。社会の構図として男よりも女が弱い立場にあることは、恋人の家での会話からもうかがい知れる。しかし生きていかねばならない。不満を漏らしたところで何も変わらないことを女たちは知っている。女二人が食事を摂る。それは何も出来ない女の弱さの象徴でもあり、それでも生きてゆく女の強さの象徴でもあるのだと思った。
[映画館(字幕)] 7点(2008-07-30 14:07:03)
729.  JUNO/ジュノ
16歳で妊娠してしまった女の子の物語ではあるのだが、本人が悩むには悩むのだがそれほど深刻に悩むタイプではなさそうで、まわりも意外と淡白な反応で、だから終始明るいノリで映画は進んでゆくのだが、終わってみれば16歳で妊娠してしまったってことは映画の中でも実は然程重要なことではなく、ある女の子が「好き」「愛する」ってどういうことなのかという素朴な、それでいて重要な問いに答を見出すという実にシンプルな青春恋愛ストーリーで、妊娠は過酷な状況でも明るさを失わずに突き進んだ女の子を演出するためのものでしかなかった。もちろんそれはそれでいいのだが、それにしては妊娠にまつわる交々が大勢を占めているのが不満。もし十代の妊娠を描きたかったのだとしたら明るく元気でというアプローチには全く問題はないが、もっともっと命の尊さを真剣に描く側面が欲しい。ようするにどっちにしても多少の不満が残る。ジュノのキャラは若い世代の自然体みたいなこと言われてるけれど、あんなに返しの言葉がポンポン出てくるのはそうとうに頭が良いわけで、あきらかに面白おかしく装飾されたキャラだと思うのだが、誰が見たって装飾されたキャラだとはっきりわかるくらいにもっと極端なキャラにしてくれても面白かったと思う。ジュノのキャラが映画の魅力のほとんどなんだし。
[映画館(字幕)] 5点(2008-07-28 15:29:23)(良:1票)
730.  ある結婚の風景
演劇という芸術を幅広く見てもらうためにベルイマンはテレビという媒体に興味を持つ。資金的な問題もあったとは思いますが。この作品はベルイマン作品の中でテレビ用に作られた最初の作品です。デンマークではこのドラマを見るために渋滞が起こったほどに社会現象化したそうです(内容からしてもちょっと考えられないのですが)。劇場版はテレビのダイジェスト版です。男と女の関係をこれまでコメディやシリアスな心理劇等いろいろな形体を借りて語ってきたベルイマンはテレビ用だからなのか、実に現実的でより身近でより接しやすいドラマにして見せてくれる。男の気持ち、女の気持ち、結婚というシステムに組み込まれることで生まれる惰性とそれぞれのエゴ、離婚してからの再会に見る複雑にして簡単な男女の関係の意味。夫婦という枠を超えて異性が愛しあい、憎みあい、疑い、喧嘩し、それでも惹かれあい、求め合う不思議。大人のドラマです。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2008-07-25 16:17:38)
731.  叫びとささやき
ベルイマン映画の中で最も表現主義的世界観で見せた作品。死を前にして望むのは孤独からの脱却でしかない。しかし拒む姉妹。病人による目を背けたくなるような叫び。困惑し実際に目を背けてしまう姉妹。叫びによって露とある姉妹の疑心、欺瞞、エゴ。病人を主人として仕えてきたメイドだけが唯一の救いとして存在する。『仮面/ペルソナ』もそうだと思うがこれも「神の沈黙」の発展形で、悲しみは人間によってもたらされ、癒しもまた人間によってもたらされることを強調しているように思う。神そのもののようなメイドの描き方は、神は人の中に存在するということなのだろうかとも思ったのだが。スヴェン・ニクヴィストとの共同作業で生み出される美しい画も強烈な赤を背景にしたことで益々美しさが際立つ。イメージをイメージのまま映画にしたような作品なので、そこだけを評価したっていいのだが、小難しい内容が小難しく語られるのはちょいと難儀。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2008-07-24 16:18:31)
732.  仮面/ペルソナ 《ネタバレ》 
ベルイマンはもともとこの作品に「映画」というタイトルを考えていたが却下されたらしいのだが、言われてみれば一方が語り続け、もう一方が黙ってその語りを楽しむという構図は映画と観客そのものである。過去のベルイマン映画を模倣するように「奔放な夏」「情事」「堕胎」が思い出話として語られ、さらに「夫婦関係」「母性の欠如」が露呈され、ベトナム僧侶の焼身自殺のニュース映像やナチスSSと思われる男たちの前で手を上げる幼い少年の写真などはまさしく「沈黙する神」を象徴しており、極めつけは登場人物の名前が過去のベルイマン作品の登場人物の名前をつけられているという徹底ぶりをして映画が模倣されてゆく。意味なくカッコイイと思った実験性に富んだ冒頭部もフィルムのスタート部分が使われているし、少年の前に大画面と化した空間に人の顔がぼんやりと映し出されるシーンもやっぱり「映画」をモチーフにしている決定的シーンと言える。女優が観客となり現実と虚構が入れ替わる。これは経験をしていないのに経験をしたような気になる「映画」というものを映像で表現した映画である。たぶん。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2008-07-23 17:44:46)
733.  夏の夜は三たび微笑む 《ネタバレ》 
映画会社からの要望に沿って意に反するものを作っては興行的に失敗することを繰り返し、崖っぷちで作らされたのが本作。喜劇であることを条件につきつけられたベルイマンがやけっぱちで作ったとか。それでも男と女の間に生まれる複雑な感情と、その感情ゆえの行動と感情に反した行動とが描かれるという「神の沈黙」以上のベルイマンの終生のテーマがはっきりくっきり描かれているんだから、これもまたいかにもなベルイマン映画だともいえる。私の大好きな『愛のレッスン』同様に愛の交錯が面白おかしく語られてゆくうえに主演女優も同じなんだけど、一組の夫婦がベースとしてあった『愛のレッスン』に対しこちらはベースのカップルが途中から入れ替わっちゃうせいで若干シニカルさを含んでしまっている。それもまた一癖あっていいのだが。関係だけがやたらこんがらがっていて、展開はお気楽そのもの。あまりにお気楽すぎてかえって皮肉めいて見えるのはベルイマンだからだろうか。スウェーデンの夏の夜(白夜)は一度目の微笑で若いカップルを旅立たせ、二度目の微笑で4人の男女の本意を目覚めさせ、三度目の微笑で恋愛とは縁のなかったメイドと運転手を結ばせて終わる。洒落ている。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2008-07-22 18:32:13)
734.  愛のレッスン
終わってみればある夫婦のドタバタとした恋愛事情を描いたコメディなんだけど、それぞれの愛人やら家族やら、はたまたそれぞれの過去への回想シーンが入り乱れ、最初の数分は何が何やらといった感じなのだが、わかってくるとこれが楽しい。とりわけ夫婦のなれ初めシーンの可笑しいこと。ヒロイン、エヴァ・ダールベックが実にイキイキと輝いていて、このなれ初めシーンは回想なのでちょっと若作りしてるんだけど、それがもう可愛いし、ぶっ飛んでるしで、それまでの倦怠感満々のシリアスな雰囲気が嘘みたいに晴れ晴れして夫婦の気持ちと同じように映画がパッと明るくなる。ベルイマンといえば神の沈黙やら不在やらをテーマにした60年代以降の映画群こそがベルイマンという印象があるが、私は男と女をテーマにした50年代映画群が大好き。『夏の遊び』とか『不良少女モニカ』とか『歓喜に向かって』とか。その中ではあきらかに興行重視の、いわばベルイマンらしくない作品になるかと思うが、男と女がそれぞれの立場でそれぞれの言い分があり、それぞれの事情があることをこんなにも楽しく見せてしまうってのはやっぱり凄いことなんじゃないかと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2008-07-18 14:47:17)
735.  渇望
初期のベルイマン作品は商業主義に徹した(そうせざるを得ない)作品が多く、それはそれで見易くていいとも思うのだが、ベルイマンのテイストが無いわけでもなく、その辺のさじ加減によっては中途半端な出来と評される作品もあって、これなんかは間違いなくその中途半端な作品になると思うんだけど、映画館鑑賞の恩恵も加味されてか私の中ではけっこう楽しめた方に入る。男女の身勝手な欲望と退廃的な行為が描かれるというその後のベルイマン映画に頻繁に登場するキーワードを散りばめながらの群像劇仕立ての見事な構成には思わず唸ってしまう。今見返せば話の構成がかっちりまとまりすぎの感もなくはないが、印象的な画も多くて、他のベルイマン映画でも見られる女の顔のクローズアップは独特の怖さ(全然怖いシーンでもないのに)を獲得している。敗戦直後の飢えたドイツ人たちに代表される暗雲とした描写がそのまま男女の暗雲とした心情と、これから続く男女の関係の明るくない未来を予見しているようだ。
[映画館(字幕)] 7点(2008-07-17 16:39:24)
736.  沈黙(1963)
「神の沈黙」三部作の最終作であるが、ここまでくると何が神の沈黙なのかさっぱり理解できない。もちろんこの作品が「神の沈黙」を描いていようがなかろうが映画の評価とは全く関係のないものなんだけど、この作品自体がいったい何を描きたかったのかがイマイチ掴めない。言語の通じない架空の国において姉はなんとか老給仕と身振り手振りで会話をする。姉は言葉の異なる者同士の架け橋役である翻訳者でもある。妹も言葉を使うことなくカフェのボーイと一夜を共にする。妹の息子は最初こそ老給仕の身振り手振りから逃げ出し、恐怖や疑念から意思疎通を拒むが、じきにいっしょに遊ぶまでになる。その一方で言葉は通じるのに全く意志の疎通が成されないのが姉と妹である。相手を理解せず、疑い、憎む。戦車が街にいきなり現れる終末感漂う世界観は姉妹のいざこざを「戦争」と結びつけているのか、反対に不安を煽る社会が姉妹を互いに反発させているということなのか。とにかくこの独特の終末ワールドだけはなかなかのインパクトを持っている。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2008-07-16 12:54:38)
737.  冬の光
「神の沈黙」三部作の2本目。ベルイマンはこの作品によって作家としての劣等感から解放されたという。それまで創造の障害となっていたものが取り払われたからということらしい。創造の障害となっていたものとはおそらく宗教観だと思われる。作中の主人公は牧師でありながら『鏡の中にある如く』の作家同様にキリスト教的な神に疑問を持ち自らの神を作り出す。そこに牧師ゆえの葛藤がおこる。このウジウジ感が見苦しい。タイトルにもあるように光に気を使っているらしく、なんでも光で心情を表現しているとか聞いたことがあるが、私にはそこまではよく解からなかったんだけどたしかに美しい画であることは認められます。それでもお話が暗すぎる。全編で孤独に苛まれながら苦悶しているだけなんだから。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2008-07-15 15:38:38)
738.  鏡の中にある如く 《ネタバレ》 
「神の沈黙」三部作の1作目。この三部作はどれも暗くてあまり好きになれない。さらに暗いだけじゃなく怖さがある。隔離された僻地と限られた登場人物、そして音響が怖さを加速させる。当時としては「妄想の産物」みたいな神の扱いだけでもじゅうぶんショッキングだったかもしれない。精神を病んでゆく娘に知的好奇心を覚える作家である父というのは、科学を超越するものを神秘的にとらえるのではなく現実的にとらえようとするということであり、延いては「無神論」に繋がってゆき、さらにそれが「神の沈黙」となるのだろうか。一方である虚脱感の後に訪れる「何か」=「愛」を感じてしまった父がその説明できないものに「神」を見出したか見出そうとしているかという決着に思うのはベルイマンの神に対する考えこそが宗教団体やその戒律から解き放たれた純真なる「神」思想なんじゃないかと思ったりもする。ただそこに行き着くまでにはなぜか辛いことを経験しなくてはならないようでベルイマンの映画で神を扱った作品はことごとく暗く悲しいものが多い。ベルイマンの神は何も奪わないし何も与えないし、誰も救ってくれない。ああ、何が神の沈黙なのだろうと思ってたけど、たしかに神の沈黙だ。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2008-07-14 19:32:20)
739.  パッション(1919) 《ネタバレ》 
その美貌を武器にしながらもなんともあっけらかんとした帽子屋の女の子が仕事そっちのけで恋人とイチャイチャしてるかと思ったら、お金持ちのえらいさんからも惚れられちゃって二股三股も当たり前な奔放ぶりが映される。その娘のまわりで男たちがドタバタコメディを見せてくれる。と、思ったら女の子は娼婦をさせられて、、といっても女の子もまさに天職を得たり!てな具合でトントンお話が進み、ついにはルイ15世の公妾にまで上り詰めるというかの有名なデュ・バリー夫人の物語でした。デュ・バリーの名は公妾となるために必要な爵位を得るためにカタチだけ結婚した相手の名前なので後半までデュ・バリー夫人の物語だとは判らなかったんです。ましてやデュ・バリー夫人のイメージってあんまり良いものでもなかったけど、この作品ではなんとも可愛らしい。で、コメディ要素を多く含んではいるものの歴史大作としての豪華さもじゅうぶん兼ね備えている。衣装やセットの豪華さもさることながらお話自体も史実がそうであったようにフランス革命が描かれ、主人公デュ・バリー夫人がギロチンに処されるところまで描いてしまう。はたまたその描写の凄まじくもコメディタッチなところは強烈な印象を残す。『カリガリ博士』が同じ年に作られているが、作風を全く異にしながらもドイツ映画がこの時期、黄金期にあったことを証明している。暴動シーンのスペクタクルを見るに、後にハリウッドに招かれることも至極当然の結果だといえる。
[映画館(字幕)] 8点(2008-07-11 17:28:00)
740.  花咲ける騎士道(1952)
もっともっとナンセンスなものを想像してはいたんだけど、コメディとしての筋がしっかりしているのでじゅうぶん楽しめました。主人公に死刑を宣告したルイ15世に刑の失効を嘆願する女。それは出来ぬと却下されてしまうコメディらしからぬ展開から二転三転するシナリオの巧さが目を見張る。とくに後半のテンポの良さは素晴らしい。大筋でも冒頭の占いがたんなる騒動の切欠に終わらず、ラストシーンにうまく繋げている。王をひっぱたいてしまい、それを聞いたポンパドール夫人が喜ぶってのも楽しい。駅馬車シーンは他のシーンから浮くくらい見応えあり。その前の修道院でのチャンバラもなかなかのもの。大団円はお決まりとは言え、えらい強引です。が、かえってこの作品の痛快さを際立たせているようにも思います。
[ビデオ(字幕)] 7点(2008-07-10 18:30:17)
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