721. 狂った果実(1956)
《ネタバレ》 金持ちのボンボン兄弟が人妻を取り合ったあげくに破局がくるという映画。当時の風俗はよく出ていますが、それ以上に魅力は感じない。中平康の演出はたしかに光っていますが、今見ると、特にどうと言うほどのものでもなし。歴史的価値は感じますが、それ以上に持ち上げるのはどうかと思います。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-08-31 16:49:05) |
722. 黄昏(1952)
《ネタバレ》 「恋は盲目」ということなのでしょうが、いい年してジョージが無茶苦茶なので、同情できません。キャリー相手に嘘を重ねたりしているので、最後は自業自得という感じですね。キャリーの方もジョージと別れて正解だったようで、結局作者は何がやりたかったのかよくわかりませんでした。いかにも紳士然としたローレンス・オリヴィエが落ちぶれるのは、ある意味見ものですが。 [地上波(字幕)] 6点(2011-08-28 21:46:02) |
723. 野のユリ
《ネタバレ》 肝心のスミスの心情がよくわからなくて困りました。人物像があまり掘り下げられていないので、そこまでお人好しになる理由がよくわかりません。単に意固地なだけなのか? お話としては、ビング・クロスビーの『我が道を往く』と似ていますね。ただ、主要人物が黒人とドイツからの移民(東欧系)とスペイン系(?)という点が新しいのでしょう。全般にユーモラスなところはよかったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-08-22 11:26:27) |
724. 善き人のためのソナタ
《ネタバレ》 大尉の心変わりの理由がわからないというのは、要するにお話がご都合主義だからです。クリスタがあっさり口を割るのも同様。まずテーマありきで作ったものの、やり方がまずい。こういうテーマを扱えば、少々ご都合主義でも大目に見て感動してもらえるということでしょうか。ナチスものなどと同じですね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-08-21 11:20:05) |
725. 市川崑物語
おおむね先のレビュワーの皆様、特にイニシャルKさんが書かれているとおりです。付け加えるならば、金田一シリーズについては紹介されている時間が短いにもかかわらず、ほとんど犯人が明かされているので、見ていない人は注意が必要です。まあ、見ていることを前提に作っているのでしょうが。本作については、市川監督のファンならば当然見ているでしょうが、ファンでなくても前半はそれほど悪くないと思います。金田一シリーズになったら止めればよいのです。しかし、金を出してレンタルするだけの価値があるかどうかは微妙。監督の生涯や作品論だけならば、書籍でも手に入ります。それと映画を突き合わせる方が、よほど有益だし金の使い方としても正しいでしょう。私のように、テレビで放送されたから見るというのでなければ、この映画と出会う機会はそうそうないと思うのです。しかし、ちゃんと劇場公開されているのですよね、これ……。結局あの会社の体質というのは、30年経って社長が替わってもあいかわらずだった、ということでしょうか。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2011-08-20 11:21:16)(良:1票) |
726. ベルモンドの怪盗二十面相
《ネタバレ》 ブロカ監督とベルモンドといえば、ドタバタ・アクション映画が多かったと思いますが、これはアクションなし。序盤は、出所したベルモンドがいくつもの変名で詐欺をする様子を描いています。ドタバタは健在ですが、まとまりがなくダラダラした展開です。変装したり声色を変えているところから邦題がついたのでしょうが、怪盗じゃないです。ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド演ずる保護観察官と出会ったことから、泥棒に移っていきます。しかし盗んでからも一筋縄でいかず、ひねったところに落ち着きます。 基本的にドタバタコメディなのですが、前半はあまり笑えず残念でした。泥棒するあたりはそれなりにおかしかったです。終盤はパターン通りという感じで、ロマンスの要素も取り入れていますが、犯罪とのかみ合わせがうまくないと思います。ビジョルドはとてもきれいで魅力的なだけに、残念なできでした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-08-19 16:51:26) |
727. 史上最大の作戦
《ネタバレ》 この映画が成功した理由は、ドキュメンタリー・タッチを採用したことでしょう。英米仏独偏ることなく、時間の流れに沿ってそれぞれの動きを客観的に描く。戦争というのがどういうものなのか、その一端を理解するには、それだけで十分なのです。とはいえ、ノルマンディー上陸作戦を題材に選んでいるところをみても、アメリカ主導であることはわかるのですが、そういうことが気にならない配分がなされていると思います。 単なるエピソードの羅列なので、冗長に流れるかと思いますが、見ていてどんどん引き込まれます。まさに「事実は小説よりも奇なり」、単なる事実であっても、戦争という特異な状況下にあっては、十分ドラマチックな場面が続いて目が離せなくなります。これもまた、本作の優秀さを示していると思います。また、大量のエキストラを投入した長回しの戦闘場面は、やはりすばらしいです。 欠点としては、ナレーションなどによる状況説明が全くなく、ある程度第二次世界大戦についての知識が必要とされることでしょうか。そもそもなぜノルマンディー上陸作戦が行われたのか、その理由すら映画中では説明されていません。なお、戦闘場面ばかりでしんどいという意見もあるようですが、これは戦争を描く映画ですから、むしろ戦闘が続くのが当然でしょう。これが戦争というものなのです。 そう、戦争反対を主張するのもいいですが、その前に戦争とはどういうものなのか、それがわかっていなければ話になりません。戦争の現実を知るには、たとえば本作を見るのがよいでしょう。それでこそ戦争の非情さ・悲惨さがわかろうというものです。それでも、現実のものとして実感するのは、現代日本人にはかなり困難なことだとは思いますが。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-08-18 22:39:59) |
728. 戦場のピアニスト
《ネタバレ》 うーん、ドイツ軍のユダヤ人への仕打ちが不条理だったということはわかるのですが、正直「そうですねぇ」としか言葉が出ません。それを訴えたかったとすれば成功ですが、映画としてはまとまりに欠けるような。シュピルマンが病院を追い出され、廃墟となった街に出る場面が見どころでしょうが、大空襲後の東京や大阪、あるいは原爆を投下された広島や長崎の映像を見る機会が多い者としては、つい「建物残ってるやんか」と思ってしまいます。 シュピルマンを助けた理由として、ホーゼンフェルトは「神の思し召し」と言っています。ドイツ軍が飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃に会っていたら、シュピルマンは簡単に撃ち殺されていたかもしれません。連合国軍に反撃され、ワルシャワにもソ連軍が迫っていた時期、ドイツ人はかつて自分たちが迫害していたユダヤ人のような立場に立たされた。この期に及んでユダヤ人を殺しても仕方がないということが、シュピルマンの命を救ったのかもしれません。そのことや運良く生きながらえたことを考えると、ユダヤ教徒ならシュピルマンを「ドイツ軍の悪行を後世に伝えるため、神が生き残らせた」と言うかもしれません。 まあ何にせよ、見ごたえはありますが、あまり共感とか感動はできない映画です。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-08-17 12:04:08) |
729. 二十四の瞳(1954)
《ネタバレ》 一昨年だったか小豆島に行って、二十四の瞳映画村にも立ち寄りました。そのとき原作を買って読んだのですが、実はそれが初読。本作も今回初めて見たのですが、かなり原作に忠実で、「大石先生アカ疑惑」もちゃんと描いていたのは意外でした。もっとも原作と違って、やや唐突というか、とってつけた感じがしましたが。 さて、原作でも映画でも、どうもある種の居心地の悪さというか、違和感を感じてきました。これは作者が社会主義者であるためかと思っていたのですが、映画ではそれほど強く主張しているわけではないので、少し違うようです。おそらくは、お涙頂戴物を好まないという私の嗜好から来ているのでしょう。後半の大石先生は泣いている場面がやたらに多く、正直ウンザリしてきます。 ただそれ以外にも、時代の変遷というものが大きいと思います。公開当時、大石先生や生徒の親・級友のように、戦死した人を悼み悲しむ観客は大勢いたでしょう。それゆえ、作中人物の悲しみを自分の悲しみとして共有できました。しかし現在では、戦死した人を知っている日本人は少ないでしょう。震災などの災害で家族や知り合いを亡くしたとしても、そうしたものに巻き込まれて死んだ人と、自ら戦争に赴いて死んだ人を同次元で語っていいものやら。今日この作品を見て泣くというのは、「可哀相だから」という、幸せな人間がいわば他人事として見ることによるところが大きいのではないかと思います。それはそれでいいのですが、どうも私はそういうのが苦手というか、可哀相だから涙するということがありません。 ということで、やはり最初の分教場編がもっとも好みに合っています。とくに、生徒たちが大石先生を尋ねようとして歩き続けた末、バスに乗っていた先生に出会えて泣きながら抱きつく場面が印象に残っています。私にとって本作は、このシーンで記憶に残る映画となるでしょう。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-08-16 21:32:29) |
730. 乳母車
《ネタバレ》 この時代に「男から自立した女性」を描こうとしたのは天晴れですが、その男がどうにも情けないというのは、あまりいただけない。どうせなら、立派な男性から自立した話が見たかったものです。まあこの当時から、草食系男子とか肉食系女子とかいたのかもしれません。あと、なにかというと子供第一で、すぐに子供のことを持ち出すのもいい感じしません。子供のためなら何もかも正当化されるというのは、フェアではない。これまた、子供なしで話を進めてもらいたかったです。本作でポイントが高いのは、なんといっても終盤「お母さん」に変装する芦川いづみ。あの眼鏡は反則です。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2011-08-02 18:36:33) |
731. 東京物語
《ネタバレ》 子どもが親から独立し、自分自身の家庭を持ったら、やはりそれが一番大事になるでしょう。外からやってきた人は、自分の親であっても「来訪者」であり、平穏な毎日に乱れを生む存在になってしまいます。それはつまり、子が親離れしたということで、必ずしも非難されるものではありません。作中でも否定的には描かれていませんでした。「遠くの親類より近くの他人」とも言いますし。とはいえ、子どもに相手にされないと親としては寂しいもので、そのあたりのバランス感覚が絶妙です。ここが小津作品ならではの味わいになっていると思います。 本作では、終盤での周吉と紀子の会話がキモでしょうが、ここで紀子が「わたくし狡いんです」と言っているのは、どういうことでしょう。死んだ次男(夫)のことを忘れてきているのに、義父母に優しくしたのが狡いのか。紀子は「将来が不安になることがある」とも言っていることから、孤独な毎日を送っていると想像されます。特に友達がいるような描写も見られませんし。上京した義父母の面倒を見るというのは、淋しい日常を忘れさせてくれる格好の慰めだったのではないでしょうか。つまり、彼女はむしろ自分自身のために義父母に優しい態度をとったことを「狡い」と表現したのではないかと思われました。何にせよ、こうした戦争未亡人の孤独も取り入れたことが、本作にさらなる陰影をつけていると感じます。 なお、NHKのデジタル・リマスター版で見ましたが、画像だけでなく音声も改善されていて、聞きやすくなっているのは幸いでした。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-07-30 19:47:50)(良:2票) |
732. トゥルー・ヌーン
《ネタバレ》 タジキスタンでは長らくドラマばかりが製作され、長編映画は久しぶりとのこと。監督も映画を撮るのは初めてだそうです。そのせいかどうか、通常の映画と比べれば上映時間が短めなのに、長いと感じました。というか、全体的に平板で退屈です。有刺鉄線を挟んで学校の授業をするとか、結婚式のお祝いをするところなど、部分的に見どころはありますが。無線の使い方などいいと思いました。「新しい国境ができたことによる悲劇」という基本的なコンセプトは面白そうなのですが、うまく生かせなかったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-07-17 16:22:45) |
733. 恍惚の人
あー、コワ。非常に恐ろしい映画。何が恐ろしいといって、あんな老人を家族だけで看なければならないということ。社会的な問題提起作としては、大成功でしょう。ヒステリックになりながら献身的に介護するという、アンビバレンツな役を演じきった高峰秀子に拍手。森繁久彌も、とぼけたところが持ち味だけに、妙にリアリティがあります。 それにしても、この映画のどこで笑うのでしょうか。私には全くわかりませんでした。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-07-16 17:23:48) |
734. キャプテン アブ・ラーイド
《ネタバレ》 DVとか貧困を扱っていますが、あまり掘り下げていないので、ドラマとしてはいまいちという感じ。ヌール機長も、結局あの結末のために出したのかと想像するので、少し残念です。アブ・ラーイドの家の屋上や、子どもたちの遊び場から見下ろす街の風景が限りなく美しい。また、子どもたちのまなざしがとても力強くて印象に残りました。アブ・ラーイドの思いを継いだかのような結末は、ありがちですがいい終わり方だと思います。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-07-12 21:40:10) |
735. 風と共に去りぬ
《ネタバレ》 映画館でしか見たくない映画№ 1。今回で三度目の鑑賞。さすがにアラも目立ってきます。前半は時代に翻弄されるヒロインということで、かなり面白い。スカーレットは「強い女」というイメージが強いのですが、実はそうでもないんじゃないかと思います。しょっちゅう弱音を吐いているし、肝心なところではレット頼み。しかしこの人、かなりしぶといです。どちらかというと、逆境に立たされた時に本領を発揮するタイプじゃないでしょうか。そういう意味では、かなり魅力的です。そうしたことを考えると、やはり前半の最後、「二度と飢えることはありません!」と神に誓う場面がもっとも感動的です。 後半、特にレットとくっついてからは、ケンカしては仲直りというパターンを繰り返すため、やはり飽きてきます。時代性が薄くなってしまうのもマイナスポイント。あと、『ベン・ハー』などと並んで、ハリウッド式大物量投入映画の代表格に思われますが、後半だけ見るとそれほどでもないです。 ということで、一時期ほど高評価はできませんが、それでも映画史に残る作品であることは確かでしょう。もっともこれは、南北戦争という「アメリカで起こった唯一の内戦」を扱っていることが大きいと思います。アメリカ人にとっては、かなり特別な意味を持っているようですから。まあ、日本人がそれに合わせなければいかんということもないと思いますが。 [映画館(字幕)] 8点(2011-07-11 21:58:06)(良:1票) |
736. キューポラのある街
《ネタバレ》 原作は高校生の時に読みました。シリーズ五巻全部。細かい点は覚えていませんが、労働運動や安保問題に正面から取り組んだ、思想性の高い、しかもかなり面白い小説でした。映画化に当たっては、そのあたりはさすがに弱められています。「ふつうの青春映画」という感じ。当時の風俗がよく出ていますが、最終的に「どんな状況であっても学び続けることはできる」という点に落とすことで、普遍性を獲得しています。これがあることによって、傑作たり得たと思います。ただ、主人公のジュンよりも弟タカユキの方が、魅力的でしたが。加藤武の先生も、出番は少ないがいいですね。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-07-05 21:43:59)(良:1票) |
737. 煙突の見える場所
お化け煙突のように、色々な見え方をする人間。時に交錯し、時に離れていく気持ちを描いて余すところなし。前半のコメディ調から、シリアスへの移行もうまい。上原・田中はもちろんですが、芥川と高峰のコンビが作品を支えていたように思います。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-07-02 21:06:58) |
738. 友よ静かに死ね
《ネタバレ》 これ、もしかしたらアメリカン・ニューシネマの影響を受けているのかもしれませんね。有名なニューシネマの作と比べても、実話が元になっていたり、時にユーモラスだったり、主人公が最後に死んでしまうところが共通しています。特にユーモアに関しては、犯罪映画というより「青春もの」としての要素を強調しているようです。音楽も特徴的できれいですが、ちょっとしつこく感じました。映画そのものとしては、ありきたりで特にどうということもないのですが、先に書いたように、ニューシネマの影響ということを考えると、映画史的には注目すべきかもしれません。とはいえ、それで評価が上がるということもありませんが。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-06-20 21:34:46) |
739. パリで一緒に
《ネタバレ》 楽しいですね。でも、はっきり言って「おバカな映画」なので、まじめに見てしまうと楽しめないかもしれません。それに、映画に関するネタがいろいろと振りまかれているので、それについてはサッパリという人も、苦しいかもしれません。たとえば、「バスタブで執筆する脚本家」というのは、『ローマの休日』も書いたダルトン・トランボのことでしょう。劇中劇の主人公二人が“リック”と“ギャビー”というのも……。実は、こうしたネタ探しの方が楽しい映画なのかもしれません。 出演者では、なんといってもトニー・カーティス! 一応ゲスト的な出演なのに、作中で端役扱い。「名前なんてどうでもいい」とか言われて、笑わせてくれます。この人がいなかったら、かなり評価は下がったでしょうねぇ。 映画をネタにした、いわば「映画の映画」であるためか、ロマンスの方はやや弱いという印象を受けました。しかし、それを補ってあまりあるほど、映画ネタの会話や映像・音楽は楽しいです。なかなかの逸品です。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-06-19 08:43:36) |
740. メリー・ポピンズ
以前洋画劇場で見たはずですが、内容はほとんど忘れていました。けっこう教訓的というか、大人が見ても考えさせられるお話になっていますね。ただ、前半は子供を意識したところが多く、かんじんのメリー・ポピンズがなかなか登場しないこともあって、間延びしたという印象です。実写とアニメの合成や、舞台である20世紀初めのロンドンの雰囲気は出ていたし、絵作りはよかったです。ミュージカルとしては、魅力のある歌が少ないのが残念です。「2ペンスを鳩に」は名曲であると今回認識しましたが、これはシチュエーションの影響が大きいです。そんなわけで、魅力はあると思いますが、個人的にはあまり好みではありません。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-06-13 22:22:37) |