721. 我等の生涯の最良の年
《ネタバレ》 ~The Best Years Of Our Lives~邦題まま。 両手のない水兵ホーマー。義手でサインしたりマッチの火を付けたり、本当に器用だ。戦争で手足を失った人が多かっただろうこの時代、ジロジロ見るのは気が引けるけど、映画だったら見て学べる。「そうやって使うんだ。凄い練習したんだろうな、上手だなぁ」と。腫れ物に触れるような扱い、気にしない風にしてるのが、却ってホーマーを傷つける。 アルが戦地から持ってきたお土産、ジャップの刀と寄せ書き。見ていて複雑な気持ちになったけど、寄せ書きの意味を知っている息子が、きちんと複雑な心境を表現してくれた。もう「本物だ、すげえ!」と素直に喜ぶ年齢じゃなくなっていた。 新婚生活を再スタートしたのに、思うような仕事が見つからないフレッド。週32.50ドル。節約を強いられる生活と、まだまだ遊び歩きたい妻。 戦地からの帰還兵と、受け入れる側の家族のギャップと、それを埋めるためのお互いの歩み寄りを丁寧に描いた映画を、第二次世界大戦の終戦翌年に公開しているのが、凄い。 「ジャップやナチは共産主義を叩きたかっただけなのに、英国に利用された。無駄な犠牲だ。」戦後1年目だと戦勝ムード真っ盛りなイメージだったけど、当時そんな考えもあったなんて、今まで想像も付かなかった。 他の映画でも見たことあるけど、飛行機の墓場。繰り返しになるけど、戦後1年であれだけの軍用機が不要になるアメリカ、とんでもない国と戦争をしたものだ。エンジンのないB-17の不気味なこと… 建築材料にリサイクルされる軍用機、そこで働くことにするフレッド。戦争は終わった。人も兵器も次の役目が待っている。いつまでも戦後を引きずらない、アメリカって前向きな国だね。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-09-02 01:09:18) |
722. スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス
《ネタバレ》 ~The Phantom Menace~見えざる脅威。“prequel trilogy(前日譚・三部作)”と呼ばれてるらしい。 公開前から大々的にプロモーションをしていて、CMがバンバン流れて、ペプシのボトルキャップとかグッズもたくさん出ていたっけ。とても期待が大きかった分、公開から“なんかイマイチだった”と噂が広まり、私もタイミングを逃してテレビで観たんだよな。 スターウォーズらしくないメカ。トルーパーより弱そうな敵軍のドロイド兵。鬱陶しいジャージャー・ビンクス。あっさり負けるダースモール…私も良い印象が無く、たぶん4回くらいしか観てないと思う。今回SWシリーズのレビューを書くにあたって、EP4~6を観た流れで、改めて観てみた。 普通に見ていたら案外普通に楽しめる。2人のジェダイとか、ダースモールの美しい剣術とか、なかなか胸熱なんだけど… 政治と組織の争いの話が多く、小難しい。SWにそんな高度な話は期待していない。“そう言えば旧3部作って、ほとんど現場の話だったなぁ”と、改めて思ってしまった。一方でジャージャーが出てくるたび、いちいち面白い事をするので何かとテンポが悪い。画面がジャージャー1人になるたび“もう詰まらない事するな!ってか、出てくるな!”って思ってしまう。 難しい組織図とジャージャーの笑えないギャグ。どんな年齢層がターゲットなのか、どうにもバランスが悪い。 また奴隷のアナキンがジェダイを手助けする動機が弱いとか、ナブーとグンガンはどうして最初から仲良く出来なかったの?とか、今ひとつ掘り下げ不足でご都合主義。色々削ったりして、アナキンの幼少時代は1時間位にまとめて、後半は成長したアナキンのヤンチャ話にでもしてほしかった。 アナキンがパドメと比べて幼すぎるので、今後の展開を考えると、もう少し見た目の年齢差を感じさせない方が…とも思う。だけど母との別れを悲しむアニー坊やが、後のダース・ベイダーなんて… アミダラが乗るシルバーの宇宙船は滑らかなデザインでレトロ感があり、大昔のSF映画の宇宙船や60年代のアメ車のよう。X-ウイングが70年代のマッスルカーのようだから、逆算してあんなデザインにしたんだろう。 レトロ感と言えばポッドレース。“レース長すぎ”と不評のようだが、モトはベン・ハーの戦車戦から着想したんだろう。往年の名画のクライマックスだけに、盛り上がると思ったんだろう。レース自体は面白いんだけど、SWらしさがあまり感じられない。あとレースに出てくるエイリアン(双頭の司会者とかカメムシみたいなのとか)が、なんかSWのキャラらしくないなぁ、別のカートゥーンのキャラみたい。 このシリーズは最後がダース・ベイダー誕生という悲しい結末だから、敢えて明るいエンディングにしたんだろう。 最後明るく終わるSWって、EP1、4、6くらいだっけ。 [地上波(吹替)] 5点(2021-09-02 00:03:27)(良:1票) |
723. ポセイドン・アドベンチャー(1972)
《ネタバレ》 ~The Poseidon Adventure~ポセイドン号の思いがけない出来事。でどうだろう? 船の転覆という異常事態から、命の掛かった選択と結果が連続する展開は、とてもハラハラするし、私がその場に居たらどうするか?を考えさせられる。 大晦日のパーティから、不気味なサイレン。さっきまでパーティを楽しんでいた人たちが死んでいく地獄絵図。 逆さまになった世界。ここに残るか、自力脱出を目指すか。判断材料の一つが“責任者や信頼できる人の判断に従う”だと思う。 そもそもの転覆自体、無理に速度を上げるよう指示したオーナーの命令からだった。もちろんあの中では一番権力ある人物。 会場内の最高責任者パーサーが『ここで救助を待つのが最善だ』と。一番船に詳しい人がそう言うのだから。多くの人は従うと思う。 船医と共に船首に向かう乗客。船の詳しさとか責任とか関係なく、単に誰かに頼りたい心理、自分の命さえ他人に委ねてしまったんだろう。 “責任者や信頼できる人の判断に従う”は、今回残念ながら全部が裏目に出てしまった。 ジョン牧師『残ったら助からないかもしれないが、全員を置いていけない』スコット牧師の考えを認めつつ、弱い人のため、怪我をして動けない人のために残る。考えの違う2人の牧師が、お互いを尊重して別れる演出が見事。 何かとスコット牧師と衝突するロゴ。エイカーズが落ちた時、真っ先に海水に飛び込んで探すし、船尾ルートを探すスコットを17分も待つ。愛情からリンダを6回も逮捕したように、周りに誤解されるけど彼なりの人への思いが感じられた。 見た目から足手まといになると思われていたローゼン婦人の活躍。映画観ながら一緒に息を止めてみたけど、私は助からなかったわ… 「最後に愛してるって言ったのは、いつ?」『さぁ20年前かな?昨日かも?』名セリフ、こんな老夫婦になりたい。 目的地は船底、薄いとは言え1インチの鉄板。そこから先どうするんだろう?と思ったが、彼らが助かったのは、波の影響で転覆すると読んで、早い段階でメーデーを出した船長の判断だった。そのため救助隊も早く到着していたんだろう。 パニック映画は数々あるけど、これほど、みんな助かってもらいたい映画も少ない。短い時間だけど人物描写が的確で、魅力を引き出せているからだと思う。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-28 20:37:55)(良:2票) |
724. ぼくらの七日間戦争(1988)
学校への不満、教師への反抗、立入禁止の廃工場、自分たちだけの生活。誰もが共感できて、誰もがワクワクする。私も同級生と、当時こんな事がしたかった。かつて少年少女だった全ての人のロマン。 でも初めて観た時は、私はもう15~6歳だったから、面倒くさいお年頃だったと思う。 外国のデモ隊と警官隊の衝突のニュース映像なんかを見た経験から『機動隊のやられ方、嘘くさ!戦車が出てきた時点で、警察も本気でツブしにくるだろ』学校祭の出し物、展示物を何日も掛けて制作した経験から『最後の罠とか花火とか、嘘ばっかり!』なんて。特に映画の後半部分の嘘くささが鼻について、気持ちが冷めていったっけ…あぁ、もう少し子供だった頃に観たかった。 いい大人になった今は、TMネットワークの歌とともに懐かしさも感じながら、当時よりずっと楽しめたかな。 何より宮沢りえの“時の人オーラ”が凄い。彼女の白い肌と透明感。他の女の子と並んだとき、腰の位置が違う。このあと芸能界で色んな仕事をさせられるけど、このときは宮沢りえの存在全てが絶対領域だった。 体育教師にジーンズの裾を引っ張られて破れる。中山役の宮沢りえをホットパンツ姿にする見事な演出。 中山「エレーナをそんなにぶたないで(棒)」カッキーが戦車を見上げると、あらら大胆な改造ホットパンツに。 ここのシーン、しゃがんだ中山が立ち上がるまでを、もっとネチッこく撮りたかったハズだし、その意図で入れたシーンだと思うけど、意外なほどアッサリしたカメラワーク。“宮沢りえをそんな目で見てはいけない”という意識が働いたのかもしれない。なんて思ってしまうほどの彼女の存在感だった。 菊池と中山の仲を見て急に機嫌が悪くなる安永。かといってこの三角関係が発展するとか無く、淡いままで終わらせるとか、いかにも当時の中学生らしい。 エース菊池と補欠の相原が仲が良かったり、絵の得意な久美子が、鉄の扉の外側でなく内側に大きな絵を書くとか、彼女の才能と内向的な性格が出ていてすごく良い。このくらいの歳まで、みんな才能も明るい希望や夢もあるけど、画一的な教育社会では、みんなの才能が世間に認められるわけじゃない。 61式戦車も重要。なんであんなところに居たのかは謎だけど、それが却って不思議で面白い。 何年も放置されたであろう古い鉄の塊。子どもたちの修理なんかで動くシロモノじゃない。それが動くなんてファンタジーだ。 まるでアイアン・ジャイアントやラピュタのロボット兵並みに、子どもたちのピンチに「・・・どれ、助けてやるか」と動き出すエレーナ。 61式は戦後初の国産戦車で、一度も戦闘で血を流すこと無く、今では全車退役しているそうな。そんな平和な時代の、動くはずのない戦車が、子どもたちを助け、みんなを載せて敷地内を楽しそうに駆け回り、元の位置の戻り、エンジンが焼けて寿命を迎える。 人に向けて撃つことのなかった大砲は、子どもたちの七日間戦争の終わりを告げる花火を打ち上げる。 今見ても最後の大暴れ、完成度の高すぎるトラップの数々が、11人の子供が頑張った感=リアリティが無くやりすぎで残念。 小規模にするか、せめて他の生徒も応援に来てみんなで…とかなら、多少説得力も増しただろうか? 最後どうなったのか。子どもたちはあれだけのことをして『楽しい思い出が出来たなぁ』くらいな感じで学校に通う。 バラバラに転校もさせられず、ワンポイント・ソックスも勝ち取れず、校長先生に殺されもせず。何もなかったかのような登校風景。 子供も大人もお互いに理解し合えず。って結末。最後が惜しい。 [地上波(邦画)] 6点(2021-08-25 14:23:49)(良:1票) |
725. ハチ公物語(1987)
《ネタバレ》 “キング・オブ・銅像になった実在の動物”忠犬ハチ公。 死んだ主人を迎えに駅に通い続けたというエピソードを、わかり易く映画化した作品。 東宝が南極物語のヒット以降、子象、子猫と“○○物語”という動物モノ映画が乱発された中、松竹が作った動物映画がこのハチ公物語。 当時は動物の扱いが雑で、ハチが夢の中で上野先生に飛び込むシーンとか、明らかに犬を放り投げてるのは、今ではまず撮れない映像。 そんな時代、終盤のハチの弱々しい姿が、どうやって撮られたのか考えると、ちょっと怖くなる。 実話を極力忠実に再現したのではなく、かなり創作の部分が多いようで、あくまでフィクションとして観たほうが良いみたい。 最初の、秋田から渋谷駅についた時、犬は死んでたってのは、実話ならともかく、創作なら意図のよく解らない演出。 「犬がほしい」って言い出した娘の千鶴子が、犬の世話は父任せ。アッサリ出来婚で家を出て、父の死後もハチを引き取りもしない。動物を飼うには最後まで世話をする意志が必要。って教訓だろうか? 親戚がハチを持て余し、渋々飼うことになった菊さん。史実ではハチを最後まで大事に面倒を見てくれたのに、どうしてアッサリ死ぬことにしたんだろう? 焼き鳥屋や駅員とハチのエピソードを、心温まるものに変えたのは、子供にも観せたい映画だから解らないでもないけど… 仲代達矢演じる上野先生の、溢れんばかりの本気の犬愛。演技の枠を超えて素晴らしかった。 秋田や渋谷駅、上野先生がハチと歩いた商店街の、大正~昭和初期の再現が美しい。 店のお婆ちゃんとか、クリーニング屋?の店主とか、2匹の飼い犬とか、温かい雰囲気含めて綺麗。 一方で最後のシーン、ハチが雪を被って死んでいる早朝の渋谷駅。 年々軍国化が進むような描写もあって、誰もハチが死んでるのに関心を持たないのが、リアルにも見えるけど、一方でやりすぎにも見えた。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2021-08-22 18:37:24) |
726. 悪魔の毒々モンスター
《ネタバレ》 ~The Toxic Avenger~有毒の復讐者。…なんか毒々モンスターの名前が“ザ・トクシック・アベンジャー”らしい。 邦題が良い。特に“毒々”ってところのインパクト。考えた人すごい。 むか~し、テレビの深夜映画で観た。少年を轢き殺すのが衝撃過ぎ。 母親に笑顔で見送られた自転車少年を、街の不良たちが車で轢き殺す。ルールのある殺人ゲームで、少年が死んでないから戻って轢きなおす。死体をポラロイドカメラで撮って喜ぶ…テレビで何てものを見せるんだ。軽くトラウマになったじゃないか。 罪のない少年、盲導犬、老婆と、今まであまりホラー映画のターゲットにならなかった層に対する残酷描写。 盲目のヒロイン・サラ。性格は明るく健康的でエロエロしてないのに、気がつけば胸もとがはだけてる、今で言う“隙の多い女”。 障害を持った人がお色気担当のギャップ。 『フレディやジェイソンみたいな怪人が、ヒーローのような活躍をするホラー・コメディ』だと思って観てたけど、 『バットマンやスパイダーマンのようなヒーローが、見た目も残忍さも怪人並みなヒーロー・コメディ』だった。…こんな書き方で伝わるかな。 ホラー映画でなくヒーロー物。タイトルに最近流行った“アベンジャー”が入ってるから今さら気がついたんだけど、当時まだバットマンは公開されてなくて、日本ではアメコミ・ヒーローのイメージが定着してなかったから、メルビンは日本に馴染み深いジェイソンみたいな怪人に分類されたんだろう。 邦題も“毒々ヒーロー”でなく“毒々モンスター”だし。 そう考えて観ると、メルビンはピーター・パーカーみたく事故で変身してるし、敵キャラのシガーフェイスとか、顔はんぶん黒塗りの強盗とか、ヒーロー物に付きものの個性的な悪党が出ている。 舞台のトロマビル(トロマ村。てっきりビルディングだと思ってた)は、ゴッサムシティみたいな架空の都市で、トロマ映画ではよく出てくるっぽい。 ホワイトバランスとかがカメラごとに違うから、警官の制服や空の色がカットごとに青かったり白かったり… ベッドシーンが音楽とともに終わったと思ったら、同じ音楽がまた始まって、さっき見たシーンと新しいシーンが織り交ぜになってまたベッドシーンが… 低予算なのに戦車まで出す州軍の出動シーン(同じカットが何回も)に、なんで今?ってタイミングで意味不明に入る回想シーン… メルビンたちのテントを包囲する戦車の前に、兵隊とギャラリーがまぜこぜに居たりとか… きっとピリピリしないのんびりした撮影現場で、みんなでワイワイ楽しんで作ってるんだろうなぁってのは伝わる。 この、のどかさがトロマ映画らしく、完成度が低く編集は適当。 だけど、残酷映像だけは妙にクオリティが高い。あと必要性が低いスタントシーンが多い。全体的にバランスが悪い。 レンタルビデオの普及で日本未公開だった、いわゆる“B級映画”にもビジネスチャンスが生まれた。 '84年に作られた本作も、'87年になってから奇抜な邦題で劇場公開。背徳感を感じてしまうグロ・エロ内容から、日本で突然マニアックな人気に。 『日本では俺たちの作風が売れるんだ』と勘違い(?)したらしく、急遽'89年に東京を舞台にした続編が作られた。 他のはともかく1作目は、私はけっこう好きですよ。DVD買ったとか人には言えないけど… [地上波(吹替)] 5点(2021-08-22 15:39:40) |
727. 市民ケーン
《ネタバレ》 ~Citizen Kane~邦題そのまま。 20年ほど前に初めて観た。“ばらのつぼみ”って何だろう?だけで引っ張り、ケーンという人物の幼少期から最後までを描くスタイルの斬新さに驚いた。 色々な説が出てきた結果、トンプソン記者が出した『人生は一言では語れない。“ばらのつぼみ”はケーンの人生の、失われたパズルのピースなんだろう。』は、ここまでケーンのド派手な人生を観せられた私には、充分に説得力のある結論だった。 その後倉庫のガラクタとともに映る“ばらのつぼみ”。それが人知れず燃やされる。最後のわずか数分で本当の正解を知らされたことにショックを受けた。 何だこの『誰も正解に辿り着けず終わるのに、私だけが知ってしまった』感。この衝撃を誰かに伝えたかったけど、こんな古い映画見た人なんて周りにいないし、どうにももどかしい気分になったっけ。 「彼が求めていたのは愛だけ。相手に愛を与えられないから愛を失った。彼は自分自身は愛していた。あと母親を愛していた。」 あのソリは母親が、クリスマスか誕生日にプレゼントしたものだろう。少年には、他のおもちゃと違って恐らく特別なものだったに違いない。当時の生活水準では高価な品だったとか、ねだって無理に買ってもらったとか。とにかく“ばらのつぼみ”は少年の宝物だったんだろう。 スーザンと出逢った日、ケーンはだいぶん前に亡くなった母の遺品の整理に、マンハッタンの倉庫へ向かっていた。思い出探しの感傷旅行のつもりだったと。恐らくその後、倉庫には行かなかったんだろう。 母親は幼い頃に手放したケーンの宝物“ばらのつぼみ”を捨てていなかった。ケーンが改めて倉庫に向かっていれば、ソリは見つかっていたかもしれない。 “おかえりなさいケーンさん、467名の従業員より”従業員たちが感謝の気持から給料を出し合って作ったであろう記念のカップ。 従業員たちと積み重ねた信頼より、大統領の姪エミリーとの新しい愛と野心を優先するケーン。 数年後、エミリーとの関係は冷え切っていたが、スーザンとの関係を暴露されたのち、一人息子まで失ってしまった。 ザナドゥの山のような未開封の木箱。彫刻、絵画、貴重品の数々。金で買えるものは何でも手に入るケーン。スーザンを失った時、スノーボールに幼少期のふるさとを見て、自分の欲しいもの、失ったものはもう手に入らないことに気がつく。 親元からNYに連れて行かれたケーンは、クリスマスにサッチャーから新品のソリをもらう。 同じソリでもこれはケーンが大事にしていた“ばらのつぼみ”じゃない。 自分の大事な宝物、自分の求めた愛。一度失うと、そのあと他のどんなものでも、埋め合わせることなんて出来ない。 [CS・衛星(字幕)] 9点(2021-08-21 01:44:10)(良:1票) |
728. 私は告白する
《ネタバレ》 ~I Confess~邦題そのまま。 DIRECTION→(こちら→)からの、死体。遊び心のある演出。 夜中の11時過ぎにあんな幼い少女が二人、外を歩いてるなんて、平和だなぁ…すぐそこで殺人事件起きてるけど。 告解の内容は誰にも話せない事から、ローガン神父の苦悩と、神父に対する世間や警察の誤解に焦点が当たっている。 そっちがメインなためか、当の殺人事件や犯人の行動や動機がかなり雑な印象。 神父ももう少し警察に言えることがあるんじゃないか?って思うけど、どうなんだろ? ローガン「ビレットが死んだ」ルース「私たち自由ね」のシーン。同じ時間同じ場面を、ラルー警視側の視点と、車で来たルース側から見た視点の両方から見せるのは面白い。今では割と使われる撮影方法だけど、当時他にあったかな? 裁判での逆転劇がクライマックスかと思いきや、証拠不十分で無罪というスッキリしない判決。 恩人に罪を被せるケラーの卑怯さ加減。あぁ憎たらしい!と思っていたら、あれだけの観衆の前で銃を撃つという、最後のヤケクソ感。 最初からケラーの犯行に後ろ向きで、でも告白する勇気もない妻のアルマ。ローガン神父のために勇気を出した結果、夫に撃たれて命を落とすなんて、ひたすら可愛そう。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-08-20 20:23:32) |
729. シコふんじゃった。
《ネタバレ》 チャラっ!軽っ!薄っぺら! 今ほどドライでなく、昭和期ほど汗臭くもなく、平成バブル末期の大学生の空気が懐かしい。良くも悪くも楽な時代だなぁ。 貴乃花がまだ貴花田だった頃、若い人にも相撲が大人気だったけど、当然自分で取るより観るものだった。宮沢りえの“ふんどしカレンダー”が話題になったあと、ジャニーズのモックンがフンドシを締めて相撲を取るって、すごい時代だなって思ったわ。…はいマワシね。 「潰れるー…」『辛抱~。辛抱~。』昔から変わらない印象の竹中直人が、この映画では見るからに若くてツヤツヤしてた。オーバーすぎる下痢芸は見事。 完敗しての打ち上げの空気…穴山先生に変わって川村くんがOBに言い返したのも、青木の涙を見て秋平がブチギレるのもカッコイイ。 弱いから当然負ける→悔しくて練習頑張る→善戦。という大会もの映画の黄金パターン。解っちゃいるんだけど、観ていて熱くなるね。 ただ序盤の取り組み結果が4連続で3勝2敗、同じ人だけ勝つパターンなのは、もうひと工夫欲しかった。 3部リーグ優勝の打ち上げの、楽しそうなことと言ったら。青木の初勝利に嬉しそうなOBが良い。こっちまで嬉しくなる。 TVで見る本物の相撲取りに比べたら全然細いんだけど、モックンも竹中直人も良い身体しているし、みんなきちんと相撲を取っている。 日本のコメディ映画も、真面目に作ればここまで面白く出来るんだ!って、当時生意気にも感心したっけ。 [地上波(邦画)] 7点(2021-08-20 19:44:02) |
730. グッドナイト&グッドラック
《ネタバレ》 ~Good Night, and Good Luck.~「おやすみなさい。そして幸運を」エドワード・R・マローがTV番組の最後に言う締めの挨拶。 現代の魔女狩りと言えるほど加熱したマッカーシズムとジャーナリストの闘いを取り上げた作品。 モノクロの渋い映像。1953年のアメリカが舞台で、序盤からたくさん人名が飛び交うので、正直置いてけぼり状態になってしまった。 番組の構成を打ち合わせ、番組を流し、出来具合を話し合い、新聞の評価で判断する。美味そうなウイスキーとダイアン・リーヴスの挿入歌がホッとさせてくれる激シブい構成。 予備知識無しで観たから、どれだけ理解できたか疑問だけど、余分な説明、私たちでもついていけるくらいの時代背景を一切省いて、ロケもなく当時のニュース映像もほぼ無く、当然娯楽性は排除して、ほぼ全編スタジオの中だけで、90分台に収めたことは、なんとも凄いバランス取りだ。 今の日本の報道番組は、何でも娯楽に結びつけてしまったり、内容よりインパクトの強さでトップニュースにしてしまうような報道が多い気がする。でも深夜のドキュメント番組とか、興味深い番組も多い。ジャーナリズム、報道番組の存在意義は、視聴率ばかりでは無いことを、忘れてはいけないね。 娯楽として楽しめる作りではないけど、駄作でもない。マッカーシズム、マローについて予備知識を入れてから観るべし。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-08-17 22:17:41) |
731. ダイヤルMを廻せ!
《ネタバレ》 ~Dial M for Murder~ダイヤルのMは“殺人”のM。 序盤、完全犯罪のタネ明かしから入るのは珍しいと思った。説明聞きながら電気を消して、暗い中で動けるかとか確認するスワンも芸が細かい。 タネ明かしから見せるってことは、当然その通りにいかないって想像が付くんだけど、奥さんが私も出掛けるって言われたときはドキッとした。その後時計が止まって計画がズレるけど、こっちは特に悪影響なかったんだっけか? 優秀な警部相手に、とっさの思い付きで“駅で彼を見た”とか“上司の電話番号を聞くため”とかポンポン出てくるトニー。苦しい言い訳にも取れるけど凄い。 マークの推理が、最初の完全犯罪のタネ明かしとほぼ一緒なのが、ハラハラして面白い。さすが推理小説作家。 最後の鍵がマーゴのでなくスワンのだと気がつくシーン、警部の読み通りになるところをトニーのセリフ無しで見せるのも上手いなぁ。 しかし、殺人とは言え、不倫カップルに制裁を加える夫が悪人に描かれるって、なんか時代を感じてしまうなぁ。最後にマーゴとマークが警部と一緒にトニーを出迎えるところ、ハッピーエンドと言って良いんだかモヤるけど、全てを諦めて二人に酒を薦めるトニーが格好良くも見えた。 そもそも鍵を開けてすぐ、階段のカーペットに鍵をしまったスワン。自分の家の鍵とそっくりだからそうしたのか?家の鍵が多様になった最近の家では使えないネタ。このアパートの玄関、この時代にオートロックなのか?トニーが出ていくとき鍵かけてないよーな。 有罪から死刑になって執行されるまで早っ!とか、警部令状もなしにマーゴの鍵で家宅捜索しようなんてアウトローとか思ったけど、一番ビックリしたのがインターミッション。105分の映画で途中休憩が入るなんて予想外だった。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-08-17 21:38:47)(良:1票) |
732. トータル・リコール(1990)
《ネタバレ》 ~Total Recall~しっかり記憶し、しっかり思い出す能力。へえぇ~。 オープニングの印象的なテーマソングとともに流れるクレジット。もう壮大で格好良くて懐しくてワクワクする。 シュワの身体は最高に脂が乗っていて、表情にも人気者の余裕がある。夢の愛人に焼きもち焼く奥さん役のシャロン・ストーンが可愛い。 セーフティゾーンのレントゲン保安システム。ネイルペン。テニスの立体ホログラム。発信機取りだし器。2週間よオバサンはSF映画の名シーン。こういった夢の近未来道具の数々も素敵。 バーホーベンと言えば架空のTVCM。同僚が「リコ~ルリコ~ルリコ~ル♪」って歌うのが大好き。なんか架空の世界に厚みをもたせてる。でそのリコール社、タイトルの“Recall”でなく“REKALL”社だった。…意味は特に無いみたい。 未来の世界、タクシー運転手が会話もできるロボットなのに、ダグの仕事は手持ちのハンマードリルで岩崩しの違和感。このへんとってもバーホーベン。 リコール社で暴れるダグ。トラブルが起きて慌てるスタッフの臨場感も、バーホーベンの十八番に思う。 さて、この映画は結末がハッキリせず、見た人の想像に任せられる作り。 ①ダグは火星を救った。 ②全てリコール社のプログラムだった。 ③リコール社のプログラムに事故があり、ダグは夢から帰られなくなった。 …③な気がした。リコール社のプログラムが『火星の青い空』で、結末も青い空で終わる。①だとするとシナリオがプログラムに沿い過ぎてる気がする。 ②だとしたら、途中で奥さん殺しちゃうのはマズイから駄目だろう。 やっぱりドクター・エッジマーとローリーが来たときが、ダグ生還のターニングポイントだったんじゃないか?って。 本来はエイリアンの遺跡を見つけて、謎の遺跡を発動させると火星の空は青くなるかもしれないぞ!?続きは本物の火星で!!くらいで終わるシナリオだったところ、ダグが夢から出られなくなり、空が青くなるまで行き着いてしまったと… 前回見たときは①だと思った。観る度に結末予想が変わるのも、毎回楽しめてる証拠かな? [地上波(吹替)] 7点(2021-08-17 21:07:50) |
733. スクール・オブ・ロック
《ネタバレ》 ~School of Rock~ロックの学校。 無職の男が偽教師になって小学生を騙して趣味のロックバンドを組むという、とんでもない映画。 最初の演奏、デューイが1人悪ノリしすぎてバンドで浮いてる。バンドをクビになる前提がないと物語が始まらないんだけど、協調性がない男なんだろうな。 そんなデューイだけど、子どもたちにコードとか教えるやり方は解りやすくて上手で、最初の協調性の無さとは、ちょっとチグハグ。子供だから素直に従ったってのもあるんだろうけど。 音楽の授業を見てバンドを作るけど、拾い上げるのはギター、ベース、キーボード、ドラム。バンドに必要な子だけなのはね。他の子も吹奏楽とかやってたんだから、バックコーラスだけでなく、上手く組み込めなかったのかな?って思ってしまう。 イギリスのバンドが多く出てきたから、イギリス映画かと思ったらアメリカだった。アメリカならブルース・スプリングスティーン&Eストリートバンドとか、ヒューイ・ルイス・アンド・ザ・ニュースとかの大所帯バンドがあるんだから…でもコレやったら、最後のアンコールみたいなお遊戯や学芸会になってしまうかな。難しいところ。 実際にあの子達が演奏してるそうだから、きっと生演奏にこだわった結果だろう。本当に演奏できる子役と、演技だけ出来る子役。金髪の女の子とか可愛いけど、楽器演奏はできない子なんだな。見せ場がバンド名の発表くらいだけど、スクール・オブ・ロックを子どもたちが決めたって思うと、結構じんわり来た。 最初の授業で“あきらめろ、夢を捨てろ”って言ってたし、ウチのコがグルーピー役とか荷物運びの裏方とかだったら、親だったらちょっとガッカリかな。 S・ニックス好きって弱点を突かれて、ロザリー校長が砕けていくのが面白い。デューイが引くほど校長の辛さを熱弁する姿なんて人間臭くてたまらない。 S先生が偽物とバレて全部中止!からの最後の演奏は良い流れだけど、デューイに何かしら反省というか、後悔と改心の場面は欲しかった気がする、愛しのローズマリーみたいな。最後はみんな制服かと思ったらデューイだけ制服。まとまってるのかまとまってないんだか… エンドロールはとても楽しくて良かった。でもやっぱり、子供が主役の映画なら、最後も裏方の子たちに出番あげて!って思った。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2021-08-17 14:43:25) |
734. わが谷は緑なりき
《ネタバレ》 ~How Green Was My Valley~私の谷はなんと青々としていたことだろう。おんなじ意味です。良い邦題だと思う。 炭鉱、長屋、坂、山。平べったいスタジオ撮影でなく、空気まで伝わりそうなロケが美しい。モノクロなのも郷愁を誘う。 ロケーション、シチュエーション。他の映画で観たような場面がチラホラあることから、かなり影響を与えた映画なんじゃないかな。 古き良き大家族。夕食はみんなで一つのテーブルを囲み、お祈りをして、お父さんから食べる。父は家族の頭で、母は家族の心臓。家の中で家長として偉そうにしてる父親と、実際に偉いお母さん。満たされる家族の時間。 世間の追い打ち。賃金低下からスト。子は父を思うけど、父は習慣を重んじるために生まれる対立。災難は母と末っ子のヒューに。 仕事が減り自らアメリカに発つ兄たち。姉が炭鉱主の息子と結婚したのにクビになる兄たち…少しは優遇されてもと思うけど。 ボクシングを習っていじめっ子と闘い、ムチで打たれるヒューに、ハンカチを「強く噛め」と言ういじめっ子にほっこり。 長男が事故死して、未亡人になった初恋の兄嫁ブロンと同棲するヒュー…役者が変わらないから、時間経過が掴みにくいけど、学校を卒業して炭鉱で働くとかしてるから数年が経ってるんだろう。成長したヒューとの、ふわふわした話にもなりそうだけど、ここもうちょっと観たかったかな。 心を病んで離婚して実家に出戻るアンハードと、牧師との関係に陰口を言う谷の人たち。自分の教えが無駄だったことに心を痛めて谷を去る牧師。序盤の父親のいない子を生んだ女性に対する厳しい扱いといい、田舎の陰湿さが出てる。この谷のどこがどう“緑なりき”なのか。牧師の最後の説教がグサッと刺さる。 世界地図を見てバラバラになった兄弟を指し示す。ヒュー「母さんはみんなを照らす星だよ」母『地図なんか見なくても、子どもたちは家の中よ』教養がなくても母は母だなぁ。 谷=生まれ育った場所。故郷。家。母と家族の絆がある限り、産まれた家は永遠に“緑なりき”なんだろう。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-08-17 13:13:03)(良:1票) |
735. パンダ・コパンダ 雨ふりサーカスの巻
《ネタバレ》 前作の数カ月後に上映された続編。こちらもあくまで児童向け作品。このシリーズに比べたら、トトロなんてアダルト向け映画だ。 …長崎に行ったお婆ちゃん、まだ帰らないんだ。って気になるけど、もう歯ブラシも食器もベッドも3人生活仕様になってる。 パンダの次は虎の子が逃げてきた。珍しい動物がいる場所として、動物園の次に思いつくのって、やっぱりサーカスかな? ベッドを舟にするとか、やっぱり子供らしい発想の解決策。小さい頃レゴブロックで遊んだことを思い出した。板状のパーツに小さい三角くっつけて飛行機とか、それに近いベッドの活用法。 トラちゃんのお母さんとか、他の動物は人語を話さない。そう言えば前作の犬も話さない。前作は中国のパンダ外交・パンダブームで作られたそうだから、もしかしてこの当時、パンダに続いて赤ちゃんトラが話題になったとか、あったのかな?世間で話題の動物だけ話せるようにしたとか。 トラ、ゴリラ、ライオン、象と強い動物がわんさと出てくるけど、活躍するのはパパンダ。暴走列車の途中からゴリラとライオンが見えなくなった。ちゃんと居るから探してみよう。 ミミちゃんの開脚倒立、真似する子多かったろうな。 というか、ミミちゃんの真似するほど、この作品当時ヒットしたのかな?ハイジやルパンと違って、この作品はナウシカやラピュタの本で存在を知ったくらいで、周りから聞いたこと無かったなぁ。 調べたら「東宝チャンピオンまつり」ってワクで公開されてた。…知らない。 ヒットしてたら、今度は水族館辺りを舞台に出来たと思う。いや今からでもどうだろう? 今はこの作品もジブリ・ブランドに組み込まれて、ぬいぐるみとかグッズとか売ってるのにビックリした。この作品からもお金の匂いがするなんて。 …って言っちゃいけないか、おかげで私もこの作品を観られたんだから。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2021-08-17 11:41:39) |
736. パンダ・コパンダ
《ネタバレ》 完全児童向け作品だけど、作画、動画のクオリティは高く、子供だまし作品ではない。 序盤で町の住民から、ミミちゃんがお婆ちゃんと二人暮らしな理由を手短に状況説明されるので、かろうじて大人も付いていける。 お巡りさんがルパンの声で泥棒を心配するとか、今だったらもっと、これ見よがしなネタにしそうなところをグッと抑えてる感じが良い。 この世界のパンダはしゃべる。パパンダは人間の大人として、パンちゃんは幼児として。はい大人はここまで。ってところだけど、竹やぶに執着を見せるパパンダとか、会社に行くのに困るパパンダと空気読むミミちゃんとか、まだ楽しめるんだよね。 犬との喧嘩で見せるパンちゃんの強さ。「パンちゃん犬に噛まれます、どうしますか?」『パンちゃん、カタイからかまれない』パンダが硬い、強いなんて突飛な設定、大人向け作品で言うところの“反則”だけど、子供が考えた解決策としてアリで、それを説得力のある(あるか?)映像にした技術力の高さ。 同様に動物園に帰る事になったパンダたちと、ママになったミミちゃんの解決策『ウチからかよえば、いいんだよ』も、大人では思いつかない発想。檻の付いたトラックで運ばれるのでなく、タイムカード押して電車で通うユーモラスさ。 大人も最後まで楽しめる作品とかじゃ決してないんだけど、幼稚園くらいまでに観ていたら、ハマったろうなぁ。 OPの声優の名前の隣に、演じたキャラクターの絵が並ぶの。すごく解りやすくて良い。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2021-08-17 11:02:11) |
737. 硫黄島からの手紙
《ネタバレ》 終戦の日。ということで鑑賞。 父親からの星条旗が思ったほどピンとこなかったため、劇場には行かなかったことを後悔してしまった。 アメリカ映画のスケールで、日本側の視点から極力中立に、丁寧に描かれた戦争映画。 ここまで違和感のない日本の文化と考え方を表現した映画を、アメリカが作ったことが驚く。夜中に国旗を掲げてるとか、あれ?って思う描写は少しあったけど、日本で作っていたら、きっともっと違和感を感じる、反戦メッセージの強すぎるチープな作品になっていたんじゃないかな。と思う。 廃トーチカ、朽ち果てた戦車。調査隊が洞窟を調べる現代から、戦中の硫黄島、灰色の空と土。西郷のボヤきに繋がるのが上手い。 一兵卒でさえ無意味だと思う穴掘りをさせられ、ボヤくとムチで打たれる。新しい司令官が作業を止めさせるよう命令しても、直属の上官が止め!と言うまで穴を掘る。今の日本社会もそう変わらない。 「ありゃいい司令官じゃねぇか」「メリケン好きじゃないか?」小澤や野崎との、今ならLINEなんかでするような普通の人の会話から、彼らと今の私達との距離をグッと縮めてくれる。 敵と撃ち合う事もなく、ひたすら戦場を駆け回る西郷の目を通してみる硫黄島の戦い。撤退命令に背き集団自決を選ぶ指揮官と、従うしかない一兵卒たちの現場の空気。私があの場に居たらと思うと、恐怖以外の何物でもない。 地雷を胸に体当たりを敢行する伊藤大尉。死ぬことが出来ず一晩以上放置され、軍人としての誇りも無くなり、孤独な自分と向き合うと、やはり死が怖くなる。助かりたい一心で士官の軍服まで脱ぐ、人間の弱さが生々しい。 負けて諦めて自決して。無能な士官ばかりでなく、バロン西のように人望のある士官も、活躍しすぎない適度なバランスで描かれる。 鬼畜米英と教えられた敵兵の母の手紙。日本兵もアメリカ兵も家族の思いは変わらず、また当時の彼らと今の私たちの思いも変わらない。 西郷が燃やさずに埋めて、61年後に発見された手紙。家族や子に宛てて書いた祖先たちの気持ち。 私達と変わらない普通の日本人が、あんな怖いところで書いた手紙。 生きて本土には還れない、家族には届けられないのを知っていて書いた文面の、何と穏やかなことだろう。 「ここはまだ日本か?」「はい、日本であります」 当時映画を見たあと、どこにあるかよく知らない硫黄島を地図で探した。彼ら英霊が眠る地は、今も日本の領土だ。 あんな遠い南の小さな島で、36日間も頑張ったんだ。 [DVD(字幕)] 9点(2021-08-15 17:40:27)(良:1票) |
738. ハンコック
《ネタバレ》 ~(John)Hancock~ここに署名して。 強盗捕えるのに道路標識倒して、高速道路ボコボコにして、ビルも壊して…良いことをする以上に被害を出してしまう、嫌われ者のスーパーヒーロー。本人も能力があるのに、やる気がない酔っぱらい。とても面白い設定だ。 「君はクズだ」「君が問題を起こすのはさびしからだ」「ムショに入れ」レイがハンコックをプロデュースするけど、そもそもレイのプロデュース能力が未知数(大企業に一方的な提案をして断られた描写しかない)だけに、ハンコックの表面だけを捉えて適当に言ってるようにも思う。私だったら怒る。 それでも改心したハンコックが丁寧に事件を解決。警官にグッジョブを繰り返す姿は微笑ましく、大衆に認められるシーンはカタルシスがあった。ここまで充分に面白いヒーロー映画だと思う。 そもそも、ハンコックって何者なんだ?とか、あんなヒーローがいるのに、どうして犯罪組織が成立する?とか、ハンコックのせいで街がメチャクチャなのに、どうして普通にベンチで寝てるんだ?とか、大空に飛ばされたいじめっ子、普通に死ぬよな。とか、文字通り頭をケツに突っ込んだら死ぬでしょ。とか。映画だからでは納得できない事が多すぎる。 映画の世界は漫画の世界。Dr.スランプのペンギン村みたいなものと思えば、まぁ、納得できなくもない。 レイ「宇宙人なんだろ?」「隕石に乗って?」「軍の病院?」なんか失礼じゃないか?私だったら怒る。 ここからメアリーがスーパーウーマンになってて、物語が急展開する。 ハンコックが『アスホール』で怒るのに対しメアリーは『クレイジー』に切れるとか、悪くないんだけど、展開が唐突だ。 まだ1時間も経ってない。90分くらいの映画で、ハンコックがヒーローらしい活躍をした事件はたったの1件だけなのに。 ここから先は“パート2”にしておくべき話じゃないか?と思った。 残りの30分ちょっとで、もっとハンコックが活躍して感謝されるニュース映像入れたりして、クライマックスは、ヒーローらしさがネックになって解決が難しい事件を、なんやかんやで解決して終わり。ハンコックⅡに続く。で、良かったんじゃないかな。 色々悪くないのに、もったいない映画な気がした。 [地上波(吹替)] 5点(2021-08-13 17:21:17) |
739. アバウト・タイム 愛おしい時間について
《ネタバレ》 ~About Time~時間に関して。だろうけど、『遅すぎ』『そろそろいい(頃合い)でしょ?』的な意味にも使われるそうで… 面白い設定のタイムトラベル。そんな楽しい能力があったら人生変わるわ。でもどう変えようか??なんて想像力が膨らむ。 出だしから冴えない主人公がタイムトラベルを繰り返して、徐々に魅力的な好青年になっていく。 登場人物がみんな良い人で魅力的。就職して家を出るティムの車のボンネットに、ベタァーって寂しいアピールするキットカット可愛い。やり直しで最適ルートを生きるティムと違い、ジミーとの腐れ縁でどんどん泥沼にハマっていくキットカットが不憫でならない。せっかく用意された紫のカップケーキに手を付けないくらい余裕の無さが、実家にいた頃の元気なキットカットを見ているだけに痛々しい。付き合う人によって、人生って大きく変わるんだよな。 一族の男が全員持っているタイムトラベルの能力。このトンデモ設定がどう活きるのか気になっていたけど、最後の父親との別れのためだけだったのね。 同じ日をもう一回繰り返す。見方を変えたら良い一日…になるだろうなぁ。 タイムトラベルが転じて、普通に日々を大切に生きようって結論も、もったいない気もするけど、確かに一番贅沢な生き方かもしれないって思わせてくれる。 登場人物たちが日常を過ごしてるエンディングも綺麗。 細かい設定を気にしちゃいけない映画だけど、タイムトラベルしてる最中も老化は進むのか、ちょっと気になった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2021-08-13 01:24:49) |
740. バンビ、ゴジラに会う
《ネタバレ》 なんか私もレビューしたくなったので… そもそもの邦訳が“会う”だし、“バンビ対ゴジラ”だったりしたみたいだし、意味がよく解らないと思う。 ~Bambi Meets Godzilla~バンビ、ゴジラに出逢う。 タイトル崩すと~B Meets G~に出来る。 ~Boy Meets Girl~少年、少女に出逢う。からタイトルとネタ持ってきたのかも? 少年が、少女に出逢って、恋に落ちたり冒険したり、物語が動いてゆく類型のことなんだけど、 主人公が少年でなくバンビで、相手が少女でなくゴジラだと、その後の展開も無く踏まれて終わり。ってお話だねぇきっと。 最後ゴジラの足が進んでいくことなく、鋭利な爪が力なくフニュウ~ってなる。なぜならここで全ての物語が終わったから。 映画としてみたら、ゴジラ登場のインパクトだけでなく、残りの上映時間どうしてくれるんだ?って余韻で、二段オチなのかも。 1分半の映画のレビュー書くのに9分も掛かったよ… [インターネット(字幕)] 5点(2021-08-12 14:32:07)(良:1票) |